(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】予混合装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/62 20060101AFI20240815BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F23D14/62
F23N1/02 101
(21)【出願番号】P 2021048198
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】則竹 克哉
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-025722(JP,A)
【文献】特開2002-022156(JP,A)
【文献】特開昭59-136817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0292698(US,A1)
【文献】特開2017-187177(JP,A)
【文献】特開2000-146163(JP,A)
【文献】特開2016-020794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 1/00 - 99/00
F23N 1/00 - 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ファンの上流側の空気供給路の部分に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路に介設された、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナと、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された流量調節弁と、ガス吸引部よりも上流側の空気供給路の部分に介設されたバタフライ弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段と、制御手段とを備え、
制御手段は、燃焼能力をバタフライ弁及び流量調節弁の開度変化で少なくとも大小2段に切換える制御を行うと共に、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように流量調節弁の開度を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、
制御手段は、バタフライ弁の開度を閉じ側の所定の小能力開度にすると共に流量調節弁の開度を所定の小能力開度にして燃焼能力を小能力に切換えた状態で、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの流量調節弁の開度が所定の小能力開度よりも小開度側に変化した場合、流量調節弁の開度を所定の小能力開度に戻した状態で、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるようにバタフライ弁の開度を調節して、バタフライ弁の小能力開度を空気過剰率が所定値になったときの開度に更新する小能力開度更新制御を行うように構成されることを特徴とする予混合装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記バタフライ弁の開度を開き側の所定の大能力開度にすると共に前記流量調節弁の開度を所定の大能力開度にして燃焼能力を大能力に切換えた状態で、前記空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの前記流量調節弁の開度が所定の大能力開度よりも小開度側に変化した場合、その前に行われた前記小能力開度更新制御によるバタフライ弁の小能力開度の更新を無効にする制御を行うように構成されることを特徴とする請求項1記載の予混合装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記バタフライ弁の開度を開き側の所定の大能力開度にすると共に前記流量調節弁の開度を所定の大能力開度にして燃焼能力を大能力に切換えた状態で、前記空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの前記流量調節弁の開度が所定の大能力開度と同等である場合にのみ、前記小能力開度更新制御を行うように構成されることを特徴とする請求項1記載の予混合装置。
【請求項4】
前記バーナへの点火は、燃焼能力を小能力に切換えた状態で行われ、点火時に前記小能力開度更新制御が行われることを特徴とする請求項1又は2記載の予混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の予混合装置として、ファンの上流側の空気供給路の部分に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路に、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナを介設したものが知られている。ここで、燃料ガスの供給量は、二次ガス圧である大気圧と空気供給路内の負圧との差圧に応じて変化する。そして、空気供給路内の負圧がファン回転数に応じて変化するため、燃料ガスの供給量はファン回転数、即ち、空気の供給量に比例して変化する。従って、要求燃焼量に応じてファン回転数を制御することにより、要求燃焼量に応じた量の混合気がバーナに供給され、混合気の空気過剰率(一次空気量/理論空燃比の空気量)は一定になる。
【0003】
ところで、外国では、燃料ガスとして同じガス種を使用していても、時間により燃料ガスの発熱量(ウォッベ指数)が変動することがある。上記従来例のものでは、燃料ガスの発熱量が変動しても、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比は一定であるため、燃料ガスの発熱量の変動で混合気の空気過剰率が変動して、燃焼不良が発生してしまう。
【0004】
そこで、従来、特許文献1により、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された流量調節弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段と、制御手段とを備え、制御手段により、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように流量調節弁の開度を調節する制御を行うようにした予混合装置も知られている。これによれば、燃料ガスの発熱量が変動しても、流量調節弁の制御により混合気の空気過剰率が一定に保たれ、燃焼不良の発生を防止できる。
【0005】
また、特許文献1に記載のものでは、ガス吸引部よりも上流側の空気供給路の部分にバタフライ弁を介設して、燃焼能力をバタフライ弁及び流量調節弁の開度変化で少なくとも大小2段に切換える制御を行うようにしている。即ち、要求燃焼量が比較的小さな場合には、バタフライ弁の開度を閉じ側の所定の小能力開度にすると共に、流量調節弁の開度を基準開度よりも小さな所定の小能力開度にすることで、燃焼能力を小能力に切換えて、空気過剰率が適正値で比較的小さな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナに供給されるようにし、要求燃焼量が比較的大きな場合には、バタフライ弁の開度を開き側の所定の大能力開度にすると共に、流量調節弁の開度を基準開度たる大能力開度にすることで、燃焼能力を大能力に切換えて、空気過剰率が適正値で比較的大きな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナに供給されるようにしている。
【0006】
その結果、ファンの回転数と混合気の供給量、即ち、バーナの燃焼量との関係は、小能力では、
図6のLの特性線で示すようになり、大能力では、
図6のHの特性線で示すようになる。尚、小能力での最大燃焼量QLmaxを大能力での最小燃焼量QHminよりも若干大きくなるように設定して、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが一部重なるようにしている。
【0007】
ところで、バタフライ弁を配置した空気供給路の部分の壁面に異物が付着して、異物付着量が経時的に増加すると、小能力時に、通過空気量が減少して空気過剰率が減少する。そして、特許文献1に記載のものでは、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように流量調節弁の開度が調節されるため、小能力時に、通過空気量が減少して空気過剰率が減少すると、調節後の流量調節弁の開度が所定の小能力開度よりも小開度側に変化する。その結果、小能力時のファン回転数-燃焼量特性線が
図6にL´で示すように低燃焼量側に変化してしまう。これにより、小能力での最大燃焼量QL´maxが大能力での最小燃焼量QHminよりも小さくなって、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重ならなくなり、この重ならない範囲の燃焼量を得ることができなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、バタフライ弁を配置した空気供給路の部分の壁面に異物が付着堆積しても、小能力時のファン回転数-燃焼量特性線を元通りに維持し、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重ならなくなることを防止できるようにした予混合装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ファンの上流側の空気供給路の部分に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路に介設された、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナと、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された流量調節弁と、ガス吸引部よりも上流側の空気供給路の部分に介設されたバタフライ弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段と、制御手段とを備え、制御手段は、燃焼能力をバタフライ弁及び流量調節弁の開度変化で少なくとも大小2段に切換える制御を行うと共に、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように流量調節弁の開度を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、制御手段は、バタフライ弁の開度を閉じ側の所定の小能力開度にすると共に流量調節弁の開度を所定の小能力開度にして燃焼能力を小能力に切換えた状態で、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの流量調節弁の開度が所定の小能力開度よりも小開度側に変化した場合、流量調節弁の開度を所定の小能力開度に戻した状態で、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるようにバタフライ弁の開度を調節して、バタフライ弁の小能力開度を空気過剰率が所定値になったときの開度に更新する小能力開度更新制御を行うように構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、バタフライ弁を配置した空気供給路の部分の壁面に異物が付着堆積することで、小能力時に、混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの流量調節弁の開度が所定の小能力開度よりも小開度側に変化しても、上述した小能力開度更新制御を行うことにより、小能力時のファン回転数-燃焼量特性線を元通りに維持することができる。その結果、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重ならなくなることを防止できる。
【0012】
尚、空気供給路壁面への異物の付着堆積以外の燃料ガス発熱量の変動や排気筒の閉塞といった原因により、小能力時に、混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの流量調節弁の開度が所定の小能力設定開度よりも小開度側に変化することがあるが、この場合は、小能力開度更新制御で小能力開度を更新しても無駄である。即ち、空気供給路壁面への異物の付着堆積以外の燃料ガス発熱量の変動や排気筒の閉塞といった原因がある場合には、バタフライ弁の開度を開き側の所定の大能力開度にすると共に流量調節弁の開度を所定の大能力開度にして燃焼能力を大能力に切換えた状態でも、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの流量調節弁の開度が所定の大能力開度よりも小開度側に変化して、大能力時のファン回転数-燃焼量特性線が低燃焼量側に変化するため、小能力時のファン回転数-燃焼量特性線を小能力開度の更新で元通りに維持しなくても、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重ならなくなることはない。
【0013】
そのため、本発明において、制御手段は、燃焼能力を上記の如く大能力に切換えた状態で、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの流量調節弁の開度が所定の大能力開度よりも小開度側に変化した場合、その前に行われた小能力開度更新制御によるバタフライ弁の小能力開度の更新を無効にする制御を行うか、又は、燃焼能力を上記の如く大能力に切換えた状態で、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように調節したときの流量調節弁の開度が所定の大能力開度と同等である場合にのみ、小能力開度更新制御を行うように構成されることが望ましい。これによれば、空気供給路の壁面への異物の付着堆積以外の燃料ガス発熱量の変動や排気筒の閉塞といった原因がある場合の無駄な小能力開度の更新を回避することができる。
【0014】
また、本発明において、バーナへの点火は、燃焼能力を小能力に切換えた状態で行われ、点火時に小能力開度更新制御が行われることが望ましい。これによれば、小能力開度更新制御が行われる頻度が高くなり、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重ならなくなってしまう期間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の予混合装置を示す説明図。
【
図4】実施形態の予混合装置に設けられる流量調節弁の要部の分解斜視図。
【
図5】実施形態の予混合装置に設けられるバタフライ弁の要部の分解斜視図。
【
図6】実施形態の予混合装置におけるファンの回転数と燃焼量との関係を示すグラフ。
【
図7】実施形態の予混合装置における制御手段による制御内容を示すフロー図。
【
図8】
図7の制御内容に含まれる小能力開度更新制御の内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す燃焼装置は、全一次燃焼式のバーナ1と、バーナ1の燃焼面1aから噴出する混合気の燃焼空間を囲う燃焼筐2と、燃焼筐2内に配置した熱交換器3とを備える熱源機である。熱交換器3には、上流側の給水管31と、下流側の出湯管32とが接続されている。混合気の燃焼で生ずる燃焼ガスは、熱交換器3を加熱した後に燃焼筐2の端部に接続される排気筒4を介して外部に排出される。また、本発明の実施形態の予混合装置Aにより、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファン5を介してバーナ1に供給している。
【0017】
予混合装置Aは、ファン5の上流側の空気供給路6と、燃料ガスを供給するガス供給路7と、制御手段たるコントローラ8とを備えている。ガス供給路7の下流端は、空気供給路6に設けられたガス吸引部61に接続されている。ガス吸引部61の上流側に隣接する空気供給路6の部分には、後述するバタフライ弁62を配置した部分よりも小径なベンチュリ部63が設けられている。ベンチュリ部63の下流側に隣接する空気供給路6の部分は、ベンチュリ部63より大径の筒部64で囲われている。そして、ベンチュリ部63の下流端部を筒部64の上流端部に環状の隙間を存して挿入し、この隙間でガス吸引部61を構成している。ガス供給路7の下流端には、筒部64を囲うようにして、ガス吸引部61に連通するガス室71が設けられている。また、ガス供給路7には、上流側から順に、元弁72と、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナ73と、流量調節弁74とが介設されている。
【0018】
ガス吸引部61を介して供給される燃料ガスの量は、二次ガス圧である大気圧と空気供給路6内の負圧との差圧に応じて変化する。ここで、空気供給路6内の負圧は、ファン5の回転数に応じて変化する。そのため、燃料ガスの供給量はファン5の回転数、即ち、空気の供給量に比例して変化する。また、燃料ガスの供給量と空気の供給量との比率は、流量調節弁74の開度によって変化する。流量調節弁74の開度を使用するガス種に応じた所定の基準開度にすることで、混合気の空気過剰率が所定の適正値(例えば、1.3)になる。そして、要求燃焼量(設定湯温の温水を出湯するために必要な燃焼量)に応じてファン5の回転数を制御することにより、空気過剰率が適正値で要求燃焼量に応じた量の混合気がバーナ1に供給される。
【0019】
尚、排気筒4への風の侵入で排気不良を生じないようにするため、即ち、耐風性能を確保するため、ファン5の下限回転数をあまり低く設定することはできない。そして、要求燃焼量がファン5の下限回転数に対応する所定値以下になった場合には、要求燃焼量に対応する量の空気を供給できなくなる。
【0020】
そこで、ガス吸引部61より上流側の空気供給路6の部分に、当該部分の通気抵抗を大小2段に切換えるために、
図1に実線で示す閉じ姿勢と仮想線で示す開き姿勢とに切換自在なバタフライ弁62を配置している。そして、要求燃焼量が上記所定値以下になった場合には、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくし、ファン5の回転数を下限回転数以下にせずに、所定値以下の要求燃焼量に対応する量の空気を供給できるようにしている。
【0021】
但し、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくするだけでは、空気供給路6内の負圧が増加して、燃料ガスの供給量が過大となり、バーナ1に供給される混合気の空気過剰率が適正値を下回ってしまう。そのため、要求燃焼量が比較的小さな場合には、バタフライ弁62の開度を閉じ姿勢のときの開度である所定の小能力開度にすると共に、流量調節弁74の開度を基準開度よりも小さな所定の小能力開度にすることで、燃焼能力を小能力に切換えて、空気過剰率が適正値で比較的小さな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナ1に供給されるようにし、要求燃焼量が比較的大きな場合には、バタフライ弁62の開度を開き姿勢のときの開度である所定の大能力開度にすると共に、流量調節弁74の開度を基準開度たる大能力開度にすることで、燃焼能力を大能力に切換えて、空気過剰率が適正値で比較的大きな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナ1に供給されるようにしている。
【0022】
その結果、ファン5の回転数と混合気の供給量、即ち、バーナ1の燃焼量との関係は、小能力では、
図6のLの特性線で示すようになり、大能力では、
図6のHの特性線で示すようになる。ここで、小能力での最大燃焼量QLmaxは、大能力での最小燃焼量QHminよりも若干大きくなるように設定されており、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが一部重なる。そして、コントローラ8は、要求燃焼量が小能力での最大燃焼量QLmaxを上回ったときに、燃焼能力を大能力に切換え、要求燃焼量が大能力での最小燃焼量QHminを下回ったときに燃焼能力を小能力に切換える。
【0023】
ところで、燃料ガスとして同じガス種を使用していても、時間により燃料ガスの発熱量(ウォッベ指数)が変動することがある。この場合、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比が一定であると、燃料ガスの発熱量の変動で混合気の空気過剰率が変動して、燃焼不良が発生してしまう。
【0024】
そこで、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段9を設けている。本実施形態では、バーナ1の燃焼面1aに臨ませて設けたフレームロッドで空気過剰率検出手段9を構成し、フレームロッドに流れるフレーム電流から混合気の空気過剰率を検出するようにしている。尚、混合気の空気過剰率に応じて火炎が燃焼面1aに近づいたり離れたりするため、燃焼面1aの裏面温度が混合気の空気過剰率に応じて変化する。従って、燃焼面1aの裏面温度を検出する温度センサで空気過剰率検出手段9を構成することも可能である。
【0025】
そして、コントローラ8は、空気過剰率検出手段9で検出される混合気の空気過剰率が一定になるように、即ち、所定の適正値に保たれるように流量調節弁74の開度を調節するフィードバック制御を行う。具体的には、燃料ガスの発熱量の増加で混合気の空気過剰率が減少したときは、流量調節弁74の開度を減少させて、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比を空気過剰率が適正値になるように減少させ、また、燃料ガスの発熱量の減少で混合気の空気過剰率が増加したときは、流量調節弁74の開度を増加させて、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比を空気過剰率が適正値になるように増加させる。これによれば、燃料ガスの発熱量が変動しても、混合気の空気過剰率が適正値に保たれ、燃焼不良の発生を防止できる。
【0026】
次に、流量調節弁74とバタフライ弁62との構造について説明する。
図2、
図4も参照して、流量調節弁74は、電動式であって、弁筐741内の弁座7411に向けて軸方向に接近、離間する弁体742と、モータ743と、モータ743の回転で弁体742を軸方向に移動させる運動変換機構とを備えている。弁筐741内には、ガス流入口7412aを有する一次側ガス室7412と、上記ガス室71に連通するガス流出口7413aを有する二次側ガス室7413とが設けられている。そして、二次側ガス室7413に、一次側ガス室7412と二次側ガス室7413とを仕切る弁座7411が形成された部材744を装着している。
【0027】
運動変換機構は、弁体742に固定のカムピン7421と、カムピン7421が摺動自在に係合する、軸方向にのびる長孔7451が形成されたガイド筒745と、カムピン7421が長孔7451を通して係合する螺旋状のカム部7461を有する筒状のカム体746とを備えている。そして、モータ743の出力軸7431に連結される連結子7432の断面非円形の軸部をガイド筒745の端部に嵌合させ、モータ743の回転でガイド筒745が回転するようにしている。
【0028】
また、弁体742は、弁座7411に形成した弁孔7411aに挿入可能なニードル部742aを有すると共に、ガイド筒745内に挿入される筒部7422を有している。そして、この筒部7422の端部に、径方向外方に突出するようにカムピン7421が突設されている。また、カムピン7421の基端部をガイド筒745に形成した長孔7451に摺動自在に係合させている。そのため、弁体742は、ガイド筒745に対し軸方向に移動自在で、且つ、一緒に回転するように連結される。
【0029】
カム体746は、弁筐741に対し回り止めされている。具体的には、カム体746の外周面に突設したリブ7462を弁筐741の内周面に形成した溝7414に係合することで、カム体746を弁筐741に対し回り止めしている。また、部品点数を削減するため、カム体746は、弁座7411を形成した部材744に一体に形成されている。カム体746に設けられるカム部7461は、カムピン7421が当接可能な螺旋状の傾斜辺で構成されている。また、カムピン7421をカム部7461に向けて付勢するバネ部材747を設けている。そして、モータ743の正逆転により、カムピン7421が回転しつつカム部7461に案内されて軸方向一方と他方に動き、弁体742が弁座7411に接近する閉じ側と弁座7411から離隔する開き側とに動く。
【0030】
図3、
図5も参照して、バタフライ弁62は、バタフライ弁62を配置した空気供給路6の部分の内径よりも小径の円盤状であって、モータ621により閉じ姿勢と開き姿勢との間で回転駆動される。具体的に説明すれば、バタフライ弁62にその回転軸線に沿う断面方形の軸孔62aを形成し、この軸孔62aにモータ621の出力軸621aに連結される断面方形の弁軸622を挿入して、バタフライ弁62をモータ621に連結している。
【0031】
尚、バタフライ弁62が弁軸622に対し抜け止めされるように、バタフライ弁62を弁軸622にビス止めすることも考えられるが、海岸付近の塩害を生じやすい地域では、ビスが腐食する恐れがある。そこで、本実施形態では、バタフライ弁62に軸孔62aに交差する係止孔62bを形成し、弁軸622の外面に突設した凸部622aが係止孔62bに嵌合して、バタフライ弁62が弁軸622に対し抜け止めされるようにしている。また、係止孔62bの形成箇所を含むバタフライ弁62の所定範囲の部分62cの周囲に一方の端部を除いて切込み62dを入れることにより、この所定範囲の部分62cが弾性的に撓み得るようにしている。これによれば、弁軸622を軸孔62aに挿入する際に、所定範囲の部分62cが凸部622aに押されて撓み、凸部622aが係止孔62bに合致する位置に到達したところで、所定範囲の部分62cの弾性復元力で凸部622aが係止孔62bに嵌合する。
【0032】
ところで、バタフライ弁62を配置した空気供給路6の部分の壁面に異物が付着して、異物付着量が経時的に増加すると、バタフライ弁62の開度を大きくする大能力時には殆ど影響を受けないが、バタフライ弁62の開度を小さくする小能力時には、通過空気量が減少して空気過剰率が減少する。そして、空気過剰率検出手段9で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるように流量調節弁74の開度が調節されるため、小能力時に、通過空気量が減少して空気過剰率が減少すると、調節後の流量調節弁74の開度が所定の小能力開度よりも小開度側に変化する。その結果、小能力時のファン回転数-燃焼量特性線が
図6にL´で示すように低燃焼量側に変化してしまう。これにより、小能力での最大燃焼量QL´maxが大能力での最小燃焼量QHminよりも小さくなって、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重ならなくなり、この重ならない範囲の燃焼量を得ることができなくなってしまう。
【0033】
そこで、本実施形態では、
図7に示す如く、出湯管32の下流端の出湯栓(図示せず)が開かれて、熱交換器3への通水が給水管31に介設した水量センサ(図示せず)で検出されたとき(STEP1)、コントローラ8による制御で、バタフライ弁62の開度を所定の小能力開度にすると共に流量調節弁74の開度を所定の小能力開度にして燃焼能力を小能力に切換えて(STEP2)、この状態でバーナ1に点火し(STEP3)、この点火時に小能力開度更新制御を行うようにしている(STEP4)。
【0034】
小能力開度更新制御の詳細は
図8に示す通りであり、先ず、バラフライ弁62の開度を所定の小能力開度に維持した状態で、空気過剰率検出手段9で検出される混合気の空気過剰率λが所定値になるように流量調節弁74の開度を調節し(STEP41)、次に、調節後の流量調節弁74の開度が流量調節弁74の所定の小能力開度よりも小開度側に変化したか否かを判別する(STEP42)。そして、小開度側に変化した場合は、流量調節弁74の開度を所定の小能力開度に戻した状態で、空気過剰率検出手段9で検出される混合気の空気過剰率が所定値になるようにバタフライ弁62の開度を調節し(STEP43)、バタフライ弁62の小能力開度を空気過剰率が所定値になったときの開度に更新する(STEP44)。
【0035】
このようにバタフライ弁62の小能力開度を更新すれば、空気供給路壁面への異物の付着堆積による小能力時の空気量の減少を回避でき、小能力時のファン回転数-燃焼量特性線を
図7にLで示す元通りとほぼ同じ特性線に維持できる。その結果、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重ならなくなることを防止できる。また、点火の度に小能力開度更新制御が行われる。そのため、小能力開度更新制御が行われる頻度が高くなり、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重ならなくなってしまう期間を短くすることができる。
【0036】
再び、
図7を参照して、小能力開度更新制御を行った後は、要求燃焼量が小能力での最大燃焼量QLmaxを上回って燃焼能力を大能力に切換える指令が出されたか否かを判別し(STEP5)、大能力への切換指令が出されたときに、バタフライ弁62の開度を所定の大能力開度にすると共に流量調節弁74の開度を所定の大能力開度にして、燃焼能力を大能力に切換える(STEP6)。次に、空気過剰率検出手段9で検出される混合気の空気過剰率λが所定値になるように流量調節弁74の開度を調節し(STEP7)、調節後の流量調節弁74の開度が所定の大能力開度よりも小開度側に変化したか否かを判別する(STEP8)。そして、小開度側に変化した場合は、その前に行われた小能力開度更新制御によるバタフライ弁62の小能力開度の更新を無効にする(STEP9)。その後は、設定湯温の温水を出湯するために燃焼能力の切換えを含む通常の温調制御を行い(STEP10)、通水が停止されたときに(STEP11)、元弁72の閉弁やファン5の停止を含むバーナ1の消火制御を行う(STEP12)。
【0037】
ここで、空気供給路壁面への異物の付着堆積以外の燃料ガス発熱量の変動や排気筒4の閉塞といった原因により、小能力時に、混合気の空気過剰率λが所定値になるように調節したときの流量調節弁74の開度が所定の小能力設定開度よりも小開度側に変化することがあるが、この場合は、燃焼能力を大能力に切換えた状態でも、混合気の空気過剰率λが所定値になるように調節したときの流量調節弁74の開度が所定の大能力開度よりも小開度側に変化する。そのため、小能力時のファン回転数-燃焼量特性線が
図6のL´で示す如く低燃焼量側に変化すると共に、大能力時のファン回転数-燃焼量特性線も
図6のH´で示す如く低燃焼量側に変化して、大能力での最小燃焼量QH´minが小能力での最大燃焼量QL´maxよりも小さくなり、小能力で得られる燃焼量の範囲と大能力で得られる燃焼量の範囲とが重なる。従って、空気供給路壁面への異物の付着堆積以外の燃料ガス発熱量の変動や排気筒4の閉塞といった原因がある場合は、小能力開度更新制御でバタフライ弁62の小能力開度を更新しても無駄である。このような場合、本実施形態では、
図7のSTEP9において、その前に行われた小能力開度更新制御によるバタフライ弁62の小能力開度の更新が無効にされるため、無駄な小能力開度の更新を回避することができる。
【0038】
尚、点火時には、小能力開度更新制御を行わずに、点火後に燃焼能力を大能力に切換えた状態で、空気過剰率検出手段9で検出される混合気の空気過剰率λが所定値になるように調節したときの流量調節弁74の開度が所定の大能力開度と同等である場合にのみ、その後に燃焼能力が小能力に切換えられたときに小能力開度更新制御を行うようにしてもよい。この場合も、空気供給路壁面への異物の付着堆積以外の燃料ガス発熱量の変動や排気筒4の閉塞といった原因がある場合の無駄な小能力開度の更新を回避することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、バタフライ弁62の開度の2段変化で燃焼能力を小能力と大能力との2段に切換えるようにしているが、バタフライ弁62の開度の3段以上の変化で燃焼能力を3段以上に切換えるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
A…予混合装置、1…バーナ、5…ファン、6…空気供給路、61…ガス吸引部、62…バタフライ弁、7…ガス供給路、73…ゼロガバナ、74…流量調節弁、8…コントローラ(制御手段)、9…空気過剰率検出手段。