(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】仮締切構造体の施工方法および仮締切構造体
(51)【国際特許分類】
E02D 19/04 20060101AFI20240815BHJP
E02D 29/09 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
E02D19/04
E02D29/09
(21)【出願番号】P 2021095270
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】織田 幸伸
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-206539(JP,A)
【文献】特開2002-061168(JP,A)
【文献】特開昭47-031413(JP,A)
【文献】特開2020-118027(JP,A)
【文献】特開2007-239244(JP,A)
【文献】実開昭49-068807(JP,U)
【文献】特開2003-136034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0173132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/04
E02D 29/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の作業エリアを囲む仮締切構造体の施工方法であって、
前記作業エリアの周囲の水底に上端が開口した中空杭を複数打設する杭打設工程と、
前記中空杭よりも前記作業エリアから離間した側の水底に、第一防水シートが固定されたシート支持部材を設置するシート支持部材設置工程と、
前記各中空杭に柱体を挿入する柱体挿入工程と、
前記柱体同士の間に第二防水シートを着脱可能に掛け渡す第二防水シート設置工程と、
前記第二防水シートを前記第一防水シートに着脱可能に連結する防水シート連結工程と、を備えた
ことを特徴とする仮締切構造体の施工方法。
【請求項2】
施工可能時期の終了時において、前記第二防水シートを前記第一防水シートと前記柱体から取り外し、前記柱体を前記中空杭から抜き取るとともに、前記中空杭と前記シート支持部材を前記水底に残置する一時撤去工程と、
その後の施工可能時期の開始時において、前記柱体を前記中空杭に挿入し、前記柱体同士の間に前記第二防水シートを掛け渡すとともに前記第二防水シートを前記第一防水シートに連結する再設置工程と、をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の仮締切構造体の施工方法。
【請求項3】
水中の作業エリアを囲む仮締切構造体であって、
前記作業エリアの周囲の水底に打設され上端が開口した複数の中空杭と、
前記中空杭よりも
前記作業エリアから離間した側の水底に設置されたシート支持部材と、
前記各中空杭に挿入された柱体と、
前記シート支持部材に固定された第一防水シートと、
前記柱体同士の間に着脱可能に掛け渡された第二防水シートと、
前記第二防水シートを前記第一防水シートに着脱可能に連結する連結部と、を備えた
ことを特徴とする仮締切構造体。
【請求項4】
前記連結部は、防水性を備えている
ことを特徴とする請求項3に記載の仮締切構造体。
【請求項5】
前記シート支持部材は、前記水底に打設された矢板と、前記矢板の上端に固定された形材とを備え、
前記第一防水シートは、前記形材に固定されている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の仮締切構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮締切構造体の施工方法および仮締切構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
河川等に構築された水中構造物の補修や改修を行う際には、構造物の周囲に仮締切を設けて施工を行う。従来の仮締切は、鋼矢板をバイブロハンマや圧入機で水底に打設して連設することで形成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中構造物の補修工事や改修工事は、複数年に亘るものがあり、また、1年のうち渇水期のみ施工可能な場合もある。このような場合、施工可能時期の開始時に仮締切を設置し、施工可能時期の終了時に仮締切を撤去する。つまり、同じ場所で、仮締切の設置と撤去を繰り返し行うこととなる。
特許文献1の仮締切を用いた場合、鋼矢板を同じ場所に打設すると、地盤が緩んで仮締切の止水性能が低下してしまう。そのため、鋼矢板を打設する箇所を変更する必要があった。よって、鋼矢板の配置や割り付け、既設構造物との取り合いを調整しなければならず、施工が複雑となり多くの手間と時間を要する問題があった。
このような観点から、本発明は、止水性能を確保できるとともに、施工の手間と時間を軽減できる仮締切構造体の施工方法および仮締切構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための第一の発明は、水中の作業エリアを囲む仮締切構造体の施工方法である。かかる仮締切構造体の施工方法は、前記作業エリアの周囲の水底に上端が開口した中空杭を複数打設する杭打設工程と、前記中空杭よりも前記作業エリアから離間した側の水底に、第一防水シートが固定されたシート支持部材を設置するシート支持部材設置工程と、前記各中空杭に柱体を挿入する柱体挿入工程と、前記柱体同士の間に第二防水シートを着脱可能に掛け渡す第二防水シート設置工程と、前記第二防水シートを前記第一防水シートに着脱可能に連結する防水シート連結工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明の仮締切構造体の施工方法によれば、仮締切構造体を一時撤去する際に、第二防水シートを第一防水シートと柱体から取り外し、柱体を中空杭から抜き取るだけで良く、中空杭とシート支持部材を水底に残置することができる。したがって、地盤に何度も杭や矢板を打設しなくて済むので、地盤が緩まず、仮締切の止水性能の低下を抑制できる。また、杭や矢板を打設する箇所を変更しなくて済むので、杭や矢板の配置や割り付け、既設構造物との取り合いを調整しなくてよい。さらに、杭や矢板の一時撤去および再打設の工程を省略できるので、施工の手間と時間を低減できる。
本発明の仮締切構造体の施工方法においては、施工可能時期の終了時において、前記第二防水シートを前記第一防水シートと前記柱体から取り外し、前記柱体を前記中空杭から抜き取るとともに、前記中空杭と前記シート支持部材を前記水底に残置する一時撤去工程と、その後の施工可能時期の開始時において、前記柱体を前記中空杭に挿入し、前記柱体同士の間に前記第二防水シートを掛け渡すとともに前記第二防水シートを前記第一防水シートに連結する再設置工程と、をさらに備えたことが好ましい。このような方法によれば、仮締切構造体の一時撤去と再設置の施工手間と時間を低減することができる。
なお、上記各工程は、可能な範囲で並行して行ってもよいし、順序を変更してもよい。例えば、シート支持部材設置工程は、杭打設工程と並行して行ってもよいし、杭打設工程の前に行ってもよい。また、柱体挿入工程は、中空杭を打設した後であれば、シート支持部材設置工程と並行して行ってもよいし、シート支持部材設置工程の前に行ってもよい。また、第二防水シート設置工程は、中空杭に柱体を設置した後であれば、シート支持部材設置工程と並行して行ってもよいし、シート支持部材設置工程の前に行ってもよい。
【0006】
前記課題を解決するための第二の発明は、水中の作業エリアを囲む仮締切構造体である。かかる仮締切構造体は、前記作業エリアの周囲の水底に打設され上端が開口した複数の中空杭と、前記中空杭よりも前記作業エリアから離間した側の水底に設置されたシート支持部材と、前記各中空杭に挿入された柱体と、前記シート支持部材に固定された第一防水シートと、前記柱体同士の間に着脱可能に掛け渡された第二防水シートと、前記第二防水シートを前記第一防水シートに着脱可能に連結する連結部と、を備えたことを特徴とする。
本発明の仮締切構造体によれば、仮締切構造体を一時撤去する際に、第二防水シートを第一防水シートと柱体から取り外し、柱体を中空杭から抜き取って、中空杭とシート支持部材を水底に残置することができる。また、仮締切構造体を再設置する際には、残置した中空杭とシート支持部材を利用できるので、地盤が緩まず、仮締切の止水性能の低下を抑制できる。さらに、杭や矢板の配置や割り付け、既設構造物との取り合いを調整しなくてよく、杭や矢板の撤去および再打設の工程を省略できるので、施工の手間と時間を低減できる。
本発明の仮締切構造体において、前記連結部は、防水性を備えているものが好ましい。このような構成によれば、連結部を閉じるだけで止水性能を確保でき、連結作業が容易になる。
本発明の仮締切構造体において、前記シート支持部材は、前記水底に打設された矢板と、前記矢板の上端に固定された形材とを備え、前記第一防水シートは、前記形材に固定されているものが好ましい。このような構成によれば、止水性能をより一層向上することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の仮締切構造体の施工方法および仮締切構造体によれば、仮締切構造体の止水性能を確保できるとともに、施工の手間と時間を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る仮締切構造体を示した斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る仮締切構造体を示した断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る仮締切構造体を示した平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る仮締切構造体を示した拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る仮締切構造体の第二防水シートと柱体との連結構造を示した斜視図である。
【
図6】(a)は本発明の実施形態に係る仮締切構造体の施工方法の杭打設工程を示した断面図、(b)はシート支持部材設置工程を示した断面図、(c)は柱体挿入工程を示した断面図である。
【
図7】(a)は本発明の実施形態に係る仮締切構造体の施工方法の第一防水シート固定工程を示した断面図、(b)は第二防水シート設置工程を示した断面図である。
【
図8】(a)は本発明の実施形態に係る仮締切構造体の施工方法の一時撤去工程において第二防水シートを撤去した状態を示した断面図、(b)は柱体を撤去した状態を示した断面図、(c)は中空杭を養生した状態を示した断面図である。
【
図9】(a)は本発明の実施形態に係る仮締切構造体の施工方法の再設置工程において柱体を再設置した状態を示した断面図、(b)は第二防水シートを再設置した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る仮締切構造体の施工方法および仮締切構造体について、添付した図面を参照しながら説明する。仮締切構造体は、水中の作業エリアを囲む仮設の構造体である。水中の作業エリアは、河川に構築された頭首工や堰等の水中構造物の補修や改修を行う場合や、水中構造物を新設する場合に、水を堰き止めることで確保される水底の作業エリアである。
【0010】
まず、仮締切構造体の構造を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る仮締切構造体を示した斜視図、
図2は断面図、
図3は平面図である。
図1乃至
図3に示すように、仮締切構造体1は、中空杭10と、シート支持部材20と、柱体30と、第一防水シート40と、第二防水シート50と、連結部60と、を備えている。
中空杭10は、作業エリアの周囲の水底2に打設される杭であって、鋼管にて構成されている。中空杭10は、上端が開口した有底筒状を呈している。中空杭10の内空部11は、柱体30が挿入される空間となる。中空杭10の下端部は、中心部が下方に突出した形状(円錐状)を呈しており、水底2に打ち込み易くなっている。中空杭10は、上端が水底2の表面と同等の高さとなるように垂直に打ち込まれる。
【0011】
シート支持部材20は、第一防水シート40を支持するための部材であって、中空杭10よりも前記作業エリアから離間した側(外側)の水底に設置されている。
図4にも示すように、シート支持部材20は、矢板21と形材22とを備えている。ここで、
図4は、本発明の実施形態に係る仮締切構造体を示した拡大断面図である。矢板21は、水底2に打設されている。
形材22は、第一防水シート40が固定される部材であって、矢板21の上端に固定されている。形材22は、溝形鋼にて構成されており、ウエブの両端からフランジが下方に延在する断面門形の向きに配置されている。形材22は、矢板21の幅方向に沿って、矢板21の上端に載置されている。形材22のウエブの下面には、例えばスポンジ25等の弾性部材が敷設されており、スポンジ25が矢板21に押圧された状態で、形材22が設置されている。なお、ウエブの下面に設置される弾性部材は、スポンジ25に限定されるものではなく、樹脂製の弾性部材等、他の部材であってもよい。形材22の外側(作業エリアとは逆側)のフランジには、第一防水シート40を固定するためのボルト23が着脱可能に設けられている。ボルト23は、形材22の長手方向に沿って所定ピッチで複数設けられている。
【0012】
柱体30は、第二防水シート50を支持する部材であり、水底2に立設されている。柱体30は、H型鋼にて構成されており、長手方向の下部が中空杭10に挿入されている。柱体30の上端部は、河川3の水面より上方に突出している。柱体30は、フランジが矢板21と平行になるように配置されている。
第一防水シート40は、遮水性および可撓性を備えた樹脂製のシートであり、シート支持部材20に固定されている。本実施形態の第一防水シート40は、形材22の長手方向に長い長方形形状を呈している。第一防水シート40は、形材22のウエブ上面から外側のフランジを覆って密着しており、フランジ側の縁端部が水密状態でボルト止めされている。第一防水シート40の柱体30側(作業エリア側)の縁端部には、連結部60が固定されている。
【0013】
第二防水シート50は、柱体30に沿って立ち上がっており、河川3の水を堰き止めている。第二防水シート50は、第一防水シート40と同等の素材にて構成されている。第二防水シート50は、隣り合う柱体30,30間に掛け渡されており、側面視で矩形形状を呈している。第二防水シート50の下端縁部は、第一防水シート40と着脱可能に連結されている。第二防水シート50の側縁部は、隣接する第二防水シート50と着脱可能に連結されている。
連結部60は、第二防水シート50を第一防水シート40に着脱可能に連結するものである。連結部60は、防水性を備えた線ファスナーにて構成されている。すなわち、連結部60は、第一防水シート40の縁部に設けられたエレメント(務歯)と、第二防水シート50の下縁部に設けられたエレメント(務歯)と、エレメント同士を係合あるいは係合解除するためのスライダとを備えており、エレメント同士を係合した状態(線ファスナーを閉じた状態)で遮水可能である。エレメントが取り付けられた基材は、樹脂にて形成されており、防水性を備えている。一方のエレメントの基材は、第一防水シート40の柱体30側の縁端部に溶着され、他方のエレメントの基材は、第二防水シート50の下端縁部に溶着されている。なお、基材は、伸縮可能なものが好ましい。
隣接する第二防水シート50,50同士は、連結部60と同等の連結部61にて着脱可能に連結されている。
図5に示すように、第二防水シート50の側縁部の柱体30側の面には、柱体30に連結するための連結部材51が設けられている。連結部材51は、ロープ52とフック53とを備えている。ロープ52は、第二防水シート50の側縁部に固定されており、ロープ52の先端部にフック53が取り付けられている。フック53は、柱体30のフランジに形成された係止孔31に係止される部材である。連結部材51および係止孔31は、縦方向に所定ピッチで複数形成されている。
【0014】
次に、前記構成の仮締切構造体1の施工方法を説明する。仮締切構造体1の施工方法は、杭打設工程と、シート支持部材設置工程と、柱体挿入工程と、第一防水シート固定工程と、第二防水シート設置工程と、防水シート連結工程と、を備えている。これらの工程は、仮締切構造体1を構築する際の工程である。
【0015】
杭打設工程は、
図6の(a)に示すように、作業エリアの周囲の水底2に中空杭を打設する工程である。杭打設工程では、クレーン付き台船上からバイブロハンマを用いて鋼管杭(中空杭10)を水底2に打設する。中空杭10は、開口部を上側にして、上端部が水底2と同等の高さになる深さまで打設する。
シート支持部材設置工程は、
図6の(b)に示すように、中空杭10よりも作業エリアから離間した側の水底2にシート支持部材を設置する工程である。本実施形態のシート支持部材設置工程では、まず、バイブロハンマを用いて矢板21を水底2に打設する。矢板21は、上端部が水底2と同等の高さになる深さまで打設する。矢板21は、直線状に配列する。一方、工場において、縁端部に線ファスナーのエレメントが取り付けられた第一防水シート40を形材22に接着し、さらにボルト止めをして固定部材を形成する。固定部材の設置は、柱体挿入工程後に行う。
【0016】
柱体挿入工程は、
図6の(c)に示すように、中空杭10に柱体30を挿入する工程である。柱体挿入工程では、クレーン付き台船上から楊重装置を用いて、H型鋼(柱体30)を中空杭10の内空部11に挿入する。
第一防水シート固定工程は、
図7の(b)に示すように、シート支持部材20の上部に第一防水シート40を固定する工程である。本実施形態の第一防水シート固定工程は、シート支持部材設置工程の残りの工程(固定部材を矢板21に固定する工程)と並行して行う。形材22に第一防水シート40を一体化してなる固定部材は、クレーン付き台船上から吊り下げ、ダイバーが水中において、形材22を矢板21の上端に溶接する。ここで、第一防水シート40は、形材22に予め一体化されているので、形材22を矢板21に溶接することで、第一防水シート40がシート支持部材20の上部に固定される。
【0017】
第二防水シート設置工程は、柱体同士の間に第二防水シート50を着脱可能に掛け渡す工程である。第二防水シート設置工程では、
図7の(b)に示すように、第二防水シート50を、クレーン付き台船上から吊り下げ、ダイバーが水中において、第二防水シート50に設けられた連結部材51のフック53を柱体30の係止孔31に係止して、第二防水シート50を柱体30に連結する。その後、隣接する第二防水シート50,50同士を、連結部61を介して連結する。連結部61は、線ファスナーであるので、連結作業が容易であり、水中でも比較的短時間で行うことができ、ダイバーの負担を低減できる。
防水シート連結工程は、第二防水シート50を第一防水シート40に着脱可能に連結する工程である。防水シート連結工程では、ダイバーが第二防水シート50設置工程に引き続き、水中で連結部60を介して、第二防水シート50を第一防水シート40に連結する。連結部60も連結部61と同様に線ファスナーであるので、連結作業が容易であり、水中でも比較的短時間で行うことができ、ダイバーの負担を低減できる。
以上の工程により、仮締切構造体1の構築工程が完了する。その後、仮締切構造体1の地中構造物側において排水作業を行い、作業エリア内の水位を工事に支障が生じない程度まで低下させる。
【0018】
仮締切構造体1の施工方法は、一時撤去工程と、再設置工程とをさらに備える。
一時撤去工程は、渇水期等の施工可能時期の終了時において、第二防水シート50を第一防水シート40と柱体30から取り外し、柱体30を中空杭10から抜き取るとともに、中空杭10とシート支持部材20を水底2に残置する工程である。一時撤去工程は、第二防水シート撤去工程と、柱体撤去工程と、蓋設置工程と、を備える。
第二防水シート撤去工程は、
図8の(a)に示すように、第二防水シート50を一時撤去する工程である。本工程では、ダイバーが水中において、線ファスナーからなる連結部60,61を開き、第二防水シート50を第一防水シート40および柱体30から取り外す。そして、クレーン付き台船上から引き揚げる。第一防水シート40を撤去することで、作業エリア内を通常の水位に戻すことができる。
【0019】
柱体撤去工程は、
図8の(b)に示すように、柱体30を一時撤去する工程である。本工程では、クレーン付き台船上から楊重装置を用いて、H型鋼(柱体30)を中空杭10から引き抜く。その後、台船上に引き揚げ所定の保管場所に移動する。残りの部材である、中空杭10とシート支持部材20は水底2に残置する。
蓋設置工程は、
図8の(c)に示すように、中空杭10の杭頭部に蓋70を設置する工程である。蓋70は、中空杭10の内部に土砂等が流入するのを防止するためのものである。本工程では、ダイバーが水中において、各中空杭10の上端開口部に、蓋70を設置する。蓋70は、円盤状の蓋本体の周縁部に設けられた円筒状の垂下部71と、蓋本体から下方に突出する爪部72とを備えている。爪部72は、蓋本体の下面に複数設けられ、放射状に配置されている。蓋70を中空杭10の上端部に設置すると、垂下部71と爪部72とが中空杭10の胴部の上端部を挟んで、蓋70が固定される。
【0020】
再設置工程は、非渇水期が過ぎた後の施工可能時期の開始時において、柱体30を中空杭10に挿入し、柱体30同士の間に第二防水シート50を掛け渡すとともに第二防水シート50を第一防水シート40に連結する工程である。再設置工程は、蓋撤去工程と、柱体設置工程と、第二防水シート設置連結工程と、を備える。
蓋撤去工程は、中空杭10の杭頭部から蓋70を撤去する工程である。本工程では、ダイバーが水中において、蓋70を取り外す。蓋70が設置されていない場合には、本工程は省略する。
【0021】
柱体設置工程は、
図9の(a)に示すように、水底2に残置されていた中空杭10に柱体30を挿入する工程である。本工程では、前記柱体挿入工程と同等の作業を行うことで、柱体30を中空杭10に挿入する。
第二防水シート設置連結工程は、
図9の(a)に示すように、第二防水シート50を柱体30,30同士の間に掛け渡し、前記第一防水シート40に連結する工程である。本工程では、前記第二防水シート設置工程および連結工程と同等の作業を行うことで、第二防水シート50を設置・連結する。
以上の工程により、仮締切構造体1の再設置が完了する。
【0022】
なお、仮締切構造体1を完全に撤去する際には、仮締切構造体1を構築する際の工程を逆に行う。これによって、水中から全ての部材を撤去することができる。
【0023】
本実施形態に係る仮締切構造体1によれば、仮締切構造体1を一時撤去する際、第二防水シート50を第一防水シート40と柱体30から取り外し、柱体30を中空杭10から抜き取るだけでよい。本実施形態に係る仮締切構造体の施工方法によれば、仮締切構造体1を一時撤去する際、中空杭10とシート支持部材20を水底に残置するので、水底2の地盤に何度も繰り返して杭や矢板を打設しなくて済む。したがって、地盤が緩まず、仮締切の止水性能の低下を抑制できる。また、水底2において、杭や矢板を打設する箇所を変更しなくて済むので、杭や矢板の配置や割り付け、既設構造物との取り合いを調整しなくてよい。
本実施形態では、一時撤去工程において、第二防水シート50を第一防水シート40と柱体30から取り外し、柱体30を中空杭10から抜き取るとともに、中空杭10とシート支持部材20を水底2に残置するので、杭や矢板の撤去作業を行わなくて済む。したがって、水中での作業を低減できるとともに、施工の手間と時間を大幅に低減できる。
また、再設置工程では、柱体30を中空杭10に挿入し、柱体30同士の間に第二防水シート50を掛け渡すとともに第二防水シート50を第一防水シート40に連結するだけで済む。したがって、杭や矢板の再打設の工程を省略できるので、水中での作業を低減できるとともに、施工の手間と時間を大幅に低減できる。
連結部60は、エレメントおよび基材が防水性を備えているので、線ファスナーを閉じるだけで止水性能を確保でき、連結作業が容易になる。また、シート支持部材20は、矢板21と形材22とを備え、第一防水シート40は、形材22に固定されているので、止水性能をより一層向上することができる。工場等で予め第一防水シート40を形材22に固定するので、水中での作業が少なくなり、ダイバーの負担を軽減できる。
【0024】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、仮締切構造体1を河川に構築する場合を例に挙げたが、これに限定されるものではない。仮締切構造体1は、海の浅瀬等においても設置することが可能である。
また、前記実施形態では、柱体30は、H型鋼にて構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、柱体は、鋼管や角パイプにて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 仮締切構造体
2 水底
3 河川
10 中空杭
20 シート支持部材
21 矢板
22 形材
30 柱体
40 第一防水シート
50 第二防水シート
60 連結部