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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】柱状構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/14 20060101AFI20240815BHJP
   E01D 11/02 20060101ALI20240815BHJP
   E01D 11/04 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
E01D19/14
E01D11/02
E01D11/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021098693
(22)【出願日】2021-06-14
(65)【公開番号】P2022190392
(43)【公開日】2022-12-26
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 眞司
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-098741(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111074775(CN,A)
【文献】特開昭58-041690(JP,A)
【文献】実開昭50-042024(JP,U)
【文献】特開平07-185878(JP,A)
【文献】米国特許第05896609(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 11/00 - 11/04
E01D 19/00 - 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向両端面を開口した複数の鋼材ブロックを上下方向に積み上げて形成される柱状構造物の製造方法において、
前記各鋼材ブロックをそれぞれ軸芯が水平方向となるように横向きにして互いに端面同士が間隔をおいて対向するように複数の高さ調整手段で支持して各鋼材ブロックの芯出しを行うとともに、
各鋼材ブロックに複数の当接部材をそれぞれ当接面が鋼材ブロックの軸芯に垂直な同一平面上に位置するように取り付け、
各鋼材ブロックの当接部材間に互いに軸方向に同一寸法の間隔保持部材を介在させて各鋼材ブロックを仮組みした状態で形状検査を行った後、
鋼材ブロックの当接部材同士が上下方向に当接するように鋼材ブロックを現場で積み重ねて鋼材ブロックの端面同士を接合する
ことを特徴とする柱状構造物の製造方法。
【請求項2】
前記当接部材を鋼材ブロックの軸方向に移動可能に取り付けるとともに、
各当接部材の当接面が前記同一平面上に位置するように当接部材の位置を調整する
ことを特徴とする請求項1記載の柱状構造物の製造方法。
【請求項3】
前記高さ調整手段としての油圧ジャッキによって各鋼材ブロックを4点ずつ支持するとともに、4点支持する油圧ジャッキのうち隣り合う2つの油圧ジャッキを互いに油圧管路が連通するように接続して1つの支持点とすることにより、他の2つの油圧ジャッキの支持点とともに3つの支持点による支持状態を形成して芯出しを行う
ことを特徴とする請求項1または2記載の柱状構造物の製造方法。
【請求項4】
互いに対向する鋼材ブロックの端面間の間隔よりも当接部材間の間隔が大きくなるように当接部材を鋼材ブロックに取り付けるとともに、
鋼材ブロックを現場で積み重ねて鋼材ブロックの当接部材同士を当接させる際に、当接部材間に所定厚さの複数の間隔調整板を重ねて介在させることにより上下の鋼材ブロックの端面間に所定の間隔を形成し、当接部材間の間隔調整板を増減することにより鋼材ブロックの軸芯の傾きを調整する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の柱状構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吊り橋や斜張橋等の長大橋の主塔として用いられる鋼製の柱状構造物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吊り橋や斜張橋等の長大橋の主塔は、工場で製作された複数の鋼材ブロックを現場に搬入し、これらをクレーンで積み上げて端面同士を突き合わせ、各鋼材ブロックを添接板と高力ボルトで連結することにより柱状に形成される(例えば、特許文献1参照。)。このような主塔においては、塔頂部にケーブルから鉛直方向の軸力が加わるが、塔柱の鉛直度に誤差があると偏心曲げモーメントによる付加応力が発生するため、製作精度及び架設精度を高めて付加応力を極力少なくすることが重要である。この場合、鋼材ブロックの水平継手部が鉛直度に及ぼす影響が大きいことから、鋼材ブロックの突き合わせ端面を機械切削による、いわゆるメタルタッチ仕上げにすることにより鉛直度を高めるようにしている。
【0003】
一方、工場における鋼材ブロックの製作工程では、以下のようにして鋼材ブロックの端面切削及び仮組検査を行っている。
【0004】
まず、鋼材ブロックを横向きにして複数の油圧ジャッキにより支持し、反力管理された4点支持状態で芯出しを行う。次に、鋼材ブロックの端面付近に切削用の罫書き線と管理用の差し越し線を入れ、鋼材ブロックの側面に仮組用の罫書き線を入れた後、大型切削機により切削用の罫書き線に合わせて鋼材ブロックの端面を一括切削する。この後、各鋼材ブロックの仮組用の罫書き線が水平な一直線になるように各鋼材ブロックを支持するとともに、各鋼材ブロックを添接板により連結して仮組みし、この水平仮組状態で各鋼材ブロック全体の形状検査を一括して行う。形状検査では、仮組状態での各鋼材ブロックの鉛直度を検査する。
【0005】
鋼材ブロックの工場検査では、鋼材ブロックを施工時と同じ縦向きにして検査を実施することが好ましいが、大型の鋼材ブロックを現場と同様に縦置きして積み上げるのは、大規模な工場設備が必要になる他、安全性及び工程管理などの点から困難性を伴うため、従来では、各鋼材ブロックをそれぞれ横向きにした状態で一括水平仮組みしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-98908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば高さ250mの主塔のような大型の柱状構造物においては、各鋼材ブロックの端面(仕口)も大断面となるが、このような大断面を均一面となるように一括切削するためには大型の切削機を必要とする。このため、大型の切削機を備えていない工場では対応することができず、メタルタッチを実現するための高精度な機械切削を行うことができないという問題点があった。
【0008】
また、従来例による仮組状態における形状検査では、複数の油圧ジャッキにより各鋼材ブロックを無応力状態となるように支持した際、各鋼材ブロックが添接板による連結により互いに拘束され、これにより連結部分から内部応力が局部的に生ずるため、完全な無応力状態を実現することが困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋼材ブロックの端面を高精度に接合することができるとともに、各鋼材ブロックが互いに拘束を受けない無応力状態で形状検査を行うことのできる柱状構造物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するために、軸方向両端面を開口した複数の鋼材ブロックを上下方向に積み上げて形成される柱状構造物の製造方法において、前記各鋼材ブロックをそれぞれ軸芯が水平方向となるように横向きにして互いに端面同士が間隔をおいて対向するように複数の高さ調整手段で支持して各鋼材ブロックの芯出しを行うとともに、各鋼材ブロックに複数の当接部材をそれぞれ当接面が鋼材ブロックの軸芯に垂直な同一平面上に位置するように取り付け、各鋼材ブロックの当接部材間に互いに軸方向に同一寸法の間隔保持部材を介在させて各鋼材ブロックを仮組みした状態で形状検査を行った後、鋼材ブロックの当接部材同士が上下方向に当接するように鋼材ブロックを現場で積み重ねて鋼材ブロックの端面同士を接合するようにしている。
【0011】
これにより、鋼材ブロックの軸芯に垂直な同一平面上に位置するように取り付けられた複数の当接部材を当接させることにより各鋼材ブロックが上下方向に積み重ねられることから、現場では鋼材ブロックの各当接部材を当接させるだけでブロック端面のメタルタッチと同等の突き合わせ状態が形成される。また、各鋼材ブロックの当接部材間に互いに同一寸法の間隔保持部材を介在させて各鋼材ブロックを所定間隔だけオフセットさせた状態で仮組みして形状検査が行われることから、従来のように添接板によって鋼材ブロック同士を連結した仮組みのように添接板を介して各鋼材ブロックが互いに拘束を受けることがない。この場合、鋼材ブロックは各当接部材を全て同一寸法の間隔ずつ軸方向にオフセットさせた状態で仮組みされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現場では鋼材ブロックの各当接部材を当接させるだけでブロック端面のメタルタッチと同等の突き合わせ状態を形成することができるので、従来のように鋼材ブロックの突き合わせ端面全体をメタルタッチ仕上げにするための機械切削を必要とせず、大断面を切削するための大型の切削機を備えていない工場においても鋼材ブロックを容易に製作することが可能となる。また、各鋼材ブロックが互いに拘束を受けない無応力状態で形状検査を行うことができるので、検査精度を高めることができる。この場合、鋼材ブロックは各当接部材を全て同一寸法の間隔ずつ軸方向にオフセットさせた状態で仮組みされるので、当接部材同士を直接当接させた場合と実質的に同等の仮組状態で鉛直度の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示す鋼材ブロックの斜視図
図2】当接部材の側面図
図3】鋼材ブロックの支持状態を示す概略斜視図
図4】鋼材ブロックの支持状態を示す概略平面図
図5】鋼材ブロックの支持状態を示す概略側面図
図6】鋼材ブロックの芯出し工程を示す概略斜視図
図7】鋼材ブロックの芯出し工程を示す概略側面図
図8】鋼材ブロックの仮組状態を示す概略側面図
図9】鋼材ブロックの積み重ね工程を示す概略斜視図
図10】鋼材ブロックの接合工程を示す要部側面図
図11】鋼材ブロックの接合工程を示す要部側面図
図12】鋼材ブロックの接合工程を示す要部側面図
図13】鋼材ブロックの接合工程を示す要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図13は本発明の一実施形態を示すもので、例えば吊り橋や斜張橋等の長大橋の主塔として用いられる鋼製の柱状構造物の製造方法を示すものである。
【0015】
同図に示す鋼材ブロック10は、箱状に形成された鋼板からなり、軸方向の両端を開口した直方体状に形成されている。柱状構造物としての主塔は、複数の鋼材ブロック10を現場で上下方向に積み上げて連結することにより柱状に形成される。本実施形態では、鋼材ブロック10同士を現場溶接継手によって連結するため、各鋼材ブロック10の端面には突き合わせ溶接用の開先10aが形成されている。尚、通常は主塔の内面に複数の縦リブが設けられるが、本実施形態では図示の簡略化のため、縦リブを省略した単純な直方体状の鋼材ブロック10を示す。
【0016】
また、各鋼材ブロック10の端面近傍には複数の当接部材20が取り付けられ、鋼材ブロック10同士を現場で溶接する際、各鋼材ブロック10の当接部材20が互いに当接するようになっている。
【0017】
当接部材20は、鋼材ブロック10の軸方向に長い直方体状の鋼材からなり、鋼材ブロック10の外面に取り付けられる。当接部材20は、先端面20a(長手方向一方の面)が他の当接部材20との当接面をなし、長手方向に直交する方向の一つの側面20bを鋼材ブロック10の外面に接触させている。鋼材ブロック10の外面には当接部材20を取り付けるための取付部材21が固定されており、当接部材20は取付部材21に鋼材ブロック10の軸方向に移動可能に取り付けられる。取付部材21は、当接部材20の前記側面20bの反対側の他の側面20cに対向する第1の取付部21aと、当接部材20の背面20d(先端面20aの反対側の面)に対向する第2の取付部21bとからなり、第1の取付部21aには、当接部材20の側面20cに当接する複数の第1のボルト22が互いに鋼材ブロック10の軸方向に間隔をおいて第1の取付部21aを貫通するように螺合している。第2の取付部21bには、当接部材20の背面20dに当接する第2のボルト23が第2の取付部21bを貫通するように螺合している。また、当接部材20の背面20dには第2の取付部21bを移動自在に貫通する第3のボルト24が設けられ、第3のボルト24にはナット25が第2の取付部21bの外側の面に当接するように螺合している。
【0018】
当接部材20の取り付けに際しては、まず、第2のボルト23及びナット25によって当接部材20の位置を調整する。その際、第2のボルト23を回動して当接部材20の背面20dを押圧することにより、図2の実線矢印で示すように当接部材20が鋼材ブロック10の軸方向一方に移動する。また、第3のボルト24に螺合するナット25を第2の取付部21bの外側の面に当接させながら回動することにより、図2の破線矢印で示すように当接部材20が鋼材ブロック10の軸方向他方に移動する。当接部材20の位置を調整した後は、各第1のボルト22を当接部材20の側面20cに押し当てるように締め付けることにより、当接部材20が鋼材ブロック10に固定される。
【0019】
前記鋼材ブロック10は工場で製作され、工場内で形状検査が行われる。以下、図5乃至図8を参照し、鋼材ブロック10の検査工程について説明する。
【0020】
まず、図5に示すように、複数の鋼材ブロック10を横向きにして互いに端面同士が対向するように配置し、それぞれ複数の高さ調整手段としての油圧ジャッキ30により支持する。その際、各鋼材ブロック10の端面同士が所定の間隔S1 を介して対向するように各鋼材ブロック10を軸方向に並べて配置する。
【0021】
また、油圧ジャッキ30は、鋼材ブロック10の横向き状態で下側となる面の前後左右4箇所に配置され、各油圧ジャッキ10によって各鋼材ブロック10を4点ずつ支持する。この場合、各油圧ジャッキ30には油圧管路31が接続されるとともに、4点支持する油圧ジャッキ30のうち、鋼材ブロック10の軸方向に直交する方向に隣り合う2つの油圧ジャッキ30を互いに油圧管路31が連通するように接続して1つの支持点とすることにより、他の2つの油圧ジャッキ30の支持点とともに3つの支持点による支持状態を形成する。即ち、互いに油圧管路31が連通するように接続された2つの油圧ジャッキ30では、鋼材ブロック10の荷重配分に応じて2つの油圧ジャッキ30間を作動油が油圧管路31を介して流動する。これにより、各支持点の不均等な反力による鋼材ブロック10の捩れを生ずることがなく、理想的な無応力状態が容易に形成される。
【0022】
次に、前述のように無応力状態で支持された鋼材ブロック10の芯出しを行う。この場合、図6に示すように、各鋼材ブロック10の端面における各辺の中点Mを求め、互いに向かい合う辺の中点Mを通る直線Lの交わる点Pが各鋼材ブロック10で同一直線上(軸芯A上)に位置するように各鋼材ブロック10の姿勢を各油圧ジャッキ30で調整することにより、各鋼材ブロック10の芯出しを行う。
【0023】
続いて、図7に示すように、前述の芯出し状態のまま各当接部材20の位置を設定する。この場合、まず互いに隣り合う鋼材ブロック10のうち一方(例えば、架設時に上側となる鋼材ブロック10)の各当接部材20をそれぞれ先端面20aが鋼材ブロック10の軸芯Aに垂直な同一平面B上に位置するように当接部材20の位置を設定する。その際、トランシット等の測量機器40を用いて軸芯Aに垂直な平面Bの位置を測定し、前述したように取付部材21の各ボルト22,23,24及びナット25によって当接部材20を鋼材ブロック10の軸方向に移動及び固定することにより、鋼材ブロック10の同一端面における4つの当接部材20の先端面20aがそれぞれ平面B上に位置するように調整する。
【0024】
次に、図8に示すように、互いに隣り合う鋼材ブロック10のうち他方(例えば、架設時に下側となる鋼材ブロック10)の各当接部材20の先端面20aと前記一方の鋼材ブロック10の各当接部材20の先端面20aとの間に所定寸法S2 の間隔保持部材50を介在させ、互いに隣り合う鋼材ブロック10の当接部材20の先端面20a同士が間隔S2 をおいて位置するように、一方の鋼材ブロック10の各当接部材20の先端面20aを基準として他方の鋼材ブロック10の各当接部材20の位置を調整する。
【0025】
この後、各鋼材ブロック10の当接部材20間にそれぞれ間隔保持部材50を介在させたまま各鋼材ブロック10同士を軸方向にオフセットさせた状態で仮組みする。各間隔保持部材50は、それぞれ鋼材ブロック10の軸方向に同一の長さ寸法S2 を有しており、これにより互いに対向する当接部材20同士が間隔保持部材50を介して全て同一の間隔S2 に保持される。また、当接部材20同士の間隔S2 は各鋼材ブロック10の端面同士の間隔S1 よりも大きい寸法に設定される。例えば、溶接開始時のルートギャップを標準的な寸法(例えば6mmとし、各鋼材ブロック10の端面同士の間隔S1 (例えば100mmオフセットするとして106mm)、更に当接部材20間に間隔保持部材50(例えば110mm)を介在させた仮組状態の各鋼材ブロック10に対して一括形状検査を行う。
【0026】
形状検査では、仮組みされた各鋼材ブロック10の鉛直度の確認等の検査が行われる。その際、各鋼材ブロック10は間隔保持部材50によって間隔を保持された状態で仮組みされているので、互いに拘束力を受けることのない無応力状態のまま形状検査が行われる。また、取付部材21により鋼材ブロック10に位置決めされた当接部材20は鋼材ブロック10に直接溶接され、取付部材21は鋼材ブロック10から除去される。
【0027】
工場における鋼材ブロック10の形状検査が終了した後は、各鋼材ブロック10を現場に搬入し、図9に示すように鋼材ブロック10を積み重ねて鋼材ブロック10同士を現場溶接継手により接合する。その際、図10及び図11に示すように上下の鋼材ブロック10の当接部材20の間に所定厚さtの間隔調整板60を複数枚重ねた間隔調整板群61を介在させて当接部材20を当接させることにより、鋼材ブロック10同士が互いに位置決めされる。例えば、各鋼材ブロック10の端面同士の間隔S1 と仮組時に当接部材20の設置に用いた間隔保持部材50との寸法差が10mmであった場合、間隔調整板60の厚さtを1mmとし、これを10枚重ねて厚さ10mmとした間隔調整板群61を用いると、間隔調整板群61による上下の当接部材20の間には10mmの間隔S3 が保持(仮組時が再現)される。これにより、各鋼材ブロック10の端面間に6mmのルートギャップRが形成される。尚、前記各寸法は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、既に溶接された下方の鋼材ブロック10の前後左右4辺の接収縮差などにより、上方に積み重ねられる鋼材ブロック10の軸芯の傾きを調整する必要が生じた場合には、鋼材ブロック10の前後左右の一部の当接部材20間の間隔調整板60を抜き差して増減することにより、間隔S3 の大きさを変えて鋼材ブロック10の鉛直度を調整する。その際、図11に示すように、鋼材ブロック10の軸芯Aを中心に図中左右の当接部材20間の間隔S3 をそれぞれ増減させることにより鋼材ブロック10の傾き(図中破線)を調整する。この場合、軸芯AにおけるルートギャップRの間隔S4 を6mm、最小限のルートギャップRの間隔をS5 (例えば4mm)とすると、間隔S3 をそれぞれ±3mmずつ調整した場合、間隔S3 を減じた方の端部側のルートギャップRの間隔がS5 よりも部分的に小さくなる場合には、傾けるだけでなく左右両方に一律に間隔調整板60を追加することにより、最小限のルートギャップRの間隔S5 が確保される。
【0029】
この後、図12に示すように各鋼材ブロック10の開先10aを溶接することにより、各鋼材ブロック10同士を溶接部Wによって接合する。その際、まず各鋼材ブロック10の二辺(当接部材20が取り付けられていない面側の二辺)を溶接した後、図13に示すように鋼材ブロック10から当接部材20を切除し、残りの二辺(当接部材20が取り付けられていた面側の二辺)を溶接する。
【0030】
このように、本実施形態によれば、各鋼材ブロック10をそれぞれ軸芯Aが水平方向となるように横向きにして互いに端面同士が間隔をおいて対向するように複数の油圧ジャッキ30で支持して各鋼材ブロック10の芯出しを行うとともに、各鋼材ブロック10に複数の当接部材20をそれぞれ先端面20aが鋼材ブロック10の軸芯Aに垂直な同一平面B上に位置するように取り付け、鋼材ブロック10の当接部材20同士が上下方向に当接するように鋼材ブロック10を現場で積み重ねて鋼材ブロック10の端面同士を溶接するようにしたので、現場では鋼材ブロック10の各当接部材20のみを当接させるだけでブロック端面のメタルタッチと同等の突き合わせ状態を形成することができ、鋼材ブロック10を高精度に連結することができる。これにより、従来のように鋼材ブロックの端面全体をメタルタッチ仕上げにするための機械切削を必要とせず、大断面を切削するための大型の切削機を備えていない工場においても鋼材ブロック10を容易に製作することが可能となる。
【0031】
また、各鋼材ブロック10の当接部材20間に互いに軸方向に同一寸法の間隔保持部材50を介在させて各鋼材ブロック10を間隔S2 だけオフセットさせた状態で仮組みして形状検査を行うようにしたので、従来のように添接板によって鋼材ブロック同士を連結した仮組みとは異なり、各鋼材ブロック10が互いに拘束を受けない無応力状態で形状検査を行うことができ、検査精度を高めることができる。
【0032】
この場合、鋼材ブロック10は各当接部材20を全て同一寸法の間隔S2 ずつ軸方向にオフセットさせた状態で仮組みされるので、当接部材20同士を直接当接させた場合と実質的に同等の状態で鉛直度の検査を行うことができる。
【0033】
また、当接部材20を鋼材ブロック10の軸方向に移動可能に取り付けるとともに、各当接部材10の先端面20aが同一平面B上に位置するように当接部材20の位置を調整するようにしたので、当接部材20の位置決め作業を容易且つ正確に行うことができる。
【0034】
更に、各油圧ジャッキ30によって各鋼材ブロック10を4点ずつ支持するとともに、4点支持する油圧ジャッキ30のうち隣り合う2つの油圧ジャッキ30を互いに油圧管路31が連通するように接続して1つの支持点とすることにより、他の2つの油圧ジャッキ30の支持点とともに3つの支持点による支持状態を形成して芯出しを行うようにしたので、理想的な無応力状態を容易に形成することができる。即ち、鋼材ブロック10の捩れ等による応力の内在しない無応力状態で支持するためには、4点支持する油圧ジャッキ30をそれぞれ独立して油圧制御するようにした場合には、4つの油圧ジャッキ30の反力が均等になるように厳密且つ高精度な反力管理が必要となるが、本実施形態のように3点支持であれば、常に均等に反力が分散して釣り合い状態となり、3点による理想面を形成した上での反力管理を行うことができる。
【0035】
また、互いに対向する鋼材ブロック10の端面間の間隔S1 よりも当接部材20間の間隔S2 が大きくなるように当接部材20を鋼材ブロック10に取り付けるとともに、鋼材ブロック10を現場で積み重ねて鋼材ブロック10の当接部材20同士を当接させる際に、当接部材20間に所定厚さtの複数の間隔調整板60を重ねて介在させることにより上下の鋼材ブロック10の端面間に所定の間隔(ルートギャップR)を形成し、当接部材20間の間隔調整板60を増減することにより鋼材ブロック10の鉛直度を調整するようにしたので、例えば鋼材ブロック10の溶接収縮差などにより鉛直度を調整する必要が生じた場合でも、鋼材ブロック10の鉛直度を現場で容易に調整することができ、鉛直度の精度を高めることができる。
【0036】
尚、前記実施形態では、鋼材ブロック10の端面同士を溶接するようにしたものを示したが、各鋼材ブロック10を添接板と高力ボルトで接合するようにしてもよい。
【0037】
また、前記実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0038】
10…鋼材ブロック、20…当接部材、20a…先端面、21…取付部材、30…油圧ジャッキ、31…油圧管路、50…間隔保持部材、60…間隔調整板、A…軸芯、B…平面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13