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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】バンプストッパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/58 20060101AFI20240815BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240815BHJP
   B60G 13/06 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F16F9/58 B
F16F7/00 F
B60G13/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021116091
(22)【出願日】2021-07-14
(65)【公開番号】P2023012589
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 洋
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小川 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩志
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521290(JP,A)
【文献】国際公開第2007/087926(WO,A1)
【文献】特開2014-190354(JP,A)
【文献】実開昭62-011006(JP,U)
【文献】実開平02-107850(JP,U)
【文献】特開2005-282735(JP,A)
【文献】特開2008-128479(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009157(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/58
F16F 7/00
B60G 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブゾーバーに装着されるバンプストッパであって、
前記ショックアブゾーバーに装着される方向を軸方向とし、前記軸方向が上下方向であって一方の側を上側とし、他方の側を下側とし、
弾性体によって略円筒状に形成され、内部に前記軸方向に沿って貫通する軸穴が形成されるストッパ本体と、
前記ストッパ本体の外周面に形成される、少なくとも一つの溝と、
前記ストッパ本体に装着されるリングを備え、
前記溝のうちの少なくとも一つは、前記リングが装着される装着溝であり、
前記装着溝は、下側及び上側のうちの少なくとも一方に、該装着溝を通り前記軸方向に直交する仮想面との間に、鋭角の溝角度をなして形成される溝傾斜面を備え、
前記装着溝に前記リングが装着されると、
前記リングは前記装着溝に接触し、さらに該リングが該装着溝と接触する位置よりも外周側において、前記リングと前記溝傾斜面との間に隙間が形成されるバンプストッパ。
【請求項2】
前記隙間は、前記リングにおける前記軸方向の両側に形成される請求項1に記載のバンプストッパ。
【請求項3】
前記隙間は、前記軸方向における下側隙間が、上側隙間以上の大きさである請求項2に記載のバンプストッパ。
【請求項4】
前記リングは、前記装着溝に装着される状態において、前記溝傾斜面に対向し前記仮想面との間に0度を含む鋭角のリング角度をなして形成されるリング傾斜面を備え、
前記隙間は、前記リング傾斜面と前記溝傾斜面とがなす角度である隙間角度によって形成される請求項1又は2に記載のバンプストッパ。
【請求項5】
前記装着溝は、下側に前記溝傾斜面のうちの下側溝傾斜面を備え、上側に前記溝傾斜面のうちの上側溝傾斜面を備え、
前記リングは環状の部材であり、前記リング傾斜面のうち、前記下側溝傾斜面に対向するように傾斜して形成される下側リング傾斜面と、前記上側溝傾斜面に対向するように傾斜して形成される上側リング傾斜面を備え、
前記隙間のうち、前記軸方向における下側隙間は、前記下側溝傾斜面と前記下側リング傾斜面とのなす角度である下側隙間角度によって形成され、
前記隙間のうち、前記軸方向における上側隙間は、前記上側溝傾斜面と前記上側リング傾斜面とのなす角度である上側隙間角度によって形成される請求項4に記載のバンプストッパ。
【請求項6】
前記軸方向に直交する方向における前記軸穴に最も近い位置において、
前記下側隙間角度は、0度を超えて26度以下であり、
前記上側隙間角度は、0度以上であってかつ26度以下である請求項5に記載のバンプストッパ。
【請求項7】
前記リング傾斜面は、前記リング角度が一定の角度になるよう形成される請求項4から6のいずれかに記載のバンプストッパ。
【請求項8】
前記リング傾斜面は、前記リング角度が前記ストッパ本体における前記軸穴の側から外周の側に向かう間のリング変曲点において変化し、
前記リング変曲点よりも外周の側において前記リング角度が減少するよう形成される請求項4から6のいずれかに記載のバンプストッパ。
【請求項9】
前記リング傾斜面は、前記リング角度が前記ストッパ本体における前記軸穴の側から外周の側に向かうに従って減少する請求項4から6のいずれかに記載のバンプストッパ。
【請求項10】
前記溝傾斜面は、前記溝角度が一定の角度になるよう形成される請求項1から9のいずれかに記載のバンプストッパ。
【請求項11】
前記溝傾斜面は、前記溝角度が前記軸穴の側から外周の側に向かう間の溝変曲点において変化し、
前記溝変曲点よりも外周の側において前記溝角度が増加するよう形成される請求項1から9のいずれかに記載のバンプストッパ。
【請求項12】
前記溝傾斜面は、前記溝角度が前記ストッパ本体における前記軸穴の側から外周の側に向かうに従って増加する請求項1から9のいずれかに記載のバンプストッパ。
【請求項13】
複数の前記溝を備え、
前記装着溝は、前記溝のうち、前記ストッパ本体の外周面の最大外径に最も隣接する位置であって且つ下側にある請求項1から12のいずれかに記載のバンプストッパ。
【請求項14】
前記ストッパ本体は、外周面において前記溝を挟んで複数の突出部が形成され、前記装着溝よりも下側は、下側端部に向かうに従って前記突出部の外径が小さくなるよう形成される請求項13に記載のバンプストッパ。
【請求項15】
前記リングが前記ストッパ本体に装着される状態において、
前記リングの外径は、前記ストッパ本体の外周面の最大外径より大きい請求項1から14のいずれかに記載のバンプストッパ。
【請求項16】
前記軸穴は、前記軸方向における下側端部の内径が上側端部の内径よりも大きく形成される請求項1から15のいずれかに記載のバンプストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショックアブゾーバーに装着されるバンプストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のサスペンションを構成するショックアブゾーバーに装着して使用するバンプストッパが提案されている。例えば、特許文献1に記載のバウンドストッパは、ストッパ本体における嵌合溝の形成部位から軸方向に向かって蛇腹状に延び出す伸縮変形部が設けられている。軸方向の圧縮変形に際して伸縮変形部が拘束リングの軸方向端面に当接せしめられるようになっていると共に、拘束リングの軸方向端面が嵌合溝から突出して伸縮変形部の延び出し方向に向かって軸方向に傾斜した傾斜当接面とされている。傾斜当接面において、軸方向の圧縮変形に際して拘束リングに軸方向で一番近い近位の蛇腹状山部の当接位置よりも外周側の位置に、拘束リングに軸方向でより遠い遠位の蛇腹状山部が当接せしめられるようになっている。
【0003】
これによれば、バウンドストッパでは、軸方向圧縮変形に際しての近位の蛇腹状山部の外周側への弾性変形が、拘束リングに当接された遠位の蛇腹状山部と拘束リングの傾斜当接面への当接反力によって抑えられる。それ故、従来構造では拘束リングの組み付けによってストッパ本体における応力や歪が集中的に発生し易い嵌合溝において、本発明のバウンドストッパでは過大な変形や応力集中に起因する亀裂の発生が防止されて優れた耐久性を得ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-190354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1を例とする従来技術は、軸方向への圧縮が始まる初期状態において圧縮荷重が急激に上昇し、低荷重から徐々に荷重を上昇させることができないという課題があった。その結果、車両のサスペンションを構成するショックアブゾーバーに装着して使用するとき、車体のクッション性が妨げられる場合があった。
【0006】
本発明の目的は、従来の課題を解決すべくなされたものであり、圧縮が始まる初期状態において、圧縮荷重が徐々に上昇するバンプストッパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係るバンプストッパは、ショックアブゾーバーに装着されるバンプストッパであって、前記ショックアブゾーバーに装着される方向を軸方向とし、前記軸方向が上下方向であって一方の側を上側とし、他方の側を下側とし、弾性体によって略円筒状に形成され、内部に前記軸方向に沿って貫通する軸穴が形成されるストッパ本体と、前記ストッパ本体の外周面に形成される、少なくとも一つの溝と、前記ストッパ本体に装着されるリングを備え、前記溝のうちの少なくとも一つは、前記リングが装着される装着溝であり、前記装着溝は、下側及び上側のうちの少なくとも一方に、該装着溝を通り前記軸方向に直交する仮想面との間に、鋭角の溝角度をなして形成される溝傾斜面を備え、前記装着溝に前記リングが装着される状態において、前記リングと前記溝傾斜面との間に隙間が形成される。
【0008】
これによれば、バンプストッパの装着溝は、下側及び上側のうちの少なくとも一方に、軸方向に直交する方向の仮想面との間に、鋭角の溝角度をなして形成される溝傾斜面を備え、装着溝にリングが装着される状態において、リングと溝傾斜面との間に隙間が形成される。よって、バンプストッパは、軸方向に圧縮されるとき、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において、反発力が急激に上昇することを防止できる。
【0009】
また、前記バンプストッパは、前記隙間が前記リングにおける前記軸方向の両側に形成されてもよい。この場合、バンプストッパが軸方向の上側又は下側からのどちらか一方から、或いは上側及び下側からの双方向から圧縮されるときのいずれの場合でも、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において、反発力が急激に上昇することを防止できる。
【0010】
また、前記バンプストッパの前記隙間は、前記軸方向における下側隙間が、上側隙間以上の大きさでもよい。この場合、特にバンプストッパが軸方向の下側から圧縮されるとき、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において、反発力が急激に上昇することを防止できる。
【0011】
また、前記バンプストッパの前記リングは、前記装着溝に装着される状態において、前記溝傾斜面に対向し前記仮想面との間に0度を含む鋭角のリング角度をなして形成されるリング傾斜面を備え、前記隙間は、前記リング傾斜面と前記溝傾斜面とがなす角度である隙間角度によって形成されてもよい。
【0012】
この場合、隙間はリング傾斜面と溝傾斜面とのがなす角度である隙間角度によって形成される。これにより隙間は、軸方向に直交する方向において、軸穴の側から外周の側へ向かうに従って広がるよう形成される。よって、ストッパ本体が圧縮されるとき、リング傾斜面と溝傾斜面とは、軸穴の側から外周の側に向かって隙間が徐々に埋められて接触する。よって、ストッパ本体の弾性体が緩やかに圧縮される。
【0013】
また、前記バンプストッパは、前記装着溝が、下側に前記溝傾斜面のうちの下側溝傾斜面を備え、上側に前記溝傾斜面のうちの上側溝傾斜面を備え、前記リングは環状の部材であり、前記リング傾斜面のうち、前記下側溝傾斜面に対向するように傾斜して形成される下側リング傾斜面と、前記上側溝傾斜面に対向するように傾斜して形成される上側リング傾斜面を備え、前記下側隙間は、前記下側溝傾斜面と前記下側リング傾斜面とのなす角度である下側隙間角度によって形成され、前記上側隙間は、前記上側溝傾斜面と前記上側リング傾斜面とのなす角度である上側隙間角度によって形成されてもよい。
【0014】
この場合、バンプストッパの隙間は、下側隙間角度と上側隙間角度によって形成される。よって、ストッパ本体が圧縮されると、装着溝とリングとの互いの傾斜面同士が順次接触するので、反発力が急激に上昇することを防止できる。
【0015】
また、前記バンプストッパは、前記軸方向に直交する方向における前記軸穴に最も近い位置において、前記下側隙間角度は、0度を超えて26度以下であり、前記上側隙間角度は、0度以上であってかつ26度以下でもよい。
【0016】
この場合、バンプストッパは、軸方向に直交する方向における軸穴に最も近い位置において、下側隙間角度と上側隙間角度とが一定範囲の角度である。よって、バンプストッパが、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において反発力が急激に上昇することを防止し、さらに所定量の圧縮状態において反発力を所定範囲に高めることができる。
【0017】
また、前記バンプストッパの前記リング傾斜面は、前記リング角度が一定の角度になるよう形成されてもよい。この場合、ストッパ本体が圧縮されてリング傾斜面と溝傾斜面とが接触するときに、軸穴の側から外周の側に向かって圧縮状態を一定にすることができる。
【0018】
また、前記バンプストッパの前記リング角度は、前記ストッパ本体における前記軸穴の側から外周の側に向かう間のリング変曲点において変化し、前記リング変曲点
よりも外周の側において前記リング角度が減少するよう形成されてもよい。
【0019】
この場合、リング角度がリング変曲点において変化し、リング変曲点よりも外周の側においてリング角度が減少する。ストッパ本体が圧縮されてリング傾斜面と溝傾斜面とが接触するときに、リング変曲点よりも外周の側においてさらに隙間角度が大きくなる。よって、反発力の上昇を段階的に緩やかにできる。
【0020】
また、前記バンプストッパの前記リング角度は、前記ストッパ本体における前記軸穴の側から外周の側に向かうに従って減少してもよい。この場合、外周の側に向かうに従ってリング角度が減少するので、ストッパ本体が圧縮される過程において長期にわたって隙間を維持できる。
【0021】
また、前記バンプストッパの前記溝傾斜面は、前記溝角度が一定の角度になるよう形成されてもよい。この場合、ストッパ本体が圧縮されてリング傾斜面と溝傾斜面とが接触するときに、軸穴の側から外周の側に向かって圧縮状態を一定にすることができる。
【0022】
また、前記バンプストッパの前記溝角度は、前記軸穴の側から外周の側に向かう間の溝変曲点において変化し、前記溝変曲点よりも外周の側において前記溝角度が増加するよう形成されてもよい。
【0023】
この場合、溝傾斜面は溝角度が溝変曲点において変化し、溝変曲点よりも外周の側において溝角度が増加する。ストッパ本体が圧縮されてリング傾斜面と溝傾斜面とが接触するときに、溝変曲点よりも外周の側においてさらに隙間角度が大きくなる。よって、反発力の上昇を段階的に緩やかにできる。
【0024】
また、前記バンプストッパの前記溝角度は、前記ストッパ本体における前記軸穴の側から外周の側に向かうに従って増加してもよい。この場合、ストッパ本体が圧縮される過程において長期にわたって隙間を維持できる。
【0025】
また、前記バンプストッパは複数の前記溝を備え、前記装着溝は、前記溝のうち、前記ストッパ本体の外周面の最大外径に最も隣接する位置であって且つ下側にあってもよい。
【0026】
この場合、装着溝は、溝のうちストッパ本体の外周面の最大外径に最も隣接する位置であって下側にあるので、リングはバンプストッパが所定量圧縮する状態において反発力を所定範囲に高めることができる。また、特にバンプストッパが軸方向の下側から圧縮されるとき、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において反発力が急激に上昇することを防止できるので二つの効果を併せ持つ。
【0027】
また、前記バンプストッパの前記ストッパ本体は、外周面において前記溝を挟んで複数の突出部が形成され、前記装着溝よりも下側は、下側端部に向かうに従って前記突出部の外径が小さくなるよう形成されてもよい。
【0028】
この場合、ストッパ本体は、軸方向の下側から圧縮されるとき、弾性体の圧縮量が段階的に多くなるので、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階における反発力を一定の範囲に抑えることができる。さらに、圧縮量が増加するにつれて弾性体の圧縮体積が増加するので、所定量の圧縮状態において反発力を所定範囲に高めることができる。
【0029】
また、前記バンプストッパは、前記リングが前記ストッパ本体に装着される状態において、前記リングの外径は、前記ストッパ本体の外周面の最大外径より大きくてもよい。
【0030】
この場合、リングの外径はストッパ本体の外周面の最大外径より大きいので、ストッパ本体が圧縮されるときに弾性体の圧縮量を一定程度に抑え、バンプストッパが所定量圧縮されるときの反発力を所定範囲に高めることができる。
【0031】
また、前記バンプストッパの前記軸穴は、前記軸方向における下側端部の内径が上側端部の内径よりも大きく形成されてもよい。
【0032】
この場合、軸穴は軸方向における下側端部の内径が上側端部の内径よりも大きく形成されるので、バンプストッパがショックアブゾーバーのシャフトに装着される状態で、下側端部の内径部とシャフトとの間に隙間がある。よって、バンプストッパが軸方向の下側から圧縮されるとき、ストッパ本体とシャフトとの接触を少なくすることができ、ストッパ本体とシャフトの摩擦による音鳴きを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明のバンプストッパ1を示した断面図であり、ショックアブゾーバーに装着された状態を示す。
図2】本発明のバンプストッパ1のストッパ本体2を示した断面図である。
図3図1のA部詳細図であって、溝傾斜面5が上下方向の両側に備えられ、リング傾斜面14が上下方向の両側に備えられる場合であり、(a)は下側のみに隙間6が形成される場合を示し、(b)は上下方向の両側に隙間6が形成される場合を示す。
図4図1のA部詳細図であって、溝傾斜面5と、溝傾斜面5に不連続的に繋がって形成される溝傾斜面15が上下方向の両側に備えられ、リング傾斜面14が上下方向の両側に備えられる場合であり、(a)は下側のみに隙間6が形成され、さらに上下方向の両側に隙間16が形成される場合を示し、(b)は上下方向の両側に隙間6及び隙間16が形成される場合を示す。
図5図1のA部詳細図であって、溝傾斜面5と、溝傾斜面5に連続的に繋がって形成される溝傾斜面15が上下方向の両側に備えられ、リング傾斜面14が上下方向の両側に備えられる場合であり、(a)は下側のみに隙間6が形成され、さらに上下方向の両側に隙間16が形成される場合を示し、(b)は上下方向の両側に隙間6及び隙間16が形成される場合を示す。
図6図1のA部詳細図であって、溝傾斜面5が上下方向の両側に備えられ、リング傾斜面14と、リング傾斜面14に不連続的に繋がるリング傾斜面24が上下方向の両側に備えられる場合であって、(a)は下側に隙間6と上下方向の両側に隙間16が形成される場合を示し、(b)は上下方向の両側に隙間6と隙間16が形成される場合を示す。
図7図1のA部詳細図であって、溝傾斜面5が上下方向の両側に備えられ、リング傾斜面14と、リング傾斜面14に連続的に繋がるリング傾斜面24が上下方向の両側に備えられる場合であって、(a)は下側に隙間6と上下方向の両側に隙間16が形成される場合を示し、(b)は上下方向の両側に隙間6と隙間16が形成される場合を示す。
図8図1のA部詳細図であって、溝傾斜面5が上下方向の両側に備えられ、リング角度8又は溝角度7が変化する場合を示し、(a)は軸穴2aの側から外周の側へ向かうに従って、リング角度8が減少する場合を示し、(b)は軸穴2aの側から外周の側へ向かうに従って、溝角度7が増加する場合を示す。
図9】本発明との比較例である、バンプストッパ10のストッパ本体20の断面図である。
図10】本発明との比較例である、ストッパ本体20にリング4が装着された状態を示した断面図であり、図9のB部詳細図である。
図11】本発明のバンプストッパ1と比較例のバンプストッパ10において、圧縮量と発生する反発力の関係を示した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照し、本発明を具現化したバンプストッパ1を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載された構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0035】
<バンプストッパ1の概要とその効果の説明>
図1から図7までを参照して、本発明の態様に係るバンプストッパ1の構成を説明し、その効果を説明する。図1に示す例は、バンプストッパ1がショックアブゾーバー50のシャフト51に装着された状態を示す。まず、図1等の構成として、バンプストッパ1がショックアブゾーバー50に装着される方向を軸方向とし、軸方向が上下方向であって一方の側を上側とし、他方の側を下側とする。
【0036】
バンプストッパ1は、弾性体によって略円筒状に形成され、内部に軸方向に沿って貫通する軸穴2aが形成されるストッパ本体2と、ストッパ本体2の外周面に形成される、少なくとも一つの溝3と、ストッパ本体2に装着されるリング4を備える。軸穴2aには、ショックアブゾーバー50のシャフト51が挿入される。溝3のうちの少なくとも一つは、リング4が装着される装着溝30である。
【0037】
図3等に示すように、装着溝30は、下側及び上側のうちの少なくとも一方に、装着溝30を通り軸方向に直交する仮想面Sとの間に鋭角の溝角度7(17)をなして形成される溝傾斜面5を備える。図3等に示すように、装着溝30にリング4が装着される状態において、リング4と溝傾斜面5との間に隙間6が形成される。ストッパ本体2の弾性体の材質は、例としてウレタン、その他弾性特性を示す材料が使用される。リング4の材質は、例としてポリアセタール樹脂(POM)、ナイロン、その他の樹脂が使用される。
【0038】
隙間6は、ストッパ本体2とリング4との間に生じる空いた部分のうち、軸方向に形成される部分を示す。詳細は後述するが、具体的には下側溝傾斜面5a(15a)と下側リング傾斜面14a(24a)との間、及び上側溝傾斜面5bと上側リング傾斜面14b(24b)との間に形成される部分を示す。なお、図1から図7までに示す例では、装着溝30は下側及び上側の双方に溝傾斜面5(15)が形成されるが、例えば溝傾斜面5等は下側溝傾斜面5a等のみが形成されてもよいし、上側溝傾斜面5b等のみが形成されてもよい。また、溝傾斜面5等は一様に形成される面に限定されるものではなく、表面に凹凸があって凸部をつなぐと面が形成されるものでもよい。
【0039】
図1及び図2を参照して、ストッパ本体2の構成をさらに詳細に説明する。ストッパ本体2は、軸方向において、それぞれの溝3の間は軸方向に直交する方向に突出部2d等を形成して凹凸が形成されている。突出部2dから2fまでは、軸方向における略中央部の突出部2dの外径(D1)が最も大きく、略中央部から下側に向かうに従って外径が小さくなっている。溝3は、軸方向の略中央部に対して、下側と上側にそれぞれ二箇所ずつ形成されている。ストッパ本体2の上側端部周辺には、軸穴2aの内部に発生するガスを抜くためのガス抜き溝12が形成されている。軸穴2aは、一様の円筒穴ではなく、外周面が突出する部分に対応して凹み2gが形成されている。下側端部2bの内径D2と上側端部2cにおける内径D3については後述する。
【0040】
図1に示すように、ショックアブゾーバー50におけるシャフト51の下側は、シリンダー52である。バンプストッパ1の周りは、アコーディオン状に軸方向に沿って伸縮するダストブーツ22によって覆われている。バンプストッパ1は、ショックアブゾーバー50のシリンダー52から圧縮方向の作用を受ける。図1に示す例では、軸方向の下側から圧力を受ける。
【0041】
以上説明した構成により、バンプストッパ1は以下の効果を奏する。バンプストッパ1の装着溝30は、下側及び上側のうちの少なくとも一方に、軸方向に直交する方向の仮想面Sとの間に鋭角の溝角度7(17)をなして形成される溝傾斜面5を備える。リング4が装着溝30に装着される状態において、リング4と溝傾斜面5との間に隙間6が形成される。よって、バンプストッパ1は、軸方向に圧縮されるとき、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において、反発力が急激に上昇することを防止できる。
【0042】
リング4は、ストッパ本体2が軸方向に圧縮されるとき、部分的に圧縮を阻止して反発力を高める効果がある。バンプストッパ1は、仮にリング4がストッパ本体2に装着されない場合、所定量圧縮されても必要な反発力が発生しない。すなわち、リング4を装着する目的は、バンプストッパ1の反発力を高めることにある。よって、仮に隙間6が形成されない場合、リング4の周辺における弾性体が急激に圧縮されて反発力が発生する。これは、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において生じるので、反発力が急激に上昇する。隙間6は、この課題を解消するものである。
【0043】
次に、図3等を参照して、隙間6について説明する。隙間6は、少なくともリング4における軸方向の片側に形成される。図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)、及び図7(a)は、隙間6がリング4に対して軸方向の下側のみに形成される例を示す。なお、図4(a)から図7(a)までについては、後述するように溝変曲点P又はリング変曲点Qから外周の側には、軸方向の上側にも隙間6が形成される。なお、図示しないが、隙間6がリング4に対して軸方向の上側のみに形成されてもよい。また、以下図3から図8までにおいて、同様の機能を有する要素は同様の符号を付すか或いは省略し、説明を省略する場合がある。
【0044】
以上説明した構成により、隙間6は、少なくともリング4における軸方向の片側に形成されるので、特にバンプストッパ1は、隙間6が形成される軸方向の一方の側から圧縮されるとき、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において、反発力が急激に上昇することを防止できる。図1に示す例のように、ショックアブゾーバー50のシリンダー52が軸方向の下側の場合、下側からの圧縮に対して下側に隙間6が形成されるとより効果がある。
【0045】
また、図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)、及び図7(b)に示すように、隙間6は、リング4における軸方向の両側に形成されてもよい。この場合、隙間6は、軸方向における下側隙間6aが、上側隙間6b以上の大きさでもよい。
【0046】
この構成により、バンプストッパ1が軸方向の上側又は下側からのどちらか一方から、或いは上側及び下側からの双方向から圧縮されるときのいずれの場合でも、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において、反発力が急激に上昇することを防止できる。
【0047】
また、軸方向における下側隙間6aは上側隙間6b以上の大きさの場合、特にバンプストッパ1が軸方向の下側から圧縮されるとき、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において、反発力が急激に上昇することを防止できる。下側隙間6aによる効果はすでに説明したとおりである。
【0048】
<装着溝30とリング4による隙間6の詳細な説明>
次に、装着溝30とリング4との関係による隙間6を詳細に説明する。図3から図7までに示すように、リング4は、装着溝30に装着される状態において溝傾斜面5に対向し、仮想面Sとの間に0度を含む鋭角のリング角度8(18)をなして形成されるリング傾斜面14(24)を備える。隙間6は、リング傾斜面14等と溝傾斜面5等とがなす角度である隙間角度によって形成される。図3等に示すように、隙間6は隙間角度によって形成されるので、軸方向に直交する方向において、軸穴2aの側から外周の側へ向かって徐々に広がる。なお、リング傾斜面14等は一様に形成される面に限定されるものではなく、表面に凹凸があって凸部をつなぐと面が形成されるものでもよい。
【0049】
以上説明した構成により、以下の効果を奏する。図3から図7までに示すように、隙間6はリング傾斜面14と溝傾斜面5とがなす角度である隙間角度によって形成される。これにより隙間6は、軸方向に直交する方向において、軸穴2aの側から外周の側へ向かうに従って広がるよう形成される。よって、ストッパ本体2が圧縮されるとき、リング傾斜面14と溝傾斜面5とは、軸穴2aの側から外周の側に向かって隙間6が徐々に埋められて接触する。よって、ストッパ本体2の弾性体が緩やかに圧縮され、反発力がスムーズに変化する。
【0050】
さらに、図3から図7までを参照して詳細に説明すると、装着溝30は、下側に溝傾斜面5(15)のうちの下側溝傾斜面5a(15a)を備え、上側に溝傾斜面5(15)のうちの上側溝傾斜面5b(15b)を備える。リング4は環状の部材であり、装着溝30に装着される状態において、下側溝傾斜面5a(15a)に対向するように傾斜して形成される下側リング傾斜面4a(14a)と、上側溝傾斜面5b(15b)に対向するように傾斜して形成される上側リング傾斜面4b(14b)を備える。
【0051】
下側隙間6a(16a)は、下側溝傾斜面5a(15a)と下側リング傾斜面14a(24a)とのなす角度である下側隙間角度によって形成される。上側隙間6b(16b)は、上側溝傾斜面5b(15b)と上側リング傾斜面14b(24b)とのなす角度である上側隙間角度によって形成される。
【0052】
以上、図3から図7までを参照して説明したように、バンプストッパ1の隙間6は、下側隙間6aに相当する下側隙間角度と、上側隙間6bに相当する上側隙間角度によって形成される。よって、ストッパ本体2が圧縮されると、装着溝30とリング4との互いの傾斜面同士が順次接触するので、反発力が急激に上昇することを防止できる。
【0053】
次に、図3から図7までを参照して、下側隙間6aの下側隙間角度と上側隙間6bの上側隙間角度を説明する。下側隙間6aは、下側リング傾斜面4aと下側溝傾斜面5aとのなす角度である下側隙間角度が、0度を超えて26度以下である。上側隙間6bは、上側リング傾斜面4bと、上側溝傾斜面5bとのなす角度である上側隙間角度が0度以上であってかつ26度以下である。上述した、下側隙間6aが上側隙間6b以上の大きさの場合、それぞれの隙間6はここで示した角度の範囲内で大小関係が形成される。
【0054】
図3等に示すように、装着溝30は、下側溝傾斜面5aと上側溝傾斜面5bとは、円弧状に繋がっている。リング4の内径部は、装着溝30の円弧状の形状に合わせて、円弧状に形成される。
【0055】
以上説明した、バンプストッパ1の隙間角度の構成は、以下の効果を奏する。図3から図7までを参照して説明したように、バンプストッパ1は、軸方向に直交する方向における軸穴2aに最も近い位置において、下側隙間角度(6aに相当)と上側隙間角度(6bに相当)とが一定範囲の角度である。バンプストッパ1が、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において反発力が急激に上昇することを防止し、さらに所定量の圧縮状態において反発力を所定範囲に高めることができる。よって、バンプストッパ1が、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において反発力が急激に上昇することを防止し、さらに所定量の圧縮状態において反発力を所定範囲に高めることができる。また、下側隙間6aの下側隙間角度は、0度を超えて必ず隙間6が形成されることにより、ショックアブゾーバー50におけるシリンダー52等の軸方向下側からの圧縮に対応できる。
【0056】
例えば、軸方向に直交する方向における軸穴2aに最も近い位置において、隙間6を形成する角度が26度を超えた場合、ストッパ本体2の弾性体による圧縮量が不十分となり、所定量圧縮されても所定の反発力を得ることができず、必要な特性を満たさない。また、逆に下側隙間6a及び上側隙間6bが共にゼロの場合、圧縮開始からすぐに弾性体の圧縮が始まって反発力が上昇するため、一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において反発力が急激に上昇する。
【0057】
また、装着溝30は、下側溝傾斜面5aと上側溝傾斜面5bとは、円弧状に繋がっているので、バンプストッパ1が繰り返して圧縮及び伸張されても、亀裂が発生する等の損傷を防止できる。
【0058】
<リング傾斜面の各例における詳細説明とその効果>
次に、図3から図7までを参照して、リング傾斜面14等について各例における詳細な構成と効果を説明する。まず、図3から図5までに示す例のリング傾斜面14を説明する。リング傾斜面14は、リング角度8が一定の角度になるよう形成される。詳細には、下側リング傾斜面14aの下側リング角度8aと、上側リング傾斜面14bの上側リング角度8bはそれぞれ一定の角度に形成される。下側リング傾斜面14aと上側リング傾斜面14bは、軸穴2aの側から外周の側に向かって直線状に形成される。
【0059】
この場合、ストッパ本体2が圧縮されて、リング傾斜面14と、溝角度7が一定の範囲における溝傾斜面5とが接触するときに、軸穴2aの側から外周の側に向かって圧縮状態を一定にすることができる。なお、以下説明する図4から図7において、図3と同様の構成または機能を有する要素は同様の符号を付し、説明を省略することがある。
【0060】
次に、図6及び図7に示す例のリング傾斜面14(24)を説明する。リング傾斜面14(24)は、リング角度8(18)がストッパ本体2における軸穴2aの側から外周の側に向かう間のリング変曲点Qにおいて変化する。リング傾斜面24は、リング変曲点Qよりも外周の側においてリング角度18がリング角度8よりも減少するよう形成される。
【0061】
図6に示す例を説明すると、リング傾斜面14はリング変曲点Qにおいてリング傾斜面24に繋がり、リング角度8からリング角度18に不連続的に変化する。すなわち、リング角度8とリング角度18とはそれぞれ一定の角度であり、溝変曲点Pにおいて変化する。下側リング傾斜面14aはリング変曲点Qにて下側リング傾斜面24aに屈曲して繋がり、上側リング傾斜面14bはリング変曲点Qにて上側リング傾斜面24bに屈曲して繋がる。図6の例では、リング傾斜面24は仮想面Sと略平行に形成され、リング傾斜面14とリング傾斜面24はそれぞれ直線状に形成される。
【0062】
図7に示す例を説明すると、リング傾斜面14はリング変曲点Qにおいてリング傾斜面24に繋がり、リング角度8からリング角度18に連続的に変化する。すなわち、リング角度8は一定の角度であり、リング角度18はリング角度8の角度から漸減して所定の角度まで変化する。リング変曲点Qにおいて、リング角度8からリング角度18へ緩やかに変化する。リング傾斜面14は直線状に形成され、リング傾斜面24は曲線状に形成される。下側リング傾斜面14aはリング変曲点Qにて下側リング傾斜面24aになめらかに繋がり、上側リング傾斜面14bはリング変曲点Qにて上側リング傾斜面24bになめらかに繋がる。
【0063】
以上説明した、図6及び図7に示す例のリング傾斜面14等の構成は、以下の効果を奏する。リング角度8は、連続的に又は不連続的に変化するので、ストッパ本体2が圧縮されてリング傾斜面14(24)と溝傾斜面5(15)とが接触するときに、軸穴2aの側から外周の側に向かって圧縮状態を変化させることができる。
【0064】
図6に示す例の場合、リング変曲点Qにおいてリング角度8からリング角度18へ変化する。ストッパ本体2が圧縮されるに従って、隙間6はつぶされて溝傾斜面5等とリング傾斜面14等とが接触する。圧縮開始からリング変曲点Qまでの間は、リング角度8の角度に沿ってリング4が接触する。ストッパ本体2は、溝傾斜面5とリング傾斜面14との接触がリング変曲点Qの位置までに至ると、次にリング角度18による隙間16に対して溝傾斜面5とリング傾斜面24とが接触するように圧縮される。隙間16は、隙間6よりも大きいので、ストッパ本体2の弾性体による圧縮は段階的に行われ、急激に反発力が発生することを防止できる。
【0065】
図7に示す例の場合、リング変曲点Qにおいてリング角度8がリング角度18に変化するが、角度の変化が緩やかである。ストッパ本体2が圧縮される過程において、図6の例と同様に溝傾斜面5とリング傾斜面14との接触がリング変曲点Qの位置までに至った後に、さらにリング角度18による隙間16に対して溝傾斜面5とリング傾斜面24とが接触するように圧縮される。この場合、リング変曲点Qの前後において角度の急激な変化が無いので、ストッパ本体2の弾性体による反発力は急激に変化しない。また、リング角度18は曲線的に変化するので、より反発力がスムーズに変化する。
【0066】
次に、図8(a)に示す例のリング傾斜面14について説明する。この例の場合、リング傾斜面14は、リング角度8がストッパ本体2における軸穴2aの側から外周の側に向かうに従って減少する。リング傾斜面14である下側リング傾斜面14aと上側リング傾斜面14bは、曲線状に形成され、軸穴2aから外周の側に向かって、リング角度8である下側リング角度8aと上側リング角度8bは漸減しながら変化する。
【0067】
以上説明した、図8(a)に示す例のリング傾斜面14は、外周の側に向かうに従ってリング角度8が減少するので、ストッパ本体2が圧縮される過程において長期にわたって隙間6(6a、6b)を維持できる。
【0068】
<溝傾斜面の各例における詳細説明とその効果>
次に、溝傾斜面5等について、各例における詳細な構成と効果を説明する。まず、図3に示す例の溝傾斜面5を説明する。溝傾斜面5は、溝角度7が一定の角度になるよう形成される。溝傾斜面5である下側溝傾斜面5aの下側溝角度7aと上側溝傾斜面5bの上側溝角度7bは一定の角度に形成される。この場合、ストッパ本体2が圧縮されて、リング角度8が一定の範囲におけるリング傾斜面14と溝傾斜面5とが接触するときに、軸穴2aの側から外周の側に向かって圧縮状態を一定にすることができる。
【0069】
次に、図4及び図5に示す例の溝傾斜面5(15)を説明する。溝傾斜面5(15)は、溝角度7が軸穴2aの側から外周の側に向かう間の溝変曲点Pにおいて変化する。溝変曲点Pよりも外周の側において溝角度7が溝角度17に増加するよう形成される。
【0070】
図4に示す例を説明すると、溝傾斜面5は溝変曲点Pにおいて溝傾斜面15に繋がり、溝角度7から溝角度17に不連続的に変化する。すなわち、溝角度7と溝角度17とはそれぞれ一定の角度であり、溝変曲点Pにおいて変化する。下側溝傾斜面5aは溝変曲点Pにて下側溝傾斜面15aに屈曲して繋がり、上側溝傾斜面5bは溝変曲点Pにて上側溝傾斜面15bに屈曲して繋がる。溝傾斜面15のうち、下側は下側溝傾斜面15aであり上側は上側溝傾斜面15bである。
【0071】
図5に示す例を説明すると、溝傾斜面5は溝変曲点Pにおいて溝傾斜面15に繋がり、溝角度7から溝角度17に連続的に変化する。すなわち、溝角度7は一定の角度であり、溝角度17は溝角度7の角度から漸増して所定の角度まで変化する。溝傾斜面15は曲線状に形成される。溝変曲点Pにおいて、角度は緩やかに変化する。下側溝傾斜面5aは溝変曲点Pにて下側溝傾斜面15aになめらかに繋がり、上側溝傾斜面5bは溝変曲点Pにて上側溝傾斜面15bになめらかに繋がる。
【0072】
以上説明した、図4及び図5に示めす例の溝傾斜面5等の構成は、以下の効果を奏する。溝傾斜面5は、溝角度7が溝変曲点Pにおいて変化し、溝変曲点Pよりも外周の側において溝傾斜面15が形成されて溝角度17が増加する。よって、溝変曲点Pにおいて溝角度7から溝角度17へ変化するので、ストッパ本体2が圧縮されてリング傾斜面24と溝傾斜面15とが接触するときに、軸穴2aの側から外周の側に向かって圧縮状態を変化させることができる。
【0073】
図4に示す例の場合、溝変曲点Pにおいて溝角度7から溝角度17へ変化する。ストッパ本体2が圧縮されに従って、隙間6はつぶされて溝傾斜面5等とリング4とが接触する。圧縮開始から溝変曲点Pまでの間は、溝角度7の角度に沿ってリング4が溝傾斜面5と接触する。ストッパ本体2は、溝傾斜面5とリング4との接触が溝変曲点Pの位置までに至ると、次に溝角度17による隙間16に対して溝傾斜面15とリング4とが接触するように圧縮される。隙間16は、隙間6よりも大きいので、ストッパ本体2の弾性体による圧縮は段階的に行われ、急激に反発力が発生することを防止できる。
【0074】
図5に示す例の場合、溝変曲点Pにおいて溝角度7が溝角度17に変化するが、角度の変化が緩やかである。ストッパ本体2が圧縮される過程において、図4の例と同様に溝傾斜面5とリング4との接触が溝変曲点Pの位置までに至った後に、さらに溝角度17による隙間16に対して溝傾斜面15とリング4とが接触するように圧縮される。この場合、溝変曲点Pの前後において角度の急激な変化が無いので、ストッパ本体2の弾性体による反発力は急激に変化しない。また、溝傾斜面15は曲線的に変化するので、より反発力がスムーズに変化する。
【0075】
次に、図8(b)に示す、溝傾斜面5の例について説明する。この例の場合、溝傾斜面5は、溝角度7がストッパ本体2における軸穴2aの側から外周の側に向かうに従って増加する。溝傾斜面5である下側溝傾斜面5aと上側溝傾斜面5bは、曲線状に変化し、下側溝角度7aと上側溝角度7bが徐々に増加する。この場合、外周の側に向かうに従って隙間6(6a、6b)に相当する隙間角度が増加するので、ストッパ本体2が圧縮される過程において長期にわたって隙間6を維持できる。
【0076】
また、以上説明した図4から図7までに示す例では、装着溝30に溝変曲点Pが形成される場合と、リング4にリング変曲点Qが形成される場合とを別々に示しているが、溝変曲点Pとリング変曲点Qとが合わせて形成されてもよい。
【0077】
<バンプストッパ1の詳細な構成とその効果>
次に、バンプストッパ1において、上述した以外の詳細な構成を説明する。まず、溝3のうちの装着溝30の位置を説明する。図1に示すように、ストッパ本体2は複数の溝3を備え、装着溝30は、溝3のうちストッパ本体2の外周面の最大外径D1に最も隣接する位置であって且つ下側にある。図1に示す例の場合、装着溝30は、複数の溝3のうち下側から二番目である。装着溝30の上側は、外周面が最大外径D1である突出部2dである。なお、ここでは、装着溝30が溝3のうちの下側から何番目であるかは問わず、外周面が最大外径D1である部分の直下であればよい。
【0078】
以上説明した構成により、バンプストッパ1は以下の効果を奏する。装着溝30は、溝3のうちストッパ本体2の外周面の最大外径D1に最も隣接する位置であって下側にあるので、リング4はバンプストッパ1が所定量圧縮する状態において反発力を所定範囲に高めることができる。また、特にバンプストッパ1が軸方向の下側から圧縮されるとき、隙間6によって、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階において反発力が急激に上昇することを防止できるので二つの効果を併せ持つ。図1に示す例のように、ショックアブゾーバー50のシリンダー52が軸方向の下側の場合、下側からの圧縮に対してより効果がある。
【0079】
次に、ストッパ本体2の外形形状について説明する。ストッパ本体2は、外周面において溝3を挟んで複数の突出部が形成され、装着溝30よりも下側は、下側端部2bに向かうに従って突出部の外径が小さくなるよう形成される。図2に示す例では、ストッパ本体2の外周に五つの突出部が形成される。突出部2dは外周面の最大外径D1であり、下側に向かうに従って突出部2e、突出部2fの外径が小さくなるよう形成される。
【0080】
この構成により、ストッパ本体2は、軸方向の下側から圧縮されるとき、弾性体の圧縮量が徐々に多くなるので、圧縮開始から一定の圧縮量に至るまでの初期圧縮段階における反発力を一定の範囲に抑えることができる。さらに、圧縮量が増加するにつれて弾性体の圧縮体積が増加するので、所定量の圧縮状態において反発力を所定範囲に高めることができる。
【0081】
次に、リング4の外径D4とストッパ本体2の外周面の外形との関係を説明する。図1に示す例では、リング4がストッパ本体2に装着される状態において、リング4の外径D4は、ストッパ本体2の外周面の最大外径D1より大きい。
【0082】
この構成により、リング4の外径D4はストッパ本体2の外周面の最大外径D1より大きいので、ストッパ本体2が圧縮されるときに弾性体の圧縮量を一定程度に抑えることができる。よって、バンプストッパ1が所定量圧縮されるときの反発力を所定範囲に高めることができる。
【0083】
仮に、リング4の外径D4がストッパ本体2の外周面の最大外径D1より小さい場合、弾性体はリング4の外径D4を乗り越えて変形しながら圧縮される。すると、弾性体は十分な量の圧縮がされず、反発力が低下する。リング4の外径D4は、ストッパ本体2の外周面の最大外径D1より大きいので、弾性体は所定の圧縮がなされ、この課題を解決できる。
【0084】
次に、ストッパ本体2の軸穴2aについて説明する。図2に示す例では、軸穴2aは、軸方向における下側端部2bの内径D2が上側端部2cの内径D3よりも大きく形成される。
【0085】
この構成により、バンプストッパ1がショックアブゾーバー50のシャフト51に装着される状態で、下側端部2bの内径部とシャフト51との間に隙間がある。よって、バンプストッパ1が軸方向の下側から圧縮されるとき、ストッパ本体2とシャフト51との接触を少なくすることができ、ストッパ本体2とシャフト51との摩擦による音鳴きを抑制することができる。
【0086】
<本発明のバンプストッパ1と比較例のバンプストッパ10との比較説明>
次に、図6(b)、及び図9から図11までを参照して、本発明のバンプストッパ1と、比較例であるバンプストッパ10の構成を対比し、圧縮量と反発力との関係特性を比較する。バンプストッパ1は、図6(b)の構成とし、図10は、比較例であるバンプストッパ10にリング4が装着された状態を示す。
【0087】
図10に示すように、比較例のバンプストッパ10のストッパ本体20は、バンプストッパ1と比較して、上下方向の略中央部の外周面は最大外径D1未満であって、上側と下側に比べて凹んでいる。なお、バンプストッパ1とバンプストッパ10とは、外周面の最大外径D1と、軸方向の高さHは共通の寸法である。溝3はバンプストッパ1と同様の個数であり、装着溝30の位置も同様である。しかしながら、バンプストッパ10の装着溝30は、ストッパ本体20の外周面が最大外径D1よりも小さな突出部2fの下側に形成されている。装着溝30よりも軸方向の下側は、下側端部20bに向かうに従って外径が大きくなっている。
【0088】
図9に、装着溝30にリング4が装着された状態を示す。バンプストッパ10は、下側リング傾斜面4aと下側溝傾斜面5aとの間と、上側リング傾斜面4bと上側溝傾斜面5bとの間に隙間6は形成されていない。
【0089】
図11を参照して、本発明のバンプストッパ1と比較例のバンプストッパ10の圧縮量に対する反発力の特性を比較する。なお、ここでの説明は、バンプストッパ1とバンプストッパ10との相対的な比較であり、図11に示す数値は、それぞれのストッパ本体2(20)の形状、寸法、材質が特定の条件によるものであり、一例である。
【0090】
すでに説明した初期圧縮段階とは、例として圧縮量が20mm以下である。この範囲において、バンプストッパ1は反発力の上昇が緩やかである。これに対し、比較例のバンプストッパ10は、反発力の立ち上がりが急である。これは、ショックアブゾーバー50において、わずかの圧縮である変動に対して反発力が急に大きくなり、車体等が受ける振動が大きくなることを示す。
【0091】
また、バンプストッパ1は、例として圧縮量が40mmを超えると反発力が急上昇し、50mmにて反発力が所定の値の例である5kNに達する。これに対し、比較例のバンプストッパ10は、圧縮量が上昇しても反発力の立ち上がりが緩やかで、圧縮量が50mmであっても所定の反発力である5kNには達しない。すなわち、本発明のバンプストッパ1は、比較例のバンプストッパ10に比べて、初期圧縮段階における反発力が緩やかであり、所定の圧縮量においては反発力を高めることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 バンプストッパ
2 ストッパ本体
2a 軸穴
2b 下側端部
2c 上側端部
2d 突出部
2e 突出部
2f 突出部
3 溝
4 リング
4a 下側リング傾斜面
4b 上側リング傾斜面
5 溝傾斜面
5a 下側溝傾斜面
5b 上側溝傾斜面
6 隙間
6a 下側隙間
6b 上側隙間
7 溝角度
8 リング角度
14 リング傾斜面
14a 下側リング傾斜面
14b 上側リング傾斜面
15 溝傾斜面
15a 下側溝傾斜面
15b 上側溝傾斜面
16 隙間
17 溝角度
18 リング角度
20 ストッパ本体
20b 下側端部
24 リング傾斜面
24a 下側リング傾斜面
24b 上側リング傾斜面
30 装着溝
50 ショックアブゾーバー
D1 最大外径
D2 内径
D3 内径
D4 外径
P 溝変曲点
Q リング変曲点
S 仮想面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11