(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】冷蔵庫並びに貯蔵庫及び撮影装置が行う撮影方法
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20240815BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240815BHJP
F25D 29/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F25D23/00 301K
F25D11/00 101B
F25D29/00 Z
(21)【出願番号】P 2021170614
(22)【出願日】2021-10-19
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 勝
(72)【発明者】
【氏名】関口 禎多
(72)【発明者】
【氏名】草野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴史
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/072954(WO,A1)
【文献】特開2018-035983(JP,A)
【文献】特開2017-015298(JP,A)
【文献】特開2015-087041(JP,A)
【文献】特開2001-317858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有する筐体と、
前記貯蔵室の開口を塞ぐ扉と、
少なくとも前記貯蔵室を撮影する撮影部と、
制御部の処理に応じて、
前記撮影部の視野の全部または一部を複数の領域に分けて認識し、
前記撮影部の視野のうち、食材が存在する位置を含む一部の領域の重みづけを、残部の領域の重みづけよりも高くして、前記撮影部の露光調整を実行する冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1において、
該複数の領域のうち、輝度の平均値が最も高い領域を基準として、前記露光調整を実行する冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1において、
前記扉の開閉及び/又は開角度を検知するドアセンサを備え、
食材が存在する位置を含む前記一部の領域の認識は、前記ドアセンサの情報に応じて行われる冷蔵庫。
【請求項4】
請求項3において、
前記扉として、前記撮影部の視野に収まる複数枚の扉を備え、
前記扉の一部のみが開である場合、当該扉の開き方向に応じて前記一部の領域を作成する冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1において、
前記撮影部の視野のうち、食材が存在する位置を含む一部の領域の輝度に応じて、前記撮影部の露光調整を実行する冷蔵庫。
【請求項6】
請求項1において、
前記撮影部の視野には、前記貯蔵室の壁面が含まれ、
該壁面は、白色である冷蔵庫。
【請求項7】
請求項1において、
前記撮影部の視野には、前記扉の内板が含まれ、
該内板は、白色である冷蔵庫。
【請求項8】
貯蔵室を有する筐体と、
前記貯蔵室の開口を塞ぐ扉と、を備える貯蔵庫と、
少なくとも前記貯蔵室を撮影する撮影装置と、によって実行される撮影方法であって、
制御部の処理に応じて、
前記撮影装置の視野の全部または一部を複数の領域に分けて認識し、
前記撮影装
置の視野のうち、食材が存在する位置を含む一部の領域の重みづけを、残部の領域の重みづけよりも高くして、前記撮影装置の露光調整を実行する撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の貯蔵室等をカメラで撮影する技術として、例えば、特許文献1には、「カメラは、冷蔵庫本体の上部で、かつ扉と干渉しない位置に配置」すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、例えば、冷蔵庫の貯蔵室等を撮影する際の明るさについては記載されておらず、カメラによる撮影をさらに適切に行う余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る冷蔵庫は、
貯蔵室を有する筐体と、
前記貯蔵室の開口を塞ぐ扉と、
少なくとも前記貯蔵室を撮影する撮影部と、
制御部の処理に応じて、
前記撮影部の視野の全部または一部を複数の領域に分けて認識し、
前記撮影部の視野のうち、食材が存在する位置を含む一部の領域の重みづけを、残部の領域の重みづけよりも高くして、前記撮影部の露光調整を実行する冷蔵庫。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】第1実施形態に係る冷蔵庫の左右の冷蔵室ドアが開かれた状態の正面図である。
【
図4】第1実施形態に係る冷蔵庫の左右の冷蔵室ドアが開かれた状態の平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る冷蔵庫のカメラユニットを斜め下から見上げた場合の斜視図である。
【
図6A】第1実施形態に係る冷蔵庫のカメラユニットの正面図である。
【
図6B】第1実施形態に係る冷蔵庫における
図6AのII-II線矢視断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る冷蔵庫のカメラユニットを含むシステム構成図である。
【
図8A】第1実施形態に係る冷蔵庫の制御部が実行する自動撮影の処理のフローチャートである。
【
図8B】第1実施形態に係る冷蔵庫の制御部が実行する自動撮影の処理のフローチャートである。
【
図9】第1実施形態に係る冷蔵庫の冷蔵室ドアが開閉される過程を時系列的に示す説明図である。
【
図10】第1実施形態に係る冷蔵庫のカメラユニットの撮影結果であって、画像処理が行われていない状態の例である。
【
図11】第1実施形態に係る冷蔵庫のカメラユニットの撮影結果であって、画像処理が行われた状態の例である。
【
図12A】第1実施形態に係る冷蔵庫において、露光調整を行う際の基準となる領域の候補を示す説明図である。
【
図12B】比較例に係る冷蔵庫において、露光調整を行う際の基準となる領域を示す説明図である。
【
図13】第2実施形態に係る冷蔵庫が備える左右の冷蔵室ドアの正面図及び下面図である。
【
図14A】第2実施形態に係る冷蔵庫が備える右側の冷蔵室ドアの下部の断面斜視図である。
【
図14B】第2実施形態に係る冷蔵庫が備える右側の冷蔵室ドアの下部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る冷蔵庫100の正面図である。
冷蔵庫100は、食品等を冷やす機器であり、筐体1の他、冷蔵室ドア211,212等の各ドア(扉)と、カメラユニット3と、を備えている。筐体1は、その内部に複数の貯蔵室を有している。
図1の例では、冷蔵庫100の貯蔵室として、上から順に、冷蔵室21と、左右に並ぶ製氷室22・上段冷凍室23の他、野菜室24と、下段冷凍室25と、が設けられている。
【0008】
筐体1は、鋼板製の外箱11と、樹脂製の内箱(図示せず)と、の間に発泡ウレタン等の断熱材(図示せず)が充填された構成になっている。筐体1の前側(正面側)には、各室に対応する複数の開口10(
図2、
図4参照)が設けられている。例えば、冷蔵室21の開口10を介して食品等が入れられる際には、冷蔵室ドア211,212が開けられる。また、冷蔵室ドア211,212が閉じられると、冷蔵室21の開口10が閉塞された状態になる。このように、冷蔵室ドア211,212(扉)は、筐体1の開口10を塞ぐ機能等を有している。なお、他の各ドアについても同様である。
【0009】
冷蔵庫100は、筐体1とともに冷蔵室21を形成するフレンチ式ドアとして、左右の冷蔵室ドア211,212を備えている。左側の冷蔵室ドア211(左ドア)は、左端のヒンジ211a(
図4参照)の軸を中心として、回動可能になっている。なお、右側の冷蔵室ドア212(右ドア)についても同様である。また、冷蔵庫100は、引出し式のドアとして、製氷室ドア221や上段冷凍室ドア231の他、野菜室ドア241や下段冷凍室ドア251を備えている。
【0010】
冷蔵室21には、この冷蔵室21を所定に仕切る複数の棚板213(
図3参照)が設けられている。左側の冷蔵室ドア211の庫内側には、食品等を収容するための複数のドアポケット211c(
図3参照)が設けられている(右側の冷蔵室ドア212も同様)。製氷室22には、製氷室ドア221と一体に引き出される製氷室容器(図示せず)が設けられている。同様に、上段冷凍室23には上段冷凍室容器(図示せず)が設けられ、また、野菜室24には野菜室容器(図示せず)が設けられている他、下段冷凍室25には下段冷凍室容器(図示せず)が設けられている。
【0011】
また、冷蔵庫100は、図示はしないが、圧縮機と、放熱器(凝縮器)と、キャピラリチューブ(絞り機構)と、蒸発器と、を備えている。そして、圧縮機、放熱器、キャピラリチューブ、及び蒸発器を順次に介して冷媒が循環し、蒸発器を通流する冷媒との間の熱交換で、貯蔵室の空気が冷やされるようになっている。
図1に示すカメラユニット3は、冷蔵庫100の貯蔵室等を撮像するものであり、筐体1の上面に設置されている。
【0012】
図2は、冷蔵庫100の側面図である。
図2に示すように、カメラユニット3は、本体部31と、支持部32と、を備えている。本体部31は、貯蔵室等を撮像する機能を有している。支持部32は、本体部31を支持するものであり、筐体1の上面に設置されている。
【0013】
本体部31の前端付近には、レンズ31a(
図5も参照)が設けられている。レンズ31aは、光を屈折させて集束させる光学素子である。このようなレンズ31aとして、例えば、魚眼レンズが用いられる。そして、冷蔵室ドア211,212(
図1参照)が開かれた場合に、カメラユニット3で冷蔵室21(
図1参照)を撮像できるように、レンズ31aが下側に臨んだ状態になっている。
【0014】
図2に示すように、レンズ31aは、筐体1の前端(筐体1の開口10)よりも前側に位置している。より好ましくは、レンズ31aは、閉状態の冷蔵室ドア211,212(
図1参照)の前面よりもさらに前側に位置している。これによって、例えば、冷蔵室ドア211,212が開けられた際、レンズ31aの視野に冷蔵室21が入りやすくなる。なお、野菜室ドア241等の引出し式のドアが開かれた状態で、カメラユニット3によって野菜室24等(
図1参照)を撮像することも可能である。このように、それぞれの貯蔵室を上から見下ろせる位置にレンズ31aが設けられている。
【0015】
図3は、冷蔵庫100の左右の冷蔵室ドア211,212が開かれた状態の正面図である。
前記したように、左側の冷蔵室ドア211の内板211bには、食品等を収容するための複数のドアポケット211cが設けられている(右側の冷蔵室ドア212も同様)。そして、左右の冷蔵室ドア211,212が開けられると、冷蔵室21やドアポケット211c,212cの食品等が、カメラユニット3のレンズ31aの視野に俯瞰的に入るようになっている(
図10も参照)。
【0016】
図3に示す回転仕切211dは、冷蔵室ドア211,212の間の隙間からの冷気漏れを抑制するための仕切体である。
図3の例では、左側の冷蔵室ドア211において、ヒンジ211a(
図4参照)の軸とは反対側の端部に回転仕切211dが設けられ、冷蔵室ドア211の開閉に伴って所定に回転するようになっている。
【0017】
また、カメラユニット3を用いて冷蔵室21を手動で撮影する際、ユーザによって押される撮影ボタン7が、左右の冷蔵室ドア211,212にひとつずつ設けられている。
図3の例では、左側の冷蔵室ドア211(扉)において、この冷蔵室ドア211のヒンジ211a(
図4参照)とは反対側の面の下部に、撮影ボタン7が設けられている(右側の冷蔵室ドア212も同様)。別の観点から説明すると、左右の冷蔵室ドア211,212が閉まっている状態(
図1参照)において、冷蔵室ドア211,212の一方が他方と対向している面(
図3の回転仕切211dの付近)に撮影ボタン7が設けられている。
【0018】
これら2つの撮影ボタン7のうち少なくとも一方がユーザによって押された場合に行う撮影を「手動撮影」という。また、冷蔵室ドア211,212の開き始めのタイミングからの経過時間に基づいて、制御部8(
図7参照)が行う撮影を「自動撮影」という。
【0019】
図4は、冷蔵庫100の左右の冷蔵室ドア211,212が開かれた状態の平面図である。
図4の例では、左右方向において、冷蔵庫100の筐体1の中央よりも若干左側にカメラユニット3の本体部31が配置されている。より詳しく説明すると、閉状態の冷蔵室ドア211,212の合わせ目の真上にカメラユニット3の本体部31が配置されている(
図1も参照)。このように本体部31を配置することで、例えば、冷蔵室ドア211,212が開けられた場合に、ドアポケット211c,212cの食品等がカメラユニット3の視野に入りやすくなる。
【0020】
また、冷蔵庫100を使用する際、ユーザは、冷蔵室ドア211,212の合わせ目(境界部)を意識することが多い。したがって、冷蔵室ドア211,212の合わせ目の真上に本体部31を配置することで、本体部31の左右方向の位置が合わせ目から外れている場合に比べて、ユーザが違和感を感じることを抑制できる。
【0021】
図5は、カメラユニット3を斜め下から見上げた場合の斜視図である。
図5に示すカメラユニット3の本体部31は、前記したレンズ31a(
図2も参照)の他に、ケース31bと、カメラLED31c(Light Emitting Diode:照明部)と、を備えている。
図5の例では、本体部31のケース31bは、概ね、前後方向に細長い直方体状を呈している。ケース31bの前端付近の下面には、円形状の孔(符号は図示せず)が設けられ、この孔を介してレンズ31aが露出している。また、レンズ31aの後側(奥側)にカメラLED31cが設けられている。
【0022】
カメラLED31cは、カメラユニット3が冷蔵室21(
図3参照)やドアポケット211c,212c(
図3参照)を適度な明るさのもとで撮影できるように、冷蔵室21等に光を照射する光源である。また、カメラLED31c(照明部)は、冷蔵庫100の筐体1(
図2参照)の外側に設けられている。詳細については後記するが、第1実施形態では、冷蔵庫100の庫内灯4(
図7参照)を消灯しつつ、カメラLED31cを点灯させた状態で、カメラユニット3が冷蔵室21等(
図3参照)を撮影するようにしている。
【0023】
図5に示すように、カメラLED31cの前側にレンズ31aを設けることで、冷蔵室ドア211,212が開けられた状態で、冷蔵室21等(
図3参照)からの反射光がレンズ31aに入射しやすくなる。したがって、冷蔵室21等に収容されている食品を適切に撮影できる。なお、冷蔵庫100の筐体1(
図2参照)の前端(筐体1の開口10)よりも前側にカメラLED31cが位置していることが好ましい。これによって、カメラLED31cから照射された光が冷蔵室21等に入射しやすくなり、ひいては、鮮明な撮影結果が得られやすくなる。
【0024】
図6Aは、カメラユニット3の正面図である。
図6Aに示すように、カメラユニット3の本体部31が支持部32の上側に設置されている。また、左右方向において、支持部32の中央付近に本体部31が設置されている。
【0025】
図6Bは、
図6AのII-II線矢視断面図である。
図6Bに示すように、カメラユニット3は、レンズ31a(
図5も参照)やカメラLED31c(
図5も参照)、ケース31bを備える他、回路基板31dを備えている。回路基板31dは、後記する撮像素子31e(
図7参照)やカメラ/通信制御SoC31f(System-on-a-Chip:
図7参照)が実装されたプリント基板である。このように、レンズ31aやカメラLED31c、回路基板31dを一つのケース31bに収容することで、これらを別体で設ける場合と比べて、カメラユニット3を小型化できるとともに、配線の長さを短縮できる。
【0026】
図7は、冷蔵庫100のカメラユニット3を含むシステム構成図である。
図7に示すように、冷蔵庫100は、カメラユニット3の他に、庫内灯4と、ブザー5と、ドアセンサ6と、撮影ボタン7と、制御部8と、を備えている。庫内灯4は、冷蔵庫100の庫内に光を照射する光源であり、筐体1の内側に設けられている。ブザー5は、例えば、カメラユニット3による撮影において、庫内灯4を消灯する際に鳴らされるものであり、筐体1の所定箇所に設置されている。
【0027】
ドアセンサ6は、冷蔵室ドア211,212の開閉状態を示す所定の信号を制御部8に出力する。なお、
図7ではひとつのドアセンサ6を示しているが、実際には、左側の冷蔵室ドア211(
図1参照)に対応するドアセンサ6と、右側の冷蔵室ドア212(
図1参照)に対応する別のドアセンサ6と、が設けられている。例えば、左側の冷蔵室ドア211が開かれた場合には、この冷蔵室ドア211に対応するドアセンサ6から制御部8に開信号が出力される。撮影ボタン7(
図3も参照)は、前記したように、カメラユニット3を用いて手動で撮影する際、ユーザによって押されるボタンである。
【0028】
制御部8は、例えば、マイコンであり、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。制御部8は、前記した「自動撮影」を行う他、撮影ボタン7が押された場合には、「手動撮影」を行う。なお、制御部8が行う処理の詳細については後記する。
【0029】
カメラユニット3は、レンズ31a(
図5も参照)やカメラLED31c(
図5も参照)の他、撮像素子31eと、カメラ/通信制御SoC31fと、無線LANユニット31gと、を備えている。撮像素子31eは、レンズ31aを介して入射する光を光電変換し、撮影画像データを生成する素子である。このような撮像素子31eとして、例えば、CCDセンサ(Charge Coupled Device)やCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)が用いられる。
【0030】
カメラ/通信制御SoC31fは、マイコンの機能や他の応用的な機能を有する回路を1チップ上に集積し、連携して機能するよう設計された集積回路である。カメラ/通信制御SoC31fは、制御部8との間で所定に通信を行い、撮像素子31eに撮影指令を出力する。これによって、撮像素子31eからカメラ/通信制御SoC31fに撮影画像データが入力される。なお、カメラ/通信制御SoC31fは集積回路の一例であり、他の種類のものを用いるようにしてもよい。
【0031】
図7に示す撮影部30は、少なくとも冷蔵室21等(貯蔵室)を撮影する機能を有し、冷蔵庫100の筐体1(
図1参照)の外側に設けられている。
図7に示すように、撮影部30は、レンズ31aと、撮像素子31eと、カメラ/通信制御SoC31fと、を含んで構成されている。
【0032】
無線LANユニット31gは、カメラ/通信制御SoC31fから出力される撮影画像データをルータ51に送信する。ルータ51は、通信の中継機器であり、無線LANユニット31gから受信した撮影画像データをネットワーク52を介して、サーバ53に送信する。サーバ53は、撮影画像データについて所定の処理を行い、冷蔵庫100の識別情報に対応付けて保存する。また、サーバ53は、ユーザの携帯端末54から冷蔵庫100の庫内画像の要求信号を受信した場合、撮影画像データを携帯端末54に送信する。このような携帯端末54として、携帯電話やスマートフォンの他、タブレットやウェアラブル端末等が用いられる。
【0033】
<制御部の処理>
図8A、
図8Bは、冷蔵庫の制御部が実行する自動撮影の処理のフローチャートである(適宜、
図7を参照)。
以下では、一例として、冷蔵室ドア211,212(
図3参照)のうちの少なくとも一方が開かれた場合に、カメラユニット3が冷蔵室21を撮影する処理について説明する。なお、
図8Aの「START」時には、左右の冷蔵室ドア211,212(
図3参照)が閉状態であるものとする。また、ユーザによる携帯端末54(
図7参照)の操作で、自動撮影の設定のオン/オフや、手動撮影の設定のオン/オフを切り替えることができるようになっている。
図8A、
図8Bの例では、自動撮影の設定がオン(自動撮影可能)であり、さらに、手動撮影の設定もオン(手動撮影可能)になっているものとする。
【0034】
ステップS101において制御部8は、ドアセンサ6から開信号の入力があったか否かを判定する。つまり、制御部8は、左右の冷蔵室ドア211,212(
図3参照)のうちの少なくとも一方が開かれたか否かを判定する。ステップS101において、ドアセンサ6から開信号の入力がない場合(S101:No)、制御部8は、ステップS101の処理を繰り返す。一方、ステップS101において、ドアセンサ6から開信号の入力があった場合(S101:Yes)、制御部8の処理はステップS102に進む。
【0035】
ステップS102において制御部8は、冷蔵庫100の庫内灯4を点灯させるとともに、カメラLED31cを点灯させる。つまり、制御部8は、冷蔵室ドア211,212(扉)の少なくとも一方が開かれた直後には庫内灯4を点灯させるとともに、カメラLED31c(照明部)も点灯させる。後記するように、ドアセンサ6から開信号が入力されてから所定時間が経過した後、制御部8が庫内灯4を消灯させるが(S103:Yes、S104)、それまでは庫内灯4を点灯させる。これによって、冷蔵室21に光が照射されるため、ユーザが冷蔵室21を視認しやすくなる。また、ユーザが冷蔵室ドア211,212のうち少なくとも一方を開けたときに庫内灯4が消灯している場合に比べて、ユーザが違和感を感じることを抑制できる。
【0036】
さらに、制御部8が庫内灯4とともにカメラLED31cも点灯させることで(S102)、その後の撮影(S106)に備えることができる。また、庫内灯4とカメラLED31cとをタイミングをずらして点灯させる場合に比べて、撮影時の露光調整に要する時間を短縮できる。なお、カメラLED31cは、左右の冷蔵室ドア211,212の両方が閉められるまで点灯され続ける。
【0037】
次に、ステップS103において制御部8は、ドアセンサ6から開信号の入力があった時点から所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間(例えば、数秒間)は、庫内灯4が消灯(S104)されるまでの時間であり、予め設定されている。例えば、その後の露光調整(S105)の時間も考慮して、撮影時(S106)に冷蔵室ドア211,212が所定の開角度以上に開かれている可能性が高くなるように、ステップS103の所定時間が予め設定されている。
【0038】
ステップS103において、ドアセンサ6から開信号の入力があった時点から所定時間が経過していない場合(S103:No)、制御部8は、ステップS103の処理を繰り返す。一方、ドアセンサ6から開信号の入力があった時点から所定時間が経過した場合(S103:Yes)、制御部8の処理はステップS104に進む。
【0039】
ステップS104において制御部8は、庫内灯4を消灯するとともに、ブザー5を鳴らす。すなわち、制御部8は、冷蔵室ドア211,212(扉)の少なくとも一方が開かれた後、庫内灯4を消灯する際、ブザー5を鳴らす。このようにブザー5を鳴らすことで、庫内灯4が消灯した際にユーザが感じる違和感を低減できる他、撮影のための消灯であることをユーザが把握しやすくなる。
【0040】
次に、ステップS105において制御部8は、露光調整を行う。つまり、制御部8は、撮像素子31eから出力される電気信号を増幅する際のゲイン(明るさに対する感度)を調整する他、カメラユニット3のシャッタスピード等を調整する。例えば、制御部8は、撮影画像データの輝度の平均値が所定範囲内に含まれるように、前記したゲインを調整する。このように露光調整を行うことで、撮影画像における白飛び(ハレーション)や黒つぶれを抑制できる。なお、冷蔵室ドア211,212のうち少なくとも一方が開かれてから、冷蔵室ドア211,212の両方が閉じられるまで、画像入力や露光調整が所定に繰り返されるようにしてもよい。
【0041】
次に、ステップS106において制御部8は、撮影指令を出力する。すなわち、制御部8は、光電変換によって撮像素子31eから出力され、さらに、所定のゲインで増幅された電気信号を撮影画像データとして取り込む。このように、制御部8は、冷蔵室ドア211,212(扉)の少なくとも一方が開かれた後(S101:Yes)、庫内灯4を消灯し、さらに、カメラLED31c(照明部)を点灯させた状態で撮影部30に撮影を行わせる(S102、S104、S106)。
【0042】
なお、
図8A、
図8Bには特に示していないが、庫内灯4を消灯してから所定時間(例えば、数秒間)が経過した後、制御部8が撮影部30に撮影を行わせることが好ましい。このように庫内灯4の消灯から撮影までの間に所定時間を設けることで、露光調整(S105)を適切に行うことができる。
【0043】
また、
図8A、
図8Bには特に示していないが、1回目の撮影時から所定時間が経過するたびに、制御部8が撮影を行うようにしてもよい。この所定時間の長さは、ステップS103における所定時間と同一であってもよいし、また、異なっていてもよい。
【0044】
ステップS107において制御部8は、冷蔵室ドア211,212の開角度を認識する。例えば、制御部8は、エッジ検出といった画像処理を行うことで、冷蔵室ドア211,212のうち開かれているものの開角度を認識する。なお、「開角度」とは、冷蔵室ドア211,212が開いている角度であり、例えば、冷蔵庫100を平面視した場合の筐体1(
図4参照)の前端を基準として認識される。
【0045】
次に、
図8BのステップS108において制御部8は、冷蔵室ドア211,212の開角度が所定値以上であるか否かを判定する。この所定値は、撮影結果を保存するか(S109)、それとも破棄するか(S110)を選択する際の判定基準となる開角度の閾値であり、予め設定されている。
【0046】
ステップS108において、冷蔵室ドア211,212のうち少なくとも一方の開角度が所定値以上である場合(S108:Yes)、制御部8の処理はステップS109に進む。ステップS109において制御部8は、撮影結果を保存して、ステップS112の処理に進む。冷蔵室ドア211,212の開角度が所定値以上である場合には、冷蔵室21等が適切に撮影されている可能性が高いからである。
【0047】
なお、左側の冷蔵室ドア211のみが開かれているときの撮影結果と、右側の冷蔵室ドア212のみが開かれているときの撮影結果と、左右の冷蔵室ドア211,212の両方が開かれているときの撮影結果と、が異なる記憶領域に保存されるようにしてもよい。
【0048】
また、ステップS108において、冷蔵室ドア211,212の開角度がいずれも所定値未満である場合(S108:No)、制御部8の処理はステップS110に進む。ステップS110において制御部8は、撮影結果を破棄する。冷蔵室ドア211,212の開角度が所定値未満である場合には、冷蔵室21等が適切に撮像されていない可能性が高いからである。
【0049】
そして、ステップS111において制御部8は、ブザー5を鳴らす。すなわち、冷蔵室ドア211,212(扉)の開角度が所定値未満の状態で撮影を行った場合(S108:No)、制御部8は、ブザー5を鳴らす(S111)。これによって、今回の撮影結果が破棄されたことをユーザに知らせることができる。なお、ステップS111におけるブザー5の音と、ステップS104(庫内灯4の消灯時)のブザー5の音と、を異なるものにして、ユーザが両者を区別できるようにしてもよい。ステップS111の処理を行った後、制御部8の処理はステップS112に進む。ブザー5の鳴動に代えて、光、振動などユーザが知覚可能な出力を冷蔵庫又はユーザが使用する携帯端末54に行わせてもよい。
【0050】
ステップS112において制御部8は、庫内灯4を点灯させる。つまり、制御部8は、カメラLED31cを点灯させたまま、庫内灯4も点灯させる。このように、制御部8が、撮影部30に撮影を行わせた後(
図8AのS106)、庫内灯4を点灯させる(
図8BのS112)。これによって、冷蔵室21が明るく照らされるため、ユーザが冷蔵室21を視認しやすくなる。
【0051】
次に、ステップS113において制御部8は、ドアセンサ6から閉信号の入力があったか否かを判定する。ドアセンサ6から閉信号の入力がない場合(S113:No)、制御部8は、ステップS102へ戻る。一方、ドアセンサ6から閉信号の入力があった場合(S113:Yes)、制御部8の処理はステップS114に進む。
【0052】
ステップS114において制御部8は、庫内灯4を消灯するとともに、カメラLED31cを消灯する。
ステップS115において制御部8は、撮影結果を選定する。例えば、制御部8は、保存されている複数の撮影結果のうち、最も新しいものをサーバ53への送信用の撮影結果として選定する。このように、撮影ごとに撮影結果の保存または破棄を完了させることで、制御部8の必要な記憶量の低減、サーバ53への送信が必要なデータ量の低減、又は、破棄の場合に適宜ユーザにその旨の報知をすることができる。もちろん、保存の場合にその旨を報知するようにしてもよい。撮影結果が保存または破棄いずれにて処理されたかをユーザが認識可能であればよい。
各撮影結果をユーザが認識しやすいように、撮影の時間間隔は、例えば3秒以上開けることができる。こうすると、或る撮影結果を認識させる出力を行った場合に、ユーザが当該撮影結果に対する出力であることを理解しやすい。例えば3秒未満とすると、出力を行った場合、或る撮影結果に対する出力であるか、又はその1つ以上前若しくは後の撮影結果に対する出力であるか、ユーザが区別しにくくなる虞がある。
一方、時間間隔を開けすぎると冷蔵室ドア211,212の開時間が長くなり、冷蔵室からの冷気の流出が多量になってしまうため、時間間隔は8秒以下、好ましくは5秒以下である。
なお、ステップS111を実行しない場合、ステップS106は、連続して複数回の撮影を実行してもよい。この場合、ステップS108~S110では、複数枚の画像データのすべてについてそれぞれ処理を実行することができる。
【0053】
ステップS116において制御部8は、撮影結果をサーバ53に送信する。すなわち、制御部8は、
図7に示す無線LANユニット31g、ルータ51、及びネットワーク52を順次に介して、撮影画像データをサーバ53に送信する。ステップS116の処理を行った後、制御部8は、一連の処理を終了する(END)。
【0054】
なお、サーバ53では、例えば、撮影結果において、冷蔵室21(
図3参照)の右側・左側の各領域の他、左側の冷蔵室ドア211(
図3参照)の領域や、右側の冷蔵室ドア212(
図3参照)の領域が抽出される。そして、サーバ53において、それぞれの領域の画像が個別的に最新のものに更新される。さらに、携帯端末54からの要求信号に応じて、サーバ53から携帯端末54に撮影画像データが送信され、携帯端末54のディスプレイ(図示せず)に所定に表示される。
【0055】
図9は、冷蔵室ドア211,212が開閉される過程を時系列的に示す説明図である。
なお、
図9では、冷蔵室ドア211,212の状態の他、庫内灯4やカメラLED31cの状態を、アルファベットのA,B,C,・・・,J,K,Lの順で時系列的に示している。また、
図9では、冷蔵庫100の庫内灯4が点灯している場合には庫内灯4を図示し(例えば、状態B)、また、庫内灯4が消灯している場合には庫内灯4を図示しないようにしている(例えば、状態A)。同様に、
図9では、カメラLED31cが点灯している場合にはカメラLED31cを図示し(例えば、状態B)、また、カメラLED31cが消灯している場合にはカメラLED31cを図示しないようにしている(例えば、状態A)。
【0056】
図9の例では、左右の冷蔵室ドア211,212の両方が閉まっている状態Aから、ユーザが左側の冷蔵室ドア211を開けている(状態B,C,D)。この後、左右の冷蔵室ドア211,212の両方が閉められるまで、カメラLED31cは点灯した状態で維持される(
図8AのS102)。また、左側の冷蔵室ドア211が開けられ始めた時点から所定時間が経過するまでは(S103:No)、状態B,Cに示すように、庫内灯4及びカメラLED31cの両方が点灯している(S102)。そして、左側の冷蔵室ドア211が開けられ始めた時点から所定時間が経過した場合(
図8AのS103:Yes)、状態Dに示すように、庫内灯4が消灯し、カメラLED31cが点灯した状態で自動撮影が行われる(S104~S106)。その後、状態Eにおいて庫内灯4が再び点灯される(
図8BのS112)。
【0057】
また、状態E,Fでは、左側の冷蔵室ドア211が閉められつつ、右側の冷蔵室ドア212が開けられている。この場合、状態Fに示すように、庫内灯4が消灯し、カメラLED31cが点灯した状態で自動撮影が再び行われる(
図8AのS104~S106)。その後、
図9の例では、状態G,H,Iに示すように、ユーザが左側の冷蔵室ドア211をいったん閉めた後に再び開けている。
【0058】
このような場合でも、状態Iに示すように、庫内灯4が消灯し、カメラLED31cが点灯した状態で自動撮影が再び行われる(
図8AのS104~S106)。これによって、左右の冷蔵室ドア211,212の両方が開けられた状態で撮影できる。その後、状態Jで示すように、庫内灯4が再び点灯される(
図8BのS112)。このように、左右の冷蔵室ドア211,212のうち少なくとも一方が開かれるたびに、制御部8は、カメラユニット3で冷蔵室21等の撮影を行う。
【0059】
さらに、状態Kに示すように、ユーザによって撮影ボタン7(
図3参照)が押された場合、制御部8は、手動撮影を行う。この場合については、
図8A、
図8Bのフローチャートでは特に示していないが、制御部8は、次の処理を行う。すなわち、冷蔵室ドア211,212(扉)の少なくとも一方が開かれた後、撮影ボタン7が押された場合、制御部8は、庫内灯4を消灯し、さらに、カメラLED31c(照明部)を点灯させた状態で撮影部30に撮影を行わせる(状態K)。なお、庫内灯4を消灯する際、ユーザの違和感を低減するために、制御部8がブザー5を鳴らすようにしてもよい。制御部8は、手動撮影を行った後、状態Lに示すように、庫内灯4を再び点灯させる。
【0060】
なお、撮影ボタン7の操作に基づく撮影(手動撮影)を行った場合、この撮影の結果を他の撮影結果(自動撮影の結果)よりも優先して、制御部8が携帯端末54(
図7参照)への表示に用いることが好ましい。これによって、ユーザは、撮影ボタン7を押すことで撮影された結果を、自身の携帯端末54(
図7参照)で確認できる。
【0061】
また、制御部8は、撮影ボタン7の操作に基づく撮影後(手動撮影の後)であって、冷蔵室ドア211,212(扉)の少なくとも一方が開かれている間は、再び撮影(自動撮影)を行わないことが好ましい。手動撮影の結果が優先的に送信される場合、その後に自動撮影を行う必要が特にないからである。
【0062】
また、ユーザが、冷蔵室ドア211,212のうち少なくとも一方をしっかりと閉めずに、いわゆる半ドアの状態になっている場合には、所定時間ごとに自動撮影が行われるが、その撮影結果はサーバ53(
図7参照)には送信されない。いわゆる半ドアの場合には、通常、冷蔵室ドア211,212の開角度が所定値未満になり(
図8BのS108:No)、その撮影結果が破棄されるからである(S110)。
【0063】
図10は、カメラユニットの撮影結果であって、画像処理が行われていない状態の例である。
なお、
図10では、紙面上側を前方とし、紙面下側を後方としている関係上、
図3に対して、左右が反転している(
図11、
図12A、
図12Bも同様)。
図10の例では、左右の冷蔵室ドア211,212の両方が開かれており、冷蔵室21の他、左側の冷蔵室ドア211のドアポケット211cや、右側の冷蔵室ドア212のドアポケット212cも撮影されている。
【0064】
特に、カメラユニット3(
図5参照)のレンズ31aとして、魚眼レンズが用いられることで、広範囲の画角で撮像できる。ただし、画像処理が行われていない状態では、
図10に示すように、実際には直線状の稜線が湾曲して写る他、同じ長さの稜線であっても、カメラユニット3から遠くなるにつれて、撮影画像における画素数が少なくなる。
【0065】
図11は、カメラユニット3の撮影結果であって、画像処理が行われた状態の例である。
例えば、
図10の撮影結果に基づいて、サーバ53(
図7参照)で所定の画像処理が行われることで、あたかも冷蔵室21や左右の冷蔵室ドア211,212のそれぞれを正面から見たような画像に変換される。このような画像が携帯端末54(
図7参照)に表示されることで、ユーザは、冷蔵室21等にどのような食品が収容されているかを一目で把握できる。
次に、制御部8による露光調整(
図8AのS105)の処理の詳細について、
図12A(第1実施形態)、及び
図12B(比較例)を用いて詳細に説明する。
【0066】
図12Aは、第1実施形態に係る冷蔵庫において、露光調整を行う際の基準となる領域の候補を示す説明図である。
前記したように、露光調整の処理(
図8AのS105)では、撮像素子31e(
図7参照)から出力される電気信号を増幅する際のゲインが調整される。第1実施形態では、露光調整における画像の明るさの度合いを示す基準として、
図12Aに示す3つの矩形状の領域61~63のうち少なくとも一つを用いるようにしている。つまり、左側の冷蔵室ドア211の領域61と、右側の冷蔵室ドア212の領域62と、これらの領域61,62の間の所定の領域63と、のうち少なくとも一つが用いられる。なお、冷蔵室ドア211,212の開角度に基づいて、領域61~63の位置や大きさが適宜に変更されるようにしてもよい。最もユーザが興味ある食材が撮影される領域について、視認しやすいようにゲイン調整をしたいため、例えば食材の特徴量を認識して食材位置を判別し、撮像素子31eの視野内の食材が包含されるように、1つまたは複数の領域を設定することができる。食材の特徴量に代えて、ドア211,212の開閉をセンシングして、開であれば当該ドアの開放側の領域を使用するようにしてもよい。
【0067】
図12Aの例では、左側の冷蔵室ドア211が開かれているが、右側の冷蔵室ドア212は閉じた状態になっている。このような場合、制御部8は、左側の冷蔵室ドア211に対応する領域61の輝度の平均値を基準として、露光調整を行う。つまり、制御部8は、領域61の輝度の平均値が所定範囲に含まれるように、撮像素子31e(
図7参照)から出力される電気信号を増幅する際のゲインを調整する。これによって、閉状態である右側の冷蔵室ドア212の領域62や、その一部が左側の冷蔵室ドア211から外れている領域63が、ゲインを調整する際の基準から外される。したがって、冷蔵室の周囲が暗い場合でも、制御部8がゲインを上げすぎることなく、露光調整を適切に行うことができる。
上記のように、撮像素子31eの視野の略全域ではなく一部を露光調整に使用する領域にする。露光調整に使用する領域の決定には、食材が存在する位置を使用して行うことができる。食材が存在する位置は、画像認識における特徴量を利用してもよいし、ドア開情報やドア開角度情報を検知することで間接的に行ってもよい。ドア開情報やドア開角度情報の取得は、公知のドアセンサや画像認識技術等を使用して行うことができる。有益な情報である食材が存在しない領域について、露光調整の対象領域から極力外すようにすることで、食材が存在しない領域の輝度が明るすぎたり暗すぎたりする場合に、食材がある領域の白飛びや黒つぶれが生じてしまう虞を低減できる。
このように、撮像素子31eの視野のうち、食材が存在する位置を含む上記の「一部の領域」のみを露光調整に使用するようにしてもよい。また、露光調整に際して、当該「一部の領域」の重みを、その余の残部の領域より大きくしてもよい。
【0068】
このように、制御部8は、右側の冷蔵室ドア212(右ドア)、及び左側の冷蔵室ドア211(左ドア)のうち一方が開けられた場合、撮影部30の視野内で、前記した一方に対応する領域を基準として、撮影時の露光のゲインを調整する。なお、左右の冷蔵室ドア211,212の開閉状態を示す信号が、左右のそれぞれのドアセンサ6(
図7参照)から制御部8に出力される。
【0069】
また、3つの領域61~63のうち、画像の輝度の平均値が最も高いものを基準として、露光調整が行われるようにしてもよい。すなわち、制御部8は、撮影部30の視野に含まれる複数の領域61~63のうち、画像の輝度の平均値が最も高い領域を基準として、撮影時の露光のゲインを調整する。これによって、ゲインが高くなりすぎることを抑制し、ひいては、撮影画像の白飛び(ハレーション)を抑制できる。
【0070】
また、左右の冷蔵室ドア211,212のうち、ドアセンサ6から開信号が入力されている扉の少なくとも一部を含む領域であって、画像の輝度の平均値が最も高いものを基準に露光調整が行われるようにしてもよい。これによって、例えば、冷蔵庫100の外部から照射された光が閉状態の冷蔵室ドア212の表面で反射するような状況でも、露光調整におけるゲインを制御部8が適切に設定できる。これによって、撮影画像において、白飛びや黒つぶれが生じることを抑制できる。
【0071】
図12Bは、比較例に係る冷蔵庫において、露光調整を行う際の輝度の基準となる領域を示す説明図である。
図12Bの比較例では、露光調整を行う際の基準として、1つの矩形状の領域60が設定されている。例えば、左右の冷蔵室ドア211,212が開かれた場合に、これらの冷蔵室ドア211,212の両方を含むように矩形状の領域60が設定されている。このように大きな1つの領域60を用いた場合、冷蔵庫100の周囲が暗い状況では、撮影によって右側の冷蔵室ドア212が暗く写るため、光に対する感度を上げるためにゲインが高めに設定される。その結果、撮影画像において、開状態の左側の冷蔵室ドア211や、冷蔵室21の左半分の部分で白飛びが生じやすくなる。
【0072】
これに対して第1実施形態(
図12A参照)では、例えば、冷蔵室ドア211,212の開閉状態に基づいて、露光調整を行う際の基準となる領域を制御部8が選択するようにしている。これによって、撮影画像の白飛びを抑制し、ユーザが視認しやすい鮮明な画像を携帯端末54(
図7参照)に表示させることができる。
【0073】
なお、冷蔵室21(貯蔵室)の壁面、及び、冷蔵室ドア211,212(扉)の内板211b,212b(
図3参照)が、それぞれ、白色であってもよい。ここで、「白色」とは、可視光のスペクトルの略全域に亘って、50%以上の反射率で反射するような色である。別の観点では、「白色」とは、RGB表色系において、R(Red),G(Green),B(Blue)の各要素の明度が略同一であり、かつ、50%以上の反射率で反射するような色である。
【0074】
冷蔵室21の壁面等が白色である場合、撮影結果が白飛びしやすい傾向があるが、制御部8が、露光調整を行う際の基準となる領域を適宜に選択することで、白飛びを抑制できる。このように、第1実施形態によれば、カメラユニット3を用いて、冷蔵室21等を適切に撮影できる。したがって、ユーザが携帯端末54を見て、冷蔵室21等の状態を視認しやすくなる。
【0075】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、左右の冷蔵室ドア211,212(
図13参照)の下面に設けられた取手部211e,212e(
図13参照)の付近に撮影ボタン7A(
図13参照)が設けられる点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0076】
図13は、第2実施形態に係る冷蔵庫100Aが備える左右の冷蔵室ドア211,212の正面図及び下面図である。
なお、
図13では、冷蔵室ドア211,212の正面図の紙面下側に、その下面図を図示している。
図13に示すように、左側の冷蔵室ドア211の下面には、上側に凹んでなる取手部211eが、横方向の所定長さに亘って設けられている。
【0077】
また、左側の冷蔵室ドア211の下面において、取手部211eよりも内側(ヒンジの軸211fとは反対側)には、手動撮影を行う際にユーザによって押される撮影ボタン7Aが設けられている。つまり、冷蔵室ドア211(扉)の取手部211eの外側であって、この取手部211eの付近に撮影ボタン7Aが設けられている。同様に、右側の冷蔵室ドア212の下面にも、取手部212eや撮影ボタン7Aが設けられている。
【0078】
このように撮影ボタン7Aを配置することで、例えば、ユーザが右側の冷蔵室ドア212を開ける際に取手部212eに手をかけたとき、意図せずに誤って撮影ボタン7Aを押してしまうことを防止できる。なお、ユーザが右側の取手部211eに右手をかけると、手のひらが上側に向き、さらに、右手の親指が外側(右側)に位置する状態になる。
図13の例では、取手部212eよりも内側(左側)に撮影ボタン7Aが設けられている。したがって、ユーザが取手部212eに右手をかけた際、右手の親指が誤って撮影ボタン7Aに触れることを防止できる。なお、左側の冷蔵室ドア211の撮影ボタン7Aについても同様のことがいえる。
【0079】
また、取手部212eの付近に撮影ボタン7Aが設けられているため、ユーザは、冷蔵室ドア212に手をかけたまま、その手を移動させ、指先の感触で撮影ボタン7Aを押すことができる。したがって、ユーザが撮影ボタン7Aを押す際、冷蔵室ドア212にかけた手をいったん放す必要が特にないため、操作性を高めることができる。また、ユーザが、冷蔵室ドア212を所定に開いて、冷蔵室ドア212の回動を止めた状態で撮影を行えるため、撮影画像のブレを抑制できる。さらに、冷蔵室ドア212の庫内側や冷蔵室21の壁面に撮影ボタン7Aを設ける場合に比べて、撮影画像上でユーザの手が写り込むことを抑制できる。また、取手部212eの付近に撮影ボタン7Aを設けることで、回転仕切211d(
図3参照)や操作パネル(図示せず)の配線と、撮影ボタン7Aの配線と、の共用も可能になる。
なお、撮影ボタン7Aの操作に基づく制御部8(
図7参照)の処理については、第1実施形態(
図8A、
図8B参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0080】
図14Aは、冷蔵庫が備える右側の冷蔵室ドア212の下部の断面斜視図である。
なお、
図14Aの構成は、
図13に対応している。
図14Aに示すように、右側の冷蔵室ドア212の撮影ボタン7Aは、ユーザによって押される樹脂製のスイッチ部71Aと、スイッチ部71Aの外側に貼られるラミネートフィルム72Aと、スイッチ部71Aの押圧に伴って所定の電気信号を発生させるスイッチ基板73Aと、を備えている。また、スイッチ基板73Aには、複数の配線80が接続されている。これらの配線80には、電力線や信号線が含まれている。なお、左側の冷蔵室ドア211(
図13参照)も同様の構成になっている。
【0081】
図14Bは、冷蔵庫が備える右側の冷蔵室ドア212の下部の断面図である。
なお、
図14Bの構成は、
図13や
図14Aに対応している。
図14Bに示すように、冷蔵室ドア212(扉)の内部において、撮影ボタン7Aの周囲の領域91aを他から仕切る隔壁92が設けられている。隔壁92には、撮影ボタン7Aに接続される配線80の挿通孔93が設けられている。挿通孔93には、この挿通孔93を塞ぐシール部材94が設置されている。このようなシール部材94として、例えば、ウレタンフォームが用いられる。そして、シール部材94に配線80が挿通されている。つまり、挿通孔93を介して配線80が挿通された状態で、シール部材94によって挿通孔93が塞がれている。
【0082】
このようなシール部材94を設けることで、製造時に冷蔵室ドア212の内部空間にウレタン等の断熱材が注入(充填)された際、挿通孔93を介して、断熱材が撮影ボタン7A側に漏れ出ることを防止できる。また、撮影ボタン7Aに接続されている配線80を隔壁92の上側の領域91bに引き出すことが可能になる。
【0083】
≪変形例≫
以上、本開示に係る冷蔵庫100等について各実施形態により説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、冷蔵庫100(
図2参照)の筐体1の上面にカメラユニット3が設けられる構成について説明したが、これに限らない。すなわち、筐体1の外側における別の所定位置にカメラユニット3が設けられるようにしてもよい。
【0084】
また、各実施形態では、カメラLED31c(
図5参照)が、レンズ31a(
図5参照)の後側に配置される構成について説明したが、これに限らない。例えば、レンズ31aの前側にカメラLEDが配置されるようにしてもよい。また、複数のカメラLEDが所定に配置されるようにしてもよい。
【0085】
また、各実施形態では、一例として、冷蔵室21の他、冷蔵室ドア211,212の庫内側をカメラユニット3で撮影する場合について説明したが、これに限らない。例えば、引出し式の製氷室ドア221(扉:
図1参照)や、上段冷凍室ドア231(扉)の他、野菜室ドア241(扉)や下段冷凍室ドア251(扉)のうち、少なくとも一つをカメラユニット3で撮影するようにしてもよい。
【0086】
また、各実施形態では、左右の冷蔵室ドア211,212に撮影ボタン7(
図3参照)が設けられる構成について説明したが、これに限らない。例えば、引出し式の製氷室ドア221(
図1参照)や、上段冷凍室ドア231の他、野菜室ドア241や下段冷凍室ドア251のうち、少なくとも一つに撮影ボタン(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0087】
また、各実施形態では、冷蔵室ドア211,212のうち少なくとも一方が開かれた場合(
図8AのS101:Yes)、制御部8が、庫内灯4を点灯させるとともに、カメラLED31cを点灯させる処理(S102)について説明したが、これに限らない。すなわち、冷蔵室ドア211,212のうち少なくとも一方が開かれた場合、制御部8が、庫内灯4とカメラLED31cとをタイミングを所定にずらして点灯させるようにしてもよい。
【0088】
また、各実施形態では、左右の冷蔵室ドア211,212のうち少なくとも一方が開かれてから、冷蔵室ドア211,212の両方が閉じられるまで、制御部8がカメラLED31cを点灯させ続ける場合について説明したが、これに限らない。例えば、露光調整(
図8AのS105)を行っていないとき、制御部8が所定のタイミグでカメラLED31cを消灯するようにしてもよい。
【0089】
また、第2実施形態では、冷蔵室ドア211,212(
図13参照)の下面に凹状の取手部211e,212eが設けられる構成について説明したが、これに限らない。例えば、冷蔵室ドア211,212に所定のドアハンドル(図示せず)が設けられた構成であってもよい。この場合において、ドアハンドルの外側に撮影ボタン(図示せず)が設けられてもよいし、また、ドアハンドル自体の所定箇所に撮影ボタン(図示せず)が設けられてもよい。
【0090】
また、各実施形態で説明した冷蔵庫100等は一例であり、他の形態の冷蔵庫又は貯蔵庫にも適用できる。例えば、片開き式の冷蔵室ドア(図示せず)を備える冷蔵庫や、ポータブル冷蔵庫(図示せず)にも各実施形態を適用できる。貯蔵庫に備えられた演算装置やセンサから情報を優先又は無線通信によって受信して撮影を実行可能で、貯蔵庫とは別体の撮影装置であってもよい。
【0091】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0092】
100,100A 冷蔵庫
1 筐体
10 開口
21 冷蔵室(貯蔵室)
211 冷蔵室ドア(扉、左ドア)
212 冷蔵室ドア(扉、右ドア)
211a,212a ヒンジ
211b,212b 内板
211e,212e 取手部
22 製氷室(貯蔵室)
221 製氷室ドア(扉)
23 上段冷凍室(貯蔵室)
231 上段冷凍室ドア(扉)
24 野菜室(貯蔵室)
241 野菜室ドア(扉)
25 下段冷凍室(貯蔵室)
251 下段冷凍室ドア(扉)
3 カメラユニット
4 庫内灯
5 ブザー
6 ドアセンサ
7,7A 撮影ボタン
8 制御部
31c カメラLED(照明部)
30 撮影部
54 携帯端末
61,62,63 領域
80 配線
91a 領域(撮影ボタンの周囲の領域)
92 隔壁
93 挿通孔
94 シール部材