(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】コンクリート柱
(51)【国際特許分類】
E04H 12/12 20060101AFI20240815BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20240815BHJP
E04C 3/36 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
E04H12/12
E04B1/30 H
E04C3/36
(21)【出願番号】P 2021189614
(22)【出願日】2021-11-22
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】羅 基峰
(72)【発明者】
【氏名】古市 護
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-220815(JP,A)
【文献】実開昭57-129805(JP,U)
【文献】特開2016-153598(JP,A)
【文献】実開昭58-027404(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/12
E04H 12/16
E04H 12/00
E04C 3/36
E04B 1/30
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートにて形成されたコンクリート部を有する一および他の柱体と、
これら一および他の柱体を上下に接続する
円筒状に形成された金属製の継手管と、を備え、
前記継手管に、予め設定されるモーメントに関する所定の要求性能を満たし、かつ、この要求性能に対する余裕度が前記一および他の柱体の各部よりも小さい弱点部が形成され
、
前記弱点部は、地際部から上方に離れて位置し、地上部の全長の中央部を含む範囲にある
ことを特徴とするコンクリート柱。
【請求項2】
一および他の柱体は、コンクリート部の互いに対向する端部に仕切り板を有し、
継手管は、前記仕切り板にそれぞれ固定されることで前記一および他の柱体を接続している
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート柱。
【請求項3】
継手管は、一および他の柱体のコンクリート部の端部の外面に一体的に位置する
ことを特徴とする請求項2記載のコンクリート柱。
【請求項4】
一および他の柱体は、コンクリート部に埋設され仕切り板に端部が保持される緊張材を有し、
継手管は、
前記緊張材よりも内側にて仕切り板間に位置する
ことを特徴とする請求項2記載のコンクリート柱。
【請求項5】
一および他の柱体は、コンクリート部に埋設された緊張材を有し、
継手管は、前記緊張材の端部をそれぞれ保持して前記コンクリート部の端部に一体的に配置される保持部を有して前記一および他の柱体間に位置する
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート柱。
【請求項6】
継手管は、一および他の柱体の仕切り板間に位置する
ことを特徴とする請求項2記載のコンクリート柱。
【請求項7】
継手管は、仕切り板に対して固定部材により固定される被固定部を有する
ことを特徴とする請求項5記載のコンクリート柱。
【請求項8】
一および他の柱体は、継手管に内挿され、
前記継手管と前記一および他の柱体との間に充填されて前記継手管と前記一および他の柱体とを接合する充填材を備える
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート柱。
【請求項9】
継手管は、弱点部を形成するスリットを有する
ことを特徴とする請求項1ないし8いずれか一記載のコンクリート柱。
【請求項10】
継手管は、蛇腹状に形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし9いずれか一記載のコンクリート柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一および他の柱体を継手管により上下に接続するコンクリート柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート柱は、主としてPC構造であり、全長に亘り配筋された主鉄筋である緊張鋼材(PC鋼材)によりコンクリートにプレストレスが掛けられ、また全長もしくは一部分に配筋された非緊張鋼材や組立筋により、要求性能を満足する設計耐力を有するように形成される。
【0003】
コンクリート柱の要求性能は、自重に基づく鉛直荷重、風荷重に基づく水平荷重、およびそれらの荷重が道路附属物の支柱に関して偏心して作用することに起因するモーメントに対し、地上部が耐えられる構造に設計されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭54-83231号公報
【文献】特開2005-155144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート柱は、その使用上、地際部に大きな応力が発生する場合が多いため、過大な応力によって地際部で破壊する場合が多く、また、破壊形態はコンクリートの圧縮破壊となり、脆性的である。
【0006】
コンクリート柱が地際部で折損したとき、折損箇所より上部が倒れて道路を塞いだり、倒壊部が周辺の家屋などに衝撃を与える二次災害が生じたりするおそれがある。
【0007】
さらに、災害復旧時は、クレーンやクラッシャなどの設備が必要であり、また、これらの設備を用いて撤去する際には、コンクリート破片が飛散するため、撤去しづらい。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、折損時の周辺被害を抑制できるとともに、折損後の撤去が容易なコンクリート柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のコンクリート柱は、コンクリートにて形成されたコンクリート部を有する一および他の柱体と、これら一および他の柱体を上下に接続する円筒状に形成された金属製の継手管と、を備え、前記継手管に、予め設定されるモーメントに関する所定の要求性能を満たし、かつ、この要求性能に対する余裕度が前記一および他の柱体の各部よりも小さい弱点部が形成され、前記弱点部は、地際部から上方に離れて位置し、地上部の全長の中央部を含む範囲にあるものである。
【0010】
請求項2記載のコンクリート柱は、請求項1記載のコンクリート柱において、一および他の柱体は、コンクリート部の互いに対向する端部に仕切り板を有し、継手管は、前記仕切り板にそれぞれ固定されることで前記一および他の柱体を接続しているものである。
【0011】
請求項3記載のコンクリート柱は、請求項2記載のコンクリート柱において、継手管は、一および他の柱体のコンクリート部の端部の外面に一体的に位置するものである。
【0012】
請求項4記載のコンクリート柱は、請求項2記載のコンクリート柱において、一および他の柱体は、コンクリート部に埋設され仕切り板に端部が保持される緊張材を有し、継手管は、緊張材よりも内側にて仕切り板間に位置するものである。
【0013】
請求項5記載のコンクリート柱は、請求項1記載のコンクリート柱において、一および他の柱体は、コンクリート部に埋設された緊張材を有し、継手管は、前記緊張材の端部をそれぞれ保持して前記コンクリート部の端部に一体的に配置される保持部を有して前記一および他の柱体間に位置するものである。
【0014】
請求項6記載のコンクリート柱は、請求項2記載のコンクリート柱において、継手管は、一および他の柱体の仕切り板間に位置するものである。
【0015】
請求項7記載のコンクリート柱は、請求項5記載のコンクリート柱において、継手管は、仕切り板に対して固定部材により固定される被固定部を有するものである。
【0016】
請求項8記載のコンクリート柱は、請求項1記載のコンクリート柱において、一および他の柱体は、継手管に内挿され、前記継手管と前記一および他の柱体との間に充填されて前記継手管と前記一および他の柱体とを接合する充填材を備えるものである。
【0017】
請求項9記載のコンクリート柱は、請求項1ないし8いずれか一記載のコンクリート柱において、継手管は、弱点部を形成するスリットを有するものである。
【0018】
請求項10記載のコンクリート柱は、請求項1ないし9いずれか一記載のコンクリート柱において、継手管は、蛇腹状に形成されているものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、折損時の周辺被害を抑制できるとともに、折損後の撤去が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態のコンクリート柱を示す側面図、(b)は(a)の曲げモーメント図である。
【
図2】同上コンクリート柱の一部を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態のコンクリート柱の一部を示す断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施の形態のコンクリート柱の一部を示す断面図である。
【
図5】本発明の第4の実施の形態のコンクリート柱の一部を示す断面図である。
【
図6】本発明の第5の実施の形態のコンクリート柱の一部を示す断面図である。
【
図7】本発明の第6の実施の形態のコンクリート柱の一部を示す断面図である。
【
図8】本発明の第7の実施の形態のコンクリート柱の継手管を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第8の実施の形態のコンクリート柱の継手管を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1(a)において、1はコンクリート柱である。コンクリート柱1は、コンクリート製の一の柱体2とコンクリート製の他の柱体3とが継手管4を介して接続されて構成される。本実施の形態において、コンクリート柱1は、プレストレストコンクリート柱である。
【0023】
一の柱体2は、本実施の形態では下柱である。一の柱体2は、円筒状に形成されたコンクリート部5を有する。コンクリート部5は、コンクリート柱1の元口である下端部が設置部6に埋め込まれ、他の柱体3に対向する上端部側が設置部6から上方に露出している。コンクリート部5は、コンクリート柱1の元口である下端部から先端部へと、徐々に縮径されるテーパ形状に形成されている。これに限らず、コンクリート部5には、径寸法が一定となるストレート部が少なくとも一部に形成されていてもよい。コンクリート部5には、緊張材7が軸方向に沿って埋設されている。緊張材7により、一の柱体2(コンクリート部5)には、緊張力(プレストレス)が付与されている。なお。コンクリート部5には、その他に、非緊張材および/または螺旋筋などが埋設されていてもよい。本実施の形態において、緊張材7は、仕切り板8に保持されている。仕切り板8は、コンクリート部5の両端部に一体的に配置されている。仕切り板8は、コンクリート部5の両端部と同径または略同径の円環状または円板状に形成されている。仕切り板8に緊張材7の端部が係止されている。
【0024】
他の柱体3は、本実施の形態では上柱である。他の柱体3は、円筒状に形成されたコンクリート部10を有する。コンクリート部10は、全体が設置部6から上方に露出している。コンクリート部10は、一の柱体2に対向する下端部からコンクリート柱1の末口となる先端部へと、徐々に縮径されるテーパ形状に形成されている。これに限らず、コンクリート部10には、径寸法が一定となるストレート部が少なくとも一部に形成されていてもよい。コンクリート部10には、緊張材11が軸方向に沿って埋設されている。緊張材11により、他の柱体3(コンクリート部10)には、緊張力(プレストレス)が付与されている。なお。コンクリート部10には、その他に、非緊張材および/または螺旋筋などが埋設されていてもよい。本実施の形態において、緊張材11は、仕切り板12に保持されている。仕切り板12は、コンクリート部10の両端部に一体的に配置されている。仕切り板12は、コンクリート部10の両端部と同径または略同径の円環状または円板状に形成されている。仕切り板12に緊張材11の端部が係止されている。
【0025】
継手管4は、円筒状に形成されている。継手管4は、金属により形成された管体である。継手管4は、径寸法が一定または略一定のストレート形状でもよいし、下端部から上端部へと徐々に縮径されるテーパ形状でもよい。
【0026】
本実施の形態において、
図2に示されるように、継手管4は、一の柱体2および他の柱体3と一体的に成形される。継手管4は、一端側である下端部に一の柱体2の上端部が内挿され、他端側である上端部に他の柱体3の下端部が内挿される。図示される例では、継手管4は、コンクリート部5,10の外面に沿って、継手管4の下端部および上端部がコンクリート部5,10に埋め込まれて一体化されている。また、継手管4は、仕切り板8,12に溶接などにより固定されている。つまり、継手管4の内周面に仕切り板8,12の外周縁が一体的に固定されている。
【0027】
継手管4内において、一の柱体2と他の柱体3とは上下に離れて位置する。そのため、コンクリート柱1には、継手管4の下端部と上端部との間に、弱点部14が設定されている。したがって、弱点部14は、一の柱体2と他の柱体3との間に位置し、コンクリート柱1の地上部において、地際部よりも上方の位置にある。図示される例では、弱点部14は、コンクリート柱1の軸方向の中央部付近に位置する。本実施の形態において、弱点部14は、コンクリート、緊張材、非緊張材、および、螺旋筋などの補強部材が配置されていない部位、つまり継手管4のみが存在する部位である。
【0028】
弱点部14の強度は、継手管4の材質、および、肉厚に応じて設定可能である。弱点部14は、予め設定されるモーメント(曲げモーメント)に関する所定の要求性能を満たすように設定されている。このモーメントは、コンクリート柱1の自重に基づく鉛直荷重、風荷重に基づく水平荷重、およびそれらの荷重が道路附属物の支柱に関して偏心して作用することに起因し、コンクリート柱1の末口から地際部へと、末口からの距離に直線状に比例して徐々に大きくなるように設定されている。
図1(b)に示されるように、このモーメントに所定の安全率、例えば2倍を掛けたものを要求性能(最大モーメント2M)として、コンクリート柱1は、弱点部14も含めて、全体として各々の横断面において耐え得る曲げモーメントMuが要求性能を上回ることができるように各部の強度が設定されている。弱点部14は、この要求性能に対する余裕度(Mu/2M)が、一および他の柱体2,3の各部よりも小さく設定されており、コンクリート柱1中の各部の中で最小となっている。一例として、
図1(b)には、長さ12m、ひび割れ試験荷重3.5kN(=M)、末口である先端部から4.5~5.0mの位置を継手管4とし、全長に沿ってテーパ(直径増加係数)が1/160~1/75を有するコンクリート柱1が示されている。
【0029】
次に、第1の実施の形態のコンクリート柱1の製造方法を説明する。
【0030】
継手管4と仕切り板8,12とを溶接などにより固定し、仕切り板8,8に緊張材7の両端部を係止し、仕切り板12,12間に緊張材11の両端部を係止して、それらを型枠にセットし、型枠内にコンクリートを流し込み、仕切り板8,12を引っ張って緊張材7,11を緊張させつつ、コンクリート部5,10を遠心成形する。このときに、継手管4の内部にコンクリートが回り込まないようにする。
【0031】
コンクリート部5,10が硬化した後、緊張材7,11に作用している緊張力を解放することで、緊張材7,11に付与した緊張力に応じてコンクリート部5,10に所定のプレストレスを導入し、コンクリート柱1を型枠から脱型する。
【0032】
そして、製造されたコンクリート柱1は、一および他の柱体2,3を上下に接続する金属製の継手管4に、予め設定されるモーメントに関する所定の要求性能を満たし、かつ、この要求性能に対する余裕度が一および他の柱体2,3の各部よりも小さい弱点部14が形成されている。
【0033】
そのため、地震などによって過大な応力が加わったとき、コンクリート部5,10が破損する前に、要求性能に対する余裕度が最も小さい継手管4の弱点部14の位置での座屈が先行し(
図1(a)の二点鎖線に示す)、コンクリート柱1の急激な折損を回避する。したがって、弱点部14の位置を任意の位置に設定することにより、破壊部位を制御でき、倒壊範囲を小さくできるので、折損箇所より上部が倒れて道路を塞いだり、倒壊部が周辺の家屋などに衝撃を与える二次災害が生じたりするなどの、折損時の周辺被害を抑制できる。また、コンクリート部5,10の圧縮破壊が抑制されるので、コンクリート破片の飛散や落下による二次災害を抑制できるとともに、撤去作業も容易となる。しかも、折損状況によっては、屈曲した弱点部14よりも下方に位置する一の柱体2の再利用も可能となる。
【0034】
また、一および他の柱体2,3のコンクリート部5,10の互いに対向する端部に配置された仕切り板8,12に継手管4をそれぞれ固定することで一および他の柱体2,3を接続するため、一および他の柱体2,3を継手管4によって容易に接続できる。
【0035】
本実施の形態では、継手管4を、一および他の柱体2,3のコンクリート部5,10の端部の外面に一体的に配置することで、一および他の柱体2,3の成形によってこれら一および他の柱体2,3を継手管4で接続できるので、コンクリート柱1の設置現場での一および他の柱体2,3の接続作業が不要となり、工期の短縮を図ることができる。
【0036】
次に、第2の実施の形態について、
図3を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
本実施の形態のコンクリート柱1は、一および他の柱体2,3と継手管4とが一体的に形成される一体型のものであって、継手管4が緊張材7,11よりも内側にて仕切り板8,12間に位置するものである。継手管4は、仕切り板8,12の内径側に溶接などにより固定されている。つまり、継手管4の外周面に仕切り板8,12の内周縁が一体的に固定されている。
【0038】
このコンクリート柱1を製造する際には、継手管4と仕切り板8,12とを溶接などにより固定し、これら仕切り板8,12に挿通した緊張材を両端部の仕切り板8,12に係止し、それらを型枠にセットし、型枠内にコンクリートを流し込み、仕切り板8,12を引っ張って緊張材を緊張させつつ、コンクリート部5,10を遠心成形する。
【0039】
コンクリート部5,10が硬化した後、コンクリート柱1を型枠から脱型し、継手管4の外部に露出する緊張材(
図3の二点鎖線に示す)をカットして緊張力を解放し、コンクリート部5,10に所定のプレストレスを導入する。カットにより生じた緊張材7,11の端部には、防錆処理を施す。
【0040】
このように、継手管4を緊張材7,11よりも内側にて仕切り板8,12間に配置することで、一および他の柱体2,3の成形用の型枠において、コンクリートが流し込まれる部位の外側に継手管4を配置することが可能となるため、コンクリートが継手管4の内部に流れ込まず、製造が容易となる。
【0041】
なお、第2の実施の形態において、一の柱体2の上端部の仕切り板8および他の柱体3の下端部の仕切り板12に代えて、
図4に示される第3の実施の形態のように、継手管4の両端部にフランジ状の保持部16,17を形成し、第2の実施の形態と同様に、保持部16,17に緊張材7,11を係止して一および他の柱体2,3間に継手管4を位置させてもよい。この場合には、継手管4を溶接などにより固定する工程が不要となり、製造性がより良好になる。
【0042】
次に、第4の実施の形態について、
図5を参照して説明する。なお、各実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
本実施の形態のコンクリート柱1は、組み立て式のコンクリート柱であり、一および他の柱体2,3を成形した後に、継手管4を接合させるものである。
【0044】
継手管4は、遠心成形などにより成形された一の柱体2の上端部の仕切り板8と他の柱体3の下端部の仕切り板12との間に溶接などにより固定される。
【0045】
このように、継手管4を一および他の柱体2,3の仕切り板8,12間に配置して一および他の柱体2,3を継手管4で接続することにより、一般的なコンクリート柱の生産工程で容易に製造した一の柱体2および他の柱体3を使用してコンクリート柱1を容易に構成できる。
【0046】
次に、第5の実施の形態について、
図6を参照して説明する。なお、各実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本実施の形態のコンクリート柱1は、組み立て式のコンクリート柱であり、一および他の柱体2,3を成形した後に、継手管4を一および他の柱体2,3に固定部材18,19により固定するものである。
【0048】
継手管4は、円筒状の継手管本体部20と、継手管本体部20の両端部にフランジ状に形成された被固定部21,22と、を一体的に有する。被固定部21,22は、板状に形成され、継手管本体部20の軸方向と直交または略直交する方向に沿っている。
【0049】
本実施の形態において、固定部材18は、ボルトであり、固定部材19は、ナットである。その他、リベットなどの固定部材により継手管4を一および他の柱体2,3に固定する構成としてもよい。
【0050】
そして、コンクリート柱1を組み立てるには、予め遠心成形などにより成形された一の柱体2を設置し、一の柱体2の上端部に位置する仕切り板8に継手管4の被固定部21を載置し、仕切り板8と被固定部21とを固定部材18,19により締結し固定する。
【0051】
次いで、予め遠心成形などにより成形された他の柱体3の下端部に位置する仕切り板12を継手管4の被固定部22に載置し、仕切り板8と被固定部22とを固定部材18,19により締結し固定する。この結果、一の柱体2と他の柱体3とが継手管4を介して接続され、コンクリート柱1が組み立てられる。
【0052】
このように、継手管4の被固定部21,22を仕切り板8,12に対して固定部材18,19により固定することで、継手管4によって一および他の柱体2,3を容易に接続できる。
【0053】
次に、第6の実施の形態について、
図7を参照して説明する。なお、各実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本実施の形態のコンクリート柱1は、組み立て式のコンクリート柱であり、一および他の柱体2,3を成形した後に、継手管4に一および他の柱体2,3を内挿して接続するものである。
【0055】
継手管4は、少なくとも一および他の柱体2,3が挿入される部分の内径寸法が、一および他の柱体2,3(コンクリート部5,10)の外径寸法よりも僅かに大きく形成されている。
【0056】
継手管4に内挿される一および他の柱体2,3のコンクリート部5,10の端部には、座板部25,26が配置されている。座板部25,26は、円環状または円板状に形成されている。座板部25は、一の柱体2(コンクリート部5)の上端部の外径寸法と等しいまたは略等しい、または、一の柱体2(コンクリート部5)の上端部の外径寸法より小さい外径寸法を有する。同様に、座板部26は他の柱体3(コンクリート部10)の上端部の外径寸法と等しいまたは他の柱体3(コンクリート部10)の上端部の外径寸法よりも大きい外径寸法を有する。
【0057】
座板部25,26は、継手管4の内部に位置する状態で、継手管4の軸方向と直交または略直交する方向に沿っている。座板部25,26は、継手管4の内部で継手管4の軸方向すなわち上下方向に互いに離れて位置し、外周面が継手管4の内周面と当接することで一および他の柱体2,3の継手管4への挿入位置を規制する。継手管4の内周面と一および他の柱体2,3(コンクリート部5,10)の外周面との隙間に、充填材27,28が充填されて、一および他の柱体2,3が継手管4に対して固定されている。
【0058】
充填材27,28は、予め円筒状などに成形された合成樹脂製などのスペーサなどが用いられる。
【0059】
そして、コンクリート柱1を組み立てるには、予め遠心成形などにより成形された一の柱体2を設置し、一の柱体2の上端部に充填材27を取り付ける。充填材27は、接着剤などにより一の柱体2に固定されてもよい。また、充填材27の外周側に接着剤などが塗布されてもよい。
【0060】
次いで、充填材27を取り付けた一の柱体2の上端部を、別途予め形成された継手管4に嵌挿する。
【0061】
さらに、予め遠心成形などにより成形された他の柱体3の下端部に充填材28を取り付ける。充填材28は、接着剤などにより他の柱体3の下端部に固定されてもよい。また、充填材28の外周側に接着剤などが塗布されてもよい。
【0062】
そして、充填材28を取り付けた他の柱体3の下端部を、継手管4に上方から嵌挿する。この結果、一の柱体2と他の柱体3とが継手管4を介して接続され、コンクリート柱1が組み立てられる。
【0063】
このように、一および他の柱体2,3のコンクリート部5,10の互いに対向する端部を継手管4に挿入することによって一および他の柱体2,3を継手管4で容易に接続できるため、コンクリート部5,10の端部に特別な加工を必要とせず、一般的なコンクリート柱の生産工程で容易に製造した一の柱体2および他の柱体3を使用できる。また、完成したコンクリート柱1の高さにばらつきが生じにくい。
【0064】
なお、充填材27,28の少なくともいずれかは、樹脂モルタル、あるいは接着剤などの流体状の固定液を固化させたものでもよい。この場合、コンクリート柱1の製造方法としては、充填材27,28を取り付ける工程に代えて、固定液を塗布する工程を用いることで、同様にコンクリート柱1を製造できる。
【0065】
なお、上記の各実施の形態において、
図8に示される第7の実施の形態のように、継手管4にスリット30を形成し、このスリット30により弱点部14を構成するようにしてもよいし、
図9に示される第8の実施の形態のように、継手管4を、複数の段差部31を有する蛇腹状に形成し、その段差部31により弱点部14を構成するようにしてもよいし、これらを組み合わせてもよい。これらの構成により、狙った位置に容易に弱点部14を設定でき、過大な応力に対しコンクリート柱1を所望の位置から折損させることができる。
【0066】
また、上記の各実施の形態において、弱点部14は、緊張材、非緊張材、および、螺旋筋などが配置されていない部位としたが、これに限らず、モーメントに関する所定の要求性能を満たし、かつ、この要求性能に対する余裕度が一および他の柱体2,3の各部よりも小さく形成できれば、緊張材、非緊張材、および、螺旋筋などの補強部材が配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 コンクリート柱
2 一の柱体
3 他の柱体
4 継手管
5,10 コンクリート部
7,11 緊張材
8,12 仕切り板
14 弱点部
16,17 保持部
18,19 固定部材
21,22 被固定部
27,28 充填材
30 スリット