(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】検出装置用の光学カバー
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
G01S7/481 A
(21)【出願番号】P 2021517264
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2019075795
(87)【国際公開番号】W WO2020064794
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-08
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】リ, メイジエ
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】フラセレ, クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ランブリット, トーマス
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/198228(WO,A1)
【文献】特表2018-526641(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107064906(CN,A)
【文献】特開2015-132729(JP,A)
【文献】特開2014-142293(JP,A)
【文献】特開2015-025770(JP,A)
【文献】特開平09-113621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0231635(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03255456(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0026020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G01J 1/00 - 1/60
11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置(100)であって、前記検出装置(100)が、
a.少なくとも1つの光源(1)及び少なくとも1つの光感知要素(2)を含む光学装置(101)、ただし、前記少なくとも1つの光源(1)と前記少なくとも1つの光感知要素(2)は、前記検出装置(100)の内側で光学的に分断されている、と、
b.前記光学装置(101)を封入し、且つ、前記光学装置に対向する1つの内部表面(103)及び前記内部表面の反対側の外部表面(102)を有する光学カバー(5)を含む保護ハウジング(4)と
を含み、
(i)前記光学カバー(5)は、前記光学装置(101)の動作波長において透明であり、
(ii)前記光学カバー(5)は、少なくとも2つの別個の開口を含み、第1開口(51)は、前記光源(1)に対向しており、第2開口(52)は、前記光感知要素(2)に対向しており、
前記光学カバー(5)は、迷光が前記光学カバー(5)内で前記光源(1)から前記光感知要素(2)へと伝播することを回避するように、前記光源(1)及び前記光感知要素(2)の視野の外側の光学的分断ゾーン(9)内で少なくとも前記第1開口(51)と前記第2開口(52)の間に配置された拡散要素、及び/又は波長変更要素、或いはこれらの組合せを与えられた1つの部品として作られており、前記拡散要素は
、内部気泡、内部化学粒子
、回折格子のうちから選択されていることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記拡散要素、及び/又は波長変更要素、或いは、これらの組合せは、前記光学カバー(5)の少なくとも1つの表面上に与えられているか、或いは、前記光学カバー(5)とラミネートされているか、或いは、前記光学カバー(5)の内側に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の検出装置(100)。
【請求項3】
検出装置(100)であって、前記検出装置(100)が、
a.少なくとも1つの光源(1)及び少なくとも1つの光感知要素(2)を含む光学装置(101)、ただし、前記少なくとも1つの光源(1)と前記少なくとも1つの光感知要素(2)は、前記検出装置(100)の内側で光学的に分断されている、と、
b.前記光学装置(101)を封入し、且つ、前記光学装置に対向する1つの内部表面(103)及び前記内部表面の反対側の外部表面(102)を有する光学カバー(5)を含む保護ハウジング(4)と
を含み、
(i)前記光学カバー(5)は、前記光学装置(101)の動作波長において透明であり、
(ii)前記光学カバー(5)は、少なくとも2つの別個の開口を含み、第1開口(51)は、前記光源(1)に対向しており、第2開口(52)は、前記光感知要素(2)に対向しており、
前記光学カバー(5)は、迷光が前記光学カバー(5)内で前記光源(1)から前記光感知要素(2)へと伝播することを回避するように、前記光源(1)及び前記光感知要素(2)の視野の外側の光学的分断ゾーン(9)内で少なくとも前記第1開口(51)と前記第2開口(52)の間に配置された吸収要素を与えられた1つの部品として作られていること、及び(a)前記吸収要素(921)は、前記光学カバー(5)の両側の表面上に与えられているか、或いは、(b)前記光学カバー(5)が二つのシート(501,503)を含み、前記吸収要素(922)が前記二つのシートの間にラミネートされているか、或いは、(c)前記光学カバー(5)が二つのシート(501,503)を含み、中間層(502)が前記二つのシートの間にラミネートされており、前記中間層(502)との接触状態にあるそれぞれのシートの表面上に前記吸収要素(923)が与えられていることを特徴とする検出装置。
【請求項4】
前記吸収要素は、黒色エナメル又は不透明熱可塑性中間層であることを特徴とする、請求項3に記載の検出装置(100)。
【請求項5】
前記光学カバー(5)は、ガラスシートから作られている、請求項1~4のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項6】
前記光学カバー(5)は、750~1650nmの波長範囲内において5m
-1未満の吸収係数を有するガラスシートから作られている、請求項1~5のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項7】
前記光学装置(101)は、LIDAR検知装置であり、前記LIDAR検知装置は、3Dマッピングを可能にするスキャニング、回転式のLiDAR装置であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項8】
前記光学装置(101)は、3Dマッピングを可能にし、且つ、750~1650nmの範囲の波長のレーザービームを放出する固体状態LiDAR装置であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項9】
前記光学装置(101)は、自動車グレージングの内部面上において与えられていることを特徴する、請求項1~8のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項10】
前記光学装置は、自動車装飾物又はトリム要素の内部表面上において与えられていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項11】
光学カバー(5)であって、前記光学カバー(5)は、少なくとも2つの別個の開口を含み、第1開口(51)は、検出装置(100)の光源(1)に対向しており、第2開口(52)は、検出装置(100)の光感知要素(2)に対向しており、
前記光学カバー(5)は、迷光が前記光学カバー(5)内で前記光源(1)から前記光感知要素(2)へと伝播することを回避するように、前記光源(1)及び前記光感知要素(2)
の視野の外側の光学的分断ゾーン(9)内で少なくとも前記第1開口(51)と前記第2開口(52)の間に配置された拡散要素、及び/又は波長変更要素、或いは、これらの組合せを与えられた1つの部品として作られており、前記拡散要素は
、内部気泡、内部化学粒子
、回折格子のうちから選択されていることを特徴とする、光学カバー(5)。
【請求項12】
光学カバー(5)であって、前記光学カバー(5)は、少なくとも2つの別個の開口を含み、第1開口(51)は、検出装置(100)の光源(1)に対向しており、第2開口(52)は、検出装置(100)の光感知要素(2)に対向しており、
前記光学カバー(5)は、迷光が前記光学カバー(5)内で前記光源(1)から前記光感知要素(2)へと伝播することを回避するように、前記光源(1)及び前記光感知要素(2)
の視野の外側の光学的分断ゾーン(9)内で少なくとも前記第1開口(51)と前記第2開口(52)の間に配置された吸収要素を与えられた1つの部品として作られていること、及び(a)前記吸収要素(921)は、前記光学カバー(5)の両側の表面上に与えられているか、或いは、(b)前記光学カバー(5)が二つのシート(501,503)を含み、前記吸収要素(922)が前記二つのシートの間にラミネートされているか、或いは、(c)前記光学カバー(5)が二つのシート(501,503)を含み、中間層(502)が前記二つのシートの間にラミネートされており、前記中間層(502)との接触状態にあるそれぞれのシートの表面上に前記吸収要素(923)が与えられていることを特徴とする、光学カバー(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学検知装置と、前記検知装置を封入する保護ハウジングとを含む、電磁波によって動作する光学装置に関する。前記保護ハウジングは、光学装置に対向し、且つ、前記光学装置の動作波長において透明である、少なくとも1つの光学カバーを含む。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、光学装置と対向し、且つ、前記光学装置の動作波長において透明である、少なくとも1つの光学カバーを含む保護ハウジング内に封入された光学装置としてのLiDARに関する。
【背景技術】
【0003】
光源及び光学センサなどの光学装置は、電磁波によって動作している。これらの種類の装置は、製造、自動車、電子、軍事、及び日々の暮らしを含む様々な領域において広く使用されている。これらの用途のほとんどにおいて、光学装置を保護するために、美的配慮を実行するために、且つ/又は、場合によっては、いくつかの光学的機能を実行するために、光学カバーが必要とされている。
【0004】
光学カバーは、ガラス、プラスチック、及び/又はその他の材料から作られることができると共に、多くの形状を有することができる。光学カバーは、平坦なものであってもよく、或いは、折り曲げられていてもよい。光学カバーは、光学装置と内部的に対向する1つの内部表面と、一般的には外部環境との接触状態にある、内部表面とは反対側において接触状態にある1つの表面とを有する。通常、これら2つの表面は、互いに平行である。従って、光学カバーは、残念ながら、電磁波用の導波路となり、これにより、組立体内において迷光を生成する場合がある。
【0005】
光学装置の多くにおいて、この導波現象は、光学装置の最適性能を実現するために、制限されるか、或いは、場合によっては回避されることを要する。これは、例えば、光源要素から検出対象のターゲットまでレーザー光を放出すると共に、光検出要素により、ターゲットからの反射されたレーザー光を受け取る、LiDAR装置の場合に当て嵌まる。
【0006】
光学カバーの内側における予期しない導波現象を回避するために、別個の光学開口を使用することが一般的である。例えば、従来技術において既知である光学装置としてのLidarの場合、2つの別個の光学カバーが使用される場合があり、第1光学カバーは、(放出専用である)光源要素をカバーしており、第2光学カバーは、(反射専用である)検出要素をカバーしている。従って、光源は、赤外(IR:Infra-Red)光を光学カバーを通じてターゲットまで放出しており、反射されて戻ってくる光は、第2光学カバーを通じて検出要素へと伝播している。2つの光学カバーは、予期しない光を遮断するため、相互に物理的に分離されている。
【0007】
しかしながら、別個の光学カバーの使用は、以下の欠点を有する。
【0008】
-光学カバー自体の費用の増大。切断及びエッジの仕上げのための追加の費用が常に必要とされている。例えば、加熱ワイヤを有する自動車用グレージングなどの更なる機能を有する光学カバーの場合には、2つの機能的な加熱システムを有するために、費用がほぼ倍増している。また、これは、しばしば、より高精度のアライメントや追加機能のより慎重な設計のように、より小さな部品を製造するための厳しい要件を製造設備に対して課することになり、これも、更なる費用の原因となっている。
【0009】
-光学装置のハウジングにおける複雑さ及び費用の増大。ハウジングは、十分な機械的抵抗力を伴って別個にそれぞれの光学カバーを保持するように設計しなければならず、組立体は、より複雑になり、要求が厳しくなる。
【0010】
-パッケージング全体の機械的抵抗力、耐湿性、及び/又は化学的抵抗力の低下。
【0011】
-用途の制限。フロントガラス、バックライト(backlite)、サイドライト(sidelite)、及びサンルーフのような自動車用途の場合には、光学カバーとしてグレージング又はプラスチックの1つの部品を有することが好ましい。
【0012】
-一部の場合において、例えば、光学装置が車両のフロントガラス上に与えられているとき、光学カバーの透明性を維持することが困難である。フロントガラスのような自動車グレージングをクリーニングするために広く使用されているワイパーは、別個の光学カバーとハウジングを組み合わせた際に、十分に効率的なものとならない。その理由は、拭き取りが効率的に機能するほど十分に滑らかではないからである。
【0013】
-美観を考慮した場合には、ほとんどの場合において、好ましくない。
【0014】
従来技術においては、以上に述べた課題を回避するために、2つの部品として作られた光学装置、特にLiDAR装置を保護する光学カバーが知られている。放出された光の一部分は、ターゲットとの相互作用を伴うことなしに、光学カバーを通じて検出ユニットまで直接ガイドされることができる。従って、この光の部分は、ノイズを生成する可能性があり、或いは、LiDAR装置にとって偽信号となる可能性があり、これらは、可能な限り低減されることを要する。3つのRGB光源を有する表示システムや複数の検出ゾーンを有する検出アレイなどのような、1つの光学装置内の異なる光学ユニットが相互に光学的に隔離されていなければならないことを必要としている、いくつかのその他の例を列挙することができる。
【発明の概要】
【0015】
従って、本発明は、光学装置用の光学カバー内における予期しない導波された電磁波を削減又は除去するための解決策を提案する。
【0016】
本発明は、光学装置用の光学カバー内における予期しない導波された電磁波を低減又は除去するための解決策を提案している。本発明では光学カバーは、必要とされている波長用の複数の実質的に別個である光学開口を与えられた光学カバーの1つの部品として作られている。
【0017】
従って、本発明は、検出装置に関し、検出装置は、
a.少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光感知要素を含む光学装置、ただし、前記少なくとも1つの光源と前記少なくとも1つの光感知要素は、前記検出装置の内側で光学的に分断されている(optically decoupled)、と、
b.前記光学装置を封入し、且つ、前記光学装置に対向する1つの内部表面及び前記内部表面の反対側の外部表面を有する光学カバーを含む保護ハウジングと
を含み、
(i)前記光学カバーは、前記光学装置の動作波長において透明であり、
(ii)前記光学カバーは、少なくとも2つの別個の開口を含み、第1開口は、前記光源に対向しており、第2開口は、前記光感知要素に対向している。
【0018】
本発明によれば、光学カバーは、迷光が光学カバー内で光源から光感知要素へと伝播することを回避するように、光源及び光感知要素の視野の外側に配置された、拡散、吸収、多層要素、及び/又は波長変更要素、或いはこれらの組合せを与えられた1つの単一部品として作られている。
【0019】
本発明は、光学カバーの1つの部品が、特定の波長用の複数の実質的に別個である光学開口を与えるように、光学装置用の光学カバー内の予期しない導波された電磁波を低減又は除去するための解決策を提案している。これらの解決策は、後述するように、拡散、吸収、多層要素、及び/又は波長変更要素の使用を含む。
【0020】
本発明によれば、光学開口は、光源要素及び光感知要素の視野に対向し、且つ、前記光学装置の動作波長において透明であるゾーンとして理解されなければならない。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、拡散、吸収、多層要素、及び/又は波長変更要素、或いはこれらの組合せは、迷光が光学カバー内で光源から光検知要素まで伝播することを回避するように、光源及び光感知要素の視野(FOV:Field Of Field)の外側に配置されている。
【0022】
迷光は、検出装置内では意図されていなかった、光学カバー内の光である。この光は、意図された出所からのものであってもよいが、意図されたもの以外の経路を辿る場合もあり、或いは、これは、意図された出所以外の出所からのものであってもよい。この光は、しばしば、動作限度をシステムのダイナミックレンジに課すことになり、これは、システムが暗くなりうる方式を制限することにより、信号対ノイズ比又はコントラスト比を制限している。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、ランダムな及び周期的な構造の両方の拡散要素が、予期しない導波された電磁波が光学カバーの内側でもはや導波されないように、これらの電磁波をその他の方向に拡散又は散乱させるために、使用されることができる。これらの拡散要素は、ランダム表面のマイクロ構造、内部気泡、内部化学粒子、マイクロ構造アレイ、回折格子、及び本発明に適したすべての既知の拡散要素を含むことができる。これらは、光学カバーの内側で、或いは、その表面上で、直接生成されることが可能であり、光学カバー上の更なる要素として適用することもできる。光学カバーが、ラミネートされたグレージングである場合には、表面における拡散要素は、これらを中間層との接触状態において表面において配置することにより、グレージングの内側に配置することもできる。酸エッチング、サンドブラスト、レーザーブラスト、イオン注入、光リソグラフィなどを含む、拡散構造を生成するために使用されることができる様々な技法が存在している。グレージング産業においては、専用のシルクスクリーニングによるエナメル印刷により、エナメル拡散パターンを生成することもできる。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、吸収要素を使用することができる。吸収要素は、特定の波長における予期しない電磁波を、それらが1つの光学開口から別のものに導波される前に、効率的に吸収することができる。異なる状況に応じて、異なる吸収要素を使用することができる。グレージングの場合には、グレージング表面の一面又は両面上に局所的に印刷することができる吸収要素として、黒色エナメルを使用することができる。ラミネートされたグレージングの場合には、局所的に吸収するように、中間層を変更又は改造することができる。カバーとしてラミネートされたグレージングを使用しているLiDARの場合は、使用されている中間層(例えば、PVB)を第2中間層によって置換するために、ダイカット技法を使用することが可能であり、この場合には、光源ユニットの光学開口と検出ユニットの光学開口を分離する必要がある。LiDARのIR光の場合には、第2中間層は、可能な限り、ITO又は黒色PVBのように、光学装置の動作波長を吸収するべきである。或いは、この代わりに、中間層は、2つの光学開口の間に配置された吸収要素として黒色印刷PVBを有するために、印刷パターンを有するように調製することもできる。任意の光学カバーにおいて、例えば、黒色シリコーンパッドなどの更なる吸収要素を2つの光学開口の間に与えることができる。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、多層要素を使用することができる。多層要素は、特定の入射角度において特定の波長について反射防止性(AR:Anti-Reflective)又は高度な反射性を有するように、多層被覆を使用している。専用の被覆を局所的に有することにより、1つの光学開口から別のものに導波されないように、予期しない電磁波を光学カバーから外に抽出することができる。例えば、光を外部に透過させるために、AR被覆を光学カバーの外部表面に配置することが可能であり、更には、光学装置に透過する代わりに、光が、AR被覆されたエリアに反射するようにするために、高度な反射性を有する被覆を光学カバーの内部表面の特定の場所に配置することができる。これらの多層要素は、光学カバーの表面上に直接製造することが可能であり、或いは、光学カバーに装着された更なる要素として存在することもできる。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、波長変更要素を使用することができる。波長変更要素は、オリジナルの波長を有する光が、2つの分離された開口に対して影響を及ぼさないように、2つの光学開口の間において隔離されるべき光の波長を別の波長に変更することができる。これらの波長変更効果は、蛍光、非線形光学効果、及びその他の効果により、導入することができる。これらの要素は、光学カバーの表面上及びその内側の両方に適用することができる。
【0027】
上述に与えられた解決策は、導波現象を更に大きな程度まで低減するために、組み合わせられることができることを理解されたい。例えば、ラミネートされたグレージングの内側に吸収中間層を与えるためのPVBダイカット技法は、表面上の黒色エナメルとしての別の吸収要素と組み合わせられることが可能であり、或いは、酸エッチングによって生成された表面マイクロ構造としての拡散要素と組み合わせられることもできる。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、光学カバーには、例えば、光学カバーの先端内に配置された更なる拡散、吸収、多層要素、及び/又は波長変更要素、或いは、これらの組合せを与えることができる。
【0029】
本発明においては、別個の光学カバーを与えるのではなく、実質的に別個の光学開口を有する光学カバーの1つの部品を使用することが提案されている。例としてLiDARを取り上げれば、光学カバーは、LiDARのハウジングによって収容されたスタンドアロンLiDARカバーであってよく、或いは、これは、LiDARのハウジングの外側に延在するカバリング要素であってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、光学カバーは、平坦なものであるが、光学カバーは、その他の折り曲げ形状を有することもできる。
【0031】
検出装置内に使用されている既知の別個の光学カバーとの比較において、実質的に別個の光学開口を有する1つの単一光学カバーの使用は、以下の利点を与える。
【0032】
-光学カバーの費用の減少。より小さな部品を有するための切断及びエッジの仕上げのような更なる努力が不要である。
【0033】
-例えば、加熱ワイヤを有する自動車グレージングなどの、更なる機能を有する光学カバーの場合にも、1つの機能的な加熱システムで十分である。更なる機能のアライメント及び設計のような製造上の課題も低減することができる。
【0034】
-光学装置のハウジングは、複数の光学カバーではなく、光学カバーの1つの単一部品のみを保持するほうが、より容易且つ安価であり、組立体も、同様により単純である。
【0035】
-パッケージング全体を、より良好な耐湿性及び化学抵抗力により、更に強力に封止することが可能であり、光学カバーの機械的抵抗力も、同様に改善することができる。
【0036】
-これは、例えば、フロントガラス、バックライト、サイドライト、及びサンルーフのような自動車グレージングなどの一部の場合には、唯一の解決策であり、この場合には、グレージング又はプラスチックの1つの部品を有することが必要とされている。光学カバーは、装置パッケージングの外側に延在することができるので、LiDARのような光学装置は、自動車グレージングのような既存のカバー上に直接装着することができる。
【0037】
-光学カバーの透明性を維持することがより容易である。例えば、これは、検出装置がフロントガラスの背後に配置されている際に、ワイパークリーニングシステムに良好に適合可能である。
【0038】
-美観を考慮すると、ほとんどの場合において好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、検出装置は、赤外線に基づいたリモート検知装置である。更に好適な一実施形態において、赤外線に基づいたリモート検知装置は、LIDAR検知装置である。
【0040】
LiDAR検知装置などの赤外線に基づいたリモート検知装置は、パルス化レーザー光によってそのターゲットを照明し、反射されたパルスをセンサによって計測することにより、ターゲットまでの距離を計測する技術である。ターゲットのデジタル3D表現を生成するために、レーザーの戻り時間及び波長の差を使用することができる。これらの器具は、一般的に、運動、位置、近接性、周辺光、速度、及び方向を検知するために、産業用の、消費者用の、及びその他の用途において使用されている。LiDAR検知装置は、空中型及び地上型であることができる様々な用途を有する。空中型のLiDAR検知装置は、飛行機、ヘリコプター、ドローンなどのような飛行装置にリンクされている。地上型の用途は、静止型又は可動型の両方であってよい。静止型の地上スキャニングは、実際に、最も一般的な測量方法である。可動型のスキャニングは、経路に沿ってデータを収集するために、運動する車両で使用されている。
【0041】
LiDAR検知装置は、例えば、クロップマッピングのため、或いは、高価な肥料を適切に適用するためなどの、その他の農業における用途;地上において弁別不能でありうる、広範で連続的な特徴の概要を与えるための考古学;例えば、安全に環境を通じてナビゲートするための障害物検出及び回避用の自律型車両;大気のリモート検知及び気象学;軍事用途;例えば、月の位置を計測するための、惑星の正確なグローバルな地形測量を生成するための、物理学及び天文学;例えば、ハイレベルな精度を伴う、ロボット型及び有人型の車両の安全な着陸を可能にするための、環境の知覚のみならず、物体分類用のロボット工学;測量及びマッピング用の空中型及び可動式地上型LiDAR検知装置の組合せ;例えば、風速及び風の乱れを正確に計測することにより、ウィンドファームからのエネルギー出力を増大させるためのウィンドファームの最適化;例えば、適切な屋根を判定し、シェーディング損失を判定することによる、都市レベルにおける太陽光発電システムを最適化するための太陽光発電の配備に伴う、高分解能マップを生成するために、広く使用されている。
【0042】
具体的には、自立型車両の分野において、現時点の産業トレンドは、真に自律型の自動車を設計することである。このような自動運転の将来に近づくためには、車両内のセンサの数は大幅に増大することになる。LiDAR検知装置は、車両の360°の環境からの必要とされる検知フィードバックを与えることにより、この開発において重要な役割を果たしている。
【0043】
本発明のLiDAR検知装置(Lidar、LIDAR、又はLADARとも表現される-Light Detection And Rangingの頭文字である)は、赤外(IR)レーザー光によってターゲットを照明し、且つ、センサによって反射されたパルスを計測することにより、距離を計測する技術である。ターゲットまでの距離は、放出及び後方散乱されたパルスの間の時間を記録することにより、及び移動した距離を算出するために光の速度を使用することにより、判定される。次いで、これは、ターゲットのデジタル3D表現を生成するために使用することができる。
【0044】
LiDAR検知装置は、実際には、非常に異なる状態及び環境において使用されている。光学装置上において機能を保護及び/又は追加するために、及び/又は、美的理由から使用される光学カバーは、検出装置がその最良状態で動作するために非常に重要である。これらは、計測対象のターゲットの最も効果的な概要を有するために、より効果的である必要がある。
【0045】
LiDAR検知装置の以前の世代は、1個から数個の光パルスの放出に基づいていた。対照的に、LiDARの新しい世代は、光パルスのアレイの放出及び受信に基づく高分解能を有している。LiDAR検知装置の新しい世代は、光学特性の観点において格段に要件が厳しく、従って、保護ハウジングの従来の光学カバーと完全な互換性を有しているわけではない。
【0046】
本発明の好適な実施形態によれば、光学カバーは、外部環境に対するその機械的抵抗力及び化学的耐久性のために、ガラスから作られている。しかし、これは、適切な赤外線の透過を与えるプラスチックから作られることもできる。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、光学カバーは、750~1650nmの波長範囲において5m-1未満の吸収係数を有する少なくとも1つのガラスシートから作られており、必要とされるハイレベルな赤外線透過のみならず、必要とされる機械的抵抗力及び化学的耐久性をLiDAR検知装置に与える。
【0048】
本発明の好適な一実施形態によれば、ガラスシートは、750~1100nm、好ましくは750~950nmの波長範囲内において上述の値の吸収係数を有する。
【0049】
低吸収は、最終的なIR透過が材料内の光学経路によってよりわずかな影響しか受けないという更なる利点を与える。これは、高開口角度を有する大視野(FOV:Field Of View)センサの場合に、(画像の異なる領域における)様々な角度において知覚される強度がより均一になることを意味している。
【0050】
好ましくは、ハイレベルな近赤外線放射透過を有するガラスシートは、超透明ガラスである。
【0051】
本発明の有利な一実施形態によれば、ガラスシートは、良好なレベルの動作性能を保証しつつ、センサの非審美的な要素を外部から隠蔽するために、少なくとも1つの(着色された)IR透明吸収及び/又は反射被覆により、被覆されることができる。この被覆は、例えば、可視光範囲内において透過を有していないが(或いは、非常に低い透過しか有さないが)その用途用の対象赤外範囲内において高い透明度を有する少なくとも1つの黒色薄膜の層又は黒色塗料の1つの層から構成することができる。好ましくは、このような被覆は、可視光範囲内において最大で15%の透過率を示し、且つ、750~1650nmの波長範囲内において少なくとも85%の透過率を示すだろう。このような塗料は、400~750nmの範囲内において<5%の、850~950nm範囲内においては>70%の透過率を実現することができる有機化合物から作られることができる。被覆は、その耐久性に応じて、カバーレンズの1つ又は複数の外部及び/又は内部面上に与えられることができる。
【0052】
本発明の別の実施形態によれば、ガラスシートは、高IR透過を維持しつつ、可視光範囲を選択的に反射するように最適化された多層被覆により被覆されることができる。従って、Kromatic(登録商標)製品において観察されるようないくつかの特性が求められている。これらの特性は、このような層が適切なガラス組成上において堆積された際に、全システムの小さな全IR吸収を保証している。被覆は、その耐久性に応じて、カバーレンズの1つ又は複数の外部及び/又は内部面上において与えられることができる。
【0053】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、少なくとも1つの反射防止層によって被覆されている。本発明による反射防止層は、例えば、低屈折率を有する多孔性シリカに基づいた層であってもよく、或いは、これは、いくつかの層(積層)、具体的には、低屈折率を有する誘電体材料及び高屈折率を有する誘電体材料の交互に配置された層の積層体であって、低屈折率を有する層で終わる層の積層体から構成されることができる。このような被覆は、カバーレンズの外部及び/又は内部面上に与えられることができる。テクスチャが付与されたガラスシートを使用することもできる。同様に、反射を防止するために、エッチング又は被覆技法を使用することもできる。好ましくは、処理済みの表面の反射は、両方の表面が被覆された場合には、関係する波長範囲内において、少なくとも1%だけ、好ましくは少なくとも2%だけ、減少するだろう。
【0054】
本発明の別の実施形態によれば、例えば、本発明による反射防止層は、例えば、イオン注入技法によって堆積された屈折率勾配層に基づいた層であることができる。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、以上に列挙された反射防止層の組合せは、カバーレンズの外部及び/又は内部面上に与えられることができる。好ましくは、層は、PVD(柔らかい被覆)によって堆積されている。従って、赤外(IR)範囲においても反射防止能力を与える、可視光範囲内における反射性被覆を有することが可能である。
【0056】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、外部動作条件が好ましくないときに、カバーレンズを迅速に霜取り又は曇り除去することを許容する加熱システムに結合されることができる。このような加熱システムは、適切な電源が印加されることができるガラス表面上に直接適用された導電性ワイヤ、導電性パッチのネットワーク、或いは、この代わりに、銀印刷ネットワークから構成されることができる。任意選択により、システムは、必要に応じて、加熱機能を動的にトリガするための温度センサを有することもできる。
【0057】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、雨天状態において適切なセンサ動作を保証するために、水滴がカバーレンズの外部表面上に集合することを防止する疎水性層によって被覆されることができる。このような撥水性の被覆は、例えば、表面エネルギーを低減し、且つ、その他の効果に加えて、自己浄化能力、汚染防止特性、及び改善された耐湿性を与えるフルオロポリマーの薄い分子層から構成されることができる。
【0058】
特に、LiDAR検知装置の良好な動作を更に改善するためのサポート機能を与えるために、その他の適切な有利な機能を本発明のレンズカバーのガラスシートに追加することができる。これらのサポート機能は、例えば、破損、埃、汚染、雨などのための一体化された検出機能との結合やスクラッチ、グレア、汚染、埃、塗料などを防止するための更なる保護層であることができる。偏光、位相、又はスペクトル識別のために、専用のフィルタを一体化することもできる。
【0059】
一般に、LiDAR検知装置は、(1)少なくとも1つのレーザートランスミッタ(=光源)と、(2)集光器(望遠鏡又は他の光学装置)を有する少なくとも1つのレシーバ(=光検出要素)と、(3)光を電気信号及び求められている情報を抽出する電子処理チェーン信号に変換する少なくとも1つの光検出器と、といういくつかの主要なコンポーネントから構成された光電子システムである。本発明のLiDAR検知装置のレーザートランスミッタは、主に、700nm~1mmの赤外線波長において、好ましくは780nm~3μmの近赤外波長において、更に好ましくは750~1650nmの波長範囲において放出することが好ましい。(2)については、デュアル発振プレーンミラー、多面鏡、及びデュアル軸スキャナとの組合せなどの、いくつかのスキャニング技術が利用可能である。光学的な選択肢は、検出されることができる角度分解能及び範囲に影響を及ぼす。孔ミラー又はビームスプリッタを集光器として使用することができる。
【0060】
一般に、シリコンアバランシェフォトダイオードなどの半導体光検出器又は光電子増倍管という2つの主要な光検出器技術が使用されている。航空機又は衛星などのモバイルプラットフォーム上において取り付けられるLiDAR検知装置は、その絶対位置及び向きを判定するための計測器を更に必要とする場合があり、従って、位置及び/又はナビゲーションシステムを更に含むことができる。
【0061】
好ましくは、本発明において使用されるLiDAR検知装置は、スキャニング及び回転に基づいた新世代のLiDAR検知装置である。
【0062】
更に好ましくは、本発明において使用されるLiDAR検知装置は、フラッシングLiDARとしての半導体LiDARに基づいた新世代のLiDAR検知装置である。スキャニング又は回転LiDARは、運動するレーザービームを使用している一方で、フラッシング及び半導体LiDARは、物体から反射する光パルスを放出する。
【0063】
保護ハウジングは、任意の適切な金属材料(アルミニウムなど)、不透明及び/又は透明であるプラスチック材料(PVC、ポリエステルによって被覆されたPVC、ポリプロピレンHD、ポリエチレンなど)、及びこれらの組合せなどの、保護ハウジングを作るために既知である任意の一般的な材料から作られることができる。ハウジング形状は、一般に、より良好な保護のために、LiDAR検知装置の形状にリンクされるだろう。LiDAR検知装置は、固定されることができる又は回転することができるいくつかの異なる部分を有することができる。一般的なLiDAR形状は、自身が配置されるプラットフォームをポップアップする「マッシュルーム様」の装置を意味している。
【0064】
疑義の回避のために、可視光は、400~700nmの範囲内の波長を有するものとして定義される。
【0065】
本発明の好適な一実施形態によれば、ガラスシートは、750~1100nmの、好ましくは750~950nmの波長範囲内において上述の値の吸収係数を有する。
【0066】
低吸収は、最終的なIR透過が、材料内の光学経路によってよりわずかな影響しか受けない、という更なる利点を与える。これは、高開口角度を有する大視野(FOV)センサの場合に、(画像の異なる領域内において)様々な角度において知覚される強度がより均一になることを意味している。
【0067】
本発明によれば、ガラスシートは、750~1650nmの波長範囲内において5m-1未満の吸収係数を有するという特性を有する、異なるカテゴリに属することができるガラスから作られている。従って、ガラスは、ソーダ-ライム-シリカタイプのガラス、アルミノ-シリケート、ボロ-シリケートなどであってよい。
【0068】
好ましくは、ハイレベルな近赤外放射透過を有するガラスシートは、超透明ガラスである。
【0069】
好ましくは、本発明のベースガラス組成は、以下のとおりの、ガラスの重量百分率で表現された合計含有量を有する。
SiO2 55-85%
Al2O3 0-30%
B2O3 0-20%
Na2O 0-25%
CaO 0-20%
MgO 0-15%
K2O 0-20%
BaO 0-20%
【0070】
本発明によれば、保護ハウジング内の光学カバーのガラスシートは、平坦なシートの形態であってもよく、或いは、湾曲したものであってもよい。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、光学カバーは、保護ハウジングの外側に横方向に延在することができる。
【0072】
本発明は、光学装置用の保護ハウジングに固定される、本発明による光学カバーにも関する。
【0073】
疑義の回避を目的として、「外部(external)」及び「内部(internal)」という用語は、検出装置の向きに言及しており、更に詳しくは、車両内の設置の際の検出装置に言及している。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】2つの部品として作られた光学的に透明なカバーを有する、従来技術による検出装置の断面図である。
【
図2】本発明による光学的に透明なカバーを有する、本発明による検出装置の断面図である。
【
図3】保護ハウジングの横方向外側に延在する本発明による光学的に透明なカバーを有する、本発明による検出装置の断面図である。
【
図4】拡散要素が与えられた光学的に透明なカバーを有する、本発明による検出装置の断面図である。
【
図5】吸収要素が与えられた光学的に透明なカバーを有する、本発明による検出装置の断面図である。
【
図6】多層要素が与えられた光学的に透明なカバーを有する、本発明による検出装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
従来技術においては、光学カバーの内側の予期しない導波現象を回避するために、別個の光学開口を使用することが知られている。
図1は、光学装置としてのLiDAR装置用の2つの別個の光学カバー51及び52を使用している例を示しており、この場合に、第1の1つの光学カバー51は、光源1をカバーし、第2の光学カバー52は、検出要素2をカバーしている。LiDARは、ハウジング4の内側に与えられている。動作原理は、光源1が赤外(IR)光7を光学カバー51を通じてターゲット3に放出し、反射されて戻った光8が、光学カバー52を通じて検出要素2に伝播するというものである。2つの光学カバーは、予期しない光6を遮断するために、相互に物理的に分離されている。
【0076】
しかしながら、本発明による1つの部品である光学カバーとの比較において、別個の光学カバーは、上述した以下のような欠点を有する。
【0077】
-光学カバー自体の費用が増大する。
【0078】
-光学装置の収容のための複雑さ及び費用が増大する。ハウジングは、十分な機械的抵抗力によって別個にそれぞれの光学カバーを保持するよう設計されなければならない。この結果、パッケージング全体の機械的抵抗力、耐湿性、及び/又は化学的抵抗力が低減しうる。
【0079】
本発明によれば、
図2において記述されているように、解決策は、別個の光学カバーを適用するのではなく、実質的に別個の光学開口を有する光学カバーの1つの単一部品の使用に基づいている。一例としてLiDARを取り上げれば、光学カバー5は、LiDARハウジング4によって収容されたスタンドアロンのLiDARカバーであることができる。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、光学カバー5は、
図3に示されているように、LiDARハウジング4の外側に延在することができる。
【0081】
本発明によれば、光学カバー5は、平坦であってもよく、或いは、折り曲げられていることもできる。光学的分断ゾーン9は、光学カバー5の一部分であり、このゾーン9において、導波された光6は、拡散、吸収、及び/又は多層要素を使用することにより、リダイレクト又は吸収されることができる。
【0082】
本発明によれば、光学的分断ゾーン9は、第1光学開口51と第2光学開口52の間のインターフェイス内に配置されている。
【0083】
光学的分断ゾーン9の数及び場所は、ハウジング又は検出装置及び/又は光学装置の設計に応じて、変化しうることを理解されたい。
【0084】
別個の光学カバーとの比較において、本発明による実質的に別個の光学開口を有する1つの単一光学カバーの使用は、上述のような利点を与える。
【0085】
具体的には、自動車分野において、例えば、LiDARとしての本発明による検出装置は、自動車グレージング又はトリム要素又は装飾物上に直接実装/装着されることができる。光学カバーは、保護ハウジングの外側に延在されることができることから、検出装置は、その延在された光学カバーを通じて容易にグレージングに装着されることができる。グレージングは、フロントガラス、バックライト、サイドライト、及びサンルーフであることができ、この場合に、これらは、グレージング又はプラスチックの1つの部品を有することが必要とされている。
【0086】
従って、実質的に別個の光学開口51、52を実現するために、光学カバーの一部分として光学的分断ゾーン9を使用することが提案される。検出装置100の設計及び要件に応じて、光学的分断ゾーン9は、光学カバーの任意の場所に配置されることが可能であり、複数の別個の光学開口51、52を生成するために、或いは、予期しない電磁波を低減する効率を改善するために、複数の光学的分断ゾーン9を使用することもできる。通常、光学的分断ゾーン9は、2つの別個の光学開口51、52の間のインターフェイスに配置されている。
【0087】
以下の図における光線の場合に、これらは、(複数の反射、散乱、及び方向のような)その完全な光学経路ではなく、(抽出又は吸収された)その最終的な結末6を示すためのものに過ぎないことに留意されたい。
【0088】
図4においては、迷光が光学カバー5内で光源1から光感知要素2へと伝播することを回避するように、光源及び光感知要素の視野(FOV)の外側の光学的分断ゾーン9内で少なくとも第1開口51と第2開口52の間に、光学的な分断として、拡散要素が使用されている。拡散要素は、予期しない電磁波6をその他の方向に拡散又は散乱させて、予期しない電磁波6が最終的に光学カバー5から抽出されることができるようにしている。単独で、或いは、別の拡散要素又は吸収要素又は多層波長変更要素との組合せにおいて、1つ又は複数の拡散要素を使用することができる。
【0089】
本発明によれば、光学カバー5は、ガラス又はプラスチックから作られることができる。更に好ましくは、光学カバーは、ガラスから作られている。
図4aにおいて、拡散要素911は、光学カバー5の1つ又は両方の表面に追加的に形成又は装着されることができる。これらの表面拡散要素は、ランダム表面のマイクロ構造、マイクロ構造アレイ、回折格子などを含むことができる。
【0090】
更には、
図4bに示されている拡散要素912は、表面に近いか、或いは、そうではない状態において、カバー材料5の内側に生成されることができる。拡散要素は、気泡、化学粒子、又は任意の適切な材料を含むことができる。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、光学カバー5は、ラミネートされたガラスシートであることができる。
図4cに示されているように、表面拡散要素913は、中間層502との接触状態において2つのガラスシート501及び503のいずれかの表面上に配置することにより、光学カバー5内に形成されることができる。中間層は、2つのガラスシートを1つにラミネートするために使用されている。
【0092】
表面拡散要素911及び913は、酸エッチング、サンドブラスト、レーザーブラスト、イオン注入、光リソグラフィなどを含む様々な技法によって生成されることができる。グレージング産業においては、専用のシルクスクリーニングによるエナメル印刷により、エナメル拡散パターンを生成することもできる。材料拡散要素912は、製造プロセスの途中に、或いは、その後で、同様に生成されることができる。
【0093】
図5a、
図5b、及び
図5cにおいては、吸収要素を使用する解決策が、開口51と開口52の間の光学的分断ゾーン9内の光学的分断要素921、922、923として示されている。吸収要素921、922、923は、予期しない電磁波を吸収するために使用されている。
【0094】
図5aに示されている吸収要素921は、光学カバー5の外部表面上に適用されることができる。表面吸収要素921は、黒色シリコーンパッド又は光学カバーの1つ又は両方の表面上に印刷された黒色エナメルのような、表面に装着されるいくつかの別個の要素であることができる。
【0095】
図5b又は
図5cに示されている、光学カバー5として使用される、ラミネートされたガラスシート、又はラミネートされたプラスチック、又はガラス/プラスチックのラミネートされた組合せの場合、光学的分断ゾーン9における中間層502は、吸収要素922として変更されることができる。セパレータゾーン9においてダイカット技法を使用することにより、オリジナルの中間層を第2中間層によって置換することが可能であり、これは、
図5bに示されているように、予期しない電磁波6の波長においてより大きな吸収を有する。
【0096】
カバーとして自動車グレージング又はトリム要素又は装飾物の背後において配置されるLiDARの例を取り上げられば、グレージングをラミネートするために使用されるPVB中間層は、LiDARが配置される領域内においてLiDARのIR光に対して高度な吸収性を有する別の(ITO又は黒色PVBのような)中間層により置換されることができる。或いは、この代わりに、中間層は、光学的分断ゾーン9において黒色印刷されたPVBを有するために、印刷されたパターンを有するように調製することもできる。
【0097】
ラミネートされたグレージングを使用する光学カバーの場合には、
図5cに示されている表面吸収要素923(例えば、黒色エナメル)は、中間層502との接触状態にある2つのガラスシート501及び503のいずれかの表面上に配置されることもできる。
【0098】
本発明の一実施形態として
図6に示されているように、光学的分断要素としての開口51と開口52の間の光学的分断ゾーン9内に、多層要素を使用することができる。多層要素は、光61を外部に透過させるために光学カバーの1つの表面に配置された反射防止(AR)被覆931であることができる。光学カバー5の外側に最終的に抽出されるように、光62をAR被覆された領域に反射するために、反対側の表面に高度に反射性の被覆932を適用することが好ましい。これらの多層被覆は、光学カバー5の表面上に直接生成されることも可能であり、或いは、光学カバー5に装着された更なる要素として生成されることもできる。
【0099】
多層要素、特にAR被覆は、物理蒸着(PVD)法(スパッタリング堆積、熱蒸着)、化学蒸着法(化学還元、化学蒸着(CVD)のような熱分解被覆、ゾルゲル堆積)、プラズマ支援型化学蒸着(PACVD)などを含む、利用可能な既知の被覆技法により、適用されることができる。
【0100】
本発明の別の実施形態によれば、迷光が光学カバー5内で光源1から光感知要素2へと伝播することを回避するように、光源1及び光感知要素2の視野(FOV)の外側の光学的分断ゾーン9内で第1開口51と第2開口52の間に与えられる分断要素として、波長変更要素を使用することができる。
【0101】
図5に示されている同一の構成を波長変更要素が光学的分断要素として使用される場合に適用することができる。波長変更要素は、2つの光学開口の間において隔離されるべき光の波長を吸収し、蛍光、非線形光学効果、及びその他の効果に基づいて、別の波長を有する光を放出する。従って、オリジナルの波長を有する光は、2つの分離された開口に影響を及ぼしてはいない。
【0102】
本発明の別の実施形態によれば、本発明による1つの単一光学カバー上に別個の光学開口を取得するための光学的分断要素は、単独で、或いは、その組合せにおいて使用されることができる。その一方で、1つの要素により、組み合わせられた機能を与えることもできる。例えば、黒色エナメルパターンは、吸収及び拡散の両方を実行することができる。
【0103】
本発明によれば、光学装置は、保護ハウジング4の内側に与えられている。その設計は、光学装置のタイプに依存しうる。光学カバーが、光学装置を保護するために配置されている。光学カバーは、前記光学装置の動作波長において透明である。