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特許7538814塗布設備のための監視方法及び対応する塗布設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】塗布設備のための監視方法及び対応する塗布設備
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20240815BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240815BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20240815BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240815BHJP
   B05B 5/04 20060101ALI20240815BHJP
   B05B 3/10 20060101ALI20240815BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240815BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B05D1/02 B
B05D3/00 D
B05D7/14 L
B05B12/00 A
B05B5/04 A
B05B3/10 B
B05C11/00
B05C11/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021566257
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020062242
(87)【国際公開番号】W WO2020225175
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】102019112099.3
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンター、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】トーメ、パウル
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/212486(WO,A1)
【文献】特表2007-508937(JP,A)
【文献】特表2019-523512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B05B1/00-17/08
B05C1/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布剤を塗布するための塗布設備(1)の、特に、自動車車体部品に塗装するための塗装設備の監視方法であって、
a)前記塗布設備(1)の運転変数を反映する第1生センサデータ(16)を決定する工程、及び、
b)前記塗布設備(1)を制御するための第1制御信号を取得する工程、
を含み、
c)前記第1生センサデータ(16)に比べて減量されたデータ量を有し且つ機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして役立つ特徴(15)を前記第1生センサデータ(16)から抽出する工程をさらに含み、
前記特徴(15)を抽出するために、
d)前記第1及び/又は第2生センサデータ(16)を評価するための観測時間窓([T 、T ])を設定する工程、
e)前記観測時間窓([T 、T ])内に少なくとも1つの比較期間([t1、t2])を設定する工程、
f)前記比較期間([t1、t2])を幾つかの連続するサブセクション(d DYN 、d STAT 、d REST )に細分化する工程、及び、
g)前記第1及び/又は第2生センサデータ(16)、及び/又は、個別の前記サブセクション(d DYN 、d STAT 、d REST )内のさらなる生センサデータについて、前記特徴(15)の成分である少なくとも1つの統計パラメータを計算する工程、
を含む、監視方法。
【請求項2】
a)前記第1生センサデータ(16)とは異なる前記塗布設備(1)の運転変数を反映する第2生センサデータ(16)を決定する工程、
b)前記第2生センサデータ(16)に比べて減量されたデータ量を有し且つ機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして役立つ特徴(15)を前記第2生センサデータ(16)から抽出する工程、
を含む、
請求項1に記載の監視方法。
【請求項3】
a)前記観測時間窓([T、T])内の前記第1制御信号の変化の時を決定する工程、及び、
b)前記第1制御信号の2つの連続する変化の間に前記少なくとも1つの比較期間([t1、t2])を設定する工程、
を含む、
請求項1又は2に記載の監視方法。
【請求項4】
a)前記塗布設備(1)を制御するための第2制御信号を検出する工程、
b)前記観測時間窓内の前記第1制御信号の変化の時を決定する工程、
c)前記観測時間窓内の前記第2制御信号の変化の時を決定する工程、
d)2つの制御信号の2つの連続する変化の間に前記少なくとも1つの比較期間を設定する工程、
を含む、
請求項1又は2に記載の監視方法。
【請求項5】
a)前記第1制御信号及び/又は第2制御信号の変化の量を決定する工程、
b)前記第1制御信号及び/又は前記第2制御信号の最後の変化からの期間を決定する工程、
を含み、
c)前記変化の量及び前記最後の変化からの期間が前記特徴(15)の一部である、
請求項又はに記載の監視方法。
【請求項6】
前記比較期間が、
a)前記第1生センサデータが制御信号ジャンプに応答する、0個、1個、又は複数個の、初期の制御相(dDYN)、
b)前記第1生センサデータが前記制御信号ジャンプに少なくとも部分的に応答している、0個、1個、又は複数個の、経時的に後続の被制御相(dSTAT)、及び、
c)前記比較期間の終了までの、経時的に後続の残余相(dREST)、
のうち少なくとも1つのサブセクションに細分化される、
請求項からのいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項7】
a)前記第1生センサデータ(16)の時定数を決定する工程、及び、
b)前記第1生センサデータ(16)の前記時定数に応じて、
b1)前記比較期間内の前記制御相(dDYN)の数、
b2)個別の前記制御相(dDYN)の持続時間、
b3)個別の前記被制御相(dSTAT)の持続時間、
のうち少なくとも1つの量を設定する工程、
請求項に記載の監視方法。
【請求項8】
個別の前記制御相(dDYN)及び/又は個別の前記被制御相(dSTAT)の持続時間が無作為に設定される、
請求項に記載の監視方法。
【請求項9】
前記観測時間窓([T、T])が、
a)部品関連期間、特に、
a1)続くコーティングのための前記部品のコーティングのための塗布設備の準備の期間、
a2)前記部品のコーティングの期間、特に、車体周期、又は、
b)前記塗布設備に関連する期間、特に、
b1)前記塗布設備(1)の準備段取運転の持続時間、
b2)前記塗布設備(1)の試験運転の持続時間、
b3)前記塗布設備(1)の手動運転の持続時間、
b4)前記塗布設備(1)の維持管理運転の持続時間、
b5)前記塗布設備(1)の生産運転の持続時間、
b6)設備の非部品関連自動2次処理(例えば、設備部品も特定制御を受ける診断動作、自動試験、又は、時間に従った洗浄)の期間、
c)時間関連期間、特に、
c1)1時間、1日、1週間、1ヶ月、1四半期、1年、又は、
c2)勤務シフトのシフト長さ、
の期間のひとつである、
請求項からのいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項10】
前記統計パラメータは、
a)前記第1生センサデータ(16)のみを考慮する単変量統計パラメータ、特に、
a1)算術平均値、
a2)幾何平均値、
a3)中央値、
a4)分散、
a5)最大値、
a6)最小値、
b)前記第1生センサデータ(16)に加えて前記第2生センサデータ(16)を考慮し且つ任意でさらなる生センサデータ(16)を考慮する多変量統計パラメータ、特に、
b1)ピアソン相関係数、
b2)順位相関係数、
のうち1つのパラメーターである、
請求項からのいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項11】
a)回転噴霧器のタービンの速度、
b)回転噴霧器のタービンを駆動するための駆動空気の空気圧、
c)塗料圧力調整器でのコーティング剤圧力、
d)静電式コーティング剤帯電システムの帯電電流、
e)静電式コーティング剤帯電システムの帯電電圧、
f)コーティング室内の湿度、
g)コーティング剤のスプレーを形成するための成形空気の空気圧、
h)コーティング剤のスプレーを形成するための成形空気の質量流量、
i)コーティング室内の気温、
j)塗布装置の塗料衝突点の位置、
k)塗布装置の塗料衝突点の移動速度、
l)弁、特に、コーティング剤弁、フラッシング剤弁、パルス空気弁、又は潤滑剤弁の、弁位置、
m)駆動装置、特に、ロボット駆動装置の、駆動変数、特に、位置、速度、加速度、電流、電圧、電力、温度、
n)コーティング剤ポンプ又は調量装置の質量流量、
o)前記塗布設備(1)を通ってコーティング対象の前記部品を搬送するリニアコンベアの位置、
p)材料の、流量、温度、及び圧力、
q)スワールアプリケータ(Swirl-Applikators)の回転速度、
といった前記塗布設備(1)の運転変数のうち1つを、前記第1生センサデータ(16)及び/又は前記第2生センサデータ(16)及び/又はさらなる生センサデータ(16)が反映する、及び/又は、前記第1制御信号及び/又は第2制御信号が制御する、
請求項から10のいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項12】
前記第1生センサデータ(16)及び/又は前記第2生センサデータ(16)は、
a)モータ、
b)コーティングロボットのロボット関節、
c)コーティングロボットのロボット駆動装置の駆動調整器、
d)回転噴霧器を駆動するためのタービン、
e)噴霧器のスプレーを形成するための成形空気の流れを制御するための成形空気調整器、
f)ポンプ、特に、コーティング剤ポンプ、
g)コーティング剤を調量するための調量装置、
h)弁、特に、比例弁、
i)塗料圧力調整器、
j)静電式コーティング剤帯電のための高電圧発生器、
k)スイッチ、
l)センサ、
m)ヒータ、
n)制御系、
o)電気ヒューズ、
p)電池、
q)無停電電源、
r)無停電信号伝送、
s)変圧器、
t)流体、特に、コーティング剤、粘稠材料、接着剤、希釈剤、空気、又は水の輸送のための、流体ライン、特に、ホース又はパイプ、
u)スワールアプリケータ、
といった前記塗布設備(1)の部品の1つの運転変数を反映する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項13】
a)第1センサにより前記第1生センサデータ(16)を測定する工程、又は、
b)データベースから以前に測定及び保存された前記第1生センサデータ(16)を読み出す工程、
という前記第1生センサデータを決定するための工程を含む、
請求項1から12のいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項14】
前記第1生センサデータの後続評価のための規則を構築する工程を含み、
a)保存済み履歴生センサデータ(13)を取得する工程、
b)前記履歴生センサデータ(13)と時間的関係にあり且つ前記履歴生センサデータ(13)が測定されたときの前記塗布設備(1)の状態を反映する保存済みラベル(14)を決定又は取得する工程、
c)前記履歴生センサデータ(13)から特徴(15)を抽出する工程、及び、
d)前記履歴生センサデータ(13)から決定された前記特徴(15)及び関連する前記ラベル(14)を評価することで機械学習アルゴリズムにより前記規則を決定する工程、
という工程から前記規則が生成される、
請求項1から13のいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項15】
前記第1生センサデータの後続評価のための規則を構築する工程を含み、
a)保存済み履歴生センサデータを取得する工程、
b)前記履歴生センサデータから特徴を抽出する工程、
c)関連するラベルなしで前記履歴生センサデータから決定された特徴を評価することで教師なし機械学習アルゴリズムにより前記規則を決定する工程、
という工程から前記規則が生成される、
請求項1から13のいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項16】
前記第1生センサデータの後続評価のための規則を構築する工程を含み、
a)保存済み履歴生センサデータを取得する工程、
b)前記履歴生センサデータから特徴を抽出する工程、
c)関連するラベルなしで前記履歴生センサデータから決定された特徴を評価することで人間専門家により前記規則を決定する工程、
という工程から前記規則が生成される、
請求項1から13のいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項17】
前記塗布設備(1)の運転状態を決定するための、特に、前記塗布設備(1)の故障状態を検出するための、特に、
a)塗料圧力調整器の摩耗又は欠陥、
b)コーティング剤の幾つかの成分を混ぜ合わせるミキサーの摩耗又は欠陥、
c)ポンプ、特に、コーティング剤ポンプの摩耗又は欠陥、
d)弁、特に、塗料、粘稠材料、接着剤、希釈剤、空気、又は水を制御するための弁の摩耗又は欠陥、
e)ヒータの摩耗又は欠陥、
f)駆動モータの摩耗又は欠陥、
g)電気的接触不良、
h)塗料内の空気混入又は塗料供給の中断の検出、
i)前記塗布設備(1)の運転媒体の、特に、空気、水、塗料、接着剤、粘稠材料の性質、
j)機械部品又は装置のストレスに関する塗布及び移動プログラムの評価、
k)ベルプレートの飛び出しの検出、
l)噴霧器上の汚染及び/又は水分の検出、
m)モータ、ポンプ、ピストン、成形空気、タービン、高電圧、流量調整器の動作挙動の異常の検出、
n)正常曲線からの信号曲線の顕著な逸脱という意味での異常の一般的な検出、
o)維持管理間隔の予測、
といった前記塗布設備(1)の運転状態の1つを検出するための、機械学習アルゴリズムにより、現在決定された前記第1生センサデータ(16)及び/又は前記第2生センサデータ(16)の前記特徴(15)を評価する工程を含む、
請求項1から16のいずれか1項に記載の監視方法。
【請求項18】
a)コーティング剤を塗布するための少なくとも1つのアプリケータ、
b)特に多軸コーティングロボットとしての、前記アプリケータを移動させるための少なくとも1つのマニピュレータ、
c)前記塗布設備(1)の運転変数を反映する第1生センサデータを測定するための少なくとも1つのセンサ、及び、
d)単一の部品に配置された又は複数の部品にわたって分散されている、前記塗布設備(1)を制御する制御装置(2-5)、
を有し、
e)前記制御装置(2-5)又は独立した監視装置が請求項1から17のいずれか1項に記載の監視方法を実行する、
部品をコーティングするための塗布設備(1)、特に、自動車車体部品を塗装するための塗装設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布剤を塗布するための塗布設備の、特に、自動車車体部品を塗装するための塗装設備の監視方法に関する。さらに、本発明は、対応して設計された塗布設備も包含する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体部品を塗装するための現代の塗装設備では、運転は制御信号により制御され、この際に、多数のセンサが塗装設備の運転変数を検出し且つ生センサデータを生成し、その結果、塗装設備の運転状態は生センサデータ及び制御信号を評価することにより監視できる。しかし、塗装設備の運転を監視するために現在まで用いられている監視方法は完全に満足がいくものとはいえない。
【0003】
特許文献1は、塗布剤を塗布するための塗布設備のための、特に、自動車車体部品を塗装するための塗装設備のための監視方法を開示する。ここで、生センサデータが決定され、また、制御信号が記録されて機能確認のために用いられる。
【0004】
特許文献2は、技術系の品質評価を実行するための方法及び装置を開示しており、ここで、生センサデータ(『画像データ』)及び制御信号(『観測条件データ』)は機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして役立つ。
【0005】
特許文献3は、接着結合部の品質を予測するための方法を開示し、ここで、接着結合部は接着剤を塗布するための塗布装置をとりわけ有する接着剤処理装置により塗布される。測定データの分析はデータモデルとの比較により行われる。これにより、多変量分析法により作られた統計データモデルは機械学習により最適化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102007062132号明細書
【文献】独国特許出願公開第102018214170号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016217948号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上を鑑み、本発明は、改善された監視方法及び対応する塗布設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明に係る監視方法により、又は、独立請求項に係る対応した塗布設備により、解決される。
【0009】
本発明は、『From Data Mining to Knowledge Discovery in Databases』(Fayyad U.;Patetsky-Shapiro,G.;Smyth,P.、AI Magazine、17巻、3号、1996年)から知られるもののような機械学習法が塗布設備(例えば、塗装設備)を監視するために好都合に用いることができるという技術知識に基づいている。機械学習法についての更なる文献情報源として、『Principles of Data Mining』(Bremer,M.、Springer-Verlag、2009年)が挙げられる。
【0010】
既知の監視方法に倣い、本発明に係る監視方法は先ず塗布設備の運転変数を反映する第1生センサデータを決定することをもたらす。例えば、第1生センサデータは、運転変数として、回転噴霧器のスプレージェットを形成するために用いられる成形空気の成形空気圧を反映してもよい。また、第1生センサデータは、以下でより詳細に説明するように、塗布設備の他の運転変数を反映することもできる。
【0011】
さらに、本発明に係る監視方法は、既知の監視方法に倣い、第1制御信号が塗布設備を制御するために取得されることももたらす。例えば、第1制御信号は、回転噴霧器のスプレーを形成するための成形空気流の目標値を定義し得る。ただし、第1制御信号は、以下でより詳細に説明するように、塗布設備の他の運転変数を設定するためにも用いることができる。
【0012】
そこで、制御信号は、生センサデータとともに、本発明の範囲内で評価される信号集合を形成する。例えば、信号集合は、制御信号としての成形空気流の設定値と生センサデータとしての成形空気圧の実信号とを考慮するものであり得る。また、信号集合は、1より多くの実信号及び1より多くの制御信号を含んでもよい。一般的には、信号集合は、1~mの異なる制御信号及び1~kの異なる実信号を含んでもよく、この際に信号は異なる制御ループに属してもよい。
【0013】
本発明に係る監視方法は、いわゆる特徴が第1生センサデータから抽出され、当該特徴は第1生センサデータに比べて減量されたデータ量を有し且つ機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして役立つ点で先行技術から区別できる。
【0014】
本発明の文脈で用いられる『特徴』という用語は、先ず、データ量が特徴抽出により減量されている、すなわち、抽出された特徴が生センサデータに比べて減量されたデータ量を有するという意味を持つ。
【0015】
加えて、本発明の文脈で用いられる『特徴』という用語は、状態検出に関連する情報を失うことなく正確な運転処理から特徴が抽出されるという意味を持つ。例えば、同一ワークピースバリアント(例えば、ボディバリアント)の正確に同一のシーケンスのみを比較する必要はもはやない。むしろ、例えば、全く異なる車体の類似する『ブラシ』を比較することで十分である。
【0016】
さらに、本発明の文脈で用いられる『特徴』という用語は、特徴が機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして適しているという意味を持ち、この際にそれ自体は既知の機械学習アルゴリズムが抽出された特徴に基づくこととなる。そこで、特徴は一方の生センサデータと他方の機械学習アルゴリズムとの間のブリッジを形成し、これは機械学習アルゴリズムによる安定で且つ限られた資源で熟達可能なデータ評価を可能とするのみであることが多い。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、塗布設備の異なる運転変数を反映する第1及び第2生センサデータが決定され、第1生センサデータ及び第2生センサデータの両方から特徴が抽出され、その後、これは機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして役立ち得る。例えば、第1生センサデータは運転変数として成形空気流を表してもよく、一方で、第2生センサデータは回転噴霧器の駆動タービンの速度を表してもよい。また、以下でより詳細に説明するように、第1及び第2生センサデータは塗布設備の他の運転変数を反映してもよい。
【0018】
好ましくは、第1及び第2生センサデータからの特徴抽出はそれぞれ以下のように行われる。
【0019】
一工程で、先ず、第1又は第2生センサデータが当該窓内で評価される予定の観測時間窓が設定される。例えば、観測時間窓は、車体周期、すなわち、塗装対象の自動車車体の塗装室への供給から次の自動車車体の塗装室への供給との間の期間であってもよい。これは、正常な製造処理の間に状態及び監視が可能であるという利点を持つ。また、観測時間窓に関し、以下でより詳細に説明するが、本発明の範囲内で様々な可能性がある。
【0020】
その後、更なる工程で、観測時間窓は、個別のセクション、いわゆる、比較期間に、分割される。この方法では、比較期間は制御信号での変化(ジャンプ)により定義できる。例えば、新しい比較期間は塗布に関連する制御信号が車体周期内に変化するたびに開始される。例えば、このために回転噴霧器の成形空気流の設定値が評価されてもよい。また、本発明の範囲内で、詳細に説明するように、比較期間を設定するために様々な他の制御信号が評価されてもよい。
【0021】
その後、更なる工程で、比較期間自体が幾つかの連続するサブセクションに細分化され、サブセクションはパラメータにより予め定められる。
【0022】
例えば、比較期間は、サブセクションとして、0~nの初期の制御相、0~mの後続の被制御相、及び0~lの後続の残余相に分割できる。
【0023】
制御相は、第1及び/又は第2生センサデータが第1及び/又は第2制御信号のジャンプに応答する比較期間内の最初の時間相であり、そのため、静的状態をまだ語ることはできない。
【0024】
被制御相は、制御相後の第1及び/又は第2生センサデータが制御信号ジャンプに少なくとも部分的に応答したところの期間である。
【0025】
誤解を避けるために指摘するが、本方法自体は制御相における又は被制御相における生センサデータが定常状態であったか否かを確認しない。むしろ、制御相及び被制御相への細分化は、パラメータにより、すなわち、制御相の所定の期間及び被制御相の同様に所定の期間により、固定されている。
【0026】
一方、残余相は、制御相及び被制御相の後から比較期間の終了までの残りの期間である。このとき、比較期間は、単一の残余相を含んでもよいし、残余相を全く含まなくてもよい。例えば、制御相及び被制御相の合計が比較期間の持続時間と丁度等しい場合、比較期間は残余相を含まない。
【0027】
ここで、比較期間が、(1つ又は複数の)制御相に加えて被制御相及び残余相を含むのに十分に長さである場合、被制御相及び残余相は任意であることに注記すべきだろう。また、比較期間が比較的に短い場合、比較期間は制御相及び残余相にのみ分割できるかもしれない。比較期間が非常に短い場合、比較期間がひとつの制御相のみを含み被制御相を全く含まないことすらも可能である。
【0028】
その後、更なる工程では、第1及び/又は第2の生センサデータについて、また、必要であれば、個別のサブセクション内のさらなる生センサデータについて、少なくとも1つの統計パラメータが計算され、ここで、計算された当該統計パラメータは抽出された特徴の成分である。
【0029】
既に上で簡単に触れたが、比較期間は制御信号におけるジャンプ又は変化により区切られてもよく、すなわち、制御信号の1つの変化は比較期間を開始させ、制御信号の次の変化が現行比較期間を終了させて次の比較期間を開始させる。
【0030】
本発明の一変形例では、比較期間は同じ制御信号の変化(ジャンプ)により区切られる。この場合、比較期間を設定する際に、1つの制御信号のみが、例えば、回転噴霧器の成形空気流についての設定値が評価される。他方、本発明のこの変形例では比較期間を設定するために別の制御信号のあり得るジャンプは用いられない。
【0031】
他方、本発明の別変形例では、比較期間を設定するために複数の制御信号が用いられる。ここでも、比較期間は制御信号における変化又はジャンプにより区切られる。ただし、異なる種類の制御信号が評価される。例えば、ある制御信号のジャンプが比較期間の開始を示し、一方で、別の制御信号のジャンプが現在の比較期間の終了と次の比較期間の開始とを示してもよい。
【0032】
既に上で簡単に触れたが、比較期間の個別のサブセクションで決定された統計パラメータが抽出された特徴の成分である。ただし、抽出された特徴が更なる情報を含むことも本発明の範囲内で可能である。例えば、数例を挙げれば、特徴は制御信号における設定値変化の量及び最後の変化からの期間を含んでもよい。
【0033】
さらに、既に上で触れたが、比較期間は、サブセクション、具体的には例えば、0~nの制御相、0~mの被制御相、及び0~lの残余相に細分化される。ここで再び指摘しておくが、比較期間は必ずしも複数の制御相及び複数の被制御相を含まねばならないわけではない。例えば、比較期間が1つの制御相のみを含むことも可能である。サブセクションの数及びサブセクションの持続時間はここで生センサデータの時定数に応じて決定できる。この目的で、第1及び/又は第2の生センサデータの時定数が決定され、次に、比較期間におけるサブセクションの数、単一の制御相の持続時間、及び/又は、単一の被制御相の持続時間が決定された時定数に応じて設定される。複数の制御及びセンサデータも含み得るユースケース毎に1つの時定数のみが選択される。
【0034】
また、この代わりに、個別の制御相及び/又は個別の被制御相の持続時間が無作為に設定されてもよい。
【0035】
既に上で触れたが、観察時間窓は、例えば、車体周期でもよい。これは、コーティング対象の部品に、具体的には特に、塗装対象の自動車車体部品に関連する部品関連期間である。また、この代わりに、観察時間窓は、例えば、コーティング対象の部品の次のコーティングのために塗布設備を準備するのに必要とされる期間などの、他の部品関連期間でもよい。
【0036】
さらに、本発明の範囲内で、観察時間窓が、準備段取運転、試験運転、手動運転、又は維持管理運転の期間などの塗布設備関連期間であることも可能である。
【0037】
さらに、観察時間窓が、1時間、1日、1週間、1ヶ月、1四半期、又は1年などの時間関連期間であることも可能である。観察時間窓としての時間関連期間の別の例として、勤務シフトのシフト長さが挙げられる。
【0038】
既に上で触れたが、統計パラメータは個別のサブセクションにおいて決定され、そして、これは抽出された特徴の成分である。
【0039】
本発明の一変形例では、この統計パラメータは一種類の生センサデータのみを考慮する単変量パラメータである。こうした単変量統計パラメータの例として、サブセクション内の、算術又は幾何平均、中央値、分散、最大値、又は最小値が挙げられ、ここで、単変量統計パラメータは、同じ生センサデータに、すなわち、単一の運転変数に、常に関連している。
【0040】
本発明の別変形例では、統計パラメータは異なる生センサデータから計算される多変量統計パラメータである。こうした多変量統計パラメータの例として、ピアソン相関係数及び順位相関係数が挙げられる。また、多変量統計パラメータが信号集合の3つ以上の異なる生センサデータを考慮することも可能である。
【0041】
さらに、評価対象の生センサデータについて本発明が制限されるわけではないことは注記すべきだろう。むしろ、本発明の範囲内で、塗布設備の運転中に生成される広範な生センサデータが評価可能である。生センサデータの例として以下のものを挙げることができる。
・回転噴霧器のタービンの速度、
・回転噴霧器のタービンを駆動するための駆動空気の空気圧、
・塗料圧力調整器でのコーティング剤圧力、
・静電式コーティング剤帯電システムの帯電電流、
・静電式コーティング剤帯電システムの帯電電圧、
・コーティング室内の湿度、
・コーティング剤のスプレーを形成するための成形空気の空気圧、
・コーティング剤のスプレーを形成するための成形空気の質量流量、
・コーティング室内の気温、
・塗布装置の塗料衝突点の位置、
・塗布装置の塗料衝突点の移動速度、
・弁、特に、コーティング剤弁、フラッシング剤弁、パルス空気弁、又は潤滑剤弁の、弁位置、
・駆動装置、特に、ロボット駆動装置の、特に、位置、速度、加速度、電流、電圧、電力、又は温度といった、駆動変数、
・コーティング剤ポンプ又は調量装置の質量流量、
・塗布設備を通ってコーティング対象の部品を搬送するリニアコンベアの位置、
・材料の、流量、温度、及び圧力、
・スワールアプリケータ(Swirl-Applikators)の回転速度。
【0042】
既に上で触れたが、様々な生センサデータが本発明に係る監視処理の一部として評価できる。異なる生センサデータのこの監視では、生センサデータの上記の例のいかなる組み合わせも可能である。例えば、一例のみを挙げれば、回転噴霧器のタービンの回転速度をコーティング剤の流量とともに評価できる。さらに、本発明の範囲内で、2つより多くの異なる種類の生センサデータを評価することも可能であり、この際に上記の例の生センサデータのいかなる組み合わせも可能である。
【0043】
例えば、生センサデータは、以下の塗布設備の部品の1つの運転変数を反映してもよい。
・モータ、
・コーティングロボットのロボット関節、
・コーティングロボットのロボット駆動装置の駆動調整器、
・回転噴霧器を駆動するためのタービン、
・噴霧器のスプレーを形成するための成形空気の流れを制御するための成形空気調整器、
・ポンプ、特に、コーティング剤ポンプ、
・コーティング剤を調量するための調量装置、
・弁、特に、比例弁、
・塗料圧力調整器、
・静電式コーティング剤帯電のための高電圧発生器、
・スイッチ、
・センサ、
・ヒータ、
・制御系、
・電気ヒューズ、
・電池、
・無停電電源、
・無停電信号伝送、
・変圧器、
・流体、特に、コーティング剤、粘稠材料、接着剤、希釈剤、空気、又は水の輸送のための、流体ライン、特に、ホース又はパイプ、
・スワールアプリケータ。
【0044】
生センサデータの提供については本発明の範囲内で様々な可能性がある。例えば、生センサデータは、連続的に測定され、そして、評価されてもよい。この代わりに、生センサデータが時間ずれを伴い以前に測定されていたのである限り、生センサデータはデータベースから読み出されてもよい。
【0045】
上で触れたが、生センサデータから抽出された特徴は機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして役立つ。こうした機械学習アルゴリズムは、通常は、特徴に適用され設備の運転状態についての推論を可能とするいわゆる規則を用いる。この規則を生成するために、以前に測定及び保存された履歴生センサデータが用いられてもよく、ここで、いわゆるラベルは履歴生センサデータの測定中の塗布設備の運転状態(例えば、故障なし又は故障あり)を反映する。そして、特徴が上記の方法で履歴生センサデータから抽出される。その後、規則が、一方では、履歴生センサデータから抽出された特徴から、他方では、既知のラベルから、機械学習アルゴリズムにより、決定される。そして、こうして決定された規則は、後で、現行測定生センサデータから抽出された特徴に適用できる。
【0046】
現行測定生センサデータから抽出された特徴の評価は、例えば、塗布設備の運転状態を特定するために用いることができる。例えば、以下の状態を検出することが可能である。
・塗料圧力調整器の摩耗又は欠陥、
・コーティング剤の幾つかの成分を混ぜ合わせるミキサーの摩耗又は欠陥、
・ポンプ、特に、コーティング剤ポンプの摩耗又は欠陥、
・弁、特に、塗料、粘稠材料、接着剤、希釈剤、空気、又は水を制御するための弁の摩耗又は欠陥、
・ヒータの摩耗又は欠陥、
・駆動モータの摩耗又は欠陥、
・電気的接触不良、
・塗料内の空気混入又は塗料供給の中断の検出、
・塗布設備の運転媒体の、特に、空気、水、塗料、接着剤、粘稠材料の性質、
・機械部品又は装置のストレスに関する塗布及び移動プログラムの評価、
・回転噴霧器のベルカップの飛び出しの検出、
・噴霧器上の汚染及び/又は水分の検出、
・モータ、ポンプ、ピストン、成形空気、タービン、高電圧、圧力式流量調整器の動作挙動の異常の検出、
・正常曲線からの信号曲線の顕著な逸脱という意味での異常の一般的な検出、
・維持管理間隔の予測。
【0047】
さらに、本発明の文脈で用いられる『塗布設備』という用語が、一般的な意味で理解されるべきであり、とりわけ、自動車車体部品を塗装するための塗装設備を含むことは注記すべきだろう。また、本発明は、例えば、接着、封止、又は絶縁のためのシステムにも使用できる。そこで、本発明の文脈で用いられる『塗布剤』という用語は、一般的な意味で理解されるべきであり、とりわけ、塗料及び粘稠材料(接着剤又は絶縁材など)を含む。
【0048】
さらに、本発明が上述の本発明に係る監視方法についての権利保護のみを請求するわけではないことも注記すべきだろう。むしろ、本発明は、アプリケータ(例えば、回転噴霧器)、マニピュレータ(例えば、多軸塗装ロボット)、生センサデータを測定するためのセンサ、及び、塗布設備を制御する制御装置を含む対応する塗布設備の権利保護も請求する。本発明に係る塗布設備は、制御装置が上述の本発明に係る監視方法を実行することを特徴とする。
【0049】
この意味で制御装置は幾つかのハードウェア部品にわたって分散されていてもよいことは注記すべきだろう。また、それが塗布設備制御でなくともよいことも注記すべきだろう。監視は塗布設備制御とは全く関係の無い完全に異なるハードウェア上で実行されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明の他の有利な更なる実施形態が、従属請求項に示され、又は、以下で図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態の説明とともにより詳細に説明される。
【0051】
図1】塗布設備を監視するための本発明に係るシステム構造の模式図。
図2】分析ソフトウェアの構造の模式図。
図3】特徴抽出のための分析ソフトウェアの運転モードの模式図。
図4】本発明に係る監視方法を示すフローチャート。
図5】特徴抽出を示すタイミング図。
図6】本発明に係る監視方法を示すフローチャート。
図7】複数の制御信号及び複数の生センサデータを考慮した特徴抽出を示すタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、機械1、組み込み分析ソフトウェア3を備えた制御系2、分析ソフトウェア5を備えた分析ハードウェア4、ビジュアライゼーション6、及び外部システムに属するハードウェア7を有する本発明に係るシステムのシステム構造を示す。
【0053】
この実施形態の例では、機械1はその全ての部品で自動車車体部品を塗装するための塗装設備である。
【0054】
ここで、制御系2は、機械1に制御信号を出力し、機械1から生センサデータを受け取り、そして、生センサデータは分析ソフトウェア3により分析できる。
【0055】
加えて、生センサデータは分析ハードウェア4の分析ソフトウェア5によっても評価できる。
【0056】
図2は、分析ソフトウェア3又は5のモジュール構造の模式図を示す。
【0057】
そして、分析ソフトウェア3は、データメモリ8へのアクセス、及び、機械1又はハードウェア7などの他のコンポーネントとの通信のためのゲートウェイ9へのアクセスを有する。
【0058】
さらに、分析ソフトウェア3は、特徴抽出モジュール10、規則生成モジュール11、及び規則適用モジュール12を含む。
【0059】
図3は、本発明に係る監視方法を示す模式図を示す。
【0060】
まず、特徴抽出モジュール10は、機械1の既知の運転状態で以前に測定された履歴生データ13から特徴を抽出し、ここで、機械1の既知の運転状態はラベル14により表される。そして、特徴抽出モジュール10は、以下で詳細に説明するように、履歴生センサデータ13から特徴15を抽出する。モジュール10による特徴抽出は、続いて機械学習アルゴリズムが特徴15に基づくことが可能となるように、履歴生センサデータ13のデータ量を削減するという課題を有する。
【0061】
そして、モジュール11は、抽出された特徴15及び既知のラベル14を用いて、現行測定生データ16を後で評価するために用いられる規則を生成する。
【0062】
そして、運転の正常な成り行きでは、モジュール10は現行測定新規生センサデータ16から再び特徴を抽出し、モジュール12は以前に決定された規則を抽出された特徴に適用して、機械1の状態17を決定する。
【0063】
以下では、図4に記載のフローチャートについて図5に記載のタイミング図を参照しつつ説明する。
【0064】
第1の工程S1では、塗布設備が制御され、ここで、生信号が記録される、すなわち、一方の塗布設備を制御するための制御信号と、センサにより測定され塗布設備の運転変数を表す他方の実信号(生センサデータ)とが記録される。
【0065】
そして、生信号(制御信号及び実信号)は工程S2で保存される。
【0066】
そして、工程S3では、以前に設定された各塗布のパラメータが取得される。一方では、これは観測時間窓[T、T]を含み、これは例えば車体周期であり得る。他方では、取得されたパラメータは、評価対象である所望の信号集合の、すなわち、制御信号及び実信号の選択も定義する。最後に、取得されたパラメータは、比較期間[t1、t2]をサブセクションに分割するためのパラメータ(制御相dDYNの数n、制御相dDYNの持続時間、及び被制御相dSTATの持続時間など)も含む。制御相dDYNを減算した後にも比較期間に依然として適合するのと同数の静的被制御相dSTATが存在する。
【0067】
そして、工程S4では、生信号(制御信号及び実信号)の以前に保存されたデータが、特に、工程S3で決定された観測時間窓[T、T]及び信号集合について、取得される。
【0068】
そして、工程S5では、考慮された制御信号の変化が決定されるが、ここで、これらの変化は図5に記載のタイミング図では時間t1及びt2に生じる。
【0069】
次に、工程S6では、少なくとも1つの比較期間[t1、t2]が設定されるが、これは時間t1での制御信号の変化とともに開始し、時間t2での制御信号の次の変化とともに終了する。通常、幾つかの比較期間が考慮される。
【0070】
そして、工程S7では、比較期間[t1、t2]は工程S3で取得されたパラメータに応じてサブセクションに分割される。そして、比較期間[t1、t2]の持続時間、制御相dDYNの持続時間、及び被制御相dSTATの持続時間に応じて、比較期間[t1、t2]は、0~nの制御相dDYN、0~mの被制御相dSTAT、及び0~lの残余相へと分割される。図5に記載のタイミング図では、比較期間[t1、t2]は、3つの制御相dDYN及び2つの被制御相dSTATからなる。ただし、これは例示に過ぎず、すなわち、比較期間[t1、t2]は、異なるやり方でサブセクションから構成されてもよい。
【0071】
工程S8では、生センサデータの単変量統計パラメータが、すなわち、センサにより測定され塗布設備の運転変数を表す実信号が、個別のセクションのそれぞれについて決定される。図5に記載のタイミング図は、回転噴霧器の成型空気流が実信号として測定されることを具体的に示す。ただし、工程S3で取得された信号集合に応じて、他の実信号も統計パラメータを計算するために用いることができる。例えば、単変量統計パラメータは一例のみを挙げれば算術平均であってもよい。
【0072】
そして、工程S9では、特徴が決定されるが、ここで、工程S8で計算された単変量統計パラメータはこれらの特徴の成分である。特徴の他の成分は目標値及び目標値の変化である。
【0073】
そして、工程S10では、塗布設備の状態を決定するために特徴が用いられるが、これは単純な(手動でパラメータ化された)規則又は機械学習アルゴリズムのいずれかで行うことができる。
【0074】
図6は、工程S1での生センサデータの測定及び工程S2での特徴抽出に加えて、工程S3での抽出された特徴への規則の適用も示すフローチャートを示す。
【0075】
図7は、2つの制御信号及び2つの実信号が示される図5に記載のタイミング図の修正例を示す。比較期間は2つの制御信号のジャンプにより区切られる。
【0076】
第1比較期間は時間t1及びt2の間となる。第2比較期間は時間t2及びt3の間となる。
【0077】
そして、上述の比較期間も上述のようにサブセクションへとまた分割できる。
【0078】
さらに、統計パラメータも個別のサブセクションについてまた計算されるが、ただし、これらは例えば2つの実信号から計算される多変量パラメータでもあり得る。こうした多変量統計パラメータの一例はピアソン相関係数である。
【0079】
本発明は上述の好ましい実施形態に限られるわけではない。むしろ、本発明の思想を利用して無数の変形例及び修正例が可能であり、これらも権利保護範囲に含まれる。特に、本発明は、従属請求項の主題及び特徴についても、それらが引用する請求項とは独立に、特に、主請求項の特徴なしで、権利保護を請求する。そして、本発明は、互いに独立して権利保護を享受する本発明の異なる態様を含む。
【0080】
[付記]
[付記1]
塗布剤を塗布するための塗布設備(1)の、特に、自動車車体部品に塗装するための塗装設備の監視方法であって、
a)前記塗布設備(1)の運転変数を反映する第1生センサデータ(16)を決定する工程、及び、
b)前記塗布設備(1)を制御するための第1制御信号を取得する工程、
を含み、
c)前記第1生センサデータ(16)に比べて減量されたデータ量を有し且つ機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして役立つ特徴(15)を前記第1生センサデータ(16)から抽出する工程を特徴とする、監視方法。
【0081】
[付記2]
a)前記第1生センサデータ(16)とは異なる前記塗布設備(1)の運転変数を反映する第2生センサデータ(16)を決定する工程、
b)前記第2生センサデータ(16)に比べて減量されたデータ量を有し且つ機械学習アルゴリズムのためのデータベースとして役立つ特徴(15)を前記第2生センサデータ(16)から抽出する工程、
を含む、
付記1に記載の監視方法。
【0082】
[付記3]
前記特徴(15)を抽出するために、
a)前記第1及び/又は第2生センサデータ(16)を評価するための観測間窓([T、T])を設定する工程、
b)前記観測時間窓([T、T])内に少なくとも1つの比較期間([t1、t2])を設定する工程、
c)前記比較期間([t1、t2])を幾つかの連続するサブセクション(dDYN、dSTAT、dREST)に細分化する工程、及び、
d)前記第1及び/又は第2生センサデータ(16)、及び/又は、個別の前記サブセクション(dDYN、dSTAT、dREST)内のさらなる生センサデータについて、前記特徴(15)の成分である少なくとも1つの統計パラメータを計算する工程、
を含む、
付記1又は2に記載の監視方法。
【0083】
[付記4]
a)前記観測時間窓([T、T])内の前記第1制御信号の変化の時を決定する工程、及び、
b)前記第1制御信号の2つの連続する変化の間に前記少なくとも1つの比較期間([t1、t2])を設定する工程、
を含む、
付記3に記載の監視方法。
【0084】
[付記5]
a)前記塗布設備(1)を制御するための第2制御信号を検出する工程、
b)前記観測時間窓内の前記第1制御信号の変化の時を決定する工程、
c)前記観測時間窓内の前記第2制御信号の変化の時を決定する工程、
d)2つの制御信号の2つの連続する変化の間に前記少なくとも1つの比較期間を設定する工程、
を含む、
付記3に記載の監視方法。
【0085】
[付記6]
a)前記第1制御信号及び/又は前記第2制御信号の変化の量を決定する工程、
b)前記第1制御信号及び/又は前記第2制御信号の最後の変化からの期間を決定する工程、
を含み、
c)前記変化の量及び前記最後の変化からの期間が前記特徴(15)の一部である、
付記4又は5に記載の監視方法。
【0086】
[付記7]
前記比較期間が、
a)前記第1生センサデータが制御信号ジャンプに応答する、0個、1個、又は複数個の、初期の制御相(dDYN)、
b)前記第1生センサデータが前記制御信号ジャンプに少なくとも部分的に応答している、0個、1個、又は複数個の、経時的に後続の被制御相(dSTAT)、及び、
c)前記比較期間の終了までの、経時的に後続の残余相(dREST)、
のうち少なくとも1つのサブセクションに細分化される、
付記3から6のいずれか1つに記載の監視方法。
【0087】
[付記8]
a)前記第1生センサデータ(16)の時定数を決定する工程、及び、
b)前記第1生センサデータ(16)の前記時定数に応じて、
b1)前記比較期間内の前記制御相(dDYN)の数、
b2)個別の前記制御相(dDYN)の持続時間、
b3)個別の前記被制御相(dSTAT)の持続時間、
のうち少なくとも1つの量を設定する工程、
付記7に記載の監視方法。
【0088】
[付記9]
個別の前記制御相(dDYN)及び/又は個別の前記被制御相(dSTAT)の持続時間が無作為に設定される、
付記7に記載の監視方法。
【0089】
[付記10]
前記観測時間窓([T、T])が、
a)部品関連期間、特に、
a1)続くコーティングのための前記部品のコーティングのための塗布設備の準備の期間、
a2)前記部品のコーティングの期間、特に、車体周期、又は、
b)前記塗布設備に関連する期間、特に、
b1)前記塗布設備(1)の準備段取運転の持続時間、
b2)前記塗布設備(1)の試験運転の持続時間、
b3)前記塗布設備(1)の手動運転の持続時間、
b4)前記塗布設備(1)の維持管理運転の持続時間、
b5)前記塗布設備(1)の生産運転の持続時間、
b6)設備の非部品関連自動2次処理(例えば、設備部品も特定制御を受ける診断動作、自動試験、又は、時間に従った洗浄)の期間、
c)時間関連期間、特に、
c1)1時間、1日、1週間、1ヶ月、1四半期、1年、又は、
c2)勤務シフトのシフト長さ、
の期間のひとつである、
付記3から9のいずれか1つに記載の監視方法。
【0090】
[付記11]
前記統計パラメータは、
a)前記第1生センサデータ(16)のみを考慮する単変量統計パラメータ、特に、
a1)算術平均値、
a2)幾何平均値、
a3)中央値、
a4)分散、
a5)最大値、
a6)最小値、
b)前記第1生センサデータ(16)に加えて前記第2生センサデータ(16)を考慮し且つ任意でさらなる生センサデータ(16)を考慮する多変量統計パラメータ、特に、
b1)ピアソン相関係数、
b2)順位相関係数、
のうち1つのパラメーターである、
付記3から10のいずれか1つに記載の監視方法。
【0091】
[付記12]
a)回転噴霧器のタービンの速度、
b)回転噴霧器のタービンを駆動するための駆動空気の空気圧、
c)塗料圧力調整器でのコーティング剤圧力、
d)静電式コーティング剤帯電システムの帯電電流、
e)静電式コーティング剤帯電システムの帯電電圧、
f)コーティング室内の湿度、
g)コーティング剤のスプレーを形成するための成形空気の空気圧、
h)コーティング剤のスプレーを形成するための成形空気の質量流量、
i)コーティング室内の気温、
j)塗布装置の塗料衝突点の位置、
k)塗布装置の塗料衝突点の移動速度、
l)弁、特に、コーティング剤弁、フラッシング剤弁、パルス空気弁、又は潤滑剤弁の、弁位置、
m)駆動装置、特に、ロボット駆動装置の、駆動変数、特に、位置、速度、加速度、電流、電圧、電力、温度、
n)コーティング剤ポンプ又は調量装置の質量流量、
o)前記塗布設備(1)を通ってコーティング対象の前記部品を搬送するリニアコンベアの位置、
p)材料の、流量、温度、及び圧力、
q)スワールアプリケータ(Swirl-Applikators)の回転速度、
といった前記塗布設備(1)の運転変数のうち1つを、前記第1生センサデータ(16)及び/又は前記第2生センサデータ(16)及び/又はさらなる生センサデータ(16)が反映する、及び/又は、前記第1制御信号及び/又は前記第2制御信号が制御する、
付記3から11のいずれか1つに記載の監視方法。
【0092】
[付記13]
前記第1生センサデータ(16)及び/又は前記第2生センサデータ(16)は、
a)モータ、
b)コーティングロボットのロボット関節、
c)コーティングロボットのロボット駆動装置の駆動調整器、
d)回転噴霧器を駆動するためのタービン、
e)噴霧器のスプレーを形成するための成形空気の流れを制御するための成形空気調整器、
f)ポンプ、特に、コーティング剤ポンプ、
g)コーティング剤を調量するための調量装置、
h)弁、特に、比例弁、
i)塗料圧力調整器、
j)静電式コーティング剤帯電のための高電圧発生器、
k)スイッチ、
l)センサ、
m)ヒータ、
n)制御系、
o)電気ヒューズ、
p)電池、
q)無停電電源、
r)無停電信号伝送、
s)変圧器、
t)流体、特に、コーティング剤、粘稠材料、接着剤、希釈剤、空気、又は水の輸送のための、流体ライン、特に、ホース又はパイプ、
u)スワールアプリケータ、
といった前記塗布設備(1)の部品の1つの運転変数を反映する、
付記1から12のいずれか1つに記載の監視方法。
【0093】
[付記14]
a)第1センサにより前記第1生センサデータ(16)を測定する工程、又は、
b)データベースから以前に測定及び保存された前記第1生センサデータ(16)を読み出す工程、
という前記第1生センサデータを決定するための工程を含む、
付記1から13のいずれか1つに記載の監視方法。
【0094】
[付記15]
前記第1生センサデータの後続評価のための規則を構築する工程を含み、
a)保存済み履歴生センサデータ(13)を取得する工程、
b)前記履歴生センサデータ(13)と時間的関係にあり且つ前記履歴生センサデータ(13)が測定されたときの前記塗布設備(1)の状態を反映する保存済みラベル(14)を決定又は取得する工程、
c)前記履歴生センサデータ(13)から特徴(15)を抽出する工程、及び、
d)前記履歴生センサデータ(13)から決定された前記特徴(15)及び関連する前記ラベル(14)を評価することで機械学習アルゴリズムにより前記規則を決定する工程、
という工程から前記規則が生成される、
付記1から14のいずれか1つに記載の監視方法。
【0095】
[付記16]
前記第1生センサデータの後続評価のための規則を構築する工程を含み、
a)保存済み履歴生センサデータを取得する工程、
b)前記履歴生センサデータから特徴を抽出する工程、
c)関連するラベルなしで前記履歴生センサデータから決定された特徴を評価することで教師なし機械学習アルゴリズムにより前記規則を決定する工程、
という工程から前記規則が生成される、
付記1から14のいずれか1つに記載の監視方法。
【0096】
[付記17]
前記第1生センサデータの後続評価のための規則を構築する工程を含み、
a)保存済み履歴生センサデータを取得する工程、
b)前記履歴生センサデータから特徴を抽出する工程、
c)関連するラベルなしで前記履歴生センサデータから決定された特徴を評価することで人間専門家により前記規則を決定する工程、
という工程から前記規則が生成される、
付記1から14のいずれか1つに記載の監視方法。
【0097】
[付記18]
前記塗布設備(1)の運転状態を決定するための、特に、前記塗布設備(1)の故障状態を検出するための、特に、
a)塗料圧力調整器の摩耗又は欠陥、
b)コーティング剤の幾つかの成分を混ぜ合わせるミキサーの摩耗又は欠陥、
c)ポンプ、特に、コーティング剤ポンプの摩耗又は欠陥、
d)弁、特に、塗料、粘稠材料、接着剤、希釈剤、空気、又は水を制御するための弁の摩耗又は欠陥、
e)ヒータの摩耗又は欠陥、
f)駆動モータの摩耗又は欠陥、
g)電気的接触不良、
h)塗料内の空気混入又は塗料供給の中断の検出、
i)前記塗布設備(1)の運転媒体の、特に、空気、水、塗料、接着剤、粘稠材料の性質、
j)機械部品又は装置のストレスに関する塗布及び移動プログラムの評価、
k)ベルプレートの飛び出しの検出、
l)噴霧器上の汚染及び/又は水分の検出、
m)モータ、ポンプ、ピストン、成形空気、タービン、高電圧、流量調整器の動作挙動の異常の検出、
n)正常曲線からの信号曲線の顕著な逸脱という意味での異常の一般的な検出、
o)維持管理間隔の予測、
といった前記塗布設備(1)の運転状態の1つを検出するための、機械学習アルゴリズムにより、現在決定された前記第1生センサデータ(16)及び/又は前記第2生センサデータ(16)の前記特徴(15)を評価する工程を含む、
付記1から17のいずれか1つに記載の監視方法。
【0098】
[付記19]
a)コーティング剤を塗布するための少なくとも1つのアプリケータ、
b)特に多軸コーティングロボットとしての、前記アプリケータを移動させるための少なくとも1つのマニピュレータ、
c)前記塗布設備(1)の運転変数を反映する第1生センサデータを測定するための少なくとも1つのセンサ、及び、
d)単一の部品に配置された又は複数の部品にわたって分散されている、前記塗布設備(1)を制御する制御装置(2-5)、
を有し、
e)前記制御装置(2-5)又は独立した監視装置が付記1から18のいずれか1つに記載の監視方法を実行する、
部品をコーティングするための塗布設備(1)、特に、自動車車体部品を塗装するための塗装設備。
【符号の説明】
【0099】
1 機械
2 制御系
3 分析ソフトウェア
4 分析ハードウェア
5 分析ソフトウェア
6 ビジュアライゼーション
7 ハードウェア
8 データメモリ
9 ゲートウェイ
10 特徴抽出モジュール
11 規則生成モジュール
12 規則適用モジュール
13 履歴生データ
14 ラベル
15 特徴
16 新規生データ
17 機械の状態
DYN 制御相
STAT 被制御相
[TA、] 観測時間窓
[t1、t2] 比較期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7