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特許7538836データ処理装置、データ処理方法、およびデータ処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法、およびデータ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/40 20180101AFI20240815BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20240815BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20240815BHJP
   A61C 13/34 20060101ALI20240815BHJP
   A61B 5/107 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
G16H30/40
A61B1/24
A61C19/04 Z
A61C13/34 Z
A61B5/107 110
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022100408
(22)【出願日】2022-06-22
(65)【公開番号】P2024001632
(43)【公開日】2024-01-10
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英基
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-516490(JP,A)
【文献】特開2019-208711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61B 6/51
A61B 1/24
A61C 19/04
A61C 13/34
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元データを処理するデータ処理装置であって、
対象者の口腔内へ挿入されたスキャナで走査されて得られた、第1歯冠部を含む歯列および歯肉部の表面形状を示す点群の座標データを含む第1データと、前記対象者の少なくとも口腔内の歯列をX線撮影装置で撮影して得られた、第2歯冠部の体積データを含む第2データと、が少なくとも入力される入力部と、
前記第1データおよび前記第2データを共通のデータ形式へ変換し、変換された前記第1データと前記第2データとを合成する演算回路とを備え、
前記演算回路は、前記第2データにおいて、前記第1データに含まれる前記第1歯冠部を、前記第1歯冠部の形状が一致する、前記第2データに含まれる前記第2歯冠部と置換させ、置換された前記第1歯冠部付近へ前記歯肉部を配置させるように合成する、データ処理装置。
【請求項2】
前記演算回路は、前記第1データと前記第2データとを合成する際に、前記第1歯冠部の置換によって生じる隙間を補間するように前記歯肉部のデータを修正する、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記演算回路は、前記第1データと前記第2データとを合成する際に、
前記第1データに含まれる前記第1歯冠部と前記歯肉部とを分類し、
分類された前記第1歯冠部の表面形状が前記第2歯冠部の表面形状に一致するように前記第1歯冠部を置換させ、
前記第1歯冠部の置換によって生じる前記第1歯冠部と前記歯肉部との隙間を補間するように、前記歯肉部における前記第1歯冠部と対向する部分のデータを修正する、請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記演算回路は、前記第1データと前記第2データとを合成する際に、
前記第1データに含まれる、前記第1歯冠部と、前記歯肉部における前記第1歯冠部に隣接する隣接部分と、前記歯肉部における前記第1歯冠部に隣接しない非隣接部分とを分類し、
分類された前記第1歯冠部の表面形状が前記第2歯冠部の表面形状に一致するように前記第1歯冠部と前記歯肉部の前記隣接部分との組合せを置換させ、
前記組合せの置換によって生じる前記歯肉部の前記隣接部分と前記非隣接部分との隙間を補間するように、前記歯肉部の前記隣接部分および前記非隣接部分の少なくとも一方のデータを修正する、請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記第1データは、歯列方向に並ぶ複数の前記第1歯冠部のデータを含み、
前記第2データは、歯列方向に並ぶ複数の前記第2歯冠部のデータを含み、
前記演算回路は、前記第1データと前記第2データとを合成する際に、
前記第1データに含まれる、複数の前記第1歯冠部と前記歯肉部とを分類し、さらに、前記歯肉部を複数の前記第1歯冠部にそれぞれ隣接する複数の分割部分に分類し、
分類された前記第1歯冠部の各々の表面形状が当該第1歯冠部の各々に対応する前記第2歯冠部の表面形状に一致するように、当該第1歯冠部の各々と当該第1歯冠部の各々に隣接する前記歯肉部の前記分割部分との組合せを置換させ、
前記組合せの置換によって生じる、歯列方向に互いに隣接する前記歯肉部の前記分割部分同士の隙間を補間するように、前記歯肉部の前記分割部分のデータを修正する、請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記演算回路は、
前記第1データと前記第2データとを合成したデータに含まれる歯牙を所望の位置に移動させるシミュレーション処理を行ない、
前記シミュレーション処理に伴って生じる前記歯牙と前記歯肉部との隙間を補間するように前記歯肉部のデータを修正する、請求項1~5のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記演算回路は、前記歯肉部のデータに加えて、置換された前記第1歯冠部のデータを、前記第2データに合成する、請求項に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記演算回路は、置換された前記第1歯冠部のデータを前記第2データに合成する際に、前記第2歯冠部の表面における、置換された前記第1歯冠部から乖離する部分をカットする、請求項7に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記演算回路は、前記第1データと前記第2データとを合成する際に、前記第1データに含まれる歯牙をセグメンテーションする処理、および前記第2データに含まれる歯牙をセグメンテーションする処理の少なくとも一方を行なう、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
3次元データをコンピュータが処理するデータ処理方法であって、
対象者の口腔内へ挿入されたスキャナで走査されて得られた、第1歯冠部を含む歯列および歯肉部の表面形状を示す点群の座標データを含む第1データと、前記対象者の少なくとも口腔内の歯列をX線撮影装置で撮影して得られた、第2歯冠部の体積データを含む第2データと、が少なくとも前記コンピュータに入力されるステップと、
前記コンピュータが、前記第1データおよび前記第2データを共通のデータ形式へ変換し、変換された前記第1データと前記第2データとを合成するステップとを含み、
前記第1データと前記第2データとを合成するステップは、前記第2データにおいて、
前記コンピュータが、前記第1データに含まれる前記第1歯冠部を、前記第1歯冠部の形状が一致する、前記第2データに含まれる前記第2歯冠部と置換させるステップと、
前記コンピュータが、置換された前記第1歯冠部付近へ前記歯肉部を配置させるように合成するステップとを含む、データ処理方法。
【請求項11】
3次元データを処理するデータ処理プログラムであって、
コンピュータに、
対象者の口腔内へ挿入されたスキャナで走査されて得られた、第1歯冠部を含む歯列および歯肉部の表面形状を示す点群の座標データを含む第1データと、前記対象者の少なくとも口腔内の歯列をX線撮影装置で撮影して得られた、第2歯冠部の体積データを含む第2データと、が少なくとも入力されるステップと、
前記第1データおよび前記第2データを共通のデータ形式へ変換し、変換された前記第1データと前記第2データとを合成するステップとを実行させ、
前記第1データと前記第2データとを合成するステップは、前記第2データにおいて、
前記第1データに含まれる前記第1歯冠部を、前記第1歯冠部の形状が一致する、前記第2データに含まれる前記第2歯冠部と置換させるステップと、
置換された前記第1歯冠部付近へ前記歯肉部を配置させるように合成するステップとを含む、データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ処理装置、データ処理方法、及びデータ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者等の対象者の口腔内を口腔内スキャナ(IOS;Intra Oral Scanner)で走査することによって得られた点群の座標データ(以下「IOSデータ」ともいう)と、対象者の口腔内をX線撮影装置で撮像することによって得られた体積データ(以下「CT(Computed Tomography)データ」ともいう)とを取得し、これらのデータを合成して仮想モデルを形成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-51323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IOSデータおよびCTデータを合成する場合において、これらのデータをどのように合成すれば歯列の3次元データを精度よく生成することができるかについて、従来、明確にされておらず、特開2019-51323号公報にも詳細には記載されていない。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、IOSデータおよびCTデータを用いて歯列の3次元データを精度よく生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例に従えば、3次元データを処理するデータ処理装置が提供される。データ処理装置は、象者の口腔内へ挿入されたスキャナで走査されて得られた、第1歯冠部を含む歯列および歯肉部の表面形状を示す点群の座標データを含む第1データと、対象者の少なくとも口腔内の歯列をX線撮影装置で撮影して得られた、第2歯冠部の体積データを含む第2データと、が少なくとも入力される入力部と、第1データおよび第2データを共通のデータ形式へ変換し、変換された第1データと第2データとを合成する演算回路とを備える。演算回路は、第2データにおいて、第1データに含まれる第1歯冠部を、第1歯冠部の形状が一致する、第2データに含まれる第2歯冠部と置換させ、置換された第1歯冠部付近へ歯肉部を配置させるように合成する。
【0007】
本開示の一例に従えば、3次元データを処理するデータ処理方法が提供される。データ処理方法は、対象者の口腔内へ挿入されたスキャナで走査されて得られた、第1歯冠部を含む歯列および歯肉部の表面形状を示す点群の座標データを含む第1データと、対象者の少なくとも口腔内の歯列をX線撮影装置で撮影して得られた、第2歯冠部の体積データを含む第2データと、が少なくとも入力されるステップと、第1データおよび第2データを共通のデータ形式へ変換し、変換された第1データと第2データとを合成するステップとを含む。第1データと第2データとを合成するステップは、第2データにおいて、第1データに含まれる第1歯冠部を、第1歯冠部の形状が一致する、第2データに含まれる第2歯冠部と置換させるステップと、置換された第1歯冠部付近へ歯肉部を配置させるように合成するステップとを含む。
【0008】
本開示の一例に従えば、3次元データを処理するデータ処理プログラムが提供される。データ処理プログラムは、コンピュータに、対象者の口腔内へ挿入されたスキャナで走査されて得られた、第1歯冠部を含む歯列および歯肉部の表面形状を示す点群の座標データを含む第1データと、対象者の少なくとも口腔内の歯列をX線撮影装置で撮影して得られた、第2歯冠部の体積データを含む第2データと、が少なくとも入力されるステップと、第1データおよび第2データを共通のデータ形式へ変換し、変換された第1データと第2データとを合成するステップとを実行させる。第1データと第2データとを合成するステップは、第2データにおいて、第1データに含まれる第1歯冠部を、第1歯冠部の形状が一致する、第2データに含まれる第2歯冠部と置換させるステップと、置換された第1歯冠部付近へ歯肉部を配置させるように合成するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、IOSデータおよびCTデータを用いて歯列の3次元データを精度よく生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】データ処理装置を含むデータ処理システムの全体構成を模式的に示す図である。
図2】三次元スキャナを対象者の口腔内に挿入した状態を模式的に示す図である。
図3】三次元スキャナで下側の歯列をスキャンする方法の一例を説明するための図である。
図4】歯列全体の三次元データを生成する手法を説明するための図である。
図5】IOS歯列画像の一例を示す図である。
図6】CT歯列画像の一例を示す図である。
図7】IOS歯冠部とCT歯牙の歯冠部分との位置合せの手法を説明するための図である。
図8】位置合せ後のIOS歯冠部と、IOS歯肉部との状態の一例を示す図である。
図9】位置合せ後のIOS歯冠部と、モーフィング後のIOS歯肉部との状態の一例を示す図である。
図10】演算部の処理手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
図11】IOSデータとCTデータとの合成手法を示す図(その1)である。
図12】歯列の断面形状を模式的に示す図である。
図13】IOSデータとCTデータとの合成手法を示す図(その2)である。
図14】シミュレーション処理の手法を示す図である。
図15】IOS歯冠部とCT歯牙との合成手法を説明するための図(その1)である。
図16】演算部の処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
図17】演算部の処理手順の一例を示すフローチャート(その3)である。
図18】IOS歯冠部とCT歯牙との合成手法を説明するための図(その2)である。
図19】CT歯牙の歯冠部分の表面のカット手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[データ処理システムの全体構成]
図1は、本実施の形態に係るデータ処理装置10を含むデータ処理システム1の全体構成を模式的に示す図である。
【0013】
データ処理システム1は、データ処理装置10と、三次元スキャナ20と、CT撮像装置30とを備える。データ処理装置10には、三次元スキャナ20およびCT撮像装置30に加えて、ディスプレイ3、キーボード4、およびマウス5が接続されている。
【0014】
三次元スキャナ20は、共焦点法あるいは三角測量法等によって口腔内を光学的に撮像する、いわゆる口腔内スキャナ(IOS;Intra Oral Scanner)である。具体的には、三次元スキャナ20は、光源からの光を口腔内に照射して口腔内を走査(スキャン)することで、三次元データとして、物体の表面形状を示す点群(複数の点)の各々の位置情報(縦方向,横方向,高さ方向の各軸の座標データ)及び、色情報を、光学センサなどを用いて取得する。また、あらかじめ取得済みの印象模型をスキャンすることで、歯や歯肉などの表面形状を取得することもできる。
【0015】
図2は、三次元スキャナ20を対象者の口腔内に挿入した状態を模式的に示す図である。ユーザは、三次元スキャナ20を用いて対象者の口腔内をスキャンすることによって、対象者の口腔内の複数の物体の表面形状を示す点群の座標データ及び、色情報を取得することができる。「ユーザ」は、歯科医師などの術者、歯科助手、歯科大学の先生または生徒、歯科技工士、メーカの技術者、製造工場の作業者など、三次元スキャナ20を用いて歯牙などの物体の三次元データを取得する者であればいずれであってもよい。「対象者」は、歯科医院の患者、歯科大学における被験者など、三次元スキャナ20のスキャン対象となり得る者であればいずれであってもよい。「物体」は、対象者の口腔内にある歯牙および歯肉など、三次元スキャナ20のスキャン対象となり得るものであればいずれであってもよい。
【0016】
三次元スキャナ20が一度に測定できる測定範囲は限られている。そのため、ユーザは、口腔内の歯列全体(歯列弓)の三次元データを取得したい場合、三次元スキャナ20を歯列に沿って口腔内を手動で移動させて部分的にスキャンする操作を歯列全体に亘って複数回行なう。三次元スキャナ20を歯列に沿って口腔内を手動で移動させることを走査させるともいう。
【0017】
図3は、三次元スキャナ20で下側の歯列をスキャンする方法の一例を説明するための図である。図3に示す例では、ユーザは、一部の歯牙の外側側面(頬側面)から咬合面を経由して内側側面(舌側面)へと三次元スキャナ20を動かしてスキャンする。スキャナの光軸が同じ状態でスキャンする操作を1スキャンとし、このようなスキャンをたとえば歯列方向へ沿って、一方の奥歯側(右最奥の臼歯)から前歯(切歯)を経由して他方の奥歯側(左最奥の臼歯)へと順番に複数回繰り返す。これにより、下側の歯列全体のスキャンが完了する。
【0018】
このように複数回に亘って部分的にスキャンされた三次元データが重複する形状を基準にして繋ぎ合わされることによって、口腔内の歯列全体の三次元データが得られる。このように得られた三次元データは、歯列の表面形状を示す点群の座標データであって、それぞれの点の三次元位置を示すXYZ座標データと、それぞれの点の色を示すRGBデータとが含まれる。この三次元データを用いて、任意の視点から見た歯列の表面形状の二次元の画像を生成することができる。
【0019】
図4は、複数回に亘って部分的にスキャンされた三次元データを繋ぎ合せることによって歯列全体の三次元データを生成する手法を説明するための図である。図4に示されるように、1スキャンで取得された三次元データが、次の1スキャンで取得された三次元データと、共通する形状を基準に繋ぎ合せられることで、最終的に歯列弓全体の三次元データが生成される。
【0020】
以下では、三次元スキャナ20によって取得された三次元の表面座標データ(IOSデータ)に基づく歯列を、「IOS歯列」とも称する。IOS歯列の二次元画像を表示するためのデータを「IOS歯列画像データ」とも称する。
【0021】
図1に戻って、CT撮像装置30は、放射線の一種であるX線の送信器および受信器を対象者の顔の周囲で回転させることで、対象者の上顎と下顎とを撮影するX線撮影装置である。CT撮像装置30で対象者の上顎と下顎とを撮影することによって、対象者の上顎および下顎の周辺における三次元の体積(ボクセル)データが得られる。X線撮影装置によって得られた物体の体積データを断層加工することによって、物体の断層画像や外観画像を生成することができる。なお、例えば歯肉と頬、舌など互いに接している、ほぼ同じX線吸収係数を有する軟組織は、その境界が明確でなくなり、結果その表面形状を把握できなくなることから、主に利用できるのは歯や骨などの硬組織のデータとなる。
【0022】
以下では、CT撮像装置30によって取得された三次元の体積データ(CTデータ)に基づく歯列を「CT歯列」とも称する。CT歯列の二次元画像をディスプレイ3等に表示するためのデータを「CT歯列画像データ」とも称する。
【0023】
データ処理装置10は、IOSデータに基づき、任意の視点から見たIOS歯列画像データを生成してIOS歯列画像をディスプレイ3に表示させることで、歯列の表面を特定の方向から見た場合の二次元投影図をユーザに見せることができる。同様に、データ処理装置10は、CTデータに基づき、任意の視点から見たCT歯列画像データを生成してCT歯列画像をディスプレイ3に表示させることで、歯列の表面を特定の方向から見た場合の二次元投影図をユーザに見せることができる。
【0024】
さらに、データ処理装置10は、IOSデータおよびCTデータを共通のデータ形式へ変換し、変換されたIOSデータとCTデータとを合成し、合成した座標データに基づき任意の視点から見た合成画像をディスプレイ3に表示させることができる。共通のデータ形式へ変換する処理は、たとえば、IOSデータとCTデータとを任意の視点から見た2次元画像データ(たとえば、GIF、PNG、TIFF、BMP等)に変換する処理であってもよいし、IOSデータおよびCTデータのどちらか一方を他方のデータ形式に変換して共通化させる処理であってもよい。IOSデータとCTデータとの合成手法については後に詳述する。
【0025】
データ処理装置10は、主なハードウェア要素として、演算部11と、記憶部12と、IOSインターフェース13と、CTインターフェース14と、ディスプレイインターフェース15と、周辺機器インターフェース16と、読取部17と、通信部18とを備える。なお、データ処理装置10は、たとえば、汎用コンピュータで実現されてもよいし、データ処理システム1専用のコンピュータ(サーバ)で実現されてもよい。
【0026】
演算部11は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算回路(演算装置)であり、コンピュータの一例である。演算部11は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)の少なくとも1つで構成される。なお、演算部11は、1チップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、演算部11の全部または一部の機能は、図示しないサーバ装置(たとえば、クラウド型のサーバ装置)に設けられてもよい。
【0027】
記憶部12は、演算部11が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する揮発性の記憶領域(たとえば、ワーキングエリア)を含む。たとえば、記憶部12は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスで構成される。さらに、記憶部12は、不揮発性の記憶領域を含む。たとえば、記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、またはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスで構成される。
【0028】
IOSインターフェース13は、三次元スキャナ20を接続するためのインターフェースであり、データ処理装置10と三次元スキャナ20との間のデータの入出力を実現する。データ処理装置10と三次元スキャナ20とは、有線または無線で通信接続される。
【0029】
CTインターフェース13は、CT撮像装置30を接続するためのインターフェースであり、データ処理装置10とCT撮像装置30との間のデータの入出力を実現する。データ処理装置10とCT撮像装置30とは、有線または無線で通信接続される。
【0030】
なお、図1においては、IOSインターフェース13とCTインターフェース14とが別々に示されているが、IOSインターフェース13とCTインターフェース14とは1つの入力部として一体的に構成されていてもよい。
【0031】
ディスプレイインターフェース15は、ディスプレイ3を接続するためのインターフェースであり、データ処理装置10とディスプレイ3との間のデータの入出力を実現する。
【0032】
周辺機器インターフェース16は、キーボード4およびマウス5などの周辺機器を接続するためのインターフェースであり、データ処理装置10と周辺機器との間のデータの入出力を実現する。
【0033】
読取部17は、記憶媒体であるリムーバブルディスク6に格納されている各種データを読み出す。たとえば、読取部17は、リムーバブルディスク6からデータ処理プログラムを取得してもよい。
【0034】
通信部18は、有線通信または無線通信を介して、上述した歯科技工所または自動製造装置との間でデータを送受信する。
【0035】
たとえば、データ処理装置10は、通信部18を介して、上述の三次元座標データ(IOSデータ、CTデータ)、および二次元画像データ(IOS歯列画像データ、CT歯列画像データ)等を、歯科技工所等に送信する。
【0036】
歯科技工所においては、データ処理装置10から取得したデータに基づき、歯科技工士が補綴物などの歯牙モデルを作製することができる。なお、ミリングマシンおよび3Dプリンタなど、歯牙モデルを自動で製造可能な自動製造装置が歯科医院内に配置されている場合、データ処理装置10からのデータを自動製造装置に送信してもよい。
【0037】
[IOS歯列画像]
図5は、IOS歯列画像データに基づいて表示されるIOS歯列画像の一例を示す図である。なお、図5にはIOS歯列画像として下側の歯列の画像が例示されているが、IOS歯列画像に上側の歯列の画像が含まれていてもよい。
【0038】
一般的に、歯牙(tooth)は、歯肉(gingiva)から露出している歯冠部(crown)と、歯肉に覆われている歯根部(root)とに層別される。
【0039】
上述のように、三次元スキャナ20は、光源からの光を口腔内に照射して口腔内を走査することで、歯列の表面形状を示す点群の座標データを取得する。そのため、IOS歯列画像には、光源からの光が照射される歯冠部21および歯肉部22の画像が含まれる一方、光源からの光が届かない歯根部(root)の画像は含まれない。
【0040】
なお、IOSデータには以下のようなメリットがある。
・歯冠部21の各々の表面形状データを正確に取得できる。
【0041】
・歯肉部22等の軟組織の表面形状データを取得できる。
・任意の視点から見た歯列の外形画像を生成できる。
【0042】
・色データを取得できる。
一方、IOSデータには以下のようなデメリットがある。
【0043】
・手動走査で取得した部分的な三次元データを繋ぎ合せて歯列全体の三次元データを完成させるため、歯列全体の形状は正確ではない場合がある。
【0044】
・光が届かない歯根部の形状データを取得できない。
・光が届かない内部のデータを取得できないため断層画像を生成できない。
【0045】
以下では、IOSデータに含まれる歯冠部および歯肉部を、それぞれ「IOS歯冠部」および「IOS歯肉部」とも称する。
【0046】
[CT歯列画像]
図6は、CT歯列画像データに基づいて表示されるCT歯列画像の一例を示す図である。なお、図6には、CT歯列画像として下側の歯列の画像が例示されているが、CT歯列画像に上側の歯列の画像が含まれていてもよい。
【0047】
上述のように、CT撮像装置30は、口腔内領域の体積データを取得する。CT歯列画像には、硬組織である歯牙31および顎33の画像が含まれる一方、軟組織である歯肉の画像は殆どの場合、利用できない。
【0048】
なお、CTデータには以下のようなメリットがある。
・歯列全体の正確な形状データを取得できる。
【0049】
・歯冠部および歯根部を含めた歯牙31全体の形状データを取得できる。
・歯牙31と共に顎33の形状データを取得できる。
【0050】
・歯列の表面形状データを生成できる。
・断層画像を生成できる。
【0051】
一方、CTデータには以下のようなデメリットがある。
・歯肉のような頬や舌など他の軟組織と接する軟組織の形状データは取得が難しい。
【0052】
・歯冠部やその周辺に金属補綴物などX線高吸収体がある場合、再構成された形状データは不正確となる場合がある。
【0053】
・色データを取得できない。
以下では、CTデータに含まれる歯牙および顎を、それぞれ「CT歯牙」および「CT顎」とも称する。
【0054】
[IOSデータとCTデータとの合成手法]
上述のように、IOSデータには、歯肉の形状データを取得できるというメリットがあるが、歯列全体の正確な形状データを取得できないというデメリットがある。一方、CTデータには、歯列全体の正確な形状データを取得できるが、歯肉の形状データの取得は難しいというデメリットがある。
【0055】
データ処理装置10の演算部11は、IOSデータとCTデータとを合成する際、一方のデータのデメリットを他方のデータのメリットで補うことによって、歯列の正確な形状を有しつつ、歯肉の形状を有する三次元データを生成する。
【0056】
具体的には、演算部11は、IOS歯肉部22の表面形状データを、歯列全体の形状が正確なCTデータに合成する。この際、演算部11は、まず、IOS歯冠部21を、当該IOS歯冠部21と表面形状が一致(最も類似)する、CT歯牙31の歯冠部分と置換させる処理(以下「位置合せ」ともいう)を行なう。次いで、演算部11は、位置合せによって置換されたIOS歯冠部21付近へIOS歯肉部22を配置させるように合成する。この際、個々の歯について位置合せを行いやすいよう、あらかじめ、IOS歯冠部は個々の歯牙をセグメンテーションしておく。またCTデータについても、あらかじめ個々の歯をセグメンテーションしておいてもよい。歯牙をセグメンテーションするとは、それぞれの歯牙の領域がどこからどこまでかを演算部11が認識することを言う。さらに、演算部11が各歯牙の歯牙種類(番号)を認識するようにしてもよい。
【0057】
図7は、IOS歯冠部21とCT歯牙31の歯冠部分との位置合せの手法を説明するための図である。IOS歯列全体にはCT歯列よりも多くの位置計測誤差が含まれているため、IOS歯列とCT歯列との間には座標のずれが生じる。
【0058】
そこで、演算部11は、位置計測誤差をより多く含むIOS歯列を、より精度の高いCT歯列に合せる。具体的には、演算部11は、IOS歯冠部21の各々について、当該IOS歯冠部21と歯冠部分の形状が一致するCT歯牙31を特定し、当該IOS歯冠部21を、特定されたCT歯牙31の歯冠部分と置換させる。この位置合せによってIOS歯冠部21の位置が変位するため、位置合せ後のIOS歯冠部21と、IOS歯肉部22との間に隙間が生じてしまうことになる。
【0059】
図8は、位置合せ後のIOS歯冠部21Aと、IOS歯肉部22との状態の一例を示す図である。図8に示す例では、IOS歯冠部21Aの位置が位置合せによって内側にずれたことによって、IOS歯冠部21Aと、IOS歯肉部22の辺縁(IOS歯肉部22におけるIOS歯冠部21Aと対向する部分)22aとの間に隙間が生じている。
【0060】
そこで、演算部11は、位置合せ後のIOS歯冠部21AとIOS歯肉部22の辺縁22aとの間に生じる隙間を補間するようにIOS歯肉部22の辺縁のデータを修正する。すなわち、演算部11は、隙間を埋めるようにIOS歯肉部22の辺縁22aをIOS歯冠部21に向けて滑らかに変形するモーフィングを行なって、IOS歯肉部22の辺縁22aを位置合せ後のIOS歯冠部21に接合させる。
【0061】
図9は、位置合せ後のIOS歯冠部21Aと、モーフィング後のIOS歯肉部22との状態の一例を示す図である。図9に示すように、位置合せによってIOS歯冠部21Aの位置が内側にずれたことによって生じた隙間が、モーフィング後のIOS歯肉部22の辺縁22bによって埋められている。
【0062】
そして、演算部11は、モーフィング後のIOS歯肉部22のデータを、歯列の形状が正確なCTデータに合成する。これにより、歯列の正確な形状を有しつつ、歯肉の形状を有する三次元データを生成することができる。その結果、対象者の診断および治療により適した口腔内の三次元データを生成することができる。
【0063】
[フローチャート]
図10は、演算部11がIOSデータとCTデータとを合成する際に行なう処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0064】
演算部11は、IOSデータを取得し(ステップS10)、取得されたIOSデータをIOS歯冠部とIOS歯肉部とに分類(セグメンテーション)する(ステップS12)。
【0065】
次いで、演算部11は、CTデータを取得し(ステップS14)、取得されたCTデータを、CT歯牙とCT顎骨とに分類(セグメンテーション)する(ステップS16)。
【0066】
次いで、演算部11は、IOS歯冠部の表面形状がCT歯牙の歯冠部分の表面形状にマッチングする(一致する)ように、IOS歯冠部を置換させる(ステップS20)。この処理が、上述の位置合せである。
【0067】
次いで、演算部11は、位置合せ後のIOS歯冠部の辺縁と、IOS歯肉部の辺縁との最近接部距離Xを計測する(ステップS30)。なお、最近接部距離Xは、IOS歯肉部の辺縁における所定のポイントから、位置合せ後のIOS歯冠部の辺縁までの最短距離である。演算部11は、計測された最近接部距離Xが0よりも大きいか否かを判定する(ステップS40)。
【0068】
計測された最近接部距離Xが0よりも大きい場合(ステップS40においてYES)、すなわち、位置合せ後のIOS歯冠部の辺縁とIOS歯肉部の辺縁との間に隙間がある場合、演算部11は、当該隙間がなくなるまでIOS歯肉部の辺縁を変形する(ステップS42)。この処理が上述のモーフィングである。そして、演算部11は、変形したIOS歯肉部を登録する(ステップS44)。
【0069】
一方、計測された最近接部距離Xが0よりも大きくない場合(ステップS40においてNO)、すなわち、位置合せ後のIOS歯冠部の辺縁とIOS歯肉部の辺縁との間に隙間がない場合、演算部11は、上述のモーフィングを行なうことなく、IOS歯肉部を登録する(ステップS46)。
【0070】
なお、ステップS44あるいはステップS46で登録されたIOS歯肉部のデータは、歯列の形状が正確なCTデータに合成される。
【0071】
以上のように、本実施の形態による演算部11は、IOSデータとCTデータとを合成する際に、IOSデータに含まれるIOS歯冠部とIOS歯肉部とを分類し、IOS歯冠部の表面形状がCT歯牙の歯冠部分の表面形状に一致するようにIOS歯冠部を置換させ、IOS歯冠部の置換によって生じるIOS歯冠部とIOS歯肉部との隙間を補間するように、IOS歯肉部の辺縁のデータを修正(モーフィング)する。そして、修正後のIOS歯肉部のデータを、歯列の形状が正確なCTデータに合成する。これにより、歯列の正確な形状を有しつつ、歯肉の形状を有する三次元データを生成することができる。
【0072】
<変形例1>
上述の実施の形態による演算部11は、IOSデータとCTデータとを合成する際に、IOSデータに含まれるIOS歯冠部とIOS歯肉部とを分類し、IOS歯冠部の表面形状がCT歯牙の歯冠部分の表面形状に一致するようにIOS歯冠部を置換させ、IOS歯冠部の置換によって生じるIOS歯冠部とIOS歯肉部との隙間を補間するように、IOS歯肉部の辺縁のデータを修正した。
【0073】
しかしながら、IOSデータとCTデータとの合成手法は、上述の実施の形態による手法に限定されるものではない。たとえば、IOSデータとCTデータとの合成手法を以下のように変形してもよい。
【0074】
図11は、本変形例1によるIOSデータとCTデータとの合成手法を示す図である。本変形例1による演算部11は、IOSデータとCTデータとを合成する際に、IOSデータを、IOS歯冠部21と、IOS歯肉部22におけるIOS歯冠部21に隣接する隣接部分23と、IOS歯肉部22におけるIOS歯冠部21に隣接しない非隣接部分24とに分類する。
【0075】
そして、本変形例1による演算部11は、分類されたIOS歯冠部21の表面形状がCT歯牙の歯冠部分の表面形状に一致するように、IOS歯冠部21とIOS歯肉部の隣接部分23との組合せを置換させる位置合せを行なう。この位置合せによってIOS歯肉部の隣接部分23と非隣接部分24との間に隙間が生じる。そのため、本変形例1による演算部11は、IOS歯肉部の隣接部分23と非隣接部分24との隙間を補間するように、IOS歯肉部の隣接部分23と非隣接部分24の少なくとも一方のデータを修正(モーフィング)する。
【0076】
このように、位置合せによってIOS歯冠部21のみを置換するのではなく、IOS歯冠部21とIOS歯肉部の隣接部分23との組合せを置換することによって、歯冠部と歯肉部との境界部分の違和感がより少ないデータを生成することができる。
【0077】
<変形例2>
さらに、IOSデータとCTデータとの合成手法を以下のように変形してもよい。
【0078】
上述の図2~4を用いて説明したように、ユーザは、三次元スキャナ20を用いて歯列全体のデータを取得したい場合、三次元スキャナ20を口腔内を手動で移動させて部分的にスキャンする操作を歯列全体に亘って複数回行なう。このように複数回に亘って部分的にスキャンされた三次元データが繋ぎ合わされることによって、IOS歯列のデータが取得される。
【0079】
三次元スキャナ20の手動走査時には、三次元スキャナ20を操作するユーザの手の動き、およびスキャン対象者の頭部の動きなどが影響して、歯列方向の誤差が累積していまい、左右の歯牙同士の間で位置ずれが発生してしまうことがある。この位置ずれの幅は、ユーザ毎およびスキャン毎に異なり得る。この位置ずれの影響で、IOS歯列は歯列方向に誤差が累積する傾向を有する。
【0080】
その一方で、IOS歯冠部のデータにおいては、歯牙の縦方向(咬合面から歯根までの方向)の誤差は略無いか非常に小さい。
【0081】
図12は、歯列の断面形状を模式的に示す図である。図12に示す例では、左の歯と右の歯との間で、歯牙の縦方向(咬合面から歯根までの方向)に差異がある。IOS歯冠部のデータにおいては、歯牙の縦方向の精度がよく、このような差異が正確に反映される。
【0082】
そこで、本変形例2による演算部11は、IOS歯肉部22をCTデータに合成する際に、IOS歯冠部およびIOS歯肉部を歯牙の縦方向(歯列方向と略直交する方向)に分割し、この分割されたIOS歯肉部およびIOS歯肉部の分割部分の組合せを置換させる位置合せを行なう。
【0083】
図13は、本変形例2によるIOSデータとCTデータとの合成手法を示す図である。本変形例2による演算部11は、IOSデータとCTデータとを合成する際に、IOSデータを、複数の歯牙にそれぞれ含まれる複数のIOS歯冠部21と、IOS歯肉部22とに分類し、さらに、IOS歯肉部22を複数のIOS歯冠部21にそれぞれ隣接する複数の歯肉分割部分25に分類する。
【0084】
そして、本変形例2による演算部11は、分類されたIOS歯冠部21の各々の表面形状が当該IOS歯冠部21の各々に対応するCT歯冠部の表面形状に一致するように、IOS歯冠部21の各々と当該IOS歯冠部21の各々に隣接する歯肉分割部分25との組合せを置換させる位置合せを行なう。この位置合せによって、歯列方向に互いに隣接する歯肉分割部分25同士の間に隙間が生じる。そのため、本変形例2による演算部11は、歯列方向に互いに隣接する歯肉分割部分25同士の隙間を補間するように、歯肉分割部分25のデータを修正(モーフィング)する。
【0085】
IOSデータとCTデータとの合成手法をこのように変形することによって、合成データ中におけるIOS歯肉部22の位精度を向上させることができる。
【0086】
<変形例3>
図14は、IOSデータとCTデータとの合成データを用いたシミュレーション処理の手法を示す図である。歯科矯正などの目的で、IOSデータとCTデータとの合成データに含まれる歯牙を所望の位置に移動させるシミュレーション処理を行なう場合には、シミュレーション処理に伴って歯牙と歯肉部との間に隙間が生じる。
【0087】
このような隙間を補間するように、歯肉部のデータを修正(モーフィング)するようにしてもよい。なお、隙間の補間手法は特に限定されない。たとえば、三角パッチで隙間を補間してもよいし、歯冠部と歯肉部との境界を埋めるよう歯肉部の辺縁をモーフィングして歯冠部辺縁と接合させてもよい。
【0088】
<変形例4>
既に述べたように、歯列の形状はIOSデータよりもCTデータの方が正確であるが、個々の歯牙(歯冠部)の表面形状そのものはCTデータよりもIOSデータの方が正確である。この点に鑑み、本変形例4においては、IOS歯肉部22に加えてIOS歯冠部21のデータをCTデータに合成する。
【0089】
図15は、本変形例4によるIOS歯冠部21とCT歯牙31との合成手法を説明するための図である。IOSデータには、各歯牙の歯冠部の正確な表面形状のデータが含まれているが、各歯牙の歯根部のデータは含まれておらず、また歯列全体の形状(各歯牙が配置される位置)の精度は低い。一方、CTデータには、歯冠部および歯根部を含めた歯牙全体のデータが含まれているが、各歯牙の表面形状の精度は低い。
【0090】
そこで、本変形例4においては、IOS歯冠部21のデータを、CT歯牙31のデータに合成する。具体的には、CT歯牙31の歯冠部分のデータを、IOS歯冠部21の表面形状に合せて変形する。
【0091】
図16は、本変形例4による演算部11がIOSデータとCTデータとを合成する際に行なう処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図16に示されるフローチャートは、前述の図10のフローチャートのステップS20とステップS30との間に、ステップS21,S22,S23を追加したものである。
【0092】
演算部11は、ステップS20での位置合せ後のIOS歯冠部の表面形状と、CT歯牙の表面形状とを比較し、CT歯牙におけるIOS歯冠部よりも突出している凸部分の表面形状データをIOS歯冠部の表面形状に合うように変形する(ステップS21)とともに、CT歯牙におけるIOS歯冠部よりも窪んでいる凹部分の表面形状データをIOS歯冠部の表面形状に合うように変形する(ステップS22)。そして、演算部11は、変形したCT歯牙のデータを登録する(ステップS23)。
【0093】
このように、IOS歯冠部のデータをCTデータに合成するようにしてもよい。
<変形例5>
上述の変形例4においては、IOS歯冠部に合せてCT歯牙のデータを変形することによって、IOS歯冠部とCT歯牙とを合成した。
【0094】
これに対し、本変形例5においては、IOS歯冠部の表面形状のデータとCT歯牙の表面形状のデータとを結合することによって、IOS歯冠部とCT歯牙とを合成する。
【0095】
図17は、本変形例5による演算部11がIOSデータとCTデータとを合成する際に行なう処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図17に示されるフローチャートは、上述の図16のステップS21,S22,S23をそれぞれステップS24,S25,S26に変更したものである。
【0096】
演算部11は、ステップS20での位置合せ後のIOS歯冠部の下端辺縁と、CT歯牙におけるIOS歯冠部の下端辺縁との近接部分とを最短距離で結合する(ステップS24)。
【0097】
次いで、演算部11は、CT歯牙の歯冠部分の表面における、IOS歯冠部から乖離する部分をカット(削除)する(ステップS25)。次いで、演算部11は、結合したデータを登録する(ステップS26)。
【0098】
図18は、本変形例5によるIOS歯冠部21とCT歯牙31との合成手法を説明するための図である。本変形例5による演算部11は、IOS歯冠部21の表面形状のデータとCT歯牙31の表面形状のデータとを結合する際、まず、IOS歯冠部21の下端辺縁26と、CT歯牙31におけるIOS歯冠部21の下端辺縁26との近接部分36とを最短距離で結合する。このように結合する場合、IOS歯冠部21の表面形状とCT歯牙31の表面形状とが一致しない状態となり得る。そこで、演算部11は、CT歯牙31の歯冠部分の表面における、IOS歯冠部21から乖離する部分をカット(削除)する。
【0099】
図19は、CT歯牙31の歯冠部分の表面のカット手法の一例を説明するための図である。CT歯牙31の表面形状とIOS歯冠部21の表面形状とが一致する部分については、IOS歯冠部21を優先する(パターン1)。
【0100】
CT歯牙31がIOS歯冠部21に内包されている部分については、IOS歯冠部21の下端をCT歯牙31に最短で結合しつつ、CT歯牙31におけるIOS歯冠部21に内包されている部分をカットする(パターン2)。
【0101】
CT歯牙31がIOS歯冠部21からはみ出している部分については、IOS歯冠部21の下端をCT歯牙31に最短距離で結合しつつ、CT歯牙31におけるIOS歯冠部21からはみ出している部分をカットする(パターン3)。
【0102】
CT歯牙31がIOS歯冠部21に内包されている部分とIOS歯冠部21からはみ出している部分とを有する場合には、IOS歯冠部21の下端をCT歯牙31に最短距離で結合しつつ、CT歯牙31におけるIOS歯冠部21に内包されている部分、および、CT歯牙31におけるIOS歯冠部21からはみ出している部分を、それぞれカットする(パターン4)。
【0103】
以上のように、IOS歯冠部の表面形状のデータとCT歯牙の表面形状のデータとを結合することによって、IOS歯冠部とCT歯牙とを合成するようにしてもよい。
【0104】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、本実施の形態で例示された構成および変形例で例示された構成は、適宜組み合せることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 データ処理システム、3 ディスプレイ、4 キーボード、5 マウス、6 リムーバブルディスク、10 データ処理装置、11 演算部、12 記憶部、13 IOSインターフェース、14 CTインターフェース、15 ディスプレイインターフェース、16 周辺機器インターフェース、17 読取部、18 通信部、20 三次元スキャナ、21,21A IOS歯冠部、22 IOS歯肉部、23 隣接部分、24 非隣接部分、25 歯肉分割部分、26 下端辺縁、30 CT撮像装置、31 CT歯牙、33 CT顎。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19