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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/01 20130101AFI20240815BHJP
【FI】
B62K5/01
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022139556
(22)【出願日】2022-09-01
(65)【公開番号】P2024034956
(43)【公開日】2024-03-13
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-010226(JP,U)
【文献】実開平02-049795(JP,U)
【文献】特開2007-071253(JP,A)
【文献】特開昭61-278423(JP,A)
【文献】特開2005-289231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0211290(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/00 - 5/01
B62J 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに設けられる鞍乗り型シートと、
前記車体フレームの前部に設けられる一対の前輪と、
前記車体フレームの後部に設けられる一対の後輪と、
シリンダブロックと車両幅方向に延びるクランク軸を有しかつ前記車体フレームに設けられるエンジンと、
第1ステップと前記第1ステップの後方に設けられかつ斜め後方に延びる第2ステップとを有し、前記車体フレームに設けられるフートレストとを備え、
前記エンジンは、前記シリンダブロックが前記クランク軸より後方側となるように、斜め後方に傾斜して配置され、
前記前輪および前記後輪の接地面からの前記クランク軸の高さは前記第2ステップの上端と下端との間の高さであり、かつ側面視において前記クランク軸は前記第2ステップの後方に位置する、車両。
【請求項2】
車体フレームと、
前記車体フレームに設けられる鞍乗り型シートと、
前記車体フレームの前部に設けられる一対の前輪と、
前記車体フレームの後部に設けられる一対の後輪と、
シリンダブロックと車両幅方向に延びるクランク軸とを有するエンジン、および前記エンジンからの出力が伝達される入力軸を有しかつ前記エンジンの外方に設けられる無段変速機を含み、前記車体フレームに設けられるエンジンユニットと、
第1ステップと前記第1ステップの後方に設けられかつ斜め後方に延びる第2ステップとを有し、前記車体フレームに設けられるフートレストとを備え、
前記エンジンは、前記シリンダブロックが前記クランク軸より後方側となるように、斜め後方に傾斜して配置され、
前記前輪および前記後輪の接地面からの前記入力軸の高さは前記第2ステップの上端と下端との間の高さであり、かつ側面視において前記入力軸は前記第2ステップの後方に位置する、車両。
【請求項3】
前記エンジン、および前記エンジンからの出力が伝達される入力軸を有しかつ前記エンジンの外方に設けられる無段変速機を含み、前記車体フレームに設けられるエンジンユニットをさらに備え、
前記前輪および前記後輪の接地面からの前記入力軸の高さは前記第2ステップの上端と下端との間の高さであり、かつ側面視において前記入力軸は前記第2ステップの後方に位置する、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記第2ステップの後端部を通りかつ車両幅方向に延びる仮想線を第1仮想線とし、前記第2ステップの内端部を通りかつ車両前後方向に延びる仮想線を第2仮想線とすると、平面視において、前記第1仮想線と前記第2仮想線との交点が前記無段変速機と重なる、請求項2または3に記載の車両。
【請求項5】
側面視において、前記第2ステップは前記無段変速機と重なる、請求項2または3に記載の車両。
【請求項6】
前記無段変速機からの出力を変速するために前記エンジンの前方に前記エンジンとは別体として設けられる変速機をさらに含む、請求項2または3に記載の車両。
【請求項7】
前記無段変速機に吸気するために前記無段変速機に接続される吸気ダクトをさらに含み
面視において、前記吸気ダクトは前記シリンダブロックと重ならない、請求項2または3に記載の車両。
【請求項8】
前記無段変速機に吸気するために前記無段変速機に接続される吸気ダクトをさらに含み、
前記吸気ダクトは、平面視において当該車両のセンターラインに対して前記無段変速機と同じ側に位置する吸気口を有する、請求項2または3に記載の車両。
【請求項9】
前記無段変速機に吸気するために前記無段変速機に接続される吸気ダクトをさらに含み、
前記吸気ダクトは、平面視において前記鞍乗り型シートの前端より前方に位置する吸気口を有する、請求項2または3に記載の車両。
【請求項10】
前記無段変速機に吸気するために前記無段変速機に接続される吸気ダクトと、
前記鞍乗り型シートの前方に設けられるバッテリとをさらに含み、
前記吸気ダクトは、前記バッテリより上方に位置する吸気口を有する、請求項2または3に記載の車両。
【請求項11】
前記無段変速機から排気するために前記無段変速機に接続されかつ排気口を有する排気ダクトと、
前記エンジンから排気するために前記エンジンに接続される排気管と、
前記排気管に接続されるマフラとをさらに含み、
前記排気管は、前記エンジンに接続される第1管部と、前記マフラに接続される第2管部と、前記第1管部と前記第2管部とを連結する球面ジョイントとを有し、
前記排気ダクトは、前記排気口が前記球面ジョイントに向くように設けられる、請求項2または3に記載の車両。
【請求項12】
側面視において、前記エンジンの少なくとも一部は前記後輪と重なる、請求項1または2に記載の車両。
【請求項13】
前記エンジンへ供給される燃料が収容される燃料タンクと、
前記エンジンと前記燃料タンクとの間に設けられるキャニスタとをさらに含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項14】
前記エンジンはシリンダヘッドを有し、
下端が前記シリンダヘッドの下端より低くなるように前記エンジンの前方に設けられる燃料タンクをさらに含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項15】
前記エンジンはシリンダヘッドを有し、
正面視において前記エンジンと重なるように前記シリンダヘッドの前方に設けられるエアクリーナをさらに含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項16】
前記燃料タンクの上方に設けられる電装ボックスをさらに含む、請求項13に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両に関し、より特定的にはATV(All Terrain Vehicle)などの鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例として、特許文献1において鞍乗り型車両が開示されている。この鞍乗り型車両は、フレームと、フレームに搭載されるエンジンとを含む。側面視において、エンジンは、サドルシートとフートレストとの間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第11332211号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された鞍乗り型車両では、運転者がフートレストに足を載せて乗車する姿勢をとるとき、エンジンを跨ぐ必要がある。したがって、当該鞍乗り型車両には、エンジンの車両幅方向の寸法が大きくなったときでも快適に乗車できるように、車両レイアウトを検討する余地がある。
【0005】
それゆえにこの発明の主たる目的は、エンジンの車幅方向の寸法が大きくなっても快適に乗車できる、車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、車体フレームと、車体フレームに設けられる鞍乗り型シートと、車体フレームの前部に設けられる一対の前輪と、車体フレームの後部に設けられる一対の後輪と、車両幅方向に延びるクランク軸を有しかつ車体フレームに設けられるエンジンと、第1ステップと第1ステップの後方に設けられかつ斜め後方に延びる第2ステップとを有し、車体フレームに設けられるフートレストとを備え、前輪および後輪の接地面からのクランク軸の高さは第2ステップの上端と下端との間の高さであり、かつ側面視においてクランク軸は前記第2ステップの後方に位置する、車両が提供される。
【0007】
エンジンのクランク軸方向(幅方向)寸法は通常、クランク軸近傍において最大となる。したがって、クランク軸が車幅方向に延びるようにエンジンを車体フレームに配置したとき、エンジンのうちクランク軸付近が車幅方向に張り出す。エンジンの排気量が大きくなりエンジンが大型になると、それに伴ってエンジンのクランク軸近傍の幅方向寸法も大きくなる。この発明では、接地面からのクランク軸の高さは第2ステップの上端と下端との間の高さであり、かつ側面視においてクランク軸は第2ステップの後方に位置するので、エンジンが大型になりクランク軸近傍の幅方向寸法が大きくなっても、それに影響されることなくフートレストを車体フレームの好ましい位置に設けることができ、フートエリアを確保できる。したがって、エンジンの車幅方向の寸法が大きくなっても快適に乗車できる。
【0008】
好ましくは、当該車両は、エンジン、およびエンジンからの出力が伝達される入力軸を有しかつエンジンの外方に設けられる無段変速機を含み、車体フレームに設けられるエンジンユニットをさらに備え、前輪および後輪の接地面からの入力軸の高さは第2ステップの上端と下端との間の高さであり、かつ側面視において入力軸は第2ステップの後方に位置する。この場合、エンジンが大型になりエンジンユニットのうち入力軸を通る幅方向寸法が大きくなっても、それに影響されることなくフートレストを車体フレームの好ましい位置に設けることができる。したがって、エンジンの車幅方向の寸法が大きくなっても快適に乗車できる。
【0009】
また、車体フレームと、車体フレームに設けられる鞍乗り型シートと、車体フレームの前部に設けられる一対の前輪と、車体フレームの後部に設けられる一対の後輪と、エンジン、およびエンジンからの出力が伝達される入力軸を有しかつエンジンの外方に設けられる無段変速機を含み、車体フレームに設けられるエンジンユニットと、第1ステップと第1ステップの後方に設けられかつ斜め後方に延びる第2ステップとを有し、車体フレームに設けられるフートレストとを備え、前輪および後輪の接地面からの入力軸の高さは第2ステップの上端と下端との間の高さであり、かつ側面視において入力軸は第2ステップの後方に位置する、車両が提供される。
【0010】
エンジンとエンジンの外方に設けられる無段変速機とを含むエンジンユニットのクランク軸方向(幅方向)寸法は通常、無段変速機の入力軸を通る箇所近傍において最大となる。したがって、クランク軸が車幅方向に延びるようにエンジンユニットを車体フレームに配置したとき、エンジンユニットのうち入力軸付近が車幅方向に張り出す。エンジンの排気量が大きくなりエンジンが大型になると、エンジンの幅方向寸法が大きくなり、それに伴ってエンジンユニットのうち入力軸を通る幅方向寸法も大きくなる。この発明では、接地面からの入力軸の高さは第2ステップの上端と下端との間の高さであり、かつ側面視において入力軸は第2ステップの後方に位置するので、エンジンが大型になりエンジンユニットのうち入力軸を通る幅方向寸法が大きくなっても、それに影響されることなくフートレストを車体フレームの好ましい位置に設けることができ、フートエリアを確保できる。したがって、エンジンの車幅方向の寸法が大きくなっても快適に乗車できる。
【0011】
また好ましくは、第2ステップの後端部を通りかつ車両幅方向に延びる仮想線を第1仮想線とし、第2ステップの内端部を通りかつ車両前後方向に延びる仮想線を第2仮想線とすると、平面視において、第1仮想線と第2仮想線との交点が無段変速機と重なる。この場合、第2ステップの下方のスペースを有効利用して、無段変速機ひいてはエンジンユニットを配置でき、マスを集中できる。
【0012】
さらに好ましくは、側面視において、第2ステップは無段変速機と重なる。この場合、マスを集中できるとともに、車両をコンパクトにできる。
【0013】
好ましくは、当該車両は、無段変速機からの出力を変速するためにエンジンの前方にエンジンとは別体として設けられる変速機をさらに含む。この場合、エンジンとは別体としての変速機を用いることによって、変速機のレイアウトの自由度を大きくでき、エンジンの前方に変速機を設けることによって、車両をコンパクトにできる。
【0014】
また好ましくは、当該車両は、無段変速機に吸気するために無段変速機に接続される吸気ダクトをさらに含み、エンジンはシリンダブロックを有し、平面視において、吸気ダクトはシリンダブロックと重ならない。この場合、エンジンの熱気を吸気ダクトから吸い込むことを抑制できる。
【0015】
さらに好ましくは、当該車両は、無段変速機に吸気するために無段変速機に接続される吸気ダクトをさらに含み、吸気ダクトは、平面視において当該車両のセンターラインに対して無段変速機と同じ側に位置する吸気口を有する。この場合、エンジンの熱気を吸気ダクトの吸気口から吸い込むことを抑制できる。
【0016】
好ましくは、当該車両は、無段変速機に吸気するために無段変速機に接続される吸気ダクトをさらに含み、吸気ダクトは、平面視において鞍乗り型シートの前端より前方に位置する吸気口を有する。この場合、エンジンの熱気を吸気ダクトの吸気口から吸い込むことを抑制できる。
【0017】
また好ましくは、当該車両は、無段変速機に吸気するために無段変速機に接続される吸気ダクトと、鞍乗り型シートの前方に設けられるバッテリとをさらに含み、吸気ダクトは、バッテリより上方に位置する吸気口を有する。この場合、バッテリは、鞍乗り型シートの前方、すなわち想定水深を考慮して浸水し難い位置に配置される。吸気ダクトの吸気口は、このようなバッテリより上方に設けられるので、吸気ダクトから浸水することを抑制できる。
【0018】
さらに好ましくは、当該車両は、無段変速機から排気するために無段変速機に接続されかつ排気口を有する排気ダクトと、エンジンから排気するためにエンジンに接続される排気管と、排気管に接続されるマフラとをさらに含み、排気管は、エンジンに接続される第1管部と、マフラに接続される第2管部と、第1管部と第2管部とを連結する球面ジョイントとを有し、排気ダクトは、排気口が球面ジョイントに向くように設けられる。この場合、排気ダクトの排気口からの排気によって、球面ジョイントを冷却できる。
【0019】
好ましくは、側面視において、エンジンの少なくとも一部は後輪と重なる。この場合、マスを集中できるとともに、車両をコンパクトにできる。
【0020】
また好ましくは、当該車両は、エンジンへ供給される燃料が収容される燃料タンクと、エンジンと燃料タンクとの間に設けられるキャニスタとをさらに含む。この場合、キャニスタと燃料タンクとをつなぐ配管、およびキャニスタとエンジンとをつなぐ配管を短くでき、遠回りしない配策が可能となる。
【0021】
さらに好ましくは、エンジンはシリンダヘッドを有し、当該車両は、下端がシリンダヘッドの下端より低くなるようにエンジンの前方に設けられる燃料タンクをさらに含む。
【0022】
好ましくは、エンジンはシリンダヘッドを有し、当該車両は、正面視においてエンジンと重なるようにシリンダヘッドの前方に設けられるエアクリーナをさらに含む。この場合、スペースを有効利用して、車両をコンパクトにできる。
【0023】
また好ましくは、当該車両は、燃料タンクの上方に設けられる電装ボックスをさらに含む。この場合、電装ボックスに対するエンジンの熱影響を低減できるとともに、電装ボックスの水没を回避できる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、エンジンの車幅方向の寸法が大きくなっても快適に乗車できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の一実施形態に係る車両の要部を示す前方斜視図である。
図2図1の車両の要部を示す左方から見た側面図である。
図3図1の車両の要部を示す右方から見た側面図である。
図4図1の車両の要部を示す平面図である。
図5図1の車両の要部を示す底面図である。
図6図1の車両の要部を示す正面図である。
図7図1の車両の要部を示す背面図である。
図8】フートレストおよびその近傍を示す後方斜視図である。
図9】フートレストおよびその近傍を示す前方斜視図である。
図10】エンジン、無段変速機および変速機等を示す平面図である。
図11】無段変速機の吸気ダクトおよび排気ダクトならびにその近傍を示す平面図である。
図12】無段変速機の吸気ダクトおよび排気ダクトならびにその近傍を示す側面図である。
図13図1の車両の要部(車体フレームあり)を示す右方から見た側面図である。
図14図1の車両の要部(車体フレームなし)を示す右方から見た側面図である。
図15】センタステップの後端およびリアステップの前端(下端)を説明するための図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図中において、「Fr」は前方を示し、「Rr」は後方を示し、「R」は右方を示し、「L」は左方を示し、「U」は上方を示し、「Lo」は下方を示す。
【0028】
図1図3を参照して、この発明の一実施形態に係る車両10は、鞍乗型車両、より具体的には四輪タイプのATVであり、車体フレーム12と、一対の前輪14と、一対の後輪16と、バーハンドル18と、鞍乗り型シート20と、一対のフートレスト22a,22bとを含む。
【0029】
図4図7をさらに参照して、一対の前輪14は、一対のサスペンション58a,58b(後述)を介して車体フレーム12の前部に設けられる。一対の後輪16は、一対のサスペンション62a,62b(後述)を介して車体フレーム12の後部に設けられる。バーハンドル18は、車幅方向中央部においてステアリング機構66(後述)の上端部に設けられ、かつ側面視で前輪14の上方に設けられる。鞍乗り型シート20は、車幅方向中央部に設けられ、側面視で前輪14および後輪16よりも上方かつ前輪14と後輪16との間に設けられ、車体フレーム12に支持される。一対のフートレスト22a,22bはそれぞれ、運転者の足を載せる部分であり、側面視で前輪14と後輪16との間に設けられ、センタステップ24a,24bとフロントステップ26a,26bとリアステップ28a,28bとを含み、車体フレーム12に設けられる。
【0030】
図8および図9をさらに参照して、センタステップ24a,24bは、車体水平時に運転者が足を載せる部分であり、車体水平時に略水平となる。フロントステップ26a,26bはそれぞれ、センタステップ24a,24bの前方に設けられかつ斜め上前方に延びる。すなわち、フロントステップ26a,26bはそれぞれ、センタステップ24a,24bに対して斜め上前方に傾斜する。これにより、フートレスト22a,22bは、その前部に迎え角が付くように形成される。リアステップ28a,28bはそれぞれ、センタステップ24a,24bの後方に設けられかつ斜め後方に延びる。すなわち、リアステップ28a,28bはそれぞれ、センタステップ24a,24bに対して斜め上後方に傾斜する。リアステップ28a,28bは、車体傾斜時に運転者が足を載せることができる部分である。
【0031】
図2図4を参照して、リアステップ28aの後端部を通りかつ車両幅方向に延びる仮想線を第1仮想線Laとし、リアステップ28aの内端部を通りかつ車両前後方向に延びる仮想線を第2仮想線Maとすると、平面視において、第1仮想線Laと第2仮想線Maとの交点Xaが無段変速機38(CVT)(後述)と重なる。リアステップ28aの後方かつ内方の隅部には、リアステップ28aが無段変速機38の邪魔にならないように孔30aが形成される。側面視において、リアステップ28aは無段変速機38と重なる。リアステップ28bの後端部を通りかつ車両幅方向に延びる仮想線を第1仮想線Lbとし、リアステップ28bの内端部を通りかつ車両前後方向に延びる仮想線を第2仮想線Mbとすると、平面視において、第1仮想線Lbと第2仮想線Mbとの交点Xbがエンジン36(後述)と重なる。リアステップ28bの後方かつ内方の隅部には、リアステップ28bがエンジン36の邪魔にならないように孔30bが形成される。側面視において、リアステップ28bはエンジン36と重なる。
【0032】
図10および図12を参照して、車両10はさらに、エンジンユニット32と変速機34とを含む。エンジンユニット32は、原動機としてのエンジン36と、無変速機38とを含む。図5を参照して、エンジンユニット32および変速機34は、車体フレーム12に設けられる。
【0033】
図13および図14をさらに参照して、エンジン36は、車両幅方向に延びるクランク軸40と、クランク軸40が収容されるクランクケース42と、クランクケース42に接続されるシリンダブロック44と、シリンダブロック44に接続されるシリンダヘッド46と、シリンダヘッド46に取り付けられるシリンダヘッドカバー48とを含み、車体フレーム12に設けられる。この実施形態では、エンジン36は、並列2気筒エンジンである。エンジン36は、車体フレーム12の前後方向中央部よりやや後方において、斜め後方に傾斜するように配置される。すなわち、エンジン36は、リアミッドシップにレイアウトされる。図2および図3を参照して、側面視において、エンジン36の少なくとも一部は後輪16と重なる。前輪14および後輪16の接地面Gからのクランク軸40の高さは、リアステップ28a(28b)の上端E1と下端E2との間の高さであり、かつ側面視においてクランク軸40はリアステップ28a(28b)の後方に位置する。したがって、側面視において、クランク軸40はセンタステップ24a(24b)より後方に位置する。
【0034】
無段変速機38は、車両幅方向に延びエンジン36からの出力が伝達される入力軸50を有し、かつエンジン36の外方(この実施形態では、左方)に設けられる。接地面Gからの入力軸50の高さは、リアステップ28a(28b)の上端E1と下端E2との間の高さであり、かつ側面視において入力軸50はリアステップ28a(28b)の後方に位置する。したがって、側面視において、入力軸50はセンタステップ24a(24b)より後方に位置する。
【0035】
変速機34は、無段変速機38からの出力を変速するために、エンジン36の前方にエンジン36とは別体として設けられる。エンジン36と変速機34とは、無段変速機38を介して接続される。
【0036】
図5~7、図10図12および図14を参照して、車両10はさらに、変速機34に接続されかつ前後方向に延びるプロペラシャフト52と、プロペラシャフト52の前端部に接続される前部シャフト54と、変速機34からプロペラシャフト52および前部シャフト54を介して伝達される回転を一対の前輪14に伝達する回転伝達部56と、一対の前輪14を懸架する一対のサスペンション58a,58bと、プロペラシャフト52の後端部に接続される後部シャフト(図示せず)と、変速機34からプロペラシャフト52および後部シャフトを介して伝達される回転を一対の後輪16に伝達する回転伝達部60と、一対の後輪16を懸架する一対のサスペンション62a,62bとを含む。
【0037】
回転伝達部56は、前部シャフト54、プロペラシャフト52、変速機34および無段変速機38を介してエンジン36に連結される。回転伝達部60は、後部シャフト、プロペラシャフト52、変速機34および無段変速機38を介してエンジン36に連結される。したがって、エンジン36の回転は、無段変速機38および変速機34によって変速された後、プロペラシャフト52、前部シャフト54および回転伝達部56を介して一対の前輪14に伝達される。それにより、一対の前輪14が回転する。また、エンジン36の回転は、無段変速機38および変速機34によって変速された後、プロペラシャフト52、後部シャフト、および回転伝達部60を介して一対の後輪16に伝達される。それにより、一対の後輪16が回転する。一対のサスペンション62a,62bはそれぞれ、ショックアブソーバ64a,64bを含む。各ショックアブソーバ64a,64bは、一対の後輪16のホイールセンタより前方に位置し、かつマフラ78(後述)より前方に位置する。これにより、マスを集中できる。
【0038】
車両10はさらに、一対の前輪14を操舵するステアリング機構66を含む。
【0039】
ステアリング機構66は、ステアリングシャフト68と、ステアリングシャフト68に設けられる電動パワーステアリング(EPS)70とを含む。電動パワーステアリング70は、燃料タンク100(後述)の前方に設けられる。
【0040】
図4および図14を参照して、車両10はさらに、エンジン36に吸気するためにエンジン36(シリンダヘッド46)に接続される吸気管72と、吸気管72に接続されるエアクリーナ74と、エンジン36から排気するためにエンジン36(シリンダヘッド46)に接続される排気管76と、排気管76に接続されるマフラ78と、エンジン36からブローバイガスを排出するためにエンジン36に接続されるブリーザホース80とを含む。
【0041】
エアクリーナ74は、正面視においてエンジン36と重なるようにシリンダヘッド46の前方に設けられ、かつ鞍乗り型シート20の下方に設けられる。マフラ78は、エンジン36の後方に設けられる。吸気管72はシリンダヘッド46の前部に接続され、排気管76はシリンダヘッド46の後部に接続される。したがって、エンジン36は、前方吸気、後方排気の構造を呈する。図7および図12をさらに参照して、排気管76は、エンジン36に接続される第1管部82と、マフラ78に接続される第2管部84と、第1管部82と第2管部84とを連結する球面ジョイント86とを有する。
【0042】
図9図12を参照して、車両10はさらに、無段変速機38に吸気するために無段変速機38に接続される吸気ダクト88と、無段変速機38から排気するために無段変速機38に接続される排気ダクト90とを含む。
【0043】
吸気ダクト88は吸気口92を有し、排気ダクト90は排気口94を有する。図4をさらに参照して、吸気口92は、平面視において車両10のセンターラインCLに対して、無段変速機38と同じ側に位置し、平面視において鞍乗り型シート20の前端より前方に位置する。吸気ダクト88の吸気口92は、バッテリ102(後述)より上方に設けられ、吸気ダクト88は、平面視においてエンジン36のシリンダブロック44、シリンダヘッド46およびシリンダヘッドカバー48と重ならない。排気ダクト90は、排気口94が排気管76の球面ジョイント86に向くように設けられる。吸気ダクト88の吸気口92と、エアクリーナ74の吸気口96と、ブリーザホース80の出口側端部98とは、図示しないトップカバーに覆われる位置に配置される。これにより、吸気ダクト88、エアクリーナ74およびブリーザホース80に浸水するリスクを抑制できる。
【0044】
図11および図14を参照して、車両10はさらに、エンジン36へ供給される燃料が収容される燃料タンク100と、燃料タンク100の上方に設けられるバッテリ102および電装ボックス104と、燃料タンク100の下方かつ変速機34の前方に設けられるパーキングブレーキ106およびキャニスタ108とを含む。
【0045】
燃料タンク100は、その下端がシリンダヘッド46の下端より低くなるようにエンジン36の前方に設けられる。また、燃料タンク100は、変速機34の前方斜め上方かつエアクリーナ74の前方に設けられる。バッテリ102および電装ボックス104は、並置され、かつ鞍乗り型シート20の前方に設けられる。
【0046】
キャニスタ108は、エンジン36と燃料タンク100との間に設けられる。また、キャニスタ108は、外装カバー(図示せず)に覆われて外から見えない位置に配置される。キャニスタ108と燃料タンク100とは、配管110を介して連通され、キャニスタ108とエンジン36とは、配管112を介して連通され、キャニスタ108とエアクリーナ74とは、配管114を介して連通される。配管110にはロールオーバーバルブ116が設けられ、配管112にはエアカットバルブ118が設けられ、配管114にはワンウェイバルブ120が設けられる。燃料タンク100から配管110を介してキャニスタ108に供給された燃料蒸気は、キャニスタ108内の活性炭に吸着される。エンジン36の作動中にはエンジン36の負圧によってキャニスタ108内の空気が吸引され、エアクリーナ74内の空気が配管114を介してキャニスタ108に流入する。その際、活性炭に吸着されていた燃料蒸気は、活性炭から分離され、配管112を介してエンジン36に送られて燃焼する。
【0047】
この実施形態では、センタステップ24a,24bが第1ステップに対応し、リアステップ28a,28bが第2ステップに対応する。
【0048】
このような鞍乗型車両10によれば、接地面Gからのクランク軸40の高さはリアステップ28a(28b)の上端E1と下端E2との間の高さであり、かつ側面視においてクランク軸40はリアステップ28a(28b)の後方に位置するので、エンジン36が大型になりクランク軸40の近傍の幅方向寸法が大きくなっても、それに影響されることなくフートレスト22a,22bを車体フレーム12の好ましい位置に設けることができ、フートエリアを確保できる。したがって、エンジン36の車幅方向の寸法が大きくなっても快適に乗車できる。
【0049】
また、接地面Gからの入力軸50の高さはリアステップ28a(28b)の上端E1と下端E2との間の高さであり、かつ側面視において入力軸50はリアステップ28a(28b)の後方に位置するので、エンジン36が大型になりエンジンユニット32のうち入力軸50を通る幅方向寸法が大きくなっても、それに影響されることなくフートレスト22a,22bを車体フレーム12の好ましい位置に設けることができ、フートエリアを確保できる。したがって、エンジン36の車幅方向の寸法が大きくなっても快適に乗車できる。
【0050】
平面視において、第1仮想線Laと第2仮想線Maとの交点Xaが無段変速機38と重なるので、リアステップ28aの下方のスペースを有効利用して、無段変速機38ひいてはエンジンユニット32を配置でき、マスを集中できる。
【0051】
平面視において、第1仮想線Lbと第2仮想線Mbとの交点Xbがエンジン36と重なるので、リアステップ28bの下方のスペースを有効利用して、エンジン36ひいてはエンジンユニット32を配置でき、マスを集中できる。
【0052】
側面視において、リアステップ28aは無段変速機38と重なるので、マスを集中できるとともに、車両10をコンパクトにできる。
【0053】
エンジン36とは別体としての変速機34を用いることによって、変速機34のレイアウトの自由度を大きくでき、エンジン36の前方に変速機34を設けることによって、車両10をコンパクトにできる。
【0054】
平面視において、吸気ダクト88はシリンダブロック44と重ならないので、エンジン36の熱気を吸気ダクト88から吸い込むことを抑制できる。
【0055】
吸気ダクト88の吸気口92は、平面視において車両10のセンターラインCLに対して無段変速機38と同じ側に位置するので、エンジン36の熱気を吸気ダクト88の吸気口92から吸い込むことを抑制できる。
【0056】
吸気ダクト88の吸気口92は、平面視において鞍乗り型シート20の前端より前方に位置するので、エンジン36の熱気を吸気ダクト88の吸気口92から吸い込むことを抑制できる。
【0057】
バッテリ102は、鞍乗り型シート20の前方、すなわち想定水深を考慮して浸水し難い位置に配置され、吸気ダクト88の吸気口92は、このようなバッテリ102より上方に設けられるので、吸気ダクト88から浸水することを抑制できる。
【0058】
排気ダクト88は、排気口94が球面ジョイント86に向くように設けられるので、排気ダクト88の排気口94からの排気によって、球面ジョイント86を冷却できる。
【0059】
側面視において、エンジン36の少なくとも一部は後輪16と重なるので、マスを集中できるとともに、車両10をコンパクトにできる。
【0060】
キャニスタ108は、エンジン36と燃料タンク100との間に設けられるので、キャニスタ108と燃料タンク100とをつなぐ配管110、およびキャニスタ108とエンジン36とをつなぐ配管112を短くでき、遠回りしない配策が可能となる。
【0061】
外装カバー(図示せず)に覆われて外から見えない位置にキャニスタ108を配置することによって、キャニスタ108のためだけのカバーが不要となる。
【0062】
変速機34の前方斜め上方に燃料タンク100を設けることによって、車両10をコンパクトにできる。
【0063】
エアクリーナ74は、正面視においてエンジン36と重なるようにシリンダヘッド46の前方に設けられるので、スペースを有効利用して、車両10をコンパクトにできる。
【0064】
電装ボックス104は、燃料タンク100の上方に設けられるので、電装ボックス104に対するエンジン36の熱影響を低減できるとともに、電装ボックス104の水没を回避できる。
【0065】
燃料タンク100の下方にパーキングブレーキ106を設けることによって、マスを集中でき、車両10をコンパクトにできる。
【0066】
燃料タンク100の前方に電動パワーステアリング70を設けることによって、マスを集中でき、車両10をコンパクトにできる。
【0067】
なお、センタステップの後端およびリアステップの前端(下端)は、次のように決定される。
【0068】
図15(a)を参照して、側面視において、センタステップとリアステップとが折れ曲がるように接続される場合には、センタステップとリアステップとの交点X1を、センタステップの後端およびリアステップの前端(下端)とする。
【0069】
図15(b)を参照して、側面視において、センタステップとリアステップとが曲線によって接続されている場合には、車体水平時を基準として、センタステップの延長線とリアステップの延長線とが交わる交点X2を求め、交点X2を通る鉛直線Vと当該曲線との交点X3を、センタステップの後端およびリアステップの前端(下端)とする。
【0070】
また、センタステップとリアステップとは、互いに接続されている(連続している)場合に限定されず、離れていてもよい。センタステップとリアステップとの間に、段差が設けられてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、フートレスト22a,22bはフロントステップ26a,26bを有する場合について説明したが、フートレストはフロントステップを必ずしも有さなくてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 車両
12 車体フレーム
14 前輪
16 後輪
18 バーハンドル
20 鞍乗り型シート
22a,22b フートレスト
24a,24b センタステップ
28a,28b リアステップ
32 エンジンユニット
34 変速機
36 エンジン
38 無変速機
40 クランク軸
42 クランクケース
44 シリンダブロック
46 シリンダヘッド
48 シリンダヘッドカバー
50 無段変速機の入力軸
72 吸気管
74 エアクリーナ
76 排気管
78 マフラ
82 第1管部
84 第2管部
86 球面ジョイント
88 吸気ダクト
90 排気ダクト
92,96 吸気口
94 排気口
100 燃料タンク
102 バッテリ
104 電装ボックス
108 キャニスタ
110,112,114 配管
CL センターライン
E1 リアステップの上端
E2 リアステップの下端
G 接地面
La,Lb 第1仮想線
Ma,Mb 第2仮想線
Xa,Xb,X1,X2,X3 交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15