(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】成形機用コントローラ及び成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20240815BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B22D17/32 Z
B22D17/32 F
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2022177010
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】三田 哲也
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-111892(JP,A)
【文献】国際公開第2021/060501(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/32
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形条件の情報を含む複数種類の情報を記憶する第1メモリと、
前記第1メモリに記憶されている前記成形条件の情報に基づいて成形機本体を制御するプロセッサと、
を有しており、
前記プロセッサは、
所定の保存周期が経過することを必要条件としてそれぞれ含み、前記保存周期の長さが互いに異な
り、前記複数種類の情報のうちの1種以上の情報が対応付けられており、対応付けられている情報の種類が互いに異なる複数の定期保存条件のいずれかが満たされたときに、
前記第1メモリに記憶されている前記複数種類の情報のうち、満たされた定期保存条件に対応付けられている
前記1種以上の情報をエクスポートする
成形機用コントローラ。
【請求項2】
前記複数の定期保存条件のうち前記保存周期の長さが最も短い条件に対して前記成形条件の情報が対応付けられている
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項3】
前記複数の定期保存条件は、
第1の定期保存条件と、
前記第1の定期保存条件の保存周期よりも長い保存周期を有している第2の定期保存条件と、
前記第2の定期保存条件の保存周期よりも長い保存周期を有している第3の定期保存条件と、を含み、
前記第1の定期保存条件に対して、
前記成形条件の情報と、
成形品の生産数に係る目標数及び達成数の情報を含む生産管理情報と、のうちの少なくとも1つが対応付けられており、
前記第2の定期保存条件に対して、
前記プロセッサが実行するオペレーティングシステムによるエラーログと、
前記成形条件の変更履歴の情報と、
成形の状況に応じた警報の履歴の情報と、
前記複数の定期保存条件に基づいて前記複数種類の情報をエクスポートする機能に関する設定状況の情報と、のうちの少なくとも1つが対応付けられており、
前記第3の定期保存条件に対して、
前記成形機本体が含むセンサの検出値と前記成形機本体が含む駆動部の状態との対応関係を示す情報と、
前記センサの検出値に基づく時系列データと、
前記時系列データから算出された統計値の情報と、
前記プロセッサが前記成形機本体の制御に際して実行するシーケンス制御のプログラムと、のうちの少なくとも1つが対応付けられている
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項4】
前記複数の定期保存条件は、
前記保存周期が1日の定期保存条件と、
前記保存周期が1週間の定期保存条件と、
前記保存周期が1カ月の定期保存条件と、を含んでいる
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項5】
前記複数の定期保存条件のうちの少なくとも1つは、前記保存周期が経過したことに加え、成形サイクルが停止されていることを必要条件として更に含む
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項6】
前記プロセッサは、当該プロセッサの利用に係る通算時間が所定の耐用期間を超えていることを条件として、前記複数の定期保存条件に基づく前記複数種類の情報のエクスポートを行い、前記耐用期間は、1年以上であること、及び前記複数の定期保存条件の前記保存周期のいずれよりも長いことの少なくとも一方を満たしている
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項7】
ユーザと前記プロセッサとを仲介するインターフェースを更に有しており、
前記インターフェースは、前記複数の定期保存条件のうちの互いに異なる定期保存条件に対応付けられている2種以上の情報を共に指定する1つの第1ボタンを有しており、
前記プロセッサは、前記第1ボタンに対する操作を含む所定の第1操作がなされたときに、前記第1ボタンによって指定されている前記2種以上の情報をエクスポートする
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項8】
ユーザと前記プロセッサとを仲介するインターフェースを更に有しており、
前記インターフェースは、前記複数の定期保存条件に対応付けられている前記複数種類の情報のうちの一部であって、前記インターフェースに対する操作によって種類を変更できない2種以上の情報を共に指定する1つの第2ボタンを有しており、
前記プロセッサは、前記第2ボタンに対する操作を含む所定の第2操作がなされたときに、前記第2ボタンによって指定されている前記2種以上の情報をエクスポートする
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項9】
前記プロセッサ及び前記第1メモリに対して固定的に設けられている第2メモリを更に有しており、
前記プロセッサは、前記複数の定期保存条件のいずれかが満たされたときに、満たされた定期保存条件に対応付けられている1種以上の情報を前記第2メモリにエクスポートする
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項10】
第3メモリを着脱可能なコネクタを有しており、
前記プロセッサは、前記第1操作がなされたときに、前記2種以上の情報を前記コネクタに接続されている第3メモリにエクスポートする
請求項7に記載の成形機用コントローラ。
【請求項11】
前記プロセッサは、ネットワークを介してサーバに接続されており、前記複数の定期保存条件のいずれかが満たされたときに、満たされた定期保存条件に対応付けられている1種以上の情報を前記サーバにエクスポートする
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項12】
ユーザと前記プロセッサとを仲介するインターフェースを更に有しており、
前記インターフェースは、
タッチパネルと、
ハードウェアスイッチと、を有しており、
前記プロセッサは、前記タッチパネルに対する操作に基づいて、過去にエクスポートされた前記複数種類の情報のうちの少なくとも一部の情報を読み出し可能であるとともに、前記ハードウェアスイッチに対する操作に基づいて、前記少なくとも一部の情報を読み出し可能である
請求項1に記載の成形機用コントローラ。
【請求項13】
請求項1に記載の成形機用コントローラと、
前記成形機本体と、
を有している成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形機用コントローラ及び成形機に関する。成形機は、例えば、金属を成形するダイカストマシン、又は樹脂を成形する射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの分野において、データをバックアップする技術が知られている(例えば特許文献1)。バックアップの技術を産業機器(その制御を行うコントローラ)に適用した技術も知られている(例えば特許文献2~4)。特許文献3及び4では、バックアップの技術が適用された成形機が開示されている。
【0003】
バックアップされた情報は、以下に例示するように、種々の用途に利用される。ウィルス等に起因してデータが消失したときにデータを復元する用途(特許文献1)。設定変更によってマシンの起動ができなくなったときに設定を元に戻す用途(特許文献2)。マシンの動作に異常が生じたときに異常が生じる前の状態に戻す用途(特許文献3)。成形条件の設定値をクリアした後に設定値を復元する用途(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2020-525921号公報
【文献】特開2016-21119号公報
【文献】国際公開第2019/142472号
【文献】特開2015-104869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、バックアップに係る負荷を低減できる成形機用コントローラ及び成形機が待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る成形機用コントローラは、成形条件の情報を含む複数種類の情報を記憶する第1メモリと、前記第1メモリに記憶されている前記成形条件の情報に基づいて成形機本体を制御するプロセッサと、を有しており、前記プロセッサは、所定の保存周期が経過することを必要条件としてそれぞれ含み、前記保存周期の長さが互いに異なる複数の定期保存条件のいずれかが満たされたときに、前記第1メモリに記憶されている前記複数種類の情報のうち、満たされた定期保存条件に対応付けられている1種以上の情報をエクスポートする。
【0007】
本開示の一態様に係る成形機は、上記成形機用コントローラと、前記成形機本体と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、バックアップに係る負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るダイカストマシンの構成を示す側面図。
【
図2】
図1のダイカストマシンの信号処理系の構成を示すブロック図。
【
図3】第1メモリに記憶される情報の定期保存の態様を説明するための図表。
【
図4】プロセッサが実行する定期保存の処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図5】
図4の処理の一部について他の例を示すフローチャート。
【
図6】
図4の処理を所定の条件下で行う場合のフローチャート。
【
図7】手動保存及び復元のためにタッチパネルに表示される画面の例を示す模式図。
【
図8】手動保存及び復元のためにプロセッサが実行する処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図9】復元のためにプロセッサが実行する処理の手順の他の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態に係る成形機の概要)
図1は、実施形態に係るダイカストマシン1(成形機の一例)の構成を示す側面図(一部は断面図又はブロック図)である。図の上下方向は鉛直方向である。
【0011】
ダイカストマシン1は、金型101内(空間107)に不図示の溶湯(溶融状態の金属)を充填することによってダイカスト品(上位概念では成形品)を作製する。ダイカストマシン1は、機械的な動作を行うマシン本体3と、マシン本体3を制御するコントローラ5と、コントローラ5とオペレータ(上位概念ではユーザ)とを仲介するHMI(Human Machine Interface)13と、を有している。
【0012】
なお、コントローラ5とHMI13(その一部又は全部)との組み合わせをコントローラとして捉えることもできる。実施形態の説明では、便宜上、コントローラ5とHMI13との組み合わせからなるコントローラを制御ユニット4(符号は
図2)と称することがある。
【0013】
図2は、ダイカストマシン1の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【0014】
ダイカストマシン1は、既述のとおり、マシン本体3と、コントローラ5とを有している。コントローラ5は、プロセッサ21と、第1メモリ23とを有している。第1メモリ23は、例えば、ROM(Read Only Memory)23a、RAM(Random Access Memory)23b、及び補助記憶装置23cを有している。
【0015】
第1メモリ23には種々の情報が記憶されている。当該情報については後に詳述するが、以下に簡単に例を挙げる。マシン本体3の動作を規定する情報。より詳細には、例えば、制御プログラム、及び成形条件(射出速度等)の設定値。マシン本体3の動作の結果に係る情報。例えば、射出速度の検出値の波形データ(時系列データ。)。
【0016】
第1メモリ23に記憶されている種々の情報の少なくとも一部は、自動又は手動でエクスポートされ、これにより、保存(バックアップ)が行われる。エクスポート先は、例えば、第2メモリ25、第3メモリ29及び/又はサーバ153(そのメモリ)である。第2メモリ25は、コントローラ5内に設けられている。第3メモリ29は、コントローラ5に着脱される。サーバ153は、ネットワーク151を介してコントローラ5と接続されている。
【0017】
図3は、第1メモリ23に記憶される情報の自動保存(定期保存又は自動バックアップ等と称することがある。)の態様を説明するための図表である。
【0018】
この図表において、「内容」の欄は、第1メモリ23に記憶される情報の種類の例を示している。なお、
図3等で例示する情報の種類は、概念的なものである。従って、例えば、1種類の情報として例示された情報は、プロセッサ21が1纏まりの情報として扱う情報(例えば物理的に1纏まりの記憶領域に記憶される情報、あるいは論理的に1纏まりとして定義される情報)の単位と一致するとは限らない。
【0019】
図3に例示されている種々の情報は、「レベル」の欄に示されているように、複数のレベル(「レベルA」~「レベルC」)に分類(レベル分け)されている。各レベルの情報は、「周期」の欄に示されているように、自動的に保存される周期(「保存周期」ということがある。)が互いに異なっている。
【0020】
より詳細には、図示の例では、「レベルA」に分類されている「鋳造条件データ」及び「生産管理情報」は、1日毎に自動的に保存される。「レベルB」に分類されている「エラーログ」、「経歴データ(設定、警報等)」及び「自動保存等の機能設定状況」は、1週間毎に自動的に保存される。「レベルC」に分類されている「原点情報」、「波形データ」、「ラインデータ」及び「シーケンス」は、1カ月毎に自動的に保存される。
【0021】
このように、情報の種類によって自動的に保存が行われる周期が異なっていることによって、例えば、効果的にバックアップを行うことができる。具体的には、例えば、重要度が相対的に高い、及び/又は変更される頻度が高い情報(以下、第1の情報)の保存周期を短くする。保存周期が短くされることにより、第1の情報が消失した場合において、消失時期と、当該消失時期の前かつ間近のバックアップの時期との時間差が短くなる。その結果、バックアップされた第1の情報の内容が、消失したときの第1の情報の内容に対して古いものとなってしまう蓋然性が低減される。すなわち、第1の情報の最新の内容がバックアップされない蓋然性を低減し、情報の消失による経済的損失を低減できる。その一方で、第1の情報に比較して、重要度が相対的に低い、及び/又は変更される頻度が低い情報について保存周期を第1の情報の保存周期よりも長くする。これにより、コントローラ5の負担を軽減できる。
【0022】
以上が第1実施形態に係るコントローラ5及びダイカストマシン1の概要である。以下では、概略、下記の順に説明を行う。
1.マシン本体
1.1.マシン本体全般(
図1)
1.2.センサ及び駆動部(
図2)
2.コントローラ(
図2)
3.HMI(
図1)
4.エクスポート先(
図2)
5.バックアップされる情報(
図3)
5.1.情報の種類の具体例
5.2.情報が記憶されているメモリ
6.自動保存(定期保存)
6.1.バックアップに関する基本的事項
6.2.レベル分け及び保存周期(
図3)
6.3.定期保存の手順の例(
図4)
6.4.定期保存条件の他の例(
図5)
6.5.定期保存機能の利用時期の例(
図6)
7.手動保存及び復元
7.1.画面の例(
図7)
7.2.処理の手順の例(
図8)
7.3.処理の手順の他の例(
図9)
8.実施形態のまとめ
【0023】
(1.マシン本体)
(1.1.マシン本体全般)
図1に示すマシン本体3は、既述の金型101を保持している。金型101は、製品に応じて交換される。従って、マシン本体3(別の観点ではダイカストマシン1)は、金型101を除いて定義されてもよいし、金型101を含んで定義されてもよい。実施形態の説明では、特に断り無く、前者を例に取ることがある。
【0024】
金型101は、例えば、固定型103と、移動型105とを含んでいる。ダイカストマシン1は、
図1において2点鎖線で示されているように、固定型103に対して移動型105を近づけて当接させる(型閉じを行う)。これにより、固定型103と移動型105との間に成形品の形状と同様の形状を含む空間107が構成される。
【0025】
マシン本体3は、既述のとおり、空間107に溶湯を充填する(射出を行う。)。空間107に充填された溶湯は金型101に熱を奪われて凝固する。これにより、成形品が作製される。その後、マシン本体3は、成形品を取り出すために、移動型105を固定型103から離す(型開きを行う。)。溶湯は、上位概念でいえば、未硬化状態の成形材料である。未硬化状態は、液状の他、固液共存状態を含む。
【0026】
マシン本体3は、例えば、上記のような型閉じ、射出及び型開きが順に行われる成形サイクルを繰り返す。成形サイクルを実現するために、マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定型103又は移動型105(
図1では移動型105)から押し出す押出装置11とを有している。これらの構成は、種々の態様とされてよく、公知の構成とされて構わない。
【0027】
例えば、型締装置7は、トグル機構を利用して型開閉及び型締めを行うものであってもよいし(図示の例)、トグル機構を有さないものであってもよい。後者の態様において、型開閉と、型締めとは別個の駆動源によって行われてもよい。また、例えば、型締装置7の駆動方式は、電動式、液圧式(油圧式)又はこれらを組み合わせたハイブリッド式であってよい。
【0028】
射出装置9は、例えば、コールドチャンバマシン用のものであってもよいし(
図1の例)、ホットチャンバマシン用のものであってもよいし、両者を組みわせたようなハイブリッド式のものであってもよい。また、例えば、射出装置9の駆動方式は、電動式、液圧式(油圧式)又はこれらを組み合わせたハイブリッド式であってよい。
【0029】
押出装置11は、例えば、移動型105から成形品を押し出すものであってもよいし(
図1の例)、固定型103から成形品を押し出すものであってもよい。また、例えば、押出装置11は、電動式又は液圧式(油圧式)の駆動源を有するものであってもよいし、型締装置7による型開きを利用するもの(駆動源を有さないもの)であってもよい。
【0030】
(1.2.センサ及び駆動部)
図2に示すように、マシン本体3は、種々のセンサ31及び種々の駆動部33を有している(
図2では、1つのセンサ31及び1つの駆動部33が例示されている。)。
【0031】
センサ31は、例えば、成形サイクルに係る物理量を計測する。当該物理量は、換言すれば、例えば、成形サイクルの進行に伴って値が変化する物理量、及び/又は成形サイクル同士で値が異なる物理量である。複数のセンサ31は、種々のものとされてよく、例えば、公知のものとされてよい。以下にセンサ31の具体例を挙げる。射出速度を検出するセンサ、射出圧力を検出するセンサ、型締力を検出するセンサ、駆動部33を構成する液圧回路の適宜な位置の圧力又は流量を検出するセンサ、駆動部33を構成する電動機のトルクを検出するセンサ、所定の部材が所定の位置に到達したことを検出するリミットスイッチ。
【0032】
駆動部33は、成形サイクルに係る駆動力を生じる。駆動部33の具体例を以下に挙げる。型締装置7に設けられ、移動型105を保持する移動ダイプレートの移動に係る1以上の駆動部。射出装置9に設けられ、溶湯を空間107へ押すプランジャの移動に係る1以上の駆動部。押出装置11に設けられ、製品を型から押し出す押出ピンの移動に係る1以上の駆動部。上記の各装置の1以上の駆動部は、より具体的には、例えば、移動対象(例えば移動ダイプレート、プランジャ又は押出ピン)を直接的に移動させる電動機若しくは液圧シリンダ、ポンプを駆動する電動機、作動液(例えば作動油)の流れを制御するバルブである。
【0033】
なお、金型101と同様に、金型101に付随するセンサ31及び駆動部33は、マシン本体3の構成要素として捉えられなくてもよいし、捉えられてもよい。金型101に付随するセンサ31としては、例えば、溶湯の所定位置への到達を検出するセンサ、及び金型101の温度を検出するセンサが挙げられる。また、金型101に付随する駆動部33としては、例えば、中子を駆動する駆動部、及び局部加圧を行う駆動部が挙げられる。
【0034】
(2.コントローラ)
コントローラ5は、例えば、第1メモリ23に記憶されている情報(例えば制御プログラム及び成形条件の設定値)に基づいてマシン本体3(より詳細には種々の駆動部33。以下、同様。)を制御する。このとき、種々のセンサ31の情報が参照される。これにより、例えば、成形サイクルが実現される。
【0035】
コントローラ5のハードウェア的な構成は種々のものとされてよい。例えば、コントローラ5は、不図示の制御盤に設けられている。コントローラ5の一部は、ハードウェア的にHMI13と組み合わされていてもよい。コントローラ5の一部は、制御盤とは離れて他の適宜な位置に配置されていてもよい。また、例えば、コントローラ5は、PLC(Programmable Logic Controller)と、PLCからの指令に従ってセンサ31から検出値に基づく駆動部33の制御を直接的に担うコントローラとを含んで構成されていてよい。
【0036】
コントローラ5は、既述のとおり、プロセッサ21及び第1メモリ23を有している。換言すれば、コントローラ5は、コンピュータによって構成されている。プロセッサ21がROM23a及び/又は補助記憶装置23cに記憶されているプログラムを実行することによって、種々の演算を行う種々の機能部が構築される。なお、コントローラ5は、一定の処理のみを行う論理回路を含んでいてもよい。
【0037】
プロセッサ21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。補助記憶装置23cは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)である。これまでの説明からも理解されるように、ここでのプロセッサ21は、ハードウェア的に分散されている複数のプロセッサを含み得る。第1メモリ23(及び他のメモリ)についても同様である。
【0038】
(3.HMI)
HMI13(
図1及び
図2)の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされて構わない。また、ここでのHMIの語は、広く解釈されてよい。例えば、HMIは、マシン本体3の構成等に応じて専用に構成されたものだけでなく、タッチパネル式のPC(Personal Computer)及び一般的な構成のPC(キーボード及びディスプレイを含むもの)によって構成されたものを含む。
図1では、ダイカストマシン1に専用のものが例示されている。
【0039】
HMI13は、例えば、
図1に示すように、オペレータの操作を受け付ける操作部15と、任意の画像を表示するディスプレイ17とを有している。特に図示しないが、HMI13は、上記の他、点灯状態によって情報を提示するランプ(例えばLED(Light Emitting Diode))、及び音響的に情報を提示するデバイス(例えばスピーカ)を有していてもよい。
【0040】
操作部15及びディスプレイ17の構成も任意である。例えば、操作部15は、タッチパネル50(符号は
図7)と、1以上の機械式のスイッチ15a(ハードウェアスイッチ)とを含んで構成されてよい。また、例えば、ディスプレイ17は、液晶表示ディスプレイ又は有機ELディスプレイを含んでいてよい。ディスプレイ17は、上記のタッチパネル50のディスプレイを構成してよい。
【0041】
操作部15は、オペレータの操作に応じた信号を生成してコントローラ5に出力する。また、ディスプレイ17は、例えば、コントローラ5から入力された信号に基づいて画像を表示する。コントローラ5は、操作部15に対する操作に基づいて、例えば、第1メモリ23に記憶される情報(例えば成形条件の情報)を書き換えたり、マシン本体3及び/又はディスプレイ17の動作を制御したりする。
【0042】
HMI13の配置位置は任意である。
図1では、HMI13は、型締装置7の不動部分(固定ダイプレート)に固定されている。図示の例とは異なり、HMI13は、不図示の制御盤に位置していてもよいし、制御盤とは別に、マシン本体3から離れて位置していてもよい。制御盤に設けられているスイッチ等は、タッチパネル50から離れていても、HMI13の一部として捉えられて構わない。
【0043】
HMI13とコントローラ5との役割分担は適宜に設定されてよい。例えば、ディスプレイ17に表示される画像のデータは、コントローラ5が生成してもよいし、HMI13が生成してもよい。ただし、ハードウェア構成に関わらずに、コントローラ5とHMI13との境界が適宜に定義されてもよい。例えば、上記画像データの生成を行うCPUは、制御盤に設けられているか否かに関わらず、コントローラ5の一部として定義されてもよい。
【0044】
(4.エクスポート先)
既述のとおり、第1メモリ23に記憶されている情報のバックアップのためのエクスポート先は、例えば、第2メモリ25、第3メモリ29及びサーバ153の1つ、2つ又は3つとされてよい。換言すれば、これらの例の1つ又は2つは、エクスポート先とされていなくてもよい。例えば、情報のセキュリティの観点から、コントローラ5は、ネットワーク151に対して非接続とされていてよい。及び/又は、コントローラ5は、ネットワーク151へエクスポート不可能に構成されていてもよい。そして、第2メモリ25及び第3メモリ29の2つがエクスポート先とされていてもよい。
【0045】
2以上のエクスポート先が用意される態様において、その利用態様は任意である。例えば、バックアップの態様(例えば自動及び手動のいずれであるか)に応じて、又はユーザによる設定(換言すれば操作部15に対する操作)に応じて、いずれか1つ(又は2つ以上)のエクスポート先が選択されてもよい。一例として、自動保存の場合は第2メモリ25がエクスポート先とされ、手動保存の場合は第3メモリ29がエクスポート先とされてよい。また、例えば、上記とは異なり、用意されたエクスポート先の全てに対して、実質的に同じ時期に同じ情報がエクスポートされてもよい。
【0046】
第2メモリ25は、プロセッサ21及び第1メモリ23に対して固定的に設けられている。換言すれば、第2メモリ25は、第3メモリ29とは異なり、コントローラ5に対して着脱不可能である。ここでいう着脱は、例えば、コントローラ5の分解無しでの着脱を指す。従って、例えば、第2メモリ25は、コントローラ5の筐体(不図示)を分解したときに、マザーボード等に対して着脱可能であっても構わない。
【0047】
プロセッサ21、第1メモリ23及び第2メモリ25は、例えば、互いに固定されてコントローラ5の筐体に収容されるモジュール20として構成されていてよい。この場合にモジュール20に含まれるプロセッサ21及び第1メモリ23は、コントローラ5が有するプロセッサ及びメモリのうち、バックアップに係る部分だけであってもよい。モジュール20は、例えば、マザーボードのソケットに対して種々のデバイス(例えばプロセッサ、メモリ及び/又は他の回路基板)が挿入されることなどによって構成されている。
【0048】
第2メモリ25は、書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリ(補助記憶装置)である。例えば、第2メモリ25は、HDD又はSSDであってよい。第2メモリ25は、ハードウェア的に第1メモリ23の補助記憶装置23cとは別個のものである。従って、例えば、補助記憶装置23cが故障したとしても、第2メモリ25からの読出しは可能である。
【0049】
なお、補助記憶装置23c及び第2メモリ25に関してのハードウェア的に別個は、例えば、記憶を直接的に担う記憶素子(例えばディスク又はメモリチップ)だけでなく、記憶素子に対する書込み及び読出しを行うための機構乃至は回路(例えば、モータ、ヘッド及びコントローラ)も別個であることを指す。例えば、補助記憶装置23c及び第2メモリ25は、マザーボード等に着脱される構成単位で互いに別個のものとされていてよい。
【0050】
第3メモリ29は、コントローラ5が有しているコネクタ27に対して着脱される。ここでの着脱は、第2メモリ25の説明で述べた着脱と同様に、コントローラ5の分解無しでの着脱を指す。従って、例えば、コネクタ27は、常に、コントローラ5(その筐体等)から外部へ露出し、又は分解無しで所定の部材を移動させる(例えば蓋を開ける)ことにより、コントローラ5から外部へ露出する。
【0051】
第3メモリ29は、書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリである。第3メモリ29の規格(別の観点ではコネクタ27の規格)は、種々のものとされてよい。例えば、第3メモリ29は、SD(Secure Digital)カード又はUSB(Universal Serial Bus)メモリとされてよい。
【0052】
ネットワーク151は、例えば、プライベートネットワーク及びパブリックネットワークの少なくとも一方を含んでいてよい。前者としては、例えば、イントラネット及びLAN(Local Area Network)が挙げられる。後者としては、インターネットが挙げられる。VPN(Virtual Private Network)はパブリックネットワークの一種として捉えられてよい。ネットワーク151を介した通信は、有線通信及び無線通信の少なくとも一方を含んでよく、また、近距離通信及び遠距離通信の少なくとも一方を含んでよい。
【0053】
サーバ153は、換言すれば、コンピュータであり、特に図示しないが、プロセッサ(例えばCPU)、ROM、RAM及び補助記憶装置等を有している。そして、コントローラ5からエクスポートされた情報は、補助記憶装置に記憶される。サーバ153は、サーバ専用機によって構成されていてもよいし、汎用のコンピュータ(例えばPC(Personal Computer))によって構成されていてもよい。複数台のダイカストマシン1がネットワーク151に接続されている態様において、いずれかのダイカストマシン1がサーバ153として利用されてもよい。
【0054】
サーバ153は、1台のダイカストマシン1からのみ情報をインポートしてバックアップを行ってもよいし、複数台のダイカストマシン1からの情報をインポートしてバックアップを行ってもよい。1台以上(例えば複数台)のダイカストマシン1と、サーバ153との組み合わせは、ダイカストシステム(成形システム)として捉えられよい。サーバ153がコントローラ5の近くに配置される態様においては、サーバ153は、ダイカストマシン1の一部として捉えられてもよい。
【0055】
(5.バックアップされる情報)
(5.1.情報の種類の具体例)
第1メモリ23に記憶される情報の種類、及び/又はバックアップの対象とされる情報の種類は任意である。以下では、
図3に示されている情報の具体例について説明する。
【0056】
「鋳造条件データ」は、例えば、鋳造サイクル(成形サイクル)におけるダイカストマシン1の動作を規定する種々のパラメータの設定値(目標値)の情報を含む。種々のパラメータの具体例を以下に挙げる。1ショットの溶湯の量、射出速度(例えば低速射出速度及び高速射出速度)、低速射出速度から高速射出速度への切換条件(例えば切換位置)、射出圧力(例えば昇圧曲線及び最終的な鋳造圧力)及び金型等の温度。これらの設定値は、例えば、操作部15に対する操作によってユーザによって設定される。
【0057】
鋳造条件データのバックアップが取られることによって、例えば、補助記憶装置23c等の故障によってユーザの技術情報が消失する蓋然性が低減される。鋳造条件(成形条件)は、成形品の品質に直接的に影響を及ぼすものであり、また、所望の品質が得られるように試行錯誤の末に得られるものであるから、失われた場合の損失が大きい。その損失が低減される。また、例えば、鋳造条件の変更が、却って品質の低下等を招いたときに、元の鋳造条件に戻すことが容易化される。
【0058】
「生産管理情報」は、例えば、成形サイクルを繰り返す自動運転による生産状況に係る情報を含む。生産状況に係る情報は、例えば、自動運転を規定する情報、及び自動運転の結果の情報を含む。前者としては、例えば、成形品の生産数の目標値が挙げられる。後者としては、例えば、成形品の生産数の達成数(換言すれば進捗度)、良品数(これが達成数であってもよい。)及び不良品数が挙げられる。目標数は、例えば、任意の期間(時間長さ)を想定して、操作部15に対する操作によってユーザによって設定される。上記期間は、例えば、午前中の自動運転開始から昼までの期間、及び昼の後の自動運転開始から夕方までの期間である。このような場合、生産管理情報は、現在(若しくは間近)の生産状況の情報のみを含んでいてもよいし、所定期間(例えば1週間又は1か月)に亘る生産状況の情報を含んでいてもよい。
【0059】
生産管理情報のバックアップが取られることによって、例えば、故障後の復旧が容易化される。具体的には、例えば、コントローラ5の故障等に起因して自動運転が停止され、その後、バックアップされていた情報によって復元が行われる場合において、生産管理情報が復元されると、自動運転が停止されるまでの生産状況を把握することが容易化される。より詳細には、例えば、生産数の達成数を数え直す労力及び時間が低減される。その結果、次の目標数を設定して自動運転を再開するまでの時間が短縮される。
【0060】
「エラーログ」は、例えば、エラーが生じた場合に生成されるものであり、エラーの発生時期及び内容を示す情報を含む。また、実施形態の説明では、エラーログは、プロセッサ21が実行するソフトウェアのうち、相対的に上位のもの(例えばOS(オペレーティングシステム))によって生成されるものを指す。従って、例えば、エラーログで示されるエラーとしては、メモリ(例えば第1メモリ23)への書込みの失敗、メモリからの読出しの失敗、外部のデバイス(例えばHMI13)に対する信号の送信の失敗、及び外部のデバイスからの受信の失敗が挙げられる。なお、後述する「経歴データ(設定、警報等)」の説明と対比されたい。
【0061】
エラーログのバックアップが取られることによって、例えば、ダイカストマシン1に異常(故障を含む。)が生じ、かつエラーログが消失している場合に、異常の要因を特定することが容易化される。
【0062】
「経歴データ(設定、警報等)」は、例えば、種々の事象に係る履歴の情報を含む。種々の事象としては、例えば、成形サイクルにおけるダイカストマシン1の動作を規定する情報(例えば既述の鋳造条件データ)の変更、及び成形サイクル中にコントローラ5によって生成された警報が挙げられる。すなわち、経歴データは、例えば、鋳造条件の変更履歴の情報及び警報の履歴の情報を含んでいる。
【0063】
鋳造条件の変更履歴の情報は、例えば、操作部15に対する操作によって第1メモリ23に記憶されている鋳造条件データが書き換えられたときに生成される。当該情報は、例えば、設定値(目標値)が変更されたパラメータについて、当該パラメータの種類の情報、変更前後の設定値の情報、及び変更の時期的な情報を含んでいる。時期的な情報は、例えば、時刻の情報であってもよいし、変更前又は変更後に実行された成形サイクルを特定する情報であってもよい。
【0064】
警報の履歴の情報は、例えば、コントローラ5によって成形の状況に応じた警報がなされたときに生成される。別の観点では、ここでの警告は、既述のエラーログよりも下位のソフトウェアによって行われる。例えば、警告は、鋳造条件のパラメータとなっている物理量(射出速度、射出圧力及び金型等の温度等)の検出値が、所定の許容範囲外の値であるときになされる。警報は、例えば、ディスプレイ17に所定の画像が表示されたり、不図示のランプの点灯状態が変化したり、スピーカから所定の音響が出力されたりすることによってなされる。警報の履歴の情報は、例えば、警報の内容の情報及び警報の時期的な情報を含んでいる。時期的な情報は、例えば、時刻の情報であってもよいし、警報が行われた成形サイクルを特定する情報であってもよい。
【0065】
経歴データのバックアップが取られることによって、例えば、ダイカストマシン1に異常が生じ、かつ経歴データが消失している場合に、異常の要因を特定することが容易化される。
【0066】
「自動保存等の機能設定状況」は、例えば、ユーザを補助する機能の設定状況の情報を含む。ユーザを補助する機能としては、例えば、既述の自動的(定期的)に第1メモリ23の情報をバックアップする機能が挙げられる。この他、HMI13において種々の情報をユーザに提示する機能が挙げられる。機能の設定状況は、例えば、機能のオンオフの設定状況、及び/又は機能の具体的な動作に係る設定状況である。後者について、自動保存の機能におけるものを例示すると、例えば、保存対象の情報の種類、エクスポート先及び保存周期が挙げられる。また、種々の情報をユーザに提示する機能におけるものを例示すると、ユーザに提示する情報の種類及び表示態様が挙げられる。なお、念のために記載すると、自動保存の機能等について、オンオフの設定及び/又は具体的な動作に係る設定は、ユーザによって変更不可能であってもよい。
【0067】
自動保存等の機能設定状況のバックアップが取られることによって、例えば、コントローラ5等が故障した後の復旧が容易化される。具体的には、例えば、ユーザは、種々の機能について再設定することなく、自らにとって使い勝手がよくなるようにした過去の設定を即座に利用することができる。
【0068】
「原点情報」は、例えば、駆動部33の状態と、当該状態に係る物理量を検出するセンサ31の検出値との対応関係を特定する情報を含む。別の観点では、原点情報は、例えば、キャリブレーションによって得られる情報である。具体例を挙げる。射出装置9が射出シリンダ(駆動部33の一例)と、射出シリンダのピストン(別の観点では射出プランジャ)の位置を検出する位置センサ(センサ31の一例)とを有している態様を想定する。この態様において、原点情報は、例えば、上記ピストンが前進限又は後退限に位置するときの上記位置センサの検出値の情報を含む。原点情報は、例えば、ダイカストマシン1の一部又は全部が設置されたり、金型101が交換されたりしたときなどの適宜な時期に、操作部15に対する操作に応じて、所定の動作が行われることによって取得されてよい。なお、実施形態で例示する原点情報とは異なり、成形サイクル毎に自動で取得される原点情報も存在する。
【0069】
原点情報のバックアップが取られることによって、例えば、コントローラ5等が故障した後の復旧が容易化される。具体的には、例えば、原点情報が消失した場合に、再度、原点情報を取得する手間が省略される。
【0070】
「波形データ」は、例えば、成形サイクル内におけるセンサ31の検出値に基づく時系列データを含む。時系列データとされる物理量は、例えば、成形サイクル内において時々刻々と値が変化し、また、成形の状況(別の観点では成形品の品質)と相関する。物理量の具体例としては、射出速度、射出圧力、プランジャ位置及び金型等の温度が挙げられる。時系列データが含む情報は、センサ31から検出された検出値そのままであってもよいし、検出値に対して加工(例えば微分、積分若しくは補正)を施したものであってもよい。
【0071】
波形データのバックアップが取られることによって、例えば、ダイカストマシン1に異常が生じ、かつ波形データが消失している場合に、異常の要因を特定することが容易化される。また、各成形品の品質の調査及び/又は保証に、各成形品を製造したときの波形データが必要になる場合がある。この場合において、波形データが消失していると、既に製造した成形品の品質の調査及び/又は保証ができない。そのような不都合が生じる蓋然性が低減される。
【0072】
「ラインデータ」は、例えば、成形サイクル毎の成形の状況を示す情報を含む。このような情報としては、例えば、上記の時系列データの統計値(例えば平均値、最小値及び/又は最大値)、上記の時系列データを構成する物理量の、所定の条件が満たされたときの値(例えば鋳造圧力に至ったときのプランジャ位置)、上記の時系列データの値に基づいて算出される所定の評価指標の値(例えば検出値と基準値との差)、及び時系列データを構成しない情報(例えば給湯後のラドルに残存した湯量)が挙げられる。このような成形サイクル毎のラインデータが含む情報は、例えば、その成形サイクルによって製造された成形品の品質の調査及び/又は保証に利用される。
【0073】
ラインデータのバックアップが取られることによって、例えば、波形データのバックアップが取られる場合と同様の効果が奏される。例えば、異常の要因の特定が容易化され、また、既に製造した成形品の品質の調査及び/又は保証ができないというような不都合が生じる蓋然性が低減される。
【0074】
「シーケンス」は、コントローラ5が含むPLCによって実行されるシーケンスプログラム(その少なくとも一部)を含む。シーケンスプログラムとしては、例えば、ラダープログラムが挙げられる。シーケンスプログラムは、基本的には、コントローラ5の製造者によって作成されてPLCにインストールされており、改変されない。ただし、シーケンスプログラムは、ユーザによって改変可能であってもよい。この場合、バックアップが取られる情報は、改変部分(すなわちシーケンスプログラムの一部)のみであってもよい。
【0075】
シーケンスプログラムのバックアップが取られることによって、例えば、シーケンスプログラムのライセンスに係る条件にもよるが、PLCの故障に対してユーザによる復旧が可能になる。また、シーケンスプログラムがユーザによって改変されている場合に、その改変に係る技術情報が消失する蓋然性が低減される。また、シーケンスプログラムを改変した後に、改変した部分の一部又は全部を元に戻すことが容易化される。
【0076】
図3に示した情報の種類の具体例は、既述のとおり、概念的なものである。
図3に例示した種々の情報は、2種以上の情報が纏められて(上位概念化されて)1種類の情報とされてもよいし、逆に、細分化(下位概念化)されて1種類の情報とされてもよい。別の観点では、種々の情報は、
図3の例とは異なる観点から分類されてよい。そして、
図3に例示した情報の分類とは異なる分類に基づいて、レベル分け及び/又は保存周期の対応付けがなされてよい。
【0077】
例えば、鋳造条件データ、生産管理情報のうちの目標数、原点情報及びシーケンスプログラムは、成形サイクルにおけるダイカストマシン1の動作を規定する情報として捉えることができる。生産管理情報のうちの達成数、エラーログ、経歴データのうち警報の履歴の情報、波形データ及びラインデータは、成形サイクルを実行した(実行しようとした)結果に係る情報と捉えることができる。波形データ及びラインデータは、成形の状況を示す情報として捉えることができる。
【0078】
また、例えば、鋳造条件データ、生産管理情報のうちの目標数及びシーケンスプログラムのうちの改変部分は、ユーザが操作部15等に対する操作によって任意に設定できる情報と捉えることができる。また、例えば、鋳造条件データ(及び場合によっては原点情報)は、金型101の交換に伴って変更が必要な情報と捉えることができる。この他、情報の内容の変更の頻度、及びデータサイズ(必要な記憶容量)の観点から分類がなされてもよい。
【0079】
(5.2.情報が記憶されているメモリ)
種々の情報は、その用途等に応じて、ROM23a、RAM23b及び補助記憶装置23cのいずれに記憶されていてもよい。例えば、
図3に例示した種々の情報は、補助記憶装置23cに記憶されてよい。ただし、例えば、「シーケンス」の改変されない部分は、ROM23aに記憶されていてもよい。
【0080】
ROM23a及び補助記憶装置23cの情報はRAM23bにコピーされ、このコピーされた情報がプロセッサ21の処理に利用されてもよい。本開示の説明では、便宜上、特に断りが無い限り、RAM23bが介在する事実は無視した表現を用いる。従って、例えば、補助記憶装置23cの情報がRAM23bにコピーされ、コピーされた情報がエクスポートされる場合であっても、補助記憶装置23cの情報がエクスポートされると表現することがある。情報が制御に利用されたり、インポートされたりする場合も同様である。
【0081】
補助記憶装置23cに記憶される種々の情報は、生成当初はRAM23bに記憶されてよい。この場合において、RAM23bに記憶された情報は、実質的に生成された直後に補助記憶装置23cへ記憶されてもよいし、生成されてから所定の条件が満たされたときに、補助記憶装置23cへ記憶されてもよい。本開示の説明では、前者の態様については、便宜上、特に断りが無い限り、RAM23bが介在する事実は無視した表現を用いる。
【0082】
前段落の所定の条件としては、例えば、操作部15に対する所定の操作がなされたことを挙げることができる。より具体的には、例えば、HMI13が含むタッチパネル50において、鋳造条件のパラメータに対応する入力欄が表示されている態様を想定する。この態様において、例えば、ユーザは、この入力欄に表示されている上記パラメータの設定値を変更する操作を行うことができる。この変更を行ったとき、新たな設定値の情報がRAM23bに記憶されてよい。ただし、入力欄の値を変更しただけでは、新たな設定値は補助記憶装置23cに記憶されない。その後、タッチパネル50に表示されている保存ボタンを押す(すなわち所定の操作を行う)ことによって、新たな設定値が補助記憶装置23cに記憶されてよい。
【0083】
前段落のような態様において、保存ボタンを押す前に、成形サイクルを開始するための操作が行われた場合は、例えば、RAM23bに記憶された新たな設定値が用いられてよい。このような態様において、エクスポートされる鋳造条件データは、RAM23bに記憶されているものであってもよいし、補助記憶装置23cに記憶されているものであってもよいし、双方であってもよい。鋳造条件データを例に取ったが、他の情報についても同様である。すなわち、他の情報は、RAM23bに記憶された後、補助記憶装置23cに記憶される前に、プロセッサ21によって利用されてよく、また、この場合において、RAM23b及び補助記憶装置23cの一方及び/又は双方の情報がエクスポートされてよい。なお、上記の説明とは異なり、補助記憶装置23cに記憶されていない設定値は利用不可能であってもよい。
【0084】
(6.自動保存(定期保存))
(6.1.バックアップに関する基本的事項)
種々の情報は、その種類に応じて、バックアップがなされる時点の内容、又はバックアップがなされる時点までの所定期間に蓄積された内容がバックアップされてよい。例えば、鋳造条件データ、生産管理情報に含まれる目標数、達成数、良品数及び不良品数、自動保存等の機能設定状況、原点情報並びにシーケンスに関しては、バックアップがなされる時点の情報がエクスポートされる。一方、エラーログ、経歴データ(設定、警報等)、波形データ及びラインデータに関しては、所定の蓄積期間に亘って蓄積された情報がエクスポートされる。
【0085】
上記の蓄積期間は、例えば、前回のバックアップ時点から今回のバックアップ時点までの期間とされてよい。自動保存がなされる場合においては、この期間は、保存周期とされてよい。前回の自動保存と今回の自動保存との間に手動保存がなされた場合、上記の期間は、手動保存と今回の自動保存との間の期間とされてもよいし、保存周期とされてもよい(手動保存の有無に影響されずに自動保存が行われてもよい。)。また、上記の説明とは異なり、蓄積期間は、保存周期よりも短くても構わない。
【0086】
フルバックアップ、差分バックアップ、増分バックアップ等の種類は任意である。もちろん、バックアップされる情報の種類によっては、フルバックアップが必須となるものもある。例えば、鋳造条件データ等のバックアップ時点の内容がバックアップされる情報に関しては、フルバックアップ及び/又は他のバックアップが行われてよい。具体的には、最初にフルバックアップが行われ、その後、保存周期が経過する毎に差分バックアップ若しくは増分バックアップが行われてよい。所定の条件が満たされたときにフルバックアップが再び行われてもよい。また、例えば、エラーログ等のバックアップ時点までに蓄積された内容がバックアップされる情報に関しては、フルバックアップが行われてよい。なお、実施形態の説明では、特に断りなく、いずれの情報についてもフルバックアップのみが行われることを前提とした説明を行うことがある。
【0087】
バックアップは、上書き保存であってもよいし、追加保存であってもよい。すなわち、エクスポート先(メモリ)においては、以前(例えば前回)の所定の情報(以下、第1の情報)の内容が消去されるとともに、今回の第1の情報の内容が書き込まれてもよいし(上書き保存)、以前の第1の情報の内容を残したまま、今回の第1の情報の内容が書き込まれてもよい(追加保存)。情報の種類、レベル(別の観点では保存周期)、及び/又はエクスポート先の種類等によって、上書き保存及び追加保存のいずれの保存であるかが異なっていてもよい。なお、念のために記載すると、上書き保存は、消去される第1の情報の内容が記憶されていた物理領域(及び/又は論理領域)と、今回の第1の情報の内容が記憶される物理領域(及び/又は論理領域)とが重複(例えば一致)していなくてもよい(もちろん、重複していてもよい。)。
【0088】
エクスポート先におけるデータの記憶に係る物理的又は論理的な構成は任意である。例えば、同一の保存周期に関して複数回分のバックアップデータが記憶される態様(例えば追加保存が行われる態様)において、バックアップが行われた時期毎のディレクトリが生成され、そのディレクトリ内に実質的に同時期にエクスポートされた種々の情報が格納されてよい。この場合において、第1の保存周期の2倍以上の長さを有する第2の保存周期に対応するディレクトリ内に、第1の保存周期に対応する複数のディレクトリが格納されてもよい。1つのエクスポート先に複数のダイカストマシン1の情報がバックアップされる態様においては、マシン毎にディレクトリが生成され、その中に上書き保存された種々の情報、又は上記のような複数の時期毎のディレクトリが格納されてもよい。
【0089】
(6.2.レベル分け及び保存周期)
保存周期の長さは任意である。
図3の例では、1日、1週間及び1カ月が例示されている。図示の例とは異なり、保存周期は、1日よりも短くてもよいし、1カ月よりも長くてもよい。また、保存周期を規定する単位は任意であり、例えば、分、時間(60分)、日(24時間)、週、月又は年とされてよい。
図3の例とは異なる保存周期の例としては、例えば、30分、1時間、3時間、12時間(半日)、3日、3週間、3カ月及び1年が挙げられる。
【0090】
レベルの数(別の観点では長さが互いに異なる保存周期の数)は任意である。
図3の例では、保存周期の数として3つ(1日、1週間及び1カ月)が例示されている。図示の例とは異なり、保存周期の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。所定数のレベルのそれぞれに割り当てられる保存周期の長さも任意である。例えば、
図3の例のように3つのレベルが設定されている場合において、3つの保存周期の組み合わせは、図示の例とは異なり、1時間、1日及び1週間の組み合わせ、あるいは3時間、1週間及び3カ月の組み合わせであってもよい。
【0091】
保存周期の単位が月である場合において、保存周期が経過したか否かは、暦を基準としてもよいし、30日を基準としてもよい。例えば、保存周期が1カ月の場合を想定する。このとき、暦を基準とする態様においては、各月の同日(月末においては繰り上げられることもある。)に自動保存の時期が到来する。30日を基準とする態様においては、前回の保存から30日が経過したときに自動保存の時期が到来し、30日でない月が関わるときに自動保存の日付がずれる。
【0092】
保存周期は、所定の条件に応じて変動することがあってもよい。例えば、保存周期が1週間又は1カ月等の場合(換言すれば保存周期が1日よりも長いような場合)において、自動保存がなされるべき日が祝日等(イレギュラーかつ予定されている非稼働日)に該当する場合は、自動保存がされる日の繰り上げ又は繰り下げがなされてもよい。ただし、この場合は、通常時のみに着目して、保存周期は変動していないと捉えられてもよい。
【0093】
上記に関連して、保存周期は、1つの値ではなく、所定の許容範囲に収まる値であってもよい。例えば、実施形態の説明で保存周期が1日であると表現される場合、あるいは、コントローラ5内で保存周期が1日に設定されている場合を想定する。このとき、1日が経過したときではなく、1日が経過する時点の前後1時間以内(合計で2時間の範囲内)において、他の所定の条件(例えばコントローラ5の負荷が低くなっているなど)が満たされたときに保存が行われてもよい。上記許容範囲は、例えば、その中央の値に対して±20%、±10%又は±5%の幅を有していてよい。
【0094】
種々の情報のレベル分け(別の観点では種々の長さの保存周期と種々の情報との対応付け。以下、同様。)は、ダイカストマシン1(コントローラ5)の製造者によってなされてもよいし、及び/又はダイカストマシン1のユーザによってなされてもよい。別の観点では、対応付けは、操作部15に対する操作によって変更不可能であってもよいし、変更可能であってもよい。
【0095】
レベル分けに関する方針、観点及び/又は基準は任意である。例えば、レベル分けは、情報の重要度が高いほど保存周期が短くなるようになされてもよいし、情報の変更頻度が高い(及び/又は、そのように予想される)ほど保存周期が短くなるようになされてもよいし、データサイズ(必要な記憶容量)が小さいほど保存周期が短くなるようになされてもよい。
【0096】
図3に示す例では、情報の重要度、データサイズ及びその他の観点からレベル分けがなされている。
図3の「データサイズ」の欄は、
図3に例示された複数種類の情報の相対的なデータサイズの大きさを「小」又は「大」で示している。以下に、
図3の例のようなレベル分けの理由の一部を簡単に述べる。
【0097】
・レベルAに関して
レベルAは、例えば、複数(
図3の例では3つ)のレベルの中で最も保存周期が短いレベルであり、別の観点では、保存周期が1日以下のレベルである。「鋳造条件データ」は、ユーザの重要な技術情報であり、失われた場合の損失が大きいことなどから、保存周期が相対的に短いレベルAに分類されている。また、「生産管理情報」は、故障前の生産状況を把握できる時期が故障の時期に近いほど復旧が容易化されることから、レベルAに分類されている。
【0098】
・レベルBに関して
レベルBは、例えば、レベルAに比較して保存周期が長いレベルであり、別の観点では、保存周期が2日以上のレベルであり、さらに別の観点では、保存周期が1週間以内のレベルである。「エラーログ」、「経歴データ(設定、警報等)」及び「自動保存等の機能設定状況」は、成形品の品質に直接的に影響を及ぼす蓋然性が低いものの、異常の要因特定及び復旧の容易化等に役立つことから、中位の重要度を有するものとして、レベルBに分類されている。
【0099】
・レベルCに関して
レベルCは、例えば、レベルBに比較して保存周期が長いレベルであり、別の観点では、複数(
図3の例では3つ)のレベルの中で最も保存周期が長いレベルであり、さらに別の観点では、保存周期が1週間を超えるレベルである。「原点情報」及び「シーケンス」は、一般に、変化又は変更の頻度が低いと予測されることから、レベルCに分類されている。「波形データ」は、ダイカストマシン1の一般的な機能(本実施形態のバックアップ機能とは別の機能)によって、適宜な時期(例えば成形サイクル毎の時期)に、コントローラ5に着脱可能な不揮発性メモリに保存されるようになっていることが多く、ひいては、本実施形態のバックアップ機能によるバックアップの必要性が低く、このことから、レベルCに分類されている。「ラインデータ」は、その少なくとも一部が波形データから算出可能である蓋然性が高いことなどから、バックアップの必要性が低い場合が多く、このことから、レベルCに分類されている。また、「波形データ」、「ラインデータ」及び「シーケンス」は、データサイズが大きくなりがちである。そこで、バックアップの頻度の低減によってコントローラ5の負荷が高くなる頻度を低減し、バックアップが通常の成形業務に及ぼす影響を低減する観点からも、レベルCに分類されている。
【0100】
第1メモリ23は、レベルと、情報の種類と、保存周期とを対応付けたテーブルを有してよい。当該テーブルは、
図3から「データサイズ」の欄を削除したものに相当することから、図示を省略する。プロセッサ21は、このテーブルを参照して、各保存周期が経過したときに、各保存周期に対応付けられた情報の種類を特定し、特定した種類の情報のバックアップを行ってよい。なお、対応付けのための実際のデータの構成は、上記とは異なっていても構わない。例えば、レベルと情報の種類との対応付けと、レベルと保存周期との対応付けとは、別個のテーブルによってなされていてもよいし、情報の種類と保存周期とが直接的に対応付けられ、レベルの情報が介在していなくてもよい(レベルの情報が直接的には存在しなくてもよい。)。
【0101】
(6.3.定期保存の手順の例)
プロセッサ21が第1メモリ23に記憶されている情報を定期的にバックアップするための処理の手順は任意である。以下に、一例を示す。
【0102】
図4は、プロセッサ21が実行する定期保存の処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図4を含め、種々のフローチャートは、理解が容易になるように動作の手順を概念的に示すものであって、必ずしも実際の手順とは一致していないし、また、正確性を欠いていることもある。
【0103】
図4に示す処理は、例えば、コントローラ5に電源が投入されたときに開始される。なお、
図4に示す処理は、コントローラ5への電源投入が1日以下の周期で行われることを前提としている。また、ここでは、保存周期が
図3の例のように設定されていることを前提とする。
【0104】
ステップST1では、プロセッサ21は、前回のレベルCに係る情報のバックアップから1カ月(すなわちレベルCの保存周期)が経過したか否かを判定する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときはステップST2に進み、否定判定のときはステップST2をスキップする。ステップST2では、プロセッサ21は、レベルCに係る情報をエクスポートしてバックアップを行う。
【0105】
ステップST3では、プロセッサ21は、前回のレベルBに係る情報のバックアップから1週間(すなわちレベルBの保存周期)が経過したか否かを判定する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときはステップST4に進み、否定判定のときはステップST4をスキップする。ステップST4では、プロセッサ21は、レベルBに係る情報をエクスポートしてバックアップを行う。
【0106】
ステップST5では、プロセッサ21は、前回のレベルAに係る情報のバックアップから1日(すなわちレベルAの保存周期)が経過したか否かを判定する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときはステップST6に進み、否定判定のときはステップST6をスキップする。ステップST6では、プロセッサ21は、レベルAに係る情報をエクスポートしてバックアップを行う。
【0107】
ステップST7では、プロセッサ21は、所定の終了条件が満たされたか否か判定する。終了条件は、例えば、1日以下の保存周期を有する全てのレベル(ここではレベルAのみ)に係る自動保存が終了したという条件を含んでよい。そして、プロセッサ21は、否定判定の場合は、1日以下の保存周期を有する自動保存の処理に係るステップ(ここではステップST5)に戻り、肯定判定の場合は、
図4の処理を終了する。
【0108】
図示の例の処理は、適宜に変更されてよい。例えば、ステップST7からステップST5へ戻るのではなく、ステップST3又はST1へ戻っても構わない。なお、この場合、電源投入は、1日毎に行われることが前提とされなくても構わない。また、図示の例では、保存周期が相対的に長いほど、自動保存の必要性の判定が相対的に先になされ、自動保存が必要な場合においては相対的に先に自動保存がなされている。上記とは逆に、保存周期が相対的に短いほど、自動保存の必要性の判定が相対的に先になされたり、及び/又は自動保存が先になされたりしてもよい。
【0109】
ステップST1、ST3及びST5では、前回のバックアップの時期を基準として、保存周期が経過したか否かの判定を行った。一方、既述又は後述の説明から理解されるように、バックアップが予定されていた時期に対して繰り上げ又は繰り下げがなされた時期にバックアップが行われる態様が実現されてもよい。このような態様において、前回のバックアップの時期は、実際にバックアップが行われた時期であってもよいし、バックアップが予定されていた時期であってもよい。
【0110】
実施形態の説明で用いている保存周期が経過したか否かという表現は、タイマが計時する時間長さが所定の長さに到達する動作を連想する。実際の処理は、そのような処理であってもよいし、コントローラ5が内部的に更新している時期(月、日及び/又は時刻等。以下、同様。)又は外部から取得する時期が、各保存周期に対応して設定された設定時期に到達したか否かの処理であってもよい。上記設定時期は、対応する保存周期に係る前回のバックアップの時期(予定時又は実際の実行時)に、当該バックアップの時期を基準に設定されてもよいし、所定の初期化操作がなされたときに、その初期化操作の時期又は初期化操作で指定された時期を基準に設定されてもよい。
【0111】
図4の例では、保存周期が経過したか否かを判定している(ステップST1、ST3及びST5)。従って、例えば、休日等に起因してステップST5で1.5日又は2日が経過していた場合にもステップST6の自動保存は行われる。ただし、保存周期を大きく過ぎていた場合(例えば2日以上を過ぎていた場合)に、自動保存を行わずに、次の保存周期に対応する時期が到来するときに自動保存が行われてもよい。別の観点では、休日等による非稼働の影響を除去するような処理が行われてもよい。例えば、ステップST5では、1日(保存周期)が経過したか否かの判定ではなく、毎日、所定の時刻になったか否かの判定が行われてよい。なお、この場合であっても、概念上、1日を保存周期として自動的に保存が行われていることに変わりはない。
【0112】
相対的に短い保存周期が相対的に長い保存周期の約数になっているような場合においては、長い保存周期が経過したと判定されたときに、短い保存周期に対応付けられた情報と、長い保存周期に対応付けられた情報とが共にエクスポートされてもよい。ただし、この場合も、概念的には、
図4の処理と同じ(等価な)処理が行われている。
【0113】
(6.4.定期保存条件の他の例)
保存周期が経過するという条件に加えて、他の条件が満たされたときに、自動保存が行われてもよい。他の条件としては、例えば、コントローラ5の負荷が低いことが挙げられる。これにより、コントローラ5の負荷の最大値を低下させることができる。コントローラ5の負荷が低い状態としては、例えば、マシン本体3が実質的に停止されており、マシン本体3の制御の負荷が低下している状態が挙げられる。従って、直接的には、そのようなマシン本体3の停止が他の条件とされてよい。さらに直接的には、液圧(油圧)を駆動部33へ送るポンプ(ポンプ自体も駆動部33の一例)の停止、及び/又は成形サイクル(1回だけのもの、及び/又は繰り返されているもの)の停止が他の条件とされてよい。
【0114】
図5は、上記のような動作を実現するためにプロセッサ21が実行する処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、
図4に示した処理の一部の他の例である。
【0115】
ステップST11は、ステップST1、ST3又はST5の別の例である。このステップでは、プロセッサ21は、所定の保存周期(1カ月、1週間又は1日)が経過したか否か判定する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときはステップST12に進み、否定判定のときはステップST12をスキップする。
【0116】
ステップST12では、プロセッサ21は、上記のとおり、保存周期に係る条件以外の他の条件が満たされたか否か判定する。ここでは、マシン本体3が停止中か否かの判定が例示されている。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときはステップST13に進み、否定判定のときはステップST13をスキップする。
【0117】
ステップST13は、ステップST2、ST4又はST6に対応するステップである。すなわち、ステップST13では、プロセッサ21は、ステップST11で判定した保存周期に対応するレベルの情報をエクスポートする。
【0118】
ステップST12に示した他の条件は、全ての保存周期に係る条件(例えば
図4ではステップST1、ステップST3及びST5の全て)に対して適用されてもよいし、一部のみに対して適用されてもよい。後者に関して例を挙げると、
図3の例では、レベルCには、データサイズが大きい情報が分類されているから、レベルCの自動保存に対してのみ、他の条件が適用されてもよい。また、上記では、同一の保存周期に係る2種以上の情報の全てに他の条件が付加されているが、同一の保存周期に係る2種以上の情報のうちの一部(例えばデータサイズが相対的に大きい情報)に対してのみ、他の条件が付加されても構わない。
【0119】
図4における保存周期に係る条件と、
図5における保存周期に係る条件及び他の条件の組み合わせとは、上位概念化されて、定期保存条件として捉えられてよい。定期保存条件は、保存周期に係る条件を必要条件として含む。より詳細には、
図4の例では、定期保存条件は、保存周期に係る条件(ステップST1、ST3又はST5)を必要十分条件として含む。
図5の例では、定期保存条件(ステップST15)は、保存周期に係る条件(ステップST11)を十分条件とはならない必要条件として含み、さらに、他の条件(ステップST12)を必要条件として含む。いずれにせよ、プロセッサ21は、定期保存条件が満たされたときに、定期保存条件に係る保存周期に対応する情報の保存を行う。
【0120】
(6.5.定期保存機能の利用時期の例)
図4及び
図5を参照して述べた処理によって実現される定期的な自動保存の機能は、例えば、ダイカストマシン1(及び/又はコントローラ5)が設置されたとき(使用開始時)にアクティブにされてもよいし、保存周期に比較して長期的な観点から設定された所定の条件が満たされた後にアクティブにされてもよい。後者の例を挙げると、ダイカストマシン1(及び/又はコントローラ5)の利用に係る通算時間が所定の耐用期間(例えば耐用年数)を超えたときに、定期保存の機能がアクティブにされてよい。
【0121】
コントローラ5(及び/又はモジュール20)の利用に係る通算時間が長くなどほど、コントローラ5が故障して、第1メモリ23のデータが消失する蓋然性が高くなる。従って、利用に係る通算時間が所定の耐用期間を超えたことを条件として、定期保存の機能をアクティブにすることによって、効果的にバックアップを行うことができる。より詳細には、故障の蓋然性が相対的に低いときは、バックアップによる負荷を低減し、一方で、故障の蓋然性が相対的に高いときは、バックアップによってデータの消失の蓋然性を低減できる。
【0122】
図6は、上記のような動作を実現するためにプロセッサ21が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、コントローラ5に電源が投入されたときに開始される。
【0123】
ステップST21では、プロセッサ21は、耐用期間が経過したか否か判定する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときは、ステップST22へ進み、否定判定のときは、ステップST22をスキップして処理を終了する。ステップST22では、
図4(及び
図5)に示した定期保存の処理が行われる。
【0124】
なお、耐用期間が経過したときに機能をアクティブにするという表現は、長期的な処理、あるいは耐用期間が経過したときの1回の切換えを想起する。ただし、
図6の例から理解されるように、実際の処理の内容は、耐用期間の前か後かに関わらずに繰り返し行われるものであって構わない。
【0125】
上記の処理は、適宜に変更されてよい。例えば、
図6の例では、電源が投入される度に、耐用期間が経過したか否か判定している。図示の例とは異なり、耐用期間が経過したと最初に判定されたときに不揮発性メモリにフラグを立て、その後は、そのフラグが立てられているか否かによって、ステップST22をスキップするか否かが判定されてもよい。ただし、上記のフラグの参照は、概念的には、耐用期間が経過したか否かの判定の一種である。
【0126】
耐用期間が経過したか否かの判定に用いられる期間(利用に係る通算時間)の具体的な態様は任意である。例えば、モジュール20(又はプロセッサ21)の利用に係る通算時間は、モジュール20に通電がなされた時間のモジュール20の使用開始時からの合計時間であってもよいし、モジュール20に通電がなされたか否かに関わらないモジュール20の使用期間であってもよい。モジュール20の利用に係る通算時間は、換言すれば、モジュール20の劣化の進行と相関する期間である。
【0127】
利用に係る通算時間の始期は、適宜に設定されてよい。例えば、ダイカストマシン1(又はコントローラ5)の製造者が、ダイカストマシン1とは別個の装置によって、又は操作部15に対する操作によって、納品予定の時期又は納品した時期などを始期として第1メモリ23に記憶させてよい。また、ユーザが操作部15に対する操作によって始期を設定可能であってもよい。
【0128】
耐用期間は、ダイカストマシン1(又はコントローラ5)の製造者が設定してもよいし、ユーザが操作部15に対する操作によって設定してもよい。ユーザによる設定は不可能であってもよい。耐用期間の長さは適宜に設定されてよい。例えば、耐用期間は、製造者及び/又はユーザによって設定されている保存周期(又はユーザによって設定可能な保存周期の最大長さ)のいずれよりも長い、及び1年以上であるという条件の少なくとも一方を満たしてよい。耐用期間(並びに利用に係る通算時間及びその始期)を規定する単位は任意であり、例えば、年又は月とされてよい。
【0129】
(7.手動保存及び復元)
実施形態の概要の説明で触れたように、第1メモリ23に記憶されている情報は、操作部15に対する操作によって(すなわち手動で)エクスポートがなされてもよい。また、自動又は手動でバックアップされた情報は、第1メモリ23(交換前又は交換後)にコピーされてよい(復元されてよい。)。その具体的な態様は任意である。以下に例を示す。なお、自動保存に関して説明した事項は、矛盾等が生じない限り、手動保存に援用されてよい。
【0130】
(7.1.画面の例)
図7は、手動保存及び復元のためにHMI13のタッチパネル50(換言すれば操作部15又はディスプレイ17)に表示される画面51の例を示す模式図である。なお、この図では、紙面の都合上、画面51に表示される種々の画像(例えば画面を切り換えるボタン等)の図示が省略されている。
【0131】
画面51の左側には、上部に「保存/復元」のタイトルが付されている領域53に、手動保存及び復元に係る情報の種類を選択するための複数の選択ボタン53aが表示されている。各選択ボタン53aは、自己が対応付けられている情報の種類を特定する画像(文字又は記号)が付されている。各選択ボタン53aは、所定の操作(例えばタップ)によって、選択状態及び非選択状態が切り換えられ、その状態に応じた表示がなされる。
【0132】
左側に「復元」のタイトルが付されている領域(領域53の上部)に配置されている複数の選択ボタン53aのいずれかを選択した状態で、実行ボタン59に対して所定の操作(例えばタップ)を行うと、選択された状態の選択ボタン53aに対応付けられている情報が、第2メモリ25、第3メモリ29又はサーバ153からインポートされて第1メモリ23へコピーされる。コピー先は、より詳細には、補助記憶装置23cである。ただし、RAM23bにコピーされ、補助記憶装置23cにコピーされずに、成形サイクル等に利用されても構わない。
【0133】
左側に「保存」のタイトルが付されている領域(領域53の下部)に配置されている複数の選択ボタン53aのいずれかを選択した状態で、実行ボタン59に対して所定の操作(例えばタップ)を行うと、選択された状態の選択ボタン53aに対応付けられている情報が、第2メモリ25、第3メモリ29及び/又はサーバ153へエクスポートされる。
【0134】
複数の選択ボタン53aに対応付けられる情報の種類は、種々のものとされてよい。以下、複数の選択ボタン53aの各々に付された文字を参照して、選択ボタン53aに対応付けられる情報の種類の例について説明する。
【0135】
「全データ」は、保存(自動及び/又は手動)及び/又は復元において対象とされる全ての種類の情報に対応している。具体的には、例えば、
図3に例示した種類の全てが挙げられる。また、以下に述べる「鋳造条件」~「シーケンス」に対応する情報の全てが挙げられる。全ての種類の情報は、保存周期が互いに異なる2種以上の情報を含んでいるから、「全データ」は、保存周期が互いに異なる2種以上の情報に対応付けられていると捉えられてもよい。
【0136】
「鋳造条件」~「シーケンス」は、
図3に例示した種々の情報に対応している。ただし、
図3は、レベルに応じて種々の情報が配列されていたのに対して、画面51では、使い勝手等を考慮して選択ボタン53aが配列されている。
図3に例示した情報の一部(図示の例では経歴データ)は、細分化されて選択ボタン53a(鋳造条件の変更履歴に係る「変更履歴」及び警報の履歴に係る「警報履歴」)に対応付けられている。「鋳造条件」~「シーケンス」の選択ボタン53aは、2以上を同時に選択可能であってよい(他の選択ボタン53aは、同時に選択不可能である。)。
【0137】
「一括」については、上記の「全データ」の説明が援用されてよい。
【0138】
「問い合わせ」は、全ての種類の情報のうちの一部であって、2種以上の情報に対応付けられている。この2種以上の情報は、例えば、互いに異なる保存周期(レベル)の情報を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、例えば、2種以上の情報は、ユーザによって設定される情報と、ダイカストマシン1の動作の結果、得られる情報(例えば成形サイクルの実行の結果、得られる情報)とを含んでいたり、ダイカストマシン1の動作を規定する情報と、ダイカストマシン1の動作の結果、得られる情報とを含んでいたりしてよい。
【0139】
「問い合わせ」は、例えば、ダイカストマシン1において異常が生じ、その異常に関してユーザがダイカストマシン1の製造者に問い合わせるときに、製造者に提供されると有用な情報を含んでいる。これにより、例えば、製造者が異常を調査するときに、ユーザに繰り返しコンタクトしてデータを得る必要性が低減され、早期に問題解決がなされる。
【0140】
上記のような効果以外の効果を狙って2種以上の情報の組み合わせに対応付けられた選択ボタン53aが設けられてもよい。この場合に付される文字は、当然に、「問い合わせ」でなくてよい。例えば、データが消失すると損失が大きい2種以上の情報の組み合わせが選択ボタン53aに対応付けられていてもよい。
【0141】
「問い合わせ」のように1つの選択ボタン53aに対応付けられる2種以上の情報の種類は、製造者が設定してもよいし、ユーザが設定してもよいし、ユーザによる設定が不可能であってもよい。「問い合わせ」については、例えば、製造者によって設定され、ユーザによる設定(変更)が不可能とされてよい。
【0142】
既述のとおり、自動保存及び/又は手動保存がなされるとき、同一のエクスポート先において、同一の情報について、複数回分のバックアップが可能であってよい。また、同一のエクスポート先に複数のダイカストマシン1の情報がバックアップされてよい。この場合、復元を行うときは、いずれのバックアップデータを用いるかを選択可能である。
【0143】
そこで、領域55では、互いに異なる時期のバックアップデータを選択するための複数の選択ボタン(符号省略)が表示されている。これらの選択ボタンには、例えば、日付を示す画像(文字又は記号)が付されている。また、領域57では、互いに異なるダイカストマシン1のバックアップデータを選択するための複数の選択ボタン(符号省略)が表示されている。これらの選択ボタンには、例えば、複数のダイカストマシン1に割り当てられた識別情報(例えばシリアルナンバー等)が付されている。もちろん、1つのエクスポート先において、1回分及び/又は1台分のバックアップのみがなされる態様においては、領域55及び/又は57は不要である。
【0144】
(7.2.処理の手順の例)
図8は、手動保存及び復元のためにプロセッサ21が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、コントローラ5に電源が投入されたときに開始される。
【0145】
ステップST31では、プロセッサ21は、バックアップの対象とされる全種類の情報を手動保存するための操作(
図8では「第1操作」と表記)がなされたか否かを判定する。この操作は、
図7の例では、「一括」の選択ボタン53aを選択した状態で実行ボタン59を操作することに対応する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときはステップST32に進み、否定判定のときはステップST32をスキップする。ステップST32では、プロセッサ21は、バックアップの対象とされる全種類の情報をエクスポートする。
【0146】
ステップST33では、プロセッサ21は、「問い合わせ」の選択ボタン53aに対応付けられた2種以上の情報を手動保存するための操作(
図8では「第2操作」と表記)がなされたか否かを判定する。この操作は、
図7の例では、「問い合わせ」の選択ボタン53aを選択した状態で実行ボタン59を操作することに対応する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときはステップST34に進み、否定判定のときはステップST34をスキップする。ステップST34では、プロセッサ21は、「問い合わせ」の選択ボタン53aに対応付けられた2種以上の情報をエクスポートする。
【0147】
ステップST35では、プロセッサ21は、復元のための操作がなされたか否かを判定する。この操作は、
図7の例では、「全データ」の選択ボタン53aを選択した状態、又は「鋳造条件」~「シーケンス」のうちの2つ以上の選択ボタン53aを選択した状態で、実行ボタン59を操作することに対応する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときはステップST36に進み、否定判定のときはステップST36をスキップする。ステップST36では、プロセッサ21は、選択状態の選択ボタン53aに対応付けられた1種以上の情報をインポートして、第1メモリ23にコピーする。
【0148】
ステップST37では、プロセッサ21は、所定の終了条件(
図4のものとは異なっていてよい。)が満たされたか否か判定する。そして、プロセッサ21は、肯定判定のときは
図8の処理を終了し、否定判定のときはステップST31に戻る。終了条件は、例えば、操作部15に対して所定の操作が行われたこととされてよい。
【0149】
なお、プロセッサ21にとって、所定の操作がなされたか否かの判定(ステップST31、ST33及びST35)は、別の観点では、HMI13(操作部15)から所定の信号(上記の所定の操作に応じた信号)が入力されたか否かの判定である。他の操作の説明についても同様である。
【0150】
(7.3.処理の手順の他の例)
これまでの説明では、復元は、タッチパネル50に対する操作に応じて行われた。ただし、復元は、機械式のスイッチ15a(既述のとおり、
図1の例とは異なり、タッチパネル50から離れて制御盤に位置していてもよい。)に対する操作を含む操作に応じて行われてもよい。例えば、特定のスイッチ15aをオンにした状態でコントローラ5に電源を投入したとき、コントローラ5は、復元を伴う態様で起動してもよい。
【0151】
図9は、上記のような動作を実現するためにプロセッサ21が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、コントローラ5に電源が投入されたときに開始される。
【0152】
ステップST41では、プロセッサ21は、復元モードか否か判定する。具体的には、上記のように特定のスイッチ15aがオン(あるいは逆にオフ)されているか否か判定する。そして、プロセッサ21は、否定判定のときはステップST42に進み、肯定判定のときはステップST43に進む。
【0153】
ステップST42では、プロセッサ21は、第1メモリ23に記憶されている1種以上の情報を読み出す。一方、ステップST43では、プロセッサ21は、第2メモリ25、第3メモリ29又はサーバ153から1種以上の情報をインポートする。いずれのステップが実行されても、プロセッサ21は、ステップST44に進む。
【0154】
ステップST44では、プロセッサ21は、ステップST42又はST43で読み出した1種以上の情報を利用する。例えば、上記の1種以上の情報がシーケンスプログラムを含む場合においては、プロセッサ21は、当該シーケンスプログラムに従って処理を実行し、成形サイクルを実行可能な状態に移行する(
図9では「起動」と表記)。
【0155】
ステップST43でインポートされる情報は、バックアップの対象の全ての情報であってもよいし、予め選択されていた1種以上の情報であってもよい。残りの必要な情報は、例えば、第1メモリ23から読み出されたり、起動の後に操作部15又はコネクタ27から入力されたりしてよい。なお、いずれにせよ、実施形態では、ステップST43でインポートされる情報は、
図7に例示した画面51でインポート可能な情報の一部又は全部である。
【0156】
ステップST43でインポートされた情報は、自動的に及び/又は即座に補助記憶装置23cに記憶されてよい。あるいは、インポートされた情報は、補助記憶装置23cに記憶されずに、RAM23bに記憶された状態が保持され(例えば表示及び/又は成形サイクルに利用され)、所定の条件(例えば操作部15に対する所定の操作)がなされたときに、補助記憶装置23cに記憶されてもよい。
【0157】
ステップST41で操作状態が参照されるスイッチ15aの具体的な構成は任意である。例えば、スイッチ15aは、ユーザがオン操作をした後に手を離してもオン状態が維持されるとともに、ユーザがオフ操作をした後にオフ状態を維持できる構成(すなわち位置保持ができる構成)を有していてもよいし、そのような位置保持ができない構成を有していてもよい。前者としては、例えば、スライド操作、揺動操作又は回転操作がなされる一般的なスイッチ、並びにオルタネイト動作を行う押しボタンが挙げられる。後者としては、モーメンタリ動作を行う押しボタンが挙げられる。後者の場合であっても、操作を継続した状態で、電源が投入されることによって、
図9の処理が行われてよい。
【0158】
(8.実施形態のまとめ)
以上のとおり、実施形態に係る成形機(ダイカストマシン1)用のコントローラ5(又は制御ユニット4)は、第1メモリ23と、プロセッサ21とを有している。第1メモリ23は、成形条件(鋳造条件)の情報を含む複数種類の情報を記憶する。プロセッサ21は、第1メモリ23に記憶されている鋳造条件の情報に基づいて成形機本体(マシン本体3)を制御する。複数の定期保存条件(ステップST1、ST3及びST5並びにST15を参照)は、所定の保存周期が経過することを必要条件としてそれぞれ含む。また、複数の定期保存条件は、保存周期の長さが互いに異なる(
図3の「周期」を参照)。プロセッサ21は、複数の定期保存条件のいずれかが満たされたときに、第1メモリ23に記憶されている複数種類の情報のうち、満たされた定期保存条件に対応付けられている1種以上の情報をエクスポートする(ステップST2、ST4及びST6)。
【0159】
別の観点では、実施形態に係る成形機(ダイカストマシン1)は、上記のようなコントローラ5と、マシン本体3と、を有している。
【0160】
従って、例えば、実施形態の概要の説明で述べたように、効果的にバックアップを行うことができる。例えば、重要度が高い情報の保存周期を短くして当該情報の最新の内容が消失する蓋然性を低減しつつ、重要度が低い情報の保存周期を長くしてコントローラ5の負荷を低減できる。
【0161】
複数の定期保存条件のうち保存周期の長さが最も短い条件に対して成形条件(鋳造条件)の情報が対応付けられていてよい(
図3のレベルAを参照)。
【0162】
この場合、例えば、既述のとおり、鋳造条件は、ユーザの技術情報であり、消失による損失が大きいことから、鋳造条件を優先的にバックアップすることによって、ユーザの利益を守ることができる。また、鋳造条件は、環境温度等に応じて頻繁に変更される蓋然性が高いことから、そのような実情に照らしたバックアップを行うことができる。
【0163】
複数の定期保存条件は、第1の定期保存条件(ステップST5を参照)と、第1の定期保存条件の保存周期よりも長い保存周期を有している第2の定期保存条件(ステップST3を参照)と、第2の定期保存条件の保存周期よりも長い保存周期を有している第3の定期保存条件(ステップST1を参照)と、を含んでいてよい。第1の定期保存条件(換言すればレベルA)に対して、成形条件の情報(その少なくとも一部。以下、他の情報についても同様。)と、生産管理情報(成形品の生産数に係る目標数及び達成数の情報を含む)と、のうちの少なくとも1つが対応付けられていてよい。第2の定期保存条件(換言すればレベルB)に対して、エラーログと、成形条件の変更履歴の情報と、成形の状況に応じた警報の履歴の情報と、機能に関する設定状況の情報と、のうちの少なくとも1つが対応付けられていてよい。なお、エラーログは、プロセッサ21が実行するオペレーティングシステムによるものであってよい。機能は、例えば、複数の定期保存条件に基づいて複数種類の情報をエクスポートする機能であってよい。第3の定期保存条件(換言すればレベルC)に対して、原点情報と、センサ31の検出値に基づく時系列データ(
図3の「波形データ」)と、時系列データから算出された統計値の情報(
図3の「ラインデータ」)と、シーケンス制御のプログラムと、のうちの少なくとも1つが対応付けられていてよい。なお、原点情報は、成形機本体(マシン本体3)が含むセンサ31の検出値と成形機本体(マシン本体3)が含む駆動部33の状態との対応関係を示すものであってよい。シーケンス制御のプログラムは、プロセッサ21がマシン本体3の制御に際して実行するものであってよい。
【0164】
上記のような複数の保存周期と複数種類の情報との対応付けによって、例えば、既述の重要度が高いデータの消失を低減しつつ、コントローラ5の負荷を低減する効果が得られやすくなる。
【0165】
複数の定期保存条件は、保存周期が1日の定期保存条件(ステップST5)と、保存周期が1週間の定期保存条件(ステップST3)と、保存周期が1カ月の定期保存条件(ステップST1)と、を含んでいてよい。
【0166】
上記のような時間長さが互いに大きく異なる保存周期が用いられることによって、複数種類の情報の重要度の相違などを保存周期の相違に反映させることが容易化される。ひいては、効果的にバックアップを行うことが容易化される。
【0167】
複数の定期保存条件のうちの少なくとも1つは、保存周期が経過したことに加え、成形サイクルが停止されていることを必要条件として更に含んでいてよい(
図5のステップST15を参照)。
【0168】
この場合、既述のとおり、コントローラ5の負荷が高いときにバックアップが行われる蓋然性が低減される。別の観点では、コントローラ5の負荷の最大値を低下させることができるから、コントローラ5のスペックを下げることができる。
【0169】
プロセッサ21は、当該プロセッサ21の利用に係る通算時間(例えば使用期間又は通電時間)が所定の耐用期間を超えていることを条件として、複数の定期保存条件に基づく複数種類の情報のエクスポートを行ってよい(
図6)。耐用期間は、1年以上であること、及び複数の定期保存条件の保存周期のいずれよりも長いことの少なくとも一方を満たしていてよい。
【0170】
この場合、例えば、既述のとおり、データの消失が生じる蓋然性が低いときはバックアップを行わないことによってコントローラ5の負荷を低減できる。その結果、長期的な観点において、効果的にバックアップを行うことができる。また、コントローラ5の寿命を延ばすことにもつながる。
【0171】
コントローラ(制御ユニット4)は、ユーザとプロセッサ21とを仲介するインターフェース(HMI13)を更に有していてよい。HMI13は、複数の定期保存条件のうちの互いに異なる定期保存条件に対応付けられている2種以上の情報を共に指定する1つの第1ボタン(
図7の「一括」が付された選択ボタン53a)を有していてよい。プロセッサ21は、「一括」の選択ボタン53aに対する操作を含む所定の第1操作がなされたときに(ステップST31で肯定判定がなされたときに)、「一括」の選択ボタン53aによって指定されている2種以上の情報をエクスポートしてよい。
【0172】
この場合、例えば、複数の保存周期に対応付けられている程度に、内容、重要度、変更の頻度及び/又はデータサイズが互いに異なる2種以上の情報が共にエクスポートされる。従って、ユーザは、個々の情報を指定することなく、簡便にバックアップを行うことができる。すなわち、ユーザの利便性が向上する。また、ダイカストマシン1においては、バックアップされることが望ましい情報が多岐に亘る。その結果、バックアップに漏れが生じる可能性がある。別の観点では、オペレータの熟練度が低い場合においては、作業時間が長くなる。しかし、全ての情報を一括でバックアップできるようにすることによって、そのような不都合が生じる蓋然性が低減される。なお、第1ボタンは、ソフトウェアボタン(実施形態の例)ではなく、ハードウェアスイッチであっても構わないし、「一括」の選択ボタン53aと、実行ボタン59とを統合した1つのボタンとされても構わない。
【0173】
コントローラ(制御ユニット4)は、ユーザとプロセッサ21とを仲介するインターフェース(HMI13)を更に有していてよい。HMI13は、複数の定期保存条件に対応付けられている複数種類の情報のうちの一部であって、HMI13に対する操作によって種類を変更できない2種以上の情報を共に指定する1つの第2ボタン(
図7の「問い合わせ」が付された選択ボタン53a)を有していてよい。プロセッサ21は、「問い合わせ」の選択ボタン53aに対する操作を含む所定の第2操作がなされたときに(ステップST33で肯定判定がなされたときに)、「問い合わせ」の選択ボタン53aによって指定されている2種以上の情報をエクスポートしてよい(ステップST34)。
【0174】
この場合、例えば、既述のとおり、ユーザは、当該ユーザの問い合わせを受けるダイカストマシン1の製造者が希望する情報を簡便にエクスポートできる。その結果、例えば、異常の要因の特定が早期に行われる。また、このような特定の2種以上の情報を共にエクスポートする構成は、問い合わせ以外の目的にも利用可能である。例えば、成形品の販売先へ提供すべき情報の種類が規格又は契約によって決定されたような場合に、この構成が適用されてもよい。なお、第2ボタンは、ソフトウェアボタン(実施形態の例)ではなく、ハードウェアスイッチであっても構わないし、「問い合わせ」の選択ボタン53aと、実行ボタン59とを統合した1つのボタンとされても構わない。
【0175】
コントローラ5は、プロセッサ21及び第1メモリ23に対して固定的に設けられている(換言すれば着脱不可能な)第2メモリ25を更に有していてよい。プロセッサ21は、複数の定期保存条件のいずれかが満たされたときに、満たされた定期保存条件に対応付けられている1種以上の情報を第2メモリ25にエクスポートしてよい。
【0176】
この場合、例えば、バックアップが確実になされる。具体的には、例えば、定期保存のエクスポート先が着脱可能な第3メモリ29である態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)では、エクスポートしようとしたときに第3メモリ29が装着されておらず、定期保存を行うことができないというような不都合が生じる可能性がある。しかし、第2メモリ25が着脱不可能なものであることによって、そのような不都合が生じる蓋然性が低減される。
【0177】
コントローラ(制御ユニット4)は、第3メモリ29を着脱可能なコネクタ27を有していてよい。プロセッサ21は、上記の第1操作(ステップST31)あるいは第2操作(ステップST33)がなされたときに、2種以上の情報をコネクタ27に接続されている第3メモリ29にエクスポートしてよい。
【0178】
この場合、例えば、コントローラ5(又はモジュール20)が故障し、そのハードウェアの一部又は全部を交換したときに、第3メモリ29を装着することによって、簡便にバックアップした情報を復元することができる。すなわち、復元作業が容易化される。
【0179】
プロセッサ21は、ネットワーク151を介してサーバ153に接続されていてよい。そして、プロセッサ21は、複数の定期保存条件のいずれかが満たされたときに(例えばステップST1、ST3又はST5で肯定判定がなされたときに)、満たされた定期保存条件に対応付けられている1種以上の情報をサーバにエクスポートしてよい(ステップST2、ST3又はST6)。
【0180】
この場合、例えば、サーバ153として、大容量の記憶領域を有するものを用意することによって、追加保存を行うことが容易化される。また、複数のダイカストマシン1が有する情報が一元管理されるから、情報の管理が容易化される。
【0181】
コントローラ(制御ユニット4)は、ユーザとプロセッサ21とを仲介するインターフェース(HMI13)を更に有していてよい。HMI13は、タッチパネル50と、ハードウェアスイッチ(スイッチ15a)と、を有していてよい。プロセッサ21は、タッチパネル50に対する操作に基づいて、過去にエクスポートされた複数種類の情報のうちの少なくとも一部の情報を読み出し可能であってよく(
図7及び
図8)、かつスイッチ15aに対する操作に基づいて、上記少なくとも一部の情報を読み出し可能であってよい(
図9)。
【0182】
この場合、例えば、タッチパネル50を介した理解が容易な操作によって復元を行うことができる。一方で、例えば、タッチパネル50に不具合が生じたときにも、情報の復元を行うことができる。この効果は、タッチパネル50の不具合が、バックアップされる情報の改変に起因する場合において特に有効である。
【0183】
以上の実施形態において、ダイカストマシン1は成形機の一例である。マシン本体3は成形機本体の一例である。コントローラ5又は制御ユニット4はコントローラの一例である。鋳造条件は成形条件の一例である。HMI13はインターフェースの一例である。「一括」の選択ボタン53aは第1ボタンの一例である。「問い合わせ」の選択ボタン53aは第2ボタンの一例である。スイッチ15aはハードウェアスイッチの一例である。
【0184】
本開示に係る技術は、以上に例示した態様に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0185】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、縦型締横射出、横型締縦射出であってもよい。
【0186】
実施形態の説明では、エクスポート(保存)は、主としてバックアップ(別の観点では復元)の目的で行われた。ただし、エクスポートは、バックアップを目的としなくてもよい。例えば、エクスポートは、ビッグデータの収集、及び/又はAI(Artificial Intelligence)技術における教師データの収集の目的で行われてもよい。
【0187】
エクスポートは、実施形態に例示した条件以外の条件が満たされたときに実行されて構わない。例えば、データの消失の前兆となり得る所定の異常が生じたときに実行されても構わない。
【0188】
本開示からは、2種以上の情報が互いに異なる保存周期でエクスポートされることを要件としない発明が抽出されてよい。例えば、1つの第1ボタン(「一括」の選択ボタン53a)又は1つの第2ボタン(「問い合わせ」の選択ボタン53a)に対する操作によって、これらに対応付けられている2種以上の情報がエクスポートされる発明が抽出されてよい。
【符号の説明】
【0189】
1…ダイカストマシン(成形機)、3…マシン本体(成形機本体)、4…制御ユニット(コントローラ)、5…コントローラ、21…プロセッサ、23…第1メモリ。