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特許7538852車両のキロメートル航続距離を管理するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】車両のキロメートル航続距離を管理するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240815BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240815BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240815BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/12
H02J7/00 P
H02J7/00 X
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022505343
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2020068630
(87)【国際公開番号】W WO2021028112
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】1909106
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シャール, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】マルシリア, マルコ
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/056069(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/046071(WO,A1)
【文献】特開2014-212649(JP,A)
【文献】特開2003-164006(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054571(WO,A1)
【文献】特開2013-017290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 50/60
B60L 58/12
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動容量(2)および予備部(3)を含む蓄電池(1)により電力を供給される電気トラクション車両で走行することをまだ期待できるキロメートル数である、残存する航続距離を管理するための方法において、車両の前記残存する航続距離が、保証された最小数のキロメートル(Km_guaranteed)以下になると直ぐに、前記車両の運転条件とは無関係に、前記車両により走行された距離に対して線形的に減少する前記残存する航続距離を表示する最終表示ステップを含むことを特徴とする、管理方法。
【請求項2】
前記保証された最小数のキロメートルに達する前の前記車両の前記残存する航続距離が、前記予備部(3)を除いて前記電池(1)の前記作動容量(2)を考慮に入れ、そして前記車両のこれまでの前記運転条件を考慮に入れることにより、前記電池の充電の状態から決定されることを特徴とする、請求項1に記載の管理方法。
【請求項3】
前記最終表示ステップは、前記車両の現在の運転条件がこれまでの前記運転条件よりもさらにきつい場合には、表示された前記残存する航続距離が前記車両により走行された距離に対して線形的に減少することを確実にするために前記作動容量前記予備部の容量加えた容量を前記電池(1)の総容量として考慮に入れるステップを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の管理方法。
【請求項4】
前記管理方法が、下記の値、
- 前記電池の充電レベルの実際の物理的状態に対応し、前記電池の容量のパーセントとして表され、前記作動容量および前記予備部を考慮に入れた、USOC_battery_not_filtered、
- エネルギー予備部に対応し、前記電池の前記作動容量と実際の容量との間の差に等しく、前記電池の容量のパーセントとして表された、Margin_battery_inf、
ッシュボード上で利用者に表示された前記残存する航続距離に対応し、キロメートルで表された、Range_km、
- 前記車両により走行された距離に対応し、キロメートルで表された、Distance_km、
前記保証された最小数のキロメートルに対応する、Km_guaranteed
を入力(10)として受け取ることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の管理方法。
【請求項5】
前記管理方法が、制限された電池の公称作動範囲にわたる充電の状態(USOC_filtered_range_nominal)を、数式
を使用して計算するステップを含むことを特徴とする、請求項4に記載の管理方法。
【請求項6】
前記管理方法は、表示された前記残存する航続距離(Range_km)が前記保証された最小数のキロメートル(Km_guaranteed)よりも大きい場合、前記制限された電池の前記公称作動範囲にわたって前記充電の状態を表示する予備ステップを含むことを特徴とする、請求項5に記載の管理方法。
【請求項7】
前記最終表示ステップは、充電の仮想状態(USOC_xxkm)を計算するステップを含み、前記充電の仮想状態(USOC_xxkm)は、表示された前記残存する航続距離が前記保証された最小数のキロメートル(Km_guaranteed)以下になるときから走行した距離とともに線形的に減少することを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の管理方法。
【請求項8】
前記最終表示ステップが、充電の最終状態(USOC_filtered_customer)を表示するステップを含み、前記充電の最終状態(USOC_filtered_customer)が、数式
USOC_filtered_customer=Max(USOC_filtered_range_nominal,Min(USOC_xxkm,USOC_battery_not_filtered))
により与えられることを特徴とする、請求項7に記載の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキロメートル航続距離を管理するための方法に関する。本発明による方法は、具体的には、トラクション蓄電池により電力を供給されるいずれの電気トラクション車両にも適用される。
【背景技術】
【0002】
電気トラクション車両のキロメートル航続距離は、十分に制御されるべきパラメータであり、そうでなければ、利用者をひどく失望させることがある。具体的には、この航続距離の推定がよくないと、電力の欠乏に起因して車両を立ち往生させることがあり、結果として充電地点まで利用者の車両を引っ張るために利用者がレッカー車を呼び出さなければならなくなる。
【0003】
電気自動車の残存するキロメートル航続距離の推定値は、運転者が自分の車両で走行することをまだ期待できるキロメートル数について運転者に知らせるためにダッシュボードに一般に表示される。現在では、運転者が、多くの場合にこの情報を絶対的に正しいと考える傾向がある。しかしながら、このような表示された航続距離は、多くの場合に、この数字が本来変わり得るいくつかの要因:過去および今後の運転スタイル、道路のタイプ、車両の重量、気象条件、等に依存するので、車両がまだ走行できるキロメートル数のおおよその見当を与える推定値に過ぎない。
【0004】
電池に蓄えられるエネルギーの量は、その蓄電能力のパーセントとしてしばしば表される。以降、この明細書では、このパーセント情報は、(「充電の状態(state of charge)」に代わって)SOCと呼ばれるだろう。フル充電した電池のSOCは、したがって100%であり、空の電池のSOCは0%である。
【0005】
SOCおよび提示された航続距離は、これゆえ、運転者の電気自動車を管理するために運転者によって最も使用される指標である。SOCおよび航続距離の推定値の重要性は、利用者が運転し続けるか車両を止めて充電するかどうかを判断するときにこれらの指標を頼りにするので、電池が低充電であるときにはるかに大きくなる。利用者が、不正確な推定値のために立ち往生しないように、提示された航続距離を信用できることが、これゆえ重要である。
【0006】
特許出願FR3018480は、運転者に表示される航続距離の「変動度」を制限することを狙った方法を開示し、この航続距離は、一般に大きく変わることがある運転条件に依存する。このために、蓄えられたエネルギーは、先ず、「公称」量および「予備部」量へと分けられる。次に、実際の瞬間消費量が推定される。最後に、車両の残存する航続距離が、いずれか、消費したエネルギーが所定のしきい値未満である場合にだけ公称量から計算される、または消費したエネルギーがしきい値よりも大きい場合には公称量および予備量から計算される。
【0007】
この出願では、エネルギーの予備量を徐々にそしてある種の条件下で使用することによって、推定され表示される航続距離は、したがって車両の使用の条件とは無関係にほぼ一定であることが分かる。加えて、この予備量の存在は、運転者には完全に知らされず、表示された距離が不利な運転条件を補償するために予備量を任意選択で使用することを、誰も知らない。
【0008】
FR3018480による方法の主な欠点は、後者が全SOC範囲(100%から0%)にわたり実施される一方で予備量が極めて限られているので、残存する航続距離を推定するために余りにも早くそして余りにも頻繁に予備部を考慮に入れることを回避するために、そして方法が可能な限り長く有効であることを確実にするために、非常に高い値で予備部を考慮に入れるためのしきい値を設定する必要がある。言い換えると、本方法は、高い過剰消費ピークを限定的に克服することを可能にするが、それ以上は有効性が低下する可能性がある。特に、低い過剰消費に対してさえ、最も不安なときである(0%に近付く)SOC範囲の終わりにおいて低下する可能性がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明による電気的に駆動される車両のキロメートル航続距離を管理するための方法は、SOC範囲の終わりに車両内に、車両の運転条件とは無関係に直感的に変わる残存するキロメートル航続距離を表示することを可能にし、この表示された航続距離は、任意選択で前記電池の予備部エネルギー容量を考慮に入れることが可能である。以降本出願では、この予備部エネルギー容量は、単純に「予備部」という。
【0010】
本発明の主題は、作動容量および予備部を含む蓄電池により電力を供給される電気トラクション車両のキロメートル航続距離を管理するための方法である。
【0011】
本発明によれば、本方法は、車両の残存するキロメートル航続距離が保証されたキロメートルの最小数(Km_guaranteed)以下になると直ぐに、車両の運転条件とは無関係に、経時的に線形的に減少する航続距離を表示する最終ステップを含む。
【0012】
いかなる曖昧さをも取り除くために、作動容量および予備部は、電池の2つの別個の部分であり、作動容量は、ユーザが電池を購入した前記電池の容量に対応し、予備部が前記ユーザから隠されて残る。
【0013】
本発明による方法は、これゆえ、作動容量および予備部を含む蓄電池を有する車両に適応し、そして表示されたキロメートル航続距離に対応する最後の数キロメートルが、車両の今後の運転条件とは無関係に車両によって実際に走行することが可能であろうことを運転者に再保証することを目的とする。本発明による方法は、電池の作動容量を考慮に入れて充電の最小しきい値状態からトリガされる。充電のこのしきい値最小状態に達すると直ぐに、車載コンピュータは、車両のこれまでの運転条件に依存し、車両の今後の運転条件とは無関係に時間とともに直感的に変わるだろう、すなわち時間とともに線形的に減少させることにより、残存する航続距離を表示する。2つのケースがそのときには生じることがある。
【0014】
車両の今後の運転条件がこれまでの運転条件と同一であるまたはそれどころか過酷でない場合には、表示された残存する航続距離の線形的な減少は、もっぱら電池の作動容量によって確実にされるだろう。
【0015】
車両の今後の運転条件がこれまでの運転条件よりもさらに過酷である場合には、表示された残存する航続距離の線形的な減少は、電池の作動容量および前記電池の予備部の両方によって確実にされるだろう。
【0016】
本発明による方法は、必要なときだけを除いて、電池の残存する航続距離の線形的な減少を確実にするために蓄電池の予備部を計画的には呼び出さない。本発明による方法の文脈では、予備部は、残存する電気的航続距離の線形的な減少を確実にするために、したがって運転者の車両が表示された残存するキロメートル航続距離により与えられるだろう距離を走行できるだろうことを知る運転者が再確認するために、いくつかの特定のケースにおいて使用されるだけである。
【0017】
本発明の1つの可能性のある特徴によれば、キロメートル航続距離が保証されたキロメートルの最小数に達する前の車両のキロメートル航続距離が、予備部を除いて電池の作動容量を考慮に入れ、そして車両のこれまでの運転条件を考慮に入れることにより電池の充電の状態から決定される。
【0018】
本発明の1つの可能性のある特徴によれば、最終表示ステップは、車両の現在の運転条件がこれまでの運転条件よりもさらにきつい場合には、表示された航続距離が線形的に減少することを確実にするために作動容量および予備部を考慮に入れることを含む。具体的に、車両の電気的航続距離は、電池の作動容量を考慮に入れて充電の状態に基づいておよび車両のこれまでの運転条件に基づいて生成される。これゆえ、車両の現在の運転条件がこれまでの運転条件よりもさらにきつい場合には、まさに電池の作動容量が、表示された残存する航続距離の線形的な減少を確実にするためにはおそらく十分ではないはずであり、そのときには、電池の予備部を呼び出す必要があるはずである。
【0019】
本発明の1つの可能性のある特徴によれば、本方法は、下記の値:
- 電池の充電レベルの実際の物理的状態に対応し、電池の容量のパーセントとして表され、作動容量および予備部を考慮に入れた、USOC_battery_not_filtered、
- エネルギー予備部に対応し電池の作動容量と実際の容量との間の差に等しく、電池の容量のパーセントとして表された、Margin_battery_inf、
- :ダッシュボード上で利用者に提示された航続距離に対応し、キロメートルで表された、Range_km、
- 車両により走行された距離に対応し、キロメートルで表された、Distance_km、
- 保証されたキロメートルの最小数に対応する、Km_guaranteed
を入力として受け取る。
【0020】
本発明の1つの可能性のある特徴によれば、本方法は、制限された電池の公称作動範囲にわたる充電の状態(USOC_filtered_range_nominal)を、数式:
を使用して計算するステップを含む。
【0021】
制限された電池は、予備部のない、前記電池の作動容量または公称容量に対応する。
【0022】
本発明の1つの可能性のある特徴によれば、本方法は、提示された航続距離(Range_km)が保証されたキロメートルの最小数(Km_guaranteed)よりも大きい場合、制限された電池の公称作動範囲にわたる充電の状態を表示する先のステップを含む。
【0023】
本発明の1つの可能性のある特徴によれば、最終表示ステップは、充電の仮想状態(USOC_xxkm)を計算するステップを含む。充電の仮想状態(USOC_xxkm)は、提示された航続距離が保証されたキロメートルの最小数(Km_guaranteed)以下になるときから走行した距離とともに線形的に減少する。
【0024】
本発明の1つの可能性のある特徴によれば、最終表示ステップが、充電の最終状態(USOC_filtered_customer)を表示するステップを含む。充電の最終状態(USOC_filtered_customer)は、数式:
USOC_filtered_customer=Max(USOC_filtered_range_nominal,Min(USOC_xxkm,USOC_battery_not_filtered))により与えられる。
【0025】
この数式により、運転者が表示された航続距離についての計算で考えられたこれまでの消費量に対して「過剰消費している」ときにだけ、SOCが最後の数kmを保証するストラテジによって修正されることを確実にすることが可能になる。これにより、提示された最後の数kmを運転者に保証することが可能になり、これゆえ管理することが面倒であろう予期しない停止を運転者が回避することが可能になる。
【0026】
本発明による管理方法は、車両のキロメートル航続距離を推定するときに車両が表示された最後の数kmを忠実にそして信頼性良く確実にすること、および電気の消費量を増加させがちであるより過酷な運転条件にも拘らずそうすることを可能にする。本発明による管理方法は、車両および電池に対する変更を必要とせずに、そしてコストおよび嵩の源である追加部品を追加せずに実施されるという利点を有する。
【0027】
本発明による管理方法の1つの好ましい実施形態の詳細な説明が、下記の図を参照して以降に与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による管理方法が実行される車両の蓄電池の模式図である。
図2】本発明による管理方法の様々なステップを図説する全体的なフローチャートである。
図3】本発明による管理方法を駆動するためのソフトウェアの第3のブロックの動作を図説するフローチャートである。
図4】本発明による管理方法を駆動するためのソフトウェアの第4のブロックの動作を図説するフローチャートである。
図5】最後の数キロメートルでパワー消費量の増加の場合に、本発明による管理方法が起動されるときの推定した航続距離と車両によって実際に走行された距離とを比較するための経時的な図である。
図6図5に図示した例のケースで様々なSOCを比較するための経時的な図である。
図7】最後の数キロメートルでパワー消費量の減少の場合に、本発明による管理方法が起動されるときの推定した航続距離と車両によって実際に走行された距離とを比較するための経時的な図である。
図8図7に図示した例のケースで様々なSOCを比較するための経時的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
SOCという用語は、充電の状態を表す。
【0030】
図1を参照して、本発明による車両のキロメートル航続距離を管理するための方法は、作動容量2および予備部3を含む蓄電池1により電力を供給される電気トラクション車両に適用可能であり、前記予備部3は、好ましくは、前記電池1の実際の総容量(作動容量+予備部)の5%~30%を占める。この方法は、電池の公称作動範囲が実際の容量に対して減少しているいかなるケースにも適用できる。この制約は、利用可能なエネルギーマージン(予備部)が利用者の公称作動範囲よりも下になり、したがって0%SOCとなる。
【0031】
電気自動車の多数の例が市場に存在し、上記電気自動車は、公称容量よりも大きな物理容量を有する電池1を含む。具体的に、多数の電池(小容量/大容量)を提供するケースでは、航続距離の点でいろいろな提供を依然として与えながら多数の部品を回避するために、単一の物体だけを生産することが、車両製造者にとってより経済的であるだろう。本発明による方法は、製造者の部品への追加投資なしにこの追加のエネルギーマージン(予備部)をインテリジェントに利用することにより、車両にさらなる利益を与えることを可能にする。
【0032】
本発明による管理方法は、車両が非常に低い所定のしきい値に等しい残存する航続距離を示すときに、車両の今後の運転条件とは無関係に、経時的に線形的に減少する航続距離を表示するステップを含む。
【0033】
言い換えると、車両のキロメートル航続距離の予測は、電池1の作動容量2だけに、より精密には前記作動容量2を考慮に入れた充電の状態および既に走行したキロメートルにわたる車両の運転履歴だけに基づいて行われる。電池1の予備部3は、このキロメートル航続距離の予測に関係しない。このように、車両が現在あと数キロメートル余分に走行できるだけであることを、表示されたキロメートル航続距離が運転者に示すときには、電力の欠乏のために、運転者の車両が道路脇のところで動かなくなることを経験するという不測の事態なしに、運転者の車両の今後の運転条件とは無関係に、運転者の車両が走行できるだろうことを確信することは、前記運転者にとって重要である。このような方法は、電池1の作動容量2の充電の状態が最小しきい値に達するとトリガされる。一旦、このしきい値に達すると、車載コンピュータは、車両のこれまでの運転条件に基づいて残存するキロメートル航続距離を計算し、次いで、運転者にとって直感的である、ということは時間とともに線形的に減少する残存するキロメートル航続距離を表示する。2つのケースが、そのときには生じることがある。
【0034】
車両の今後の運転条件がこれまでの運転条件と同一であるまたは過酷でない場合には、表示された残存する航続距離の線形的な減少は、もっぱら電池1の作動容量2によって確実にされるであろう。
【0035】
車両の今後の運転条件がこれまでの運転条件よりもさらにきつい場合には、表示された残存する航続距離の線形的な減少は、電池の作動容量および前記電池の予備部の両方によって確実にされるであろう。
【0036】
パワー消費量をおそらく増加させる運転条件は、車両の速度の増加、エンジン速度の増加、傾斜した道路の起伏、気象条件および運転者の部分についての積極的な運転スタイルの中から選択されるべきである。上に列挙した条件は、個別にまたは組合せで考えられてもよい。これらの条件は、例示であり、そして車両のパワー消費量をおそらく増加させる不利な条件の非限定的な例である。
【0037】
図2を参照して、本発明による管理方法は、入力10、第1のブロック11、第2のブロック12、第3のブロック13および第4のブロック14を含むソフトウェアを用いて動かされる。
【0038】
入力10は、下記の通りである:
- USOC_battery_not_filtered[%]:この信号は、電池の充電レベルの実際の物理的状態を示し、電池の容量のパーセントとして表され、
- Margin_battery_inf[%]:電池の作動容量と実際の容量との間の差に対応するエネルギーマージンであり、
- Range_km[km]:ダッシュボード上で、利用者に提示される航続距離であり、
- Distance_km[km]:車両により走行された距離であり、
- Km_guaranteed:このパラメータにより、本ストラテジで保証されることが望まれるキロメートル数を選択することが可能になる。
【0039】
ストラテジを設定するためのパラメータは、Km_guaranteed[km]である。このパラメータにより、本ストラテジで保証されることが望まれるキロメートル数を選択することが可能になる。
【0040】
第1のブロック11は、制限された電池1の公称作動範囲にわたるSOCを計算する。「USOC_filtered_range_nominal」と呼ばれるだろうこの信号は、提示された航続距離Range_kmが「保証された」km数Km_guaranteedよりも大きい場合、利用者に表示される。
【0041】
信号USOC_filtered_range_nominalは、下記の式を使用して得られる:
【0042】
第2のブロック12は、本ストラテジにより保証される最後の数キロメートルに対して提示された航続距離を比較するブール値を生成する。
【0043】
このブロックの出力は、数式:
により与えられるブール値である。
【0044】
図3を参照して、第3のブロック13は、提示された航続距離が保証されたkm数に対応するしきい値、km_guaranteed、を下回るときから走行した距離とともに線形的に減少するUSOC_xxkmと呼ばれる新しい仮想SOC信号を定義する。出力信号USOC_xxkmは、これゆえ、最後の数km km_guarnteedが実際に自動車によって走行されたときに値0%に達する。
【0045】
第3のブロック13を生成するための論理が、図3に示され、図3では、
- Distance_km[km]:車両により実際に走行された距離、
- Km_guaranteed[km]:ストラテジによって保証されたキロメートル数に対応するストラテジを設定するためのパラメータ(例えば、このパラメータに対して5kmの値を選択することが可能である)、
- USOC_filtered_range_nominal:制限された電池の公称航続距離2にわたって計算された電池1のSOC(第1のブロック11の出力)
を思い出させる。
【0046】
推定した航続距離がkm_guaranteed(km)を下回ると、ブロック13は、km_guaranteed(km)の終わりのところで、計算した値が0になるように走行した距離とともに線形的に減少するSOCを計算する。航続距離がkm_guaranteed(km)よりも大きいときには、このブロック13の出力は、第1のブロック11によって計算された制限された電池2の公称航続距離のSOC USOC_filtered_range_nominalである。
【0047】
図4を参照して、第4のブロック14は、自動車のダッシュボード上で利用者に表示されるだろう最終SOCを計算する。このブロック14の目的は、制限された公称航続距離に対して第1のブロック11により計算されたSOCを、必要なときだけ修正することである。すなわち、運転者が、運転者に提示されている最後の数km km_guaranteedを走行することが可能である前に後者が0%に達するだろうときである。これを行うために、航続距離がkm_guaranteed kmしきい値を下回ると、公称航続距離のSOC USOC_filtered_range_nominalは、これらの2つの値の間の最大値を利用者に提示するために第3のブロック13によって最後の数キロメートルにわたって構成された仮想SOC USOC_xxkmと、および電池の実際のSOCが電池の物理的な航続距離から決して解離しないことを確実にするために電池1の実際のSOCによる飽和と継続的に比較される。利用者に最終的に表示されるSOCは、これゆえ:
- SOC_filtered_customer=Max(USOC_filtered_range_nominal,Min(USOC_xxkm,USOC_battery_not_filtered))
である。
【0048】
この数式により、表示された航続距離に関する計算で考慮された運転者のこれまでの消費に対して運転者が「過剰消費している」ときにだけ最後の数kmを保証するストラテジによってSOCが修正されることを確実にすることが可能になる。これにより、これゆえ、提示された最後の数kmを運転者に保証することが可能になり、これゆえ運転者が、運転スタイルまたは消費における劇的な変化のケースにおいてさえ、結果として利用者の不満になるだろう不時の停止および予期しない停止を回避することが可能になる。
【0049】
具体的に、運転者が、特に、最後のkm(USOC_xxkm)を保証するために、電池が充電されそして制限されたSOC(USOC_filtered_range_nominal)が計算された値の上に戻ることを可能にする回生フェーズによって保証された最後の数キロメートルにわたり消費量を減少させるのであれば、そのときには、ストラテジは、USOC_filtered_range_nominalを表示するであろう、これにより利用者が、例えば、保証された5kmを超えて運転するために再生されたエネルギーを利用することを可能にする。ストラテジは、これゆえ、利用者にとって好ましいケースにおいてだけ、制限された電池1の公称作動範囲から離れることを可能にする。
【0050】
一旦、SOC USOC_filtered_customerが上に記載したストラテジに従って計算されると:
- エンジントルクは、USOC_filtered_customerがゼロに近付くにつれて徐々に減少するように自然に管理され、そのため、パワー「枯渇」はUSOC_filtered_customerがゼロに達する前には決して生じ得ない。実際に、このトルク管理は、運転の最後の数kmを保証することを可能にするUSOC_filtered_customer計算と一致する。
- 利用者に提示された航続距離は、最後の数km_guaranteedでは、最後の数km_guaranteedと論理的に一致する。
【0051】
本発明による管理方法を検証するために、運転の2つの例:高い消費量で最後の数kmにおいていずれの回生フェーズも用いない運転、および意味のある回生フェーズを用いた運転が扱われる。
【0052】
図5および図6は、最後の数kmにおいて消費量の増加をともなう運転の例を図示する。これらの2つの図では、ストラテジは航続距離が保証された5km(この例ではkm_guaranteed=5)を下回るとすぐに起動されること、および利用者に表示されるSOCが減少しそして5km運転してはじめて0%に達することが注目される。
【0053】
図7および図8は、最後の数km(有意な再生フェーズ)における消費量の減少をともなう運転の例を図示する。これらの2つの図では、ストラテジは航続距離が保証された5kmを下回るとすぐに起動されること、および利用者に表示されるSOCが回生フェーズこれゆえ追加のエネルギーを考慮に入れることが注目される。これは、これゆえ、新しく計算したSOCと一致するトルク管理を介して、5kmよりもさらに遠くへ運転することを可能にし、運転者が再生されたエネルギーを利用することを可能にする。
【0054】
これらの例は、ストラテジが、航続距離に対する車両の消費量の可能な好ましい変化を考慮に入れながら運転の最後の数キロメートルを保証することを可能にすることを示している。このストラテジがすべての運転条件下で上手く働き、したがって、運転の最後の数kmにわたる航続距離に関して、天気が暑かろうが寒かろうが、電池が古かろうが、車両が充電されていようが、山道でおよびいかなるタイプの運転に対しても同じパフォーマンスを可能にすることに注目すべきである。
【0055】
本発明による管理方法が、大きな予備部3を用いるとはるかに有利になることに注目すべきである。具体的に、予備部が大きいほど、より大きなキロメートル数を保証することが可能であるだろう。電気自動車の多数の例が市場に存在し、上記電気自動車は、多数の電池(小容量/大容量)を提供するケースでは、(当然のことながら、異なる顧客購入価格に対して)航続距離の点でいろいろな提供を依然として与えながら多数の部品を省くために、単一の物体だけを生産することが、車両製造者にとってより経済的であり得るので、ユーザには隠された追加のエネルギー容量を有する電池を含む。この発明は、製造者の側で追加の投資をせずにこの追加のエネルギーマージンをインテリジェントに利用することにより追加の利点を与えることを可能にする。
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