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特許7538872リチウム二次電池用正極スラリー組成物、正極及びこれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用正極スラリー組成物、正極及びこれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極スラリー組成物、正極及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240815BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240815BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20240815BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20240815BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20240815BHJP
   H01M 4/1399 20100101ALI20240815BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240815BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240815BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20240815BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240815BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240815BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240815BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/136
H01M4/137
H01M4/1397
H01M4/1399
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M4/60
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0566
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022545898
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 KR2021013848
(87)【国際公開番号】W WO2022080766
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0130788
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュンヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】テク・ギョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミジン・イ
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-143711(JP,A)
【文献】特表2021-504899(JP,A)
【文献】特開2000-082472(JP,A)
【文献】特開2007-066823(JP,A)
【文献】特開2005-228679(JP,A)
【文献】特開2004-047462(JP,A)
【文献】特表2021-508919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤、添加剤及び溶媒を含み、
前記増粘剤はリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose、LiCMC)を含み、
前記添加剤はアミノ安息香酸基(aminobenzoic acid group)が結合されたLiCMC(LiCMC-ABA)を含む、リチウム二次電池用正極スラリー組成物において
前記増粘剤は、前記正極スラリー組成物の固形分全体重量を基準にして0.5重量%ないし5重量%で含まれたものであり、
前記添加剤は、前記正極スラリー組成物の固形分全体重量を基準にして0.01重量%ないし5重量%で含まれたものであり、
前記正極スラリー組成物は下記数式1で表されるチクソ性指数Tが0.1ないし0.4である、リチウム二次電池用正極スラリー組成物。
<数式1>
チクソ性指数T=(回転速度10rpmで正極スラリー組成物の粘度)/(回転速度1rpmで正極スラリー組成物の粘度)(数式中、粘度の測定温度は25℃である)
【請求項2】
前記アミノ安息香酸基が結合されたLiCMCは、メタアミノ安息香酸基が結合されたLiCMC(LiCMC-MABA)及びパラアミノ安息香酸基が結合されたLiCMC(LiCMC-PABA)からなる群から選択された1種以上を含むものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項3】
前記溶媒は有機溶媒及び水系溶媒の中で選択される1種以上を含むことができるし、
前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メトキシプロピルアセテート、ブチルアセテート、グリコール酸、ブチルエステル、ブチルグリコール、メチルアルキルポリシロキサン、アルキルベンゼン、プロピレングリコール、キシレン、モノフェニルグリコール、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリアクリレート、アルキルベンゼン、ジイソブチルケトン、有機変性ポリシロキサン、ブタノール、イソブタノール、変性ポリアクリレート、変性ポリウレタン、及びポリシロキサン変性ポリマーからなる群から選択された1種以上を含み、
前記水系溶媒は水を含むものである、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項4】
前記正極活物質は、硫黄元素(Elemental sulfur、S)、Li(n≧1、nは整数である)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは整数である]からなる群から選択された1種以上を含むものである、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項5】
正極集電体;及び前記正極集電体の一面に形成された正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は請求項1に記載の正極スラリー組成物で形成されたものである、リチウム二次電池用正極。
【請求項6】
(S1)正極集電体の一面に請求項1に記載の正極スラリー組成物をコーティングする段階;
(S2)前記(S1)段階で形成されたコーティング層を乾燥させる段階;及び
(S3)前記コーティング層を圧延して正極活物質層を形成する段階;を含むリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項7】
前記コーティングする段階は、バーコーティング、ロールツーロールコーティング、スピンコーティング、ノズルプリンティング、インクジェットプリンティング、スロットコーティング及びディップコーティングからなる群から選択される1種以上によって行われる、請求項6に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄二次電池である、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年10月12日付韓国特許出願第2020-0130788号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明はリチウム二次電池用正極スラリー組成物、正極及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子機器分野と電気自動車分野の急速な発展につれ、二次電池の需要が増加している。特に、携帯用電子機器の小型化及び軽量化の成り行きによって、それに応えられる高エネルギー密度を持つ二次電池に対する要求が大きくなっている。
【0004】
二次電池の中でリチウム-硫黄二次電池は、硫黄-硫黄結合を持つ硫黄系化合物を正極活物質で使用し、リチウムのようなアルカリ金属、リチウムイオンのような金属イオンの挿入及び脱挿入が起きる炭素系物質またはリチウムと合金を形成するシリコンやスズなどを負極活物質で使用する二次電池である。具体的に、前記リチウム-硫黄二次電池は還元反応である放電の際に硫黄-硫黄結合が切れながら硫黄の酸化数が減少し、酸化反応である充電の際に硫黄の酸化数が増加しながら硫黄-硫黄結合が再度形成される酸化-還元反応を利用して電気的エネルギーを格納して生成する。
【0005】
特に、リチウム-硫黄二次電池に正極活物質で使用される硫黄は理論エネルギー密度が1,675mAh/gで、既存のリチウム二次電池に使用される正極活物質に比べて5倍ぐらい高い理論エネルギー密度を持っていて、高出力及び高エネルギー密度の発現が可能な電池である。これに加え、硫黄は安価で埋蔵量が豊かであり、需給が容易で、環境にやさしいという利点のために携帯用電子機器だけでなく電気自動車のような中大型装置のエネルギー源として注目されている。
【0006】
硫黄は電気伝導率が約5×10-30S/cmで、電気伝導性がない不導体なので、電気化学反応によって生成された電子の移動が難しい問題がある。ここで、電気化学的反応サイトを提供することができる炭素のような電気伝導性物質とともに複合化されて硫黄-炭素複合体で使用されている。
【0007】
前記硫黄-炭素複合体を正極材で使用するために、前記硫黄-炭素複合体、導電材、バインダー及び増粘剤を利用してスラリーを製造した後、前記スラリーを集電体に塗布するスラリー工程を通じて正極を製造する方式が一般的に使用されている。
【0008】
しかし、従来リチウム-硫黄二次電池用正極スラリーは、チクソ性(thixotropy)が低くて、正極スラリーを溶液コーティング工程に適用する時、十分な流れ性が保障されなかった。ここで、正極スラリーの製造の際、正極活物質である硫黄-炭素複合体に親和的な分散剤(dispersion agent)及び/またはレオロジー調整剤(Reology modifier)を使用することもあるが、これらを使用しても流れ性に有意な変化がなく、返って前記分散剤及び/またはレオロジー調整剤を使用することによって充放電性能が弱化されることもあった。
【0009】
一方、最近では正極組成物の製造の際、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース系物質を適用して正極スラリーの流れ性を改善するための研究結果が公開されている。
【0010】
例えば、特許文献1は、安定的で柔軟な極板特性を与えるための水系正極組成物を提供するために、前記正極組成物の製造の際にバインダーとしてカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、CMC)を含む。しかし、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのみを使用する場合、チクソ性が低いスラリーはスラリーコーティング工程でコーティング速度が変化する時適切に伸びないため、正極活物質層が均一に形成されない問題がある。
【0011】
非特許文献1は、バインダーとしてリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose、LiCMC)を含むリチウム二次電池用正極組成物を開示する。しかし、バインダーとしてリチウム化されたカルボキシメチルセルロースのみを使用する場合、やはり正極スラリー製造の際にチクソ性が弱くて正極活物質層コーティング工程でコーティング速度が変化する時に前記正極組成物に適切に対応することができないので、正極活物質層が均一に形成されない問題がある。
【0012】
このように、リチウム二次電池用正極製造の際に工程性を向上させ、製造されたリチウム二次電池の充放電性能を改善させるよう、正極スラリーのレオロジー特性を改善するための研究が続いている。しかし、現在まで開発された正極スラリーはリチウム二次電池用正極製造の際に工程性と電池性能向上について有意な効果を示すことができない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】韓国公開特許第2016-0071740号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】Lei Qui et al.(Carbohydrate polymers、Vol.112、(2014)pp.532-538)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは前記問題点を解決するために多角的に研究した結果、リチウム二次電池用正極スラリー組成物に増粘剤であるリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose、LiCMC)と添加剤であるアミノ安息香酸基(aminobenzoic acid group)が結合されたLiCMC(LiCMC-ABA)を混用する場合、前記正極スラリー組成物の流れ性が改善されて正極製造の際に前記正極スラリー組成物のコーティング工程でコーティング速度が変わっても良質の正極活物質層を形成することができることを確認した。
【0016】
したがって、本発明の目的は流れ性に優れてスラリーコーティング時の可変的な工程条件に対して柔軟に対応することができるリチウム二次電池用正極スラリー組成物を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は前記流れ性のよい正極スラリー組成物を利用して製造された正極及びこの製造方法を提供することである。
【0018】
本発明のまた他の目的は前記流れ性のよい正極スラリー組成物を利用して製造された正極を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、本発明は、正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤、添加剤及び溶媒を含み、前記増粘剤はリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose、LiCMC)を含み、前記添加剤はアミノ安息香酸基(aminobenzoic acid group)が結合されたLiCMC(LiCMC-ABA)を含むものである、リチウム二次電池用正極スラリー組成物を提供する。
【0020】
本発明はまた、正極集電体;及び前記正極集電体の一面に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は前記正極スラリー組成物によって形成されたものである、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0021】
本発明はまた、(S1)正極集電体の一面に前記正極スラリー組成物をコーティングする段階;(S2)前記(S1)段階で形成されたコーティング層を乾燥させる段階;及び(S3)前記コーティング層を圧延して正極活物質層を形成する段階;を含むリチウム二次電池用正極の製造方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、前記正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明による正極スラリー組成物はコーティング工程時に変化するコーティング速度に柔軟に対応することができる程度の流れ性を持つので、前記正極スラリー組成物を利用して正極集電体上に均一な正極活物質層が形成された正極を製造することができる。
【0024】
また、前記流れ性のよい正極スラリー組成物を利用して製造された正極を含むリチウム二次電池は充放電性能が改善された効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1、2及び比較例1の正極スラリー組成物のせん断速度によるせん断応力変化を示すグラフである。
図2】実施例1及び比較例1のリチウム-硫黄二次電池に対する充放電特性を示すグラフである。
図3】実施例2及び比較例1のリチウム-硫黄二次電池に対する充放電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に対して理解しやすくするために本発明をより詳細に説明する。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0028】
本明細書で使用された用語「チクソ性(thixotropy)」とは、物質にせん断応力(shear stress)が未作用した状態では粘性が増加し、せん断応力が作用した状態では粘性が減少する性質を意味する。
【0029】
本明細書で使用された「固形分」とは、リチウム二次電池用正極スラリー組成物から溶媒を除いた正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤を通称する意味である。
【0030】
リチウム二次電池用正極スラリー組成物
本発明はリチウム二次電池用正極製造の際に、正極活物質層を形成するためのコーティング工程で変化するコーティング速度に柔軟に対応することができるほどの流れ性を持つ正極スラリー組成物に関する。この時、「対応」とは、コーティング速度が速くなる時はコーティング物質がコーティングされる集電体とコーティングバーの間の正極スラリー組成物に印加されるせん断応力が大きくなるので、前記正極スラリー組成物の粘性が減少して速いコーティング速度に合わせて均一にコーティングされ、コーティング速度が遅くなる時は集電体とコーティングバーの間の正極スラリー組成物に印加されるせん断応力が小さくなるので、前記正極スラリー組成物の粘性が大きくなって遅いコーティング速度に合わせて均一にコーティングされることを意味する。
【0031】
本発明によるリチウム二次電池用正極スラリー組成物は、正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤、添加剤及び溶媒を含み、前記増粘剤はリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose、LiCMC)を含み、前記添加剤はアミノ安息香酸基(aminobenzoic acid group)が結合されたLiCMC(LiCMC-ABA)を含む。
【0032】
前記リチウム二次電池用正極スラリー組成物は添加剤としてアミノ安息香酸基が結合されたLiCMC(LiCMC-ABA)を含むので、チクソ性が改善され、保管性がよくなる物性を示す。前記正極スラリー組成物のチクソ性改善による保管性向上効果を考慮して、前記アミノ安息香酸基はメタアミノ安息香酸基である。前記チクソ性が増加したスラリーの場合、せん断応力が発生しない保管中にも粘性を維持する能力が増加して時間の経つことによるスラリーの上/下の組成変化が少なくて保管性が改善されることである。もし、スラリー内部の上/下の組成変化が起きると、スラリーコーティングの際にスラリー上/下の内部組成が相違するので、不均一にコーティングが行われる。
【0033】
以下、前記リチウム二次電池用正極スラリー組成物の各成分を中心として本発明をより詳しく説明する。
【0034】
本発明において、前記正極活物質は硫黄元素(Elemental sulfur、S)、LiSn(n≧1、nは整数である)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは整数である]からなる群から選択された1種以上を含むものである。好ましくは、前記正極活物質は硫黄元素を含むものである。
【0035】
また、前記正極活物質は前記正極スラリー組成物の固形分全体重量を基準にして60重量%ないし97重量%で含まれたものである。具体的に、前記正極活物質の含量は60重量%以上、70重量%以上または80重量%以上であり、91重量%以下、93重量%以下または97重量%以下である。前記正極活物質の含量が60重量%未満であれば、全体セル(cell)の電池容量が低下されることがあって、97重量%超であれば正極活物質を除いた導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤の中で1種以上の含量が相対的に低下されて前記正極スラリー組成物の流れ性、伝導性または物理的性質が低下されることがある。
【0036】
また、前記導電材は電気伝導性を向上させるためのもので、リチウム二次電池で化学変化を引き起こさない電気伝導性物質であれば特に制限されない。
【0037】
前記導電材はカーボンブラック(carbon black)、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末、導電性金属酸化物及び有機導電材からなる群から選択された1種以上を含むことができる。前記カーボンブラックは、ケッチェンブラック(ketjen black)、スーパーP(super P)、デンカブラック(denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)及びファーネスブラック(furnace black)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0038】
前記導電材は前記正極スラリー組成物の固形分全体重量を基準にして0.01ないし30重量%で含まれることができる。具体的に、前記導電材の含量は0.01重量%以上、2重量%以上または4重量%以上であり、10重量%以下、20重量%以下または30重量%以下である。前記導電材の含量が0.01重量%未満であれば正極の伝導性が低下されることがあるし、30重量%超であれば正極の柔軟性が低下されることがある。
【0039】
また、前記バインダーは正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結させ、これらの間の結着力をより高めるもので、当業界で公知された全てのバインダーを使用することができる。
【0040】
前記バインダーはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVdF)及び/またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブチジエンゴム及びスチレン-イソプレンゴムの中で1種以上を含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース及び再生セルロースの中で1種以上を含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン及びポリプロピレンの中で1種以上を含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;アクリル系単量体を含むアクリル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群から選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を使用することができる。本発明の一具体例によると、前記バインダーはゴム系バインダーの組み合わせが好ましい。また、前記バインダーはカルボキシメチルセルロース系増粘剤との相溶性を考慮する時、前記バインダーはSBR及び/またはアクリル系バインダーを含むものである。
【0041】
また、前記バインダーはエマルジョン型バインダーであってもよい。通常、正極バインダーの形態は正極内の成分を結合させることができれば、線状ポリマー(linear polymer)形態を使用してもよく、特に制限されない。しかし、前記エマルジョン型バインダーを使用する場合、正極成分を点と点の形態で最も効果的に結合させることができるし、接着力もよい効果がある。また、エマルジョン型バインダーを使用する場合、線状ポリマー(linear polymer)形態のバインダーと対比してスラリー固形分が増加する効果がある。
【0042】
また、前記バインダーは前記正極スラリー組成物の固形分全体重量を基準にして0.01ないし30重量%で含まれることができる。具体的に、前記バインダーの含量は0.01重量%以上、1重量%以上または2重量%以上であり、10重量%以下、20重量%以下または30重量%以下である。前記バインダーの含量が0.01重量%未満であれば結着力のような正極の物理的性質が低下して正極活物質と導電材が脱落することがあるし、30重量%超であれば正極活物質と導電材との割合が相対的に減少されて電池容量が減少することがある。
【0043】
また、前記増粘剤は前記正極スラリー組成物に適切な粘性を与えて前記正極スラリー組成物の安定性を確保することができるし、前記正極スラリー組成物を正極集電体にコーティングする時、固形分同士の再凝集現象を緩和させて表面不良を改善させることができる。
【0044】
前記増粘剤はリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose、LiCMC)を含むことができる。前記LiCMCは下記化学式1で表されるものである:
【0045】
<化学式1>
【化1】
【0046】
前記LiCMCは従来CMCの金属イオンをLiに置換したものである。従来CMCに含まれた金属イオンは、セルの内部で不純物として作動することがあってセルの性能を低下させることがあることに対し、LiCMCはこのようなセル内部の不純物を排除してリチウムイオンを含むので、不純物によるセルの性能低下を最小化することができる。
【0047】
また、前記LiCMCはアミノ基を含むアミノ安息香酸基(aminobenzoic acid group)が結合されたLiCMC(LiCMC-ABA)とともに使用されるので、スラリー内部で相互作用(水素結合)を変化させ、それによってせん断応力に対応するチクソ性を改善させることができる。また、前記LiCMCとLiCMC-ABAは基本的にCMC骨格(backbone)を維持しているので、LiCMCとLiCMC-MABAの混合の際に一塊となることを防ぐことができる。
【0048】
また、前記増粘剤は前記正極スラリー組成物の固形分全体重量を基準にして0.5重量%ないし5重量%で含まれたものである。具体的に、前記増粘剤の含量は0.5重量%以上、0.8重量%以上または1重量%以上であり、2重量%以下、3重量%以下または5重量%以下である。前記増粘剤の含量が0.5重量%未満であれば前記正極スラリー組成物の粘性が低くて水のように流れるので正極集電体上に前記正極スラリー組成物をコーティングすることができないし、5重量%超であれば粘性が高くてこってりしているので均一なコーティング層を形成しにくいことがある。
【0049】
前記正極スラリー組成物の粘度は特に制限されないし、増粘剤の含量によって粘度が可変的であるが、正極スラリー組成物の相安定性とコーティング工程の容易性に鑑みて、25℃で1000cP以上または4500cP以上である。
【0050】
また、前記添加剤は正極製造の際に前記正極スラリー組成物を正極集電体上にコーティングするコーティング工程で可変的なコーティング速度に対応できるようにするチクソ性を持たせることができる。
【0051】
前記添加剤はアミノ安息香酸基(aminobenzoic acid group)が結合されたLiCMC(LiCMC-ABA)を含み、前記LiCMC-ABAはメタアミノ安息香酸基が結合されたLiCMC(LiCMC-MABA)及びパラアミノ安息香酸基が結合されたLiCMC(LiCMC-PABA)からなる群から選択された1種以上を含むものである。前記LiCMC-MABAは下記化学式2で表され、下記LiCMC-PABAは下記化学式2で表されるものである:
【0052】
<化学式2a>
【化2】
【0053】
<化学式2b>
【化3】
【0054】
また、前記添加剤であるLiCMC(LiCMC-MABA)及びLiCMC(LiCMC-PABA)は、LiCMCにアミノ安息香酸基が結合された構造を持つ。従来CMC-PABA及びCMC-MABAは、COOH基(group)にHが存在するが、前記LiCMC(LiCMC-MABA)及びLiCMC(LiCMC-PABA)はCOOH基(group)のHがLiに置換されてLiイオン数をさらに増加させ、Hによる電気化学副反応を防ぐことができる。
【0055】
また、前記添加剤は前記正極スラリー組成物の固形分全体重量を基準にして0.01重量%ないし5重量%で含まれたものである。具体的に、前記添加剤の含量は0.01重量%以上、0.1重量%以上または0.3重量%以上であり、1.5重量%以下、3重量%以下または5重量%以下である。前記添加剤の含量が0.01重量%未満であれば前記正極スラリー組成物のチクソ性がよくなくて前記コーティング工程の際にコーティング速度が変化する時均一な厚さを持つコーティング層を形成することが難しく、5重量%超であればチクソ性が過度であって前記正極スラリー組成物の安定性がよくなくてコーティング層形成後に亀裂が発生することがある。
【0056】
また、前記溶媒は上述したような正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤と混合され、正極スラリー組成物を形成することができる溶媒であれば特に制限されずに使用されることができる。
【0057】
前記溶媒は有機溶媒及び/または水系溶媒を含むことができる。前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メトキシプロピルアセテート、ブチルアセテート、グリコール酸、ブチルエステル、ブチルグリコール、メチルアルキルポリシロキサン、アルキルベンゼン、プロピレングリコール、キシレン、モノフェニルグリコール、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリアクリレート、アルキルベンゼン、ジイソブチルケトン、有機変性ポリシロキサン、ブタノール、イソブタノール、変性ポリアクリレート、変性ポリウレタン、及びポリシロキサン変性ポリマーからなる群から選択された1種以上を含むことができる。前記水系溶媒は水を含むことができる。
【0058】
前記溶媒は正極スラリー組成物全体重量を基準にして55ないし70重量%である。具体的に、前記溶媒の含量は55重量%以上または57重量%以上であり、65重量%以下、67重量%以下または70重量%以下である。前記溶媒の含量が55重量%未満であれば前記正極スラリー組成物の濃度が過度に高くなってこってりしているので正極集電体上に前記正極スラリー組成物を均一にコーティングしにくく、70重量%超であれば前記正極スラリー組成物の濃度が過度に低くなって流れるのでコーティング工程で前記正極スラリー組成物をコントロールしがたいことがあるし、コーティング層形成後、乾燥時間が長く要されることがある。
【0059】
本発明において、前記正極スラリー組成物は下記数式1で表されるチクソ性指数Tが0.1ないし0.4のものである:
<数式1>
チクソ性指数T=(回転速度10rpmで正極スラリー組成物の粘度)/(回転速度1rpmで正極スラリー組成物の粘度)、
前記粘度は25℃で測定された。
【0060】
前記正極スラリー組成物はせん断応力が未作用した状態では粘性が増加し、せん断応力が作用した状態では粘性が減少する性質であるチクソ性を持つ。
【0061】
前記正極スラリー組成物を回転させると回転速度に比例するせん断速度(shear rate)によってせん断応力(shear stress)が加えられる原理を利用し、前記数式1のように回転速度1rpmで前記正極スラリー組成物の粘度に対する回転速度10rpmで前記正極スラリー組成物の粘度を利用してチクソ性を定義した。前記回転速度1rpmの時のせん断速度は0.29/sで、回転速度10rpmの時のせん断速度は2.9/sである。
【0062】
前記チクソ性指数Tが0.1未満であれば低い回転速度対比高い回転速度における粘度がとても低くて、前記正極スラリー組成物を正極集電体上にコーティングする工程でコーティング速度が変化する時有効なコーティング速度が制限され、0.4超であればコーティング速度が変化しても粘性変化が大きくないためスラリーの対応が難しいことがある。
【0063】
リチウム二次電池用正極スラリー組成物の製造方法
本発明はまた、リチウム二次電池用正極スラリー組成物の製造方法に関する。前記正極スラリー組成物の製造の際に使用された物質の種類と重量は上述したとおりである。
【0064】
前記正極スラリー組成物は、上述したような正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤を溶媒に添加し、混合して製造されることができる。
【0065】
前記混合はミリング(milling)によって実施されることができるが、当業界でスラリー形成のために使用する混合方法であれば特に制限されない。例えば、前記ミリングは、ビードミリング(bead milling)、ロールミリング(roll milling)、ボールミリング(ball Milling)、アトリションミリング(attrition milling)、遊星ボールミリング(planetary milling)、ジェットミリング(jet Milling)またはスクリュー混合(screw mixing)ミリングである。好ましくは、前記正極スラリー組成物に含まれた成分の均一な混合及び分散性を考慮してビードミリングを適用することができる。
【0066】
リチウム二次電池用正極
本発明はまた、正極集電体;及び前記正極集電体の一面に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー、導電材、増粘剤及び添加剤を含むものである、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0067】
本発明において、前記正極集電体は電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持ち、正極充電電圧で電気化学的に安定的に使用することができるものであれば特に制限されない。例えば、前記正極集電体は、銅、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上である。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されたものである。
【0068】
また、前記正極集電体の形態は特に制限されないし、フィルム、シート、ホイル(foil)、ネット(net)、多孔質体、発泡体または不織布体形態のものを使用することができる。必要に応じて、正極集電体の表面には微細な凹凸が形成されることができるし、前記凹凸は正極活物質層との接着力改善に役に立つことができる。前記正極集電体の表面に凹凸を形成する方法は特に制限されないし、例えば、機械的研磨法、電解研磨法または化学研磨法などの公知の方式が適用されることができる。
【0069】
また、前記正極集電体の厚さは特に制限されないし、正極の機械的強度、生産性または電池の容量を考慮して適切な範囲で設定することができる。例えば、前記正極集電体の厚さは通常3μmないし500μmである。
【0070】
本発明において、前記正極活物質層は上述したような正極スラリー組成物によって形成されたもので、正極活物質、バインダー、導電材、増粘剤及び添加剤を含むことができる。前記正極活物質、バインダー、導電材、増粘剤及び添加剤の種類及び含量は前述したとおりである。
【0071】
前記正極活物質層の厚さは特に制限されないし、正極の機械的強度、ローディング量または電池の容量を考慮して適切な範囲で設定することができる。例えば、前記正極活物質層の厚さは通常30μmないし300μmである。
【0072】
リチウム二次電池用正極の製造方法
本発明はまた、リチウム二次電池用正極の製造方法に関するもので、(S1)正極集電体の一面に前記正極スラリー組成物をコーティングする段階;(S2)前記(S1)段階で形成されたコーティング層を乾燥させる段階;及び(S3)前記コーティング層を圧延して正極活物質層を形成する段階;を含むことができる。
【0073】
前記(S1)段階では、正極集電体の一面に前記正極スラリー組成物をコーティングしてコーティング層を形成することができる。前記正極集電体と正極スラリー組成物は前述したとおりである。
【0074】
前記コーティング方法はスラリーをコーティングすることができる方法であれば特に制限されない。例えば、前記コーティング方法はバーコーティング、ロールツーロール(Roll-to-Roll)コーティング法、スピンコーティング、ノズルプリンティング、インクジェットプリンティング、スロットコーティング及びディップコーティングからなる群から選択される1種以上であり、好ましくはロールツーロールコーティング法である。
【0075】
前記のようなコーティング法を利用したコーティング工程において、コーティング速度が可変的である。コーティング条件によって最適化された乾燥条件を確立するためにコーティング速度が変わることがある。前記コーティング速度が可変的なのは、正極スラリー組成物を集電体に塗布して乾燥する過程で、前記正極スラリー組成物の性質によって溶媒乾燥速度が異なるためである。
【0076】
前記(S2)段階では、前記(S1)段階で形成されたコーティング層を乾燥させることができる。
【0077】
前記乾燥を通じて前記正極スラリー組成物内に含まれた溶媒が蒸発してレイヤー形態のコーティング層が形成されることができる。
【0078】
前記乾燥温度は良質の正極活物質層が形成されることができるように30℃以上、40℃以上または45℃以上であり、60℃以下、70℃以下または80℃以下である。
【0079】
前記(S3)段階では、前記(S2)段階で形成されたコーティング層を圧延して正極活物質層を形成することができる。
【0080】
前記圧延は当業界で使用される通常の圧延工程を導入することができるし、ロールプレスを利用して圧延することができる。例えば、前記ロールプレスを利用した圧延は、コーティング層が形成された正極集電体の上部と下部に2つのロールが配置された状態で、前記ロールで前記コーティング層が形成された正極集電体に圧力を加え、同時に前記コーティング層が形成された正極集電体を水平方向に移動させて実施されることができる。
【0081】
リチウム二次電池
本発明はまた、正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池に関する。
【0082】
本発明によるリチウム二次電池において、前記正極の構造、構成物質及び製造方法は前述したとおりである。
【0083】
本発明によるリチウム二次電池において、前記負極は負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質層を含むことができる。負極活物質層(一例として、リチウムホイル)を単独で使用することができる。
【0084】
前記負極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持つものであれば特に制限されないし、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は正極集電体と同様、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が使用されることができる。
【0085】
また、前記負極活物質は、結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパー-P、グラフェン(graphene)、繊維状炭素からなる群から選択される一つ以上の炭素系物質、Si系物質、LixFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe'(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物;ポリアセンチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを含むことができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0086】
これに加え、負極活物質はSnxMe1-xMe'(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi及びBiなどの酸化物などを使用することができるし、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独でまたは2種以上が混用されて使用されることができる。
【0087】
本発明によるリチウム二次電池において、前記電解液はリチウム二次電池の製造に通常使用されたものなどが全て使用されることができる。
【0088】
前記電解液で電解質として含まれることができるリチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものなどが制限されずに使用されることができるし、例えば、前記リチウム塩の陰イオンでは、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN及び(CFCFSOからなる群から選択されたいずれか一つである。前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、LiCNO)及び/またはLiNOである。
【0089】
本発明で使用される電解液において、電解液に含まれる有機溶媒では、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものなどを制限せずに使用することができる。 本発明の一具体例によると、前記有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒を使用することができる。 その中で代表的には、エーテル系溶媒を使用することができる。
【0090】
前記カーボネート系溶媒では、具体的にジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、またはブチレンカーボネート(BC)などが使用されることができる。
【0091】
前記エステル系溶媒では、具体的にメチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(carprolactone)などが使用されることができる。
【0092】
前記エーテル系溶媒では、具体的にジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、またはポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが使用されることができる。
【0093】
前記ケトン系溶媒では、具体的にシクロヘキサノンなどが使用されることができる。前記アルコール系溶媒では、具体的にエタノール、イソプロピルアルコールなどが使用されることができる。
【0094】
前記非プロトン性溶媒では、具体的にアセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)などが使用されることができる。
【0095】
前記非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用されることができるし、一つ以上混合して使用される場合の混合の割合は、目的とする電池の性能によって適切に調節することができる。
【0096】
本発明によるリチウム二次電池において、前記分離膜は当業界で分離膜で使用された通常の多孔性高分子フィルムを使用することができる。例えば、前記分離膜はポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができるし、または通常的な多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用することができるが、これに限定されない。
【0097】
本発明によるリチウム二次電池において、電池の形態は特に制限されないし、例えば、ゼリー-ロール型、スタック型、スタック-フォールディング型(スタック-Z-フォールディング型を含む)、またはラミネーション-スタック型であってもよく、好ましくは、スタック-フォールディング型である。
【0098】
また、前記リチウム二次電池は、前記負極、分離膜及び正極を順次積層させて電解液を注入した電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れた後で、キャッププレート及びガスケットで密封し、組み立てて製造されることができる。
【0099】
この時、リチウム二次電池は使用する正極/負極の材質によってリチウム-硫黄二次電池、リチウム-空気電池、リチウム-酸化物電池、リチウム全固体電池など多様な電池で分類可能であり、形態によって円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などに分類されることができるし、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これらの電池の構造と製造方法はこの分野に広く知られているので詳細な説明は省略する。
【0100】
本発明において、リチウム二次電池は正極として硫黄-炭素複合体を含む形態の正極材を使用するリチウム-硫黄二次電池である。前記リチウム-硫黄二次電池は負極活物質でリチウム金属を使用することができる。リチウム-硫黄二次電池の放電の際に負極ではリチウムの酸化反応が起きるし、正極では硫黄の還元反応が発生する。このとき、還元された硫黄は負極から移動されてきたリチウムイオンと結合してリチウムポリスルフィドに変換され、最終的にリチウムスルフィドを形成する反応を伴う。
【0101】
本発明はまた、前記リチウム二次電池を含む電池モジュールに係り、高容量及び高レート特性などが要求されるデバイスの電源で使用されることができる。前記デバイスの具体的な例では、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0102】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明であり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0103】
実施例1
(1)正極スラリー組成物の製造
正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤を90:5:3.5:1.05:0.45の重量比で混合した混合物を得た。前記正極活物質は硫黄(Sigma-Aldrich製品)をCNT(Carbon Nano tube)と一緒にボールミルを使用して混合した後、155℃で熱処理して得たS/CNT複合体で、導電材はデンカブラックで、バインダーはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)で、増粘剤はLiCMC(LiCMC1000、ジーエルケム)で、添加剤はLiCMC-MABAを使用した。
【0104】
前記混合物と水を混合して正極スラリー組成物を製造した。
【0105】
(2)正極製造
前記正極スラリー組成物を厚さ12μmのアルミニウムホイル(Al foil)正極集電体の一面にコーティングした後、50℃で2時間乾燥させて圧延して正極活物質層が形成された正極を製造した。
【0106】
(3)リチウム-硫黄二次電池製造
前記正極とリチウム負極の間に厚さ20μm及び気孔率45%の多孔性ポリエチレン分離膜を入れてケース内部に位置させた後、ケース内部に電解質を注入してCR-2032コインセル形態のリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0107】
前記電解質は1,3-ジオキソラン(DOL)と1,2-ジメトキシエタン(DME)の混合溶媒(1:1、v/v)に0.38MのLiTFSIと0.31MのLiNOを添加したものを使用した。
【0108】
実施例2
添加剤としてLiCMC-MABAの代わりにLiCMC-PABAを使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極スラリー組成物、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0109】
実施例3
増粘剤の重量を減少させて、正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤を90:5:3.5:0.45:1.05の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極スラリー組成物、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0110】
実施例4
増粘剤の重量を増加させて、正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤を85.55:5:3.5:5.5:0.45の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極スラリー組成物、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0111】
実施例5
添加剤の重量を減少させて、正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤を90:5:3.5:1.495:0.005の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極スラリー組成物、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0112】
実施例6
添加剤の重量を増加させて、正極活物質、導電材、バインダー、増粘剤及び添加剤を85:5:3.5:1:5.5の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極スラリー組成物、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0113】
比較例1
添加剤を使用せずに、正極活物質、導電材、バインダー及び増粘剤を90:5:3.5:1.5の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極スラリー組成物、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0114】
比較例2
増粘剤としてLiCMC(GB-Li1000、ジーエルケム)の代わりにCMC(D2200、Daicel)を使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で正極スラリー組成物、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0115】
実験例1:正極スラリー組成物の粘度、チクソ性指数及びレオロジー特性測定
実施例及び比較例で製造された正極スラリー組成物に対して、粘度を測定し、測定された粘度からチクソ性指数を計算し、レオロジー特性を測定して、その結果を下記表1及び図1に示す。
【0116】
前記粘度測定方法、チクソ性指数計算方法及びレオロジー特性測定方法は、下記のとおりである。
【0117】
(1)粘度測定
25℃のコンテナ(container)に前記正極スラリー組成物4mlを投入して、前記コンテナにSCP-16スピンドル(spindle)(Brookfield)を取り付けた。その後、前記SCP-16スピンドル(spindle)を1rpmないし10rpmの速度で回転させ、各回転速度で測定される粘度(cP)を記録した。粘度測定のための粘度計ではViscometer(DV2T、Brookfield)を使用した。
【0118】
(2)チクソ性指数計算
下記数式1を利用して正極スラリー組成物のチクソ性指数を計算した:
<数式1>
チクソ性指数T=(回転速度10rpmで正極スラリー組成物の粘度)/(回転速度1rpmで正極スラリー組成物の粘度)
前記粘度は25℃で測定された。
【0119】
(3)レオロジー特性測定
レオメーター(rheometer、DHR-1、TA instruments)に正極スラリー組成物1gを投入した後、0.1/sないし50/sの範囲で変化するせん断速度(shear rate)に対応するせん断応力(shear stress、Pa)を測定した。
【0120】
【表1】
【0121】
前記表1に示すように、実施例1は添加剤としてLiCMC-MABAを適量含む正極スラリー組成物として粘度が高く、チクソ性指数も高いことが分かる。
【0122】
また、実施例2は添加剤としてLiCMC-PABAを適量含む正極スラリー組成物であって、実施例1に比べては粘度が低くてチクソ性指数は類似なものとして表れた。
【0123】
また、実施例3は増粘剤の含量が実施例1に比べて相対的に低い場合であって、チクソ性指数が適切でスラリーコーティング工程で変化する速度に適切に対応することができる。しかし、粘度が低いので正極スラリー組成物の安定性がよくないこともあって、水のように流れるので正極集電体上に前記正極スラリー組成物をコーティングする工程に多くの時間が要されることもある。
【0124】
また、比較例1は添加剤を含まない正極スラリー組成物であって、スラリー形成に必要な粘性を与えることができず、スラリーが一塊となる現象が発生する。
【0125】
図1は、実施例1、2及び比較例1の正極スラリー組成物のせん断速度によるせん断応力変化を示すグラフである。
【0126】
図1を参照すれば、ヒステリシスループ(hysteresis loop)内部面積の大きさの差を確認することができるし、これによって実施例1のスラリーがチクソ性特性に優れることが分かる。
【0127】
実験例2:充放電特性評価
実施例及び比較例で製造されたCR-2032コインセル形態のリチウム-硫黄二次電池に対して、1.8Vないし2.5Vの電圧範囲内で0.1C充電/0.1C放電3回及び0.3C充電/0.5C放電を実施し、充放電特性を評価した。
【0128】
図2は実施例1及び比較例1のリチウム-硫黄二次電池に対する充放電特性を示すグラフで、図3は実施例2及び比較例1のリチウム-硫黄二次電池に対する充放電特性を示すグラフである。
【0129】
図2を参照すれば、実施例1のリチウム-硫黄電池は1105mAh/g水準の初期放電容量を示し、1080mAh/g水準の比較例1の放電容量に比べて上回る値を示し、100サイクル以上800mAh/g以上の放電容量を維持する寿命性能を示した。これは添加剤を含まない比較例1のリチウム-硫黄電池の放電容量維持と同等あるいは優位にある性能である。
【0130】
また、図3を参照すれば、実施例2のリチウム-硫黄電池は、同様に1100mAh/g水準の初期放電容量を示し、1080mAh/g水準の比較例1の放電容量に比べて上回る値を示し、100サイクル以上770mAh/g以上の放電容量を維持する寿命性能を示した。これは添加剤を含まない比較例1のリチウム-硫黄電池の放電容量維持と同等水準の性能である。
【0131】
これは本発明のリチウム-硫黄二次電池の正極スラリー用添加剤であるLiCMC-MABA及びLiCMC-PABAをLiCMCの代わりに添加しても充放電性能の劣化がないことを示す。
【0132】
このような結果は、アミノ安息香酸基と結合されたLiCMCの化学的特性によって、既存のLiCMCとの分散性が維持されながらもアミノ安息香酸基に存在するカルボキシル基及びペプチド基がポリスルフィドの吸着及び還元反応を手伝って硫黄系列物質が電解液に溶出されることを効果的に抑制したからである。
【0133】
以上、本発明はたとえ限られた実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されないし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と下記特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3