(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法およびその関連する二次電池、電池モジュール、電池パックならびに装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240815BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240815BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240815BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240815BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240815BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240815BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240815BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240815BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240815BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/443 B
H01M50/443 C
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/426
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/489
H01M50/403 D
(21)【出願番号】P 2022550987
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2020132954
(87)【国際公開番号】W WO2022110226
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】洪 ▲海▼▲藝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 建瑞
(72)【発明者】
【氏名】程 ▲叢▼
(72)【発明者】
【氏名】▲蘭▼ 媛媛
(72)【発明者】
【氏名】柳 娜
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲海▼族
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111916624(CN,A)
【文献】国際公開第2019/089492(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111244365(CN,A)
【文献】国際公開第2020/175292(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175079(WO,A1)
【文献】特開2017-098203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータであって、
基材と、
前記基材の少なくとも1つの表面に設置されるコーティングとを含み、
前記コーティングは、無機粒子および有機粒子を含み、前記有機粒子は、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成し、
前記第1の有機粒子の数平均粒子径
は8μm以上であり、かつ27μm以下であり、
前記第2の有機粒子の数平均粒子径
は2μm以上であり、10μm以下であり、かつ前記第2の有機粒子中の少なくともいくつかの粒子は、コア構造およびシェル構造を含むセパレータ。
【請求項2】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧12μmである請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径は、15μm~25μmである請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、3μm~8μmである請求項1~3のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、3μm~6μmである請求項1~4のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比≧2である請求項1~5のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比は、2.5~4である請求項1~6のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記第1の有機粒子は二次粒子である請求項1~7のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記第2の有機粒子は、一次粒子である請求項1~8のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~9のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアルキレン基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちの1種又は複数種を含む請求項1~10のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~11のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記第2の有機粒子におけるコア構造およびシェル構造が、それぞれ独立して、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種から選択される請求項1~12のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ独立して、アクリレート系モノマー単位とスチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位とスチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位と不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-アルキレン基モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種から選択する請求項1~13のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項15】
前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ独立して、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記各材料の変性化合物のうちの1種または複数種から選択する請求項1~14のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項16】
前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ、アクリレート系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマーおよびそれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~15のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項17】
前記シェル構造のガラス転移温度は、前記コア構造のガラス転移温度より高い請求項1~16のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項18】
前記セパレータは、
前記コア構造のガラス転移温度が-30℃~20℃であること、又は、
前記シェル構造のガラス転移温度が50℃~70℃であることの少なくとも1つを満たす請求項17に記載のセパレータ。
【請求項19】
前記セパレータは、
前記コア構造のガラス転移温度が-10℃~10℃であること、又は、
前記シェル構造のガラス転移温度が55℃~65℃であることの少なくとも1つを満たす請求項17又は18に記載のセパレータ。
【請求項20】
前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al
2O
3)、硫酸バリウム(BaSO
4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、二酸化スズ(SnO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO
2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、フッ化マグネシウム(MgF
2)のうちの1種または複数種を含む請求項1~19のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項21】
前記セパレータはさらに、
(1)前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合≦70%であることと、
(2)前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合≧12%であることと、
(3)前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合≦10%であることと、
(4)単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量≦3.0g/m
2であることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項1~20のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項22】
前記セパレータはさらに、
(1)前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合が60%~70%であることと、
(2)前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合が15%~25%であることと、
(3)前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合が2%~10%であることと、
(4)単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーテイングの重量が1.5g/m
2~2.5g/m
2であることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項1~21のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項23】
前記セパレータは、
(1)前記セパレータの透気度が100s/100mL~300s/100mLであることと、
(2)前記セパレータの横方向引張強度(MD)が1500kgf/cm
2~3000kgf/cm
2であることと、
(3)前記セパレータの縦方向引張強度(TD)が1000kgf/cm
2~2500kgf/cm
2であることと、
(4)前記セパレータの横方向破断伸びが50%~200%であることと、
(5)前記セパレータの縦方向破断伸びが50%~200%であることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項1~22のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項24】
前記セパレータは、
(1)前記セパレータの透気度が150s/100mL~250s/100mLであることと、
(2)前記セパレータの横方向引張強度が1800kgf/cm
2~2500kgf/cm
2であることと、
(3)前記セパレータの縦方向引張強度が1400kgf/cm
2~2000kgf/cm
2であることと、
(4)前記セパレータの横方向破断伸びが100%~150%であることと、
(5)前記セパレータの縦方向破断伸びが100%~150%であることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項1~23のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項25】
前記無機粒子および前記有機粒子は、前記コーティングにおいて不均一なトンネル構造を形成する請求項1~24のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項26】
任意の隣接する2つの無機粒子の間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子の間の間隔をL2とすると、L1<L2である請求項1~25のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法であって、
基材を提供するステップ(1)と、
無機粒子と、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも一側に塗布し、コーティングを形成し、乾燥させ、前記セパレータを得るステップ(3)とを含み、
乾燥後のコーティングは前記無機粒子、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記乾燥後のコーティングの表面に突起を形成し、前記第1の有機粒子の数平均粒子径
は8μm以上であり、かつ27μm以下であり、前記第2の有機粒子の数平均粒子径
は2μm以上であり、10μm以下であり、かつ前記第2の有機粒子中の少なくともいくつかの粒子は、コア構造およびシェル構造を含む製造方法。
【請求項28】
前記方法は、
(1)前記ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量が前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であることと、
(2)前記ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量が前記成分材料の乾物重量の合計の10%以下であることと、
(3)前記ステップ(2)において、重量を基準として、前記コーティングスラリーの固形分含有量が28%~45%であることと、
(4)前記ステップ(3)において、前記塗布は、線数が100LPI~300LPIであるグラビアロールを含む塗布機を使用することと、
(5)前記ステップ(3)において、前記塗布の速度が30m/min~90m/minであることと、
(6)前記ステップ(3)において、前記塗布の線速度比が0.8~2.5であることと、
(7)前記ステップ(3)において、前記乾燥の温度が40℃~70℃であることと、
(8)前記ステップ(3)において、前記乾燥の時間が10s~120sであることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
前記方法は、
(1)前記ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量が前記成分材料の乾物重量の合計の12%~30%であることと、
(2)前記ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量が前記成分材料の乾物重量の合計の2%~10%であることと、
(3)前記ステップ(2)において、重量を基準として、前記コーティングスラリーの固形分含有量が30%~38%であることと、
(4)前記ステップ(3)において、前記塗布は、線数が125LPI~190LPIであるグラビアロールを含む塗布機を使用することと、
(5)前記ステップ(3)において、前記塗布の速度が50m/min~70m/minであることと、
(6)前記ステップ(3)において、前記塗布の線速度比が0.8~1.5であることと、
(7)前記ステップ(3)において、前記乾燥の温度が50℃~60℃であることと、
(8)前記ステップ(3)において、前記乾燥の時間が20s~80sであることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項27又は28に記載の製造方法。
【請求項30】
請求項1~26のいずれか一項に記載のセパレータを含む二次電池。
【請求項31】
請求項30に記載の二次電池を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池技術分野に属し、具体的にはセパレータ、その製造方法およびそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パックならびに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は軽量で、汚染がなく、記憶効果がないなどの突出した特徴を有するため、各種の消費類電子製品や電動車両に広く適用されている。
【0003】
新エネルギー業界の発展に伴い、ユーザは二次電池に対してより高い使用要求を提出している。例えば、二次電池のエネルギー密度設計はますます高くなってきているが、電池のエネルギー密度の向上は、電気化学的性能または安全性能のバランスに不利である傾向がある。
【0004】
したがって、どのようにして電池にサイクル性能と安全性能とを両立させることができるかは、電池設計分野の重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術に存在する技術的課題に鑑み、本願はセパレータを提供し、それを含む二次電池が良好なサイクル性能と安全性能とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を実現するために、本願の第1態様は、基材と前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングとを含むセパレータを提供する。前記コーティングは、無機粒子および有機粒子を含み、前記有機粒子は、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する。前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧8μmである。前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであり、かつ前記第2の有機粒子中の少なくともいくつかの粒子は、コア構造およびシェル構造を含む。
【0007】
従来技術に対して、本願は少なくとも以下のような有益な効果を備える。本願のセパレータは同一コーティング中に無機粒子、第1の有機粒子と第2の有機粒子を含有し、かつ第1の有機粒子と第2の有機粒子の粒子径と構造に対して特別設計をし、上記条件の共同作用によって、セパレータと電極板の間の接着力を増強すると同時に、セパレータが適度かつ不均一な孔構造を有することを効果的に保証し、同時に、二次電池が高温で動作する時、第1および第2の有機粒子が大面積のゲル膜構造を形成することによってイオンの伝送通路を低減または遮断し、電池の熱拡散を遅延させ、これにより、電池のサイクル性能と高温での安全性能を効果的に向上させる。
【0008】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧12μmである。例えば、前記第1の有機粒子は、15μm~25μmの数平均粒子径を有することができる。第1の有機粒子の数平均粒子径が所定の範囲内にあると、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0009】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は3μm~8μmである。例えば、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、3μm~6μmである。前記第2の有機粒子の数平均粒子径が所定範囲内にある場合、電池のサイクル性能および安全性能をさらに向上させることができる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比≧2である。例えば、前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比は、2.5~4である。第1の有機粒子の数平均粒子径と第2の有機粒子の数平均粒子径との比が所定の範囲内にあると、電池のサイクル性能および安全性能をさらに向上させることができる。
【0011】
本願の任意の実施形態において、第1の有機粒子は二次粒子である。第1の有機粒子が二次粒子である場合、電池の安全性をさらに向上させることができる。
【0012】
本願の任意の実施形態において、第2の有機粒子は、一次粒子である。第2の有機粒子が一次粒子である場合には、電池のサイクル性能および安全性能をさらに向上させることができる。
【0013】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、および前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアルキレン基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0015】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0016】
本明細書の任意の実施形態において、第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ独立して、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物、および以上に記載の各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0017】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ独立して、アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-アルキレン基モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0018】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ独立して、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0019】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ、アクリレート系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマーおよびそれらの変性化合物のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0020】
第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造の材料を最適化することによって、電池のサイクル性能をさらに改善することができる。
【0021】
本願の任意の実施形態において、前記シェル構造のガラス転移温度は、前記コア構造のガラス転移温度より高くてもよい。前記シェル構造体のガラス転移温度が前記コア構造体のガラス転移温度よりも高い場合、電池のサイクル性能をさらに改善することができる。
【0022】
本願の任意の実施形態において、コア構造のガラス転移温度は、-30℃~20℃であってもよい。例えば、-10℃~10℃であってもよい。
【0023】
本願の任意の実施形態において、シェル構造のガラス転移温度は、50℃~70℃であってもよい。例えば、55℃~65℃であってもよい。
【0024】
本願の任意の実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)のうちの1種または複数種を含む。
【0025】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合≦70%であり、例えば、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合は60%~70%である。無機粒子の質量割合が所定範囲内に制御されると、セパレータの安全性を確保する前提で、電池の質量エネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0026】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合≧12%であり、例えば、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合は15%~25%である。第1の有機粒子の質量割合が所定の範囲内に制御されると、電池のサイクル性能および安全性能を改善することができる。
【0027】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合≦10%であり、例えば、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は2%~10%である。第2の有機粒子の質量割合が所定の範囲内に制御されると、電池のサイクル性能および安全性能を改善することができる。
【0028】
無機粒子、第1の有機粒子、または第2の有機粒子が上記の所定の範囲内にある場合には、三者がより良好な相乗作用を発揮することができ、これにより、電池のサイクル性能およびエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0029】
本願の任意の実施形態において、単位面積当たりのセパレータにおける片面コーティングの重量≦3.0g/m2である。単位面積当たりのセパレータの片面コーティングの重量は、1.5g/m2~2.5g/m2である。単位面積当たりのセパレータにおける片面コーティングの重量が所定範囲内にあると、電池のサイクル性能および安全性能を確保する前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0030】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの透気度は、100s/100mL~300s/100mLであってもよい。例えば、前記セパレータの透気度は、150s/100mL~250s/100mLであってもよい。
【0031】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの横方向引張強度(MD)は、1500kgf/cm2-3000kgf/cm2であってもよく、例えば、前記セパレータの横方向引張強度は1800kgf/cm2~2500kgf/cm2であってもよい。
【0032】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は、1000kgf/cm2~2500kgf/cm2であってもよく、例えば、前記セパレータの縦方向引張強度は1400kgf/cm2~2000kgf/cm2であってもよい。
【0033】
本願のいずれかの実施形態において、前記セパレータの横方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの横方向破断伸びは100%~150%であってもよい。
【0034】
本願のいずれかの実施形態において、前記セパレータの縦方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの縦方向破断伸びは100%~150%であってもよい。
【0035】
本願のいずれかの実施形態において、前記無機粒子と前記有機粒子はコーティングにおいて、不均一なトンネル構造を形成している。
【0036】
本願のいずれかの実施形態において、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である。
【0037】
本願の第2態様は、基材を提供するステップ(1)と、無機粒子と、第1の有機粒子と第2の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも片面に塗布してコーティングを形成し、乾燥させて前記セパレータを得るステップ(3)と、を含み、ここで、乾燥後のコーティングは、前記無機粒子、前記第1の有機粒子、および前記第2の有機粒子を含む。前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記乾燥後のコーティング表面に突起を形成する。前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧8μmである。前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであり、かつ前記第2の有機粒子中の少なくともいくつかの粒子は、コア構造およびシェル構造を含む。
【0038】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であり、任意選択的には、12%~30%である。
【0039】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の10%以下であり、任意選択的には、2%~10%である。
【0040】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記コーティングスラリーの固形分含有量は、重量で、28%~45%であり、任意選択的には30%~38%である。
【0041】
本願のいずれかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を利用し、前記塗布機はグラビアロールを備え、前記グラビアロールの線数は100LPI~300LPIであり、任意選択的には、125LPI~190LPIである。
【0042】
本願のいずれかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の速度は30m/min~90m/minであり、任意選択的には、50m/min~70m/minである。
【0043】
本願のいずれかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5であり、任意選択的には、0.8~1.5である。
【0044】
本願のいずれかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の温度は40℃~70℃であり、任意選択的には、50℃~60℃である。
【0045】
本願のいずれかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の時間は10s~120sであり、任意選択的には、20s~80sである。
【0046】
本願の第3態様は、本願の第1態様に基づくセパレータを含みか、又は本願の第2態様の方法に基づいて作製されるセパレータを含む二次電池を提供する。
【0047】
本願の第4態様は、本願の第3態様に基づく二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0048】
本願の第5態様は、本願の第4態様に基づく電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0049】
本願の第6態様は、本願の第3態様に基づく二次電池、本願の第4態様に基づく電池モジュール、又は本願の第5態様の電池パックのうちの少なくとも1つを含む装置を提供する。
【0050】
本明細書の装置は、本願で提供される二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少なくとも1つを含むので、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本願の技術案をより明確に説明するために、以下、本願に用いられる図面を簡単に説明する。明らかに、以下に記載の図面は本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を費やさない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0052】
【
図1】本願のセパレータの一実施形態の構造概略図である。
【
図2】本願のセパレータに用いられる第2の有機粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の写真である。
【
図3】本願のセパレータの一実施形態の3000倍の拡大倍率でのイオン研磨断面形状(CP)の写真である。
【
図4】本願のセパレータの一実施形態の、3000倍の拡大倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【
図5-1】本願のセパレータの一実施形態の構造概略図である。
【
図5-2】本願のセパレータの別の実施形態の構造概略図である。
【
図8】電池モジュールの一実施形態の概略図である。
【
図11】二次電池が電源として使用される装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下では具体的な実施形態を参照しながら、本願をさらに説明する。これらの具体的な実施形態は本願を説明するためのものにすぎず、本願の範囲を限定するものではないと理解されよう。
【0054】
簡単のために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを具体的に開示する。但し、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また、任意の下限は、他の下限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は、他の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また、個別に開示された各点又は単一の数値自体は、下限又は上限として、任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて或いは他の下限又は上限と組み合わせて明記しない範囲を形成することができる。
【0055】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、用語「または(or)」は包括的なものである。すなわち、[Aまたは(or)B]というフレーズは、「A、B又はAとBの両方」を意味する。より具体的には、Aが真(又は存在する)でありかつBが偽(又は存在しない)である条件と、Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)である条件と、また、AとBが共に真(又は存在する)である条件のいずれかも「A又はB」を満たしている。
【0056】
なお、本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「1種又は複数種」のうちの「複数種」は2種および2種以上を意味する。
【0057】
特に説明しない限り、本願で使用される用語は、当業者に通常理解される公知の意味を有する。特に説明しない限り、本願で言及された各パラメータの数値は、当分野でよく使われる各種の測定方法(例えば、本願の実施例に記載の方法)で測定することができる。
【0058】
二次電池
二次電池とは、電池の放電後に充電により活物質を活性化させて使用し続けることができる電池をいう。
【0059】
二次電池は、通常、正極板、負極板、セパレータおよび電解質を備えている。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間に往復して挿入や脱離をする。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、隔離の効果を果たす。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0060】
[セパレータ]
本願の実施例はセパレータを提供し、基材と前記基材の少なくとも1つの表面に形成されるコーティングとを含む。前記コーティングは無機粒子と有機粒子とを含む。前記有機粒子は、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する。前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧8μmである。前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであり、かつ前記第2の有機粒子中の少なくともいくつかの粒子は、コア構造およびシェル構造を含む。
【0061】
なお、前記有機粒子の数平均粒子径とは、セパレータコーティングにおいて、有機粒子数で統計する有機粒子の粒子径の算術平均値を意味する。前記有機粒子の粒子径とは、有機粒子において最も離れた2点間の距離である。
【0062】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、発明者らは、セパレータが同じコーティングにおいて無機粒子と有機粒子を含み、無機粒子層と有機粒子層の2つのコーティングを有するセパレータと比較して、セパレータの全体の厚さを大幅に減少させ、それによって電池のエネルギー密度を向上させる。ことを多くの研究により発見した。かつ有機粒子の中に特定の数平均粒子径と構造設計の第1の有機粒子と第2の有機粒子を含み、セパレータと電極板の間の接着性を効果的に増強することができる。同時に、第2の有機粒子が常温動作中に電解液中で膨潤して大面積のゲル膜を形成する確率を効果的に低下させることができ、セパレータに適度かつ不均一なトンネル構造を持たせ、イオンの輸送を容易にする。また、第1の有機粒子の存在はセパレータと極板を電池のサイクル過程中に適当な応力解放空間を有し、電池の化成過程におけるガス排出に有利であり、それによって電池のサイクル性能と安全性能を効果的に改善する。
【0063】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、本願のセパレータは、上記の条件を満たす上で、下記の条件のうちの1つまたは複数をさらに満たすことができれば、二次電池の性能をさらに向上させることができることを見出した。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧12μmである。前記第1の有機粒子の数平均粒子径は、15μm~25μmである。例えば、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は、12μm~23μm、13μm~22μm、15μm~20μm、12μm~18μmであってもよい。第1の有機粒子の数平均粒子径が所定の範囲内にあると、有機粒子間に十分な空隙を存在させることができ、電解液中で有機粒子が膨潤しても十分なイオン輸送通路を形成することができ、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は3μm~8μmである。例えば、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、3μm~6μm、3μm~5.5μm、4μm~5μmであってもよい。第2の有機粒子の数平均粒子径が所定の範囲内にあると、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。第2の有機粒子の数平均粒子径が小さすぎる場合(例えば、2μmより小さい)、それが電解液中で膨潤してゲル膜構造を形成しやすく、電池が正常に動作しているとき、イオン輸送通路を遮断し、これにより電池のサイクル性能に影響する。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比≧2である。例えば、前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比は、2.5~4、3~4.5、3~4であってもよい。前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比を選択することによって、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は二次粒子である。セパレータコーティング中に二次粒子形態の第1の有機粒子が含まれる場合、均一なコーティング界面の形成に寄与し、セパレータを電池に使用した場合、電池製造中のタブの位置ずれの問題を効果的に改善することができ、それによって電池の安全性能をさらに改善する。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、一次粒子である。セパレータコーティング中に一次粒子形態の第2の有機粒子が含まれる場合、粒子と粒子との間に大きな面積のゲル膜構造が形成されにくく、電池のサイクル性能および安全性能がさらに改善される。
【0069】
なお、一次粒子および二次粒子は、当該技術分野において周知の意味を有する。一次粒子とは、凝集状態になっていない粒子をいう。二次粒子とは、2つ又は2つ以上の一次粒子により聚集された凝集状態の粒子をいう。
【0070】
図1に示すように、前記セパレータは、基材(A)と、第1の有機粒子(B1)と第2の有機粒子(B2)と無機粒子(B3)とを含むコーティング(B)とを含み、第1の有機粒子(B1)は二次粒子であり、第2の有機粒子(B2)は一次粒子であり、第1の有機粒子と第2の有機粒子とはいずれも前記無機粒子(B3)に嵌めこまれ、かつ前記コーティング(B)の表面に突起が形成され、第2の有機粒子(B2)はコア構造とコア構造の表面に設置されるシェル構造を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、及び前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちのの1種または複数種を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記含フッ素アルキル基モノマー単位は、ジフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記アルキレン基モノマー単位は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンのうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記不飽和ニトリル系モノマー単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、アルキレンオキサイド系モノマー単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドのうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアルキレン基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド‐トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐トリフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン‐アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン‐アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ独立して、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物、および以上に記載の各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ独立して、アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、アクリル酸系モノマー単位-アクリレート系モノマー単位-スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位-アルキレン基モノマー単位-不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記アクリレート系モノマー単位は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレートのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記アクリル酸系モノマー単位は、アクリル酸、メタクリル酸のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記スチレン系モノマー単位は、スチレン、メチルスチレンのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記不飽和ニトリル系モノマー単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ独立して、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子中のコア構造およびシェル構造は、それぞれ、アクリレート系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマーおよびそれらの変性化合物のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0086】
前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物とは、各ホモポリマーまたはコポリマーにおけるモノマー単位と、特定官能基含有モノマー単位とを共重合して得られる変性化合物を意味する。例えば、含フッ素アルケニルモノマー単位を、カルボキシル官能基を含有する化合物と共重合させて、その変性化合物を得ることができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記コア構造とシェル構造は同じモノマー単位のコポリマーを含む。コア構造およびシェル構造材料のガラス転移温度は、当業者に公知の方法で、各モノリス単位の共重合比または重合プロセスを調整することによって調整することができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記シェル構造のガラス転移温度が前記コア構造のガラス転移温度より高温である。シェル構造は高いガラス転移温度を有するため、セパレータの製造過程において有機粒子間に融合が発生して連続的なゲル膜を形成する確率を効果的に低減し、セパレータのイオン伝送通路を改善することができ、さらに電解液中に電極板を良好に接着する能力を保持することができ、電極板とセパレータとをより良好に貼り合わせることができる。これにより、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、コア構造のガラス転移温度は、-30℃~20℃であってもよい。例えば、-10℃~10℃であってもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、シェル構造のガラス転移温度は、50℃~70℃であってもよい。例えば、55℃~65℃であってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、コア構造およびシェル構造の両方にアクリレートモノマー単位のコポリマーを含み、常温動作中の電解質中の第2の有機粒子の膨潤率を低下させるのに役立ち、さらに大きな面積のゲル膜構造の形成を回避し、それによって電池のサイクル性能をさらに改善するのに役立つ。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記コア構造および前記シェル構造の両方は、アクリル酸モノマー単位とスチレンモノマー単位とのコポリマーを含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)のうちの1種又は複数種を含むことができ、例えば、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子の体積平均粒子径Dv50≦2.5μmであり、例えば、前記無機粒子の体積平均粒子径Dv50は、0.5μm~2.5μm、1.5μm~2.5μm、0.3μm~0.7μmであってもよい。無機粒子の粒子径が所定範囲内に制御されると、セパレータがより良好なサイクル性能および安全性能の前提で、電池の体積エネルギー密度を向上させることを確保することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合は、前記コーティングの全質量を基準として≦70%である。例えば、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合は、60%~70%、65%~70%であってもよい。無機粒子の質量割合が所定範囲内に制御されると、セパレータの安全性を確保する前提で、電池の質量エネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合は、前記コーティングの全質量を基準として、≧12%である。例えば、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合は、12%~30%、15%~30%、15%~25%、15%~20%であってもよい。第1の有機粒子の質量割合が所定の範囲内に制御される場合、セパレータと電極板は電池のサイクル過程中に十分な応力解放空間を有し、電極板の界面をさらに改善することができ、同時に、適切な質量割合範囲はセパレータの電解液に対する消費量を低下させ、それによって電池のサイクル性能と安全性能をさらに改善することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は、前記コーティングの全質量を基準として≦10%であり、例えば、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は、2%~10%、3%~8%、4%~9%、5%~10%であってもよい。第2の有機粒子の質量割合が所定の範囲内に制御されると、セパレータコーティングは、接着性を保証するという前提で、適切なトンネル構造を有し、それによって、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善するのに役立つ。
【0098】
適当な無機粒子、第1の有機粒子と第2の有機粒子の含有量を選択することによって、三者により良好な協同作用を発揮させ、セパレータが安全性能を保証する前提で、さらに適当なトンネル構造を有すると同時に、セパレータの軽量化を実現することを確保し、それによって電池のエネルギー密度をさらに改善する。
【0099】
いくつかの実施形態において、単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーテイングの重量≦3.0g/m2であり、例えば、単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量は、1.5g/m2~3.0g/m2,1.5g/m2~2.5g/m2,1.8g/m2~2.3g/m2であってもよい。単位面積あたりのセパレータにおける片面のコーテイングの重量を所定の範囲に制御することで、電池サイクル性能および安全性能を確保した前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0100】
いくつかの実施例によれば、前記コーティングに他の有機化合物が含まれてもよく、例えば、耐熱性を改善するポリマー、分散剤、湿潤剤、他の種類の結合剤などが含まれてもよい。上記の他の有機化合物は、コーティングにおいていずれも非粒子状物質である。本願は、上記他の有機化合物の種類に特に制限がなく、任意の公知の良好な改善性能を有する材料を選択することができる。
【0101】
本願の実施例において、前記基材の材質について、特に限定されず、良好な化学的安定性および機械的安定性を有する任意の公知基材を選んで用いることができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプローレンおよびポリビニリデンフルーランドのうちの1種又は複数種である。前記基材は、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。前記基材が多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、前記基材の厚さ≦10μmである。例えば、前記基材の厚さは、5μm~10μm、5μm~9μm、7μm~10μmであってもよい。前記基材の厚さを所定の範囲に制御することで、電池サイクル性能および安全性能を確保した前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの透気度は100s/100mL~300s/100mLであってもよく、例えば、前記セパレータの透気度は、150s/100mL~250s/100mL、170s/100mL~220s/100mLであってもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの横方向引張強度(MD)は、1500kgf/cm2-3000kgf/cm2であってもよい。例えば、前記セパレータの横方向引張強度は1800kgf/cm2~2500kgf/cm2であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は1000kgf/cm2~2500kgf/cm2であってもよい例えば、1400kgf/cm2~2000kgf/cm2であってもよい。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの横方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの横方向破断伸びは100%~150%であってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの縦方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの縦方向破断伸びは100%~150%であってもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、有機粒子の粒子径および数平均粒子径は、当該技術分野において既知の装置および方法を用いて試験することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を使用し、JY/T010-1996を参照してセパレータの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を取得する。例として、以下のような方法によって測定することができる。セパレータ上で任意に1つの長さ×幅=50mm×100mmの試験サンプルを採取し、試験サンプル中で複数の試験領域(例えば5つ)をランダムに採取し、一定の拡大倍率(例えば、第1の有機粒子を測定した場合は500倍、第2の有機粒子を測定した場合は1000倍)で、各試験領域における各有機粒子の粒子径を読み取り(すなわち、有機粒子上の最も離れる2点間の距離を当該有機粒子の粒子径として取る)、各試験領域における有機粒子の数と粒子径の値を統計し、各試験領域における有機粒子の粒子径の算術平均値を取り、すなわち当該試験サンプルにおける有機粒子の数平均粒子径とする。試験結果の正確さを確実にするために、複数の試験試料(例えば、10個)を繰り返して試験を行い、各試験試料の平均値を最終試験結果とすることができる。
【0110】
いくつかの実施例によれば、コア構造およびシェル構造を含む第2の有機粒子の粒子構造は、当該技術分野において既知の装置および方法を用いて試験することができる。例として、以下のようなステップによって、操作することができる。一定の直径のマイクログリッド網(例えば直径3mm)を選択し、マイクログリッドのフィルム面を上に向けて(照明下で観察して光沢のある面、すなわちフィルム面を示す)、ホワイトフィルター上に軽く平らに置き、適当量の第2の有機粒子スラリーのサンプル(例えば10g)をビーカーに入れ、超音波振動を10min~30min行い、ガラス毛細管で吸引し、その後、2-3滴の測定待ちサンプルをマイクログリッド網上に滴下し、15min静置した後、滴下した測定待ちサンプルのマイクログリッド網をサンプル台上に置き、透過型電子顕微鏡(例えば日立HF-3300S Cs~corrected STEM)で試験し、測定待ちサンプルの透過型電子顕微鏡(TEM)の画像を得ることができる。
【0111】
図2は本発明の実施例における第2の有機粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
図2に示すように、第2の有機粒子は、コア構造と、コア構造の表面に設置されたシェル構造とを含む。
【0112】
いくつかの実施例によって、有機粒子の形状(例えば、一次粒子形状又は二次粒子形状)は、当分野で知られている機器および方法を用いて測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を使用して試験を行うことができる。例として、以下のようなステップによって、操作することができる。まずセパレータを一定のサイズの被測定サンプル(例えば、6mm×6mm)に裁断し、2枚の導電伝熱シート(例えば銅箔)で被測定サンプルを挟み、被測定サンプルとシートとの間に粘着剤(例えば両面テープ)で粘着して固定し、一定の質量(例えば400g程度)の歪取り鉄ブロックで一定の時間(例えば1h)押さえ、被測定サンプルと銅箔との間の隙間を小さくすればするほど好ましく、続いてはさみでエッジを切り揃え、導電性粘着剤を有するサンプル台に粘着し、サンプルがサンプル台のエッジから少し突出すればよい。次に、サンプル台をサイクルホルダに固定し、アルゴンイオン断面研磨装置(例えば、IB-19500CP)の電源をオンにし、真空(例えば、10Pa-4Pa)を引き、アルゴン流量(例えば、0.15MPa)と電圧(例えば、8KV)および研磨時間(例えば、2時間)を設定し、サンプル台を揺動モードに調整して研磨を開始し、研磨終了後、走査電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて、測定待ちサンプルのイオン研磨断面形状(CP)画像を得る。
【0113】
図3は本願の実施例のセパレータの3000倍の拡大倍率でのイオン研磨断面形状(CP)写真である。
図3から分かるように、セパレータのコーティングは、第1の有機粒子と第2の有機粒子の両方を含み、第1の有機粒子は、複数の一次粒子からなる二次粒子であり、不規則な非中実球断面であり、第2の有機粒子の非凝集体の一次粒子は、中実球の断面である。
【0114】
いくつかの実施例によって、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔とは、セパレータのSEM図像において、コーティングから、隣接する2つの無機粒子(無機粒子が不規則な形状である場合、この粒子に対して、外接円処理を行うことができる)を任意に取り、両無機粒子の中心間距離を、両無機粒子間の間隔として測定し、L1とする。
【0115】
いくつかの実施例によって、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔とは、セパレータのSEM画像において、コーティングから隣接する1つの無機粒子および1つの有機粒子(無機粒子または有機粒子が不規則な形状である場合には、当該粒子を外接円処理することができる)を任意に取り、無機粒子と有機粒子との間隔として、当該無機粒子と当該有機粒子との間の円心間隔を試験し、L2と記す。上記有機粒子は、第1の有機粒子を取ってもよいし、第2の有機粒子を取ってもよい。
【0116】
上記間隔は当分野で知られている器具で測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡で測定することができる。例として、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔L2は以下の方法によって測定することができる。セパレータを縦×横=50mm×100mmの試料に作製し、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma300)を用いて、セパレータを測定する。JY/T010-1996を参照して測定することができる。試料から領域をランダムに選択し、走査測定を行い、一定の拡大倍率(例えば、3000倍)で、セパレータのSEM図像を取得し、SEM図像において、隣接する無機粒子と有機粒子(無機粒子又は有機粒子は不規則体である場合、この粒子に対して外接円処理を行うことができる)を任意に選択し、無機粒子(又はその外接円)の中心と有機粒子(又はその外接円)の中心との距離を計測し、本願に記載の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔であり、L2とする。測定結果の正確性を確保するために、試料において複数組の隣接する粒子(例えば10組)を取って上記測定を繰り返し、各組の測定結果の平均値を最終的な結果とする。
【0117】
同様に、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔L1についても、上記方法で、測定することができる。
【0118】
図4は、本願の実施例のセパレータの3000倍の拡大倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図4から分かるように、セパレータのコーティングには、無機粒子、第1の有機粒子および第2の有機粒子が含まれ、第1の有機粒子は二次粒子であり、第2の有機粒子は一次粒子であり、かつ第1の有機粒子および第2の有機粒子は無機粒子に嵌めこまれ、コーティング表面に突起を形成する。上記に記載の方法で計測したところ、L1<L2を得た。
【0119】
いくつかの実施形態によって、有機粒子の物質の種類は、当分野で知られている機器および方法を使用して測定することができる。例えば、材料の赤外スペクトルを試験し、それに含まれる特性ピークを確定して、さらに材料の種類を確定することができる。具体的には、当該技術分野において周知の装置および方法を用いて、有機粒子に対して、例えば、Nicolet社のIS10タイプのフーリエ変換赤外分光計を用いて、GB/T6040~2002赤外分光分析法にしたがって、赤外分光分析を行って試験することができる。
【0120】
いくつかの実施形態によれば、無機粒子の体積平均粒子径Dv50は、当該技術分野において周知の意味であり、当該技術分野において既知の装置および方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T 19077-2016レーザー回折式粒度分布法を参照し、レーザー粒度分析計(たとえば、Master Size 3000)を使用して測定できる。
【0121】
いくつかの実施例によって、セパレータの透気度、横方向引張強度(MD)、縦方向引張強度(TD)、横方向破断伸び、縦方向破断伸びは、いずれも当分野で公知されている意味を有し、当分野で知られている方法で計測することができる。例えば、いずれもGB/T 36363~2018規格に基づき測定することができる。
【0122】
本願はさらに、
基材を提供するステップ(1)と、
コーティングスラリーを提供し、無機粒子と、第1の有機粒子との有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも一側に塗布し、コーティングを形成し、乾燥させ、前記セパレータを得るステップ(3)とを含み、
ここでは、乾燥後のコーティングは無機粒子、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は前記無機粒子に嵌めこまれ,且つ前記乾燥後のコーティング表面に突起を形成する。前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧8μmであり、前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧2μmであり、かつ前記第2の有機粒子中の少なくともいくつかの粒子は、コア構造およびシェル構造を含む。
【0123】
図5-1に示されるように、セパレータ(10)は、基材(A)と、基材(A)の片面のみに設置されたコーティング(B)とを含む。
【0124】
図5-2に示すように、セパレータ(10)は、基材(A)と、基材(A)の両面に同時に配置されたコーティング(B)とを含む。
【0125】
本願の実施例において、前記基材の材質について、特に限定されず、良好な化学的安定性および機械的安定性を有する任意の公知基材を選んで用いることができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプローレンおよびポリビニリデンフルーランドのうちの1種又は複数種である。前記基材は、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。前記基材が多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記溶媒は水であってもよく、例えば、脱イオン水である。
【0127】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記成分材料は、他の有機化合物、例えば、耐熱性を改善するポリマー、分散剤、湿潤剤、乳液状の結合剤などを含んでもよい。これらのうち、他の有機化合物は、乾燥後のコーティング中にすべて非粒子状である。
【0128】
いくつかの実施形態においては、ステップ(2)において、溶媒に組成材料を加えて均一に攪拌してコーティングスラリーを得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であり、例えば、12%~30%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、16%~22%である。
【0130】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の10%以下であり、例えば、2%~10%、3%~7%、3%~5%である。
【0131】
適切な含有量の有機粒子は電池作製過程においてセパレータと電池巻取工具(例えば、巻針)又は積層工具との間に発生する静電気を減少することができ、正負極が短絡する確率を効果的に低減させ、電池の製造効率を向上させる。
【0132】
なお、組成材料が固形である場合、組成材料の乾物重量は、この組成材料の添加質量である。組成材料が懸濁液、エマルジョンまたは溶液である場合、組成材料の乾物重量は、この組成材料の添加質量とこの組成材料の固形分含有率との積である。前記組成材料の乾物総重量は、各組成材料の乾物重量の合計である。
【0133】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、コーティングスラリーの固形分含有量は、重量を基準として、28%~45%、例えば30%~38%に制御することができる。コーティングスラリーの固形分含有率が上記範囲にある場合、コーテイングの膜面問題および塗布ムラの発生確率を効果的に低減することができ、電池のサイクル性能および安全性能のさらなる改善が図れる。
【0134】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を用いて行われる。
【0135】
本願の実施例において、塗布機の型式は特に限定されず、市販の塗布機を用いることができる。
【0136】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は転写塗布、回転スプレー、浸漬塗布などのプロセスを用いることができ、例えば、前記塗布には、転写塗布が用いられる。
【0137】
いくつかの実施形態において、前記塗布機はグラビアロールを含み、前記グラビアロールは、コーティングスラリーを基材に転移するために使用される。
【0138】
いくつかの実施形態において、前記グラビアロールの線数は、100LPI~300LPIであってもよく、例えば、125LPI~190LPI(LPIは線/インチである)であってもよい。グラビアロールの線数が上記範囲にある場合、第1の有機粒子と第2の有機粒子の数を制御することに寄与し、セパレータのサイクル性能および安全性能のさらなる改善が図れる。
【0139】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の速度は30m/min~90m/minに、例えば、50m/min~70m/minに制御することができる。塗布の速度が上記範囲にある場合、コーテイングの膜面問題を効果的に低減し、塗布ムラの発生確率を低減し、電池のサイクル性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5に制御することができ、例えば、0.8~1.5、1.0~1.5であってもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の温度は、40℃~70℃であってもよく、例えば、50℃~60℃であってもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の時間は、10s~120sであってもよく、例えば、20s~80s、20s~40sであってもよい。
【0143】
上記の各プロセスパラメータを所定の範囲に制御することにより、本願に係るセパレータの使用性能をさらに改善することができる。当業者は実際の生産状況に基づき、上記1つ又は複数のプロセスパラメータを選択的には、調節制御することができる。
【0144】
前記無機粒子および前記有機粒子は、二次電池の性能をさらに改善するために、選択可能には、さらに上記した各パラメータ条件のうちの1つまたは複数を満たす。ここでは説明を省略する。
【0145】
上記基材、第1の有機粒子および第2の有機粒子は、いずれも市販されるものである。
【0146】
本願の実施例のセパレータの製造方法は、一次塗布で、コーティングを製造し、セパレータの生産プロセスを大幅に簡略化する。また、上記方法で作製されたセパレータを電池に適用して、電池のサイクル性能および安全性能を効果的に改善することができる。
【0147】
[正極板]
この二次電池では、前記正極板は、通常、正極集電体と、正極集電体に設けられ正極活物質を含む正極膜層とを有している。
【0148】
前記正極集電体としては、通常の金属箔片や複合集電体を用いることができる(金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)。例として、正極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
前記正極活物質の具体的な種類は限定されず、二次電池の正極に適用可能で当分野で知られている活物質を採用することができ、当業者は実際の要求に応じて選択することができる。
【0149】
例として、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン型リチウム含有リン酸塩、およびこれらのそれぞれの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。リチウム遷移金属酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、マンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン型リチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。これらの材料は商業的ルートから入手可能である。
【0150】
上記各材料の改質化合物は、材料をドープ改質および/または表面被覆改質したものであってもよい。
【0151】
正極膜層は、一般には、選択可能には、接着剤、導電剤およびその他の選択可能な助剤を含む。
【0152】
例として、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、Super P(SP)、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0153】
例として、接着剤はスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0154】
[負極板]
この二次電池では、前記負極板は、通常、負極集電体と、負極集電体に設けられ負極活物質を含む負極膜層とを有している。
【0155】
前記負極集電体としては、通常の金属箔片や複合集電体を用いることができる(例えば、金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)。例として、負極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0156】
前記負極活物質の具体的な種類は限定されず、二次電池の負極に適用可能で当分野で知られている活物質を採用することができ、当業者は実際の要求に応じて選択することができる。例として、前記負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素系材料および錫系材料のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素酸化物(例えば、一酸化ケイ素)、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素複合体、ケイ素合金のうちの1種又は複数種から選択することができる。前記錫系材料は、単体錫、錫酸化物、錫合金のうちの1種または複数種から選択することができる。これらの材料は商業的ルートから入手可能である。
【0157】
いくつかの実施形態において、電池のエネルギー密度を増加させるために、前記負極活物質は、シリコン系材料を含むことができる。
【0158】
負極膜層は、一般には、選択可能には、接着剤、導電剤およびその他の選択可能な助剤を含む。
【0159】
例として、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0160】
例として、接着剤はスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0161】
例として、他の任意選択的な補助剤は、増粘剤および分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料であってもよい。
【0162】
[電解液]
この二次電池は、正極と負極との間でイオンを伝導する役割を果たす電解液を含んでもよい。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含んでいてもよい。
【0163】
例として、電解質塩は、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(リチウムヘキサフルオロアルセネート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラトホウ酸リチウム)、LiBOB(リチウムビス(オキサラト)ボレート)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)およびLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0164】
例として、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)およびジエチルスルホン(ESE)のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0165】
いくつかの実施形態において、電解液には添加剤がさらに含まれる。例えば、添加剤は負極成膜添加剤を含んでもよいし、正極成膜添加剤を含んでもよいし、電池の特定の性能を改善する添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤を含んでもよい。
【0166】
いくつかの実施形態において、二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。
【0167】
本願の実施例は、二次電池の形状について、特に限定せず、円筒形、角形、その他の任意の形状であってよい。
図6は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0168】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。前記外装は正極シート、負極シートと電解質を包装するために用いられる。
【0169】
いくつかの実施形態において、
図7を参照すると、外装は、筐体51およびカバープレート53を含むことができる。そのうち、ハウジング51は底板および底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板は囲んで収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を閉塞するように前記開口に覆設可能である。
【0170】
正極板、負極板およびセパレータは、巻取工程または積層工程を経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室に封入されている。電解質は、電極アセンブリ52内に浸漬される電解質の溶液を使用することができる。二次電池5に含まれる電極ユニット52の数は、1つまたは複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0171】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどの硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、軟包装でもよく、例えば、袋型軟包装である。ソフトパックの材質はプラスチックでよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)の1種または複数種を含むことができる。
【0172】
いくつかの実施形態において、二次電池は電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの用途および容量に応じて調整してもよい。
【0173】
図8は、一例としての電池モジュール4である。
図8を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の縦方向に沿って順に並べて設けられてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0174】
電池モジュール4はまた、複数の二次電池5を収容する収容空間を有するハウジングを含むことができる。
【0175】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途および容量に応じて調整されてもよい。
【0176】
図9および
図10は、一例としての電池パック1である。
図9および
図10を参照すると、電池パック1には、電池ケースと、電池ケースに設けられた複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は下ケース3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池ケースに配列することができる。
【0177】
装置
本願は、前記装置は前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少ないとも1つを備える装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュールまたは電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー蓄積ユニットとして用いられてもよい。装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン)、電気自動車(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラック)、電気列車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システムであってもよいが、これらに限定されない。
【0178】
前記装置は、その使用要求に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択することができる。
【0179】
図11は、一例としての装置である。当該装置は純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車である。この装置は二次電池に対する高出力および高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0180】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレット型コンピュータ、ノート型コンピュータであってもよい。この装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0181】
以下には、実施例を参照して本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0182】
本願の実施例が解決しようとする課題、技術的解決策および有益な効果をより明確にするために、以下、実施例および図面によって出願をさらに詳細に説明する。明らかに、説明された実施例は本願のいくつかの実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。以下、少なくとも1つの例示的な実施例についての記載は、本質的に説明するためのものに過ぎず、決して本願およびその適用に対する如何なる限定でもない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしない前提で得られる他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものである。
【0183】
一、セパレータの作製
セパレータ1:
(1)PE基材を提供し、例えば、基材の厚さは7μmであり、空隙率は40%であり、
(2)コーティングスラリーを調製し、無機粒子のアルミナ(Al2O3)、第1の有機粒子のビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロペンコポリマー、第2の有機粒子のスチレン-酢酸ビニル-トリデカノンコポリマー、分散剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、湿潤剤の有機ケイ素変性ポリエーテルを乾物重量比で70:20:8:1:1で適量の溶剤脱イオン水中に均一に混合し、固形分含有量38%(重量)のコーティングスラリーを得る。ここでは、無機粒子のアルミナ(Al2O3)の体積平均粒子径Dv50は1μmであり、第1の有機粒子は二次粒子であり、かつ数平均粒子径は8μmであり、第2の有機粒子は一次粒子であり、かつ数平均粒子径は4.8μmであり、第2の有機粒子の少なくとも一部はコア構造とシェル構造を含み、かつシェル構造のガラス転移温度は58℃であり、コア構造のガラス転移温度は20℃である。
(3)ステップ(2)で調製したコーティングスラリーをPE基材の2つの表面に塗布機で塗布し、乾燥、ストライプ化ステップによりセパレータ1を得る。ここでは、塗布機のグラビアロールの線数は125LPIであり、塗布の速度は50m/minであり、塗布の線速度比は1.15であり、乾燥温度は50℃であり、乾燥時間は25sであり、単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量は、2.3g/m2である。
【0184】
実施例で使用した材料は全て市販されている。例えば、基材は上海恩捷新材料有限公司から購入することができる。
【0185】
無機粒子は、壹石通材料科技股フン有限公司から購入することができる。
【0186】
第1の有機粒子は、阿科瑪(常熟)化学有限公司から購入することができる。
【0187】
第2の有機粒子は、四川茵地楽科技有限公司から購入することができる。
【0188】
分散剤は、常熟威怡科技有限公司から購入することができる。
【0189】
湿潤剤は陶氏化学公司から購入することができる。
【0190】
セパレータ2-34は、セパレータ1の製造方法と類似しているが、異なる点は以下の通りである。第1の有機粒子と第2の有機粒子の物質種類、および第1の有機粒子と第2の有機粒子の数平均粒子径を調整し、具体的には表1を参照する。
【0191】
二、電池の作製
実施例1
1. 正極板の作製
正極活物質LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)、導電剤カーボンブラック(Super P)、バインダーのポリビニリデンフルオリド(PVDF)を質量比96.2:2.7:1.1で適量の溶媒N-メチルピロリドン(NMP)に均一に混合して正極スラリーを得て、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔上に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストライプ化、切断のプロセスにより正極シートを得る。正極面密度は0.207mg/mm2であり、圧密密度は3.5g/cm3である。
【0192】
2. 負極の作製
負極活物質の人造黒鉛、導電剤のカーボンブラック(Super P)、バインダーのスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比96.4:0.7:1.8:1.1で適量の溶媒の脱イオン水に均一に混合して負極スラリーを得て、負極スラリーを負極集電体銅箔に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストライプ化、切断のプロセスにより負極シートを得る。負極面密度は0.126mg/mm2であり、圧密密度は1.7g/cm3である。
【0193】
3. セパレータ
セパレータは上記に作製されたセパレータ1を使用する。
【0194】
4. 電解液の作製
エイチカーボンネット(EC)とエイチカーボンネット(EMC)とを質量比30:70で混合して有機溶媒を得、十分に乾燥した電解質塩LiPF6を上記混合溶媒に溶解し、電解質塩の濃度を1.0mol/Lとして均一に混合して電解液を得た。
【0195】
5. 二次電池の作製
正極板、セパレータ、負極板を順に積み重ね、セパレータを正、負極板の間に介在させて隔離の役割を果たし、続いて巻き取って電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装に入れ、上記で調製した電解液を乾燥後の二次電池に注入し、真空封止、静置、化成、整形工程を経て二次電池を得た。
【0196】
実施例2-26および比較例1-8の二次電池は、実施例1の二次電池の製造方法と類似しているが、異なるセパレータを用いた点で異なり、具体的には表1を参照されたい。
【0197】
三、電池性能測定
1.25℃サイクル性能
25℃で、実施例および比較例で製造した二次電池を1C倍率で充電カットオフ電圧4.2Vまで定電流充電した後、定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、5min静置し、さらに0.33C倍率で放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、5min静置し、このときの電池容量C0を記録する。この方法で電池に対してサイクル充放電を1500回行い、1500回のサイクル後の電池容量をC1と記録する。
【0198】
電池の25℃でのサイクル容量維持率=C1/C0×100%
【0199】
2.45℃サイクル性能
45℃で、実施例および比較例で製造した二次電池を1C倍率で充電カットオフ電圧4.2Vまで定電流充電した後、定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、5min静置し、さらに0.33C倍率で放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、5min静置し、このときの電池容量C0を記録する。この方法で電池に1500サイクルの充放電を行い、そのときの電池容量をC1と記録する。
【0200】
電池の45℃でのサイクル容量維持率=C1/C0×100%
【0201】
3.ホットボックス試験
25℃で、実施例と比較例で製造した二次電池を1C倍率で充電カットオフ電圧4.2Vまで定電流充電し、その後定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、5min静置する。次にDHG-9070A DHGシリーズ高温オーブンの中でクランプを付けて各電池をテストし、5℃/minの速度で室温から80℃±2℃まで上昇させ、30min保持する。その後さらに5℃/minの昇温速度で昇温し、セルが失効するまで、5℃昇温する毎に、30min保温する。セルが失効し始めたときの温度を記録する。
【0202】
表1には測定された実施例および比較例の電池性能を示す。
【0203】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0204】
表1から分かるように、本明細書で定義される特定の粒子径および構造の第1および第2の有機粒子を使用することによって、電池のサイクル性能および安全性能を著しく改善することができる。特に、第1の有機粒子と第2の有機粒子との数平均粒子径、両者の比、および物質種類をさらに最適化することにより、サイクル性能および安全性能を一層向上させることができる。対照的に、第1の有機粒子のみを使用した比較例1、2および第2の有機粒子がコア-シェル構造を有しない比較例3、4、7は、サイクル性能および安全性能の両方において、本発明の実施例1-26よりも劣っていた。比較例5、6、8は、コア-シェル構造を有する第2の有機粒子を使用したが、第1の有機粒子の数平均粒子径または第2の有機粒子の数平均粒子径が本発明の範囲内にないため、良好なサイクル性能および安全性能を得ることができない。
【0205】
本発明者らはまた、本願の範囲内の無機粒子、第1の有機粒子および第2の有機粒子の他の使用量および材質、他の基材、他の塗布プロセスパラメータおよび他の乾燥条件を用いて実験を行い、実施例1-26と同様の電池のサイクル性能および安全性能を向上させる効果を得る。
【0206】
以上の内容は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な変更や置き換えを容易に想到でき、これらの変更や置き換えは、いずれも本願の保護範囲に属するものである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0207】
1 電池パック
2 上ケース
3 下ケース
4 電池モジュール
5 二次電池
10 セパレータ
51 筐体
51 ハウジング
52 電極ユニット
52 電極アセンブリ
53 蓋板
53 カバープレート