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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】粘着剤層付き異形偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240815BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240815BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022551148
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2021023742
(87)【国際公開番号】W WO2022064796
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2020160961
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 翔
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215573(JP,A)
【文献】国際公開第2006/009250(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141380(WO,A1)
【文献】特開2016-173589(JP,A)
【文献】特開2011-122104(JP,A)
【文献】特表2009-516048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/022-023
B32B 27/00
C09J 7/38
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の両面にフィルムが設けられた異形偏光板の少なくとも一方の面に粘着剤層を有し、
前記異形偏光板の形状が、円形、穴部を有する形状またはノッチ(凹部)を有する形状の偏光板であり、
前記粘着剤層が、芳香環含有モノマーを含むモノマー成分を共重合して得られた(メタ)アクリル系ポリマーを含有する層であり、かつ、下記要件(I)または(II)を満たす、
粘着剤層付き異形偏光板。
要件(I):前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率が、2.0×104~1.0×105Paである
要件(II):前記粘着剤層のゲル分率が10~50質量%である
【請求項2】
前記粘着剤層の光弾性係数が-400×10-12~400×10-122/Nである、請求項1に記載の粘着剤層付き異形偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、粘着剤層付き異形偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、薄型、軽量でかつ消費電力が小さいことから、テレビ、ノートパソコン、モニター、スマートフォン等に広く用いられている。液晶表示装置は、液晶セルの両側に粘着剤で偏光板を貼合した液晶パネル部材を有し、バックライト部材からの光を液晶パネル部材で制御することにより表示が行われている。
【0003】
LCDは、その主面の形状が長方形であることが一般的であるが、近年、スマートフォンや車載モニター等に使用されるLCDには、長方形や正方形以外の形状(異形)の表示装置が採用される場合があり、この場合には、粘着剤層付き異形偏光板が用いられている。
【0004】
このような粘着剤層付き異形偏光板として、例えば特許文献1には、偏光板の粘着剤層が形成される面において、粘着剤層と接触しない非接触部が偏光板端部に形成されていることを特徴とする粘着剤層付き偏光板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-90896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記偏光板としては、その力学的性質および光学的耐久性を向上させるため、一般的に、偏光機能を有する偏光子の一方の面または両面に、トリアセチルセルロースフィルム等の偏光子保護フィルムが積層された構造が採用されている。また、外光反射等の問題を抑制するために、偏光子位相差フィルムが積層された構造が採用されることもある。
これら偏光板を構成する各材料(各層)はそれぞれ異なる物理・化学的特性を有しているため、温度や湿度の影響による収縮や膨潤の寸法変化の度合いや、各材料に生じる応力がそれぞれ異なるが、従来の主面の形状が長方形や正方形である偏光板では、この寸法変化や応力に伴う問題がそれほど大きいものではなかった。
【0007】
一方で、近年使用されている偏光子の両面にフィルムが設けられた異形偏光板では、前記寸法変化や応力に伴い、光漏れが顕著に生じることが分かった。
しかしながら、前記従来の粘着剤層付き偏光板では、このような光漏れを十分に抑制することはできず、この点で改良の余地があった。
【0008】
本発明の一実施形態は、偏光子の両面にフィルムが設けられた異形偏光板を用いる場合に顕著に生じ得る光漏れを抑制できる、特に、高温下で長時間経過後であっても該光漏れを抑制できる粘着剤層付き異形偏光板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、下記構成例によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は以下の通りである。
なお、本明細書では、「偏光板」は「偏光フィルム」を包含する意味で用い、本明細書において、板、フィルム、シート等に特に区別はない。
【0010】
[1] 偏光子の両面にフィルムが設けられた異形偏光板の少なくとも一方の面に粘着剤層を有し、
前記異形偏光板が、その主面の形状が正方形および長方形以外の形状の偏光板であり、
前記粘着剤層が、下記要件(I)または(II)を満たす、
粘着剤層付き異形偏光板。
要件(I):前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率(G')が、2.0×104~1.0×105Paである
要件(II):前記粘着剤層のゲル分率が10~50質量%である
【0011】
[2] 前記粘着剤層の光弾性係数が-400×10-12~400×10-122/Nである、[1]に記載の粘着剤層付き異形偏光板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、偏光子の両面にフィルムが設けられた異形偏光板を用いる場合に顕著に生じ得る光漏れを抑制できる、特に、高温(例:80℃)下で長時間(例:500時間)経過後であっても該光漏れを抑制できる粘着剤層付き偏光板を提供することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、偏光板に生じ得る寸法変化や反りを抑制することができ、長期にわたる信頼性(耐久性)に優れる粘着剤層付き異形偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1~3および比較例1で用いた異形偏光板の主面の形状を示す概略模式図である。
図2図2は、実施例1で得られた粘着剤層付き異形偏光板を用いた場合の光漏れの結果を示す写真である。
図3図3は、比較例1で得られた粘着剤層付き異形偏光板を用いた場合の光漏れの結果を示す写真である。
図4図4は、実施例1および比較例1で得られた粘着剤層付き偏光板(異形ではない)を用いた場合の光漏れの参考結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪粘着剤層付き異形偏光板≫
本発明の一実施形態に係る粘着剤層付き異形偏光板(以下「本偏光板」ともいう。)は、偏光子の両面にフィルム(例:保護フィルム、位相差フィルム)が設けられた異形偏光板の少なくとも一方の面に、下記要件(I)または(II)を満たす粘着剤層(以下「本粘着剤層」ともいう。)を有する。
要件(I):本粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率(G')は、2.0×104~1.0×105Paである
要件(II):本粘着剤層のゲル分率は10~50質量%である
【0015】
本偏光板によれば、偏光子の両面にフィルムが設けられた異形偏光板を用いる場合に顕著に生じ得る光漏れを抑制できる、特に、高温(例:80℃)下で長時間(例:500時間)経過後であっても該光漏れを抑制できる。本発明者は、この理由を以下のように推測している。なお、以下の説明は推測であって、本発明を何ら限定するものではない。
【0016】
本発明の一実施形態における異形偏光板は、その主面の形状が正方形および長方形以外の形状の偏光板であり、具体的には、その主面の形状が、内角が90°以外の頂点(凹頂点を含む)を有する多角形、円形、一部に曲線を有する形状、または、これらの形状(正方形や長方形を含む)の内部に穴部(抜き)を有する形状の偏光板である。
前記異形偏光板の主面とは、該偏光板の面積の最も大きい面の一方または両方であり、通常、光が進む方向に対し垂直な面のことをいう。
【0017】
前記正方形および長方形以外の形状とは、例えば、円形(楕円等も含む)、三角形、正方形および長方形以外の四角形(例:ひし形、台形)、五角形以上の多角形、少なくとも一部にノッチ(凹部)や凸部を有する形状、曲線を有する形状、これらの形状(正方形や長方形を含む)の内部に穴部(抜き)を有する形状が挙げられる。
【0018】
このような異形偏光板では、以下の1)~3)が考えられる。
1)以下の(i)~(iv)では、該偏光板に生じる主応力の方向が偏光軸と垂直または並行ではなく、応力によって生じる偏光板(特に前記フィルム)の光弾性複屈折の光学軸と、偏光板の偏光軸とに角度が生じることで偏光板由来の位相差が生じ、光漏れが生じる。
(i)頂点を有する三角形、四角形、および多角形の場合、その頂点付近
(ii)円形または一部に曲線を有する形状の場合、その接線のうち、偏光軸と垂直または並行ではない接線付近
(iii)内部に穴部(抜き)を有する形状の場合であって、その穴部が頂点を有する三角形、四角形、および多角形の場合、その頂点付近
(iv)内部に穴部(抜き)を有する形状の場合であって、その穴部が円形または一部に曲線を有する形状の場合、その接線のうち、偏光軸と垂直または並行ではない接線付近
2)前記1)の主応力は、偏光板の幾何中心に近い程大きいため、前記(i)~(iv)の場所が、偏光板の幾何中心に近いほど光漏れ量が多い。
3)前記1)の光弾性複屈折は偏光板に生じる応力の大きさによって決まる。
以上のことから、異形偏光板は、主面の形状が正方形や長方形の偏光板よりも光漏れを生じやすい。また、前記2)より、前記1)の(iii)および(iv)のような内部に穴部(抜き)を有する形状に対して、特に本発明の効果がより発揮されやすい。逆に、主面の形状が真円の場合は本発明の効果が発揮されにくい。
【0019】
以上のことから、異形偏光板を用いる場合に生じる光漏れを抑制するためには、(A)偏光板の光弾性係数の低減と、(B)前記1)部分における偏光板の応力の低減とが有効であると推測されるが、これらの中でも、異形偏光板では特に(B)が重要になると推測される。
そして、本偏光板によれば、異形偏光板の少なくとも一方の面に前記本粘着剤層を有するため、異形偏光板(特に前記フィルム)に生じる応力を緩和することで前記(B)に係る前記1)に記載の箇所における偏光板の応力を低減でき、異形偏光板を用いる場合に生じる光漏れを抑制できると推測される。
【0020】
[粘着剤層]
本偏光板は、異形偏光板の少なくとも一方の面に本粘着剤層を有していればよく、異形偏光板の両面に本粘着剤層を有していてもよい。
本粘着剤層は、下記要件(I)または(II)を満たせば特に制限されないが、前記効果がより発揮される等の点から、下記要件(I)および(II)を満たすことが好ましい。
下記要件(I)または(II)を満たす粘着剤層を用いることで、偏光板に生じ得る寸法変化や応力を緩和することができるため、前記効果を奏すると考えられる。
【0021】
要件(I):本粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率(G')は、2.0×104~1.0×105Paである
前記貯蔵弾性率(G')は、2.0×104Pa以上であり、好ましくは2.5×104Pa以上であり、1.0×105Pa以下であり、好ましくは8.5×104Pa以下、より好ましくは5.0×104Pa以下である。
本粘着剤層の貯蔵弾性率が前記範囲にあると、光漏れ、特に、高温(例:80℃)下で長時間(例:500時間)経過後であっても光漏れを容易に抑制でき、さらに、偏光板との界面に浮きや剥がれが生じ難く、信頼性の高い本偏光板を容易に得ることができる。
前記貯蔵弾性率(G')は、具体的には下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0022】
要件(II):本粘着剤層のゲル分率が10~50質量%である
前記ゲル分率は、10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、50質量%以下であり、好ましくは48質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
本粘着剤層のゲル分率が前記範囲にあると、光漏れ、特に、高温(例:80℃)下で長時間(例:500時間)経過後であっても光漏れを容易に抑制でき、さらに、偏光板との界面に浮きや剥がれが生じ難く、信頼性の高い本偏光板を容易に得ることができる。
前記ゲル分率は、具体的には下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0023】
本粘着剤層の光弾性係数は、好ましくは-400×10-122/N以上、より好ましくは-300×10-122/N以上であり、好ましくは400×10-122/N以下、より好ましくは300×10-122/N以下である。
本粘着剤層の光弾性係数が前記範囲にあると、粘着剤層由来の位相差を低減できるため、より高度に光漏れを抑制できる。
前記光弾性係数は、具体的には下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0024】
本粘着剤層の厚さは特に制限されないが、粘着性を十分に有する粘着剤層を容易に得ることができる等の点から、通常は5μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常は75μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0025】
〈粘着剤組成物〉
本粘着剤層は、前記要件(I)または(II)を満たす層であれば特に制限されないが、前記効果を奏する粘着剤層を容易に得ることができる等の点から、(メタ)アクリル系粘着剤層であることが好ましい。
前記(メタ)アクリル系粘着剤層は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物を用いて形成することができる。該粘着剤組成物は、さらに、架橋剤、シランカップリング剤、およびその他の成分を含んでいてもよい。
なお、本発明における(メタ)アクリルは、アクリルおよび/またはメタクリルのことをいう。同様の表現は同様の意味である。
【0026】
・(メタ)アクリル系ポリマー
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a-1)および/またはアルコキシ基含有(メタ)アクリレート(a-2)、架橋性官能基を有するモノマー(b)、ならびに、必要により、芳香環含有モノマー(c)およびこれら以外のその他のモノマー(d)を含むモノマー成分を共重合することで合成することができる。
【0027】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a-1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、iso-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a-1)としては、貯蔵弾性率(G')が前記範囲にある粘着剤層を容易に形成することができる等の点から、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0028】
前記アルコキシ基含有(メタ)アクリレート(a-2)としては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記アルコキシ基含有(メタ)アクリレート(a-2)としては、貯蔵弾性率(G')が前記範囲にある粘着剤層を容易に形成することができる等の点から、メトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a-1)および/またはアルコキシ基含有(メタ)アクリレート(a-2)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a-1)およびアルコキシ基含有(メタ)アクリレート(a-2)の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーを合成する際のモノマーの合計100質量%に対し、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0030】
前記架橋性官能基を有するモノマー(b)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコール等の水酸基含有モノマー;
アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、5-カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のカルボキシ基含有モノマーが挙げられる。
【0031】
前記架橋性官能基を有するモノマー(b)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記架橋性官能基を有するモノマー(b)の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーを合成する際のモノマーの合計100質量%に対し、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0032】
前記芳香環含有モノマー(c)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記芳香環含有モノマー(c)を使用することで、より高度に光漏れを抑制することができる。また、芳香環含有モノマー(c)を使用することで、光弾性係数が前記範囲にある粘着剤層を容易に得ることができる。
【0033】
前記芳香環含有モノマー(c)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記芳香環含有モノマー(c)は任意成分であるが、該芳香環含有モノマー(c)を使用する場合、その使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーを合成する際のモノマーの合計100質量%に対し、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0034】
前記その他のモノマー(d)としては、例えば、
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有(メタ)アクリレート;
酢酸ビニル;塩化ビニル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;
が挙げられる。
【0035】
前記その他のモノマー(d)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記その他のモノマー(d)は任意成分であるが、該その他のモノマー(d)を使用する場合、その使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーを合成する際のモノマーの合計100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0036】
前記(メタ)アクリル系ポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、粘着力および耐久性に優れ、偏光板の寸法変化や応力に対する追従性に優れる粘着剤層を容易に得ることができる等の点から、ポリスチレン換算値で、好ましくは50万以上、より好ましくは60万以上であり、好ましくは200万以下、より好ましくは180万以下である。
【0037】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの含有量は、粘着剤としての性能のバランスに優れ、特に粘着特性に優れる粘着剤層を容易に得ることができる等の点から、前記粘着剤組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは60~99.9質量%、より好ましくは65~99.9質量%である。
【0038】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、前記モノマー成分を共重合することにより合成することができる。
共重合する方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができ、これらの中でも溶液重合法が好ましい。
【0039】
具体的には、例えば、反応容器内に重合溶媒およびモノマー成分を仕込み、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合開始剤を添加し、反応開始温度を、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは90℃以下に設定し、通常50~90℃、好ましくは60~90℃の温度に反応系を維持して、例えば3~20時間反応させることにより(メタ)アクリル系ポリマーを合成することができる。
また、前記重合反応中に、重合開始剤、連鎖移動剤、重合性単量体、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0040】
前記重合開始剤としては、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ系開始剤が挙げられる。
前記重合開始剤は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、重合中に、重合開始剤を複数回添加してもよい。
【0041】
前記過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、カプロイルパーオキサイド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、ジ-t-ブチルパーオキサイドヒドロテレフタレートが挙げられる。
【0042】
前記アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0043】
前記重合開始剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下の範囲内の量で使用される。
【0044】
前記重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類が挙げられる。
重合溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0045】
・架橋剤
前記粘着剤組成物は、任意で架橋剤を含んでいてもよい。
このような架橋剤は、常温または加熱下で(メタ)アクリル系ポリマーと反応し、架橋構造を形成し得る架橋剤であれば特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤が挙げられる。これらの中でも特にイソシアネート系架橋剤が好ましい。
前記架橋剤を用いる場合、用いる架橋剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0046】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物、これらのイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどの2価以上のアルコール類とを反応させたイソシアネート基含有反応生成物、これらのイソシアネートのイソシアヌレート化物等の誘導体が挙げられる。
【0047】
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N-ジグリシジルアニリンが挙げられる。
【0048】
前記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。
【0049】
前記架橋剤を用いる場合、該架橋剤の含有量は、粘着剤としての性能のバランスに優れる等の点から、粘着剤組成物中の(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.04質量部以上であり、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。
また、架橋剤を前記範囲で用いると、貯蔵弾性率やゲル分率が前記範囲にある粘着剤層を容易に形成することができる。
【0050】
・シランカップリング剤
前記粘着剤組成物は、任意でシランカップリング剤を含んでいてもよい。
このようなシランカップリング剤は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有ケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン;3-オキソブタン酸3-(トリメトキシシリル)プロピル;オリゴマー型シランカップリング剤が挙げられる。
前記シランカップリング剤を用いる場合、用いるシランカップリング剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0051】
前記シランカップリング剤を用いる場合、該シランカップリング剤の含有量は、粘着性に優れる粘着剤層を容易に得ることができる等の点から、粘着剤組成物中の(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0052】
・その他の成分
前記粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意でその他の成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、具体的には、帯電防止剤、有機溶媒、粘着性付与樹脂、粘着力低下剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属腐蝕防止剤、架橋促進剤、可塑剤、有機粒子、無機粒子等が挙げられる。
前記その他の成分は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0053】
〈粘着剤層の形成方法〉
本粘着剤層の形成方法は特に制限はないが、例えば以下の方法が挙げられる。
前記粘着剤組成物を、剥離処理された基材上に塗布する。前記粘着剤組成物が溶媒を含有する場合、通常は50℃以上、好ましくは60℃以上、通常は150℃以下、好ましくは100℃以下で、通常は1分間以上、好ましくは2分間以上、通常は10分間以下、好ましくは7分間以下乾燥して溶媒を除去し、塗膜を形成する。続いて、塗膜(粘着剤層)の剥離処理された基材がない側の表面へ、別の剥離処理された基材または偏光板を貼り合わせる。続いて、通常は1日以上、好ましくは3~10日間、通常は5℃以上、好ましくは15℃以上、通常は60℃以下、好ましくは40℃以下、通常は30~70%RH、好ましくは40~70%RHの環境下で養生し、粘着剤層を形成する。前記養生を熟成ともいう。架橋剤を含む粘着剤組成物を用い、前記条件で熟成を行うと、熟成中に架橋が進行し、効率よく架橋体を形成できる。
【0054】
前記基材としては特に制限されないが、例えば、プラスチック、紙、金属、ガラス、セラミックス製の基材が挙げられる。基材の厚さも特に制限されないが、通常は10~500μmである。
【0055】
前記プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー))、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミドおよびABSが挙げられる。
【0056】
また、粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えば、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
【0057】
<異形偏光板>
前記異形偏光板としては、その主面の形状が異形であること以外は、従来公知の、偏光子の両面にフィルムが設けられた偏光板を用いることができる。
また、前記異形偏光板には、例えば、防眩層、位相差層、視野角向上層等の他の層を有していてもよい。
前記異形偏光板の厚さは特に制限されないが、通常は10μm以上、好ましくは15μm以上であり、通常は500μm以下、好ましくは300μm以下である。
【0058】
[偏光子]
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムに偏光成分を含有させて、延伸することにより得られる延伸フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、エチレン-酢酸ビニル共重合体の鹸化物が挙げられる。偏光成分としては、例えば、ヨウ素および/または二色性染料が挙げられる。
前記偏光子の厚さは特に制限されないが、通常は0.1μm以上、好ましくは1μm以上であり、通常は100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0059】
[フィルム]
前記フィルムとしては、特に制限されず、偏光板に従来用いられてきたフィルムが挙げられるが、好適例としては、保護フィルム(偏光子保護フィルム)、位相差フィルムが挙げられる。
前記異形偏光板は、前記フィルムを偏光子の両面に有していれば特に制限されず、例えば、保護フィルムを2層以上有していてもよく、位相差フィルムを2層以上有していてもよく、1層以上の保護フィルムと1層以上の位相差フィルムとを有していてもよい。
【0060】
・保護フィルム
前記保護フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。
該熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの樹脂から選択される2種以上の混合物が挙げられる。
前記保護フィルムの厚さは特に制限されないが、通常は10μm以上、好ましくは20μm以上であり、通常は150μm以下、好ましくは130μm以下である。
【0061】
・位相差フィルム
前記位相差フィルムとしては特に制限されず、樹脂製のフィルムが挙げられる。該樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの樹脂から選択される2種以上の混合物が挙げられる。
前記位相差フィルムの厚さは特に制限されないが、通常は10μm以上、好ましくは20μm以上であり、通常は150μm以下、好ましくは130μm以下である。
【0062】
<本偏光板の製造方法>
本偏光板の製造方法は特に制限されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
前記粘着剤層の形成方法の欄に記載の方法と同様の方法で、積層体[剥離処理された基材/粘着剤層/偏光板]を製造する方法、または、前記粘着剤層の形成方法の欄に記載の方法と同様の方法で、積層体[剥離処理された基材/粘着剤層/剥離処理された基材]を形成し、該積層体から一方の剥離処理された基材を剥がし、露出した粘着剤層に、偏光板を貼り付ける方法が挙げられる。
また、このようにして得られた本偏光板は、必要により、所望の形状に加工してもよい。
【実施例
【0063】
以下、本発明の一実施形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0064】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、n-ブチルアクリレート(BA)76.5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)3質量部、アクリル酸(AA)0.5質量部、ベンジルアクリレート(BzA)20質量部および酢酸エチル溶媒100質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え、窒素ガス雰囲気下、70℃で6時間重合反応を行った。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し、固形分濃度30質量%のアクリル系ポリマーを含むポリマー溶液1を調製した。得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、140万であった。
【0065】
なお、アクリル系ポリマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記条件で標準ポリスチレン換算により求めた。
・測定装置:HLC-8120GPC(東ソー(株)製)
・GPCカラム構成:以下の5連カラム(全て東ソー(株)製)
(1)TSK-GEL HXL-H(ガードカラム)
(2)TSK-GEL G7000HXL
(3)TSK-GEL GMHXL
(4)TSK-GEL GMHXL
(5)TSK-GEL G2500HXL
・サンプル濃度:1.0mg/cm3となるように、テトラヒドロフランで希釈
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0cm3/min
・カラム温度:40℃
【0066】
得られたポリマー溶液1(固形分濃度30質量%)と、当該ポリマー溶液1に含まれるアクリル系ポリマー100質量部(固形分量)に対して、イソシアネート系架橋剤(「TD-75」綜研化学(株)製)0.045質量部と、シランカップリング剤(「KBM-403」信越化学工業(株)製)0.5質量部とを混合して、粘着剤組成物を得た。
【0067】
剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、得られた粘着剤組成物(泡抜け後のもの)を、ドクターブレードを用いて塗布し、90℃で3分間乾燥して、乾燥膜厚20μmの塗膜を形成した。形成した塗膜の前記PETフィルムの貼付面とは反対面に、剥離処理されたPETフィルムをさらに貼り合わせ、23℃/50%RH環境下で7日間静置して熟成させて、2枚のPETフィルムから塗膜を剥離することで、厚さ20μmの評価用粘着剤層を得た。
【0068】
<貯蔵弾性率>
得られた評価用粘着剤層を50枚積層することで、1mm厚の貯蔵弾性率測定用試験片を作製した。この試験片を用いて、アントンパール(AntonPaar)社製のモジュラーコンパクトレオメーターMCR300を用い、80℃における貯蔵弾性率(G')を測定した。なお、測定周波数は1Hzとした。
実施例1で得られた評価用粘着剤層の貯蔵弾性率(G')は、3.0×104Paであった。
【0069】
<ゲル分率>
得られた評価用粘着剤層約0.1g(粘着剤層採取質量)をサンプリング瓶に採取し、そこに酢酸エチル30mLを加えて4時間振盪した後、このサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥質量を測定した。次式により、評価用粘着剤層のゲル分率を算出した。
なお、実施例1で得られた評価用粘着剤層のゲル分率は、40質量%であった。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着剤層採取質量)×100(%)
【0070】
<光弾性係数>
得られた評価用粘着剤層50枚を23℃/50%RH環境下で貼り合わせ、50℃/5atmに調整されたオートクレーブで20分間処理して、厚さ1.0mmの光弾性係数測定用試験片を作製した。得られた試験片を15mm×50mmの大きさに裁断して、これを自動波長走査型エリプソメータ(型式「M-220」、日本分光(株)製)に治具を用いて取り付け、応力を変化させながら、リタデーション(測定波長:633nm)を測定した。応力を横軸に、リタデーションを縦軸にとったときの直線の傾きを、評価用粘着剤層の光弾性係数とした。
なお、実施例1で得られた評価用粘着剤層の光弾性係数は、-50×10-122/Nであった。
【0071】
<光漏れ試験>
剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、得られた粘着剤組成物(泡抜け後のもの)を、ドクターブレードを用いて塗布し、90℃で3分間乾燥して、乾燥膜厚20μmの塗膜を有するシートを得た。得られたシートを、偏光子であるポリビニルアルコールフィルムの両面にトリアセチルセルロースフィルム(保護フィルム)を有し、主面の形状が円形(図1Aに示す形状)である偏光板(厚さ60μm)の片面に、該シートの塗膜面と保護フィルム面とが接するように貼り合わせ、23℃/50%RHの条件で7日間静置して熟成させて、厚さ20μmの粘着剤層と偏光板とを有する粘着剤層付き偏光板を得た。
この粘着剤層付き偏光板を2枚作製し、得られた2枚の粘着剤付き偏光板からそれぞれPETフィルムを剥離した後、ラミネーターロールを用いて、厚さ0.5mmのアルカリガラス板の両側に互いに偏光板の偏光軸が直交するように、かつ、粘着剤層とアルカリガラス板とが接するように貼着し、50℃/5atmに調整されたオートクレーブに20分間保持することで、光漏れ試験用積層体を得た。
【0072】
得られた光漏れ試験用積層体に、液晶モニターのバックライトの光を照射し、その時の光漏れの様子を輝度計にて撮影し、光漏れの様子を観察した(初期光漏れ)。この初期光漏れの結果を図2のA-1に示す。
また、得られた光漏れ試験用積層体を、温度80℃/dryの条件下に500時間放置した後の積層体を用いた以外は同様にして80℃×500時間後の光漏れの様子を確認した。この80℃×500時間後の光漏れの結果を図2のA-2に示す。
【0073】
主面の形状が円形(図1Aに示す形状)である偏光板の代わりに、主面の形状が穴部(抜き)を有する形状(図1Bに示す形状)である偏光板を用いた以外は前記と同様にして、初期および80℃×500時間後の光漏れの様子を観察した。これらの結果をそれぞれ、図2のB-1およびB-2に示す。
さらに、主面の形状が円形(図1Aに示す形状)である偏光板の代わりに、主面の形状がノッチ(凹部)を有する形状(図1Cに示す形状)である偏光板を用いた以外は前記と同様にして、初期および80℃×500時間後の光漏れの様子も観察した。これらの結果をそれぞれ、図2のC-1およびC-2に示す。
【0074】
なお、光漏れ試験の結果は、目視により、以下の基準でも判断した。
良:80℃×500時間後において、光漏れが確認されない、または、僅かに光漏れが確認されたが、実使用上問題なし。
可:80℃×500時間後において、光漏れが確認されたが、実使用上問題なし。
不可:80℃×500時間後において、明らかな光漏れが確認された。
【0075】
なお、表1における光漏れ試験の結果は、図1A図1Cに示す形状の偏光板それぞれの光漏れを、前記基準で評価した場合の結果を総合して、以下の基準で示す。
◎:用いた3つの偏光板の全てにおいて「良」の評価であった。
○:用いた3つの偏光板のうち、1つも「不可」の評価はないが、「可」の評価が1つ以上あった。
×:用いた3つの偏光板のうち1つでも「不可」の評価があった。
【0076】
[実施例2~3、比較例1]
表1に記載したモノマー成分を用いてアクリル系ポリマーを合成し、表1に記載した架橋剤を用いて粘着剤組成物を得たこと以外は実施例1と同様に行い、評価用粘着剤層および粘着剤層付き偏光板を得た。得られた評価用粘着剤層および粘着剤層付き偏光板を用い、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1中の「L-45」は、綜研化学(株)製のイソシアネート系架橋剤である。
【0077】
図3は、比較例1で得られた粘着剤層付き偏光板の光漏れを示すものであり、主面の形状が円形(図1Aに示す形状)である偏光板を用いた場合の初期および80℃×500時間後の光漏れの様子をそれぞれ、図3のA-1およびA-2に示し、主面の形状が穴部(抜き)を有する形状(図1Bに示す形状)である偏光板を用いた場合の初期および80℃×500時間後の光漏れの様子をそれぞれ、図3のB-1およびB-2に示し、主面の形状がノッチ(凹部)を有する形状(図1Cに示す形状)である偏光板を用いた場合の初期および80℃×500時間後の光漏れの様子をそれぞれ、図3のC-1およびC-2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
[参考例]
実施例1および比較例1において、主面の形状が長方形(図1Dに示す形状)である偏光板を用いた場合の初期および80℃×500時間後の光漏れの様子を、前記と同様にして観察した。
実施例1で得られた粘着剤層を用いた場合の初期および80℃×500時間後の光漏れの様子をそれぞれ、図4のD-1およびD-2に示す。比較例1で得られた粘着剤層を用いた場合の初期および80℃×500時間後の光漏れの様子をそれぞれ、図4のD'-1およびD'-2に示す。
【0080】
図2図3とから、異形偏光板を用いる場合、本粘着剤層を用いることで初めて、光漏れを抑制できることが分かる。
なお、図4から、本粘着剤層は、異形ではない(主面の形状が正方形または長方形である)偏光板を用いた場合にも光漏れを抑制できるため、このような偏光板に対しても好適に用いることができるが、図4から、異形ではない(主面の形状が正方形または長方形である)偏光板を用いた場合には、光漏れ自体の現象が起り難いことが分かる。
以上のことから、本発明は、異形偏光板に特に生じやすい光漏れを抑制できるという点で、異形偏光板に特化した発明である。
図1
図2
図3
図4