(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】エアバッグクッションおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/235 20060101AFI20240815BHJP
D03D 1/02 20060101ALI20240815BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240815BHJP
【FI】
B60R21/235
D03D1/02
D03D15/283
(21)【出願番号】P 2022575689
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2021008112
(87)【国際公開番号】W WO2022005137
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0080355
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083993
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イル
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジン ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョ ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ フン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イム,キ ソブ
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-024284(JP,A)
【文献】特表2013-513738(JP,A)
【文献】特表2020-531710(JP,A)
【文献】特表2013-543542(JP,A)
【文献】特開平7-48717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/235
D03D 1/02
D03D 15/283
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材;および、前記繊維基材表面の少なくとも一部分の上に取り付けられ、ポリエステル原糸を経糸または緯糸の成分として含む補強織物
を含むエアバッグクッションであり、
前記ポリエステル原糸は、8.0g/d以上の強度を有し、4.5g/dの荷重で測定された中間伸度が3.0~6.0%の範囲であり、
前記補強織物は、経糸方向または緯糸方向にて、1インチ当たり24本以上
40本以下の加工密度を有することを特徴とするエアバッグクッション。
【請求項2】
前記ポリエステル原糸は、乾熱収縮率が10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション。
【請求項3】
前記ポリエステル原糸は、下記式1により求められる形態安定指数が10以下を満足することを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション:
[式1]
形態安定指数=原糸の中間伸度+原糸の乾熱収縮率
【請求項4】
前記ポリエステル原糸は、初期弾性係数が100~150g/dの範囲を満足することを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション。
【請求項5】
前記補強織物は、前記ポリエステル原糸を経糸および緯糸の成分として含むことを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション。
【請求項6】
前記補強織物は、経糸方向および緯糸方向にて、それぞれ1インチ当たり24本以上
40本以下の加工密度を有することを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション。
【請求項7】
前記ポリエステル原糸の総繊度は、420デニール以上であることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション。
【請求項8】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション。
【請求項9】
前記補強織物を1層含むことを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション。
【請求項10】
前記繊維基材は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、およびアラミド繊維からなる群より選択された1種以上の繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグクッション。
【請求項11】
前記繊維基材は、織物または不織布を含むことを特徴とする、請求項10に記載のエアバッグクッション。
【請求項12】
8.0g/d以上の強度を有し、4.5g/dの荷重で測定された中間伸度が3.0~6.0%を満足するポリエステル原糸を利用して、経糸方向および緯糸方向での織り密度が20本以上である織物を製造する段階;
前記織物を150℃以上の温度で熱処理して経糸または緯糸の方向での加工密度が24本以上
40本以下である補強織物を製造する段階;および
前記補強織物を繊維基材表面の少なくとも一部分の上に取り付ける段階;
を含むエアバッグクッションの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2020年6月30日付の韓国特許出願第10-2020-0080355号および2021年6月28日の付韓国特許出願第10-2021-0083993号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、エアバッグクッションおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
車両衝突によるエアバッグクッションの展開時、衝撃や接触摩擦によりエアバッグクッションが損傷することがあり、その結果、エアバッグクッションの衝撃軽減性能と搭乗者拘束性能が低下しうる。このような性能低下を防止するために、従来の技術では、コーティングまたは無コーティングの補強布を継ぎ当てて脆弱部位を保護することが考慮されている。例えばPA66原糸やポリエステルなどを利用して製造された補強布生地を、脆弱部位に継ぎ当てることでエアバッグクッションを保護した。そして、保護が必要な部位が、特に衝撃に脆弱な場合には、補強布として、厚いコーティング織物を使用するか、薄い補強布を複数枚重ねて継ぎ当てる方式が適用された。
【0004】
しかし、前記処方も問題がある。具体的に、PA66やポリエステルなどのような従来の技術で使用されていた汎用原糸は、機械的強度が不十分であり、外部の衝撃や鋭い物体の突き刺しによるパンクチャー(puncture)の発生に対して脆弱である。また、脆弱部位の保護のために厚いコーティング織物を使用するか、補強布を複数枚重ねて継ぎ当てる処方は、エアバッグクッションの折り曲げ(フォルディング)を困難にし、折り曲げ状態での直径(roll diameter)を増加させることからエアバッグクッションの収納にも妨害となる。また、前記処方は、製品の重量増加と原価上昇の問題も引き起こす。
【0005】
したがって、機械的物性と形態安定性に優れ、外部の物体による損傷(例:スクラッチまたは裂け)を防止することができ、エアバッグのフォルディング収納性も改善することができる技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の一目的は、車両衝突によるエアバッグの展開時、衝撃や接触摩擦によるエアバッグの損傷(例:puncture)を防止したり、損傷の程度を軽減させたりすることができる補強織物、およびこれを含むエアバッグクッションを提供することにある。
【0007】
本出願の他の目的は、車両衝突時、衝撃軽減性能と搭乗者拘束性能を従来の技術に比べて改善させることができる補強織物、およびこれを含むエアバッグクッションを提供することにある。
【0008】
本出願の他の目的は、フォルディング収納が容易なエアバッグクッションを提供することにある。
【0009】
本出願の他の目的は、軽量エアバッグクッションを提供することにある。
【0010】
本出願の前記目的およびその他の目的は、下記で詳細に説明する本出願により全て解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願の発明者は、前述した従来の技術の問題点だけでなく、エアバッグが展開される状況にて、割れたガラスの破片や、エアバッグの締結と関連した周辺突出物(例:ボルトやブラケット)による、エアバッグクッションの損傷(例:スクラッチや引き裂け)を防止することができるエアバッグクッションについて鋭意研究した結果、本出願を発明した。
【0012】
具体的に、本出願の発明者は、補強織物の形成時に、下記で説明する水準の強度特性を有する原糸を使用する場合、長時間のフォルディングにもエアバッグクッションが変形されず、従来の技術と比較すると、少ない重量を使用しても外部の衝撃による破断の発生を効果的に低減させ得ることを確認した。また、本出願の発明者は、エアバッグクッション用の補強織物を形成する原糸が、下記で説明する水準の中間伸度を有する場合、クッション内部に外部の衝撃が伝達される程度を軽減することができるのであり、その結果、エアバッグ展開の状況にてエアバッグクッションが損傷することを有効に抑制することができるということを確認した。また、本出願の発明者は、下記で説明する特性の本出願の原糸を使用して補強織物を製造する場合、優れた形態安定性が提供され得ることを確認した。
【0013】
したがって、本出願は、下記で説明する実験例で確認されるように、エアバッグクッションとその補強織物に要求される適正水準の強度、伸び率、寸法安定性および衝撃抵抗性などを同時に充足させる。
【0014】
以下、本出願をより詳細に説明する。
【0015】
本出願に関する一具体例にて、本出願は、エアバッグクッションに関する。前記エアバッグクッションは、繊維基材;および前記繊維基材表面の少なくとも一部分の上に取り付けられ、ポリエステル原糸を経糸および/または緯糸の成分として含む補強織物を含む。
【0016】
前記補強織物は、所定の強度および中間伸度を満足するポリエステル原糸を、経糸および/または緯糸の成分として含み、緯糸方向または経糸方向にて1インチ当たり24本以上の加工密度を有する。前記「加工密度」とは、所定の織り密度で製織された補強織物に対して熱処理(温度は、例えば、下記で説明するように150℃以上)が行われた後に補強織物が有する密度を意味する。前記範囲の加工密度を有する場合、気密性と耐久性の確保に有利である。
【0017】
具体的に、前記補強織物が含むポリエステル原糸は、8.0g/d以上の強度を有し、4.5g/d荷重で測定された中間伸度(EASL)が3.0~6.0%の範囲を満足する。
【0018】
一つの例示で、前記ポリエステル原糸の強度は、8.5g/d以上、9.0g/d以上または9.5g/d以上であり得る。前記範囲未満である場合には、外部の衝撃による破断が発生しやすく、フォルディング状態の維持による変形が発生することがある。また、前記範囲未満の強度を有する場合には、破断を防止するために、より多い製織密度を付与しなければならないため、製造費用が増加したり、または補強織物を複数層使用したりしなければならないという問題がある。前記原糸強度の上限は、例えば13.0g/d以下であり得る。補強織物の用途や中間伸度とのバランスを考慮すると、前記ポリエステル原糸の強度上限は、例えば、11.0g/d以下、10.5g/d以下、または10.0g/d以下であり得る。前記ポリエステル原糸の強度は、ASTM D885の方法により測定され得るのであって、その測定には、インストロン社(Instron Engineering Corp、Canton、Mass)の万能引張試験器が使用され得る。
【0019】
一つの例示で、前記原糸は、3.0~6.0%範囲の中間伸度(EASL、Elongation at specific load、@(at)4.5g/dの荷重)を有することができる。つまり、前記補強織物は、4.5g/dの荷重で測定された中間伸度が3.0~6.0%を満足するポリエステル原糸を、経糸または緯糸の成分として含むことができる。ポリエステル原糸の特性を考慮すると、中間伸度が前記範囲未満である場合には、高いモジュラスにより製織が容易でなく、織物に対する熱処理時に過度な熱収縮が発生することから、補強織物の物性の確保と形態安定性の確保が難しい。また、中間伸度が前記範囲を超える場合には、低いモジュラスに起因して外部の衝撃を防止することができず、外部の衝撃がクッションの内部に伝達されて、クッションの引き裂けやスクラッチによる損傷が発生する。前述した従来の技術の問題点と補強織物の製織用途を考慮すると、前記原糸の中間伸度の下限は、例えば、3.0%超過または3.5%超過であり得るのであって、より具体的には、4.0%以上または4.5%以上であり得る。そして、その上限は、例えば、6.0未満、具体的には5.5%以下、5.4%以下、5.3%以下、5.2%以下、5.1%以下、または5.0%以下であり得る。前記ポリエステル原糸の中間伸度は、ASTM D885方法を利用して測定され得る。具体的に、インストロン社(Instron Engineering Corp、Canton、Mass)の万能引張試験器を利用してASTM D885の方法により引張試験を行い、それから得られたS-Sカーブ上で測定される、4.5g/dの荷重での伸度が、前記中間伸度であり得る。
【0020】
一つの例示で、前記ポリエステル原糸の乾熱収縮率は、10%未満であり得る。乾熱収縮率が前記範囲を超える場合には、補強織物に対する熱処理工程時に変形程度が激しくなるため、織物がよじれるなどの問題が発生する。前述した強度および中間伸度とのバランス、そして下記で説明する形態安定性などを考慮すると、原糸の前記乾熱収縮率の上限は、例えば、6.0%以下、5.5%以下、または5.0%以下であり得、その下限は、例えば、3.0%以上、3.5%以上または4.0%以上であり得る。前記原糸の乾熱収縮率は、ASTM D4974により測定され得る。そして、その測定には、乾熱収縮率測定装置(LENZING INSTRUMENT社)が使用され得る。具体的に、機器の一側端に原糸を固定したまま、反対側のセンサ部分に通過させ、0.05g/dの荷重を付与した後、170~180℃程度のオーブンに投入して、2分間の間に原糸が収縮した程度を、装備が自動測定して計算された百分率から、乾熱収縮率が計算され得る。
【0021】
一つの例示で、前記原糸は、下記式1により求められる形態安定指数が10.0以下を満足する。
【0022】
[式1]
形態安定指数=原糸の中間伸度+原糸の乾熱収縮率
【0023】
(ただし、前記式1で、中間伸度は、ASTM D885の方法により行われた引張試験で確認される、4.5g/dの荷重での伸度であり、乾熱収縮率はASTM D4974により測定される)。
【0024】
前記式1により表現される形態安定指数は、下記で説明する中間伸度(%)と乾熱収縮率(%)とを合わせた数値であって、原糸についての物理的変化の程度と熱的変化との程度を総合的に考慮したものである。中間伸度(E)と乾熱収縮率(S)との合計である形態安定指数は、ES率(%)として表示されることもありうる。
【0025】
補強織物は、それが取り付けられる、繊維基材の脆弱部位の物性を補完するためのものであり、適正に高い水準での剛軟性または剛軟度(stiffness)を有することが要求される。そして、補強織物の用途に適した剛軟性を得るためには原糸のレベルで適正レベルの中間伸度と適正な収縮率とが要求される。しかし、形態安定指数が10を超える場合には、中間伸度が高くなり得るために、むしろ剛軟度が減少するといったように、補強織物およびエアバッグクッションの物性が低下しうる。
【0026】
一つの例示で、前記原糸が満足する形態安定指数の下限は、6.0以上であり得る。形態安定指数が6未満である場合にも、ある程度の形態安定性は確保されるとみることができるが、形態安定指数が6未満である場合には、原糸の中間伸度が大いに低くなる可能性が高く、中間伸度が低い場合には、前述したような問題があり、織物の物性がよくない。
【0027】
一つの例示で、前記原糸は、100~150g/dの範囲の初期弾性係数を有することができる。具体的に、前記原糸の初期弾性係数は、その下限が、例えば110g/d超過であり得るのであって、具体的には、115g/d以上、120g/d以上、125g/d以上、130g/d以上、135g/d以上、140g/d以上または145g/d以上であり得る。そして、その上限は、例えば、150g/d以下、145g/d以下、140g/d以下、135g/d以下、130g/d以下、または125g/d以下であり得る。前記のような初期弾性係数を満足する原糸は、補強織物にスティフ(剛直;stiff)な特性を付与することができる。前記初期弾性係数は、引張試験から得ることができる応力-変形のS-Sカーブ(curve)における、初期直線区間から降伏点(Yield point)までの初期傾き値を測定して確認され得る。例えば、初期弾性係数は、前記EASL(中間伸度)の測定と同一にASTM D885の方法を利用して測定され得るのであって、具体的には、インストロン社(Instron Engineering Corp、Canton、Mass)の万能引張試験器を利用してASTM D885の方法により引張試験を行い、それから得られたS-Sカーブ上の初期直線区間部での傾きから測定され得る。
【0028】
一つの例示で、前記ポリエステル原糸の総繊度は、420デニール以上であり得る。具体的に、前記ポリエステル原糸の纎度の下限は、例えば、500デニール以上、550デニール以上、600デニール以上であり得るのであって、より具体的には900デニール以上または950デニール以上であり得る。前記範囲を満足する場合、優れた強力を確保するのに有利である。特に制限されないが、例えば、前記原糸は、2~5デニールの纎度を有する100~500個のフィラメントを含むことができる。
【0029】
一つの例示で、前記ポリエステル原糸の纎度の上限は、例えば、1,450デニール以下、1,400デニール以下、1,350デニール以下、1,300デニール以下、1,250デニール以下、1,200デニール以下、1,150デニール以下、1,100デニール以下、または1,050デニール以下であり得る。
【0030】
一つの例示で、前記ポリエステル原糸は、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)原糸であり得る。具体的に、前記原糸は、ポリエチレンテレフタレートチップを溶融紡糸して得られた原糸であり得る。
【0031】
一つの例示で、前記ポリエチレンテレフタレート原糸の固有粘度(I.V)は、0.80g/dl以上であり得る。具体的に、前記固有粘度の下限は、例えば、0.85g/dl以上、0.90g/dl以上、0.95g/dl以上または1.00g/dl以上であり得る。前記範囲を満足する場合に、先に説明した原糸の特性、特に強度を確保するのに有利になり得る。固有粘度の上限は、特に制限されず、先に説明した原糸の特性を満足する水準で調節され得る。
【0032】
一つの例示で、前記ポリエチレンテレフタレート原糸の結晶化度は、40%以上であり得る。具体的に、前記結晶化度の下限は、例えば、45%以上または50%以上であり得る。前記範囲を満足する場合に、先に説明した原糸の特性、特に中間伸度を確保するのに有利になり得る。また、結晶化度が前記範囲より低い場合には、長時間のエイジング(aging)をしても高い非晶部分(ポーション)に起因して十分な耐久性を確保することができない。結晶化度の上限は、特に制限されず、先に説明した原糸の特性を満足する水準で適切に調節され得る。
【0033】
前記説明された特性のポリエステル原糸は、前記補強織物を形成することに使用される。
【0034】
一つの例示で、前記補強織物は、ポリエステル原糸を経糸成分として含むことができる。ここで、前記補強織物は、経糸方向にて1インチ当たり24本以上の加工密度を有しうる。加工密度が前記範囲未満である場合には、低い密度に起因して、織物生地の変形と経糸の曲げが発生しうる。前記補強織物の経糸方向の密度が過度に大きい場合、製織性がよくなく、原糸間の摩擦とそれによる原糸の損傷により織物の物性が低下しうるため、これを考慮すると、補強織物の経糸方向の密度の上限は、例えば40本以下、または35本以下であり得る。
【0035】
一つの例示で、前記補強織物は、ポリエステル原糸を緯糸成分として含むことができる。ここで、前記補強織物は、緯糸方向にて1インチ当たり24本以上の加工密度を有することができる。加工密度が前記範囲未満である場合には、低い密度に起因して、織物生地の変形と緯糸の曲げが発生しうる。前記補強織物の緯糸方向の密度が過度に大きい場合には、製織性がよくなく、原糸間の摩擦とそれによる原糸の損傷により織物の物性が低下しうるため、これを考慮すると、補強織物の緯糸方向の密度の上限は、例えば40本以下、または35本以下であり得る。
【0036】
一つの例示で、前記補強織物は、ポリエステル原糸を経糸および緯糸の成分として含むことができる。つまり、前記補強織物は、前記説明された特性のポリエステル原糸だけで製織された織物であり得る。この場合、補強織物が経糸方向および緯糸方向で有する加工密度は、前述した範囲と同一である。
【0037】
前記説明された補強織物は、エアバッグクッションの脆弱部分を保護し、前述した目的に適した物性を提供する用途で使用することができる。脆弱部分の意味は、特に制限されないが、エアバッグの作動原理、エアバッグの設置およびエアバッグが展開される衝撃条件などを考慮すると、例えば、エアバッグ膨張のためにガスを噴出する、いわゆるインフレータと隣接するエアバッグ部位、エアバッグを形成する材料間の接合部位、保管や展開過程でエアバッグを形成する材料間摩擦が起こる部位、車両などにエアバッグを装着させる装備と隣接するエアバッグ部位、その他のエアバッグ展開時にガラスや鋭い物体に露出する可能性の高い部位などが、前記補強織物が重ねられ得るエアバッグクッションの脆弱部分であり得る。
【0038】
前記繊維基材は、補強織物が取り付けられ得る構成を意味する。具体的に、前記繊維基材は、エアバッグの展開および膨張の状況で所定の形態を有するように製造されたエアバッグクッションを形成する構成を意味する。例えば、前記繊維基材は、エアバッグ関連の技術分野にて、いわゆるエアバッグクッションを形成する、メインパネル(main panel)やメインパネルの一部分を形成する材料を意味し得る。
【0039】
前記補強織物が取り付けられ得る面積を有するならば、繊維基材の形状や繊維基材を形成する材料について、特に制限されるのではない。
【0040】
一つの例示で、前記繊維基材は、エアバッグの製造に使用可能であると知られた織物や不織布であり得るか、またはこれらのうちの一つ以上を含むものであり得る。
【0041】
一つの例示で、前記繊維基材は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、およびアラミド繊維からなる群より選択された1種以上の繊維を含むことができる。しかし、前記に羅列されたこれらの繊維に限定されるのではない。
【0042】
一つの例示で、前記繊維基材が含む繊維の纎度は、適正水準の強度を確保する側面から400デニール以上であり得る。補強織物が重ねられるのと収納性の確保を考慮して前記繊維基材が含む繊維の纎度の上限は、例えば、550デニール以下であり得る。
【0043】
一つの例示で、前記繊維基材は、織物であり得る。例えば、前記繊維基材は、1/1平織(plain)組織を有することができるが、これに特に制限されるのではない。
【0044】
一つの例示で、前記繊維基材は、その表面にコーティング層を有することができる。前記コーティング層は、繊維基材に気密性を付与する。コーティング層を繊維基材表面に形成する方法は、特に制限されない。例えば、前記コーティング層は、公知のシリコーンコーティング剤に織物形態の繊維基材をディッピングしたり、シリコーンコーティング剤を繊維基材に噴射したりするなどの方式を通じて形成され得る。または、高温条件で繊維基材上にポリマーフィルムをラミネーティングする方式を通じても、コーティング層が形成され得る。
【0045】
前記補強織物は、繊維基材の脆弱部位を保護し、エアバッグクッションに前述した物性を確保できるように繊維基材に取り付けられる。取り付け方式は特に制限されない。例えば、縫製方式、接着剤使用、熱処理や超音波処理などを利用して、補強織物と繊維基材とが取り付けられ得る。
【0046】
一つの例示で、前記補強織物は、繊維基材表面の一部の面積に取り付けられ得る。この場合、前記補強織物の面積は、繊維基材の面積より小さくてもよい。
【0047】
また一つの例示で、前記補強織物は、繊維基材表面の全体の面積に取り付けられ得る。この場合、前記補強織物の面積は、繊維基材の面積以上であり得る。
【0048】
一つの例示で、前記繊維基材上には1層の補強織物が取り付けられ得る。つまり、前記エアバッグクッションが前記繊維基材上にて1層の補強織物だけを含んでも、エアバッグクッションの損傷を抑制し、自動車の衝突時に優れた衝撃軽減性能と搭乗者拘束性能などが提供され得る。1層の補強織物の使用を通じても前述した効果を確保することができるため、本出願によれば、多層の補強織物を使用する必要がない。したがって、本出願によれば、フォルディング状態にて優れた収納性を有し、軽いエアバッグクッションが提供される。
【0049】
本出願に関する他の一例で、本出願は、エアバッグクッションの製造方法に関する。エアバッグクッションとその構成成分の特性は先に説明したものと同一である。
【0050】
具体的に、前記方法は、a)8.0g/d以上の強度を有し、4.5g/dの荷重で測定された中間伸度が3.0~6.0%を満足するポリエステル原糸を利用して、経糸および緯糸方向での織り密度が20本以上である織物を製造する段階;b)前記織物を150℃以上の温度で熱処理して経糸または緯糸の方向での加工密度が24本以上である補強織物を製造する段階;およびc)前記補強織物を繊維基材表面の少なくとも一部分の上に取り付ける段階;を含む。
【0051】
一つの例示で、前記a)段階で織物製造に使用される原糸は、所定の過程を経て製造され得る。後述する過程は、補強織物に適した前述した特性を原糸に付与することができる。
【0052】
具体的に、前記ポリエステル原糸は、ポリエステル溶融液を紡糸して(複数の)フィラメントを製造する段階;前記(複数の)フィラメントを集束してマルチフィラメントを製造する段階;前記集束されたマルチフィラメントを、2,500~3,500mpm(meter mer minute)の速度の第1ゴデットローラーを含む複数のゴデットローラーを通過させながら1.50~3.50の延伸比に延伸した後に巻き取る段階;を経て製造され得る。ここで、集束されたマルチフィラメントは未延伸糸である。
【0053】
一つの例示で、紡糸される溶融液は、固有粘度が約0.8dl/g以上、具体的には1.0dl/g以上であるポリエステルチップを溶融させたものであり得る。溶融温度の場合については、製造された原糸が、前記説明された特性を有することができる水準で適切に調節され得る。
【0054】
一つの例示で、前記前記溶融液を紡糸する口金は、複数の吐出ホールを有するノズルを含むことができる。前記口金の構造などは特に制限されないが、前記吐出ホールの個数は200~300範囲であり得るのであって、各ホールにおける長さ(L)と直径(D)の比率は2~5の範囲であり得る。
【0055】
一つの例示で、前記方法は、紡糸された複数のフィラメントを集束する前に、前記複数のフィラメントを冷却して固化させる段階をさらに含むことができる。固化方式は特に制限されないが、例えば冷却風がフィラメント固化に利用され得る。この際、冷却風は、複数のマルチフィラメントが完全に固化されたとみることができるほどの時間と温度条件内で行われ得る。
【0056】
前記マルチフィラメントの製造時に、これを集束する方法やこれに使用される装置などは特に制限されず、公知の方法と装置を使用することができる。
【0057】
一つの例示で、複数のゴデットローラーは、前記第1ゴデットローラーを含む、複数のゴデットローラーを含むことができる。具体的に、前記複数のゴデットローラーは、n個のゴデットローラーを含むことができる(nは2以上であり、例えば10以下であり得る)。つまり、延伸と関連して、1番目のゴデットローラー(第1ゴデットローラー)からn番目のゴデットローラーまで、延伸が行われる経路にて順次に配列され得る。ここで、前記第1ゴデットローラーの紡糸速度は、全体的な紡糸速度を決定する。本出願の具体例では、第1ゴデットローラーの紡糸速度を2,500~3,500mpm範囲に制御する。そして、原糸製造過程中にn個のゴデットローラーが使用される場合、1番目のゴデットローラーの速度に対する、n-1番目のゴデットローラーの速度の比率でもって延伸比が決定され得る。例えば、原糸製造時に前記延伸比は、1.50~3.50の範囲内であり得るのであって、具体的に、その下限は1.5以上、2.0以上、2.5以上または3.0以上であり得、その上限は、例えば、3.0以下、2.5以下、または2.0以下であり得る。その他の延伸が行われる経路にて、n-1番目のゴデットローラーと、最後に配列されたn番目のゴデットローラーとの間の区間は、一般的に延伸された原糸の不安定性を防止するリラクゼーション(relaxation)区間とみることができる。そのために、n番目のゴデットローラーはリラクゼーションに障害とならない適当な水準の速度を有する。その他の延伸と関連したゴデットローラーの速度などは、先に説明された原糸の物性に障害とならない水準で、そしてより具体的には、前記説明された紡糸速度と延伸比を満足しながら前述した原糸物性に障害とならない水準で制御され得る。
【0058】
前記第1ゴデットローラーの速度およびそれと関連した条件は、原糸のモジュラス特性を考慮して決定され得る。具体的に、本出願の発明者は、第1ゴデットローラーの速度とモジュラス特性とが比例する様相を有し得ることを確認した。より具体的に、補強織物の衝撃抵抗性を確保するためには、モジュラスが高い原糸を利用することが望ましいが、前述した第1コデッローラの速度の下限および/またはこれと関連した延伸比は、補強織物に適した原糸の高いモジュラス特性を確保できるようにする。反面、第1ゴデットローラーの速度が過度に高い場合には、原糸の不良糸(broken filament defects)、および加工性の低下を誘発しうるのであり、以降の生地の製織にも悪影響があり得るため、前述した速度範囲内に上限を調節することが望ましい。
【0059】
前記第1ゴデットローラーの速度は、前述した原糸の特性(例:用途に適した適正水準の高いモジュラス特性など)を考慮して調節され得る。例えば、前記第1ゴデットローラーの速度の下限は、2600mpm以上、2700mpm以上、2800mpm以上、2900mpm以上、3000mpm以上、3100mpm以上、3200mpm以上、3300mpm以上または3400mpm以上であり得る。そしてその上限は、例えば、3400mpm以下、3300mpm以下、3200mpm以下、3100mpm以下、3000mpm以下、2900mpm以下、2800mpm以下、2700mpm以下、または2600mpm以下であり得る。
【0060】
前記延伸比率は、前述した原糸の特性(例:用途に適した適正水準の高いモジュラス特性など)を考慮して調節され得る。例えば、前記延伸比の下限は、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3.0以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上または3.4以上であり得る。そして、その上限は、例えば、3.4以下、3.3以下、3.2以下、3.1以下、3.0以下、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、または1.6以下であり得る。
【0061】
一つの例示にて、前記b)段階の熱処理は、前記織物が熱風テンター(Tenter)を通過する方式で行われ得る。具体的に、前記熱処理は、織物が160~190℃の温度を有するテンターのチャンバーを、数分以内に、例えば、約30秒~2分以内に通過する方式で行われ得る。
【0062】
前記熱処理温度と関連して、通常ポリエステルが有する結晶化温度は約150℃前後であるが、熱処理が150℃より低い温度で行われる場合には、生地に対するセッティング(setting)が十分に行われずに織物変形が発生し、十分な物性の補強織物が得られない。
【0063】
一つの例示で、前記c)段階と関連して、前記補強織物と繊維基材とを組付ける方式は特に制限されない。例えば、縫製、熱処理または超音波処理などを利用して補強織物と繊維基材が組付けられ得るか、または接着剤を媒介として補強織物と繊維基材が組付けられ得る。
【0064】
一つの例示で、前記方法は、前記熱処理の前に、前記織物から不純物を除去する段階をさらに含むことができる。このような不純物の除去は、例えば、60~80℃範囲の温度である精練槽および/または水洗槽を通過させる方式で行われ得る。ここで、前記精練槽は、精練剤組成物を収容するものであり、前記水洗槽は、いわゆる水洗液を収容するものを意味する。場合によって、精練と水洗とは一つの槽で同時に行われることもありうる。不純物の除去を通じて、より安定した物性の確保を期待することができる。
【発明の効果】
【0065】
本出願によれば、車両衝突によるエアバッグの展開時に、衝撃や接触摩擦による損傷を防止するか損傷の程度を軽減させることができるエアバッグクッションが提供され得る。そして、本出願のエアバッグクッションは、車両衝突時に、従来の技術に比べて、優れた衝撃軽減性能と搭乗者拘束性能を提供する。また、前記エアバッグクッションは、1層の補強織物でも前記のような機能を提供することができるため、エアバッグクッションの軽量化とエアバッグクッションのフォルディング収納性の改善にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】下記の実験例で説明する衝撃パンクチャー抵抗性(Impact puncture resistance)の測定に関する装置の一部を撮影したものである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下で説明する実施例を通じて本出願発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、実施例は、発明の例示として提示されたものであるため、これにより発明の権利範囲が如何なる意味でも限定されるのではない。
【0068】
実施例および比較例
<実施例1>
補強織物に使用される原糸としては、1,000デニールの纎度(約4デニールの纎度を有する各250個のフィラメント)を有するポリエステル原糸(PET)を使用した。具体的に、9.0g/dの強度、4.5g/dで5.0%中間伸度のモジュラス特性、および4.5%の乾熱収縮率を満足するポリエステル原糸を補強布用織物の製織に使用した。このような原糸は、先に説明した方法により製造された(具体的に、延伸時に5個のゴデットローラーを使用し、第1ゴデットローラーの速度は2,500~3,500mpmの範囲内であり、延伸比は約2.00~2.20の延伸比に調節されるという過程が含まれる工程を経て製造される)。
【0069】
補強織物は、経糸および緯糸方向への織り密度が単位インチ当たり20x20(経糸x緯糸)本を有するように製織された。そして、前記製織された織物を、約85℃の温度が維持される精練加工槽に連続的に通過させることで生地の不純物を除去した。その後、収縮の発現および熱固定に関する後加工熱処理のために、不純物が除去された織物が熱風方式のテンター(tenter)を通過する方式にて、180℃で約1分間熱処理した。製造された補強織物生地の最終加工密度は、経糸および緯糸の方向にそれぞれ単位インチ当たり24.2x24.0(経糸x緯糸)本である。
【0070】
使用された原糸の特性と織物の密度特性は、表1に記載した。
【0071】
<実施例2>
実施例1と類似する過程を経て、表1のように、原糸の強度および初期弾性係数が異なることを除き、実施例1と同一の特性の原糸を補強織物の製織に使用した。
【0072】
また、製造された補強織物の生地の最終加工密度が、経糸および緯糸の方向にそれぞれ単位インチ当たり24.5x24.0(経糸x緯糸)本となるようにした。その他の製織過程と条件は、実施例1に記載したものと同一である。
【0073】
<実施例3>
実施例1と同一のポリエステル原糸が織物の製織に使用された。ただし、補強織物の製織の際、経糸および緯糸の方向への織り密度が単位インチ当たり24.0x24.0(経糸x緯糸)本を有するように生地を製織し、収縮の発現および熱固定を経て得られた織物生地の最終加工密度は、経糸および緯糸の方向に、それぞれ単位インチ当たり26.2x26.7(経糸x緯糸)本になるようにして、織物が製造された。その他の製織過程と条件は、実施例1に記載したものと同一である。
【0074】
<比較例1>
実施例1の原糸製造時に適用された紡糸速度と延伸比範囲を異にして原糸を製造した(具体的に、紡糸速度が2500mpm未満であり、延伸比は約1.8)。製造されたポリエステル原糸は、7.0g/dの強度、4.5g/dで7.0%中間伸度のモジュラス特性、2.0%の乾熱収縮率および110g/dの初期弾性係数を示し、これを補強織物の製織に使用した。
【0075】
製造された補強織物生地の最終加工密度が、経糸および緯糸の方向に、それぞれ単位インチ当たり24.3x24.2(経糸x緯糸)本である。その他の原糸の製造および製織過程に関する条件は、実施例1に記載したものと同一である。
【0076】
<比較例2>
表1のように、原糸の初期弾性係数が実施例1と異なるポリエステル原糸が、織物の製織に使用された。
【0077】
補強織物の製織時には、経糸および緯糸の方向への織り密度が単位インチ当たり18x18(経糸x緯糸)本を有するように生地を製織し、収縮の発現および熱固定を経て得られた織物生地の最終加工密度が、経糸および緯糸の方向に、それぞれ単位インチ当たり20.3x20.(経糸x緯糸)本になるようにして織物が製造された。その他の原糸の製造および製織過程に関する条件は、比較例1に記載したものと同一である。
【0078】
<比較例3>
表1のように、原糸の特性が比較例2と同一のポリエステル原糸が織物の製織に使用された。
【0079】
製織の場合、不純物の除去を経た織物に対する、後加工熱処理の温度を130℃に熱処理したことを除き、実施例1と同一の条件と過程を経て織物を製造した。
【0080】
織物に対する評価
(1)引張強度および伸び率
経糸および緯糸の方向に対する引張強度の測定のためのものであり、実施例および比較例で製造された補強織物から60mmサイズの試片を製造した。
【0081】
具体的に、ISO 13934-1のカットアンドストリップ(cut and strip)試験の規格にしたがい、60mmx320mmのサイズの試片を採取し、試片の両側辺部のスレッド(thread)を剥がして総5.0mm幅の試片で作った。その後、万能材料試験機(UTM; Universal testing machine)を利用してISO 13934-1に規定された方法にしたがい、クロスヘッドスピード200mm/minの速度で試片を引っ張ることで、試片の破壊が起こる時点の強度および伸び率を測定した。
【0082】
(2)剛軟度(Stiffness or King stiffness)
経糸および緯糸の方向に対する剛軟度の測定のためのものであり、実施例および比較例で製造された補強織物から、100mmX100mmサイズの試片を採取し、これを半分にフォルディングした。ASTM D4032にしたがい、フォルディングされた試片をサーキュラベンド(円形屈曲)剛軟度(circular bend stiffness)測定装置に装着した後、プランジャー(plunger)を2,000mm/minの速度で下降させ、この際にかかる荷重を、デジタルゲージを利用して測定した。
【0083】
参考として、比較例のように剛軟度が6Nより低い場合、鋭い物体(ガラスまたは突出物など)に対するパンクチャー(穿刺)抵抗性がよくない。また、剛軟度が表2に記載された実施例の数値を超えるように過度に高い場合には、織物が過度にこちこちであることから、エアバッグクッションのフォルディング性と引裂強度が低下しうる。
【0084】
(3)引裂強度(Tear strength)
経糸および緯糸の方向に対する引裂強度の測定のためのものであり、実施例および比較例で製造された補強織物から150mmx200mmのサイズの試片を製造した。そして、万能材料試験機(UTM)を利用してISO 13937-2に規定されたタング法(tongue method)で、前記試片の引裂強度を測定した。具体的に、経糸方向に対する引裂強度測定用試片は経糸方向に、そして緯糸方向に対する裂強強度測定用試片は緯糸方向に、100mm/minの速度で引張しながら引裂強度を測定した。
【0085】
(4)寸法安定性(Dimension stability)
高温で生地の形態安定性を測定するためのものであり、300mmx300mmのサイズの試片に対して測定した。試片には、実施例および比較例で製造された補強織物が使用された。試片に、横および縦の方向に250mmx250mmのマーキングをした後に、高温で熱処理を行った後、その長さの変形率を測定した。具体的には、試片を105℃の高温チャンバーで60分間放置し、下記式を利用して変形率を計算した。
【0086】
式:{(X0-X1)/X0}x100
【0087】
(ただし、前記式で、X0は、試片を105℃に保管する前に、横および縦の方向での最初の長さであり、X1は、試片を105℃で60分間保管した後に変形がなされた、横および縦の方向での変形長さである。)
【0088】
(5)パンクチャー抵抗性(Puncture resistance)
生地のパンクチャー抵抗性は、ASTM-F1342にしたがい測定した。具体的には、実施例および比較例で製造された補強織物試片を専用サンプルホルダーに装着した後、万能材料試験機(UTM)を利用して1.0mmのチップ半径(radius tip)を有するプローブ(probe)でもって生地を貫通し(penertrating)、最大の力(maximum force)を測定した。
【0089】
(6)衝撃パンクチャー抵抗性(Impact puncture resistance)
独自の内部試験規格にしたがい、織物試片に対する瞬間的な衝撃パンクチャー抵抗度を測定した。具体的には、300mmx300mmのサイズの試片を得て、
図1のように独自に製作された装置のサンプルホルダーに、試片を装着した。
図1の試験装置は、振り子(pendulum)方式で衝撃を与えることができるように設計され、ガラス片プローブ(probe)が装着されたカンチレバー(cantilever)を、180度の水平位置から自然に落として生地に瞬間的な衝撃を加えた後、プローブにより破れた区間の長さを測定した。
【0090】
【0091】