(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】電動モータ及びプリント回路基板
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20240815BHJP
【FI】
H02K11/33
(21)【出願番号】P 2022576507
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021064878
(87)【国際公開番号】W WO2021249852
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】102020115642.1
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522478363
【氏名又は名称】ゲーカーエン パウダー メタルジー エンジニアリング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】ティラー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,モーリス
(72)【発明者】
【氏名】トゥ,ホン ザン
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-274347(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104852498(CN,A)
【文献】実開昭56-083955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向(4)に沿って相互に隣接して配置されるステータ(2)及び環状ロータ(3)を少なくとも備える電動モータ(1)であって、上記ステータ(2)が周方向(5)に沿って相互に隣接して配置され、且つ上記軸方向(4)に沿ってそれぞれ延びる複数のステータ歯(6)を有し、
少なくとも1つの巻線(8)を有する少なくとも1つのコイル(7)が、各ステータ歯(6)に配置され、
上記少なくとも1つの巻線(8)が電気的に伝導可能にプリント回路基板(9)に接続され、上記プリント回路基板(9)が上記ステータ(2)の端面(10)に、且つ上記軸方向(4)に沿って上記ステータ(2)に隣接して配置され、上記プリント回路基板(9)が複数の電気接続ライン(11)を備え、この電気接続ライン(11)を介して各コイル(7)の少なくとも1つの巻線(8)が、少なくとも他の巻線(8)又は上記電動モータ(1)の電気接続部(12,13)に接続され、
これらの接続ライン(11)が上記プリント回路基板(9)において上記軸方向(4)を横断する1つの平面(14,15,16)内に少なくとも部分的に配線され、
少なくとも1つの平面(14,15,16)にある各接続ライン(11)が少なくとも1つの電気接続部(12,13)及びそれぞれ少なくとも1つの上記ステータ歯(6)と関連付けされ、
少なくとも1つの接続ライン(11)の少なくとも1つの区分(18)が複数のサブライン(19)に分割され、上記区分(18)における上記サブライン(19)が相互に電気的に絶縁されるように配置される電動モータ(1)。
【請求項2】
上記プリント回路基板(9)が上記軸方向(4)に沿って上記ステータ(2)及び上記ロータ(3)の間に配置される、請求項1に記載のモータ(1)。
【請求項3】
上記ロータ(3)が複数の磁石(27)を有し、上記区分(18)が少なくとも、上記磁石(27)が上記モータ(1)の作動中に上記軸方向(4)に沿って整列され得る上記プリント回路基板(9)の領域内に配置される、請求項1又は請求項2に記載のモータ(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの上記サブライン(19)が第一端(29)及び第2端(30)の間で配線方向(31)に沿って延び、上記サブライン(19)が、上記配線方向(31)を横断し、且つ上記軸方向(4)を横断する最大1.5ミリメートルの幅(20)を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載のモータ(1)。
【請求項5】
異なる上記接続ライン(11)に関連付けされた上記サブラインが、上記プリント回路基板(9)において互いに異なる上記平面(14,15,16)内に少なくとも部分的に配線され、上記平面が上記軸方向(4)において少なくとも相互ずれている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項6】
相互に異なる上記平面(14,15,16)に配置された少なくとも上記接続ライン(11)又はサブライン(19)が、上記プリント回路基板(9)内の上記軸方向(4)に沿って延びる接触ライン(23)を介して、相互に電気的に伝導可能に配置され、上記接触ライン(23)が、それぞれの上記接触ライン(23)に接続された上記サブライン(19)のライン断面(24)の最大100%を占めるライン断面(24)を有する、請求項5に記載のモータ(1)。
【請求項7】
接続ライン(11)の少なくとも1つの区分(18)における少なくとも一部の上記サブライン(19)が、上記プリント回路基板(9)において互いに異なる上記平面(14,15,16)に配線され、上記平面が上記軸方向(4)において少なくとも相互にずれている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項8】
上記サブライン(19)が、専ら上記区分(18)の外部で、上記接続ライン(11)の他の上記サブライン(19)と電気的に伝導可能に互いに接続される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項9】
上記接続ライン(11)が上記プリント回路基板(9)の全範囲に沿ってサブライン(19)に分割される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項10】
各サブライン(19)が専ら上記プリント回路基板(9)の平面(14,15,16)に沿って延びる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項11】
上記区分(18)内の少なくとも1つの上記接続ライン(11)が少なくとも3つの上記サブライン(19)に分割される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項12】
上記接続ライン(23)が非丸形のライン断面(24)を有する、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項13】
電動モータ(1)用のプリント回路基板(9)であって、上記モータ(1)が軸方向(4)に沿って相互に隣接して配置される少なくとも1つのステータ(2)及び環状ロータ(3)を備え、上記ステータ(2)が周方向(5)に沿って相互に隣接して配置され、且つ上記軸方向(4)に沿ってそれぞれ延びる複数のステータ歯(6)を有し、少なくとも1つの巻線(8)を有する少なくとも1つのコイル(7)が各ステータ歯(6)に配置され、上記少なくとも1つの巻線(8)が電気的に伝導可能に上記プリント回路基板(9)に接続され得、
上記プリント回路基板(9)が複数の電気接続ライン(11)を備え、この電気接続ライン(11)を介して各コイルの少なくとも1つの巻線(8)が、少なくとも他の巻線(8)又は上記電動モータ(1)の少なくとも1つの電気接続部(12,13)に接続され得、
これらの接続ライン(11)が上記プリント回路基板(9)において上記軸方向(4)を横断する少なくとも1つの平面(14,15,16)内に少なくとも部分的に配線され、
少なくとも1つの平面(14,15,16)にある各接続ライン(11)が電気接続部(12,13)及びそれぞれ少なくとも1つの上記ステータ歯(6)と関連付けされ、
少なくとも1つの接続ライン(11)の少なくとも1つの区分(18)が複数のサブライン(19)に分割され、上記区分(18)における上記サブライン(19)が相互に電気的に絶縁されるように配置されるプリント回路基板(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのステータ及びロータを備える電動モータに関する。電動モータはアキシャルフラックスモータ(AFM)である。本発明は、さらに電動モータ用のプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータは、周方向に沿って相互に隣接して配置され、軸方向に沿ってそれぞれ延びる複数のステータ歯を有する。モータはモータ巻線を有する。モータ巻線は、複数のコイルを備える。少なくとも1つ巻線、特に複数の巻線を有する少なくとも1つのコイルは、各ステータ歯に配置される。
【0003】
電動モータは、プリント回路基板(PCB)を有し得、プリント回路基板において電気接続ラインが配置される。
【0004】
上記コイルの巻線は、電気的に伝導可能に上記プリント回路基板に接続され、上記プリント回路基板は、上記軸方向に沿って、上記ステータに隣接して上記ステータの端面に配置される。
【0005】
個々のコイルの電気的な相互接続、及び上記コイルの電気配線への電気的な相互接続は、プリント回路基板の接続ラインによって実現される。しかし、それぞれの場合において、各コイルの少なくとも1つの巻線、特に複数の巻線は、上記プリント回路基板を介して、相互に又は電気接続部に接続もされ得る。巻線への電力供給は、上記電気接続部によって実現される。
【0006】
接続ラインは、プリント回路基板において軸方向を横断する少なくとも1つの平面内で少なくとも部分的に配線され、各接続ラインは電気接続部及びそれぞれ少なくとも1つのステータ歯と関連付けされ、それぞれのステータ歯に配置されたコイルと少なくとも部分的に整列されるよう上記軸方向に沿って配置される。上記接続ラインは、均一に、一体的に、且つ2つの互いに隣接するステータ歯の間に配置され径方向に沿って延びる区分において配線される。
【0007】
アキシャルフラックスモータは、例えば独国特許出願公開第102019112768号明細書から既知である。
【0008】
電動モータ及びその設計には、常に改良のニーズが存在する。改良され、例えば組み立てやすく、費用効率の良い、個々のコイルの相互接続が、ここでの1つの可能性のある改良である。ここで、プリント回路基板つまりPCBの使用は、特にそれらがコイルの近くに位置され得る場合に有利となり得る。しかし、プリント回路基板のステータ付近への配置は、交番磁界が通電導体に作用し、渦電流が上記ライン内に誘導されるリスクを伴う。特に、電動モータを構成する際に、モータ作動中の渦電流の形成は考慮すべきである。
【0009】
このことから、本発明の目的は、これらの側面に対処し得る電動モータ及びプリント回路基板を提示することにある。特に、その目的は、電気的な渦電流が、特にプリント回路基板においてもモータの作動中に最小の程度にしか発生しない、電動モータ及びプリント回路基板を特定することにある。
【0010】
これらの目的を達成するため、請求項1の特徴に係る電動モータ及び請求項13の特徴に係るプリント回路基板が提示される。有利な展開は従属項の主題である。請求項で個別に説明された特徴は、技術的に意義のある様式で相互に組み合わせることができ、明細書からの説明内容及び図面からの詳細によって補完され得、本発明のさらなる変更実施形態が示される。
【0011】
これに資するのは、軸方向に沿って相互に隣接して配置されるステータ及び環状モータを少なくとも備える電動モータである。上記ステータは、周方向に沿って相互に隣接して配置され、且つ上記軸方向に沿ってそれぞれ延びる複数のステータ歯を有する。少なくとも1つの巻線、特に複数の巻線を有する少なくとも1つのコイルは、各ステータ歯に配置される。(各コイルの)上記少なくとも1つの巻線は、電気的に伝導可能にプリント回路基板に接続され、上記プリント回路基板は上記ステータの端面に、且つ上記軸方向に沿って上記ステータに隣接して配置される(この場合、少なくとも部分的に上記ステータ歯を覆うこともあり得る)。上記プリント回路基板は、複数の電気接続ラインを備え、この電気接続ラインを介して各コイルの少なくとも1つの巻線が、少なくとも他の巻線又は上記電動モータの電気接続部に接続される。これらの接続ラインは、上記プリント回路基板において上記軸方向を横断する1つの平面内に少なくとも部分的に配線される。各接続ラインは電気接続部及びそれぞれ少なくとも1つのステータ歯と関連付けされる。少なくとも1つの接続ラインの少なくとも1つの区分は、複数のサブラインに分割され、上記区分における上記サブラインは相互に電気的に絶縁されるように配置される。
【0012】
アキシャルフラックモータにおいて、上記ステータ及びロータは上記軸方向に沿って相互に隣接して配置され、上記ロータは、上記軸方向に沿って上記コイル又はステータ歯に対向して配置され、場合によっては少なくとも軸方向に沿って整列される(つまり、例えば同一径上に配置される)磁石又は磁極を有する。上記ステータは、環状基体(ヨーク)を起点として上記軸方向に沿って延びるステータ歯及びコイルを有する。コイル又はステータ歯の数及び上記ロータの磁極(例えば磁石又は永久磁石)の数は、相互に異なってもよく、相互に一致していてもよい。
【0013】
アキシャルフラックスモータにおいて、上記ロータを駆動するため、上記ステータによって生じる磁束の実質的に軸方向を向く要素が使用される。
【0014】
上記電動モータの上記ステータは、特に、例えばいわゆる「軟磁性複合材」(SMC)又は電気板とSMCとの組み合わせ等の、軟磁性材料を有する。上記ステータ歯は、好ましくは軟磁性材料から加圧及び接合により製造される。ここで、SMC材料は焼結されない。代わりに、融点よりも低い温度への調整がなされるが、コアがその形状を永久に保つために十分な温度とする。
【0015】
それぞれの上記ロータは、特に永久磁石及び/又は軟磁性要素を、例えば凹部に有する。永久励起同期モータ又はブラシレス直流モータ(略記でBLDC)は、好ましくは永久磁石を用いて形成され得る。一方、例えば電動モータとしてのリラクタンスモータは、軟磁性要素を用いて製造され得る。
【0016】
それぞれの上記ロータは、あるいはケージロータつまりかご形ロータとして、又はスリップリングロータとして構成され得、その場合は非同期モータが形成される。
【0017】
特に、上記ロータは少なくとも部分的に焼結技術を用いて製造される。特に、複雑な構造は、焼結を用いて極めて容易に上記ロータ上に形成され得る。
【0018】
上記モータは電気接続部を有し、電気接続部を介して電流が特に上記ステータ又は上記コイルに適用され得る。特に、多相交流、好ましくは三相交流が上記モータに適用される。ここで、上記モータは、少なくとも一時的に各接続部を介して相に接続される。ステータ歯に配置された上記コイル又は巻線は、それぞれ相に関連付けされ、又はそれぞれ同一の接続部に同時に接続される。
【0019】
上記接続部を起点として、インターフェースに電力が供給され、インターフェースによって上記接続部が電気的に伝導可能に上記コイルに接続される。
【0020】
インターフェースの電気的に伝導可能な接続は、上記プリント回路基板又は上記プリント回路基板において形成される上記接続ラインを介して実現される。
【0021】
上記接続ラインは上記プリント回路基板(PCB)において、特に印刷プロセスを経て形成される。これにより典型的に、例えば上記軸方向において小さく延在し、上記径方向及び上記周方向において著しく大きく延在する平坦構造が製造される。上記接続ラインはその延在範囲に沿って上記プリント回路基板の電気的に絶縁する材料、例えばプラスチック又は樹脂に囲まれる。
【0022】
本発明の場合、上記プリント回路基板に配線される上記接続ラインが少なくとも部分的に特に有利な様式で設計されることを提示する。上記接続ラインの特定の構成は、特に渦電流の形成が減少、特に著しく減少するように意図される。
【0023】
上記接続ラインは少なくとも部分的に少なくとも1つの平面、場合によっては複数の平面において、上記プリント回路基板における軸方向を横断して配線される。上記平面は上記軸方向に沿って相互に間隔を空け、又は少なくとも上記軸方向に沿って相互にずらして配置される。
【0024】
各接続ラインは電気接続部又は多相電流の相、及びそれぞれ少なくとも(あるいは正確には)1つのステータ歯(又はこのステータ歯に配置される少なくとも1つのコイル)に関連付けされる。
【0025】
上記接続ラインは、それぞれの上記ステータ歯に配置されるコイルと少なくとも部分的に整列されるように、上記軸方向に沿って配置されてもよい。このため、コイルに関連付けされた上記接続ラインによって個々のコイル又は個々の巻線の接触が、(特に容易に)可能となる。接触は特に、上記巻線から少なくとも部分的に上記軸方向に沿って上記プリント回路基板に延びる、軸方向に配線されたラインを介して実現される。
【0026】
接触ラインは、上記プリント回路基板において特に上記軸方向に沿って延び、この接触ラインは上記プリント回路基板の異なる平面に配置された個々の接続ラインを相互に接続する。
【0027】
上記接続ラインが少なくとも部分的に上記コイルと整列される結果として、上記ステータ歯は少なくとも上記プリント回路基板内に、又は上記軸方向に沿って且つ上記プリント回路基板を通って延びてもよい。上記プリント回路基板は、特に上記ステータ歯用の対応する開口又は入口部を有する。
【0028】
少なくとも1つの接続ラインの少なくとも1つの区分を複数のサブラインに分割し、上記サブラインは上記区分内(のみ)で、(例えば上記プリント回路基板の上述した材料を介して)相互に電気的に絶縁されるよう配置されることが提示される。
【0029】
接続ラインの上記サブラインは、相互に並列に、つまり共通して例えば多相電流の相に関連付けされて電気的に接続される。少なくとも上記区分において上記接続ラインを複数のサブラインに分割すると、上記モータの作動中に渦電流による損失が著しく削減される。
【0030】
特に、上記プリント回路基板は、上記軸方向に沿って上記ステータ及び上記ロータの間に配置される。例えば組み立て条件に基づいて選択されたモータのこの構成において特に、少なくとも上記区分において上記接続ラインをサブラインに分割する結果として渦電流による損失が著しく削減され得る。例えば、上記プリント回路基板及び上記モータハウジングの間の嵌め合いの結果として、上記プリント回路基板は、上記ステータを支持し、上記ロータによって上記ステータに作用する軸力を吸収し、それら軸力をハウジングに逃がすために使用され得る。
【0031】
特に、上記ロータは複数の磁石を有する。上記区分は少なくとも、上記磁石が上記モータの作動中に上記軸方向に沿って整列され得る上記プリント回路基板の領域内に配置される。
【0032】
上記モータの作動中、上記ロータの上記磁石は、特に上記ロータに関する円形路に沿って動き、上記磁石は上記軸方向に沿って上記磁石と整列される上記プリント回線基板の環状領域内でのみ動く。
【0033】
特にこの領域において最も強い渦電流が生じ、これら渦電流は上記接続ラインをサブラインに分割することによって少なくとも削減され得る。
【0034】
特に、少なくとも1つのサブライン、好ましくは第1端及び第2端の間で配線方向に沿って延びるすべてのサブラインは、最大1.5ミリメートルの、好ましくは最大1.0ミリメートルの、特に好ましくは最大0.5ミリメートルの、さらには最大0.2ミリメートルの、上記配線方向を横断して(さらに上記軸方向を横断し、すなわち上記周方向及び/又は上記径方向において)延びる幅を有する。
【0035】
特に、上記軸方向に延びる上記プリント回路基板における上記サブライン及び/又は接続ラインの高さは、最大1.0ミリメートル、特に最大0.5ミリメートル、特に好ましくは0.3ミリメートル、さらには最大0.2ミリメートルである。
【0036】
特に、異なる接続ラインに関連付けされた上記サブラインは、上記プリント回路基板において少なくとも部分的に互いに異なる平面内に配線され、上記プリント回路基板の平面は上記軸方向に相互に少なくともずれている。
【0037】
特に、相互に異なる上記平面に配置された少なくとも上記接続ライン又はサブラインは、上記プリント回路基板内の上記軸方向に沿って延びる接触ラインを介して、相互に電気的に伝導可能に配置される。接触ラインは、それぞれの上記接触ラインに接続された上記サブラインのライン断面の最大100%、特に最大80%、好ましくは最大50%を占めるライン断面を有する。
【0038】
特に、接続ラインの少なくとも1つの区分における少なくとも一部のサブラインは、上記プリント回路基板において互いに異なる平面内に配線され、これらの平面は上記軸方向において少なくとも相互にずれている。
【0039】
特に、上記サブラインは、専ら上記区分の外部で、上記接続ラインの他のサブラインと電気的に伝導可能に互いに接続される。
【0040】
特に、上記サブラインは、専ら上記区分の外部で接触ラインを介して、他のサブライン若しくは他の複数の接続ライン、又は他の接続ラインに電気的に伝導可能に接続される。
【0041】
特に、上記少なくとも1つの接続ラインは、第1インターフェースから上記接続線の1つに、且つ少なくとも部分的に上記ステータ歯の周囲から第2インターフェースに延び、上記接続線は上記区分の外部でサブラインに分割もされる。
【0042】
特に、上記接続ラインは、上記プリント回路基板における上記接続ラインの全範囲に沿ってサブラインに分割され、又はサブラインの形式に設計される。特に、上記接続ラインの端部のみ又は両端部のみが電気的に伝導可能に統合され、さらに(それぞれ)1つのインターフェースに接続される。
【0043】
特に、各サブラインは、上記プリント回路基板において専ら平面に沿って延びる。
【0044】
特に、上記区分内の少なくとも1つの接続ラインは少なくとも3つの、好ましくは少なくとも4つの、特に好ましくは少なくとも5つ又は6つのさらにはより多くのサブラインに分割される。
【0045】
上記接触ラインは丸形の、例えば円形の又は楕円のライン断面を有し得る。
【0046】
特に、上記接触ラインは、非丸形のライン断面を有する。上記接触ラインは、例えば角形の、好ましくは矩形のライン断面を有する。
【0047】
特に、上記巻線及び/又は上記サブラインの配線に平行な上記接触ラインの上記ライン断面の延在部分は、上記配線を横断する延在部分よりも大きい。
【0048】
電動モータ用のプリント回路基板、特に上述した電動モータ用のプリント回路基板が提示される。
【0049】
上記モータは、軸方向に沿って相互に隣接して配置される少なくとも1つのステータ及び環状ロータを少なくとも備える。上記ステータは、周方向に沿って相互に隣接して配置され、且つ上記軸方向に沿ってそれぞれ延びる複数のステータ歯を有する。少なくとも1つの巻線、特に複数の巻線を有する少なくとも1つのコイルは、各ステータ歯に配置される。(各コイルの)上記少なくとも1つの巻線は、電気的に伝導可能にプリント回路基板に接続され得、上記プリント回路基板は上記ステータの端面に、且つ上記軸方向に沿って上記ステータに隣接して配置され得る(この場合、少なくとも部分的に上記ステータ歯を覆うこともあり得る)。
【0050】
上記プリント回路基板は、複数の電気接続ラインを備え、この電気接続ラインを介して各コイルの少なくとも1つの巻線が、少なくとも他の巻線又は上記電動モータの少なくとも1つの電気接続部に接続される。これらの接続ラインは、上記プリント回路基板において上記軸方向を横断する少なくとも1つの平面内に少なくとも部分的に配線される。各接続ラインは、電気接続部及びそれぞれ少なくとも1つの上記ステータ歯と関連付けされる。少なくとも1つの接続ラインの少なくとも1つの区分は、複数のサブラインに分割され、上記区分における上記サブラインは相互に電気的に絶縁されるように配置される。
【0051】
上記モータに関する記載は、特に上記プリント回路基板に同様に転用可能であり、逆もまた同様である。
【0052】
特に請求の範囲及びこれらを記載した明細書における不定冠詞(「a」、「an」)の使用は、そのまま解され、数字として解されない。したがって、それによって導入された用語及び要素は、少なくとも1つは存在するが、特に複数としても存在し得るように理解されるべきである。
【0053】
疑義を避けるため、ここで使用される数値(「第一」、「第二」、「第三」等)は、主に(専ら)複数の類似する対象、寸法又は工程の間を区別するために機能する、つまり、特に、これら対象、寸法又は工程の互いの依存関係及び/又は順序を必ずしも特定しない。依存関係及び/又は順序が必要な場合は、その旨がここで明示的に記載されるか、又は具体的に記述された構成を検討する際に当業者にとって明らかとなる。
【0054】
本発明及び技術環境は、図面を参照して以下により詳細に説明される。本発明は示された例示的な実施形態によって限定されないことに留意すべきである。特に、明示的に示されない限り、図面で説明された重要事項の部分的な側面を抽出し、本明細書及び/又は図面からの他の要素及び知見と組み合わせることも可能である。必要に応じて、他の図面からの説明を補足的に使用し得るように、同一の参照符号は同一の対象を示す。図面は、模式的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図4】電動モータ用の既知のプリント回路基板を平面断面図で示す。
【
図6】
図4に係るプリント回路基板を有するモータを平面断面図で示す。
【
図7】他のプリント回路基板を有するモータを平面断面図で示す。
【
図8】プリント回路基板を有するモータを平面断面図で示す。
【
図9】
図8に係るモータのプリント回路基板を側面断面図で示す。
【
図12】
図8に係るモータのステータを斜視図で示す。
【
図16】
図4に係る既知のプリント回路基板を平面断面図で示す。
【
図17】
図16に係るプリント回路基板の第1実施形態を側面断面図で示す。
【
図18】
図9に係るプリント回路基板の第2実施形態を示す。
【
図19】
図9に係るプリント回路基板の詳細を平面断面図及び側面断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1に、電動モータ1の一部を斜視図で示す。
図2に、
図1に係る電動モータ1を側面断面図で示す。
図3に、
図1及び
図2に係る電動モータ1を側面断面図で示す。
図4に、電動モータ1用の既知のプリント回路基板9を平面断面図で示す。
図5に、作動中の
図1から
図3に係る電動モータ1を側面断面図で示す。
図6に、
図4に係るプリント回路基板9を有するモータ1を平面断面図で示す。
図1から
図6が以下で説明される。
【0057】
電動モータ1は、軸方向4に沿って相互に隣接して配置されるステータ3及び環状ロータ2を備える。ステータ3は、周方向5に沿って相互に隣接して配置され、且つ軸方向4に沿ってそれぞれ延びる複数のステータ歯6を有する。少なくとも1つの巻線8、又は複数の巻線8を有するコイル7は、各ステータ歯6に配置される。巻線8は、電気的に伝導するようにプリント回路基板9に接続され、プリント回路基板9はステータ2の端面10に、且つ軸方向4に沿ってステータ2に隣接して配置される。プリント回路基板9は、複数の電気接続ライン11を備え、この電気接続ライン11を介して巻線8が相互に、且つ電動モータ1の電気接続部12,13に接続される。これらの接続ライン11は、プリント回路基板9において軸方向4を横断する複数の平面14,15,16内に(
図2では、例えば第1平面14及び第2平面15内に)少なくとも部分的に配線される。各接続ライン11は、電気接続部12,13及びそれぞれ少なくとも1つのステータ歯6と関連付けされ、それぞれのステータ歯6に配置されたコイル7と少なくとも部分的に整列するように上記軸方向に沿って配置される(
図4参照)。
【0058】
プリント回路基板9において、接続ライン11は、軸方向4において小さく延在し(
図2,3参照)、径方向17及び周方向5において著しく大きく延在する平坦構造(
図4参照)として設計される。接続ライン11はその延在範囲に沿ってプリント回路基板9の電気的に絶縁する材料、例えばプラスチック又は樹脂に囲まれる。
【0059】
アキシャルフラックスモータ1において、上記ロータを駆動するため、ステータ2によって生じる磁束28の実質的に軸方向4を向く要素が使用される(
図5参照)。
【0060】
図6に、大きい幅20の接続ライン11を有する既知のプリント回路基板9において、局所的に強い渦電流又は渦電流による損失が発生することを示す。
【0061】
図7に、他のプリント回路基板9を有するモータ1を平面断面図で示す。
図1から
図6に関する実施形態が参照される。
【0062】
ここでは、区分18における接続ライン11が小さい幅20で設計されている。このため、渦電流による損失は削減され得るものの、区分18における接続ライン11の抵抗はこのとき著しく増大する。
【0063】
図8に、プリント回路基板9を有するモータ1を平面断面図で示す。
図9に、
図8に係るモータ1のプリント回路基板9を側面断面図で示す。
図10に、
図8に係るモータ1を第1斜視図で示す。
図11に、
図8に係るモータ1を第2斜視図で示す。
図12に、
図8に係るモータ1のステータ2を斜視図で示す。
図13に、
図8に係るモータ1を第3斜視図で示す。
図14に、
図8に係るモータ1を第4斜視図で示す。
図15に、
図8に係るモータ1を側面断面図で示す。
図8から
図15が以下で併せて説明される。
図1から
図7に関する実施形態が参照される。
【0064】
電動モータ1は、軸方向4に沿って相互に隣接して配置されるステータ3及び環状ロータ2を備える。ステータ3は、周方向5に沿って相互に隣接して配置され、且つ軸方向4に沿ってそれぞれ延びる複数のステータ歯6を有する。複数の巻線8を有するコイル7は、各ステータ歯6に配置される。巻線8は、電気的に伝導可能にプリント回路基板9に接続され、プリント回路基板9はステータ2の端面10に、且つ軸方向4に沿ってステータ2に隣接して(又は重なって)配置される。プリント回路基板9は、複数の電気接続ライン11を備え、この電気接続ライン11を介して巻線8が相互に、且つ電動モータ1の電気接続部12,13に接続される。これらの接続ライン11は、プリント回路基板9において軸方向4を横断する複数の平面14,15,16内に(
図9では、例えば第1平面14、第2平面15、第3平面16内に)配線される。各接続ライン11は、電気接続部12,13及びそれぞれ少なくとも1つのステータ歯6と関連付けされ、それぞれのステータ歯6に配置されたコイル7と少なくとも部分的に整列するように軸方向4に沿って配置される(
図10から
図15参照)。
【0065】
2つの互いに隣接するステータ歯6の間に配置され、径方向18に沿って延び、且つモータ1の作動2中に軸方向4に沿ってロータ3の磁石27と整列される接続ライン11の区分18は、複数のサブライン19に分割される。区分18における複数のサブライン19は、相互に電気的に絶縁されるように配置される。
図8から
図15において、サブライン19は、軸方向4を横断して延びる配線方向31に沿って第1端29及び第2端30の間を延びる。この場合、接続ライン11は全範囲に亘ってサブライン19に分割される。
【0066】
ステータ2は、環状基体26(ヨーク、ステータアイアン、又はステータバックアイアン)を起点として軸方向4に沿って延びるステータ歯6及びコイル7を有する。コイル7又はステータ歯6の数及びロータ3の磁石27の数は、相互に異なってもよく、相互に一致していてもよい。
【0067】
各接続ライン11は、電気接続部12,13及びそれぞれ少なくとも1つのステータ歯6と関連付けされ、上記軸方向い沿って配置され、それぞれのステータ歯6に配置されたコイル7と少なくとも部分的に整列される。このため、コイル7に関連付けされた接続ライン11によって、コイル7の個々の巻線8の接触が可能となる。接触は、巻線8から少なくとも部分的に軸方向4に沿ってプリント回路基板9に延びる、ライン25(例えば
図15を参照)を介して実現される。接続ライン11と相互に接続する接触ライン23のライン25は、プリント回路基板9において軸方向4に沿って延びる。
【0068】
接続ライン11が少なくとも部分的にコイル7と整列される結果として、ステータ歯6は少なくともプリント回路基板9内に、又は軸方向4に沿って且つ上記プリント回路基板を通って延びてもよい。プリント回路基板9は、ステータ歯6用の対応する開口又は入口部を有する。
【0069】
接続ライン11の区分18は、複数のサブライン19(ここでは6つのサブライン)に分割され、区分18におけるサブライン19は(例えば上述のプリント回路基板9の材料によって)相互に電気的に絶縁されるように配置される。
【0070】
プリント回路基板9は、軸方向4に沿ってステータ2及びロータ3の間に配置される。例えば組み立て条件に基づいて選択されたモータ1のこの構成において特に、区分18における接続ライン11をサブライン19に分割する結果として渦電流による損失が著しく削減され得る。
【0071】
サブライン19は、サブライン19の配線方向31を横断して延びる、著しく縮小された幅20を有する(例えば
図8を参照)。
【0072】
サブライン19は、専ら上記区分の外部で、接続ライン11の他のサブライン19と電気的に伝導可能に互いに接続される(例えば
図12を参照)。
【0073】
接続ライン11は、第1インターフェース21から接続線12,13の1つに、且つ少なくとも部分的にステータ歯6の周囲から第2インターフェース22に延び、接続線11は区分18の外部でサブライン19に分割もされる。
図8、
図10から
図15において、接続ライン11は、全体的にサブライン19の形式に設計され、
図12において、接続ライン11の両端部のみ又は接続ライン19の端部29、30のみが電気的に伝導可能に統合され、さらに(それぞれ)1つのインターフェース21、22に接続される。
【0074】
各サブライン19は、プリント回路基板9において専ら平面14,15,16に沿って延びる。
【0075】
コイル7の複数の巻線8は、接続ライン11に接続され、これにより、プリント回路基板9において軸方向4に沿って延びるライン25を介して電気的に伝導可能に少なくとも部分的にサブライン19に接続される。サブライン19は、軸方向4に延びる接触ライン23を介してプリント回路基板9内で相互に接続される。
【0076】
図16に、
図4に係る既知のプリント回路基板9を平面断面図で示す。
図17に、
図16に係るプリント回路基板9の第1実施形態を側面断面図で示す。
図18に、
図9に係るプリント回路基板9の第2実施形態を示す。
図1に、
図9に係るプリント回路基板9の詳細を平面断面図及び側面断面図で示す。
図16から
図19が以下で併せて説明される。
図1から
図15に関する実施形態が参照される。
【0077】
既知のプリント回路基板9において、接続ライン11は、軸方向4において小さく延在し(
図17参照)、径方向17及び周方向5において著しく大きく延在する平坦構造(
図16参照)として設計される。
【0078】
提示されたプリント回路基板9の接触ライン23は、それぞれの接触ライン23に接続されたサブライン19のライン断面24の最大100%を占める(ここでは軸方向4を横断する平面内の)ライン断面24を有する。
【0079】
接触ライン23及び場合によりライン25は、丸形の、例えば円形の又は楕円のライン断面24を有し得る(
図16から
図18参照)。
【0080】
図19に、接触ライン23が非丸形のライン断面24を有することを示す。ここでの接触ライン23は矩形のライン断面24を有する。巻線8及びサブライン19の配線に平行なライン断面24の延在部分は、上記配線を横断する(すなわち実質的に円周方向5にある)延在部分よりも大きい。
【符号の説明】
【0081】
1 モータ
2 ステータ
3 ロータ
4 軸方向
5 周方向
6 ステータ歯
7 コイル
8 巻線
9 プリント回路基板
10 端面
11 接続ライン
12 第1接続線
13 第2接続線
14 第1平面
15 第2平面
16 第3平面
17 径方向
18 区分
19 サブライン
20 幅
21 第1インターフェース
22 第2インターフェース
23 接触ライン
24 ライン断面
25 ライン
26 基体
27 磁石
28 磁束
29 第1端
30 第2端
31 配線方向