(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】噴霧乾燥コーヒー製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 5/36 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
A23F5/36
(21)【出願番号】P 2022579723
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2021067389
(87)【国際公開番号】W WO2021260135
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516386029
【氏名又は名称】コーニンクレイケ ダウ エグバーツ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘンソン, シアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェルシュ, ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ローマン コロチャノ, ボルハ
(72)【発明者】
【氏名】エスピノ, エバ
(72)【発明者】
【氏名】シランス-ケニー, ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】エッジ, チャールズ
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/136146(WO,A1)
【文献】特表2008-508900(JP,A)
【文献】特表2016-504923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/00-5/50
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー粉末を製造する方法であって、
a)
600マイクロメートル未満の平均粒径を有する、準備された焙煎粉砕コーヒーの抽出によって、水性コーヒー抽出物を準備する工程であって、前記抽出物が30~55重量%の可溶性コーヒー固形分と1~10重量%のオイルとを含
み、前記水性コーヒー抽出物が水とコーヒー由来成分とからなる、工程と、
b)前記水性コーヒー抽出物を、2段階の均質化プロセスに供して、均質なコーヒー抽出物を得る工程であって、前記第1の段階が200~1000バールで行われ、前記第2の段階が10~100バールで行われる、工程と、
c)前記均質なコーヒー抽出物を噴霧乾燥する工程と、
を含
み、前記方法が、前記水性コーヒー抽出物にコーヒーオイルを添加するいかなる工程も有さない、方法。
【請求項2】
前記水性コーヒー抽出物が、1.5~5重量%のコーヒーオイルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性コーヒー抽出物がアロマ化コーヒー抽出物であり、前記水性コーヒー抽出物が、
(i)焙煎粉砕コーヒーを準備する工程と、
(ii)前記焙煎粉砕コーヒーを水と接触させてコーヒー組成物を形成する工程と、
(iii)前記コーヒー組成物をアロマ分離工程に供して、コーヒーアロマ画分を回収し、また脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーを形成する工程であって、前記アロマ分離工程で前記コーヒー組成物の1~15重量%を前記コーヒーアロマ画分として回収する、工程と、
(iv)前記脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーを1つ以上の水性抽出工程に供して、35~70重量%のコーヒー固形分を有する中間コーヒー抽出物を得る工程と、
(v)前記コーヒーアロマ画分を前記中間コーヒー抽出物に添加して、前記アロマ化コーヒー抽出物を形成する工程と、によって得られる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アロマ化コーヒー抽出物が、前記コーヒーアロマ画分と前記中間コーヒー抽出物とを、コーヒーアロマ画分対中間コーヒー抽出物の重量比2:5~1:20で含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(i)で準備される前記焙煎粉砕コーヒーが、100~600マイクロメートルの平均粒径を有し、
工程(ii)が、前記焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリーを形成することを含み、
前記脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーが、脱アロマ化スラリーである、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
工程(iii)が、
(A)前記脱アロマ化スラリーを90~150℃の温度で第1の濾過装置に通して、第1のコーヒー抽出物と第1の濾過ケーキとを形成する工程と、
(B)水を前記第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する工程と、
(C)前記再構成スラリーを150~205℃の温度で熱処理する工程と、
(D)次いで、前記熱処理した再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物と第2の濾過ケーキとを形成する工程と、
(E)前記第1及び第2のコーヒー抽出物を合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(F)前記第3のコーヒー抽出物を濃縮して、前記中間コーヒー抽出物を形成する工程
とを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)及び/又は工程(B)における前記水が、80~100℃の温度である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(B)で形成された前記再構成スラリーが、12~30重量%の固形分を有する、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の濾過ケーキを更なる高温抽出プロセスに供して、更なるコーヒー抽出物を得て、工程(E)において前記第1及び第2のコーヒー抽出物と合わせて、前記第3のコーヒー抽出物を形成する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記コーヒー抽出製品を包装することを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が連続プロセスである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された噴霧乾燥コーヒー製品を提供するプロセス及び噴霧乾燥製品に関する。特に、本発明は、オイル分が豊富で均質なコーヒー抽出物を噴霧乾燥することによって得られる、改善された感覚プロファイルを有する噴霧乾燥コーヒーに関する。
【背景技術】
【0002】
焙煎粉砕コーヒーを水で抽出して、高コーヒー固形分のコーヒー抽出物を得ることは周知である。更に、このような抽出物を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させて、可溶性飲料粉末を得ることは周知である。次いで、この飲料粉末を消費者の都合の良い時に熱水で再構成して、コーヒー飲料を得ることができる。このようなホームメイドのコーヒー飲料は、コーヒーショップの飲料と類似の味を有することが望ましい。
【0003】
可溶性コーヒー製品の工業的生産は、コーヒーショップのブリューシステムよりも高温及び高圧を伴う。これにより、豆から得られる収量が多くなり、それにより収益性が高くなるが、コーヒーに望ましくない加工フレーバーノートがつく可能性があるという副次的な影響がある。これを避けるために、多数の技術が採用されており、最初の低温抽出工程でフレーバー分子を確実に保持するためのアロマ捕捉法などが挙げられる。
【0004】
従来のコーヒー抽出プロセスの例は、以下の工程を伴う。未加工コーヒー豆は、所望の焙煎範囲に焙煎され、2~3mmの粒径に粉砕する。これは、約150℃の第1の工程と、約185℃のより高い温度の第2の工程とを有するカラム抽出プロセスに供される。各抽出工程で豆から洗浄されたコーヒー抽出物を合わせ、濃縮し、乾燥させる。プロセスは、複数の抽出カラムを使用した半連続式である。
【0005】
欧州特許第0826308号では、可溶性コーヒー固形分の向流抽出のためのプロセスが開示されている。可溶性コーヒー固形分は、80℃~160℃の温度で一次抽出液を使用して、第1の抽出段階の焙煎粉砕コーヒーから抽出する。次いで、可溶性コーヒー固形分を、160℃~190℃の温度で二次抽出液を使用して、第2の抽出段階で部分抽出された粉砕物から抽出し、コーヒー粉砕物は、それらから抽出された可溶性コーヒー固形分の少なくとも25%重量%を有する。第2の抽出段階から得られたコーヒー粉砕物を排出し、160℃~220℃の温度で1~15分間、加水分解段階で熱加水分解する。可溶性コーヒー固形分を、170℃~195℃の温度で三次抽出液を使用して、第3の抽出段階で加水分解コーヒー粉砕物から可溶性コーヒー固形分を抽出し、抽出したコーヒー粉砕物及び加水分解コーヒー抽出物を提供する。1%未満のフルフラール誘導体、4%未満の単糖類、10%未満のオリゴ糖、及び少なくとも19%の多糖類を含む、少なくとも30%の糖類を含有する可溶性コーヒー製品が得られ、この糖類は、3超の多分散度を有する2000単位を超える加重平均分子量を有する。
【0006】
欧州特許第0916267号では、1つ以上の抽出段階で抽出製品を提供するための、焙煎粉砕コーヒーなど、それらを含有する固体粒子から水溶性固形分を連続的に抽出するプロセスが開示されている。各抽出段階では、抽出される粒子及び抽出物を含有するスラリーを抽出反応器、例えば、固液分離器の直上に導入して、上方に移動する充填床を形成する。粒子は、充填床の上面を区画するために充填床から掻き取られる。抽出液は、充填床の上面の上方の抽出反応器へと導入される。充填床中の粒子から水溶性物質を抽出するために充填床を通して浸出する抽出液の一部が得られ、抽出物を形成する。抽出液の残りの部分は、使用済み粒子スラリーを提供するために、充填床から掻き取られた粒子を捕捉する。使用済み粒子スラリーを抽出反応器から除去する。抽出物は、充填床の下から除去され、抽出物の少なくとも一部が抽出製品を形成する。抽出段階は、1つ以上の可溶化段階によって分離されてもよい。
【0007】
欧州特許第1069830号では、コーヒーからアロマ成分を回収するためのプロセスが開示されている。水性液体中のコーヒー粉砕物のスラリーを、スラリーからアロマ成分をストリップするためにストリップする。ストリップは、アロマ成分を含有するアロマガスを提供するために、実質的に向流方式でガスを使用して実施される。アロマ成分は、次いで、アロマガスから回収される。アロマ成分は、抽出物の乾燥前に濃縮コーヒー抽出物に添加してもよい。生成されたコーヒー粉末は、アロマ及びフレーバーを大幅に増加させ、改善し、より高濃度のフラン及びジケトンを含有する。
【0008】
米国特許第3682649号では、全豆又は粉砕状態で、焙煎コーヒーを冷水加圧抽出し、高品質のコーヒー抽出物、及び更に加工可能な部分的抽出されたコーヒーを得ることが開示されている。コーヒー抽出物を乾燥させて、上等な可溶性コーヒーを得ることができる。部分的抽出されたコーヒーは、標準的な浸出技術によって更に抽出することができ、又は乾燥させ、レギュラー焙煎粉砕コーヒーとして使用することができる。
【0009】
米国特許第3652292号では、水性媒体として抽出することによって調製された可溶性コーヒー固形分を含み、その中に焙煎又は抽出された焙煎コーヒーの湿式粉砕コロイド粒子が添加される、インスタントコーヒー粉末の製造が開示されている。コロイド粒子は、コーヒー製品の総重量の約3重量%~40重量%を表す。コロイド粒子は、pH5.2を超えないようにpHを調節することによって凝集に対して安定化され、その粒子は、乾燥した可溶性コーヒー固形分中に入れられて、淹れたてのコーヒーアロマフレーバー及び濁度を有するインスタントコーヒー製品を形成する。
【0010】
欧州特許第1795074号は、焙煎コーヒー豆を粉砕時に放出されるアロマ成分が豊富で、用途及び目的に応じてコーヒーオイルの量を制御できる濃縮コーヒー抽出物を提供する方法と、それを工業的に製造するプロセスに関する。本発明によれば、上記目的は、焙煎コーヒー豆を湿式粉砕して得られたスラリーから、アロマ成分含有留出物と、コーヒーオイル含有液と、コーヒー抽出物とを分離し、コーヒー抽出物を濃縮した後、アロマ成分含有留出物及びコーヒーオイル含有液を添加し戻すことによって達成される。
【0011】
米国特許出願公開第2015/296829号には、そのフレーバーとアロマを改善するための可溶性コーヒーの表面処理の方法が記載されている。この方法は、既存の可溶性コーヒー粉末の表面上に0.5~4重量%のコーヒーオイル、次いで1~3重量%の水を順に添加することを伴う。
【0012】
欧州特許第0916267号では、焙煎粉砕コーヒー豆からコーヒーを抽出する方法を開示している。特に、抽出反応器10から下部出口30を通して得られる産物は液体コーヒー抽出物32である。これは、新鮮なコーヒー粉砕物をスラリー化するためのリサイクルコーヒー抽出物42と製品コーヒー抽出物20とに分割される(段落[0026])。下部出口30を通って出る液体は、コーヒー固形分を保持するスクリーン14を既に通った液体である。
【0013】
米国特許第3361571号は、脱カフェインコーヒー製品を得る方法に関する。
【0014】
欧州特許第1795074号は、アロマを含有し清澄化された濃縮コーヒー抽出物を提供するための抽出プロセスに関する。このプロセスの鍵は低温湿式ミル粉砕抽出である。低温操作の結果として、抽出物は、沈降を引き起こして不溶性コーヒー画分の生成に寄与するマンナンの含有レベルが低い。更に、抽出物は3つの清澄化工程(粗濾過、遠心分離及び精密濾過)に供される。
【0015】
液体(すなわち、水性)コーヒー抽出物及び乾燥した可溶性コーヒー製品の製造は、コーヒーショップ環境における出来立てのコーヒー飲料と比較して、フレーバーが異なるため、製造方法を改善して、改善された製品を実現することが常に求められている。乾燥した可溶性コーヒー製品のフレーバーを改善するための通常のアプローチの1つは、乾燥前に微粉砕焙煎コーヒー粒子をコーヒー抽出物に加えることである。このような粒子の含有は、典型的には、飲料中の過度の沈降物を回避するように制御されるが、概ね、製品のフレーバーに有益な効果を有する。小粒子の存在は、観察される口当たりにも寄与し得る。
【0016】
英国特許第1399650号には、水溶性インスタント食品粉末の凝集の改善が開示されている。
【0017】
米国特許出願公開第2006/0035000号には、改善されたフレーバーとアロマとを有する可溶性コーヒー製品が開示され、そのコーヒー製品は可溶性粒子状コーヒー及びアロマ化されていないコーヒーオイルを含む。このプロセスは、コーヒーオイルの溶媒抽出又は加圧下での豆からのコーヒーオイルの圧搾によっている。
【0018】
米国特許第2015296829号は、製品のアロマを改善するために既に形成されたコーヒー粉末の表面にコーヒーオイルを添加する方法に関する。
【0019】
米国特許出願公開第2014/106055号は、冷蔵も冷凍も必要とせずに環境温度で常温保存可能な超濃縮液体コーヒーを製造する技術に関する。
【0020】
国際公開第2020136146号には、コーヒー飲料を形成するインスタントコーヒー組成物が開示され、その組成物は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析して、1重量%以下のアラビノースを含む。
したがって、コーヒー製品を製造するための改善された方法、改善されたコーヒー製品を提供すること、及び/又は先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に利用可能な代替物をそれに提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】欧州特許第0826308号
【文献】欧州特許第0916267号
【文献】欧州特許第1069830号
【文献】米国特許第3682649号
【文献】米国特許第3652292号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様によれば、コーヒー粉末の製造方法を提供し、方法は、
a)30~55重量%の可溶性コーヒー固形分と1~10重量%のオイルとを含む水性コーヒー抽出物を準備する工程であって、水性コーヒー抽出物が水とコーヒー由来成分とからなる、工程と、
b)水性コーヒー抽出物を、2段階の均質化プロセスに供して、均質なコーヒー抽出物を得る工程であって、第1の段階が200~1000バールで行われ、第2の段階が10~100バールで行われる、工程と、
c)均質なコーヒー抽出物を噴霧乾燥する工程と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を、ここで更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様がより詳細に定義される。このように定義されている各態様は、反対のことが明示されていない限り、他の態様(単数又は複数)と組み合わされてもよい。特に、好ましい又は有利であることが示されているいずれの特徴も、好ましい又は有利であることが示されている他の特徴(単数又は複数)と組み合わされてもよい。
【0024】
本発明は、コーヒー粉末、特に噴霧乾燥コーヒー粉末の製造方法を提供する。噴霧乾燥コーヒー粉末は、熱水(例えば、80~95℃)を加えると実質的に直ちに飲料を形成することから、「インスタント」コーヒー製品であるとみなされる。このような製品は、当該技術分野において周知のように、フレーバー又は外観を改善するために少量の微粉砕の焙煎粉砕コーヒーを加えることによって補完することができる。これは、噴霧乾燥工程の前又は後に添加することができる。
【0025】
本出願は、「固形分」に言及する。これらは、全ての水が除去された後に残る物質である。したがって、コーヒー飲料を取り、水を除去した場合(蒸発によって)、コーヒー固形分が残される。これらのコーヒー固形分は、可溶性コーヒー固形分及び不溶性コーヒー固形分を含む。不溶性コーヒー固形分は、焙煎粉砕コーヒー材料及びコーヒーオイルを含む。本明細書では、不溶性コーヒー固形分の非オイル性部分である不溶性コーヒー沈降画分について、更なる区別がなされる。
【0026】
好ましくは、水性コーヒー抽出物は、35~70重量%の総固形分(すなわち、可溶性コーヒー固形分及び不溶性コーヒー固形分)を含み、より好ましくは、水性コーヒー抽出物は45~55重量%の総固形分を含有する。総固形分が35重量%未満では、除去するべき水が大量であるため、噴霧乾燥プロセスは非効率的である。70重量%を超えると、固形分のレベルが、噴霧乾燥法による噴霧乾燥が困難になるほど高くなり得る。
【0027】
本方法は、30~55重量%の可溶性コーヒー固形分と1~10重量%のオイルとを含む水性コーヒー抽出物を準備することを含み、水性コーヒー抽出物は水とコーヒー由来成分とからなる。コーヒー固形分は主には可溶性コーヒー固形分を含むが、コーヒーオイルを含む不溶性コーヒー固形分も一部分含有する。望ましくは、不溶性コーヒー固形分は、非オイル性の不溶性コーヒー沈降画分を含有する。これは、水性コーヒー抽出物を微粉砕焙煎コーヒー材料で補完することによって得ることができる。あるいは、不溶性コーヒー沈降画分は、製造プロセスから自然に得られる。実施例に示すように、ほとんどのインスタントコーヒー製品中には少量の不溶性物質が存在する。
【0028】
好ましくは、水性コーヒー抽出物は、1.5~5重量%のコーヒーオイル、より好ましくは2~4重量%のコーヒーオイルを含有する。実施例に示すように、可溶性コーヒーがそのような高レベルのオイルを含有することは珍しい。
【0029】
好ましくは、水性コーヒー抽出物は、45~55重量%の可溶性コーヒー固形分を含み、それは、このことが乾燥中に除去する必要のある水がより少ないことを意味するからである。これにより、処理効率が改善される。
【0030】
好ましくは、水性コーヒー抽出物は、2019年12月20日に出願された国際特許出願第PCT/EP2019/086859号に記載されている新しい抽出プロセスによって得られ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。この方法は、下に説明するように、多量のコーヒーオイルを含む水性コーヒー抽出物を本質的に与える。対照的に、最も知られた焙煎粉砕コーヒーの抽出技術では、飲料の表面上に油膜を形成する生成物を意図的に回避するために、又は行われる工程の必然的な結果としてのいずれかで、オイルのレベルの低い抽出物が生成される。加えて、この方法が、抽出物の補完を必要とせず、コク及びフレーバーを改善する非オイル性の不溶性コーヒー沈降画分を本質的に与えることを見出した。
【0031】
したがって、有利なことに、方法では、圧搾(乾燥した豆の圧搾及び押圧)又は溶媒抽出(CO2又は有機溶媒などによる)によって得られるものなどの別個のオイル源の添加によらないので、コーヒーオイルを得るための別個の工程を必要としない。むしろ、コーヒー豆が非常に微細に粉砕されている場合(<600マイクロメートル)、それらをスラリー抽出に供したときに高レベルのコーヒーオイルが自然に放出されることが見出されている。したがって、本明細書で使用される好ましい方法は、コーヒーオイルを水性コーヒー抽出物に添加するいかなる工程も有していない。
【0032】
本明細書に記載される第1の態様のプロセスによって表面の油膜の存在が回避されるが、本明細書で論じられる均質化工程を更に追加することによって、更なる予想外の利点が得られる。特に、味及び口当たりを含む感覚プロファイルが変化し、改善される。理論に束縛されるものではないが、生成された安定なオイルと水のエマルジョンが、噴霧乾燥プロセス中にコーヒー中の望ましいアロマ成分をより良好に保護するように機能すると推測される。更に、安定なオイルと水のエマルジョンによって、コーヒーに再添加されるアロマを高レベルで含有することができ、それにより、高度にアロマ化された製品を得ることができる。すなわち、コーヒーオイルがコーヒー中のアロマを保護するだけでなく、驚くべきことに、噴霧乾燥コーヒー抽出物に添加された揮発性アロマ化合物の大部分を保護することを見出した。
【0033】
本方法は、水性コーヒー抽出物を、2段階の均質化プロセスに供して均質なコーヒー抽出物を得る工程であって、第1の段階が200~1000バールで行われ、第2の段階が10~100バールで行われる、工程を更に含む。均質化装置は、飲料の分野でよく知られており、特に乳製品の加工においてエマルジョンを安定化させるために使用されている。単一段階ではオイルの凝集とクラスター形成を引き起こす傾向があるため、2段階プロセスの提供が特に好ましい。更に、高圧工程とそれに続く低圧工程とを使用することで、より安定なエマルジョンが得られる。本発明者らは、ホモジナイザーが、有利な最終製品に必要とされる望ましい非常に微細な水中油型エマルジョンを実現する唯一の方法であることを見出した。
【0034】
好ましくは、第1の段階は500~1000バール、例えば600~800バールで行われる。第1の工程におけるこれらのより高い範囲によって、より大きい安定性を有するより小さい平均(D50)油滴サイズが得られることを見出した。好ましくは、第2の段階は10~50バールで行われる。このような加工条件によって、エマルジョンの安定性が最大になることを見出した。均質化は抽出物の所与の部分に対して非常に迅速に行なわれ、特定された条件下で、エマルジョンは、数日間ではなくても数時間にわたって安定したままである。
【0035】
コーヒー抽出物は、好ましくは均質化されて、8マイクロメートル未満、好ましくは7未満、より好ましくは5未満、最も好ましくは4未満、例えば、好ましくは1~7マイクロメートル、最も好ましくは1~5マイクロメートル、より好ましくは2~4マイクロメートル、より好ましくは2.5~3.5マイクロメートルのようなD50の油滴サイズを有する。本発明者らは、噴霧乾燥粉末から得られる再構成された飲料中にこのサイズ範囲の油滴が保持され続けて、改善されたクリーミーさの知覚を与えることを見出した。対照的に、より大きなオイル粒子では、よりコクが少ない(すなわち、より水っぽい)飲料という感覚であった。液滴はまた、抽出物の保存中にも保持され続けたことから、噴霧乾燥前に適用される特定のプロセスを制限する必要がなかった。
【0036】
コーヒー抽出物は、好ましくは、40~90℃の温度及び1.5~10バールのゲージ圧でホモジナイザーに供給される。この温度が、温度によって組成物が劣化することなく、高固形分抽出物をポンプ輸送できることを確実にするために必要である。
【0037】
最後に、本方法は、均質なコーヒー抽出物を噴霧乾燥する工程を伴う。噴霧乾燥プロセスは当該技術分野において公知である。製品は噴霧乾燥インスタントコーヒー粉末である。例示的な噴霧乾燥条件は、40~90℃及び20~500バールである。製品の水分は、好ましくは1~5重量%、例えば約3重量%である。
【0038】
好ましくは、均質化した抽出物を、貯蔵せずに直ちに噴霧乾燥機に移す。これにより、均質化と噴霧乾燥工程を駆動するために単一の高圧ポンプを使用することができ、エネルギー及び加工を効率化できる。単一のポンプで駆動することができるホモジナイザーの設計は、当該技術分野で公知である。好ましくは、抽出物を、均質化してから5分以内、好ましくは約1分以内に噴霧乾燥する。
【0039】
コーヒーを噴霧乾燥する前に、コーヒーをガス注入工程に供してもよい。これは、均質化工程の前又は後に行うことができ、製品に特別な影響はない。これによって、製品の多孔性が増大することにより、最終製品の密度が減少する。ガス注入法の例は、米国特許第5882717号に記載されている。ガスは、任意の好適な量及び任意の圧力で添加することができ、1~500バール(ゲージ圧)が知られている。好ましい圧力は、10~100バールの範囲、例えば40バール(ゲージ圧)である。製品へのガスの添加によって、低い密度(特にCO2)又は製品の高いクレマ(特にN2)と共に、高オイル及び高アロマの製品が可能になる。注入されるガスはクレマを与える窒素であることが最も好ましい。
【0040】
理解されるように、噴霧乾燥は、コーヒー粉末を製造するために使用される凍結乾燥などの他の技術を含む多くの技術のうちの1つである。凍結乾燥は、新鮮なコーヒー抽出物を取って、それを約-40℃に冷却し、次いで水分を昇華させる工程を伴う。これにより、連続多孔性製品が得られる。対照的に、噴霧乾燥は、新鮮な抽出物を高温の循環ガスと共に噴霧乾燥塔の頂部に噴霧する工程を伴う。したがって、噴霧乾燥粉末の乾燥は、典型的には、より速く、より高温であり、処理する抽出物がより分解され易い。製品はまた、微細な独立気孔を有する傾向がある。
【0041】
加工条件から、より大きな量をより迅速に処理することができるため、噴霧乾燥が好ましい。それによって、消費者の間には、噴霧乾燥コーヒーには本物のコーヒーアロマが少ないかもしれないという全般的な偏見がある。これは思うに、より過酷な乾燥プロセス中での揮発性コーヒー固形分の損失に由来する。したがって、凍結乾燥製品は概して、より高級であると考えられ、より良好な感覚プロファイルを有すると期待されている。
【0042】
しかしながら、本発明者らは、噴霧乾燥前に均質化に供した高オイル含有量の水性抽出物を準備することによって、改善された製品が得られることを見出した。これには特に、予想外にアロマ画分が乾燥プロセスを通して保持されると思われることから、抽出物を回収されたアロマ画分で補完した場合がある。結果として、本発明者らは、凍結乾燥コーヒー粉末のフレーバー及び口当たりに匹敵し、更にはそれを上回るフレーバー及び口当たりを有する噴霧乾燥コーヒー製品を得ることができた。
【0043】
したがって、好ましい実施形態によれば、水性コーヒー抽出物はアロマ化コーヒー抽出物である。すなわち、水性コーヒー抽出物は、新鮮な焙煎粉砕コーヒーから得られるアロマ画分を含む。
【0044】
アロマ回収プロセスは、当該技術分野において既知であり、蒸気ストリッピングと呼ばれることもある。典型的な蒸気ストリッピングプロセスでは、カラムに焙煎粉砕コーヒー(平均粒径2~3mm)を充填し、これを蒸気と接触させる前に少量の水(豆の重量に対して約0.5重量%)で湿らせる。次いで、水蒸気蒸留物をアロマ画分として回収する。このプロセスは、好ましくは、アロマのストリップ分が焙煎粉砕コーヒー(及び水)の出発重量の1~15重量%を構成するように行われる。すなわち、ストリッピングプロセスは、元のコーヒーの重量分率を構成する揮発性成分を取り出して回収する。好ましくは、ストリッピングプロセスは、アロマのストリップ分が、焙煎粉砕コーヒー(及び水)の出発重量の5~12重量%、より好ましくは約10重量%を構成するように行われる。
【0045】
アロマを回収するための別の方法は、以下に述べるように、より微細に粉砕したコーヒー豆のスラリーに蒸気を通す工程を伴う。このプロセスは、好ましくは、アロマのストリップ分が焙煎粉砕コーヒー含有スラリーの出発重量の1~15重量%を構成するように行われる。好ましくは、このプロセスは、アロマのストリップ分がスラリーの出発重量の5~12重量%、より好ましくは約10重量%を構成するように行われる。いずれかの技術によるこのレベルの回収によって、過度な水の部分の回収を必要とすることなく、揮発性フレーバー及びアロマ化合物の大部分が得られる。
【0046】
上のプロセスのいずれかから得られた水蒸気蒸留物は、かなりの量の水を含有することから、コーヒーアロマ成分はコーヒーアロマ画分のわずか0.1~5重量%、好ましくは1~3重量%であり得る。したがって、コーヒー抽出物をアロマ化するためにそれを添加すると、それにはコーヒー固形分を希釈する効果がある。
【0047】
好ましくは、アロマ化コーヒー抽出物を得る方法は、
(i)焙煎粉砕コーヒーを準備する工程と、
(ii)焙煎粉砕コーヒーを水と接触させてコーヒー組成物を形成する工程と、
(ii)コーヒー組成物をアロマ分離工程に供して、コーヒーアロマ画分を回収し、また脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーを形成する工程であって、アロマ分離工程でコーヒー組成物の1~15重量%をコーヒーアロマ画分として回収する、工程と、
(iii)脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーを1つ以上の水性抽出工程に供して、35~70重量%のコーヒー固形分を有する中間コーヒー抽出物を得る工程と、
(iv)コーヒーアロマ画分を中間コーヒー抽出物に添加して、アロマ化コーヒー抽出物を形成する工程と、を含む。
【0048】
アラビカコーヒー豆がより高いレベルのコーヒーオイルを天然に含有することから、焙煎粉砕コーヒーは、好ましくはアラビカコーヒー豆を含むか、任意でこれらの豆からなる。コーヒー抽出物を得るために従来の方法を使用する場合、焙煎粉砕コーヒーは約2~3mmの平均粒径を有する。それにより放出されるオイルの量が増加することから、後述のように、好ましくは、焙煎粉砕コーヒーは100~600マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0049】
脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーを1つ以上の水性抽出工程に供して、35~70重量%のコーヒー固形分(すなわち可溶性コーヒー固形分、コーヒーオイル及び任意の不溶性コーヒー画分)、好ましくは45~65重量%のコーヒー固形分を有する中間コーヒー抽出物を得る。上述したように、その後のコーヒーアロマでの補完が希釈効果を有するため、固形分レベルが高いことが好ましい。抽出工程はまた、これらの固形分のレベルを実現するために、蒸発器での蒸発などの何らかの濃縮工程も伴うことに留意されたい。そのような工程は、コーヒー粉末を得るための抽出及び噴霧乾燥プロセスでは日常的である。
【0050】
抽出工程は当該技術分野において公知であり、好ましくは、コーヒーを、異なるコーヒー抽出物画分をそれぞれ回収する多くの工程に供する。それぞれの連続工程がより高い温度を伴うため、異なるコーヒー成分が回収され、全体の収率が向上する。連続工程にすることによって、熱に感受性の成分を、加水分解して可溶性コーヒー成分にするためにより苛酷な条件を必要とする成分とは別個に回収することができる。
【0051】
典型的な一次抽出は140~175℃で行ない、二次抽出は180~205℃で行ない、任意で、205~220℃などの更により高い温度での抽出を行ってもよい。
【0052】
好ましくは、アロマ化コーヒー抽出物は、コーヒーアロマ画分と中間コーヒー抽出物とを、コーヒーアロマ画分対中間コーヒー抽出物の重量比2:5~1:20で含有する。すなわち、ストリッピングしたアロマ画分を、これらの重量比に従って中間コーヒー抽出物に添加する。見て分かるように、添加によって固形分含有量が著しく減少する。例えば、2部のコーヒーアロマ画分(主に水)を5部の固形分70%の中間コーヒー抽出物に添加すると、約50%のコーヒー固形分を有するアロマ化コーヒー抽出物が得られる。より好ましくは、アロマ化コーヒー抽出物は、コーヒーアロマ画分と中間コーヒー抽出物とを、コーヒーアロマ画分対中間コーヒー抽出物の重量比1:5~1:10で含有する。
【0053】
より広義には、中間コーヒー抽出物に再添加されるコーヒーアロマ画分は、焙煎粉砕コーヒーから回収されたアロマの画分と水とに依存する。回収されるアロマの量がより広い範囲(すなわち、ストリップ分が1~15重量%)では、コーヒーアロマ画分対中間コーヒー抽出物の比は、好ましくは1:40~30:40である。回収されるアロマの量が中間の範囲(すなわち、ストリップ分が5~12重量%)では、コーヒーアロマ画分対中間コーヒー抽出物の比は、好ましくは5:40~24:40である。ストリップ分が約10重量%の領域では、コーヒーアロマ画分対中間コーヒー抽出物の比は、好ましくは10:40~20:40(すなわち1:4~1:2)である。
【0054】
コーヒーアロマ画分は製品アロマの感覚プロファイルを改善するので、コーヒーアロマ画分はコーヒー抽出物のアロマ化に非常に望ましい。ここで、均質化工程を提供することにより、アロマ画分中のアロマ化合物のはるかに多くの部分を噴霧乾燥プロセス中に維持することができ、その結果、製品がはるかに改善されたアロマプロファイルを有することを見出した。更に、油滴の微細な分布によって、関連する口当たり及び飲料のテクスチャーが改善されることが見出された。
【0055】
ここで、国際出願第PCT/EP2019/086859号に記載されている水性コーヒー抽出物を得るための好ましい方法を、より詳細に説明する。この方法は、依然として水抽出にのみ依存しながら、インスタントコーヒーのフレーバー及び味を根本的に変えることができる新しい抽出プロセスを利用する。このような変化をもたらす主な条件は、より低い抽出及び加水分解温度と組み合わせるが、プロセスの収率を損なうことなく、はるかに微細な粉砕サイズを使用することである。
【0056】
プロセスの1つの利点は、完全に連続した様式で実施できることである。これにより、加工装置におけるコスト及び複雑性が抑えられる。別の利点は、より少ない量の水で操作できることであり、それはもちろん環境的に望ましいだけでなく、除去すべき水が少ないため、乾燥粉末を得ることを目的とした場合に大きなエネルギー節約につながる。
【0057】
プロセスはまた、より望ましいコーヒーフレーバーの回収を促進する最初の熱処理において、従来の温度よりも低い温度を使用する。方法は、より高温の二次加熱処理をするため、高収率が確実に維持される。
【0058】
更に、プロセスは、改善されたフレーバーと味とを有するコーヒー製品を与える。特に、従来の方法で得られた製品とは驚くほどフレーバー及び味が異なることから、より濃厚な口当たり及び良好なフレーバーノートを有する飲料となった。
【0059】
本方法は、多くの工程を含む。多くのこれらの工程は、加工される材料の所与の部分上で連続的に実施する必要があることは明らかであるが、これらの工程は、連続プロセス、バッチ式、又はその2つの組み合わせの一部として実施され得ることも理解されたい。
【0060】
第1の工程(工程(i))において、100~600マイクロメートル、好ましくは200~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒーを準備する。焙煎粉砕コーヒーは、当該技術分野において十分に確立された技術を使用して焙煎粉砕されたコーヒー豆から得られる。平均粒径は、標準的な測定条件下で、Helos乾式レーザー回折計を使用して測定されるD50である。
【0061】
本明細書で採用される粉砕サイズは、典型的には約2mmの粒径を使用する従来のコーヒー抽出プロセスに用いられるものよりもはるかに微細である。微細粒径は、抽出のための表面積を増大させながら、ポンプ輸送可能なスラリーの形成を可能にする。逆に、コーヒーをこのサイズに粉砕するために必要なエネルギーは大きすぎず、粉砕中の豆の望ましくない熱劣化をもたらさない。
【0062】
好ましくは、焙煎粉砕コーヒーは、200~400マイクロメートル、より好ましくは250~350マイクロメートルの平均粒径に粉砕され、これは、従来、エスプレッソコーヒー飲料の製造のために粉砕された粒径の領域にある。これは、以下に説明するように、スラリーを作製するために添加する必要がある水が少ないため、特に有利である。更に、250マイクロメートル未満では、濾過は、より困難になり、あまり効率的ではなくなる。100マイクロメートル未満の粒径では、粒子が、フィルタをブロックし得る。
【0063】
別の実施形態では、好ましくは焙煎粉砕コーヒーは、400~600マイクロメートルの平均粒径を有する。これは、液体コーヒー濃縮物を製造するのに特に有利である。これは、液体製品の場合、オイルが液体のクレマの不安定性に寄与するため、製品のオイル含有量を減らすために、粒子を大きくすることがより良いからである。粒径が大きいほど、得られた抽出物に放出されるオイルは少なくなる。
【0064】
更なる工程(工程(ii))において、焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1スラリーを形成する。すなわち、コーヒー豆が混合物全体の15~30重量%、好ましくは20~25重量%を提供するような比率で水がコーヒー豆に添加される。コーヒー固形分には、不溶性コーヒー固形分及び可溶性コーヒー固形分が含まれ、その一部は、添加された水に溶解する。この濃度の水は、ポンプ輸送可能なスラリーを提供する。ポンプ輸送可能なスラリーに必要とされる水の量は、使用される粉砕物の大きさに依存し、粗い粉砕物は、ポンプ輸送のためにより多くの水を必要とする。約250マイクロメートルの粉砕サイズでは、例えば25%固形分を達成するために希釈を使用することが容易に可能である。約100マイクロメートルの粉砕サイズでは、例えば30%固形分を達成するために希釈を使用することが容易に可能である。しかしながら、400~600マイクロメートルの粒径では、15%固形分を得るために、より多くの水を添加することが望ましい。
【0065】
更なる工程(工程(iii))において、第1スラリーをアロマ分離工程に通してコーヒーアロマ画分を回収し、脱アロマ化スラリーを形成する。アロマ分離システムは、可溶性コーヒー製造分野において周知である。例示的な処理ユニットは、アロマを抽出するように操作することができるスピニングコーンカラムである。これは、後の使用のために保存される水性アロマ流として回収することができる、コーヒーからアロマをストリップするスラリーへの蒸気の導入を伴う。工程(iii)は真空下で実施してもよい。
【0066】
アロマ分離工程におけるスラリーの温度は、必要に応じて調節することができるが、典型的には、処理の開始時に、70~100℃、例えば、90~100℃の領域内である。この熱処理(すなわち、アロマ分離)は、好ましくは10秒~2時間、1分~25分、好ましくは1~5分間実施される。代替的な実施形態では、持続時間は15~25分であってもよい。当然のことながら、アロマ回収技術が使用される場合、温度は、蒸気添加によって影響を受ける場合がある。アロマ分離は、真空下で行うことができる。
【0067】
スラリーの温度は、スラリーが形成される前又は後のいずれかに添加された水を加熱することによって、アロマ分離工程の前に上昇させることができる。温度変化は、例えば、従来の熱交換器を使用することによって、プロセスの他の工程から回収された熱を使用して行うことができる。好ましくは、工程(ii)における水の、コーヒーと混合するときの温度は80~100℃である。これは、豆と一緒に加熱したり、又は蒸気を使用してスラリーを加熱したりするよりも、熱水を加える方が安価だからである。水がコーヒーと混合される前に加熱されない場合、水は15~40℃の温度で添加され、その後のスラリーは80~100℃に加熱される。この選択肢は、改善されたプロセスの簡略化という利点を有する。
【0068】
工程(iii)の後のプロセスのこの時点で、スラリーは、可溶性コーヒー固形分、脱アロマ化された不溶性コーヒー固形分、及び水を含む。
【0069】
更なる工程(工程(A))において、脱アロマ化スラリーを、90~150℃、好ましくは90~120℃、より好ましくは90~100℃の温度で第1の濾過装置に通して、第1のコーヒー抽出物と第1の濾過ケーキとを形成する。好ましい実施形態では、脱アロマ化スラリーを、140~150℃の温度で第1の濾過装置に通す。したがって、このプロセスは、可溶性コーヒー固形分の大部分及び水を不溶性コーヒー固形分から分離する。第1の濾過装置は、沈降槽、フィルタ、及び遠心分離機を含む、いくつかの既知の濾過システムのうちの1つであり得る。フィルタは、効率的な連続処理が可能で、微細粒子の取り扱いにおける汎用性があるため、好ましい。連続濾過装置が使用されることが最も望ましい。これにより、不溶性固形分が水から効率的に分離され、可溶性固形分の回収率は90%超である。
【0070】
濾過ケーキ中のコーヒー固形分は、可溶性コーヒー固形分の抽出を増加させるために、洗浄又はプレスに供され得る。濃縮コーヒー液である第1のコーヒー抽出物は、プロセスでの後の使用のために保存されてもよく、又はプロセスの連続バージョンで後の工程に直接添加されてもよい。
【0071】
更なる工程(工程(B))において、水を第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する。すなわち、水は、第1のスラリー形成工程よりも、わずかに低い固形分濃度を有するスラリーを生成するのに必要な量で添加される。好ましくは、工程(e)で形成された再構成スラリーは、12~30重量%の固形分、より好ましくは12~20重量%を有する。この固形分濃度は、望ましいポンプ能力を達成するように選択される。また、再構成は、必要に応じて加熱した水で実施することができる。
【0072】
好ましくは、工程(B)における水は80~100℃の温度である。これは、熱水を足すと安価であり、また、以下の工程で必要とされる温度の一部を達成するのに役立つからである。熱は、プロセスの他の工程から回収されてもよい。
【0073】
更なる工程(工程(C))において、再構成スラリーを、150~205℃、好ましくは170~205℃、より好ましくは180~205℃の温度で熱処理する。この加熱は、抽出速度を向上させるために、高圧で行われることが好ましい。好ましい圧力は、2~30バール、例えば15バールである。この熱処理は、好ましくは5分~2時間、好ましくは5~15分、好ましくは5~10分間実施される。代替的な実施形態では、持続時間は15~25分であってもよい。この工程の間、不溶性コーヒー固形分の一部は、可溶性固形分に加水分解され、次いで回収され得る。この工程は、プラグフロー反応器を使用して実施することができる。
【0074】
本プロセスにおけるこの時点で、スラリーは、可溶性コーヒー固形分、不溶性コーヒー固形分、及び水を再び含む。これは、圧力低下が任意の望ましくないアロマフレーバーの除去を可能にするフラッシュ処理に供され得る。
【0075】
更なる工程(工程(D))において、熱処理した再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物と第2の濾過ケーキとを形成する。濾過装置は、上述のような任意の濾過装置であってもよい。これは、溶解した可溶性コーヒー固形分を含有するコーヒー液を不溶性コーヒー固形分から分離する役割を果たす。第2の濾過ケーキを再度、洗浄及び/又はプレスして、追加のコーヒー抽出物を回収することができる。第2のコーヒー抽出物は、概ね、第1のコーヒー抽出物よりも低い可溶性固形分濃度を有する。
【0076】
濃縮コーヒー液である第2のコーヒー抽出物は、プロセスでの後の使用のために保存され得る。
【0077】
更なる工程(工程(E))において、第1及び第2のコーヒー抽出物を合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する。2つのコーヒー抽出物は、概ね合わされて、単純な混合によって第3のものを提供する。
【0078】
更なる工程(工程(F))において、第3のコーヒー抽出物を濃縮して、35~70重量%、好ましくは35~65重量%、より好ましくは40~50%のコーヒー固形分を有する第4のコーヒー抽出物を形成する。以下の工程(v)でアロマを添加する場合、希釈して有用な最終濃度にすることができるようにするために、工程(F)の後の固形分の濃度は55~60%であることが好ましい。これは、濃縮物として使用するのに好適なコーヒー抽出物(すなわち、流動性)を提供するか、又は乾燥プロセスで使用して、乾燥製品を製造するのに好適なコーヒー抽出物(すなわち、除去する水が少ない)を提供する役割を果たす。好ましくは、工程(F)は蒸発器ユニット内で行なわれる。
【0079】
更なる工程(工程(v))において、(工程(iii)からの)コーヒーアロマ画分を第4のコーヒー抽出物(本明細書では中間コーヒー抽出物とも称される)に添加して、アロマ化コーヒー抽出物を形成し、次いでこれを工程(b)及び(c)において均質化し、噴霧乾燥する。これにより、固形分濃度を損なうことなく抽出物のフレーバーが改善される。濃縮工程の後にアロマを戻すことで、限られた量のアロマが製品から失われるのを防ぐ得られるコーヒー抽出物は、好ましくは35~65重量%、好ましくは45~65重量%のコーヒー固形分を有する。
【0080】
コーヒー抽出製品は可溶性粉末である。すなわち、本方法は、アロマ化コーヒー抽出物を噴霧乾燥して、可溶性粉末を形成する工程(c)を更に含む。好ましくは、粉末製品は、200~3000マイクロメートル、より好ましくは500~2000マイクロメートルの平均粒径を有する。製品は、噴霧乾燥機若しくは流動床中で、又は任意の他の公知の技術によって凝集させて、所望の粒径に調整することができる。
【0081】
工程(D)の後に残るコーヒー固形分は、廃物流として処理してもよく、またプロセス(水を加熱するなど)のためのエネルギーを提供するために焼却してもよい。あるいは、第2の濾過ケーキを、更なる高温抽出プロセスに供して、更なるコーヒー抽出物を得て、第1及び第2のコーヒー抽出物と工程(E)で混合して、第3のコーヒー抽出物を形成してもよい。この更なる高温処理工程の好適な条件は、190~215℃の温度である。この熱処理は、好ましくは5分~2時間、好ましくは15~25分間実施される。この更なる工程は、スラリー形成及び濾過工程の更なるセットを使用して、又は従来の抽出技術を使用して行うことができる。
【0082】
概して、本方法は、従来の抽出方法よりも水の使用が少ない。高固形分濃度の使用は、関連する濃縮工程のためのエネルギー消費を低減する。このプロセスはまた、異なる段階で加熱された水と高温抽出工程の製品から回収できる熱とを加えることにより、異なる段階間の熱の効率的な再循環を可能にする。
【0083】
好ましくは、本方法は、コーヒー抽出製品を包装することを更に含む。
【0084】
好ましくは、本方法は、溶解度を改善し、最終製品の粒径を増加させるための凝集工程を更に含む。これにより、粉塵及び微粉に伴う問題が回避される。
【0085】
更なる態様によれば、本明細書に記載の方法によって得ることができるコーヒー抽出製品が提供される。
【0086】
完成したインスタントコーヒー製品は、より少ないプロセスフレーバーの改善されたフレーバー及び淹れたてのコーヒーに近い改善されたフレーバーを示す。より高温での加工によって生み出される望ましくないプロセス酸味もまた低減される。
【0087】
更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するための噴霧乾燥コーヒー粉末を提供し、
粉末は、可溶性コーヒー固形分と不溶性コーヒー固形分とを含む粒子を含み、不溶性コーヒー固形分は、コーヒーオイルと不溶性コーヒー固形分の非オイル性部分である不溶性コーヒー沈降画分とを含み、
粉末は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析して、1重量%以下のアラビノースを含み、
粉末は、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイルを含み、また、
粒子は、コーヒーオイルの総重量に基づいて20重量%未満の表面のコーヒーオイルを示す。
【0088】
更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するための噴霧乾燥コーヒー粉末を提供し、
粉末は、可溶性コーヒー固形分と不溶性コーヒー固形分とを含む粒子を含み、不溶性コーヒー固形分は、コーヒーオイルと不溶性コーヒー固形分の非オイル性部分である不溶性コーヒー沈降画分とを含み、
粉末は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析して、1重量%以下のアラビノースを含み、
粉末は、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイルを含み、また、
粉末は、水中で再構成されたときに、8マイクロメートル未満、7マイクロメートル未満、より好ましくは5マイクロメートル未満、最も好ましくは4マイクロメートル未満、例えば1~7マイクロメートル、最も好ましくは1~5マイクロメートル、より好ましくは2~4マイクロメートル、より好ましくは2.5~3.5マイクロメートルのD50の油滴サイズを有する油滴の粒径分布を与える。
【0089】
更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するための噴霧乾燥コーヒー粉末を提供し、
粉末は、可溶性コーヒー固形分と不溶性コーヒー固形分とを含む粒子を含み、不溶性コーヒー固形分は、コーヒーオイルと不溶性コーヒー固形分の非オイル性部分である不溶性コーヒー沈降画分とを含み、
粉末は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析して、1重量%以下のアラビノースを含み、
粉末は、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイルを含み、また、
粉末は、アロマ化された水性コーヒー抽出物を噴霧乾燥することによって得ることができる。アロマ化された水性コーヒー抽出物とは、コーヒーアロマ画分とコーヒー抽出物とを含む水性コーヒー抽出物を意味し、コーヒーアロマ画分は、新鮮な焙煎粉砕コーヒー豆の5~12重量%、好ましくは約10重量%のストリッピングを行うことによって得られ、アロマ化コーヒー抽出物は、コーヒーアロマ画分とコーヒー抽出物とを、コーヒーアロマ画分対コーヒー抽出物の重量比2:5~1:20で含有する。新鮮とは、それらが以前に抽出されていないことを意味する。
【0090】
好ましい特徴の以下の考察は、噴霧乾燥コーヒー粉末に関する本発明の態様の全てに適用される。更に、これらの態様は全て、本明細書で説明する他の態様と自由に組み合わせることができる。
【0091】
本発明者らは、上記のプロセスによって固有の噴霧乾燥コーヒー粉末が得られることを見出した。特に、製品は、従来の市販のコーヒー製品と比較して、改善されたアロマ及び口当たりを有する。高オイル含有量の存在及びその後の均質化によって、改善された口当たりが得られ、またアロマ再添加工程においてコーヒーに戻されたアロマ成分がより良好に保持されることを見出した。これにより、高級な凍結乾燥コーヒーの性能に匹敵する新規で改善された可溶性コーヒー製品を得ることができる。
【0092】
製品は、部分的に、(i)少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、不溶性コーヒー沈降画分が、酸加水分解後に分析して、1重量%以下のアラビノースを含むこと、及び(ii)乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイルを含むことで特徴付けられる。これらの特徴は、本明細書に記載されるスラリー抽出プロセスの特徴である。特に、抽出されるコーヒーの非常に微細な粉砕サイズによって、より高いオイル収率が得られる。更に、微細なサイズ及びスラリー化工程は、コーヒーの加工工程中の不溶性材料の部分的な抽出を示す特徴的なアラビノースレベルを有する沈降画分の取り込みにつながる。したがって、可溶性コーヒー製品は、記載された方法によって本質的に製造されるものである。
【0093】
更に、均質化工程によって得られる安定な水中油型エマルジョンの結果として、表面のオイルが少ない。したがって、製品は、他の加工方法では観察されない、それが得られた製品に特有の特徴を有する。好ましくは、更なる態様の製品は、本明細書に記載の方法によって得ることができる。
【0094】
国際出願第PCT/EP2019/086859号の方法と組み合わせた場合に、本明細書で論じられるように、本プロセスによって、別個にオイルを添加又は焙煎粉砕コーヒーを添加する必要なく、プロセスの直接の結果として、製品中に不溶性コーヒー沈降画分及びより高いレベルのオイルが存在する。したがって、本プロセスは、焙煎粉砕コーヒーから高収率で改善された製品を提供するための洗練されたアプローチである。
【0095】
不溶性コーヒー画分は、従来のコーヒー抽出物のアロマを改善するためにコーヒー製品に多くの場合添加される焙煎粉砕コーヒー添加物に一見類似している。しかしながら、不溶性コーヒー沈降画分は、プロセスの直接的な結果として製品中に存在し、コーヒー抽出物に焙煎粉砕コーヒーを添加する追加の工程を必要としない。したがって、本発明の製品は、追加の焙煎粉砕コーヒーが添加されていない市販のコーヒー製品と区別する不溶性コーヒー沈降画分の存在によって特徴付けることができる。
【0096】
驚くべきことに、本発明者らは、プロセスの直接的な結果として得られた不溶性コーヒー沈降画分が、添加後の焙煎粉砕コーヒー抽出物よりも抽出物から沈降する可能性が低いことを見出した。これは、飲料を容器内でかき混ぜた後に、容器の壁に堆積した沈降物又はスカムが著しく減少した最終飲料において観察される。
【0097】
上記のプロセスで得られた不溶性コーヒー沈降画分は、従来の焙煎粉砕コーヒー添加物を添加したコーヒーについて観察された不溶性コーヒー沈降画分とは更に異なる。これは、画分がコーヒー抽出プロセスを経て、加熱された水性環境に曝され、不溶性コーヒー材料中の炭水化物のバランスが変化するからである。したがって、本発明の製品は、追加の焙煎粉砕コーヒーを添加した市販のコーヒー製品と区別する不溶性コーヒー沈降画分の炭水化物分析によって特徴付けることができる。
【0098】
加えて、本プロセスは、コーヒー製品中でより高いオイル画分をもたらす。これは、本方法で使用されるコーヒー粒子粉砕サイズがより微細な結果である。より微細な粉砕物は、抽出のためにコーヒーのより多くの表面積を露出させるため、抽出プロセスにおいてより多量のオイルが放出されることが理解される。したがって、本発明の製品は、従来の抽出プロセスによって得られる市販のコーヒー製品と区別する、より高いオイル画分の存在によって特徴付けることができる。
【0099】
不溶性コーヒー沈降画分は、本明細書に記載の繰り返し遠心分離プロセスを使用して得られる沈降物である。これは、水に不溶性である製品中に存在する固形分材料(オイルではない)を表す。
【0100】
組成物は、好ましくは、7.5~15重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含む。この量の不溶性コーヒー沈降画分は、バランスのとれたアロマを提供し、口当たりに悪影響を及ぼす恐れがあり、望ましくない沈降物を引き起こす恐れがある、過度に多量の不溶性物質を有していない。
【0101】
好ましくは、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析されるとき、0.5~1重量%のアラビノースを含む。
【0102】
好ましくは、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析されるとき、5重量%未満のガラクトース、好ましくは2~4重量%のガラクトースを含む。
【0103】
好ましくは、インスタントコーヒー組成物は、乾燥重量で少なくとも1重量%のコーヒーオイル、好ましくは1.5~5重量%、好ましくは2~4重量%のコーヒーオイルを含む。オイルの濃度が増加すると、製品の口当たりが改善される。より高いレベルのオイルは、口当たりを改善し、またコーヒー豆から得られて使用される重量による収率も増加させる。オイルは、プロセスの結果として得られ、抽出物内に十分に分布していることが判明しており、最終飲料上で視認される望ましくない油膜なしに、口当たりを改善するのに役立つ。
【0104】
好ましくは、粒子は、コーヒーオイルの総重量に基づいて20重量%未満の表面のコーヒーオイルを示す。表面のオイルは、溶媒抽出技術によって測定することができる。例示的な溶媒抽出技術は、以下の実施例において論じられる。好ましくは、粒子は、コーヒーオイルの総重量に基づいて、15重量%未満、好ましくは10重量%未満の表面のコーヒーオイルを示す。理論に束縛されるものではないが、この低いレベルの表面のオイルは、本明細書に記載の均質化工程の直接の結果であると考えられる。特に、噴霧乾燥の前に抽出物全体にわたってより微細でより良好に分散した水中油型エマルジョンを得ることによって、エマルジョンは噴霧乾燥プロセスによってあまり乱されない。したがって、オイルは、表面で凝集するのではなく、粒子全体にわたって良好に分布したままである。これは、微細なオイルの構造を飲料媒体(すなわち、80~95℃の熱水)中での再構成時にも保持できるため、製品の性能の改善に寄与すると考えられる。
【0105】
特に、粒子は、好ましくは、コーヒーオイルの総重量に基づいて20重量%未満の表面のコーヒーオイル、例えばコーヒーオイルの総重量に基づいて19重量%未満、例えば18重量%未満、例えば17重量%未満、例えば16重量%未満、例えば15重量%未満、例えば14重量%未満、例えば13重量%未満、例えば12重量%未満、例えば11重量%未満、例えば10重量%未満、例えば9重量%未満、例えば8重量%未満、例えば7重量%未満、例えば6重量%未満、例えば5重量%未満、例えば4重量%未満、例えば3重量%未満、例えば2重量%未満、例えば1重量%未満の表面のコーヒーオイルを示す。
【0106】
好ましくは、噴霧乾燥コーヒー粒子は、水中で再構成されたときに、D50が8マイクロメートル未満、7マイクロメートル未満、より好ましくは5マイクロメートル未満、最も好ましくは4マイクロメートル未満、例えば1~7マイクロメートル、最も好ましくは1~5マイクロメートル、より好ましくは2~4マイクロメートル、より好ましくは2.5~3.5マイクロメートルの油滴サイズを有する油滴の粒径分布を与える。この粒径は、共焦点レーザー走査顕微鏡法を用いて、例えばZeissのZ2M装置を用いて決定することができる。試料を、脂質染色BODIPY(商標)を使用する共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)を用いて蛍光標識し、画像化して、エマルジョン内の油滴を位置特定することができる。画像化は、488nmのレーザー及び490~555nmのバンドパスフィルタを使用して、脂肪領域を緑色に擬似着色して行うことができる。粒径の結果は、非球状又は褐色のコーヒー粒子を無視する画像解析を使用してうまく測定することができる。少なくとも1000個の油滴の代表的な試料を測定すべきである。試料は、約1.5重量%の固形分の標準の飲料濃度で観察する。
【0107】
好ましくは、1.5重量%の濃度(固形分)で溶解し、湿式レーザー回折によって分析するとき、インスタントコーヒー組成物は、単峰性の粒径分布を有する。これは、焙煎粉砕コーヒーが可溶性コーヒー粉末(概ね乾燥前のコーヒー抽出物中)に添加物として添加される製品を区別する。具体的には、コーヒー豆を破砕する従来のミリング技術は、概ね、コーヒー豆の破砕に基づいて二峰性分布を生じさせ、最も微細な細胞壁断片から生じる、より低いピークを有する。対照的に、本発明の方法の後に保持されたコーヒー粒子、又は浸出カラムから流出した従来の抽出物に保持されたコーヒー粒子は、二峰性分布を有する。
【0108】
好ましくは、同じ粒子測定条件下で、インスタントコーヒー組成物はまた、溶解したときに、10マイクロメートル未満、好ましくは2.5~7.5マイクロメートルのD50を有する。この微細な粒径は、上述のコーヒープロセスから得られる抽出物への影響を反映する。実際、D90が典型的には30マイクロメートルを超えており、広い粒径分布を反映しているため、観察された粒径分布は異常なものである。
【0109】
好ましくは、組成物はコーヒーからなる。すなわち、コーヒー組成物は、いかなる非コーヒー成分又は添加物(乳化剤又は乳成分など)も含まない。しかしながら、理解されるように、噴霧乾燥コーヒー粉末を砂糖又は粉乳などの他の非コーヒー成分と混合して、スリーインワンミックスなどの最終複合製品を提供してもよい。
【0110】
不溶性コーヒー沈降画分の定量及び分析には、可溶性コーヒー固形分から不溶性コーヒー固形分を分離する必要がある。液体コーヒー製品のこの評価を容易にするために、同じ分析を行うことができるように、製品を粉末に乾燥させる必要がある。
【0111】
不溶性コーヒー沈降画分(沈降物としても知られる)を単離及び定量化するために、所与のコーヒー試料(乾燥粉末)30グラムを70グラムの沸騰水に添加し、2分間振盪する。次いで、試料を10,000gで15分間遠心分離する。遠心分離後、上清を移し、沈降物を70グラムの熱湯で再溶解し、2分間振盪し、次いで、上記と同じ条件下で再度遠心分離する。この洗浄プロセスは、合計4回の遠心分離工程で3回繰り返される。次いで、最終洗浄から沈降物を凍結乾燥させ、この場合、沈降物の百分率は30gの出発試料に対するものである(例えば、1.8gの沈降物は、6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を表す)。任意の分析が行われる前に、乾燥沈降物試料を単純な撹拌によって均質化する。
【0112】
不溶性コーヒー沈降画分を分析する方法を考慮すると、画分は、不溶性であると考えられる場合であっても、存在し得る任意のコーヒーオイルを含まない。これは、オイルが遠心分離工程において容易に分離されるためである。
【0113】
単離した不溶性コーヒー沈降画分内の炭水化物を試験するために、総炭水化物分析は、ISO 11292-1995に準拠して、高性能陰イオン交換パルス電流検出(HPAEC-PAD)を使用して実施される。試料は、既に単離した沈降物を50mlの1M HClと混合し、次いで95℃で150分間試料を振盪することによって調製される。単糖類の定量化は、通常の単糖類の外部標準を分析することによって実施される。
【0114】
インスタントコーヒー製品の粒径分布を決定するために、Hydro MVタンクを有するMalvern Mastersizer 3000を使用して粒度分布分析を行った。1.5gの試料(±0.0005g)を、100℃で沸騰した脱イオン水で100g(±0.05g)まで作製し、60秒間攪拌し、わずかに冷却し、Malvernユニットに滴下して、約10%の不透明度を達成した。平均3回の読み取りを行った。ここでもまた、この液体コーヒー製品の評価を容易にするために、同じ分析を行うことができるように、製品を粉末に乾燥させる必要がある。
【0115】
オイル含有量を決定するために、製品の試料(製品が液体コーヒー濃縮物である場合には、まず乾燥させた)を、Soxtec H6を使用して評価した。2gの試料を石油エーテル40-60と混合し、2時間煮沸した後、約0.5時間すすいだ。次いで、得られた縮合物を加熱して溶媒を回収する。このようにしてオイル濃度の評価は、当該技術分野において周知である。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明のインスタントコーヒー組成物を、既知の方法によって得られた従来の噴霧乾燥コーヒーとブレンドしてもよい。例えば、製品は、従来のコーヒーの残部とブレンドされた、本明細書に記載のコーヒーの10~100%、例えば20~50%を含有してもよい。これは液体製品のために容易に達成することができるが、可溶性製品は、混合液体抽出物から、又は異なる粉末製品の乾燥混合物によって形成されてもよい。これは、本発明の口当たり及び味の良さを控えめにして、従来の飲料での体験に近いものを提供する場合に有利である。
【0117】
好ましい実施形態によれば、コーヒー粉末を製造する方法を提供し、方法は、
(a)100~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒーを準備する工程と、
(b)焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリーを形成する工程と、
(c)第1のスラリーをアロマ分離工程に通して、コーヒーアロマ画分を回収し、脱アロマ化スラリーを形成する工程と、
(d)脱アロマ化スラリーを90~150℃の温度で第1の濾過装置に通して、第1のコーヒー抽出物と第1の濾過ケーキとを形成する工程と、
(e)水を第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する工程と、
(f)再構成スラリーを150~205℃の温度で熱処理する工程と、
(g)次いで、熱処理された再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物及び第2の濾過ケーキを形成する工程と、
(h)第1及び第2のコーヒー抽出物を合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(i)第3のコーヒー抽出物を濃縮して、35~70重量%のコーヒー固形分を有する第4のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(j)コーヒーアロマ画分を第4のコーヒー抽出物に添加して、30~55重量%の可溶性コーヒー固形分と1~10重量%のオイル、好ましくは2~5重量%のオイルとを含む水性コーヒー抽出物を形成する工程であって、水性コーヒー抽出物が、水とコーヒー由来成分とからなる、工程と、
(k)水性コーヒー抽出物を、2段階の均質化プロセスに供して、均質なコーヒー抽出物を得る工程であって、第1の段階が200~1000バールで行われ、第2の段階が10~100バールで行われる、工程と、
(l)均質なコーヒー抽出物を噴霧乾燥して、コーヒー粉末を形成する工程と、を含む。
【0118】
好ましい実施形態によれば、コーヒー粉末を製造する方法を提供し、方法は、
(a)100~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒーを準備する工程と、
(b)焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリーを形成する工程と、
(c)第1のスラリーをアロマ分離工程に通して、コーヒーアロマ画分を回収し、脱アロマ化スラリーを形成する工程であって、アロマ分離工程で、コーヒーアロマ画分としてコーヒー組成物の1~15重量%、好ましくはコーヒーアロマ画分としてコーヒー組成物の8~12重量%、最も好ましくは約10重量%を回収する、工程と、
(d)脱アロマ化スラリーを90~150℃の温度で第1の濾過装置に通して、第1のコーヒー抽出物と第1の濾過ケーキとを形成する工程と、
(e)水を第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する工程と、
(f)再構成スラリーを150~205℃の温度で熱処理する工程と、
(g)次いで、熱処理された再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物及び第2の濾過ケーキを形成する工程と、
(h)第1及び第2のコーヒー抽出物を合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(i)第3のコーヒー抽出物を濃縮して、35~70重量%のコーヒー固形分を有する第4のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(j)コーヒーアロマ画分を第4のコーヒー抽出物に添加して、30~55重量%の可溶性コーヒー固形分と1~10重量%のオイル、好ましくは2~5重量%のオイルとを含む水性コーヒー抽出物を形成する工程であって、水性コーヒー抽出物が水とコーヒー由来成分とからなり、アロマ化コーヒー抽出物がコーヒーアロマ画分と中間コーヒー抽出物とを、コーヒーアロマ画分対中間コーヒー抽出物の重量比2:5~1:20、好ましくは1:10~3:10、最も好ましくは約1:5で含有する、工程と、
(k)水性コーヒー抽出物を、2段階の均質化プロセスに供して、均質なコーヒー抽出物を得る工程であって、第1の段階が200~1000バールで行われ、第2の段階が10~100バールで行われる、工程と
(l)均質なコーヒー抽出物を噴霧乾燥してコーヒー粉末を形成する工程と、を含む。
【0119】
これらの好ましい実施形態は、第1の態様の全ての更なる特徴と自由に組み合わせることができる。
ここで、本発明を図と対応させて更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【実施例】
【0121】
図1に示されるように、コーヒー抽出製品の製造方法は、多くの工程を含む。
【0122】
工程(a)では、100~600マイクロメートル、好ましくは200~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒー2を準備する。この範囲内では、より大きなサイズが液体抽出製品に有利であるのに対し、より小さいサイズは、乾燥可溶性コーヒー製品に有利である。
【0123】
工程(b)では、焙煎粉砕コーヒーを水5と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリー10を形成する。水5は、80~100℃、好ましくは90~95℃の温度で添加される。必要に応じて最小量の水5が使用されてポンプ輸送可能スラリー10を得ることから、固形分濃度は粒径によって決定される。ポンプ輸送可能スラリー10を得るためには、粒径が大きいほど、より多くの水5が必要である(固形分が低いほど)。
【0124】
工程(c)では、第1のスラリー10をアロマ分離工程に通して、コーヒーアロマ画分15を回収し、また脱アロマ化スラリー20を形成する。この方法の典型的なアプローチは、ポンプ輸送可能スラリー10に蒸気21を加えることを伴い、蒸気をスピニングコーン処理ユニット中で処理する。回収されたアロマ画分15は、脱アロマ化スラリー20がスラリー10の90重量%になるように、第1のスラリー10の約10重量%である。
【0125】
工程(d)では、脱アロマ化スラリー20を、90~150℃、例えば90~100℃の温度で第1の濾過装置に通して、第1のコーヒー抽出物25及び第1の濾過ケーキ30を形成する。温度は、先行する工程から保持されるか、又は抽出収率を増加させるために更に上昇させることができる。濾過ケーキ30を洗浄し、プレスして、可溶性コーヒー固形分の最大可能量を得ることができる。
【0126】
工程(e)では、水5を第1の濾過ケーキ30に添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリー35を形成する。水5は、好ましくは高温であり、第1の濾過ケーキ30を分解するための機械的撹拌が存在し得る。スラリーを再構成するために必要とされる水の量は、工程(b)において必要とされる量よりも多い傾向がある。
【0127】
工程(f)では、再構成スラリー35を、150~205℃、例えば180~205℃の温度で熱処理して、熱処理された再構成スラリー40を形成する。すなわち、プラグフロー反応器などの熱処理ユニットを通してポンプ注入される。熱処理における滞留時間は、典型的には、良好な抽出を確実にするために、少なくとも5分である。
【0128】
工程(g)では、熱処理された再構成スラリー40を第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物45及び第2の濾過ケーキ50を形成する。第2の濾過ケーキ50を洗浄し、プレスして、最大可能量の可溶性コーヒー固形分を得ることができる。この工程の温度は、前述の工程から保持されてもよく、又は工程(b)で使用するために熱を回収する際に、例えば80~100℃の温度まで低下させてもよい。
【0129】
次いで、工程Mで第2の濾過ケーキ50を燃焼させて、プロセスのための熱を生成してもよく、又は更なる高温抽出工程Mに供して、更なるコーヒー抽出物52を得てもよい。
【0130】
工程(h)において、第1のコーヒー抽出物25及び第2のコーヒー抽出物45を合わせて、第3のコーヒー抽出物55を形成する。他の水性コーヒー抽出物がまた、この工程で添加されてもよい(例えば、更なるコーヒー抽出物52)。
【0131】
工程(i)において、第3のコーヒー抽出物55が濃縮されて、35~60重量%のコーヒー固形分など35~70重量%のコーヒー固形分を有する第4のコーヒー抽出物60を形成する。
【0132】
工程(j)において、コーヒーアロマ画分15を第4のコーヒー抽出物60(中間コーヒー抽出物)に添加して、アロマ化コーヒー抽出物65を形成する。アロマ画分15は、5部の第4コーヒー抽出物60に対して1部の量で添加される。
【0133】
アロマ化コーヒー抽出物65を、工程kにおいて、2段階ホモジナイザー70で均質化して、均質なコーヒー抽出物75を形成する。2段階ホモジナイザー70は、700バールの圧力で第1の段階を行い、50バールで第2の段階を行う。
【0134】
均質なコーヒー抽出物75を、工程(L)において噴霧乾燥して、乾燥コーヒー製品80を形成する。
【0135】
次に、本発明を、以下の非限定的な例に関連させて更に説明する。
【0136】
実施例1
焙煎した全豆を、3段階ローラー粉砕機で200μm~400μmに粉砕した。
【0137】
焙煎粉砕コーヒーを、20℃~30℃で、25%コーヒー対75%水の比率でスラリー化した。
【0138】
スラリーを熱交換器に供給し、95℃まで加熱した後、スピニングコーンカラムに移動させ、アロマをスラリーからストリッピングした。
【0139】
スピニングコーンから出ると、スラリーを熱交換器に供給し、温度を120℃~150℃に2~5分間上昇させた。
【0140】
次いで、スラリーを、コーヒー液を粉砕物から分離するフィルタに供給した。次いで、粉砕物を、130℃~150℃で更に2回洗浄工程に供し、追加の固形分を除去した。
【0141】
次いで、粉砕物を、真水で、12%~17%の固形分の比率で再スラリー化した。得られたスラリーを、180℃~205℃(185℃)に加熱した加水分解工程に供給し、5~20分間保持した。
【0142】
次いで、得られたスラリーを、第1の分離工程の分離及び洗浄を繰り返す第2の濾過工程を通す前に、100℃未満まで冷却した。
【0143】
各濾過工程から得られたコーヒー抽出物を合わせ、濃縮した。第1のスラリーからストリッピングされたアロマ化合物を、次いで混合物に添加した。
【0144】
次いで、完全に合わせた3つの成分を、200バール、次いで40バールで均質化に供した。均質化した抽出物を従来の方法で噴霧乾燥して、可溶性コーヒー粉末を得た。
【0145】
実施例2
アラビカ及び/又はロブスタ豆を焙煎し、3段階ローラー粉砕機を使用して、300μmの平均粒径まで粉砕した。次いで、粉砕コーヒーを、20~25℃の水で、25%コーヒー対75%水の比率でスラリー化した。
【0146】
スラリーを熱交換器に供給して70℃まで加熱した後、スピニングコーンカラムに移して、アロマをスラリーからストリッピングした。
【0147】
次いで、スラリーを、95℃の温度でフィルタに供給し、コーヒー液を粉砕物から分離した。次いで、粉砕物を2回の更なる洗浄工程に供し、追加の固形分を除去した。
【0148】
次いで、粉砕物を、真水で、12%~17%の固形分の比率で再スラリー化した。得られたスラリーを、170℃まで加熱したプラグフロー反応器に供給(加水分解工程)し、5~10分間保持した。
【0149】
次いで、得られたスラリーを、第1の分離工程の分離及び洗浄を繰り返す第2の濾過工程を通す前に、100℃未満まで冷却した。
【0150】
各濾過工程から得られたコーヒー抽出物を合わせ、濃縮した。第1のスラリーからストリッピングされたアロマ化合物を、次いで混合物に添加した。
【0151】
次いで、完全に合わせた3つの成分を、200バール、次いで40バールで均質化に供した。均質化した抽出物を従来の方法で噴霧乾燥して、可溶性コーヒー粉末を得た。
【0152】
本実施例の製品は、現行技術を使用して製造された製品よりも、より多くのコク/口当たりを有することが見出された。
【0153】
実施例3
実施例1に記載のようにコーヒースラリーを調製した。
【0154】
スラリーを熱交換器に供給して95℃まで加熱した後、スピニングコーンカラムに移して、アロマをスラリーからストリッピングした。
【0155】
スピニングコーンから出ると、スラリーを熱交換器に供給し、温度を145~150℃に4~5分間上昇させた。
【0156】
次いで、スラリーを、コーヒー液を粉砕物から分離するフィルタに供給した。次いで、粉砕物を140℃で2回更なる洗浄工程に供して、追加の固形分を除去した。
【0157】
次いで、スラリーを、コーヒー液を粉砕物から分離するフィルタに供給した。
【0158】
次いで、粉砕物を、真水で、12%~17%の固形分の比率で再スラリー化した。得られたスラリーを、200℃まで加熱したプラグフロー反応器に供給(加水分解工程)し、7~10分間保持した。
【0159】
次いで、得られたスラリーを、第1の分離工程の分離及び洗浄を繰り返す第2の濾過工程を通過させる前に、100℃未満まで冷却した。
【0160】
各濾過工程から得られたコーヒー抽出物を合わせ、濃縮した。第1のスラリーからストリッピングされたアロマ化合物を、次いで混合物に添加した。
【0161】
次いで、完全に合わせた3つの成分を、200バール、次いで40バールで均質化に供した。均質化した抽出物を従来の方法で噴霧乾燥して、可溶性コーヒー粉末を得た。
【0162】
本実施例の製品は、現行技術を使用して製造された製品よりも、より多くのコク/口当たりを有することが見出された。
【0163】
実施例4
アラビカ及び/又はロブスタ豆を焙煎し、3段階ローラー粉砕機を使用して、400μmの平均粒径まで粉砕した。次いで、粉砕コーヒーを、20~25℃の水で、15%コーヒー対85%水の比率でスラリー化した。
【0164】
プロセスの残りは、実施例1と同様に実施した。
【0165】
得られた製品は、実施例1の製品よりも低い濃度のオイルを有する。
【0166】
油滴の評価
P1の方法(実施例1参照)に従って製造されたコーヒー抽出物中の油滴のサイズを、様々な段階1の圧力での均質化の前後に検討した。段階2は、各場合において40バールであった。時間は、均質化後の安定性を示す。
【0167】
データに示されるように、より高い圧力は、より大きい経時的な油滴の安定性を与える。また、より高い圧力は、より小さいD50サイズ及びより狭い分布範囲(D90-D10)を与える。
【0168】
抽出物の濃度も、サイズ及び安定性に影響を及ぼす。弱濃縮物はわずか10重量%の固形分であったのに対して、濃縮抽出物は50重量%の固形分であった。
【0169】
このことは、均質化されていない高オイル分抽出物についてはD50値が約9.6マイクロメートルであるのに対して、均質化された高オイル分抽出物についてはD50が約3.2及び2.9とはるかに低いことを実証している。弱抽出物のデータは、特許請求する固形分の範囲外であり、噴霧乾燥には多すぎる水を有するが、依然として同じ傾向を支持することに留意する。
【0170】
【0171】
更なる実施例
以下の実施例は、国際出願第PCT/EP2019/086859号(以下P1)の方法を用いて実施し、少なくとも先行技術の組成物の特性の比較の証拠として提供される。
【0172】
本明細書に記載の方法によって得られた試料を、市販の可溶性コーヒー製品の範囲と比較して評価した。包括的な試験から分かるように、プロセスによって得られる製品は新しいものであり、従来のプロセスから得られた製品と容易に区別することができる。
【0173】
【表2】
*競合製品の豆情報は、知識に基づいた推測に基づく
【0174】
実施例7、8、9、及び10は、P1に記載の方法に従って製造した。実施例1~6は市販製品であり、そのうち2及び4は、焙煎粉砕コーヒー添加物を添加した製品である(表中「全豆インスタント」と表記)。
【0175】
ロブスタ豆中のオイルの濃度は、アラビカ豆よりも低いことを概ね理解されたい。このことは、本発明の実施例9を含む、ロブスタ豆を含む製品のオイルの濃度が概して低いことに反映されている。試料10は、高オイル濃度で知られているダークブラジルである。
【0176】
見てとれるように、純粋なインスタントコーヒー、すなわち焙煎粉砕コーヒー添加物を添加していない試料1、3、5及び6には、低濃度のオイルが存在する。オイル濃度は、焙煎粉砕コーヒー添加物のオイル含有量に起因して、試料2及び4においてわずかに高く、試料2は、約5%の焙煎粉砕コーヒーを含有し、試料4は、より多くの焙煎粉砕コーヒーを含有する。
【0177】
試料7、8、及び10は、抽出物中により多くのオイルを放出するプロセスにおける焙煎コーヒーの微粉砕物であるため、高濃度のオイルを含有する。
【0178】
見てとれるように、従来の可溶性コーヒー製品は、著しい濃度のオイルを含有しない。実際に、これらの製品の一部について観察されたオイルの濃度を、乾燥粉末の表面に後に添加して、そのアロマを改善することが推測される。
【0179】
高オイル濃度を含有する唯一の従来技術の製品は、焙煎粉砕コーヒー添加物を製品に加えた結果である。対照的に、P1に記載の方法は、ロブスタ豆の製品であっても、高濃度のオイルを実現する。
【0180】
沈降物濃度
沈降物濃度は、30グラムの所与のコーヒー試料を70グラムの沸騰水に加え、2分間振盪することによって決定した。次いで、試料を10,000gで15分間遠心分離する。遠心分離後、上清をデカントして除き、沈降物を70グラムの沸騰水で再溶解し、2分間振盪し、次いで、上記と同じ条件下で再度遠心分離する。この洗浄プロセスは、合計4回の遠心分離工程で3回繰り返される。次いで、最終洗浄から沈降物を凍結乾燥させ、この場合、沈降物の百分率は30gの出発試料に対するものである(例えば、1.8gの沈降物は、6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を表す)。
【0181】
【0182】
実施例7、8、及び9は、P1に記載の方法に従って製造した。実施例1~6は市販品であり、そのうち4、5、及び6は、焙煎粉砕コーヒー添加物を補完した製品である。
【0183】
見てとれるように、全ての市販のインスタントコーヒー製品は、ある程度の不溶性コーヒー沈降画分を有する。これは、抽出システムを通ってコーヒー抽出物に入るコーヒー細胞壁の小さな断片であると予想される。不溶性コーヒー沈降画分の濃度は、典型的には、焙煎粉砕コーヒー添加物を補完した製品に対して増加する。
【0184】
見てとれるように、P1に記載の方法に従って製造した製品は全て、焙煎粉砕コーヒー添加物を補完していないインスタントコーヒー製品よりも著しく高濃度の不溶性コーヒー沈降画分を有する。
【0185】
【0186】
実施例7、8、及び9は、P1に記載の方法に従って製造した。実施例1~6は市販品であり、そのうち4、5、及び6は、焙煎粉砕コーヒー添加物を補完した製品である。
【0187】
複数の遠心分離工程を伴う沈降物定量法は、大量の非常に微細な粒子を回収することを可能にする。
【0188】
粒径分布は、乾燥製品の1.5%の高温ブリュー、例えば、200mlの熱水中で3gの乾燥製品を作製した後、Malvern 3000で測定された。
【0189】
3つのクラスに沈降物を区別することができる:
クラス1 L’Or Intense(商標)、Kenco Rich(商標)、及びCarte Noir(商標):
単峰性分布D10:1.5未満及びD90:15μm未満
5.5重量%未満の相対的に少量の沈降物
粒径(低D90など)が非常に小さいのは、これらの粒子が抽出カラムから抽出物へと流出したこと、又は蒸発器内に沈降したマンナンを反映していると思われる。
【0190】
クラス2:Kenco Milicano(商標)、Nescafe Gold(商標)、及びAzera(商標)は、クラス1及び3と明らかに異なる
1~10μmのピーク1と10~100μmのピーク2の二峰性分布(2ピーク)。
【0191】
クラス3:本発明の試料
単峰性分布であるが、クラス1よりも広い分布D10:1.0超及びD90:15μm超、かつ7.5重量%超などの相対的に多量の沈降物。
【0192】
炭水化物分析
この分析は、酸加水分解後の単糖類のものである。
【0193】
【0194】
実施例7、8、及び9は、P1に記載の方法に従って製造した。実施例1~6は市販品であり、そのうち4、5、及び6は、焙煎粉砕コーヒー添加物を添加して補完した製品である。
【0195】
見てとれるように、P1の製品の不溶性コーヒー沈降画分は、焙煎粉砕コーヒーを添加していない可溶性コーヒー製品のものと大まかに同等の濃度のアラビノースを有する。典型的には、これは、焙煎粉砕コーヒーを添加した可溶性コーヒー製品よりも低濃度のガラクトースも有する。
【0196】
理論に束縛されるものではないが、補完製品中の高濃度のアラビノースは、抽出されていないコーヒー材料の存在の結果であると考えられる。対照的に、P1の製品では、その濃度は、P1のプロセスによってアラビノースが可溶性コーヒー画分に既に抽出されているという事実を反映してより低い。
【0197】
感覚試験
P1の製品の2つのプロトタイプを現行技術の製品と、30(POI):70(現行製品)の比率で組み合わせた。次いで、これらを、100%の現行技術の製品の更なる試料を有するセットで試験した。3つの試料を、感覚専門家のパネルに与え、次いで、3番目のものとの類似性/相違点に従って製品をペアリングするように求めた。
【0198】
結果は、現行製品とのブレンドにおいて30%のみの濃度であっても、プロトタイプは、より粘性/乾燥かつ粉末状であると考えられ、全ての属性が口当たり/コクに寄与することを示す。濃度は、トライボロジーデータと直接相関する。オイルが多くなると潤滑性が高くなり、これは、口当たり/コクが良くなることを意味する。効果を
図3に示す。
【0199】
崩壊温度
結晶性製品は、明確に定義された「共晶」凍結/融点を有し、この点はその崩壊温度と呼ばれる。濃縮コーヒー抽出物を凍結乾燥するとき、抽出物は、真空下で約-50℃の初期凍結温度から加熱される。これにより、水分を昇華させることができる。加熱速度は抽出物に依存し、それを超えると製品がメルトバックし、損なわれることになる崩壊温度が存在する。次いで、製品が温かすぎたことを示す、崩壊又はメルトバックの徴候が見られるまで、その後のサイクルで温度及び圧力を上昇させることができる。驚くべきことに、本発明者らは、P1のいくつかの試料の崩壊温度が、それらの標準的なコーヒー製品の崩壊温度よりも高いことを見出した。
【0200】
【0201】
85℃の水40gに溶解した10gのコーヒーを用いて、試料を調製した。150rpmで25mmの撹拌棒を用いて2分間撹拌しながら、完全溶解を達成した。
【0202】
これらの試料は、Discovery HR-2レオメーター、試料体積8mlを使用して、循環浴を-4℃に設定して、0.01~1000s-1の剪断速度間の単純な剪断掃引で試験した。試料を20及び65℃の温度、かつ1.5及び20重量%の濃度で試験した。
【0203】
次いで、データは、内部構造単位(SU)懸濁液の理論に基づいて、流体レオロジーに洞察を与えるQuemadaモデルに適合されている。
【0204】
濃縮システム内では、単一の粒子及び小さな凝集塊は、次第に大きな群を形成し得、そのサイズは、適用される剪断速度に依存する。
【0205】
したがって、粘度(η)は構造の関数である(η=f(s))。構造は、適用される剪断のレベルに依存し(増加した剪断速度は単に、個々のサブユニット内に凝集塊のマクロ構造及びメソ構造を分散させるように作用するだけであるため)、粘度は、充填分率/密集度の観点から表すことができ、これは、SUが密集しているほど充填率が高くなり、その結果、構造(粘度)が高くなるためである。
【0206】
これは、SUの密集度が構造の濃度に寄与するためである。
【0207】
【数1】
式中、ηは粘度であり、Φは密集度の尺度である。
【0208】
65℃(消費温度に近い)、20重量%(すなわち、濃縮試料)において、試料4(Milicano)及び7~10が著しく高いη0を有することに留意する。これは、咀嚼時を表し、口当たりを反映した、低剪断速度(1s-1)での微細構造的観点から、これらの試料が、他の試料に対してより多くの構造を有することを意味する。このことは、これらの低剪断速度では、これらの構造単位の密集度がより高いこと、すなわち構造単位のより良好な充填率であることを意味する。
【0209】
試料のトライボロジーも観察した。「トライボロジーは、相対運動における相互作用表面の科学及び工学である。これは、摩擦、潤滑、及び摩耗の原理の研究及び適用を含む。」したがって、注目すべきパラメータは、各試料で観測された最大の摩擦を表すμmaxである。潤滑性は、本明細書において口当たりを示し、μmaxが高くなると、潤滑性が低くなることを示し、それが口当たりの良さの低下を意味すると考えられる。
【0210】
65℃(消費温度)では、試料7、8及び10はμmaxの値が著しく低く、摩擦が少ないため口当たりが良くなることが観察された。例外は、オイル含有量がより低い試料9(ロブスタブレンド)である。
【0211】
可溶性コーヒー粉末の表面オイル含有量の測定
試料をソックスレー抽出により抽出し、オイル分を秤量する。
【0212】
装置
Soxtherm Gerhardt抽出ユニット
Multistat Soxtermサービスユニット
エアオーブン/循環オーブン@105℃±2℃
化学天秤
シリカゲルを入れたデシケーター
【0213】
材料及び消耗品
Gerhardt抽出ビーカーG_Nr.13-0050
コーヒーフィルタ(4番)
円筒濾紙、33×80mm(S&S 603)。
原綿
【0214】
試薬
ヘキサン沸点範囲40~60℃、ARグレード(ヘキサンとも呼ばれる)。
【0215】
試料の分析
・抽出ビーカーを乾燥オーブン内に103℃で1時間置く
・オーブンから取り出してデシケーター内で放冷する。
・抽出ビーカーを小数点第4位まで秤量する(M1)。
・5グラムの乾燥試料(M2)を秤量して、4番のコーヒーフィルタ紙に入れて、それを一緒に折り畳んで、5mmの空間を残してフィルタを円筒濾紙に入れ、原綿プラグを上に置く。
・上に原綿プラグを注意深く置く。
・秤量した抽出ビーカーに円筒濾紙を入れる
・150mlのn-ヘキサンで抽出ビーカーを満たす
・内容物が入った抽出ビーカーをSoxtherm装置に入れる
・Multi-Stat Program Base Unitを用いてそれを抽出する(15mi抽出沸騰、30分(合計分析時間は1時間17分)。
・抽出後、円筒濾紙を取り出す。
・抽出ビーカー内に残留したヘキサンを圧縮空気で穏やかに吹き飛ばし、105℃のオーブン内で1時間更に蒸発させた。
・冷却後、得られたオイルが入った抽出ビーカーを秤量する(M3)
【0216】
【0217】
特に指示しない限り、本明細書における全ての百分率は、重量によるものである。
【0218】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に詳細に記載したが、当業者であれば、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなくこれらに変更がなされてもよいことを理解するであろう。
特定の実施形態では例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
コーヒー粉末を製造する方法であって、
a)30~55重量%の可溶性コーヒー固形分と1~10重量%のオイルとを含む水性コーヒー抽出物を準備する工程であって、前記水性コーヒー抽出物が水とコーヒー由来成分とからなる、工程と、
b)前記水性コーヒー抽出物を、2段階の均質化プロセスに供して、均質なコーヒー抽出物を得る工程であって、前記第1の段階が200~1000バールで行われ、前記第2の段階が10~100バールで行われる、工程と、
c)前記均質なコーヒー抽出物を噴霧乾燥する工程と、を含む、方法。
(項目2)
前記水性コーヒー抽出物が、1.5~5重量%のコーヒーオイルを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記水性コーヒー抽出物がアロマ化コーヒー抽出物であり、前記水性コーヒー抽出物が、
(i)焙煎粉砕コーヒーを準備する工程と、
(ii)前記焙煎粉砕コーヒーを水と接触させてコーヒー組成物を形成する工程と、
(iii)前記コーヒー組成物をアロマ分離工程に供して、コーヒーアロマ画分を回収し、また脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーを形成する工程であって、前記アロマ分離工程で前記コーヒー組成物の1~15重量%を前記コーヒーアロマ画分として回収する、工程と、
(iv)前記脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーを1つ以上の水性抽出工程に供して、35~70重量%のコーヒー固形分を有する中間コーヒー抽出物を得る工程と、
(v)前記コーヒーアロマ画分を前記中間コーヒー抽出物に添加して、前記アロマ化コーヒー抽出物を形成する工程と、によって得られる、項目1又は項目2に記載の方法。
(項目4)
前記アロマ化コーヒー抽出物が、前記コーヒーアロマ画分と前記中間コーヒー抽出物とを、コーヒーアロマ画分対中間コーヒー抽出物の重量比2:5~1:20で含有する、項目3に記載の方法。
(項目5)
工程(i)で準備される前記焙煎粉砕コーヒーが、100~600マイクロメートルの平均粒径を有し、
工程(ii)が、前記焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリーを形成することを含み、
前記脱アロマ化された焙煎粉砕コーヒーが、脱アロマ化スラリーである、
項目3又は4に記載の方法。
(項目6)
工程(iii)が、
(A)前記脱アロマ化スラリーを90~150℃の温度で第1の濾過装置に通して、第1のコーヒー抽出物と第1の濾過ケーキとを形成する工程と、
(B)水を前記第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する工程と、
(C)前記再構成スラリーを150~205℃の温度で熱処理する工程と、
(D)次いで、前記熱処理した再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物と第2の濾過ケーキとを形成する工程と、
(E)前記第1及び第2のコーヒー抽出物を合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(F)前記第3のコーヒー抽出物を濃縮して、前記中間コーヒー抽出物を形成する工程
とを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
工程(ii)及び/又は工程(B)における前記水が、80~100℃の温度である、項目6に記載の方法。
(項目8)
工程(B)で形成された前記再構成スラリーが、12~30重量%の固形分を有する、項目6又は項目7に記載の方法。
(項目9)
前記第2の濾過ケーキを更なる高温抽出プロセスに供して、更なるコーヒー抽出物を得て、工程(E)において前記第1及び第2のコーヒー抽出物と合わせて、前記第3のコーヒー抽出物を形成する、項目6~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記方法が、前記コーヒー抽出製品を包装することを更に含む、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記方法が連続プロセスである、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
コーヒー飲料を形成するための噴霧乾燥コーヒー粉末であって、
前記粉末が、可溶性コーヒー固形分と不溶性コーヒー固形分とを含む粒子を含み、前記不溶性コーヒー固形分が、コーヒーオイルと前記不溶性コーヒー固形分の非オイル性部分である不溶性コーヒー沈降画分とを含み、
前記粉末が、少なくとも6重量%の前記不溶性コーヒー沈降画分を含み、前記不溶性コーヒー沈降画分が、酸加水分解後に分析して、1重量%以下のアラビノースを含み、
前記粉末が、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイルを含み、また、
前記粒子が、コーヒーオイルの総重量に基づいて20重量%未満の表面のコーヒーオイルを示す、噴霧乾燥コーヒー粉末。
(項目13)
前記粉末が水中で再構成されたとき、7マイクロメートル未満、好ましくは1~5マイクロメートル、より好ましくは2~4マイクロメートルのD50の油滴サイズを有する油滴の粒径分布を有する、項目12に記載の噴霧乾燥コーヒー粉末。
(項目14)
項目12又は項目13に記載のインスタントコーヒー組成物であって、前記組成物が、7.5~15重量%の前記不溶性コーヒー沈降画分を含む、インスタントコーヒー組成物。
(項目15)
前記不溶性コーヒー沈降画分が、酸加水分解後に分析して、0.5~1重量%のアラビノースを含む、項目12~14のいずれか一項に記載のインスタントコーヒー組成物。
(項目16)
前記粉末が、乾燥重量で1~5重量%のコーヒーオイルを含み、及び/又は前記粒子が、コーヒーオイルの総重量に基づいて、15重量%未満の表面のコーヒーオイル、好ましくは10重量%未満の表面のコーヒーオイルを示す、項目12~15のいずれか一項に記載のインスタントコーヒー組成物。
(項目17)
項目1~11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、項目12~16のいずれか一項に記載の噴霧乾燥コーヒー粉末。