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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】交通信号制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/095 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
G08G1/095 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023045249
(22)【出願日】2023-03-22
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 哲英
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1348316(KR,B1)
【文献】特開2001-189194(JP,A)
【文献】特開2011-059980(JP,A)
【文献】特開2016-051435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
H05B 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階梯から成る現示テーブルを記憶する記憶部と、該現示テーブルを1サイクルとし、このサイクルを繰り返して交差点に設置された信号灯器の点灯制御を行う処理部と、点灯している前記信号灯器の電流値を計測する電流計とを備えた交通信号制御システムであって、
各階梯には、主道路に配置された第1の信号灯器及び主道路に交差する従道路に配置された第2の信号灯器に対して、青点灯、黄点灯、赤点灯の点灯条件が設定されており、
前記記憶部に予め記憶した各階梯における前記第1、第2の信号灯器の消費電流の合計値である基準消費電流値と、前記電流計により計測した1サイクル分の各階梯の前記第1、第2の信号灯器の消費電流の合計値である合計消費電流値とを前記処理部により比較して、各階梯における前記基準消費電流値及び前記合計消費電流値の差分が閾値以上の階梯を全て抽出し、抽出した全ての階梯においてのみ共通して点灯制御を行っている前記第1の信号灯器の赤灯器、黄灯器、又は青灯器、或いは前記第2の信号灯器の赤灯器、黄灯器、又は青灯器に対して、異常が発生したと判定することを特徴とする交通信号制御システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記差分が前記閾値以上となった階梯を含む1サイクル分の各階梯の合計消費電流値と、各階梯の前記基準消費電流値とを比較した結果、全ての階梯において差分が前記閾値以上となった場合には、異常が発生したと判定しないことを特徴とする請求項に記載の交通信号制御システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記全ての階梯において差分が閾値以上となった場合は、測定した各階梯の前記第1、第2の信号灯器の合計消費電流値を、基準消費電流値として新たに前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項に記載の交通信号制御システム。
【請求項4】
前記第1、第2の信号灯器は、車両用信号灯器と歩行者用信号灯器とから構成されていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の交通信号制御システム。
【請求項5】
交差点の近傍に設置した信号制御機に、前記記憶部及び前記処理部は設けられていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の交通信号制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に設置した交通信号灯器に不具合が発生した場合に、不具合の発生した交通信号灯器を特定する交通信号制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路に用いられるランプ式信号灯の駆動電流を検出する検出手段と、検出された電流値の過去の所定時間の平均値を算出する算出手段と、算出された電流値が所定の閾値以下のときにランプ式信号灯が断芯したと判定する判定手段とを備えた断芯検出装置が開示されている。
【0003】
また、近年の交差点に設置される交通信号灯器は、特許文献2に示すように、LED素子を面状に配置したLED式信号灯器が主流であり、各色の信号灯器はLED素子を複数個直列に配置した面ユニットを、並列に複数個配置して発光を行っている。
【0004】
このLED式信号灯器の不具合には、電源が破損して全LED素子が滅灯する故障の他に、1個のLED素子の破損に伴う面ユニットの故障により、発光面積の一部が滅灯するという故障が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-189194号公報
【文献】特表2007-527047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の断芯検出装置では、道路が交差する交差点における車両用信号灯器、歩行者用信号灯器が同時に発光する場合では、交差点におけるどこの信号灯器に不具合が発生したのかを特定することが困難である。
【0007】
特に、赤灯器の発光面積の全部又は一部が滅灯した場合には、交通事故が発生する虞れがあるため、早急に修理、灯器交換等を行う必要がある。
【0008】
更に、消費電力の節約のために、昼間から夜間に切り換わる際に信号灯器の輝度を低下させる調光制御を行う場合には、特許文献1の断芯検出装置では昼間から夜間の調光制御の切り換え時に、信号灯が断芯したと誤判定する虞れもある。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、交差点に設置した交通信号灯器に不具合が発生した場合に、不具合の発生した交通信号灯器を特定することが可能である交通信号制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る交通信号制御システムは、複数の階梯から成る現示テーブルを記憶する記憶部と、該現示テーブルを1サイクルとし、このサイクルを繰り返して交差点に設置された信号灯器の点灯制御を行う処理部と、点灯している前記信号灯器の電流値を計測する電流計とを備えた交通信号制御システムであって、各階梯には、主道路に配置された第1の信号灯器及び主道路に交差する従道路に配置された第2の信号灯器に対して、青点灯、黄点灯、赤点灯の点灯条件が設定されており、前記記憶部に予め記憶した各階梯における前記第1、第2の信号灯器の消費電流の合計値である基準消費電流値と、前記電流計により計測した1サイクル分の各階梯の前記第1、第2の信号灯器の消費電流の合計値である合計消費電流値とを前記処理部により比較して、各階梯における前記基準消費電流値及び前記合計消費電流値の差分が閾値以上の階梯を全て抽出し、抽出した全ての階梯においてのみ共通して点灯制御を行っている前記第1の信号灯器の赤灯器、黄灯器、又は青灯器、或いは前記第2の信号灯器の赤灯器、黄灯器、又は青灯器に対して、異常が発生したと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る交通信号制御システムによれば、各階梯の合計消費電流値と基準消費電流値とを比較することで、交差点の主道路及び従道路に設置した車両用信号灯器の車両用赤灯器、車両用黄灯器、車両用青灯器、又は歩行者用信号灯器の歩行者用赤灯器、歩行者用青灯器の中から不具合の発生した灯器を容易に特定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】交通信号制御システムの全体構成図である。
図2】交通信号制御システムのブロック回路構成図である。
図3】基準消費電流値を含む現示テーブル例である。
図4】現示テーブルに従う点灯制御時の異常判定のフローチャート図である。
図5】測定した合計消費電流値を含む現示テーブル例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は十字路の交差点Rに設置されている交通信号制御システムの全体構成図であり、図2は交通信号制御システムのブロック回路構成図である。
【0014】
交通信号制御システムは、主道路R1である第1方路に向かい合うように配置された一対の信号灯器1と、第1方路と交差する従道路R2である第2方路に向かい合うように配置した一対の信号灯器2と、信号灯器1及び信号灯器2と接続され、信号灯器1及び信号灯器2の信号灯の点灯制御を行う信号制御機3とから構成されている。なお、主道路R1とは交差点Rにおいて交通量の多い方の道路とし、従道路R2とは交通量が少ない方の道路とする。
【0015】
信号灯器1は車両用信号灯器11と歩行者用信号灯器12とから構成され、信号灯器2は車両用信号灯器21と歩行者用信号灯器22とから構成されている。信号灯器1、2は、赤灯器、黄灯器、青灯器の発光色に対応する多数のLED素子が面状に配列されている。
【0016】
交差点Rの近傍に設置した信号制御機3は、信号灯器1、2に対して後述する灯器出力部を介して点灯制御を行ったり、車両感知器4からの車両検出信号等を入力する制御部31と、この制御部31と接続し、センタ装置Cと有線又は無線のネットワークNを介して、各種データの送受信を行う通信部32と、制御部31及び通信部32と接続し、交流の電力、例えばAC100Vの商用電源Eの入力に対して、制御部31、通信部32に対して直流の電力、例えばDC5Vを供給するコンバータ部33と、制御部31からの出力指令により、信号灯器1、2を点灯させる灯器出力部34と、灯器出力部34と商用電源Eとの間に配置された1台の電流計35と、商用電源Eと内部の電力線L1との間に配置したブレーカ36とから構成されている。
【0017】
灯器出力部34は車両用信号灯器11の車両用赤灯器11a、車両用黄灯器11b、車両用青灯器11cと、電力線L1とを接続する車両用灯器出力部34a~34c、及び歩行者用信号灯器12の歩行者用赤灯器12a、歩行者用青灯器12bと、電力線L1とを接続する歩行者用灯器出力部34d、34eから構成されている。なお、図2では信号灯器1のみの接続を図示しており、信号灯器2、及び信号灯器2に対する灯器出力部34の電力線L1との接続の図示は省略している。
【0018】
電流計35は、灯器出力部34の接続状態に応じて点灯状態となる信号灯器1、2によって消費する消費電流値を計測することが可能であり、ブレーカ36は信号制御機3内の機器の短絡等による過電流発生時に、自動的に商用電源Eからの電力供給を遮断するものである。
【0019】
信号制御機3内の各機器は、信号制御機3の筐体内に格納されており、ネットワークNを介して信号制御機3と接続するセンタ装置Cは、管理下の複数の信号制御機3や、道路上の走行車両を検出する車両感知器4等の集中制御や監視を行っている。
【0020】
図3は基準消費電流値A0を含む現示テーブルTBの一例であり、信号制御機3の制御部31は、図示しない記憶部を備え、信号灯器1及び信号灯器2の点灯条件を表す現示テーブルTBを記憶している。なお、この記憶部はセンタ装置Cに設けるようにしてもよい。
【0021】
この現示テーブルTBは、複数の階梯である階梯K1~階梯K10から構成されており、各階梯Kには、信号灯器1及び信号灯器2に対して赤灯器、黄灯器、青灯器の点灯条件が設定されている。
【0022】
最初の階梯Kである階梯K1では、主道路R1の車両用信号灯器11の車両用青灯器11cを点灯、歩行者用信号灯器12の歩行者用青灯器12bを点灯、従道路R2の車両用信号灯器21の車両用赤灯器21aを点灯、歩行者用信号灯器22の歩行者用赤灯器22aを点灯させる条件が設定されている。なお、図3の現示テーブルTBで示す直線は青点灯、点線は青点滅、波線は黄点灯、二重線は赤点灯を示している。
【0023】
階梯K2では、主道路R1の車両用信号灯器11の車両用青灯器11cを点灯、歩行者用信号灯器12の歩行者用青灯器12bを点滅、従道路R2の車両用信号灯器21の車両用赤灯器21aを点灯、歩行者用信号灯器22の歩行者用赤灯器22aを点灯させる条件が設定されている。
【0024】
また、階梯K5及び最終の階梯K10では、全ての信号が赤点灯状態となる車両用赤灯器11a、21a及び歩行者用赤灯器12a、22aを点灯させる条件が設定されている。
【0025】
このようにして、現示テーブルTBには階梯K1~K10までの保持秒数を維持するように、信号灯器1、2の点灯条件が設定されており、制御部31は現示テーブルTBに従って、灯器出力部34に対して制御線L2を介して階梯K1~階梯K10の順に出力指令を繰り返して出力している。
【0026】
また、階梯K1~K10の保持秒数は、時間帯、曜日等によって異なるように設定することも可能であり、切り換え時間になると次のサイクルから記憶部に記憶された保持秒数の異なる現示テーブルTBに従って、点灯制御を行うことが可能である。
【0027】
各色のLED素子が配置される車両用赤灯器11a、21a、車両用黄灯器11b、21b、車両用青灯器11c、21c、歩行者用赤灯器12a、22a、歩行者用青灯器12b、22bは、それぞれ消費電力つまり消費電流値が異なっている。
【0028】
これらの消費電流値は、昼間においては例えば車両用赤灯器11a、21aがそれぞれ69.3mA、車両用黄灯器11b、21bがそれぞれ186mA、車両用青灯器11c、21cがそれぞれ65.6mA、歩行者用赤灯器12a、22aがそれぞれ74.6mA、歩行者用青灯器12b、22bがそれぞれ50.5mAとされている。
【0029】
そして、制御部31による点灯制御に基づく現示テーブルTBの各階梯K毎の信号灯器1、2の点灯状態から、各階梯K毎の合計した合計消費電流値A1を、電流計35を介して測定することが可能となり、図3の基準消費電流値A0欄には電流計35により計測した合計消費電流値A1に基づいて、各階梯K毎の基準となる消費電流値を表している。
【0030】
なお、階梯K1及び階梯K6、階梯K2及び階梯K7、階梯K3及び階梯K8、階梯K4及び階梯K9は、信号灯器1及び信号灯器2の点灯条件を反転させたものであるので基準消費電流値A0は略一致し、階梯K5及び階梯K10も同じ点灯条件であるので基準消費電流値A0は略一致することになる。
【0031】
また、歩行者用信号灯器12及び歩行者用信号灯器22の点滅制御を含む階梯K2及び階梯K7の消費電流については、延べ消費電流を保持秒数で除した値としている。階梯K2及び階梯K7以外の階梯Kについては、瞬時における消費電流値を採用してもよいし、階梯Kにおける延べ消費電流を保持秒数で除した値を採用してもよい。
【0032】
また、夜間においては消費電力を節約するために信号灯器1、2の輝度を低下させる調光制御を行っており、夜間の基準消費電流値A0’は、図3に示す昼間の基準消費電流値A0よりも低い値となる。
【0033】
なお、この夜間の基準消費電流値A0’の設定は、調光制御を行う切り換え時刻を予め制御部31に記憶しておき、この調光制御を行った後に電流計35により計測した合計消費電流値A1に基づいて、各階梯K毎の基準となる夜間の基準消費電流値A0’を記憶する。同様に、夜間から昼間の調光制御を行う切り換え時刻も予め制御部31に記憶しておき、調光制御を行った後に昼間の基準消費電流値A0を記憶する。
【0034】
或いは、後述するように1サイクルの全ての階梯Kで合計消費電流値A1と基準消費電流値A0の差分が閾値以上となった場合に、昼間の基準消費電流値A0を夜間の基準消費電流値A0’に更新するようにしてもよい。
【0035】
この更新処理を採用する場合には、上述の調光制御を行う切り換え時刻を記憶する必要はなく、夜間から昼間に切り替えた際の調光制御時にも、同様に夜間の基準消費電流値A0’を昼間の基準消費電流値A0に更新することになる。
【0036】
更には、1サイクルの全ての階梯Kで合計消費電流値A1と基準消費電流値A0、A0’の差分が閾値以上となる不具合を考慮して、1サイクルの全ての階梯Kでの差分が閾値以上となった場合に、調光制御を行う切り換え時刻を確認し、この切り換え時刻に該当するときに昼間の基準消費電流値A0を夜間の基準消費電流値A0’に、又は夜間の基準消費電流値A0’を昼間の基準消費電流値A0に更新するようにしてもよい。
【0037】
図4は信号灯器1、2の現示テーブルTBに従う点灯制御時における異常判定のフローチャート図である。このフロー処理は、制御部31によって処理してもよいし、通信部32を介して制御部31と接続するセンタ装置Cによって処理することもできる。
【0038】
現示テーブルTBに従う点灯制御開始時に、ステップST1に移行して、現示テーブルTBを繰り返して、複数サイクル分の各階梯K毎の合計消費電流値A1を、電流計35を介して測定する。
【0039】
これらの複数サイクル分の合計消費電流値A1を平均して、基準消費電流値A0として記憶部に記憶する。なお、基準消費電流値A0は、階梯K1の基準消費電流値A001~階梯K10の基準消費電流値A010で構成されることになる。
【0040】
基準消費電流値A0を記憶した後に、ステップST2に移行し、階梯K1で電流計35により測定した合計消費電流値A101と、基準消費電流値A001とを比較し、差分が閾値以上であるか否かを判定する。
【0041】
不具合のない通常点灯時では、この差分は閾値以内となり、ステップST3に移行し、次の階梯Kである階梯K2にシフトし、ステップST2に戻り、階梯Kがシフトする度に、階梯Knにおける電流計35で測定した合計消費電流値A1nと基準消費電流値A0nとを比較し、差分が閾値以上であるか否かを判定する処理を繰り返す。
【0042】
なお、階梯K10におけるステップST2の処理後のステップST3ではnは1に戻り、階梯K1におけるステップST2の処理を行う。
【0043】
このように、階梯K1から階梯K10までの合計消費電流値A101~A110と、基準消費電流値A001~A010との比較を繰り返し、差分が閾値以上となるまでステップST2、ST3の処理を繰り返すことになる。
【0044】
そして、何れかの階梯Knの合計消費電流値A1nと基準消費電流値A0nとの差が、閾値例えば10mA以上ある場合には、ステップST4に移行する。
【0045】
ステップST4では、合計消費電流値A1nと基準消費電流値A0nとの差分が閾値以上を検出した階梯Kn以降の1サイクル分の合計消費電流値A1と、階梯Kn以降の1サイクル分の基準消費電流値A0との比較を行う。
【0046】
ステップST5に移行し、これらを比較した結果、1サイクル分の全ての階梯Kにおいて合計消費電流値A1と基準消費電流値A0との差が閾値以上である場合は、ステップST1に戻り、計測した合計消費電流値A1に基づいて、基準消費電流値A0の更新処理を行う。以後、ステップST2以降の処理を行うことになる。
【0047】
ステップST5において、1サイクル分の全ての階梯Kにおいて、合計消費電流値A1と基準消費電流値A0との差が閾値以上でない場合は、ステップST6に移行する。例えば、図5に示すように階梯K6で初めて差分が閾値以上となる合計消費電流値A106を検出し、階梯K7~K10、階梯K1~K5の合計消費電流値A107~A110、合計消費電流値A101~A105を測定し、階梯K7~K10、階梯K1~K5の基準消費電流値A007~A010、基準消費電流値A001~A005とそれぞれ比較した結果、階梯K6~Kのみの差分が閾値以上を検出した場合は、ステップST6に移行する。
【0048】
ステップST6では、差分が閾値以上を検出した階梯Kから異常が発生した、例えば発光面積の全部又は一部が不具合により滅灯になった信号灯器1、2の赤灯器、黄灯器、又は青灯器を特定する。
【0049】
図5においては、合計消費電流値A106~A109の対応する階梯K6~Kのみに対して共通して点灯している信号灯器1及び信号灯器2に異常が発生したと判定する。つまり、階梯K6~Kのみに対して共通して点灯している従道路R2の車両用信号灯器21の車両用青灯器21cに対して異常が発生したと判定することができる。
【0050】
そして、ステップST7に移行し、センタ装置Cのオペレータ等に対して、車両用信号灯器21の車両用青灯器21cに異常が発生したことを通報した後に、フローの処理は終了する。
【0051】
前述のように赤灯器、黄灯器、青灯器の発光面積に対して、全面積分又は一部の面積分が滅灯した状態で点灯制御を継続すると、交通事故の原因となるため、直ちに作業員を交差点Rに派遣して不具合が発生している赤灯器、黄灯器、又は青灯器に対して、交換作業等を行うことになる。
【0052】
なお、ステップST5からステップST1に戻る処理は、信号灯器1及び信号灯器2は時間帯によって輝度を変更する調光制御を行ったため、全ての階梯Kにおいて差分が閾値以上となった状態を示している。
【0053】
昼間から夜間、夜間から昼間の切り換え時の調光制御に伴う消費電流の差分の発生は、1サイクルの全ての階梯Kで発生するため、信号灯器1及び信号灯器2に異常が発生したと判定せずに、輝度の変更に伴う昼間の基準消費電流値A0から夜間の基準消費電流値A0’に、又は夜間の基準消費電流値A0’から昼間の基準消費電流値A0に更新処理を行う。
【0054】
従って、ステップST5において電流計35によって測定された合計消費電流値A1に基づいて、新たに基準消費電流値A0’又は基準消費電流値A0として記憶部に記憶される。
【0055】
また、ステップST4では、異常値を示した合計消費電流値A1nから1サイクル分の合計消費電流値A1を測定しているが、複数サイクル分の合計消費電流値A1を測定し、それらの平均値と基準消費電流値A0とを比較してもよい。
【0056】
更には、ステップST6の合計消費電流値A1と基準消費電流値A0との差分が閾値以上であって、且つこの差分が所定値内である場合に、異常が発生した階梯Kと判定するようにしてもよい。
【0057】
差分が所定値内になるのは、例えば車両用青灯器21cの発光面積の一部が不具合によって滅灯した場合に、この滅灯に基づく消費電流の低下は常に一定値となるためである。
【0058】
交差点Rにおいて、不具合が発生した赤灯器、黄灯器、又は青灯器に対して交換等を行い、正常状態に復旧させた後に、図4に示すフロー処理を開始させることになる。または、ステップST7からステップST3に戻る処理をさせるようにして、正常状態に復旧するまで通報を継続する処理を行うようにしてもよい。
【0059】
このように、本発明に係る交通信号制御システムによれば、各階梯Kの合計消費電流値A1と基準消費電流値A0、A0’とを比較することで、交差点の主道路R1及び従道路R2に設置した車両用信号灯器11、21の車両用赤灯器11a、21a、車両用黄灯器11b、21b、車両用青灯器11c、21c、又は歩行者用信号灯器12、22の歩行者用赤灯器12a、22a、歩行者用青灯器12b、22bの中から不具合の発生した灯器を容易に特定することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、2 信号灯器
11、21 車両用信号灯器
11a、21a 車両用赤灯器
11b、21b 車両用黄灯器
11c、21c 車両用青灯器
12、22 歩行者用信号灯器
12a、22a 歩行者用赤灯器
12b、22b 歩行者用青灯器
3 信号制御機
31 制御部
35 電流計
A0 基準消費電流値
A1 合計消費電流値
R1 主道路
R2 従道路
TB 現示テーブル
【要約】
【課題】発光面積の全部又は一部が不具合により滅灯になった赤灯器、黄灯器、又は青灯器を特定する。
【解決手段】現示テーブルには階梯K1~K10までの保持秒数を維持するように、信号灯器の点灯条件が設定されており、制御部は現示テーブルに従って、灯器出力部に対して制御線を介して階梯K1~階梯K10の順に出力指令を繰り返して出力している。そして、所定の階梯Knの合計消費電流値A1nと基準消費電流値A0nとの差分が閾値以上を検出した階梯Kn以降の1サイクル分の合計消費電流値A1と、階梯Kn以降の1サイクル分の基準消費電流値A0との比較を行い。これらの差分が閾値以上の階梯Kを全て抽出し、抽出した全ての階梯Kにおいて共通して点灯制御を行っている信号灯器の赤灯器、黄灯器、又は青灯器に対して、異常が発生したと判定する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5