(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】成形装置
(51)【国際特許分類】
B21D 26/033 20110101AFI20240815BHJP
B21D 37/16 20060101ALI20240815BHJP
H05B 3/00 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
B21D26/033
B21D37/16
H05B3/00 340
(21)【出願番号】P 2023132255
(22)【出願日】2023-08-15
(62)【分割の表示】P 2021103007の分割
【原出願日】2017-05-24
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】野際 公宏
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 雅之
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
(72)【発明者】
【氏名】井手 章博
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-002586(JP,A)
【文献】特開2011-189892(JP,A)
【文献】国際公開第2011/045845(WO,A1)
【文献】特開2004-193032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033
B21D 37/16
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パイプ材料に通電して加熱する通電加熱装置
を備え、前記通電加熱装置で加熱した前記金属パイプ材料に流体を供給して前記金属パイプ材料を成形する成形装置であって、
前記通電加熱装置は、前記金属パイプ材料の外周面に接して電力を供給する電極を備え、
前記電極は、
金属パイプ材料の曲げの窪み側と曲げの突出側に均等に通電する場合に比して、温度分布のむらを低減するよう、前記金属パイプ材料の曲げの窪み側に電流が集中して流れることを、均等に通電する場合に比して、抑制する、成形装置。
【請求項2】
制御部を更に備え、
前記制御部は、前記金属パイプ材料の曲げの窪み側と曲げの突出側に均等に通電する場合に比して、温度分布のむらを低減するよう、前記金属パイプ材料の曲げの窪み側に電流が集中して流れることを、均等に通電する場合に比して、抑制する制御を行う、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電極を制御することで、前記金属パイプ材料の曲げの窪み側と曲げの突出側に均等に通電する場合に比して、温度分布のむらを低減するよう、前記金属パイプ材料の曲げの窪み側に電流が集中して流れることを、均等に通電する場合に比して、抑制するように、前記電極を前記金属パイプ材料に接触させる、請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記流体は、気体である、請求項1に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属パイプ材料に通電して加熱する通電加熱装置、及び通電加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属パイプを成形金型により型閉してブロー成形する成形装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された成形装置は、成形金型と、金属パイプ材料内に気体を供給する気体供給部と、を備えている。この成形装置では、加熱された金属パイプ材料を成形金型内に配置し、成形金型を型閉した状態で金属パイプ材料に気体供給部から気体を供給して膨張させることによって、金属パイプ材料を成形金型の形状に対応する形状に成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の成形装置では、膨張成形前に電極で金属パイプ材料を保持し、電極を介して通電を行うことで金属パイプ材料の加熱が行われる。ここで、完成品としての金属パイプは、様々な形状のものが求められていたため、それに伴って金属パイプ材料も様々な形状のものが用いられていた。ここで、金属パイプ材料として、全体が曲がったものが用いられる場合があった。しかしながら、電流が金属パイプ材料内を最短経路で流れようとするので、曲がった金属パイプ材料の通電加熱を行う場合、金属パイプ材料の軸方向において、金属パイプ材料に温度むらが生じやすいという問題がある。従って、金属パイプ材料の軸方向の温度分布のむらを抑制することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、加熱時における金属パイプ材料の軸方向の温度分布のむらを低減することができる通電加熱装置、及び通電加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る通電加熱装置は、金属パイプ材料に通電して加熱する通電加熱装置であって、金属パイプ材料の外周面に接して電力を供給する電極を備え、電極は、金属パイプ材料の外周面の周方向における一部分に対して通電を行い、且つ金属パイプ材料の外周面の周方向における他の部分に対して通電を行わない。
【0007】
本発明に係る通電加熱装置によれば、電極は、金属パイプ材料の外周面の周方向における一部分に対して通電を行い、且つ金属パイプ材料の外周面の周方向における他の部分に対して通電を行わない。従って、金属パイプ材料の外周面のうち周方向における曲げの突出側の一部分に通電がなされるように、金属パイプ材料を電極に対して配置することができる。このように配置した場合、電流の経路が長く加熱されにくい部分である金属パイプ材料の曲げの突出側で通電を行い、電流の経路が短くなり加熱されやすい部分である金属パイプ材料の曲げの窪み側では通電が行われない。これにより、金属パイプ材料の曲げの窪み側に電流が集中して流れることを抑制することで、当該位置で発熱量が大きくなることを抑制できる。以上により、加熱時における金属パイプ材料の軸方向の温度分布のむらを低減することができる。
【0008】
通電加熱装置において、電極は、互いに離間し、且つ、金属パイプ材料の外周面を互いに挟み込む第1の部分、及び第2の部分を備え、第1の部分は金属パイプ材料の外周面の周方向における一部分に対して通電を行い、第2の部分は金属パイプ材料の外周面の周方向における他の部分に対して通電を行わない。これにより、金属パイプ材料のうち、通電を行う部分を第1の部分で支持し、通電を行わない部分を第2の部分で支持すればよいので、電極に対する金属パイプ材料の位置合わせを行いやすい。
【0009】
通電加熱装置において、電極は、金属パイプ材料の外周面の周方向における一部分と接触して金属パイプ材料を支持する導電部と、金属パイプ材料の外周面の周方向における他の部分と接触して金属パイプ材料を支持する絶縁部と、を備える。このように、導電部と絶縁部を設けることで、通電を行う部分と通電を行わない部分とを容易に構成することができる。
【0010】
本発明に係る通電加熱方法は、上述の通電加熱装置を用いて金属パイプ材料に通電して加熱する通電加熱方法であって、曲げ方向に突出するように曲がった金属パイプ材料を準備する工程と、金属パイプ材料の外周面のうち周方向における曲げの突出側の一部分に通電がなされるように、金属パイプ材料を電極に対して配置する工程と、電極で金属パイプ材料を通電加熱する工程と、を備える。
【0011】
本発明に係る通電加熱方法によれば、上述の通電加熱装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の通電加熱装置によれば、加熱時における金属パイプ材料の軸方向の温度分布のむらを低減することができる通電加熱装置、及び通電加熱方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る通電加熱装置で加熱した金属パイプ材料が用いられる成形装置を示す概略構成図である。
【
図2】電極周辺の拡大図であって、(a)は電極が金属パイプ材料を保持した状態を示す図、(b)は電極にシール部材を押し付けた状態を示す図、(c)は電極の正面図である。
【
図3】本実施形態に係る通電加熱装置の斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る通電加熱装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による通電加熱装置で加熱した金属パイプ材料が用いられる成形装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
〈成形装置の構成〉
図1は、本実施形態に係る成形装置の概略構成図である。
図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、上型12及び下型11からなる成形金型13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
【0016】
成形金型13の一方である下型11は、基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)16を備える。下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。
【0017】
更に、下型11の左右端(
図1における左右端)近傍にはスペース11aが設けられており、当該スペース11a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する下側の保持部材17,18等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側の保持部材17,18上に金属パイプ材料14が載置されることで、下側の保持部材17,18は、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14に接触する。
【0018】
下側の保持部材17,18は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側の保持部材17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
【0019】
成形金型13の他方である上型12は、駆動機構80を構成する後述のスライド81に固定されている。上型12は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、内部に冷却水通路25が形成されると共に、その下面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)24を備える。このキャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられる。
【0020】
上型12の左右端(
図1における左右端)近傍には、下型11と同様に、スペース12aが設けられており、当該スペース12a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する上側の保持部材17,18等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、上側の保持部材17,18上に金属パイプ材料14が載置された状態において、上側の保持部材17,18は、下方に移動することで、上型12と下型11との間に配置された金属パイプ材料14に接触する。
【0021】
上側の保持部材17,18は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータの可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側の保持部材17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80のスライド81側に保持されている。
【0022】
パイプ保持機構30の右側部分において、保持部材18,18が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝18aが形成されていて(
図2参照)、当該凹溝18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。また、保持部材18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の右側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の右側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0023】
パイプ保持機構30の左側部分において、保持部材17,17が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝17aが形成されていて(
図2参照)、当該凹溝17aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。また、保持部材17の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の左側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の左側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0024】
図1に示されるように、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、上記スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
【0025】
図1に戻り、一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41上に載置固定されている。シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されており、保持部材17,18のテーパー凹面17b,18bに合わさる形状に構成されている(
図2参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在し、詳しくは
図2(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
【0026】
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68は、制御部70の制御により、金属パイプ材料14を膨張させるための作動圧力を有するガスを、シール部材44のガス通路46に供給する役割を果たす。
【0027】
制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。また、制御部70は、
図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、駆動機構80等を制御する。
【0028】
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0029】
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。この金属パイプ材料14を、後述のロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる保持部材17,18上に載置(投入)する。投入時における金属パイプ材料14は、後述の通電加熱装置100によって加熱された状態である。保持部材17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。
【0030】
次に、制御部70は、駆動機構80及びパイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び保持部材17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる保持部材17,18等及び保持部材17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。この挟持は保持部材17,18に形成される凹溝17a,18aの存在によって、金属パイプ材料14の両端部付近の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。
【0031】
なお、このとき、
図2(a)に示されるように、金属パイプ材料14の保持部材18側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、保持部材18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している。同様に、金属パイプ材料14の保持部材17側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、保持部材17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している。また、上側の保持部材17,18の下面と下側の保持部材17,18の上面とは、それぞれ互いに接触している。ただし、金属パイプ材料14の両端部全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に保持部材17,18が当接するような構成であってもよい。
【0032】
続いて、制御部70による駆動機構80の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14に対して成形金型13を閉じる。これにより、下型11のキャビティ16と上型12のキャビティ24とが組み合わされ、下型11と上型12との間のキャビティ部内に金属パイプ材料14が配置密閉される。
【0033】
その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44を前進させて金属パイプ材料14の両端をシールする。このとき、
図2(b)に示されるように、金属パイプ材料14の保持部材18側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、保持部材18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面18bに沿うように漏斗状に変形する。同様に、金属パイプ材料14の保持部材17側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、保持部材17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面17bに沿うように漏斗状に変形する。シール完了後、高圧ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティ部の形状に沿うように成形する。
【0034】
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。
【0035】
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
【0036】
上述のように金属パイプ材料14に対してブロー成形を行った後に冷却を行い、型開きを行うことにより、例えば略矩形筒状の本体部を有する金属パイプを得る。
【0037】
次に、
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係る通電加熱装置100について説明する。なお、本実施形態で用いられる金属パイプ材料14は、軸方向において全体的に曲げ方向D1に突出するように曲がった形状を有している。ここでは、金属パイプ材料14は、軸方向における中央部にて頂部を有するように円弧状に湾曲する。以降の説明においては、金属パイプ材料14のうち、曲げ方向D1において突出する側の領域を第1の領域E1と称し、曲げ方向D1と反対側において窪んでいる側の領域を第2の領域E2と称する場合がある。
図4に示すように、金属パイプ材料14を曲げ方向D1及び軸方向と直交する方向から見たとき、金属パイプ材料14の湾曲形状における外周側の領域が第1の領域E1であり、内周側の領域が第2の領域E2となる。なお、第1の領域E1と第2の領域E2との境界は、
図4に示す方向から見たときの金属パイプ材料14の幅方向における中央位置であるものとする。通電加熱装置100は、このような金属パイプ材料14を保持すると共に、通電加熱する機能を有している。また、通電加熱装置100は、保持した金属パイプ材料14を成形金型13にセットする機能を有している。
図4に示すように、通電加熱装置100は、第1の電極101と、第2の電極102と、電力供給部103と、制御部106と、を備えている。また、
図3に示すように、通電加熱装置100は、第1の電極101に対して設けられた第1の位置調整部108と、第2の電極102に対して設けられた第2の位置調整部109と、を備えている。
【0038】
図4に示すように、電極101は、金属パイプ材料14を保持し、第2の電極102との間で金属パイプ材料14に通電を行う部材である。第1の電極101は、保持部材(第1の部分)101A及び保持部材(第2の部分)101Bを備えている。第1の電極101は、保持部材101Aと保持部材101Bとの間で金属パイプ材料14を挟み込むことによって保持する。第1の電極101は、金属パイプ材料14の軸方向における一方の端部14b付近を保持する。なお、一方の保持部材101Aが電力供給部103から延びる導線110と接続されている。これにより、保持部材101Aは、金属パイプ材料14へ電流を流すことができる。なお、第1の電極101の詳細な構成については後述する。
【0039】
第2の電極102は、第1の電極101と異なる位置で、金属パイプ材料14を保持し、第1の電極101との間で金属パイプ材料14に通電を行う部材である。第2の電極102は、保持部材102A及び保持部材102Bを備えている。第2の電極102は、保持部材102Aと保持部材102Bとの間で金属パイプ材料14を挟み込むことによって保持する。第2の電極102は、金属パイプ材料14の軸方向における他方の端部14c付近を保持する。なお、一方の保持部材102Aが電力供給部103から延びる導線111と接続されている。
【0040】
電力供給部103は、第1の電極101及び第2の電極102で金属パイプ材料14を保持した状態で、第1の電極101と第2の電極102との間で通電させる装置である。電力供給部103は、少なくとも直流電源及びスイッチを備えて構成されている。電力供給部103は、導線110を介して第1の電極101の保持部材101Aと電気的に接続され、導線111を介して第2の電極102の保持部材102Aと電気的に接続されている。制御部106は、電力供給部103のスイッチのON/OFFを切り替える制御を行うことができる。従って、制御部106は、所定のタイミングで電力供給部103のスイッチをONとし、金属パイプ材料14に電流を流すことができる。
【0041】
図3に示すように、第1の位置調整部108、及び第2の位置調整部109は、ロボットアームによって構成されている。例えば、第1の位置調整部108は、金属パイプ材料14を把持するロボットハンド108a、ロボットハンド108aの姿勢を三次元的に変更可能な可動部108b、及び可動部108b及びロボットハンド108a全体を水平方向に回転させる台座108cなどを備えている。これにより、第1の位置調整部108は、あらゆる角度及び方向から金属パイプ材料14を保持することができる。また、第1の位置調整部108は、金属パイプ材料14をあらゆる姿勢に保持することが可能であり、保持した金属パイプ材料14を可動域の範囲内であらゆる位置に配置することができる。第2の位置調整部109は、第1の位置調整部108と同趣旨の構成を有している。
【0042】
第1の位置調整部108は、第2の位置調整部109から離間した位置にて当該第1の位置調整部108と並ぶように設けられている。第1の位置調整部108は、ロボットハンド108aの先端部に第1の電極101を備えている。これにより、第1の位置調整部108は、金属パイプ材料14に対する第1の電極101の取付位置を調整可能となる。第2の位置調整部109は、ロボットハンド109aの先端部に第2の電極102を備えている。これにより、金属パイプ材料14に対する第1の電極による保持の位置を調整可能となる。
【0043】
各位置調整部108,109は、金属パイプ材料14を成形金型13外で保持し、当該金属パイプ材料14を搬送して成形金型13内に設置することができる。なお、各位置調整部108,109は、制御部106(
図4参照)によって制御されてよい。従って、制御部106は、各位置調整部108,109で金属パイプ材料14を保持し、通電加熱を行った後、加熱された当該金属パイプ材料を成形金型13に配置することができる。
【0044】
次に、
図5を参照して、第1の電極101の詳細な構成について説明する。
図5は、
図4に示すV-V線に沿った断面図である。なお、第2の電極102は第1の電極101と同趣旨の構成を有しているため、説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、保持部材101Aは、断面略矩形状のブロック状の部材である。保持部材101Aの側面のうち、保持部材101Bと対向する対向面101Aaには、溝部101Abが形成される。溝部101Abは、金属パイプ材料14の外周面14aに対応した形状を有しており、半円状に窪んだ形状を有している。保持部材101Aは、金属パイプ材料14を保持するときは、溝部101Abを金属パイプ材料14の外周面14aにおける第1の領域E1と接触させる。保持部材101Bは、断面略矩形状のブロック状の部材である。保持部材101Bの側面のうち、保持部材101Aと対向する対向面101Baには、溝部101Bbが形成される。溝部101Bbは、金属パイプ材料14の外周面14aに対応した形状を有しており、半円状に窪んだ形状を有している。保持部材101Bは、金属パイプ材料14を保持するときは、溝部101Abを金属パイプ材料14の外周面14aにおける第2の領域E2と接触させる。なお、溝部101Ab,101Bbの形状は、金属パイプ材料14の断面形状に合わせた形状に適宜変更してよい。
【0046】
ここで、第1の電極101は、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分に対して通電を行い、且つ金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分に対して通電を行わない。本実施形態では、第1の電極101は、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における第1の領域E1に対して通電を行い、且つ金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における第2の領域E2に対して通電を行わない。なお、第1の電極101のうち、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分に対して通電を行う部分を通電部分150Aとし、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分に対して通電を行わない部分を非通電部分150Bとして説明を行う場合がある。非通電部分150Bは、金属パイプ材料14の外周面14aと接触し、金属パイプ材料14を支持した状態でありながら、当該金属パイプ材料14に通電を行わない部分である。
【0047】
上述のように、第1の電極101は、互いに離間し、且つ、金属パイプ材料14の外周面14aを互いに挟み込む保持部材101A、及び保持部材101Bを備えている。保持部材101Aは金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における第1の領域E1に対して通電を行う。保持部材101Bは金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における第2の領域E2に対して通電を行わない。具体的には、保持部材101Aは導電性を有する材料から構成されている。導電性を有する材料として、例えば、銅、アルミニウム等が用いられる。保持部材101Bは、絶縁性を有する材料から構成されている。絶縁性を有する材料として、例えば、セラミックス、マイカ、石綿、ガラス繊維等が用いられる。
【0048】
以上のような構成により、保持部材101Aは、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における第1の領域E1と接触して金属パイプ材料14を支持する導電部121Aとして機能する。保持部材101Aは、導線110から流れる電流を溝部101Abを介して金属パイプ材料14へ流す。あるいは、電流の方向が逆の場合、保持部材101Aは、金属パイプ材料14から流れる電流を溝部101Abを介して導線110へ流す。従って、保持部材101Aは、金属パイプ材料14に対する通電部分151Aとして機能する。なお、本明細書での「通電」とは、電極から金属パイプ材料に対して電流を流すこと、及び金属パイプ材料からの電流を受けることを意味するものとする。保持部材101Bは、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における第2の領域E2と接触して金属パイプ材料14を支持する絶縁部121Bとして機能する。また、保持部材101Bは、金属パイプ材料14に対して通電を行わない非通電部分151Bとして機能する。なお、
図5に示す例では、保持部材101B全体が絶縁材料で構成されていたが、少なくとも金属パイプ材料14と接触する部分、すなわち溝部101Bbが絶縁材料で構成されていればよい。例えば、導電材料からなる保持部材101Bの表面全体を絶縁材料でコーティングしてもよい。
【0049】
次に、上述の通電加熱装置100を用いた通電加熱方法について説明する。
【0050】
まず、
図4に示すような、曲げ方向D1に突出するように曲がった金属パイプ材料14を準備する工程が実行される。次に、金属パイプ材料14の外周面14aのうち周方向における曲げの突出側の一部分(第1の領域E1)に通電がなされるように、金属パイプ材料14を第1の電極101及び第2の電極102に対して配置する工程が実行される。この工程では、第1の電極101の保持部材101Aの溝部101Abに金属パイプ材料14の外周面14aの第1の領域E1を接触させる。また、この工程では、第1の電極101の保持部材101Bの溝部101Bbに金属パイプ材料14の外周面14aの第2の領域E2を接触させる。このような態様にて、第1の電極101は、保持部材101A,101Bにて金属パイプ材料14を保持する。第2の電極102も、第1の電極101と同趣旨の態様にて、金属パイプ材料14を保持する。次に、第1の電極101及び第2の電極102で金属パイプ材料14を通電加熱する工程が実行される。この工程では、第1の電極101のうち、保持部材101Aのみで金属パイプ材料14に対して通電が行われ、保持部材101Bでは通電が行われない。第2の電極102のうち、保持部材102Aのみで金属パイプ材料14に対して通電が行われ、保持部材102Bでは通電が行われない。
【0051】
次に、本実施形態に係る通電加熱装置100及び通電加熱方法の作用・効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係る通電加熱装置100によれば、電極101,102は、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分に対して通電を行い、且つ金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分に対して通電を行わない。従って、金属パイプ材料14の外周面14aのうち周方向における曲げの突出側の一部分(第1の領域E1)に通電がなされるように、金属パイプ材料14を電極101,102に対して配置することができる。このように配置した場合、電流の経路が長く加熱されにくい部分である金属パイプ材料14の曲げの突出側(第1の領域E1)で通電を行い、電流の経路が短くなり加熱されやすい部分である金属パイプ材料の曲げの窪み側(第2の領域E2)では通電が行われない。これにより、金属パイプ材料14の曲げの窪み側に電流が集中して流れることを抑制することで、当該位置で発熱量が大きくなることを抑制できる。以上により、加熱時における金属パイプ材料14の軸方向の温度分布のむらを低減することができる。
【0053】
通電加熱装置100において、電極101,102は、互いに離間し、且つ、金属パイプ材料14の外周面14aを互いに挟み込む保持部材101A,102A、及び保持部材101A,101Bを備える。保持部材101A,102Aは金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分(第1の領域E1)に対して通電を行い、保持部材101B,102Bは金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分(第2の領域E2)に対して通電を行わない。これにより、金属パイプ材料14のうち、通電を行う部分を保持部材101A,102Aで支持し、通電を行わない部分を保持部材101B,102Bで支持すればよいので、電極101,102に対する金属パイプ材料14の位置合わせを行いやすい。
【0054】
通電加熱装置100において、電極101,102は、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分(第1の領域E1)と接触して金属パイプ材料14を支持する導電部121Aと、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分(第2の領域E2)と接触して金属パイプ材料14を支持する絶縁部121Bと、を備える。このように、導電部121Aと絶縁部121Bを設けることで、通電を行う通電部分151Aと通電を行わない非通電部分151Bとを(例えば、後述の
図7,8のように通電部分の切替を行う構成に比して)容易に構成することができる。
【0055】
本実施形態に係る通電加熱方法は、上述の通電加熱装置100を用いて金属パイプ材料14に通電して加熱する通電加熱方法であって、曲げ方向D1に突出するように曲がった金属パイプ材料14を準備する工程と、金属パイプ材料14の外周面14aのうち周方向における曲げの突出側の一部分(第1の領域E1)に通電がなされるように、金属パイプ材料14を電極101,102に対して配置する工程と、電極101,102で金属パイプ材料14を通電加熱する工程と、を備える。
【0056】
本実施形態に係る通電加熱方法によれば、上述の通電加熱装置100と同様の作用・効果を得ることができる。
【0057】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0058】
例えば、電極は、一つの保持部材の中で導電部と絶縁部を有してよい。
図6に示す電極200は、保持部材200A,200Bを備えている。なお、以降の説明では、保持部材200A,200B同士が対向する方向を対向方向D2と称し、対向方向D2及び軸方向と直交する方向を幅方向D3として説明を行う。保持部材200A,200Bは、幅方向D3における一方側に導電材料で構成された導電部201A,201Bと、幅方向D3における他方側に絶縁材料で構成された絶縁部202A,202Bと、を備えている。導線110は、導電部201Aに接続されている。この場合、導電部201Aと導電部201Bとは、互いの対向面201Aa,201Baを介して互いに導通される。ただし、導線110は、導電部201Bに接続されてもよく、導電部201A及び導電部201Bの両方に接続されてもよい。以上のような構成により、導電部201A,201Bは、金属パイプ材料14に対して通電を行う通電部分251Aとして機能する。絶縁部202A,202Bは、金属パイプ材料14に対して通電を行わない非通電部分251Bとして機能する。
【0059】
このような電極200は、導電部201A,201Bにて、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分に対して通電を行い、且つ絶縁部202A,202Bにて、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分に対して通電を行わない。従って、金属パイプ材料14の外周面14aのうち周方向における曲げの突出側の一部分(第1の領域E1)に通電がなされるように、金属パイプ材料14を電極200に対して配置することができる。ここでは、金属パイプ材料14は、第1の領域E1と第2の領域E2とが幅方向D3に対向するように配置され、第1の領域E1が導電部201A,201Bに接触、第2の領域E2が絶縁部202A,202Bに接触する。このように配置した場合、電流の経路が長く加熱されにくい部分である金属パイプ材料14の曲げの突出側(第1の領域E1)で通電を行い、電流の経路が短くなり加熱されやすい部分である金属パイプ材料の曲げの窪み側(第2の領域E2)では通電が行われない。これにより、金属パイプ材料14の曲げの窪み側に電流が集中して流れることを抑制することで、当該位置で発熱量が大きくなることを抑制できる。以上により、加熱時における金属パイプ材料14の軸方向の温度分布のむらを低減することができる。
【0060】
また、電極200は、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分(第1の領域E1)と接触して金属パイプ材料14を支持する導電部201A,201Bと、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分(第2の領域E2)と接触して金属パイプ材料14を支持する絶縁部202A,202Bと、を備える。このように、導電部201A,201Bと絶縁部202A,202Bを設けることで、通電を行う通電部分251Aと通電を行わない非通電部分251Bとを(例えば、後述の
図7,8のように通電部分の切替を行う構成に比して)容易に構成することができる。
【0061】
また、例えば、電極は、一つの保持部材の中で通電部分と非通電部分とを切替可能に構成されてよい。
図7に示す電極300は、保持部材300A,300Bを備えている。保持部材300A,300Bは、幅方向D3における一方側に導電材料で構成された導電部301A,301Bと、幅方向D3における他方側に導電材料で構成された導電部302A,302Bと、幅方向D3における中央位置で導電部301A,302A間に絶縁材料で構成された絶縁部303Aと、幅方向D3における中央位置で導電部301B,302B間に絶縁材料で構成された絶縁部303Bと、を備えている。
【0062】
導線110は、分岐部110a及び分岐部110bに分岐されている。また、分岐部110aにはスイッチ112が設けられ、分岐部110bにはスイッチ113が設けられる。分岐部110aは導電部301Aに接続され、分岐部110bは導電部302Aに接続されている。この場合、導電部301Aと導電部301Bとは、互いの対向面301Aa,301Baを介して互いに導通される。導電部302Aと導電部302Bとは、互いの対向面302Aa,302Baを介して互いに導通される。
【0063】
以上のような構成を有する電極300は、通電部分351Aと非通電部分351Bとを切り替えることができる。例えば、
図7に示すようにスイッチ112をONとし、スイッチ113をOFFとした場合、導電部301A,301Bが通電部分351Aとして機能し、導電部302A,302B及び絶縁部303A,303Bが非通電部分351Bとして機能する。また、スイッチ112をOFFとし、スイッチ113をONとした場合、導電部302A,302Bが通電部分351Aとして機能し、導電部301A,301B及び絶縁部303A,303Bが非通電部分351Bとして機能する。
【0064】
このような電極300は、スイッチ112をONとし、スイッチ113をOFFとした場合、導電部301A,301Bにて、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分に対して通電を行い、且つ導電部302A,302Bにて、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分に対して通電を行わない。従って、金属パイプ材料14の外周面14aのうち周方向における曲げの突出側の一部分(第1の領域E1)に通電がなされるように、金属パイプ材料14を電極300に対して配置することができる。ここでは、金属パイプ材料14は、第1の領域E1と第2の領域E2とが幅方向D3に対向するように配置され、第1の領域E1が導電部301A,301Bに接触、第2の領域E2が導電部302A,302Bに接触する。このように配置した場合、電流の経路が長く加熱されにくい部分である金属パイプ材料14の曲げの突出側(第1の領域E1)で通電を行い、電流の経路が短くなり加熱されやすい部分である金属パイプ材料の曲げの窪み側(第2の領域E2)では通電が行われない。これにより、金属パイプ材料14の曲げの窪み側に電流が集中して流れることを抑制することで、当該位置で発熱量が大きくなることを抑制できる。以上により、加熱時における金属パイプ材料14の軸方向の温度分布のむらを低減することができる。
【0065】
また、スイッチ112,113を切り替えることで、通電部分351Aと非通電部分351Bの位置を切り替えることができる。すなわち、
図7に示す状態から、スイッチ112をOFFに切り替え、スイッチ113をONに切り替えた場合、導電部302A,302Bが通電部分351Aとなる。この場合、第1の領域E1が導電部302A,302Bに接触、第2の領域E2が導電部301A,301Bに接触するように、金属パイプ材料14を電極300に対して配置する。このような切替機構を備えることで、電極300で金属パイプ材料14を保持した後に、通電部分351Aと非通電部分351Bを設定することができる。
【0066】
また、
図8に示すように、更に多くの切替のパターンを有する電極400を採用してもよい。
図8に示す電極400は、保持部材400A,400Bを備えている。
図8に示す電極400は、
図7の電極300の導電部301A,301B,302A,302B、及び絶縁部303A,303Bと同趣旨の、導電部401A,401B,402A,402B、及び絶縁部403A,403Bを有する。更に、電極400は、導電部401Aの対向面に設けられた絶縁部404Aと、導電部401Bの対向面に設けられた絶縁部404Bと、導電部402Aの対向面に設けられた絶縁部406Aと、導電部402Bの対向面に設けられた絶縁部406Bと、を備える。このような構成により、金属パイプ材料14を保持した状態では、導電部401A,401B,402A,402Bは、互いに絶縁された状態となる。
【0067】
導線110は、スイッチ112を有する分岐部110aと、スイッチ113を有する分岐部110bと、スイッチ114を有する分岐部110cと、スイッチ115を有する分岐部110dと、を有する。分岐部110aは導電部401Aに接続され、分岐部110bは導電部402Aに接続され、分岐部110cは、導電部401Bに接続され、分岐部110dは導電部402Bに接続される。
【0068】
以上のような構成を有する電極400は、通電部分451Aと非通電部分451Bとを切り替えることができる。例えば、
図8に示すようにスイッチ112,113をONとし、スイッチ114,115をOFFとした場合、導電部401A,402Aが通電部分351Aとして機能し、導電部401B,402B及び絶縁部403A,403B,404A,404B,406A,406Bが非通電部分351Bとして機能する。また、スイッチ114,115をONとし、スイッチ112,113をOFFとした場合、導電部401B,402Bが通電部分351Aとして機能し、導電部401A,402A及び絶縁部403A,403B,404A,404B,406A,406Bが非通電部分351Bとして機能する。また、スイッチ112,114をONとし、スイッチ113,115をOFFとした場合、導電部401A,401Bが通電部分351Aとして機能し、導電部402A,402B及び絶縁部403A,403B,404A,404B,406A,406Bが非通電部分351Bとして機能する。また、スイッチ113,115をONとし、スイッチ112,114をOFFとした場合、導電部402A,402Bが通電部分351Aとして機能し、導電部401A,401B及び絶縁部403A,403B,404A,404B,406A,406Bが非通電部分351Bとして機能する。
【0069】
このような電極400は、スイッチ112,113をONとし、スイッチ114,115をOFFとした場合、導電部401A,402Aにて、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における一部分に対して通電を行い、且つ導電部401B,402Bにて、金属パイプ材料14の外周面14aの周方向における他の部分に対して通電を行わない。従って、金属パイプ材料14の外周面14aのうち周方向における曲げの突出側の一部分(第1の領域E1)に通電がなされるように、金属パイプ材料14を電極300に対して配置することができる。ここでは、金属パイプ材料14は、第1の領域E1と第2の領域E2とが対向方向D2に対向するように配置され、第1の領域E1が導電部401A,402Aに接触、第2の領域E2が導電部401B,402Bに接触する。このように配置した場合、電流の経路が長く加熱されにくい部分である金属パイプ材料14の曲げの突出側(第1の領域E1)で通電を行い、電流の経路が短くなり加熱されやすい部分である金属パイプ材料の曲げの窪み側(第2の領域E2)では通電が行われない。これにより、金属パイプ材料14の曲げの窪み側に電流が集中して流れることを抑制することで、当該位置で発熱量が大きくなることを抑制できる。以上により、加熱時における金属パイプ材料14の軸方向の温度分布のむらを低減することができる。
【0070】
また、スイッチ112,113,114,115のON/OFFを切り替えることで、電極400の通電部分451A及び非通電部分451Bの位置を切り替えることができる。従って、金属パイプ材料14の配置に応じて、第1の領域E1が通電部分451Aと接触し、第2の領域E2が非通電部分451Bと接触するように、通電部分451A及び非通電部分451Bの位置を切り替えることができる。
【0071】
なお、金属パイプ材料の形状は上述のものに限定されない。例えば、金属パイプ材料は、湾曲ではなく屈曲している形状でもよい。
【0072】
上述の通電加熱装置は、電極と位置調整部とを有する構成であったが、位置調整部を有していなくともよい。すなわち、成形装置側に上述と同趣旨の構成を有する電極を設けてもよい。この場合、成形装置に金属パイプ材料を設置する際に、電極と金属パイプ材料との位置合わせを行う。
【符号の説明】
【0073】
100…通電加熱装置、101,102,200,300,400…電極、103…電力供給部、101A,102A,200A,300A,400A…保持部材(第1の部分)、101B,102B,200B,300B,400B…保持部材(第2の部分)121A,201A,201B,301A,301B,302A,302B,401A,401B,402A,402B…導電部、121B,202A,202B,303A,303B,403A,403B,404A,404B,406A,406B…絶縁部。