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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】台車用負荷装置
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/00 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
B61F5/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023145723
(22)【出願日】2023-09-08
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】祖田 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】水落 雅貴
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203749(JP,A)
【文献】特開2004-050863(JP,A)
【文献】特開2006-116992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/00
F16F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の空気ばねを下方から支持する左右一対の座面が設けられた台車枠と、前記台車枠の前後をそれぞれ支持する輪軸とを備える台車のうち、一対の前記座面または一対の前記空気ばねの上面である一対の受圧面に、下方への荷重を付与する台車用負荷装置であって、
一対の前記受圧面にそれぞれ当接可能な一対の負荷パッドと、
一対の前記負荷パッドと一対の前記受圧面との前後位置が合うように、一対の前記負荷パッドを支持する支持部と、
前記支持部に対して前記負荷パッドを左右方向に移動させる横行アクチュエータと、
前記支持部に対して前記負荷パッドを上下方向に移動させて前記負荷パッドから前記受圧面に下方への荷重を付与する負荷アクチュエータと、
少なくとも一方の前記負荷パッドの左右両側にそれぞれ取り付けられて、自身の直下に位置する前記受圧面を検出する内側検出センサ及び外側検出センサと、
前記内側検出センサ及び前記外側検出センサの少なくとも一方が前記受圧面を未検出の状態で、前記負荷アクチュエータによる前記負荷パッドから前記受圧面への荷重の付与を禁止する禁止手段と、を備えることを特徴とする台車用負荷装置。
【請求項2】
一対の前記受圧面は、一対の前記空気ばねの上面であり、
前記負荷パッドの下面の中央には、前記空気ばねの上面の中央から突出する突起を収容可能な凹部が形成され、
前記内側検出センサは、前記内側検出センサの直下の前記空気ばねまでの前記負荷パッドの下面からの距離が、前記凹部の深さよりも大きい状態で、前記空気ばねを検出可能な物体検出センサであり、
前記外側検出センサは、前記外側検出センサの直下の前記空気ばねまでの前記負荷パッドの下面からの距離が、前記凹部の深さよりも大きい状態で、前記空気ばねを検出可能な物体検出センサであることを特徴とする請求項1記載の台車用負荷装置。
【請求項3】
前記禁止手段は、前記横行アクチュエータにより前記負荷パッドを移動させながら、前記負荷パッドに取り付けられた前記内側検出センサ及び前記外側検出センサが前記受圧面を検出したことに応じて、前記横行アクチュエータによる前記負荷パッドの移動を停止させることを特徴とする請求項1記載の台車用負荷装置。
【請求項4】
左右一対の空気ばねを下方から支持する台車枠と、前記台車枠の前後をそれぞれ支持する輪軸とを備える台車のうち、一対の前記空気ばねの上面に、下方への荷重を付与する台車用負荷装置であって、
一対の前記空気ばねの上面にそれぞれ当接可能な下面をそれぞれ有し、その下面の中央に、前記空気ばねの上面の中央から突出する突起を収容可能な凹部が形成された一対の負荷パッドと、
一対の前記負荷パッドと一対の前記空気ばねとの前後位置が合うように、一対の前記負荷パッドを支持する支持部と、
前記支持部に対して前記負荷パッドを左右方向に移動させる横行アクチュエータと、
前記支持部に対して前記負荷パッドを上下方向に移動させて前記負荷パッドから前記空気ばねに下方への荷重を付与する負荷アクチュエータと、
少なくとも一方の前記負荷パッドに取り付けられて、前記凹部に前記突起を収容しつつ前記負荷パッドの下面を前記空気ばねの上面に当接させた状態で前記空気ばねを検出する近接センサと、
前記近接センサが前記空気ばねを未検出の状態で、前記負荷アクチュエータによる前記負荷パッドから前記空気ばねへの荷重の付与を禁止する禁止手段と、を備えることを特徴とする台車用負荷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷パッドで台車に荷重を付与する台車用負荷装置に関し、特に負荷パッドの左右位置の調整ミスに起因した台車や負荷パッドなどの損傷を抑制できる台車用負荷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道車両の台車を組み立てたり分解したりするとき、実際に車体を台車に支持させず、台車用負荷装置を用いて、輪軸と台車枠との間の軸ばね(弾性体)を圧縮した状態で維持することが知られている(特許文献1)。台車用負荷装置は、車体を支持する左右一対の空気ばねや、その空気ばねを下方からそれぞれ支持する台車枠の左右一対の座面に、左右一対の負荷パッドから下方への荷重を付与し、軸ばねを圧縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-203749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
台車の種類に応じて左右一対の空気ばねの間隔が異なることがあるため、従来は、作業者が目視によって左右一対の負荷パッドの間隔を調整していた。しかし、この調整をミスしたまま台車用負荷装置によって荷重が付与されると、台車や負荷パッドなどが損傷するおそれがある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、負荷パッドの左右位置の調整ミスに起因した台車や負荷パッドなどの損傷を抑制できる台車用負荷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の台車用負荷装置は、左右一対の空気ばねを下方から支持する左右一対の座面が設けられた台車枠と、前記台車枠の前後をそれぞれ支持する輪軸とを備える台車のうち、一対の前記座面または一対の前記空気ばねの上面である一対の受圧面に、下方への荷重を付与するものである。この台車用負荷装置は、一対の前記受圧面にそれぞれ当接可能な一対の負荷パッドと、一対の前記負荷パッドと一対の前記受圧面との前後位置が合うように、一対の前記負荷パッドを支持する支持部と、前記支持部に対して前記負荷パッドを左右方向に移動させる横行アクチュエータと、前記支持部に対して前記負荷パッドを上下方向に移動させて前記負荷パッドから前記受圧面に下方への荷重を付与する負荷アクチュエータと、少なくとも一方の前記負荷パッドの左右両側にそれぞれ取り付けられて、自身の直下に位置する前記受圧面を検出する内側検出センサ及び外側検出センサと、前記内側検出センサ及び前記外側検出センサの少なくとも一方が前記受圧面を未検出の状態で、前記負荷アクチュエータによる前記負荷パッドから前記受圧面への荷重の付与を禁止する禁止手段と、を備える。
【0007】
また、本発明の台車用負荷装置は、左右一対の空気ばねを下方から支持する台車枠と、前記台車枠の前後をそれぞれ支持する輪軸とを備える台車のうち、一対の前記空気ばねの上面に、下方への荷重を付与するものである。この台車用負荷装置は、一対の前記空気ばねの上面にそれぞれ当接可能な下面をそれぞれ有し、その下面の中央に、前記空気ばねの上面の中央から突出する突起を収容可能な凹部が形成された一対の負荷パッドと、一対の前記負荷パッドと一対の前記空気ばねとの前後位置が合うように、一対の前記負荷パッドを支持する支持部と、前記支持部に対して前記負荷パッドを左右方向に移動させる横行アクチュエータと、前記支持部に対して前記負荷パッドを上下方向に移動させて前記負荷パッドから前記空気ばねに下方への荷重を付与する負荷アクチュエータと、少なくとも一方の前記負荷パッドに取り付けられて、前記凹部に前記突起を収容しつつ前記負荷パッドの下面を前記空気ばねの上面に当接させた状態で前記空気ばねを検出する近接センサと、前記近接センサが前記空気ばねを未検出の状態で、前記負荷アクチュエータによる前記負荷パッドから前記空気ばねへの荷重の付与を禁止する禁止手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の台車用負荷装置によれば、支持部によって一対の負荷パッドと一対の受圧面との前後位置が合わせられる。更に、横行アクチュエータにより負荷パッドが左右方向に移動させられて、一対の負荷パッドと一対の受圧面との左右位置が合わせられる。この状態で負荷アクチュエータを作動させることにより、負荷パッドを上下方向に移動させて負荷パッドから受圧面に下方への荷重を付与することができる。
【0009】
負荷パッドの左右両側にそれぞれ取り付けられる内側検出センサ及び外側検出センサは、センサ自身の直下に位置する受圧面を検出するものである。内側検出センサ及び外側検出センサの両方が受圧面を検出した状態では、負荷パッドと受圧面との左右位置がずれていないものと判断できる。一方、内側検出センサ及び外側検出センサの少なくとも一方が受圧面を未検出の状態では、負荷パッドと受圧面とがずれているおそれがある。このようなおそれがある状態では、台車用負荷装置の禁止手段によって、負荷アクチュエータによる負荷パッドから受圧面への荷重の付与が禁止される。その結果、負荷パッドと受圧面との左右位置がずれたまま荷重が付与されることを抑制でき、負荷パッドの左右位置の調整ミスに起因した台車や負荷パッドなどの損傷を抑制できる。
【0010】
請求項2記載の台車用負荷装置によれば、請求項1記載の台車用負荷装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。一対の受圧面は一対の空気ばねの上面であり、この空気ばねの上面の中央から突起が突出する。この突起を収容可能な凹部が負荷パッドの下面の中央に形成されている。内側検出センサは、内側検出センサの直下の空気ばねまでの負荷パッドの下面からの距離が、凹部の深さよりも大きい状態で、空気ばねを検出可能な物体検出センサである。外側検出センサは、外側検出センサの直下の空気ばねまでの負荷パッドの下面からの距離が、凹部の深さよりも大きい状態で、空気ばねを検出可能な物体検出センサである。これにより、例えば、負荷パッドと受圧面との左右位置がずれた状態で、負荷アクチュエータにより負荷パッドを受圧面に近づけた場合、突起が負荷パッドに接触する前に物体検出センサで受圧面を検出できる。これにより、その接触前に、禁止手段によって負荷パッドによる荷重の付与を禁止できるので、突起や負荷パッドを損傷させ難くできる。
【0011】
請求項3記載の台車用負荷装置によれば、請求項1記載の台車用負荷装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。禁止手段は、横行アクチュエータにより負荷パッドを移動させながら、負荷パッドに取り付けられた内側検出センサ及び外側検出センサが受圧面を検出したことに応じて、横行アクチュエータによる負荷パッドの移動を停止させる。即ち禁止手段は、一対の負荷パッドと一対の受圧面との左右位置を自動的に合わせることで、それらがずれたままでの負荷アクチュエータによる荷重の付与を禁止する。これにより、負荷パッドの左右位置の調整ミスに起因した台車や負荷パッドなどの損傷をより生じ難くできる。
【0012】
請求項4記載の台車用負荷装置によれば、支持部によって一対の負荷パッドと一対の空気ばねとの前後位置が合わせられる。更に、横行アクチュエータにより負荷パッドが左右方向に移動させられて、一対の負荷パッドと一対の空気ばねとの左右位置が合わせられる。この状態で負荷アクチュエータを作動させることにより、負荷パッドを上下方向に移動させて負荷パッドから空気ばねの上面に下方への荷重を付与することができる。
【0013】
一対の負荷パッドと一対の空気ばねとの左右位置がずれていなければ、負荷パッドの下面の中央に形成された凹部に、空気ばねの上面の中央から突出する突起が収容されつつ、負荷パッドの下面と空気ばねの上面とが当接する。この状態で、負荷パッドに取り付けられた近接センサが空気ばねを検出するので、その近接センサが未検出の状態では、負荷パッドと空気ばねとの左右位置がずれているおそれがある。この場合には禁止手段により、負荷アクチュエータによる負荷パッドから空気ばねへの荷重の付与が禁止される。その結果、負荷パッドと空気ばねとの左右位置がずれたまま荷重が付与されることを抑制でき、負荷パッドの左右位置の調整ミスに起因した台車や負荷パッドなどの損傷を抑制でき、特に突起の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における台車用負荷装置および台車の斜視図である。
図2】台車用負荷装置の平面図である。
図3図2のIII-III線における台車用負荷装置の部分拡大断面図である。
図4図3の矢印IV方向から見た台車用負荷装置の部分拡大後面図である。
図5】台車用負荷装置の電気的構成を示したブロック図である。
図6】台車用負荷装置のCPUで実行される荷重付与処理のフローチャートである。
図7】第2実施形態における荷重付与処理のフローチャートである。
図8】第3実施形態における台車用負荷装置の部分拡大後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず図1及び図2を参照して、第1実施形態における台車用負荷装置100について説明する。図1は、台車用負荷装置100及び台車10の斜視図である。図2は、台車用負荷装置100の平面図である。各図面の矢印U、矢印D、矢印L、矢印R、矢印F、矢印Bは、それぞれ台車用負荷装置100及び台車10の上方向、下方向、左方向、右方向、前方向、後方向を示している。
【0016】
台車用負荷装置100は、鉄道車両の台車10に下方への荷重を付与するための装置である。まず、この台車10について説明する。台車10は、上面視において前後左右の中央に関し点対象に形成されている。
【0017】
台車10は、車軸11の軸方向(左右方向)両側に一対の車輪12を固定した2本の輪軸13と、前後に離れた2本の輪軸13により支持される台車枠14と、台車枠14に取り付けられる2つの主電動機15と、2本の車軸11にそれぞれ取り付けられる2つの歯車箱16と、を備える。なお、台車10は、主電動機15及び歯車箱16を備えないものでも良い。
【0018】
車軸11のうち車輪12よりも軸方向外側の両端部には、それぞれ軸受部13aが取り付けられる。軸受部13aは、輪軸13に台車枠14を弾性的に支持させるコイルスプリング等の弾性体13b(軸ばね)を備える。
【0019】
台車枠14は、上面視H字状に形成されたフレームである。台車枠14の前後方向の中央部における左右両側にはそれぞれ、左右一対の空気ばね17が取り付けられる。台車枠14には、この左右一対の空気ばね17を下方から支持する左右一対の座面14a(図4参照)が設けられる。座面14aは、上下方向に垂直な平面であり、上方を向く。
【0020】
空気ばね17は、台車10に車体を弾性的に支持させる部材であり、空気が封入されている。空気ばね17は、上面視において円形状に形成される。空気ばね17の上面17a(図4参照)の径方向中央からは、上方へ向かって円錐台状の突起17b(図4参照)が突出する。この突起17bの先端から空気ばね17内の空気が給排される。
【0021】
主電動機15は、輪軸13を回転させて鉄道車両を走行させるための駆動力を生み出す電動機である。歯車箱16は、主電動機15の駆動力を輪軸13に伝達するための機構である。
【0022】
台車10の組立時や分解時などには、台車10で車体を支持した状態において、主電動機15と歯車箱16との位置関係を含む、台車枠14と輪軸13との高さ関係を確認する作業がある。この作業では、実際に車体を台車10に支持させずに、台車用負荷装置100を用いて、車体の荷重に相当する荷重(以下「所定荷重」という)を台車10に付与させ、弾性体13bを圧縮した状態で維持する。台車枠14と輪軸13とが適切な高さ関係にあれば、それらを互いに固定したり、固定を解除したりした後、所定荷重の付与を終了する。
【0023】
台車用負荷装置100は、台車10を搬入出する左右一対のレール20と、レール20によって搬入された台車10を固定する台車固定装置21と、台車固定装置21に固定された台車10に対して下方への所定荷重を付与する左右一対の荷重付与機構30と、を主に備える。
【0024】
一対のレール20は、前後方向に沿って床面Fに設けた溝内に敷かれ、台車固定装置21によって一部が前後に分断される。一対のレール20は、台車10の車輪12の左右間隔と略同じだけ左右方向に離隔して平行に配置され、車輪12が載せられる。
【0025】
台車固定装置21は、前後方向および左右方向に台車10を位置決めするための装置であり、上下動可能に構成される。台車固定装置21を最も下降させた状態では、台車固定装置21の上面22が床面Fと同一平面を構成する。この状態で、前後に分断された一対のレール20を前後に繋ぐ一対のレール23が、台車固定装置21の上面22に形成した溝内に設けられる。
【0026】
その溝のうち左右方向内側の壁面には、それぞれ左右方向外側へ張り出し可能な押付部材24が設けられる。押付部材24は、一対の車輪12の左右内側に対向するよう、左右一対で配置される。一対の押付部材24は、前後の輪軸13に対してそれぞれ配置され、計4個設けられる。
【0027】
一対の押付部材24は、溝の壁面からの張出量が互いに同一となるように機械的に連動する。これにより、レール23上の車輪12に押付部材24を押し付けることで、輪軸13がレール23上で左右方向に位置決めされる。
【0028】
台車固定装置21には、一対のレール23の左右方向外側に隣接するようにローラ25が設けられる。ローラ25は、左右方向の回転軸を中心とした円筒状に形成され、その回転軸を中心に回転自在に構成される。ローラ25は、1個の押付部材24に対し前後対称に2個1組で配置され、計8個4組設けられる。
【0029】
1組のローラ25は、そのローラ25間に設けた支持部材26に回転自在にそれぞれ支持されている。この支持部材26は、1組のローラ25の高さを同一にしつつ、台車固定装置21の上面22に対してローラ25を上下に移動させる。上方へ移動させた1組のローラ25で車輪12を支持すると、ローラ25上を車輪12が転がって1組のローラ25の中間位置に車輪12の前後方向の中央が位置決めされる。
【0030】
押付部材24及びローラ25を用いた一連の位置決め作業について説明する。この作業における押付部材24及び支持部材26の動作は、図5に示す制御装置50によって制御され、図5に示す電源・油圧ユニット56からの駆動力によって実行される。
【0031】
図1及び図2に示す通り、位置決め作業ではまず、レール23上の車輪12にローラ25が干渉しない位置まで支持部材26を下げておく。次いで、作業者などに台車10をレール20からレール23上へ搬入させ、一対のローラ25の上方へ車輪12を配置させる。その後、押付部材24を車輪12に押し付け、台車固定装置21に対し台車10を左右方向に仮で位置決めする。仮の位置決め後、押付部材24による押し付けを解除し、レール23上で台車10を移動可能にする。
【0032】
その後、支持部材26によってローラ25を上昇させ、レール23から全ての車輪12を浮かすように、4組のローラ25で車輪12を支持する。これにより、台車固定装置21に対し台車10が前後方向に位置決めされる。更に、再び押付部材24を車輪12に押し付けることで、台車固定装置21に対し台車10が左右方向にも位置決めされ、台車固定装置21に台車10が固定される。
【0033】
荷重付与機構30は、このような台車固定装置21に固定された台車10に対して下方への所定荷重を付与するものである。図1から図4を参照して、荷重付与機構30について更に詳しく説明する。なお、荷重付与機構30は、台車10の左右両側に対称に配置されている。そのため、以下、右側の荷重付与機構30について説明し、左側の荷重付与機構30の説明は省略する。
【0034】
図3は、図2のIII-III線における台車用負荷装置100の部分拡大断面図である。図4は、図3の矢印IV方向から見た台車用負荷装置100の部分拡大後面図である。図3及び図4では、いずれも上端部31a近傍が拡大して示されている。また、図4には、負荷パッド40が前後方向に垂直な断面で示され、台車10の空気ばね17の近傍の後面図も示されている。
【0035】
荷重付与機構30は、台車10の空気ばね17に当接して所定荷重を付与する負荷パッド40と、その負荷パッド40を支持するように床面Fから垂直に立ち上がる支柱状の支持部31と、を備える。更に荷重付与機構30は、支持部31に負荷パッド40を上下左右に移動可能に支持するため、ガイドレール32、スライダ33、ブラケット34、連結板35,39、横行シリンダ36、負荷シリンダ37を備える。荷重付与機構30は、基本的に前後対称に形成される。
【0036】
図1及び図2に示すように、支持部31は、四角柱状に形成され、上端部31aが水平方向へ屈曲している。支持部31は、この上端部31aの先端が後方または左右方向の内側(台車10側)を向くように、床面Fに回転可能に取り付けられる。なお、上端部31aの先端を後方に向けることで、台車用負荷装置100への台車10の搬入出時に、荷重付与機構30に台車10を干渉させ難くできると共に、作業スペースを確保できる。
【0037】
上端部31aは、先端を左右方向の内側に向けた場合、台車固定装置21に固定した台車10の空気ばね17の直上に位置する。以下、特に指定が無ければ、上端部31aの先端を左右方向の内側に向けた場合について説明する。
【0038】
図3及び図4に示すように、上端部31aは、四角筒状に形成され、上壁部の先端側を上下に貫通する開口31bが左右方向に延びて形成されている。上端部31aの下部には、開口31bに対応する部分を切り欠いた切欠部31cが形成されている。
【0039】
ガイドレール32は、上端部31aの前後の外面のそれぞれに固定された前後一対の部材であり、左右方向に延びて形成される。ガイドレール32は、開口31b及び切欠部31cに対し前後両側へ長く形成されている。
【0040】
スライダ33は、前後一対のガイドレール32にそれぞれ取り付けられた前後一対の部材であり、ガイドレール32に沿ってスライドする。この前後一対のスライダ33には、それぞれブラケット34が固定される。
【0041】
ブラケット34は、スライダ33に固定されて上下に延びた側壁部と、側壁部の下端から前後方向の外側(上端部31aとは反対側)へ延びた下壁部と、側壁部および下壁部から垂直に立ち上がって両者の左右両側をそれぞれ連結したリブと、を備える。これらの各部により、ブラケット34の剛性が確保される。
【0042】
連結板35は、前後一対のブラケット34の下壁部同士を連結する板材である。連結板35の前後方向の中央部であって、開口31b及び切欠部31cに面する位置には、上下方向に貫通する貫通孔35aが形成される。また、連結板35の前後方向の両端部であって、ブラケット34の下壁部と重なる位置には、上下方向に貫通する貫通孔35bが形成される。
【0043】
ブラケット34及び連結板35は、ガイドレール32及びスライダ33によって、支持部31の上端部31aに対し左右方向に移動可能に構成される。更に、負荷シリンダ37や連結板39を介して連結板35に負荷パッド40が支持されるため、負荷パッド40も支持部31に対し左右方向に移動可能に構成される。
【0044】
横行シリンダ36は、この連結板35及び負荷パッド40等を左右方向に移動させるためのアクチュエータであり、本実施形態では油圧シリンダから構成される。横行シリンダ36は、上端部31aの内部に配置される。横行シリンダ36は、上端部31aに固定されて左右方向に延びるシリンダ部36aと、そのシリンダ部36aの左右方向の内側から突出するロッド36bと、を備える。
【0045】
ロッド36bの先端は、図示しない板材を介して連結板35に固定される。シリンダ部36aからのロッド36bの突出量を変化させることで、上端部31aに対して連結板35及び負荷パッド40等が左右方向に移動する。なお、左右一対の横行シリンダ36の伸縮量(ロッド36bの突出量)は、後述の制御装置50によって同一となるように制御される。
【0046】
負荷シリンダ37は、連結板39に固定された負荷パッド40を連結板35に対して上下方向に移動させ、負荷パッド40から空気ばね17へ所定荷重を付与するためのアクチュエータである。負荷シリンダ37は、本実施形態では油圧シリンダから構成される。負荷シリンダ37は、連結板35に固定されて上下方向に延びるシリンダ部37aと、そのシリンダ部37aの下端から突出するロッド37cと、を備える。
【0047】
シリンダ部37aの下端には、径方向外側へ張り出すフランジ37bが形成される。このフランジ37bが、貫通孔35aの周囲の連結板35の上面に固定される。シリンダ部37aは、この連結板35から上方へ延び、切欠部31c及び開口31bを通って上端部31aから上方へ突出する。これにより、負荷シリンダ37のストロークを長くできる。
【0048】
ロッド37cは、貫通孔35aを通って連結板35よりも下方へ張り出す。ロッド37cの先端は、接続部材37dを介して連結板39の上面に固定される。接続部材37dには、ロードセルが内蔵されている。ロードセルは、負荷パッド40から空気ばね17へ付与される荷重値を計測するセンサである。
【0049】
連結板39の下面には負荷パッド40が固定される。これにより、負荷シリンダ37の伸縮量(ロッド37cの突出量)を変化させることで、支持部31や連結板35に対して負荷パッド40及び連結板39が上下方向に移動する。
【0050】
また、この上下方向の移動をガイドするために、ガイドシリンダ38a及びガイドロッド38cが荷重付与機構30に設けられる。本実施形態では、上端部31aを挟んで略等距離の位置に前後一対のガイドシリンダ38a及びガイドロッド38cが設けられている。ガイドシリンダ38aは、上下方向に延びる円筒状の部材である。ガイドシリンダ38aの下端からは、径方向外側へフランジ38bが張り出す。フランジ38bの上面が連結板35の下面に固定され、連結板35の貫通孔35bと、ブラケット34の下壁部を貫通する孔とを通って、その下壁部から上方へガイドシリンダ38aが突出する。
【0051】
ガイドロッド38cは、上下方向に延びる円柱状の部材である。ガイドロッド38cは、ガイドシリンダ38aに挿入され、ガイドシリンダ38aに対し上下方向にスライド可能に構成される。ガイドロッド38cの下端には、径方向外側へ張り出すフランジ38dが取り付けられる。このフランジ38dを介してガイドロッド38cが連結板39に固定される。このようなガイドシリンダ38a及びガイドロッド38cによって、連結板35に対する連結板39の上下方向の移動を安定化でき、支持部31に対する負荷パッド40の上下方向の移動を安定化できる。
【0052】
負荷パッド40は、負荷シリンダ37の軸心を中心とした回転対称に形成される部材である。負荷パッド40は、その軸心を中心とした円柱状の本体部と、その本体部の上端から径方向外側へ張り出す円板状の上フランジと、本体部の下端から径方向外側へ張り出す円板状の下フランジ40aと、本体部の外周面から放射状に等間隔に張り出して上フランジ及び下フランジ40aを連結する6枚の板状のリブ40cと、を備える。
【0053】
負荷パッド40(上フランジ)の上面が連結板39に固定される。上フランジの直径よりも下フランジ40aの直径が大きい。6枚のうち左右に設けた2枚のリブ40cは、それぞれ左右方向と平行に配置されている。
【0054】
負荷パッド40(下フランジ40a)の下面は、負荷シリンダ37の作動により、空気ばね17の上面17aに当接して空気ばね17へ所定荷重を付与する面である。なお、負荷シリンダ37を最も縮め、台車10が固定された台車固定装置21を最も上昇させた状態(以下「負荷準備状態」と称す)では、上面17aから突出した突起17bよりも上方に負荷パッド40の下面が位置し、両者が干渉しないように離れている。
【0055】
負荷パッド40の下面には、径方向の中央に円錐台状の凹部40bが形成されている。これにより、負荷パッド40の下面と空気ばね17の上面17aとを、径方向の中央同士を合わせて互いに当接させた状態において、上面17aから突出する突起17bが凹部40bの内部に収容される。
【0056】
本実施形態では、突起17bに対し凹部40bが径方向に若干大きく形成されている。これにより、負荷パッド40及び空気ばね17の径方向の中央同士が若干ずれても、凹部40b内に突起17bを収容して、負荷パッド40の下面と上面17aとを当接させることができる。
【0057】
負荷パッド40及び空気ばね17の径方向の中央同士は、台車固定装置21に台車10を固定し、支持部31の上端部31aの先端を左右方向の内側へ向けることで、前後方向に合うように構成されている。なお、台車10の種類が変わっても、基本的に空気ばね17が台車10の前後方向の中央に配置されているので、負荷パッド40と空気ばね17との中央同士が前後方向に合う。
【0058】
一方、その中央同士の左右方向の位置合わせは、横行シリンダ36により負荷パッド40を左右方向に移動させて行う。ここで、台車10の種類に応じて、左右一対の空気ばね17の間隔(ピッチ)が異なることがある。本実施形態では、その間隔が2種類である場合を説明する。図4には、間隔が短い場合の右側の空気ばね17を実線で示し、間隔が長い場合の右側の空気ばね17を二点鎖線で示している。
【0059】
従来は、作業者が目視によって左右一対の負荷パッド40の間隔を調整し、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置を合わせていた。なお、この左右位置がずれたまま負荷パッド40から空気ばね17へ所定荷重が付与されると、台車10や負荷パッド40等が損傷するおそれがある。
【0060】
この対策として、本実施形態の台車用負荷装置100には、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置のずれを検出する内側検出センサ41及び外側検出センサ42が設けられる。内側検出センサ41及び外側検出センサ42は、投受光によって所定の検出範囲に物体が存在することを検出する光電センサである。内側検出センサ41は、負荷パッド40の左右方向内側のリブ40cに取り付けられる。外側検出センサ42が負荷パッド40の左右方向外側のリブ40cに取り付けられる。
【0061】
内側検出センサ41及び外側検出センサ42の直下の下フランジ40aには、板厚方向に貫通する貫通孔40dがそれぞれ形成されている。内側検出センサ41及び外側検出センサ42は、この貫通孔40dを通して各々のセンサの直下へ光をそれぞれ投射する。その投射された光が負荷準備状態における上面17aに反射すると、内側検出センサ41及び外側検出センサ42のそれぞれは、その反射した光を受光し、自身の直下に上面17aが存在することを検出してオンになる。一方、内側検出センサ41及び外側検出センサ42のそれぞれは、負荷準備状態において、自身の直下に上面17aが存在しないとオフ(未検出)になる。
【0062】
図4の実線の空気ばね17と負荷パッド40との左右位置を合わせた場合には、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方がオンになる。この状態から、空気ばね17のみを二点鎖線の位置に変更した場合、外側検出センサ42はオンのままだが、内側検出センサ41はオフになる。逆に、二点鎖線の空気ばね17に合う左右位置に負荷パッド40を配置した状態で、空気ばね17を実線の位置とした場合、内側検出センサ41がオンになり、外側検出センサ42がオフとなる。
【0063】
よって、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方がオンである場合には、空気ばね17と負荷パッド40との左右位置がずれていないものと判断できる。一方、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の少なくとも一方がオフである場合には、空気ばね17と負荷パッド40との左右位置がずれているおそれがある。
【0064】
次に、図4から図6を参照して、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の検出結果を用いた台車用負荷装置100の制御方法について説明する。図5は、台車用負荷装置100の電気的構成を示したブロック図である。
【0065】
台車用負荷装置100の制御装置50は、CPU51と、ROM52と、RAM53とを備える。これらは、バスライン54を介して入出力ポート55にそれぞれ接続されている。入出力ポート55には更に、電源・油圧ユニット56と、操作盤57と、台車固定装置21と、一対の荷重付与機構30の各部と、がそれぞれ接続されている。この荷重付与機構30の各部には、横行シリンダ36、負荷シリンダ37、内側検出センサ41、外側検出センサ42が含まれる。
【0066】
CPU51は、バスライン54により接続された各部を制御する演算装置である。ROM52は、CPU51により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え不可能な不揮発性のメモリである。なお、ROM52の代わりに、フラッシュROMやSSD、HDD等の記憶装置を用いても良い。RAM53は、CPU51のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリである。
【0067】
ROM52には制御プログラム52aが設けられている。CPU51により制御プログラム52aが実行されると、図6の荷重付与処理が実行される。この制御プログラム52a(荷重付与処理)は、作業者による操作盤57の操作に応じて実行される。
【0068】
電源・油圧ユニット56は、台車用負荷装置100(台車固定装置21や一対の荷重付与機構30等)の各部に電力または油圧などの駆動力を送る装置である。例えば、電源・油圧ユニット56から制御装置50や操作盤57、内側検出センサ41等へ電力が供給される。また、制御装置50からの電気信号に基づき開閉する各種の弁を介して、電源・油圧ユニット56から横行シリンダ36や負荷シリンダ37等へ油圧が供給される。
【0069】
操作盤57は、作業者からの操作を受け付ける入力装置である。台車用負荷装置100に台車10を搬入した後、台車10の固定に関する操作が作業者によって操作盤57で行われると、上述した通りに台車10が台車固定装置21に固定され、負荷準備状態とされる。このとき、横行シリンダ36は最も縮小された状態とされる。
【0070】
次いで作業者によって操作盤57で、左右一対の空気ばね17の間隔が入力された後、空気ばね17への所定荷重の付与を開始する操作が行われると、図6の荷重付与処理がCPU51で実行される。この荷重付与処理について、図4及び図6を参照しながら説明する。図6は、荷重付与処理のフローチャートである。
【0071】
荷重付与処理では、まず、入力された空気ばね17間のピッチ(間隔)に応じて左右一対の横行シリンダ36をそれぞれ伸長させる(S11)。例えば具体的に、入力されたピッチが図4の実線の場合であれば、その実線の空気ばね17と負荷パッド40との左右位置が合うまで、横行シリンダ36を伸長させる。
【0072】
S11の処理後は、2つずつ設けられた内側検出センサ41及び外側検出センサ42が全てオンであるかを確認する(S12)。それらが全てオンである場合には(S12:Yes)、空気ばね17と負荷パッド40との左右位置が左右両側でずれていないものと判断できるので、負荷シリンダ37を伸長させて負荷パッド40の下面を空気ばね17の上面17aに当接させる(S13)。
【0073】
更にS13の処理では、負荷シリンダ37により負荷パッド40を空気ばね17に押し付けて下方への所定荷重を付与する。S13の処理後は、付与解除の操作が作業者により操作盤57でされたかを確認する(S14)。付与解除の操作がされていない場合には(S14:No)、空気ばね17に所定荷重が付与された状態を維持する。この状態で、作業者は、台車枠14と輪軸13との高さ関係を確認する作業を行う。
【0074】
その作業が終了して、付与解除の操作がされると(S14:Yes)、負荷シリンダ37による所定荷重の付与を解除して、負荷シリンダ37を最も縮小させた状態にする(S15)。最後に、次の荷重付与処理に備えて、横行シリンダ36を最も縮小させた状態にし(S16)、今回の荷重付与処理を終了する。
【0075】
なお、S12の処理で、2つずつ設けられた内側検出センサ41及び外側検出センサ42の少なくとも1つがオフである場合には(S12:No)、空気ばね17と負荷パッド40との左右位置がずれているおそれがある。この場合、図示しない表示装置やスピーカー等を用いてエラーを作業者に報知し(S17)、S13~S15の処理をスキップして、S16の処理を実行し、荷重付与処理を終了する。
【0076】
このように、台車用負荷装置100は、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の少なくとも1つがオフである場合に、負荷シリンダ37を作動させないことで、負荷シリンダ37による所定荷重の付与を禁止する。これにより、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置がずれたまま荷重が付与されることを抑制でき、負荷パッド40の左右位置の調整ミスに起因した台車10や負荷パッド40等の損傷を抑制できる。
【0077】
また、内側検出センサ41及び外側検出センサ42は、負荷パッド40の下面よりも下方に突起17bが位置する負荷準備状態で、空気ばね17を検出可能である。即ち、内側検出センサ41及び外側検出センサ42は、各々のセンサの直下の空気ばね17までの負荷パッド40の下面からの距離が、突起17bの高さ(凹部40bの深さ)よりも大きい状態で、空気ばね17を検出可能である。これにより、突起17bが負荷パッド40に接触する前に、負荷パッド40による荷重の付与を禁止できるので、突起17bや負荷パッド40を損傷させ難くできる。
【0078】
ここで、作業者が操作盤57で左右一対の空気ばね17の間隔を手入力する場合には、その入力ミスによって負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が多少ずれてしまうおそれがある。このとき、そのずれ量によっては内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方がオンになってしまうおそれがある。
【0079】
これに対し、台車用負荷装置100は、操作盤57で左右一対の空気ばね17の間隔を入力するとき、複数種類(本実施形態では2種類)の間隔のうちいずれか1種を選択するように構成されている。加えて、その1種に負荷パッド40を合わせたとき、残りの種類の場合の空気ばね17が内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方で検出されないように、それらのセンサの間隔が設定されている。これらの結果、作業者の入力ミス等に起因して負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が多少ずれつつ、内側検出センサ41又は外側検出センサ42の両方がオンになることを抑制できる。よって、負荷パッド40の左右位置の調整ミスに起因した台車10や負荷パッド40等の損傷をより抑制できる。
【0080】
内側検出センサ41と外側検出センサ42との左右方向の間隔は、空気ばね17の上面17aの平面部の直径に対して70%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。この割合が大きいほど、内側検出センサ41及び外側検出センサ42は、それぞれ上面17aの左右方向の縁部の近傍を検出できる。その結果、台車10の種類に応じた左右一対の空気ばね17の間隔の差が小さくても、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置のずれを判別し易くできる。
【0081】
次に図7を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、操作盤57で左右一対の空気ばね17の間隔を入力した後、荷重付与処理が実行される場合について説明した。これに対し第2実施形態では、その間隔を入力せずに荷重付与処理が実行される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0082】
図7は、第2実施形態における台車用負荷装置のCPU51で実行される荷重付与処理のフローチャートである。第2実施形態における台車用負荷装置は、第1実施形態における台車用負荷装置100に対し、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の間隔と、制御方法の一部とが異なり、その他が同一に構成されている。
【0083】
第2実施形態では、内側検出センサ41と外側検出センサ42との左右方向の間隔は、空気ばね17の上面17aの直径と略同一である。この略同一とは、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方で上面17aを検出したときに、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が若干ずれていても、凹部40b内に突起17bが収容されて負荷パッド40の下面が上面17aと当接できるような位置関係となる大きさであることをいう。
【0084】
第2実施形態における荷重付与処理は、第1実施形態における荷重付与処理に対し、左右一対の空気ばね17の間隔を入力せずに、空気ばね17への所定荷重の付与を開始する操作が行われると実行される。なお、荷重付与処理は、横行シリンダ36を最も縮小させつつ、負荷準備状態で実行される。
【0085】
荷重付与処理では、まず、左右一対の横行シリンダ36の伸長を開始させる(S21)。次いで、各々の負荷パッド40に設けた内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方がオンであるかを確認する(S22)。少なくとも一方がオフである場合には(S22:No)、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が大きくずれているので、S22の処理を繰り返し、両方がオンになるまで横行シリンダ36を伸長させ続ける。
【0086】
一方、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方がオンになった場合には(S22:Yes)、凹部40b内に突起17bを収容可能な程度に負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が合うので、横行シリンダ36の伸長を停止させる(S23)。その後、第1実施形態と同様にS13~S16の処理を実行して、荷重付与処理を終了する。
【0087】
以上の通り、第2実施形態の台車用負荷装置によれば、左右一対の負荷パッド40と左右一対の空気ばね17との左右位置を自動的に合わせることで、それらがずれたままでの負荷シリンダ37による荷重の付与を禁止する。これにより、負荷パッド40の左右位置の調整ミスに起因した台車10や負荷パッド40などの損傷をより生じ難くできる。
【0088】
また、S21~S23の処理は、左右の荷重付与機構30に関し個別に行われる。これにより例えば、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が、左側で合っているのに右側でずれている場合、左側の横行シリンダ36の伸長を停止させつつ、右側の横行シリンダ36の伸長を続けることができる。即ち、左右一対の負荷パッド40や空気ばね17が、取付誤差などによって左右対称の位置からずれても、左右両側のそれぞれで負荷パッド40と空気ばね17との左右位置を合わせることができる。
【0089】
次に図8を参照して第3実施形態について説明する。第1,2実施形態では、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が合っていることを、内側検出センサ41及び外側検出センサ42を用いて判断する場合について説明した。これに対し第3実施形態では、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が合っていることを、近接センサ112を用いて判断する場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0090】
図8は、第3実施形態における台車用負荷装置110の部分拡大後面図であり、上端部31a近傍が拡大して示されている。図8では、負荷パッド40と台車10の空気ばね17とが、前後方向に垂直な断面で示されている。
【0091】
台車用負荷装置110の荷重付与機構111は、第1実施形態における荷重付与機構30に対し、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の代わりに近接センサ112を設けたものであり、下フランジ40aの貫通孔40dが省略されている。
【0092】
更に、荷重付与機構111では、負荷パッド40の内部に、凹部40bの底と負荷パッド40の本体部の外周面とにそれぞれ開口する連通孔113が形成されている。連通孔113の凹部40b側の開口は、凹部40bに空気ばね17の突起17bを収容した状態で、その突起17bの先端に設けられた給排孔17cの開口に連通する。この給排孔17cは、空気ばね17内の空気を給排するための流路である。
【0093】
連通孔113の外周面側の開口にはホース114が接続される。台車用負荷装置110は、このホース114から連通孔113及び給排孔17cを介して、空気ばね17内に空気を注入した状態で、負荷パッド40から空気ばね17に所定荷重を付与するように構成される。
【0094】
この空気が漏れないように、台車用負荷装置110では、負荷パッド40の凹部40bと空気ばね17の突起17bとが密着するように構成される。更に台車用負荷装置110では、凹部40bと突起17bとを密着させるために、空気ばね17に対する負荷パッド40の左右位置を作業者が細かく調整しながら、空気ばね17の上面17aに負荷パッド40の下面を当接させる。
【0095】
しかし、この場合、空気ばね17と負荷パッド40とが当接したように作業者に見えても、実際には空気ばね17と負荷パッド40との左右位置が若干ずれ、凹部40bと突起17bとが密着せず、空気ばね17と負荷パッド40とが当接していない場合がある。このまま負荷パッド40から空気ばね17へ所定荷重を付与すると、台車10や負荷パッド40等、特に突起17bが損傷するおそれがある。
【0096】
この対策として、台車用負荷装置110には、空気ばね17と負荷パッド40との左右位置のずれを検出する近接センサ112が設けられる。近接センサ112は、物体に当たって押し込まれるヘッド112aにより物体の存在を検知するリミットスイッチである。近接センサ112は、ヘッド112aが下フランジ40aの外縁より外側に位置するように下フランジ40aの上面の外縁部に固定され、ヘッド112aが負荷パッド40(下フランジ40a)の下面から若干突出する。
【0097】
これにより、凹部40bに突起17bを収容して負荷パッド40の下面を空気ばね17の上面17aに当接させたときに、上面17aによってヘッド112aが上方へ押し込まれ、近接センサ112が上面17aを検出してオンになる。一方、空気ばね17と負荷パッド40との左右位置がずれている場合には、ヘッド112aが上面17aに当たらず、近接センサ112がオフ(未検出)になる。
【0098】
台車用負荷装置110では、第1実施形態のように、近接センサ112がオフである場合に、負荷シリンダ37による負荷パッド40から空気ばね17への所定荷重の付与を禁止する。この禁止は、空気ばね17に負荷パッド40を当接させたと作業者が判断した後、負荷シリンダ37による所定荷重の付与の操作が作業者によってされた場合に、負荷シリンダ37を作動させないようにして行われる。以上の構成によれば、左右位置の調整ミスに起因した台車10や負荷パッド40などの損傷を抑制でき、特に突起17bの損傷を抑制できる。
【0099】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0100】
上記実施形態では、横行シリンダ36及び負荷シリンダ37がそれぞれ油圧シリンダである場合を説明したが、これに限られない。横行シリンダ36や負荷シリンダ37が、電動シリンダやエアシリンダで構成されても良く、シリンダ形状以外のアクチュエータによって構成されても良い。
【0101】
上記実施形態では、内側検出センサ41及び外側検出センサ42が光電センサである場合を説明したが、これに限られない。所定距離離れた状態で空気ばね17が直下に存在することを検出できれば、磁気や音波、画像処理などを用いたセンサによって、内側検出センサ41及び外側検出センサ42が構成されても良い。また、近接センサ112は、リミットスイッチに限らず、検出範囲が狭い光電センサや、磁気、音波、画像処理などを用いたセンサから構成されても良い。
【0102】
上記実施形態では、負荷パッド40の下面を空気ばね17の上面17aに当接させて所定荷重を付与する場合について説明したが、これに限られない。空気ばね17が省略され、空気ばね17を支持する座面14aに負荷パッド40の下面が当接され、負荷パッド40から座面14aへ所定荷重が付与されても良い。この場合、内側検出センサ41や外側検出センサ42、近接センサ112には、空気ばね17に代えて座面14aを検出させれば良い。
【0103】
上記実施形態では、台車固定装置21が上下動可能に構成される場合について説明したが、これに限られない。台車固定装置21が上下動不可能に構成され、支持部31が低く構成されても良い。この場合の負荷準備状態は、支持部31の上端部31aの先端を左右方向の内側へ向けて、負荷シリンダ37を最も縮めた状態である。なお、台車固定装置21を上昇させた状態で、荷重付与機構30,111により台車10へ所定荷重を付与する方が、その所定荷重を付与した状態での作業を行い易くできる。
【0104】
上記実施形態では、負荷準備状態で内側検出センサ41及び外側検出センサ42の直下に空気ばね17の上面17aが存在すれば、それらのセンサがオンになる場合を説明したが、これに限られない。負荷シリンダ37を伸長させて負荷パッド40を空気ばね17に近づけているときに、内側検出センサ41及び外側検出センサ42がオンになるように、それらのセンサの検出範囲が設定されても良い。この場合、負荷シリンダ37を伸長させている間に、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の一方がオンで他方がオフになったとき、負荷シリンダ37の伸長を停止し、負荷シリンダ37による所定荷重の付与を禁止するように制御されれば良い。
【0105】
上記第2実施形態では、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方がオンになった場合に、横行シリンダ36の伸長を停止させる場合について説明したが、これに限られない。例えば、内側検出センサ41及び外側検出センサ42のオンオフが切り換わるタイミングから、横行シリンダ36の伸縮量を決定しても良い。
【0106】
具体的に、横行シリンダ36を伸縮させながら、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の一方がオンで他方がオフである状態から、両方がオンに切り換わったときの横行シリンダ36の伸縮量、両方がオンである状態から一方がオフで他方がオンに切り換わったときの伸縮量を制御装置50に取得させる。両者の切り換わり時における伸縮量を足して半分にした平均値で、負荷パッド40及び空気ばね17の中央同士が一致するので、その平均値を制御装置50に算出させる。次いで、制御装置50によって、横行シリンダ36の伸縮量を上記平均値に調整させる。これにより、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置を自動的に合わせることができる。
【0107】
上記第1実施形態では、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の一方がオンで他方がオフであるときに、負荷シリンダ37を作動させない場合について説明したが、これに限られない。例えば、負荷シリンダ37を作動させなくするのに代えて、上記第2実施形態のように、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置が自動的に合わせられるように構成しても良い。
【0108】
上記第2実施形態では、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の検出結果に応じて、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置を自動的に合わせる場合を説明したが、これに限られない。例えば、負荷パッド40等に設けたカメラの画像を解析して、負荷パッド40と空気ばね17との左右位置を自動的に合わせても良い。
【0109】
上記実施形態では、一対の負荷パッド40の両方に、内側検出センサ41及び外側検出センサ42や、近接センサ112が設けられる場合を説明したが、これに限られない。例えば、左右の荷重付与機構30,111が左右対称に動作する場合には、一対の負荷パッド40の一方に各センサ41,42,112を設けて、他方に各センサ41,42,112を設けなくても良い。これは、左右一対の負荷パッド40の一方が空気ばね17とずれていれば、他方もずれるからである。なお、負荷パッド40の一方のみに内側検出センサ41及び外側検出センサ42を設ける場合、S12の処理では、内側検出センサ41及び外側検出センサ42の両方がオンであるかを確認すれば良い。
【0110】
上記第1実施形態では、左右一対の横行シリンダ36の伸縮量が制御装置50によって同一となるように制御される場合を説明したが、これに限られない。第1実施形態の空気ばね17の間隔が2種類であるので、左右方向内側および外側の2か所で負荷パッド40が停止するように、横行シリンダ36の伸縮量が制御されても良い。
【0111】
例えば具体的に、開口31bや切欠部31cの左右両側に、負荷シリンダ37や連結板35等に接触してオンになるリミットスイッチを設け、リミットスイッチのオンオフにより横行シリンダ36の伸縮量を制御する場合が挙げられる。空気ばね17の間隔が短い場合には、横行シリンダ36を伸長させて、左右方向内側のリミットスイッチがオンになったときに横行シリンダ36を停止すれば良い。一方、空気ばね17の間隔が長い場合には、横行シリンダ36を縮めて、左右方向外側のリミットスイッチがオンになったときに横行シリンダ36を停止すれば良い。
【符号の説明】
【0112】
100,110 台車用負荷装置
10 台車
13 輪軸
14 台車枠
14a 座面(受圧面)
17 空気ばね
17a 空気ばねの上面(受圧面)
17b 突起
31 支持部
36 横行シリンダ(横行アクチュエータ)
37 負荷シリンダ(負荷アクチュエータ)
40 負荷パッド
40b 凹部
41 内側検出センサ(物体検出センサ)
42 外側検出センサ(物体検出センサ)
112 近接センサ
S12,S17,S21~S23 禁止手段
【要約】
【課題】負荷パッドの左右位置の調整ミスに起因した台車や負荷パッドなどの損傷を抑制できる台車用負荷装置を提供すること。
【解決手段】負荷パッド40の左右両側にそれぞれ取り付けられる内側検出センサ41及び外側検出センサ42は、自身の直下に位置する空気ばね17の上面17aを検出するものである。内側検出センサ41及び外側検出センサ42の少なくとも一方が上面17aを未検出の状態では、負荷パッド40と上面17aとがずれているおそれがあるので、禁止手段によって、負荷シリンダ37による負荷パッド40から上面17aへの荷重の付与が禁止される。その結果、負荷パッド40と上面17aとの左右位置がずれたまま荷重が付与されることを抑制でき、負荷パッド40の左右位置の調整ミスに起因した台車10や負荷パッド40などの損傷を抑制できる。
【選択図】図1
図1
図2
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図7
図8