(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20240815BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240815BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240815BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G01N27/04 Z
G01M99/00 A
(21)【出願番号】P 2023146337
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2019227654の分割
【原出願日】2019-12-17
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】東 高仁
(72)【発明者】
【氏名】小池 敦
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128311(JP,A)
【文献】特開2019-095282(JP,A)
【文献】特開2018-163133(JP,A)
【文献】特開2010-014518(JP,A)
【文献】特開2011-007610(JP,A)
【文献】特開2018-107152(JP,A)
【文献】特開平09-318577(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021074(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0314064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01M 99/00
G01R 31/00-31/74
G01N 15/00-15/1492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状体のセンサ本体を有し、
前記センサ本体の
側面に周方向に離間して配置された複数の磁石と、
前記センサ本体における
複数の前記磁石の間のギャップを充填するように配置された
絶縁体の吸着部と、
を備え、
前記吸着部が、前記磁石の外周面よりも径方向外側に突出し
、
前記磁石が電極とされて、前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記磁石を互いに周方向に短絡して、
前記磁石の間の電気抵抗を変化させる
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記磁石が径方向に着磁されるとともに、周方向に隣接する前記磁石では互いに逆向きに着磁される
ことを特徴とする
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
複数の前記磁石が、径方向外側に向かう磁束を形成するように配置される
ことを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記電極が、前記磁石と、前記磁石に接触して導電性を有する導体部分と、を備える
ことを特徴とする請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
複数の前記磁石にはそれぞれ出力ラインが接続されている
ことを特徴とする請求項
4に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
減速機等の機械装置は、歯車等の機械部品の損傷を抑制するために、潤滑油が貯められたハウジング内に収容される。このような機械装置の運転時に機械部品が摩耗すると、摩耗粉(例えば、鉄粉などの導体物質)が潤滑油内に混入する。この摩耗粉は、例えば、鉄粉等の導体物質である。機械部品の摩耗が進んで故障率曲線(バスタブ曲線)における摩耗故障期に入ると、潤滑油内に混入した摩耗粉の量が増加する。このため、潤滑油内の摩耗粉の量を検知するセンサにより、機械部品の予防保全を的確に行うことができる。
【0003】
このようなセンサとして、例えば特許文献1には、永久磁石の外周側のカップ状の電極と、この電極と対向するように複数の棒状導電体を周方向に配置した電極とを有し、電極間を短絡する金属粉の量を検知することで、オイルの汚れ度合をチェックする構成が知られている。
【0004】
また、本出願人は、特許文献2に記載されるセンサを出願している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-331324号公報
【文献】特開2019-128311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される構成では、周方向に複数の電極を配置する必要があり、検知可能な金属粉の量を考慮すると一定以上小型化できないため、大きすぎて、容積の小さなオイルパンには、収容できない場合があるという問題があった。
特に、近年、減速機等の小型化が求められており、これに対応可能なコンパクト化されたセンサへの要求があった。同時に、センサにおいて、動作確実性と故障予知および故障検知の正確性とが求められているため、これらを、同時に実現したいという要求があった。
【0007】
また、特許文献2では、径方向に電極間の検知ギャップが形成されているが、初期摩耗粉による誤動作を抑制するためには、ギャップの大きさを小さくすることができないため、さらなる小型化を実現したいという要求があった。
【0008】
本発明は、小型化可能で動作確実性の高いセンサを提供可能とするという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様に係るセンサは、
柱状体のセンサ本体を有し、
前記センサ本体の側面に周方向に離間して配置された複数の磁石と、
前記センサ本体における複数の前記磁石の間のギャップを充填するように配置された絶縁体の吸着部と、
を備え、
前記吸着部が、前記磁石の外周面よりも径方向外側に突出し、
前記磁石が電極とされて、前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記磁石を互いに周方向に短絡して、前記磁石の間の電気抵抗を変化させる
ことにより上記課題を解決した。
本発明は、
前記磁石が径方向に着磁されるとともに、周方向に隣接する前記磁石では互いに逆向きに着磁される
ことができる。
本発明は、
複数の前記磁石が、径方向外側に向かう磁束を形成するように配置される
ことができる。
本発明は、
前記電極が、前記磁石と、前記磁石に接触して導電性を有する導体部分と、を備える
ことができる。
本発明は、
複数の前記磁石にはそれぞれ出力ラインが接続されている
ことができる。
【0010】
本発明のセンサは、第1の電極と、
前記第1の電極に対してギャップを介して配置される第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極が配置されたセンサ本体と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる捕捉部と、
を備えたセンサにおいて、
前記捕捉部に集まった導体粒子を介し、外周方向に通電することができる。
本発明のセンサによれば、導体粒子を検出するギャップが吸着部の外周表面に沿って設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
また、外周方向に検知方向を設定できるため、軸線方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
【0011】
本発明の第一態様に係るセンサは、第1の電極と、
前記第1の電極に対して周方向にギャップを有して離間する第2の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記第1の電極と前記吸着部と前記第2の電極とが周方向に配置され、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第2の電極とを周方向に短絡して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗を変化させることにより上記課題を解決した。
【0012】
本発明のセンサによれば、導体粒子を検出するギャップが吸着部の外周表面に沿って周方向に設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。 また、吸着部の外周表面に沿った周方向に検知方向を設定できるため、軸線方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
【0013】
本発明のセンサは、前記第1の電極と前記第2の電極とに対して周方向にギャップを有して離間する第3の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第3の電極とを周方向に短絡して、前記第1の電極と前記第3の電極との間の電気抵抗を変化させることができる。
【0014】
本発明のセンサは、前記第1から第3の電極に対していずれも周方向にギャップを有して離間する第4の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第4の電極とを周方向に短絡して、前記第1の電極と前記第4の電極との間の電気抵抗を変化させることができる。
【0015】
本発明のセンサは、前記電極の外周表面が柱状体の側面を形成することができる。
【0016】
本発明のセンサは、前記電極が磁石とされ、外周表面から径方向外側に向かう磁束を形成するように配置されることができる。
【0017】
本発明の第一態様に係るセンサは、円筒状のセンサ本体を有し、
前記センサ本体を周方向に4分割した磁石と、
前記センサ本体における前記磁石の間のギャップを充填するように配置された吸着部と、
を備え、
前記吸着部が、前記磁石の外周面よりも径方向外側に突出し、
前記磁石が径方向に着磁されるとともに、周方向に隣接する前記磁石では互いに逆向きに着磁され、
前記磁石が電極とされて、前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記磁石を互いに周方向に短絡して、前記電極とされた磁石の間の電気抵抗を変化させることにより上記課題を解決した。
【0018】
本発明のセンサによれば、導体粒子を検出するギャップが吸着部の外周表面に沿って周方向に設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。 また、吸着部の外周表面に沿った周方向に検知方向を設定できるため、軸線方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
【0019】
本発明の第一態様に係るセンサは、第1の電極と第2の電極と第3の電極とを備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に第1の捕捉部が配置され、
前記第2の電極と前記第3の電極との間に第2の捕捉部が配置され、
前記第1の電極と前記第2の電極と前記第3の電極とがセンサ本体の軸方向に配置されたことにより上記課題を解決した。
【0020】
本発明のセンサによれば、導体粒子を検出するギャップが捕捉部の外周表面に沿って軸線方向に設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。 また、捕捉部の外周表面に沿った軸線方向に検知方向を設定できるため、軸線方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
【0021】
本発明の第一態様に係るセンサは、第1の電極と、
前記第1の電極に対して軸線方向にギャップを有して離間する第2の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記第1の電極と前記吸着部と前記第2の電極とが軸線方向に積み重ねられ、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第2の電極とを軸線方向に短絡して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗を変化させることにより上記課題を解決した。
【0022】
本発明のセンサによれば、導体粒子を検出するギャップが吸着部の外周表面に沿って軸線方向に設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。 また、吸着部の外周表面に沿った軸線方向に検知方向を設定できるため、軸線方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
【0023】
本発明のセンサは、前記第1の電極と前記第2の電極とに対して軸線方向にギャップを有して離間する第3の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極と前記第3の電極と、各前記吸着部と、が軸線方向に積み重ねられ、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第3の電極とを軸線方向に短絡して、前記第1の電極と前記第3の電極との間の電気抵抗を変化させることができる。
【0024】
本発明のセンサは、前記第1から第3の電極に対していずれも軸線方向にギャップを有して離間する第4の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記第1から前記第4の電極と、各前記吸着部と、が軸線方向に積み重ねられ、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第4の電極とを軸方向に短絡して、前記第1の電極と前記第4の電極との間の電気抵抗を変化させることができる。
【0025】
本発明のセンサは、前記電極の外周表面が柱状体の側面に位置することができる。
【0026】
本発明のセンサは、前記電極が磁石とされ、外周表面から径方向外側に向かう磁束を形成するように配置されることができる。
【0027】
本発明の第一態様に係るセンサは、円筒状のセンサ本体を有し、
前記センサ本体を軸線方向に3分割した磁石と、
前記センサ本体における軸線方向の前記磁石の間のギャップを充填するように配置された吸着部と、
を備え、
前記磁石と前記吸着部とが軸線方向に重ねられ、
前記吸着部が、前記磁石の外周面よりも径方向外側に突出し、
前記磁石が径方向に着磁されるとともに、軸線方向に隣接する前記磁石では互いに逆向きに着磁され、
前記磁石が電極とされて、前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記磁石を互いに軸線方向に短絡して、前記電極とされた磁石の間の電気抵抗を変化させることにより上記課題を解決した。
【0028】
本発明のセンサによれば、導体粒子を検出するギャップが吸着部の外周表面に沿って軸線方向に設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。 また、吸着部の外周表面に沿った軸線方向に検知方向を設定できるため、軸線方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
【0029】
本発明の第一態様に係るセンサは、第1の電極と、
前記第1の電極に対して軸線方向にギャップを有して離間する第2の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる捕捉部と、
を備え、
前記捕捉部が軸方向長さの異なる種類を有することにより上記課題を解決した。
【0030】
本発明のセンサによれば、軸線方向に離間して重ねられた前記第1の電極と前記吸着部と前記第2の電極とにより、導体粒子を検出するギャップが吸着部の外周表面に沿って軸線方向に設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。 さらに、軸方向長さの異なる種類を有する捕捉部によって導体粒子の吸着状態を調整する。これにより、導体粒子の吸着量が多かった場合でも、導体粒子の吸着に応じてセンサの検知感度を調整して、確実な検知をおこなうことが可能となる。特に、センサの設置される減速機等のサイズが大きく、初期導体粒子の発生量が多かった場合に、導体粒子の吸着を制限する、あるいは、吸着量が多い場合の検出状態を変化するように設定して、確実な検知をおこなうことが可能となる。
【0031】
本発明の第一態様に係るセンサは、第1の電極と、
前記第1の電極に対して軸線方向にギャップを有して離間する第2の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記第1の電極と前記吸着部と前記第2の電極とが軸線方向に積み重ねられ、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第2の電極とを軸線方向に短絡して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗を変化させることにより上記課題を解決した。
【0032】
本発明のセンサによれば、軸線方向に離間して重ねられた前記第1の電極と前記吸着部と前記第2の電極とにより、導体粒子を検出するギャップが吸着部の外周表面に沿って軸線方向に設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
【0033】
本発明のセンサは、前記第1の電極に対して軸線方向にギャップを有して離間するとともに、前記第2の電極に対して軸方向にギャップを有して離間する第3の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記第1の電極と前記吸着部と前記第3の電極とが軸線方向に積み重ねられ、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第3の電極とを軸線方向に短絡して、前記第1の電極と前記第3の電極との間の電気抵抗を変化させることができる。
【0034】
本発明のセンサは、前記第1の電極に対して軸線方向にギャップを有して離間するとともに、前記第2の電極と前記第3の電極とに対して周方向にギャップを有して離間する第4の電極と、
前記ギャップに配置されて外周表面が絶縁体からなる吸着部と、
を備え、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第4の電極とを周方向に短絡して、前記第1の電極と前記第4の電極との間の電気抵抗を変化させることができる。
【0035】
本発明のセンサは、前記第2の電極、前記第4の電極、前記第3の電極が周方向に離間して並ぶとともに、それぞれの前記電極間のギャップに前記吸着部が配置されることができる。
【0036】
本発明のセンサは、前記電極の外周表面が柱状体の側面に位置することができる。
【0037】
本発明のセンサは、軸線方向で少なくとも前記第2の電極よりも前記第1の電極に近接する側に磁石が配置され、
前記磁石が、軸線方向に向かう磁束を形成するように配置されることができる。
【0038】
本発明のセンサは、前記第1の電極が磁石とされることができる。
【0039】
本発明の第一態様に係るセンサは、円筒状のセンサ本体を有し、
前記センサ本体は、軸線方向に積み重ねられた第1の電極と吸着部と第2の電極と、 軸線方向に着磁された磁石と、
を備え、
前記吸着部の外周表面に導体粒子を吸着することにより、前記第1の電極と前記第2の電極と外周表面が軸線方向に短絡して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗を変化させることにより上記課題を解決した。
【0040】
本発明のセンサによれば、軸線方向に離間して重ねられた前記第1の電極と前記吸着部と前記第2の電極とにより、導体粒子を検出するギャップが吸着部の外周表面に沿って軸線方向に設けられる。これにより、センサ端面の径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
【0041】
本発明のセンサは、前記第2の電極が、前記センサ本体の周方向に分割されることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、柱状のセンサ本体において、外周面に沿った検知ギャップを最外周位置に設けることにより、検知感度を落とすことなく正確な検知を維持したままセンサを小型化することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るセンサを備える機械装置の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明に係るセンサの第1実施形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係るセンサの第1実施形態における磁束方向を示す断面図である。
【
図4】本発明に係るセンサの第1実施形態における電極配置を示す説明図である。
【
図5】本発明に係るセンサの第1実施形態における検知状態を示す断面図である。
【
図6】本発明に係るセンサの第1実施形態における磁石の他の例を示す説明図である。
【
図7】本発明に係るセンサの第1実施形態における他の例を示す斜視図である。
【
図8】本発明に係るセンサの第2実施形態を示す斜視図である。
【
図9】本発明に係るセンサの第2実施形態における磁束方向を示す断面図である。
【
図10】本発明に係るセンサの第2実施形態における他の例を示す軸線方向と直交する断面図である。
【
図11】本発明に係るセンサの第2実施形態における他の例を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図12】本発明に係るセンサの第3実施形態を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図13】本発明に係るセンサの第3実施形態における磁石を示す説明図である。
【
図14】本発明に係るセンサの第3実施形態における電極配置を示す説明図である。
【
図15】本発明に係るセンサの第3実施形態における検知状態を示す断面図である。
【
図16】本発明に係るセンサの第3実施形態における他の例を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図17】本発明に係るセンサの第4実施形態を示す斜視図である。
【
図18】本発明に係るセンサの第4実施形態における他の例を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図19】本発明に係るセンサの第5実施形態における他の例を示す分解斜視図である。
【
図20】本発明に係るセンサの第5実施形態における他の例を示す分解斜視図である。
【
図21】本発明に係るセンサの第5実施形態における他の例を示す軸線方向と直交する断面図である。
【
図22】本発明に係るセンサの第6施形態の電極配置を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図23】本発明に係るセンサの第7実施形態を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図24】本発明に係るセンサの第7実施形態における磁石を示す説明図である。
【
図25】本発明に係るセンサの第8実施形態を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図26】本発明に係るセンサの第8実施形態の電極配置を示す説明図である。
【
図27】本発明に係るセンサの第9実施形態における他の例を示す軸線方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係るセンサの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサを備える機構の一例を示す断面図である。図において、符号1は、機構である。
なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない。
【0045】
本実施形態に係る機構1は、例えばロボットアーム等の可動部等である。機構1は、
図1に示すように、減速機2と、入力側に設けられたフランジ3と、サーボモータ4と、出力側の装置A1と、を備えている。
【0046】
減速機2は、フランジ3に取り付けられたケース2aと、サーボモータ4の出力軸2bに接続された入力軸2cと、出力側の装置A1に接続された出力軸2dとを備えている。入力軸2cおよび出力軸2dは、ケース2aに対して軸AXを中心として回転可能に支持されている。サーボモータ4の出力は、入力軸2cを介して減速機2に入力され、減速機2によって減速された後、出力軸2dを介して出力側の装置A1に伝達される。これにより、出力側の装置A1とフランジ3とは相対回転可能となっている。
【0047】
フランジ3は筒状の部材であり、減速機2の少なくとも一部を収容する。また、フランジ3には、サーボモータ4が取り付けられる。軸AXに沿った方向におけるフランジ3の一端の開口部は減速機2によって塞がれ、他端の開口部はサーボモータ4によって塞がれている。これにより、フランジ3には、密閉された中空部(空間S)が形成されている。空間S内には潤滑油が収容されており、フランジ3はオイルバスとしても機能する。
【0048】
減速機2のケース2a内には、例えば歯車機構が収容されている。ケース2a内の空間は、フランジ3内の空間Sと連続している。減速機2が作動すると、ケース2a内の歯車機構の回転に伴い、ケース2a内の空間とフランジ3内の空間Sとの間で潤滑油の循環が生じる。この潤滑油の循環により、減速機2の内部で発生した摩耗粉(導体摩耗粉)等の導体粒子mp(
図5参照)がフランジ3内の空間Sに排出される。
【0049】
空間S内には、潤滑油内に含まれる導体粒子mpの量を検知するためのセンサ10が取り付けられている。センサ10は、例えば支持部材2eを介してフランジ3に固定される。センサ10は、磁石によって潤滑油内に含まれる導体粒子(鉄粉)mpを一対の電極間に集積させ、一対の電極間の電気抵抗の変化に基づいて潤滑油内の導体粒子mpの量を検知する。センサ10が配置される位置は、例えばケース2a内でもよく、潤滑油が収容された空間内であれば機構1内の任意の場所に配置することができる。
【0050】
次に、
図2~
図4に基づいて、本実施形態に係るセンサについて詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係るセンサを示す斜視図である。
図3は、本実施形態に係るセンサを示す端面図である。
図4は、本実施形態に係るセンサにおける電極配置を示す説明図である。図において、符号10はセンサを示している。
【0051】
センサ10は、
図2に示すように、軸線axdを有する略円柱状の外形(柱状体)を有している。センサ10は、第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14と、吸着部(捕捉部)15とを備えている。
【0052】
センサ10の端面10aは、軸線axdに直交する方向で略円形輪郭を有する。
第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とは、センサ10の端面10aから見て四分円の円弧を有する略扇形の断面形状を有する。第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とは、いずれも、略同一形状とされる。
【0053】
第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とは、配置方向が軸線axdまわりで対称となるように、軸線axdのまわりに回転された配置とされている。各電極11~14は、端面10aから見て周方向rtdで右回りに、第1の電極11、第2の電極12、第4の電極14、第3の電極13の順に配置されている。
【0054】
第1の電極11、第2の電極12、第4の電極14、第3の電極13は、軸線axdに沿った方向で、いずれも同じ位置に配置される。
第1の電極11、第2の電極12、第4の電極14、第3の電極13においては、それぞれの外周表面11a~14aが、同じ円筒面として面一になるように配置される。
【0055】
第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とは、いずれも軸線axdに沿った方向での長さ寸法が等しく設定される。
第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とは、端面10aに沿った方向で互いに離間している。各電極11~14の間にギャップG1~G4が形成される。
【0056】
第1の電極11と第2の電極12との周方向rtdにおける離間距離がギャップG1とされる。第1の電極11と第3の電極13との周方向rtdにおける離間距離がギャップG2とされる。第2の電極12と第4の電極14との周方向rtdにおける離間距離がギャップG3とされる。第3の電極13と第4の電極14との周方向rtdにおける離間距離がギャップG4とされる。
【0057】
第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とは、いずれも磁石とされる。磁石は、例えば、永久磁石によって構成される。
第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とは、いずれも磁化方向がセンサ10の径方向とされる。
【0058】
軸線axdに対称な位置にある第1の電極11と第3の電極13とは、いずれも、同じ極性が外周表面11a,13aとなるように着磁される。軸線axdに対称な位置にある第2の電極12と第4の電極14とは、いずれも、同じ極性が外周表面12a,14aとなるように着磁される。なお、隣接するそれぞれの電極11~14は、異なる極性を有するように着磁される。
【0059】
例えば、
図3に示すように、第1の電極11と第3の電極13とは、N極が外周表面11a,13aとなるように着磁される。第2の電極12と第4の電極14とは、S極が外周表面12a,14aとなるように着磁される。なお、着磁の方向は、各電極11~14が全て逆極性とすることもできる。
【0060】
このような配置とすることで、磁石とされた各電極11~14は、それぞれの磁力によって互いに吸着されており、接着剤等の接着手段を用いることなく十字形状の吸着部(捕捉部)15に固定することが可能である。
【0061】
各電極11~14の間には、吸着部(捕捉部)15が配置される。吸着部(捕捉部)15は、樹脂等の絶縁性を有する非磁性材料によって構成されている。吸着部(捕捉部)15は、軸線axdに沿って端面10aから見て、十文字形状(十字架形状)となる断面形状を有する。
【0062】
吸着部(捕捉部)15は、第1の電極11と第2の電極12との間のギャップG1を埋めるように設けられるとともに、外周表面11a,12aよりも径方向外側に突出する吸着凸部15G1を有する。
吸着部(捕捉部)15は、第1の電極11と第3の電極13との間のギャップG2を埋めるように設けられるとともに、外周表面11a,13aよりも径方向外側に突出する吸着凸部15G2を有する。
【0063】
吸着部(捕捉部)15は、第2の電極12と第4の電極14との間のギャップG3を埋めるように設けられるとともに、外周表面12a,14aよりも径方向外側に突出する吸着凸部15G3を有する。
吸着部(捕捉部)15は、第3の電極13と第4の電極14との間のギャップG4を埋めるように設けられるとともに、外周表面13a,14aよりも径方向外側に突出する吸着凸部15G4を有する。
【0064】
吸着凸部15G1~15G4は、径方向における突出高さがいずれも、同じ寸法となるように形成される。なお、吸着凸部15G1~15G4は、径方向における突出高さが、互いに異なる寸法など、任意の寸法となるように形成されてもよい。吸着凸部15G1~15G4における径方向における突出高さによって、後述する検出感度を調節することができる。
【0065】
各電極11~14の間のギャップG1~G4の周方向rtdにおける寸法は、潤滑油内に含まれる導体物質の寸法よりも大きくなっている。一例として、導体物質の寸法は1.0μm~100μm程度であり、ギャップG1~G4の間隔は初期摩耗鉄粉で短絡しない程度の距離にすることが好ましい。ギャップG1~G4の周方向rtdにおける寸法は、いずれも同じ値とされる。
【0066】
磁石である各電極11~14の間には、
図3に示すように、吸着凸部15G1~15G4の径方向外側を通って結ぶように磁束線が形成される。
第1の電極11と第2の電極12との間には、N極である第1の電極11の外周表面11aから、吸着凸部15G1の径方向外側を通り、S極である第2の電極12の外周表面12aに向かう磁束線が形成される。
第1の電極11と第3の電極13との間には、N極である第1の電極11の外周表面11aから、吸着凸部15G2の径方向外側を通り、S極である第3の電極13の外周表面13aに向かう磁束線が形成される。
【0067】
第4の電極14と第2の電極12との間には、N極である第4の電極14の外周表面14aから、吸着凸部15G3の径方向外側を通り、S極である第2の電極12の外周表面12aに向かう磁束線が形成される。
第4の電極14と第3の電極13との間には、N極である第4の電極14の外周表面14aから、吸着凸部15G4の径方向外側を通り、S極である第3の電極13の外周表面13aに向かう磁束線が形成される。
【0068】
なお、各電極11~14には、端面10aとは逆側に、磁石ではない導体部分を設けることもできる。この場合、各電極11~14においては、それぞれ、磁石と導体部分とが互いに接触して導電性を有している。なお、
図2において、第2の電極12に対応する導体部分12bを示している。
【0069】
第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とには、それぞれ出力ラインが接続されている。第1の電極11と、第2の電極12と、第3の電極13と、第4の電極14とは、当該出力ラインを介して、それぞれ検知部5(
図1参照)と電気的に接続されている。
複数の電極11~14は、互いに絶縁されており、
図4に示すように、第1の電極11およびそれ以外の電極12~14のいずれか一箇所から成る一対の電極と、当該一対の電極の間に配置された吸着部(捕捉部)15とによって1つの検知ユニットが構成されている。
図4において、第1の電極11の出力ラインには「+」を、また、それ以外の電極12~14の出力ラインには「―」を記載することで、検知ユニットの対を示している。
【0070】
図5は、本実施形態に係るセンサにおける検知状態を示す断面図である。
本実施形態では、センサ10は第2の電極12,第3の電極13,第4の電極14に対応して、3つの検知ユニットが構成されている。電極12~14の数、および検知ユニットの数は特に限定されない。
センサ10の電極11~14である磁石は、対となる電極11~14の間に磁束線を形成するので、
図5に示すように、潤滑油内に含まれる導体粒子(摩耗粉)mpは吸着部(捕捉部)15に吸着される。この際、電極11~14が吸着部(捕捉部)15の直近となる位置から径方向に磁束を形成しているので、導体粒子mpの吸着効率が高くなる。
このように、吸着部(捕捉部)15の付近に導体粒子mpが集積されると、検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。導体粒子(摩耗粉)mpが吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一であってもよい。
【0071】
本実施形態では、第2の電極12と第3の電極13とに対応する複数の検知ユニットは互いに並列に接続されている。第1の電極11と第2の電極12との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。また、第1の電極11と第3の電極13との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。
吸着凸部15G1の付近に導体粒子mpが集積されると、第2の電極12に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
吸着凸部15G2の付近に導体粒子mpが集積されると、第3の電極13に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
【0072】
検知部5は、第1の電極11と第2の電極12との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着凸部15G1の周辺への導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部15G1の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極11と第2の電極12との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0073】
同様に、検知部5は、第1の電極11と第3の電極13との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着凸部15G2の周辺への導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部15G3の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極11と第3の電極13との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0074】
さらに、第1の電極11と第4の電極14との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。
吸着凸部15G1と吸着凸部15G3との付近にいずれも導体粒子mpが集積されると、第4の電極14に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
または、吸着凸部15G2と吸着凸部15G4との付近にいずれも導体物質が集積されると、第4の電極14に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
【0075】
検知部5は、第1の電極11と第4の電極14との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着凸部15G1の周辺と吸着凸部15G3の周辺とへの導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部15G1の周辺と吸着凸部15G3の周辺との両方にいずれも集積されると、電圧が印加された第1の電極11と第4の電極14との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。 この検知は、吸着凸部15G1の周辺と吸着凸部15G3の周辺との両方に、導体粒子mpが集積された状態で、始めて可能となる。
【0076】
同様に、検知部5は、例えば、吸着凸部15G2の周辺と吸着凸部15G4の周辺とへの導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部15G2の周辺と吸着凸部15G4の周辺との両方に集積されると、電圧が印加された第1の電極11と第4の電極14との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
この検知は、吸着凸部15G2の周辺と吸着凸部15G4の周辺との両方に、導体粒子mpが集積された状態で、始めて可能となる。
【0077】
このように、第2の電極12に対応する検知ユニット、および、第3の電極13に対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、1箇所の吸着凸部15G1または吸着凸部15G2での電気抵抗変化を検出する。これに対して、第4の電極14に対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、2箇所の吸着凸部15G1,15G3、または、吸着凸部15G2,15G4での電気抵抗変化を検出することになる。このため、複数の検知ユニットにおいて、異なる状態を検知することが可能となる。つまり、2段階に電気抵抗変化を検出することになる。
しかも、いずれも、二段階、二系統の検知ユニットを設けたことになる。したがって、故障予知の確実性を向上することができる。
【0078】
検知部5は、設定された検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する。例えば、検知部5は、2つ以上の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合にマニピュレータ等の上位制御装置に信号を出力するように設定されてもよいし、全ての検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力するように設定されてもよい。
【0079】
なお、電気抵抗の低下には、非通電と通電によるオン、オフ信号も含まれ、非通電と通電との2つの状態を検知(以下、「デジタル検知」という)してもよい。検知部5は、有線または無線により、マニピュレータ等の上位制御装置(不図示)に接続されていてもよい。上位制御装置は、検知部5からの信号を受信すると、所定の報知手段(例えば、表示装置や音声出力装置等)により、減速機2等のメンテナンスを促す警告を発するように構成することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態のセンサ10は複数の検知ユニットを備えており、検知部5は、設定された任意の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力する。これにより、初期摩耗粉によって1つの検知ユニットにおいて電気抵抗が変化しても、他の検知ユニットで電気抵抗が変化しない場合には信号を出力しないように検知部5を設定することも可能である。したがって、予期しないセンサの作動を抑制することが可能である。また、センサ10によれば、検知部5が信号を出力する条件を設定することができるので、1つのセンサ10において信号が出力されるタイミングを、ユーザごとに要望が異なる最適な故障予知のタイミングに合わせることができる。
【0081】
また、導体粒子mpが吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一とできる。これにより、センサ10に印加する電圧を低くすることができる。また、複数の検知ユニットは、互いに並列に接続されている。これにより、それぞれの検知ユニットの一対の電極間に印加する電圧を低くすることができる。
また、他の全ての電極12~14に対して検知ユニットを形成する第1の電極11を、導体粒子mpの量が多い箇所に対応するようにセンサ10の配置を設定することが好ましい。
【0082】
本実施形態のセンサ10によれば、導体粒子mpを検出するギャップG1~G4が外周表面11a~14aに沿って周方向rtdに設けられる。これにより、センサ10の端面10aにおける径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサ10を小型化することができる。
また、外周表面11a~14aに沿った周方向rtdに検知ユニットにおける検知方向を設定できるため、軸線axd方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
また磁石である電極11~14が吸着部(捕捉部)15の直近となる位置から径方向に磁束を形成しているので、導体粒子mpの吸着効率が高く、小型化しても吸着効率を低下させることがない。
さらに、本実施形態のセンサ10によれば、部品点数を抑えて、組み立てを容易にし、製造コストを抑制することができる。
【0083】
図6は、本実施形態のセンサにおける磁石の他の例を示す説明図である。
なお、本実施形態のセンサ10では、各電極11~14となる磁石を、断面が扇形となるように構成したが、
図6に示すように、周方向に4分割された円環状の断面を有する構成とすることもできる。
この場合でも、各電極11~14は、いずれも磁化方向がセンサ10の径方向とされる。第1の電極11と第3の電極13とは、いずれも、同じ極性が外周表面11a,13aとなるように着磁される。第2の電極12と第4の電極14とは、いずれも、同じ極性が外周表面12a,14aとなるように着磁される。なお、隣接するそれぞれの電極11~14は、異なる極性を有するように着磁される。
【0084】
このような配置とすることで、磁石とされた各電極11~14は、それぞれの磁力によって互いに吸着されており、接着剤等の接着手段を用いることなく十字形状の吸着部(捕捉部)15に固定することが可能である。
【0085】
図7は、本実施形態のセンサにおける他の例を示す斜視図である。
本実施形態のセンサ10では、
図7に示すように、各電極11~14からの出力ラインとして、フレキシブル基板11f~14fを用いることができる。
【0086】
第1の電極11に接続される出力ラインは、フレキシブル基板11fとされて、第1の電極11と吸着部(捕捉部)15との間に挟まれている。フレキシブル基板11fが第1の電極11に接触する部分は、被覆を剥がすなど導電性を有しており、第1の電極11と、導通が維持される。また、磁石とされた各電極11~14は、それぞれの磁力によって互いに吸着されているため、フレキシブル基板11fは、第1の電極11と吸着部(捕捉部)15との間に挟まれた状態で固定される。
【0087】
したがって、接着剤等を用いることなく、導通状態を維持したままで、フレキシブル基板11fを第1の電極11に固定接続することができる。
同様に、本実施形態のセンサ10では、フレキシブル基板12fを第2の電極12に固定接続し、フレキシブル基板13fを第3の電極13に固定接続し、フレキシブル基板14fを第4の電極14に固定接続する。
【0088】
なお、図において、フレキシブル基板11fが、第1の電極11と吸着凸部15G2との間に挟まれているが、第1の電極11と吸着凸部15G1との間に挟むこともできる。
【0089】
以下、本発明に係るセンサの第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態におけるセンサを示す斜視図である。
図8は、本実施形態に係るセンサを示す端面図である。図において、符号20はセンサを示している。
本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、センサおよび磁石の外形に関する点である。なお、
図1に示した機構1に関する構成はその説明を省略する。
【0090】
センサ20は、
図7に示すように、軸線axdを有する略角柱状の外形(柱状体)を有している。センサ20は、第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24と、吸着部(捕捉部)25とを備えている。
【0091】
センサ20の端面20aは、軸線axdに直交する方向で略矩形輪郭を有する。
第1の電極21と第2の電極22と第3の電極23と第4の電極24とは、角柱体の側面を形成する。
第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とは、センサ20の端面20aから見て略矩形の断面形状を有する。これらの電極21~24は、矩形の平板状とされる。第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とは、いずれも、略同一形状とされる。
【0092】
第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とは、配置方向が軸線axdまわりで対称となるように、軸線axdのまわりに回転された配置とされている。各電極21~24は、端面20aから見て周方向rtdで右回りに、第1の電極21、第2の電極22、第4の電極24、第3の電極23の順に配置されている。
【0093】
第1の電極21、第2の電極22、第4の電極24、第3の電極23は、軸線axdに沿った方向で、いずれも同じ位置に配置される。
第1の電極21、第2の電極22、第4の電極24、第3の電極23においては、それぞれの外周表面21a~24aが、軸線axdから同じ距離にある正方向の各辺である断面形状になるように配置される。
【0094】
第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とは、いずれも軸線axdに沿った方向での長さ寸法が等しく設定される。
第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とは、端面20aに沿った方向で互いに離間している。各電極21~24の間にギャップG1~G4が形成される。
【0095】
第1の電極21と第2の電極22との周方向rtdにおける離間距離がギャップG1とされる。第1の電極21と第3の電極23との周方向rtdにおける離間距離がギャップG2とされる。第2の電極22と第4の電極24との周方向rtdにおける離間距離がギャップG3とされる。第3の電極23と第4の電極24との周方向rtdにおける離間距離がギャップG4とされる。
【0096】
第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とは、いずれも磁石とされる。磁石は、例えば、永久磁石によって構成される。
第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とは、いずれも磁化方向がセンサ20の径方向とされる。つまり、各電極21~24は、平板状の主面となる表裏面に両極性を有するように磁化された薄い板状磁石である。
【0097】
軸線axdに対称に対向する位置にある第1の電極21と第3の電極23とは、いずれも、同じ極性が外周表面21a,13aとなるように着磁される。軸線axdに対称に対向する位置にある第2の電極22と第4の電極24とは、いずれも、同じ極性が外周表面22a,24aとなるように着磁される。なお、隣接するそれぞれの電極21~24は、異なる極性を有するように着磁される。
【0098】
例えば、
図9に示すように、第1の電極21と第3の電極23とは、N極が外周表面21a,23aとなるように着磁される。第2の電極22と第4の電極24とは、S極が外周表面22a,24aとなるように着磁される。なお、着磁の方向は、各電極21~24が全て逆極性とすることもできる。
【0099】
このような配置とすることで、磁石とされた各電極21~24は、N極とS極となる面が互いに対向した平行状態に配置されているため、それぞれの磁力によって互いに吸着されている。これにより、磁石とされた各電極21~24は、接着剤等の接着手段を用いることなく十字形状の吸着部(捕捉部)25の中央部25cに対して固定することが可能である。
【0100】
各電極21~24の間には、吸着部(捕捉部)25が配置される。吸着部(捕捉部)25は、樹脂等の絶縁性を有する非磁性材料によって構成されている。吸着部(捕捉部)25は、軸線axdに沿って端面20aから見て、十文字形状(十字架形状)となる断面形状を有し、その中央部25cが径方向端部より拡径されている。なお、中央部25cは角柱状に形成される。各電極21~24の間には、中央部25cが充填されるように形成される。
【0101】
吸着部(捕捉部)25は、第1の電極21と第2の電極22との間のギャップG1を埋めるように設けられるとともに、外周表面21a,23aよりも径方向外側に突出する吸着凸部25G1を有する。
吸着部(捕捉部)25は、第1の電極21と第3の電極23との間のギャップG2を埋めるように設けられるとともに、外周表面21a,22aよりも径方向外側に突出する吸着凸部25G2を有する。
【0102】
吸着部(捕捉部)25は、第2の電極22と第4の電極24との間のギャップG3を埋めるように設けられるとともに、外周表面22a,24aよりも径方向外側に突出する吸着凸部25G3を有する。
吸着部(捕捉部)25は、第3の電極23と第4の電極24との間のギャップG4を埋めるように設けられるとともに、外周表面23a,24aよりも径方向外側に突出する吸着凸部25G4を有する。
【0103】
吸着凸部25G1~25G4は、軸線axd方向に断面視して、各電極21~24で形成される矩形(正方形)に対して、その対角線をそれぞれ径方向外側に延ばした形状として形成される。
吸着凸部25G1~25G4は、径方向における突出高さがいずれも、同じ寸法となるように形成される。なお、吸着凸部25G1~25G4は、径方向における突出高さが、互いに異なる寸法など、任意の寸法となるように形成されてもよい。吸着凸部25G1~25G4における径方向における突出高さによって、後述する検出感度を調節することができる。
【0104】
各電極21~24の間のギャップG1~G4の周方向rtdにおける寸法は、潤滑油内に含まれる導体物質の寸法よりも大きくなっている。一例として、導体物質の寸法は1.0μm~100μm程度であり、ギャップG1~G4の間隔は初期摩耗鉄粉で短絡しない程度の距離にすることが好ましい。ギャップG1~G4の周方向rtdにおける寸法は、いずれも同じ値とされる。
【0105】
磁石である各電極21~24の間には、
図9に示すように、吸着凸部25G1~25G4の径方向外側を通って結ぶように磁束線が形成される。
第1の電極21と第2の電極22との間には、N極である第1の電極21の外周表面21aから、吸着凸部25G1の径方向外側を通り、S極である第2の電極22の外周表面22aに向かう磁束線が形成される。
第1の電極21と第3の電極23との間には、N極である第1の電極21の外周表面21aから、吸着凸部25G2の径方向外側を通り、S極である第3の電極23の外周表面23aに向かう磁束線が形成される。
【0106】
第4の電極24と第2の電極22との間には、N極である第4の電極24の外周表面24aから、吸着凸部25G3の径方向外側を通り、S極である第2の電極22の外周表面22aに向かう磁束線が形成される。
第4の電極24と第3の電極23との間には、N極である第4の電極24の外周表面24aから、吸着凸部25G4の径方向外側を通り、S極である第3の電極23の外周表面23aに向かう磁束線が形成される。
【0107】
なお、各電極21~24と吸着凸部25G1~25G4との間は、互いに接触していなくてもよい。
図9に示すように、各電極21~24と吸着凸部25G1~25G4との間は、中央部25cから径方向外側に向かって、その離間距離が増大するようにしてもよい。
また、各電極21~24には、端面20aとは逆側に、磁石ではない導体部分を設けることもできる。この場合、各電極21~24においては、それぞれ、磁石と導体部分とが互いに接触して導電性を有している。
【0108】
第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とには、それぞれ出力ラインが接続されている。第1の電極21と、第2の電極22と、第3の電極23と、第4の電極24とは、当該出力ラインを介して、それぞれ検知部5(第1実施形態で示した
図1参照)と電気的に接続されている。
複数の電極21~24は、互いに絶縁されており、第1の電極21およびそれ以外の電極22~24のいずれか一箇所から成る一対の電極と、当該一対の電極の間に配置された吸着部(捕捉部)25とによって1つの検知ユニットが構成されている。
【0109】
本実施形態では、センサ20は第2の電極22,第3の電極23,第4の電極24に対応して、3つの検知ユニットが構成されている。電極22~24の数、および検知ユニットの数は特に限定されない。センサ20の電極21~24である磁石は、対となる電極21~24の間に磁束線を形成するので、潤滑油内に含まれる摩耗粉mp(第1実施形態で示した
図5参照)は吸着部(捕捉部)25に吸着される。このように、吸着部(捕捉部)25の付近に導体粒子mpが集積されると、検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。導体粒子(摩耗粉)mpが吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一であってもよい。
【0110】
複数の電極22~24のそれぞれに接続された出力ラインに対応して、複数の検知ユニットのそれぞれが検知部5と電気的に接続される。
本実施形態では、第2の電極22と第3の電極23とに対応する複数の検知ユニットは互いに並列に接続されている。第1の電極21と第2の電極22との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。また、第1の電極21と第3の電極23との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。
吸着凸部25G1の付近に導体粒子mpが集積されると、第2の電極22に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
吸着凸部25G2の付近に導体粒子mpが集積されると、第3の電極23に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
【0111】
検知部5は、第1の電極21と第2の電極22との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着凸部25G1の周辺への導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部25G1の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極21と第2の電極22との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0112】
同様に、検知部5は、第1の電極21と第3の電極23との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着凸部25G2の周辺への導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部25G3の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極21と第3の電極23との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0113】
さらに、第1の電極21と第4の電極24との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。
吸着凸部25G1と吸着凸部25G4との付近にいずれも導体粒子mpが集積されると、第4の電極24に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
または、吸着凸部25G2と吸着凸部25G4との付近にいずれも導体物質が集積されると、第4の電極24に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
【0114】
検知部5は、第1の電極21と第4の電極24との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着凸部25G1の周辺と吸着凸部25G3の周辺とへの導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部25G1の周辺と吸着凸部25G3の周辺とにいずれも集積されると、電圧が印加された第1の電極21と第4の電極24との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
この検知は、吸着凸部25G1の周辺と吸着凸部25G3の周辺との両方に、導体粒子mpが集積された状態で、始めて可能となる。
【0115】
同様に、検知部5は、例えば、吸着凸部25G2の周辺と吸着凸部25G4の周辺とへの導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部25G2の周辺と吸着凸部25G4の周辺とにいずれも集積されると、電圧が印加された第1の電極21と第4の電極24との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
この検知は、吸着凸部25G2の周辺と吸着凸部25G4の周辺との両方に、導体粒子mpが集積された状態で、始めて可能となる。
【0116】
このように、第2の電極22に対応する検知ユニット、および、第3の電極23に対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、1箇所の吸着凸部25G1または吸着凸部25G2での電気抵抗変化をそれぞれ検出する。これに対して、第4の電極24に対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、2箇所の吸着凸部25G1,25G4、または、吸着凸部25G2,25G4での電気抵抗変化のいずれかを検出することになる。このため、複数の検知ユニットにおいて、異なる状態を検知することが可能となる。つまり、2段階に電気抵抗変化を検出することになる。
しかも、いずれも、二段階、二系統の検知ユニットを設けたことになる。したがって、障予知の確実性を向上することができる。
【0117】
検知部5は、設定された検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する。例えば、検知部5は、第2の電極22に対応する検知ユニット、および、第3の電極23に対応する検知ユニットの2つの検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合にマニピュレータ等の上位制御装置に信号を出力するように設定されてもよいし、第4の電極24に対応する検知ユニットを含む全ての検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力するように設定されてもよい。
【0118】
なお、電気抵抗の低下には、非通電と通電によるオン、オフ信号も含まれ、非通電と通電との2つの状態を検知(以下、「デジタル検知」という)してもよい。検知部5は、有線または無線により、マニピュレータ等の上位制御装置(不図示)に接続されていてもよい。上位制御装置は、検知部5からの信号を受信すると、所定の報知手段(例えば、表示装置や音声出力装置等)により、減速機2等のメンテナンスを促す警告を発するように構成することができる。
【0119】
以上説明したように、本実施形態のセンサ20は複数の検知ユニットを備えており、検知部5は、設定された任意の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力する。これにより、初期摩耗粉によって1つの検知ユニットにおいて電気抵抗が変化しても、他の検知ユニットで電気抵抗が変化しない場合には信号を出力しないように検知部5を設定することも可能である。したがって、予期しないセンサの作動を抑制することが可能である。また、センサ20によれば、検知部5が信号を出力する条件を設定することができるので、1つのセンサ20において信号が出力されるタイミングを、ユーザごとに要望が異なる最適な故障予知のタイミングに合わせることができる。
【0120】
また、導体粒子mpが吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一とできる。これにより、センサ20に印加する電圧を低くすることができる。また、複数の検知ユニットは、互いに並列に接続されている。これにより、それぞれの検知ユニットの一対の電極間に印加する電圧を低くすることができる。
また、他の全ての電極22~24に対して検知ユニットを形成する第1の電極21を、導体粒子mpの量が多い箇所に対応するようにセンサ20の配置を設定することが好ましい。
【0121】
本実施形態のセンサ20によれば、導体粒子mpを検出するギャップG1~G4が外周表面21a~24aに沿って周方向rtdに設けられる。これにより、センサ20の端面20aにおける径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサ20を小型化することができる。
また、外周表面21a~24aに沿った周方向rtdに検知ユニットにおける検知方向を設定できるため、軸線axd方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
また磁石である電極21~24が吸着部(捕捉部)25の直近となる位置から径方向に磁束を形成しているので、導体粒子mpの吸着効率が高く、小型化しても吸着効率を低下させることがない。このため、さらなる小型化が可能である。
さらに、本実施形態のセンサ20によれば、部品点数を抑えて、組み立てを容易にし、また、安価な板状磁石を用いて、製造コストを抑制することができる。
【0122】
図10は、本実施形態のセンサの他の例を示す軸線方向と直交する断面図である。
なお、本実施形態のセンサ20では、各電極21~24となる磁石が、吸着凸部25G1~25G4と離間した部分があるように構成したが、
図10に示すように、吸着凸部25G1~25G4と中央部25cとの基部に各電極21~24となる磁石を嵌め込む溝部25mを有する構成とすることもできる。
この場合、溝部25mは、各電極21~24における外周表面21a~24aを覆わないようにすることが好ましい。
【0123】
ここで、溝部25mを設けても、吸着凸部25G1~25G4の周方向rtdにおける延べ長さ、つまり、例えば、吸着凸部25G1において、隣接する外周表面21aから外周表面22aまでの表面距離が、溝部25mのない場合に導体粒子mpが堆積する量を同じにすることが好ましい。これにより、それぞれの検知ユニットにおける検出感度を溝部25mの有無に依存せずに設定することが可能となる。
同時に、溝部25mを設けても、各ギャップG1~G4の周方向rtdの寸法は変化しないようにすることが好ましい。
【0124】
また、この例では、溝部25mに対して、端面20a側から各電極21~24を軸線axd方向に沿って挿入することで、センサ20を容易に組み立てることができる。これにより、各電極21~24の磁力のみによって吸着部(捕捉部)25に各電極21~24を固定している場合よりも、各電極21~24を強固に固定することができる。
【0125】
図11は、本実施形態のセンサの他の例を示す軸線方向に沿った断面図である。
なお、本実施形態のセンサ20では、端面20aにおいて、各電極21~24および吸着部(捕捉部)25が面一となるように構成したが、
図11に示すように、端面20dを中央部が軸線axd方向の外側向きに突出した傾斜面として形成し、さらに、磁石とされる電極26a~26dを有する構成とすることもできる。
この場合でも、電極26a~26dおよび電極21~24は、隣接する磁石と異なる極性を有するように配置される。
【0126】
これにより、軸線axdと直交する平面であった端面20aにおいて、各電極21~24の磁石から漏れる弱い磁束に対して、電極26a~26dによる強い磁束を用いて、さらなる検知ユニットを形成することもできる。したがって、センサ20における検知の確実性や、検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
【0127】
なお、本実施形態のセンサ20においても、各電極21~24からの出力ラインとして、第1実施形態の
図7に示したように、フレキシブル基板11f~14fを用いることも可能である。
この場合、磁石とされた各電極21~24が、N極とS極となる面が互いに対向した平行状態に配置されているため、フレキシブル基板11f~14fを吸着部25に押圧する押圧力が第1実施形態に比べて大きくなり、より強固に固定することができ、良好な接触を維持することができる。
【0128】
以下、本発明に係るセンサの第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図12は、本実施形態におけるセンサを示す軸線方向に沿った断面図である。
図13は、本実施形態に係るセンサの磁石を示す説明図である。図において、符号30はセンサを示している。
本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、センサの構成に関する点である。なお、
図1に示した機構1に関する構成はその説明を省略する。
【0129】
センサ30は、
図12に示すように、軸線axdを有する略円柱状の外形を有している。センサ30は、第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33と、吸着部(捕捉部)35とを備えている。
【0130】
センサ30の先端30aは略半球状に形成される。
第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、軸線axd方向に見て、軸線axdを中心とする円形の輪郭形状を有する板体とされる。第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、いずれも略同一輪郭形状で略同一厚さとされる。 第2の電極32と、第1の電極31と、第3の電極33とは、軸線axd方向に積層されており、先端30aから基端に向けて軸線axd方向に沿って、第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33の順に並んで配置されている。
【0131】
第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33は、軸線axdに沿った方向で、同軸状にいずれも平行に配置される。
第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33においては、それぞれの外周表面31a~33aが、同じ円筒面として面一になるように配置される。
第2の電極32と、第1の電極31と、第3の電極33とは、いずれも軸線axdと直交する方向における径寸法が等しく設定される。
【0132】
第2の電極32と、第1の電極31と、第3の電極33とは、軸線axdに沿った方向で互いに離間している。各電極31~33の間にギャップG1,G2が形成される。
第1の電極31と第2の電極32との軸線axdに沿った方向における離間距離がギャップG1とされる。第1の電極31と第3の電極33との軸線axdに沿った方向における離間距離がギャップG2とされる。
【0133】
第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、いずれも磁石とされる。磁石は、例えば、永久磁石によって構成される。
第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、いずれも磁化方向がセンサ30の径方向とされる。
第1の電極31は、径方向外側の外周表面31aのうち、その半周ごとにそれぞれ極性が異なるように着磁される。また、第2の電極32と、第3の電極33とは、いずれも外周表面32a,33aのうち、その半周ごとにそれぞれ極性が異なるように着磁される。
【0134】
第1の電極31は、第2の電極32および第3の電極33に対して、外周表面31aにおける極性が、外周表面32a,33aにおける極性とは、逆になっている。つまり、軸線axdに沿って隣接する電極31,32,33では、異なる極性を有するように着磁される。
つまり、第1の電極31は、第2の電極32および第3の電極33に対して、同じ状態に極性を着磁した磁石を、軸線axdまわりに半周分回転して配置したものである。
【0135】
例えば、
図12に示すように、第1の電極31は、N極が外周表面31aの下半分となるように着磁される。第2の電極32と第3の電極33とは、S極が外周表面32a,33aの上半分となるように着磁される。なお、着磁の方向は、各電極31~33が全て逆極性とすることもできる。
【0136】
このような配置とすることで、磁石とされた各電極31~33は、それぞれの磁力によって互いに軸線axd方向に引き付け合っている。したがって、各電極31~33を、接着剤等の接着手段を用いることなく軸線axd方向に重ね合わせて吸着部(捕捉部)35に対して固定することが可能である。
【0137】
各電極31~33の間には、吸着部(捕捉部)35が配置される。吸着部(捕捉部)35は、樹脂等の絶縁性を有する非磁性材料によって構成されている。吸着部(捕捉部)35は、軸線axdに沿って先端30aから見て、円形輪郭を有する板体とされる。
【0138】
吸着部(捕捉部)35は、第1の電極31と第2の電極32との間のギャップG1を埋めるように設けられるとともに、外周表面31a,32aよりも径方向外側に突出する吸着凸部35G1を有する。
吸着部(捕捉部)35は、第1の電極31と第3の電極33との間のギャップG2を埋めるように設けられるとともに、外周表面31a,32aよりも径方向外側に突出する吸着凸部35G2を有する。
【0139】
吸着凸部35G1,35G2は、径方向において外周表面31a~33aに対する突出寸法がいずれも、同じ寸法となるように形成される。なお、吸着凸部35G1,35G2は、径方向における突出高さが、互いに異なる寸法など、任意の寸法となるように形成されてもよい。吸着凸部35G1,35G2における径方向における突出高さによって、後述する検出感度を調節することができる。
【0140】
各電極31~33の間のギャップG1,G2の軸線axd方向の厚さ寸法は、潤滑油内に含まれる導体物質の寸法よりも大きくなっている。一例として、導体物質の寸法は1.0μm~100μm程度であり、ギャップG1,G2の間隔は初期摩耗鉄粉で短絡しない程度の距離にすることが好ましい。ギャップG1,G2の軸線axdに沿った方向における寸法は、それぞれ同じ値とされる。
【0141】
磁石である各電極31~33の間には、
図12に示すように、吸着凸部35G1,35G2の径方向外側を通って軸線axdに沿った方向で結ぶように磁束線が形成される。 第1の電極31と第2の電極32との間には、
図12の紙面下側に示すように、N極である第1の電極31の外周表面31aから、吸着凸部35G1の径方向外側を通り、S極である第2の電極32の外周表面32aに向かう磁束線が形成される。同時に、第1の電極31と第2の電極32との間には、
図12の紙面上側に示すように、N極である第2の電極32の外周表面32aから、吸着凸部35G1の径方向外側を通り、S極である第1の電極31の外周表面31aに向かう磁束線が形成される。
【0142】
第1の電極31と第3の電極33との間には、
図12の紙面下側に示すように、N極である第1の電極31の外周表面31aから、吸着凸部35G2の径方向外側を通り、S極である第3の電極33の外周表面33aに向かう磁束線が形成される。同時に、第1の電極31と第3の電極33との間には、
図12の紙面上側に示すように、N極である第3の電極33の外周表面33aから、吸着凸部35G2の径方向外側を通り、S極である第1の電極31の外周表面31aに向かう磁束線が形成される。
【0143】
軸線axdに沿った方向における第2の電極32の外側位置、つまり、先端30aには、吸着部(捕捉部)35と同じ材質で形成された先端部分35aが形成される。先端部分35aは、軸線axd方向視して、吸着凸部35G1,35G2と同じ輪郭形状を有する。また、先端部分35aは、その表面形状が球状として形成される。
軸線axdに沿った方向における第3の電極33の外側位置、つまり、センサ30の基部側には、吸着部(捕捉部)35と同じ材質で形成された基端部分35bが形成される。基端部分35bは、軸線axd方向視して、吸着凸部35G1,35G2と同じ輪郭形状を有する。また、基端部分35bは、吸着凸部35G1,35G2と同じ軸線axdに沿った方向厚さ寸法を有する。
【0144】
軸線axdに沿って積み重ねされた、基端部分35b、第3の電極33、吸着凸部35G2、第1の電極31、吸着凸部35G1、第2の電極32には、それぞれ締結部材38(図示の実施形態ではネジ)を挿通する中心孔が、軸線axdと一致する中心軸線を有するように設けられている。この軸線axdに沿った中心孔に締結部材38が挿通されることにより、電極31~33および吸着凸部35G1,35G2と、先端部分35a、基端部分35bとが互いに固定される。
ネジ38の径方向周囲には、筒37が設けられる。筒37は、各電極31~33と、ネジ38とが、互いに絶縁状態を維持するとともに、電極31~33および吸着凸部35G1,35G2と、先端部分35a、基端部分35bとにおいて、径方向における互いの固定位置を設定する機能を有する。
【0145】
第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とには、それぞれ出力ラインが接続されている。第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、当該出力ラインを介して、それぞれ検知部5(
図1参照)と電気的に接続されている。
複数の電極31~33は、互いに絶縁されており、第1の電極31およびそれ以外の電極32~33のいずれか一箇所から成る一対の電極と、当該一対の電極の間に配置された吸着部(捕捉部)35とによって1つの検知ユニットが構成されている。
図14において、第1の電極31の出力ラインには「+」を、また、それ以外の電極32,33の出力ラインには「―」を記載することで、検知ユニットの対を示している。
【0146】
図15は、本実施形態に係るセンサにおける検知状態を示す断面図である。
本実施形態では、センサ30は第2の電極32,第3の電極33に対応して、2つの検知ユニットが構成されている。電極32~33の数、および検知ユニットの数は特に限定されない。センサ30の電極31~33である磁石は、対となる電極31~33の間に磁束線を形成するので、
図15に示すように、潤滑油内に含まれる導体粒子(摩耗粉)mpは吸着部(捕捉部)35に吸着される。このように、吸着部(捕捉部)35の付近に導体粒子mpが集積されると、検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。導体粒子(摩耗粉)mpが吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一であってもよい。
【0147】
本実施形態では、第2の電極32と第3の電極33とに対応する複数の検知ユニットは互いに並列に接続されている。第1の電極31と第2の電極32との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。また、第1の電極31と第3の電極33との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。
吸着凸部35G1の付近に導体粒子mpが集積されると、第2の電極32に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
吸着凸部35G2の付近に導体粒子mpが集積されると、第3の電極33に対応する検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。
【0148】
検知部5は、第1の電極31と第2の電極32との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着凸部35G1の周辺への導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部35G1の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極31と第2の電極32との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0149】
同様に、検知部5は、第1の電極31と第3の電極33との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着凸部35G2の周辺への導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部35G3の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極31と第3の電極33との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0150】
このように、第2の電極32に対応する検知ユニット、および、第3の電極33に対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、1箇所の吸着凸部35G1または吸着凸部35G2での電気抵抗変化を検出する。このため、複数の検知ユニットにおいて、異なる状態を検知することが可能となる。つまり、二系統の検知ユニットで電気抵抗変化を検出することになる。
【0151】
検知部5は、設定された検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する。例えば、検知部5は、2つ以上の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合にマニピュレータ等の上位制御装置に信号を出力するように設定されてもよいし、全ての検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力するように設定されてもよい。
【0152】
なお、電気抵抗の低下には、非通電と通電によるオン、オフ信号も含まれ、非通電と通電との2つの状態を検知(以下、「デジタル検知」という)してもよい。検知部5は、有線または無線により、マニピュレータ等の上位制御装置(不図示)に接続されていてもよい。上位制御装置は、検知部5からの信号を受信すると、所定の報知手段(例えば、表示装置や音声出力装置等)により、減速機2等のメンテナンスを促す警告を発するように構成することができる。
【0153】
以上説明したように、本実施形態のセンサ30は複数の検知ユニットを備えており、検知部5は、設定された任意の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力する。これにより、初期摩耗粉によって1つの検知ユニットにおいて電気抵抗が変化しても、他の検知ユニットで電気抵抗が変化しない場合には信号を出力しないように検知部5を設定することも可能である。したがって、予期しないセンサの作動を抑制することが可能である。また、センサ30によれば、検知部5が信号を出力する条件を設定することができるので、1つのセンサ30において信号が出力されるタイミングを、ユーザごとに要望が異なる最適な故障予知のタイミングに合わせることができる。
【0154】
また、導体粒子mpが吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一とできる。これにより、センサ30に印加する電圧を低くすることができる。また、複数の検知ユニットは、互いに並列に接続されている。これにより、それぞれの検知ユニットの一対の電極間に印加する電圧を低くすることができる。
また、他の全ての電極32,33に対して検知ユニットを形成する第1の電極31を、導体粒子mpの量が多い箇所に対応するようにセンサ30の配置を設定することが好ましい。
【0155】
本実施形態のセンサ30によれば、導体粒子mpを検出するギャップG1,G2が外周表面31a~33aに沿って軸線axdに沿った方向に設けられる。これにより、センサ30の端面における径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサ30を小型化することができる。
また、外周表面31a~33aに沿った軸線axdに沿った検知ユニットを隣接して、かつ、軸線axdに沿った方向に検知方向を設定できるため、軸線axd方向となる検知ギャップをセンサの周方向に複数設ける場合に比べても、検知感度を落とすことなくセンサを小型化することができる。
また磁石がセンサ表面に露出し、かつ、磁石が電極31~33と兼用されており、吸着部(捕捉部)35の直近となる位置から径方向に磁束を形成しているので、導体粒子mpの吸着効率が高く、小型化しても吸着効率を低下させることがない。
さらに、本実施形態のセンサ30によれば、部品点数を抑えて、組み立てを容易にし、製造コストを抑制することができる。
【0156】
図16は、本実施形態のセンサにおける他の例を示す説明図である。
なお、本実施形態のセンサ30では、各電極31~33に対する検知ユニットが二系統並列となるように構成したが、
図16に示すように、検知ユニットを二段階に形成する構成とすることもできる。
【0157】
具体的には、先端30a側に位置する第2の電極32と、軸線axd方向の中央位置にある第1の電極31と、で1段階目の検知ユニットが構成されるとともに、先端30a側に位置する第2の電極32と、軸線axd方向の逆側位置にある第3の電極33と、で二段階目の検知ユニットが構成される。
図16において、第2の電極32の出力ラインには「+」を、また、それ以外の電極31,33の出力ラインには「―」を記載することで、検知ユニットとなる対を示している。
【0158】
この例では、検知部5が、第2の電極32と第1の電極31との間の電気抵抗の変化を検知する。機構1の潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部15G1の周辺に集積されると、電圧が印加された第2の電極32と第1の電極31との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0159】
また、この例では、検知部5は、例えば、吸着凸部35G1の周辺と吸着凸部35G2の周辺とへの導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行う。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部35G1の周辺と吸着凸部35G2の周辺との両方に集積されると、電圧が印加された第2の電極32と第3の電極33との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
この検知は、吸着凸部35G1の周辺と吸着凸部35G2の周辺との両方に、導体粒子mpが集積された状態で、始めて可能となる。
【0160】
このように、第1の電極31に対応する検知ユニットに対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、1箇所の吸着凸部35G1での電気抵抗変化を検出する。これに対して、第3の電極33に対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、2箇所の吸着凸部35G1,35G2での電気抵抗変化を検出することになる。このため、複数の検知ユニットにおいて、異なる状態を検知することが可能となる。つまり、2段階に電気抵抗変化を検出することになる。したがって、故障予知の確実性を向上することができる。
【0161】
なお、軸線axd方向に並ぶ第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33に対応して、
図14に示す「―」「+」「―」、および、
図16に示す「+」「―」「―」とする検知ユニット設定を説明したが、「―」「―」「+」とする検知ユニット設定も可能である。
【0162】
以下、本発明に係るセンサの第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図17は、本実施形態におけるセンサを示す斜視図である。
本実施形態において、上述した第3実施形態と異なるのは、吸着部(捕捉部)の形状に関する点であるため、対応する構成には。同一の符号を付してその説明を省略する。
【0163】
本実施形態のセンサ30は、
図17に示すように、吸着部(捕捉部)35が電極31~33の周方向における一部分を覆っている。
具体的には、ギャップG1,G2となる吸着凸部35G1,35G2が、周方向の半分程度とされて、それ以外の電極31~33の周方向部分が、吸着部(捕捉部)35とおなじ樹脂により覆われる。つまり、吸着部(捕捉部)35として、略円柱状のケース35Bを有する構成とされる。
ケース35Bには、電極31~33の外周表面31a~33aの半周程度を露出させる窓部35Ba~35Bcが設けられる。
【0164】
窓部35Ba~35Bcは、軸線axd方向視して、同じ周方向rtd位置となるように設けられる。これにより、磁石である電極31~33において、
図13の左右に示した、N極とS極との境界付近をケース35Bによって覆うことができる。これにより、電極31~33の周方向に回ってしまい、ギャップG1,G2に関与しない磁束に起因する検知の不具合発生を防止することができる。
【0165】
また、ケース35Bには、基端部分35bの軸線axd方向に、拡径されたネジ部35Bgを設けることができる。ネジ部35Bgは、例えば、支持部材2eを介すことなくフランジ3にセンサ30を固定することを可能にする(
図1参照)。ネジ部35Bgは、ケース35Bと同軸状に、軸線axd方向にケース35Bから延びて形成される。なお、ネジ部35Bgとケース35Bとは、一体に成形することも可能である。
【0166】
本実施形態のセンサ30においても、上述した第3実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0167】
図18は、本実施形態のセンサにおける他の例を示す軸線方向に沿った断面図である。 本実施形態のセンサ30では、ケース35Bを一体として説明したが、
図18に示すように、ケース35Bを軸線axdと平行な平面で二分割してもよい。
【0168】
この例では、上ケース35Cには、窓部35Ba~35Bcが設けられ、また、下ケース35Dには、外周表面31a,32a,33aに接するように、軸線axdに沿った方向にライン通路35Dfが設けられる。ライン通路35Dfは、基端部分35b側に開口しており、先端30a側が閉塞している。
【0169】
この例では、出力ラインとして、フレキシブル基板31f,32f,33fが備えられる。
【0170】
第1の電極31に接続される出力ラインは、フレキシブル基板31fとされて、第1の電極31と吸着部(捕捉部)35との間に挟まれている。フレキシブル基板31fが第1の電極31に接触する部分は、被覆を剥がすなど導電性を有しており、第1の電極31と、導通が維持される。また、磁石とされた各電極31~33は、それぞれの磁力によって互いに吸着されているため、フレキシブル基板31fは、第1の電極31と吸着部(捕捉部)35との間に挟まれた状態で固定される。
【0171】
したがって、接着剤等を用いることなく、導通状態を維持したままで、フレキシブル基板31fを第1の電極31に固定接続することができる。
同様に、本実施形態のセンサ30では、フレキシブル基板32fを第2の電極32に固定接続し、フレキシブル基板33fを第3の電極33に固定接続する。
また、これらのフレキシブル基板31f,32f,33fは、ライン通路35Dfの内部を経て検知部5に接続される。
【0172】
この例においても、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0173】
以下、本発明に係るセンサの第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
図19は、本実施形態におけるセンサを示す分解斜視図である。
本実施形態において、上述した第4実施形態と異なるのは、磁石の形状に関する点であるため、対応する構成には。同一の符号を付してその説明を省略する。
【0174】
本実施形態におけるセンサ30では、第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、軸線axdに沿った方向に見て略矩形の輪郭形状を有する。これらの電極31~33は、矩形の平板状とされる。第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、いずれも、略同一形状とされる。
【0175】
本実施形態におけるセンサ30では、各電極31~33における着磁方向および、ケース35Bとされる吸着部(捕捉部)35に対する配置状態は、上述した第3実施形態とほぼ同様とされる。
具体的には、第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、軸線axdを中心とする矩形の板体とされる。第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、軸線axd方向に積層されており、先端30aから基端に向けて軸線axd方向に沿って、第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33の順に並んで配置されている。
【0176】
第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33は、軸線axdに沿った方向で、同軸状にいずれも平行に配置される。
第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33においては、それぞれの外周表面31a~33aの4辺が、同じ角柱の表面として互いに面一になるように配置される。
第2の電極32と、第1の電極31と、第3の電極33とは、いずれも軸線axdと直交する方向における径寸法(対応する矩形の一辺の長さ、あるいは、矩形の対角線長さ)が等しく設定される。
【0177】
磁石とされる第1の電極31と、第2の電極32と、第3の電極33とは、いずれも、磁化方向がセンサ30の径方向とされる。
第1の電極31は、径方向外側の外周表面31aのうち、軸線axdの両側で対向する一組のごとにそれぞれ極性が異なるように着磁される。また、第2の電極32と、第3の電極33とは、いずれも外周表面32a,33aのうち、軸線axdの両側で対向する一組のごとにそれぞれ極性が異なるように着磁される。
【0178】
第1の電極31は、第2の電極32および第3の電極33に対して、外周表面31aにおける極性が、外周表面32a,33aにおける極性とは、逆になっている。つまり、軸線axdに沿って隣接する電極31,32,33では、異なる極性を有するように着磁される。
つまり、第1の電極31は、第2の電極32および第3の電極33に対して、同じ状態に極性を着磁した磁石を、軸線axdまわりに半周分回転して配置したものである。
【0179】
例えば、
図19に示すように、第1の電極31は、N極が外周表面31aの下端面となるように着磁される。第2の電極32と第3の電極33とは、S極が外周表面32a,33aの上端面となるように着磁される。なお、着磁の方向は、各電極31~33が全て逆極性とすることもできる。
【0180】
このような配置とすることで、磁石とされた各電極31~33は、それぞれの磁力によって互いに軸線axd方向に引き付け合っている。したがって、各電極31~33を、接着剤等の接着手段を用いることなく軸線axd方向に重ね合わせて吸着部(捕捉部)35に対して固定することが可能である。
さらに、各電極31~33が矩形の輪郭形状を有することで、各電極31~33をケース35Bに取り付ける際に、着磁方向の設定を容易な状態で固定することが可能となる。
【0181】
なお、本実施形態においても、軸線axdに沿って積み重ねされた、第3の電極33、第1の電極31、第2の電極32には、それぞれ締結部材38(図示の実施形態ではネジ)を挿通する中心孔が、軸線axdと一致する中心軸線を有するように設けられていてもよい。
【0182】
本実施形態においても、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0183】
図20は、本実施形態のセンサにおける他の例を示す分解斜視図である。
なお、本実施形態のセンサ30では、ケース35Bの外形が略円柱状となるように構成したが、
図20に示すように、ケース35Bの外形が略角柱状となる構成とすることもできる。
この例では、矩形輪郭を有する各電極31~33における辺と、略角柱状となるケース35Bの辺とが平行になるように、互いに配置することができる。
これにより、各電極31~33をケース35Bに取り付ける際に、着磁方向の設定をさらに容易な状態で固定することが可能となる。
【0184】
本例においても、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0185】
図21は、本実施形態のセンサにおける他の例を示す分解斜視図である。
さらに、本実施形態のセンサ30では、ケース35Bを一体として説明したが、
図21に示すように、ケース35Bを軸線axdと平行な平面で二分割してもよい。
この例では、さらに、磁石である各電極31~33が矩形輪郭の平板状であり、ライン通路35Dfを有し、出力ラインとして、フレキシブル基板31f,32f,33fが備えられる。
【0186】
この例では、上ケース35Cには、窓部35Ba~35Bcが設けられる。窓部35Ba~35Bcは、
図21に示すように、周方向の寸法が各電極31~33よりも多少狭くなるように形成されている。
また、ライン通路35Dfは、外周表面31a,32a,33aに接するように、軸線axdに沿った方向に下ケース35Dに形成される。ライン通路35Dfは、基端部分35b側に開口しており、先端30a側が閉塞している。
【0187】
本例においても、第1の電極31に接続される出力ラインは、フレキシブル基板31fとされて、第1の電極31と吸着部(捕捉部)35との間に挟まれている。フレキシブル基板31fが第1の電極31に接触する部分は、被覆を剥がすなど導電性を有しており、第1の電極31と、導通が維持される。また、磁石とされた各電極31~33は、それぞれの磁力によって互いに吸着されているため、フレキシブル基板31fは、第1の電極31と吸着部(捕捉部)35との間に挟まれた状態で固定される。
【0188】
したがって、接着剤等を用いることなく、導通状態を維持したままで、フレキシブル基板31fを第1の電極31に固定接続することができる。
同様に、本例のセンサ30では、フレキシブル基板32fを第2の電極32に固定接続し、フレキシブル基板33fを第3の電極33に固定接続する。
また、これらのフレキシブル基板31f,32f,33fは、ライン通路35Dfの内部を経て検知部5に接続される。
【0189】
また、本例において、各電極31~33を上ケース35Cに挿入し、ライン通路35Dfに通したフレキシブル基板31f,32f,33fを挿入して、下ケース35Dを組み付けることができる。これにより、組み立てにおける容易性を向上することができる。
【0190】
本例においても、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0191】
以下、本発明に係るセンサの第6実施形態を、図面に基づいて説明する。
図22は、本実施形態におけるセンサにおける電極配置を示す軸線に沿った断面図である。
本実施形態において、上述した第3実施形態と異なるのは、電極の数に関する点であるため、対応する構成には。同一の符号を付してその説明を省略する。
【0192】
本実施形態のセンサ30は、電極31~33に加えて、第3野電極の基端部分35b側に、ギャップG4を形成する吸着凸部35G4と第4の電極34とを有する。
各電極31~34は、軸線axd方向に積層されており、先端30aから基端部分35bに向けて軸線axd方向に沿って、第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33、第4の電極34の順に並んで配置されている。
【0193】
本実施形態において、第4の電極34に関しては、その形状、および、ギャップG4、吸着凸部35G4との配置等は、第1の電極31、吸着凸部35G1,35G2、ギャップG1,G2に準じた構成とされている。
本実施形態において、第4の電極34の着磁方向は、第1の電極31と同じ方向で、隣接する第3の電極33の着磁方向とは、逆向きとされる。
【0194】
なお、本実施形態のセンサ30では、各電極31~34に対する検知ユニットが二系統並列となるように構成し、
図22に示すように、検知ユニットを二段階に形成する構成とする。
【0195】
具体的には、先端30a側に位置する第2の電極32と、軸線axd方向の中央位置にある第1の電極31と、で1段階目の検知ユニットが構成されるとともに、先端30a側に位置する第2の電極32と、軸線axd方向の逆側位置にある第3の電極33と、並列の検知ユニットが構成され、さらに、第1の電極31と第4の電極34と、で二段階目の検知ユニットが構成される。
図22において、第1の電極31の出力ラインには「+」を、また、それ以外の電極32~34の出力ラインには「―」を記載することで、検知ユニットとなる対を示している。
【0196】
本実施形態では、検知部5が、第1の電極31と第2の電極32との間の電気抵抗の変化を検知する。機構1の潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部15G1の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極31と第2の電極32との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0197】
本実施形態では、検知部5が、第2の電極32と第3の電極33との間の電気抵抗の変化を検知する。機構1の潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部15G2の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極31と第3の電極33との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。
【0198】
また、本実施形態では、検知部5は、例えば、吸着凸部35G1の周辺と吸着凸部35G3の周辺とへの導体粒子mpの集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行う。潤滑油内に含まれる導体粒子mpが吸着凸部35G1の周辺と吸着凸部35G3の周辺との両方に集積されると、電圧が印加された第2の電極32と第4の電極34との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知をおこなう。 この検知は、吸着凸部35G1の周辺と吸着凸部35G3の周辺との両方に、導体粒子mpが集積された状態で、始めて可能となる。
【0199】
このように、第1の電極31に対応する検知ユニットに対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、1箇所の吸着凸部35G1での電気抵抗変化を検出する。同様に、第3の電極33に対応する検知ユニットに対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、1箇所の吸着凸部35G2での電気抵抗変化を検出する。
これに対して、第4の電極34に対応する検知ユニットでの電気抵抗変化は、2箇所の吸着凸部35G1,35G3での電気抵抗変化を検出することになる。このため、複数の検知ユニットにおいて、異なる状態を検知することが可能となる。つまり、2段階に電気抵抗変化を検出することになる。したがって、故障予知の確実性を向上することができる。
【0200】
なお、軸線axd方向に並ぶ第2の電極32、第1の電極31、第3の電極33、第4の電極34に対応して、
図22に示す「―」「+」「―」「―」とする検知ユニット設定を説明したが、これ以外でも、「―」「―」「+」「―」とする検知ユニット設定も可能である。
さらに、「+」「―」「―」「―」、および、「―」「―」「―」「+」する検知ユニット設定も可能であり、この場合、三段階の電気抵抗変化を検出することが可能となる。
【0201】
本実施形態においても、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0202】
以下、本発明に係るセンサの第7実施形態を、図面に基づいて説明する。
図23は、本実施形態におけるセンサを示す軸線方向に沿った断面図である。
図24は、本実施形態に係るセンサの磁石を示す説明図である。図において、符号40はセンサを示している。
本実施形態において、上述した第3実施形態と異なるのは、センサの構成に関する点である。なお、
図1に示した機構1に関する構成はその説明を省略する。
【0203】
本実施形態のセンサ40は、
図23に示すように、軸線axdを有する略円筒状の外形を有している。センサ40は、第1の電極41と、第2の電極42と、締結部材48と、吸着部(捕捉部)45とを備えている。
【0204】
センサ40において、第1の電極41と、第2の電極42と、吸着部(捕捉部)45とは、軸線axd方向に見て、軸線axdを中心とする円形の輪郭形状を有する板体とされる。第1の電極41と、吸着部(捕捉部)45と、第2の電極42とは、いずれも略同一輪郭形状で略同一厚さとされる。
第1の電極41と、吸着部(捕捉部)45と、第2の電極42とは、軸線axd方向に積み重ねられており、上端面40aから軸線axd方向に沿って、第1の電極41と、吸着部(捕捉部)45と、第2の電極42の順に並んで配置されている。
【0205】
第1の電極41と、吸着部(捕捉部)45と、第2の電極42とは、軸線axdに沿った方向で、同軸状にいずれも平行に配置される。
第1の電極41、第2の電極42においては、それぞれの外周表面41a,42aが、同じ円筒面として面一になるように配置される。第1の電極41の上端面40a側には、例えばワッシャとされる電極板41bが配置される。
【0206】
第1の電極41と、第2の電極42とは、軸線axdに沿った方向で互いに離間している。第1の電極41と、第2の電極42との間には、ギャップG1が形成される。
第1の電極41は、磁石とされる。磁石は、永久磁石によって構成される。
第1の電極41は、
図24に示すように、磁化方向が軸線axdに沿った方向とされる。
第2の電極42は、例えば、鉄やフェライトコア、ケイ素鋼等の導電性を有する磁性材料によって構成される。
【0207】
吸着部(捕捉部)45は、第1の電極41および第2の電極42よりも大きな径寸法を有する円板状とされる。
吸着部(捕捉部)45は、第1の電極41と第2の電極42との間のギャップG1を埋めるように設けられるとともに、外周表面31a,32aよりも径方向外側に突出する吸着凸部45G1を有する。
第1の電極41および第2の電極42の間のギャップG1の軸線axd方向の厚さ寸法は、潤滑油内に含まれる導体物質の寸法よりも大きくなっている。一例として、導体物質の寸法は1.0μm~100μm程度であり、ギャップG1の間隔は初期摩耗鉄粉で短絡しない程度の距離にすることが好ましい。ギャップG1の軸線axdに沿った方向における寸法は、それぞれ同じ値とされる。
【0208】
第1の電極41と、吸着部(捕捉部)45と、第2の電極42とのそれぞれには、締結部材48(図示の実施形態ではボルト)が挿し込まれる貫通孔がそれぞれ設けられている。この貫通孔に締結部材48が挿し込まれることにより、第1の電極と、吸着部(捕捉部)45と、第2の電極42とは互いに固定されている。ボルト(締結部材)48は、ナット48aで締め付けられる。
ボルト(締結部材)48の径方向周囲には、筒47が設けられる。筒47は、第1の電極41と第2の電極42と、BPルと48とが、互いに絶縁状態を維持するとともに、第1の電極41と第2の電極42と吸着凸部45G1とにおいて、径方向における互いの固定位置を設定する機能を有する。筒47を設けないこともできる。
【0209】
第2の電極42と、磁石である第1の電極41との間には、
図23に示すように、吸着凸部45G1の径方向外側を通って軸線axdに沿った方向で結ぶように磁束線が形成される。
【0210】
第1の電極41と第2の電極42とには、それぞれ出力ラインが接続されている。第1の電極41と第2の電極42とは、当該出力ラインを介して、それぞれ検知部5(
図1参照)と電気的に接続されている。
第1の電極41と第2の電極42とは、互いに絶縁されており、第1の電極41と第2の電極42とから成る一対の電極と、当該一対の電極の間に配置された吸着部45とによって1つの検知ユニットが構成されている。
【0211】
検知部5は、第1の電極41と第2の電極42との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部5は、例えば、吸着部(捕捉部)45の周辺への導体物質の集積による軸線axd方向における電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体物質が吸着部(捕捉部)45の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極41と第2の電極42との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部5は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知を行う。
【0212】
なお、電気抵抗の低下には、非通電と通電によるオン、オフ信号も含まれ、非通電と通電との2つの状態を検知(以下、「デジタル検知」という)してもよい。検知部5は、有線又は無線により、マニピュレータ等の上位制御装置(不図示)に接続されていてもよい。上位制御装置は、検知部5からの信号を受信すると、所定の報知手段(例えば、表示装置や音声出力装置等)により、減速機2等のメンテナンスを促す警告を発するように構成することができる。
【0213】
本実施形態のセンサ40によれば、導体粒子mpを検出するギャップG1が外周表面41a、42aに沿って軸線axdに沿った方向に設けられる。これにより、センサ40の端面における径方向に導体粒子を検出するギャップが設けられる場合に比べて、検知感度を落とすことなくセンサ40を小型化することができる。
また磁石がセンサ表面に露出し、かつ、磁石が第1の電極41と兼用されており、吸着部(捕捉部)45の径方向外側となる位置に磁束を形成しているので、導体粒子mpの吸着効率が高く、小型化しても吸着効率を低下させることがない。また、軸線axdに沿った方向の寸法を設定することで、検知感度を設定することが可能であり、初期摩耗粉での誤動作防止に対応しても、径寸法が大きくなることを防止できる。
さらに、本実施形態のセンサ40によれば、部品点数を抑えて、組み立てを容易にし、製造コストを抑制することができる。
【0214】
以下、本発明に係るセンサの第8実施形態を、図面に基づいて説明する。
図25は、本実施形態におけるセンサを示す軸線方向に沿った断面図である。
図26は、本実施形態に係るセンサの電極配置を示す説明図である。
本実施形態において、上述した第7実施形態と異なるのは、第2の電極およびケースの構成に関する点であり、これ以外の対応する構成は同一の符号を付してその説明を省略する。
【0215】
本実施形態に係るセンサ40は、上述した第7実施形態におけるセンサ40と同様に、潤滑油内に含まれる導体物質の量を検知するためのセンサである。
図25に示すように、センサ40は略円柱状の外形を有しており、複数の検知ユニットと、当該検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する検知部5と、を備えている。
【0216】
より具体的に、センサ40は、第1の電極41と、複数の第2の電極42と、電極41と電極42との間に配置された吸着部(捕捉部)45とを有している。複数の第2の電極42は、互いにケース46等によって絶縁されており、第1の電極41および1つの第2の電極42から成る一対の電極と、当該一対の電極の間に配置された吸着部(捕捉部)45とによって1つの検知ユニットが構成されている。
【0217】
なお、ケース46は、
図26に示すように、径方向に分割された4つの第2の電極42A,42B,42C,42Dをそれぞれ嵌め込んで、位置設定が可能で、かつ、4つの第2の電極42A,42B,42C,42Dを互いに絶縁する。ケース46は、吸着部(捕捉部)45と同材の樹脂からなることもできる。
【0218】
図示の実施形態では、センサ40は径方向に分割された4つの第2の電極42A,42B,42C,42Dを有しており、4つの検知ユニットが構成されている。第2の電極42の数、および検知ユニットの数は特に限定されない。センサ40における第1の電極41である磁石は、対となる第1の電極41と、分割されたそれぞれの第2の電極42A,42B,42C,42Dと、のいずれかの間に磁束線を形成する。このため、潤滑油内に含まれる導体物質は吸着部(捕捉部)45に吸着される。第1の電極41と、分割されたそれぞれの第2の電極42A,42B,42C,42Dとは、センサ本体の側面に位置するそれぞれの検知ユニットに対応する。
【0219】
このように、吸着部(捕捉部)45の付近に導体物質が集積されると、検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。導体粒子が吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一である。
複数の検知ユニットのそれぞれにおける検知方向は、ギャップG1によって設定され、いずれも軸線axdに沿った方向である。
【0220】
第1の電極41および複数の第2の電極42A,42B,42C,42Dのそれぞれには、
図26に示すように、出力ラインが接続されており、当該出力ラインを介して複数の検知ユニットのそれぞれは検知部5と電気的に接続されている。
本実施形態では、複数の検知ユニットは互いに並列に接続されており、第1の電極41および複数の第2の電極42A,42B,42C,42Dとの間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。検知部5は、設定された任意の数の検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する。例えば、検知部5は、2つ以上の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合にマニピュレータ等の上位制御装置に信号を出力するように設定されてもよいし、全ての検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力するように設定されてもよい。
【0221】
以上説明したように、センサ40は複数の検知ユニットを備えており、検知部5は、設定された任意の数の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力する。これにより、たとえ大径導体片によって1つの検知ユニットにおいて電気抵抗が変化しても信号を出力しないように検知部5を設定することができる。また、センサ40によれば、検知部5が信号を出力する条件を設定することができるので、1つのセンサ40において信号が出力されるタイミングを、ユーザごとに要望が異なる最適な故障予知のタイミングに合わせることができる。
【0222】
また、導体粒子が吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一である。これにより、センサ40に印加する電圧を低くすることができる。また、複数の検知ユニットは、互いに並列に接続されている。これにより、それぞれの検知ユニットの一対の電極間に印加する電圧を低くすることができる。
【0223】
本実施形態においても、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0224】
以下、本発明に係るセンサの第9実施形態を、図面に基づいて説明する。
図27は、本実施形態におけるセンサを示す軸線方向に沿った断面図である。
本実施形態において、上述した第7および第8実施形態と異なるのは、吸着部(捕捉部)および磁石に関する点であり、これ以外の対応する構成は同一の符号を付してその説明を省略する。
【0225】
本実施形態においては、磁石49が吸着部(捕捉部)45の内部に埋め込まれて、外周面が外部に露出していない。また、磁石49は、軸線axdに沿った方向で、円板状導体である第1の電極41における第2の電極42側に接触している。磁石49は、第1の電極41と第2の電極42とに近接していることが好ましい。磁石49は、第2の電極42に接触する構成としてもよい。
また、第1の電極41の上端面40a側にはケース46bが設けられる。ケース46bは、第1の電極41の上端面40a側を覆っている。
【0226】
つまり、第1の電極41、磁石49、吸着部(捕捉部)45、第2の電極42、ケース46が軸線axdに沿った方向で積み重なっている。
第1の電極41と、第2の電極42とは、ほぼ同じ径寸法とされて、外周表面41aと外周表面42aとが、面一となる円筒面を形成している。磁石49は、第1の電極41および第2の電極42に比べて、小さな径寸法とされる。また、吸着部(捕捉部)45は、第1の電極41および第2の電極42に比べて、大きな径寸法となる吸着凸部45G1を有する。
【0227】
吸着部(絶縁体)45は、例えば、樹脂等の絶縁性を有する非磁性材料によって構成されている。磁石49により、第1の電極41と第2の電極42との間には磁束線が形成される。これにより、潤滑油内に含まれる導体物質は吸着凸部45G1の周辺に集積される。なお、潤滑油の循環する範囲が検出領域とされる。
【0228】
本実施形態のセンサ40は、第1の電極41の外周表面41aに対して略面一とされる第2の電極42の外周表面42aを結ぶ円筒よりも、径方向外側に突出する吸着凸部45G1の表面が検知面とされる。すなわち、検知面において、第1の電極41と第2の電極42との間に、磁束線に対応して導体摩耗粉が吸着されて、第1の電極41と第2の電極42との間を電気的に接続することで、第1の電極41と第2の電極42との間の抵抗値が変化することを検知する。
なお、第1の電極41の外周表面41aと第2の電極42の外周表面42aとが、面一でなくてもよい。
【0229】
第1の電極41と第2の電極42との間の沿面距離が長くなることによって、第1の電極41と第2の電極42との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量が大きくなる。
また、第1の電極41と第2の電極42との間の沿面距離が短くなることによって、第1の電極41と第2の電極42との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量が小さくなる。
【0230】
ここで、検知ユニットにおける検知感度を設定するための第1の電極41と第2の電極42との沿面距離は、吸着部(捕捉部)45における吸着凸部45G1の突出量によって規定される。
つまり、径方向における吸着凸部45G1の突出量、および、軸線axd沿った方向における吸着凸部45G1の厚み寸法を増減することで、導体粒子が堆積した際に、短絡する第1の電極41と第2の電極42との沿面距離を変更できる。
なお、軸線axd沿った方向における吸着凸部45G1の厚み寸法は、ギャップG1と、磁石49の厚さ寸法とに依存する。
【0231】
本実施形態のセンサ40は、突出量および厚み寸法が異なる値に設定された吸着部(捕捉部)45の群を有し、この中から選択して組み立てることができる。
つまり、厚さ(軸線axd方向寸法)および/または径方向の突出量の異なる複数の吸着部(捕捉部)45の群が感度調整手段を構成する。
これにより、感度調整手段を選択することで、第1の電極41と第2の電極42との間の沿面距離を複数の値から選択することができる。
本実施形態におけるセンサ40は、感度調整手段を有することで、検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
【0232】
減速機の型式(大きさ)の違いによって、初期摩耗で発生する鉄粉(摩耗粉)量には差があり、大型減速機の場合は初期摩耗鉄粉の量が多く、初期摩耗鉄粉によって、電極41,42間のセンサ電気ギャップが埋まって反応してしまい、誤動作する可能性がある。そのため、減速機型式に応じたセンサの雷気ギャップ設計を行う必要があるが、センサの直径方向の大型化を招くという問題がある。
これに対し、本実施形態におけるセンサ40は、寸法の異なる吸着部(捕捉部)45の群からなる感度調整手段を有することで、直径方向への延伸と同じ効果が得られるため、センサ40が大型化することがない。
【0233】
本実施形態においても、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0234】
10,20,30,40…センサ
10a,20a…端面
11,21,31,41…第1の電極
11a,12a,13a,14a,21a,22a,23a,24a,31a,32a,33a,41a,42a…外周表面
11f,12f,13f,14f,31f,32f,33f…フレキシブル基板
12,22,32,42,42A,42B,42C,42D…第2の電極
13,23,33…第3の電極
14,24,34…第4の電極
15,25,35,45…吸着部(捕捉部)
15G1,15G2,15G3,15G4,25G1,25G2,25G3,25G4,35G1,35G2,35G3,35G4,45G1…吸着凸部
25c…中央部
25m…溝部
26a,26b,26c,26d…電極
30a…先端
35a…先端部分
35b…基端部分
35B,46,46b…ケース
35Ba,35Bb,35Bc…窓部
35Bg…ネジ部
35C…上ケース
35D…下ケース
35Df…ライン通路
37,47…筒
38…ネジ(締結部材)
40a…上端面
41b…電極板
48…締結部材
48…ボルト(締結部材)
48a…ナット
49…磁石
axd…軸線
G1,G2,G3,G4…ギャップ
mp…導体粒子(摩耗粉)