(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20240815BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G06F1/16 312Z
H05K9/00 F
(21)【出願番号】P 2023208753
(22)【出願日】2023-12-11
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 武仁
(72)【発明者】
【氏名】岡本 雅士
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-176555(JP,A)
【文献】特開2020-134751(JP,A)
【文献】特開2014-215711(JP,A)
【文献】特開2023-030527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16- 1/18
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールを搭載した電子機器であって、
前記カメラモジュールは、
基板と、
前記基板に実装されたコネクタ部と、
前記基板に実装されると共に、前記コネクタ部と隙間をあけて隣接し、その表面と前記コネクタ部の表面との間に段差が形成される部品と、
を有し、
前記コネクタ部の表面から前記隙間を跨いで前記部品の表面までを覆うように設けられた電磁波シールド用のシート状部材を備え、
前記シート状部材は、前記隙間と上下にオーバーラップする位置に孔部を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記基板から前記部品の表面までの高さは、前記基板から前記コネクタ部の表面までの高さよりも高い
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
縁部に立壁が設けられ、前記カメラモジュールを支持した筐体と、
前記筐体の内面に貼り付けられた導電性シートと、
を備え、
前記カメラモジュールは、前記立壁の壁面に面して配置され、
前記シート状部材は、前記導電性シートと一体に形成され、前記筐体の内面から前記立壁の壁面に沿って折り曲げられると共に、前記立壁の壁面から前記カメラモジュールに向かって折り返されることで前記コネクタ部の表面及び前記部品の表面を覆っている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記コネクタ部は、
前記基板に実装されたコネクタと、
前記コネクタに接続されたフレキシブル基板と、
を有し、
前記シート状部材を上から押さえ、前記フレキシブル基板を前記コネクタに対して押し付ける押さえ部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記筐体に支持されたディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルの表示面の外周縁部と前記立壁の上端面との間に跨るように配置されたベゼル部材と、
を備え、
前記押さえ部材は、前記ベゼル部材の下に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記コネクタ部は、
前記基板に実装されたコネクタと、
前記コネクタに接続されたフレキシブル基板と、
を有し、
前記コネクタと前記立壁の壁面との間には、前記孔部が設けられていない
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、例えばディスプレイパネルを搭載した筐体の一縁部にカメラモジュールが搭載されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラモジュールは、静電気対策やノイズ対策のために電磁波シールド性を有する部材、例えばアルミシートでシールドする必要である。特にカメラモジュールにおいて、マザーボード等からの配線(例えばフレキシブル基板)が接続されるコネクタのシールドは重要である。例えば静電気がコネクタから配線を伝わり、マザーボードやこれに実装されたCPU等を破壊することを防ぐためである。
【0005】
ところで、上記のような電子機器は筐体の小型・薄型化の要望が大きく、カメラモジュールは筐体内での設置スペースが限られている。このためカメラモジュールの基板には、コネクタの他、レンズや各種信号処理用のコンポーネント等の部品が密集して実装されている。その結果、例えばアルミシートでコネクタを覆う際、コネクタと隣接する他の部品が邪魔になり、アルミシートとコネクタとの間に隙間を生じる懸念がある。この隙間はコネクタの静電気対策やノイズ対策上の問題となる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、カメラモジュールでのシールド性を確保することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電子機器は、カメラモジュールを搭載した電子機器であって、前記カメラモジュールは、基板と、前記基板に実装されたコネクタ部と、前記基板に実装されると共に、前記コネクタ部と隙間をあけて隣接し、その表面と前記コネクタ部の表面との間に段差が形成される部品と、を有し、前記コネクタ部の表面から前記隙間を跨いで前記部品の表面までを覆うように設けられた電磁波シールド用のシート状部材を備え、前記シート状部材は、前記隙間と上下にオーバーラップする位置に孔部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、カメラモジュールでのシールド性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、第1筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す導電性シートの配置を例示した図である。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示すコネクタ部を第5部分(シート状部材)で覆った状態を示す図である。
【
図7】孔部を持たない比較例のシート状部材でコネクタ部を覆った状態を示す模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCであり、第1筐体11と第2筐体12とをヒンジ14によって相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態では、ノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えばタブレット型PC、ディスプレイ装置、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
第2筐体12は扁平な箱体であり、第1筐体11と隣接している。第2筐体12の内部には、CPU等を搭載したマザーボード15、記憶装置、及びバッテリ装置等の各種電子部品が収容されている。第2筐体12の上面には、キーボード16及びタッチパッド17が臨んでいる。
【0013】
第1筐体11は第2筐体12よりも薄い扁平な箱体である。第1筐体11はディスプレイパネル18を搭載している。以下、第1筐体11及びこれに搭載された各構成要素について、ディスプレイパネル18の表示面18aを視認する操作者から見た方向を基準とし、幅方向をそれぞれX1,X2方向、高さ方向をそれぞれY1,Y2方向、厚み方向をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。
【0014】
ディスプレイパネル18の表示面18aは第1筐体11のZ1側表面(正面11a)を臨んでいる。第1筐体11は、背面11b(Z2側表面)及び四周の側面11cを形成する筐体部材20と、正面11aの周縁部を形成するベゼル部材21とを有する。ベゼル部材21は、ディスプレイパネル18の外周縁部を囲む枠状の薄いプレートである。第1筐体11の正面11aは、ベゼル部材21も含めた略全面がタッチガラス22で覆われている。ヒンジ14は、第1筐体11のY2側縁部に連結されている。
【0015】
ディスプレイパネル18は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成される。ディスプレイパネル18は、例えばガラス、液晶層、及び導光板等を積層してそれぞれの層の外周縁部同士を両面テープや接着剤等で固定した構造である。タッチガラス22は表示面18aを覆うことで、ディスプレイパネル18に対するタッチ操作を受け付けるタッチパネルを構成する。
【0016】
図2は、第1筐体11の内部構造を模式的に示す平面図である。
図2は、タッチガラス22及びベゼル部材21を省略し、ディスプレイパネル18は外形のみを2点鎖線で示している。
【0017】
図2に示すように、筐体部材20は、プレート部24と、プレート部24の外周縁部から起立するように設けられた立壁25とを有する。プレート部24は矩形状のプレートであり、第1筐体11の背面11bを形成する。プレート部24は、例えば平坦なプレート、又は背面11b側に多少湾曲した浅いドーム状のプレート等である。立壁25はプレート部24の外周縁部からZ1方向に起立した壁部であり、第1筐体11の各側面11cを形成する。立壁25のZ1側表面(上端面25b)はベゼル部材21の貼着面となる(
図6参照)。
図1及び
図2中の参照符号20aは、筐体部材20のY1側縁部の略中央部をY1方向に張り出させた突出部である。突出部20aは後述するカメラモジュール34の設置スペースを拡大するものである。突出部20aは省略されてもよい。
【0018】
筐体部材20は、例えば炭素繊維強化樹脂の積層プレートであるプレート部24の縁部に、立壁25を構成する樹脂フレームを射出成形によって接合した構成である。筐体部材20は、プレート部24及び立壁25を同一の金属材料や樹脂材料等で一体に成形した構成等でもよい。
【0019】
図2に示すように、筐体部材20の内側には、両面粘着テープ26と、ブラケット28と、導電性シート30と、配線部32と、カメラモジュール34と、マイクモジュール36とが取り付けられている。
【0020】
両面粘着テープ26は、例えば左右一対設けられ、Y方向に延在する帯状のテープである。両面粘着テープ26は、筐体部材20に対してディスプレイパネル18を固定するためのものである。両面粘着テープ26は、ディスプレイパネル18の表示面18aとは反対側の裏面と、プレート部24の内面24a(背面11bの裏側の表面)とを粘着固定する。
【0021】
ブラケット28は、例えば第1筐体11のY2側縁部に沿って左右一対設けられ、それぞれ内面24aに接着固定されている。ブラケット28は、ヒンジ14をねじ止めするための金属部品である。ブラケット28は、金属製のヒンジ14を介して第2筐体12と電気的に接続される。
【0022】
導電性シート30は、例えばアルミニウム又は銅のような高い導電性を有する材料で形成された薄い片面粘着シートである。本実施形態の導電性シート30はアルミシート(アルミテープ)である。導電性シート30はプレート部24の内面24aに貼り付けられている。導電性シート30は、ディスプレイパネル18、カメラモジュール34及びマイクモジュール36のフレームグランドに用いることができ、ブラケット28を経由して第2筐体12と電気的に接続される。
【0023】
図3は、
図2に示す導電性シート30の配置を例示した図である。
図3において導電性シート30はドットパターンを付して明示している。
【0024】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の導電性シート30は、第1部分30a~第5部分30eを有する。第1部分30a~第3部分30cは、プレート部24のY1,X1,X2側の各縁部に沿って設けられ、全体として上下逆の略U字状に形成されている。第1部分30aはプレート部24のY1側縁部に沿ってX方向に延在している。第2部分30bはプレート部24のX1側縁部に沿ってY方向に延在し、そのY2側端部がブラケット28に接続されている。第3部分30cはプレート部24のX2側縁部に沿ってY方向に延在し、そのY2側端部がブラケット28に接続されている。第4部分30dはプレート部24の中央よりもY2寄りの位置に設けられ、横向きの略J字状に形成されている。第4部分30dは配線部32の中継コネクタ32aと左右のブラケット28とにそれぞれ接続されている。部分30b~30dはブラケット28にヒンジ14を固定するねじに共締めし、ブラケット28に対して確実に導通させることが好ましい。
【0025】
第5部分30eは、第1部分30aの長手方向(X方向)でカメラモジュール34と対向する位置からY1側に突出した小片状部分である。第5部分30eは立壁25の壁面(内壁面)25aに沿ってZ1側に折り曲げられた後、Y2側へと折り返される(
図6参照)。これにより第5部分30eはカメラモジュール34の一部を内包するように設けられる。第5部分30eの具体的な構成は後述する。
【0026】
図2に示すように、配線部32は、幅広なフレキシブル基板(FPC:Flexible printed circuits)で構成されている。配線部32はプレート部24の内面24a及びこれに貼り付けられた導電性シート30のZ1側表面に載置されている。配線部32は、第2筐体12側のマザーボード15に対し、カメラモジュール34及びマイクモジュール36を接続する配線の一部である。配線部32は、後述するカメラモジュール34のフレキシブル基板47と、各マイクモジュール36のフレキシブル基板36bとを集合したものである。配線部32のY2側端部は所定の中継基板に接続される中継コネクタ32aが実装されている。配線部32はこの中継基板を介してマザーボード15と接続される。配線部32は中継基板を介さずに直接的にマザーボード15と接続されてもよい。
【0027】
マイクモジュール36は、左右一対設けられることでステレオマイクを構築している。マイクモジュール36は1つのみ用いてもよい。マイクモジュール36はマイク素子36aを有する。マイク素子36aは、例えばプリント基板(PCB:Printed circuit board)に実装した振動膜を有するMEMSチップやICチップをシールディングしたMEMSマイクロフォンである。立壁25はマイクモジュール36が対向する位置にマイク孔25cが貫通形成されている。マイク素子36aは立壁25の壁面25aに粘着固定され、マイク孔25cを通して第1筐体11外の音情報を取得することができる。本実施形態のマイク素子36aはフレキシブル基板(FPC)36bに実装されている。フレキシブル基板36bは、マイク素子36aと配線部32とを接続する配線である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態のカメラモジュール34は、基板(カメラ基板)40と、コネクタ部41と、レンズ部42と、コンポーネント部43,44とを備える。
【0029】
基板40はプリント基板(PCB)である。基板40はZ方向に幅狭であると共に、X方向に長尺な薄い帯状のプレートである。コネクタ部41、レンズ部42及びコンポーネント部43,44は、基板40の一面(Z1側表面)でX方向に並ぶように実装されている。
【0030】
コネクタ部41は、コネクタ46及びフレキシブル基板(FPC)47を含むことができる。コネクタ46は基板40のX1側端部に実装されている。コネクタ46は、例えば基板対基板コネクタ(BtoBコネクタ)である。コネクタ46は、上面(Z1側表面)46aに接続端子が形成され、ここにフレキシブル基板47が接続される(
図5参照)。上面46aは基板40に対するコネクタ46の実装面(Z2側表面)とは反対側の面である。フレキシブル基板47は、カメラモジュール34と配線部32とを接続する配線である。
【0031】
レンズ部42は、照度センサ42aと、カメラレンズ42bと、ステータスLED42cと、IRLED42dとを含むことができる(
図1も参照)。照度センサ42aは周囲環境の明るさを検知することができるセンサである。カメラレンズ42bは動画撮影等に用いることができるカメラであり、中心に集光用のレンズを有し、レンズの裏側にイメージセンサが設けられている。ステータスLED42cは電子機器10の動作状態を表示することができるライトである。IRLED42dは顔認識等に用いることができる赤外線カメラである。レンズ部42の構成はこれに限定されない。
【0032】
コンポーネント部43はコネクタ部41とレンズ部42との間に配置されている。コンポーネント部43は、基板40に実装された各種のコンポーネント43aと、コンポーネント43aを覆うシールドケース43bとを含むことができる(
図4A及び
図5参照)。コンポーネント43aは、例えばカメラレンズ42bからコネクタ46に送られる信号を処理する半導体チップやカメラモジュール34の電源用の半導体チップ等を含むことができる。シールドケース43bはコンポーネント43aの電磁波シールド用のケースであり、例えばアルミニウム製の箱型ケースである。
【0033】
コンポーネント部44はレンズ部42のX2側に配置されている。コンポーネント部44は、コンポーネント部43と同様な構成でよく、つまり各種のコンポーネントの周囲をシールドケースで囲んだ構成とすることができる。
【0034】
カメラモジュール34において、コネクタ部41は、特に静電気対策やノイズ対策のための電磁波シールドが必要な部分である。例えばコネクタ部41に静電気が落ちると、この静電気がフレキシブル基板47から配線部32を経て、第2筐体12内のマザーボード15まで伝わり、CPU等を破壊する懸念がある。またカメラモジュール34の各構成要素が発するノイズがコネクタ46に伝わると、映像品質が低下する懸念もある。そこで、本実施形態のコネクタ部41は、Z2側(基板40側)が導電性シート30の第1部分30aで覆われ、Z1側(表面41a側)が第5部分30eで覆われている。
【0035】
次に、コネクタ部41の具体的なシールド構造を説明する。
【0036】
図4Aは、
図3に示すコネクタ部41及びその周辺部の拡大図である。
図4A及び
図3では、第5部分30eは外形のみを2点鎖線で図示し、押さえ部材52の図示を省略している。
図4Bは、
図4Aに示すコネクタ部41を第5部分30eで覆った状態を示す図である。
図5は、
図4B中のV-V線に沿う模式的な断面図である。
図6は、
図4B中のVI-VI線に沿う模式的な断面図である。
【0037】
図3に示すように、導電性シート30の第5部分30eは、コネクタ部41を覆う前の状態では第1部分30aのY1側縁部からY1方向に突出するように形成されている。
図4A~
図6に示すように、第5部分30eはコネクタ部41を覆う際には、立壁25の壁面25aに沿ってZ1側に折り曲げられた後、Y2側へと折り返される。これにより第5部分30eはコネクタ部41を内包するように覆うことができる。
【0038】
図3~
図6に示すように、第5部分30eは、シールド層50aと、シールド層50aの両面を覆う絶縁層50b,50bとを有する3層構造のシート状部材で構成されている。以下、第5部分30eについて「シート状部材30e」と呼ぶこともある。シールド層50aは、第1部分30aと一体に形成された導電性シート30の一部であり、例えばアルミシートである。絶縁層50bは、絶縁性と可撓性を有する樹脂、例えばポリイミドシートで形成されている。絶縁層50bは、シールド層50aによってカメラモジュール34がショートすることを防止するために設けられている。このような3層構造のシート状部材(第5部分)30eは、他の部分30a~30dよりも2層の絶縁層50bの分だけ厚みがあり、柔軟性が低下している。
【0039】
図4A~
図5に示すように、シート状部材30eは、コネクタ部41の表面41aからコネクタ部41と隣接するコンポーネント部43の表面43cの一部までを覆うように設置される。シート状部材30eがコネクタ部41だけでなく、コンポーネント部43までを覆うように設置されるのは主に次の理由による。先ず、コネクタ部41とコンポーネント部43との間の隙間Cはカメラモジュール34の小型化のために非常に狭い。隙間Cは例えば1mm程度である。従って、シート状部材30eは、コネクタ部41のみを覆うことは難しい。一方で、シート状部材30eは、コネクタ部41との間にノイズ等の通り道となる隙間が形成されることを防ぐ必要がある。そのためシート状部材30eは、コネクタ部41と共にコンポーネント部43までを覆うように設置し、コネクタ部41の周囲に隙間が形成されることを可能な限り抑制している。
【0040】
図4B~
図6に示すように、電子機器10は、シート状部材30eを上から押さえ、フレキシブル基板47をコネクタ46に対して押し付ける押さえ部材52を備えることもできる。押さえ部材52はコネクタ46とフレキシブル基板47との接続が外れることを防止するための部材である。押さえ部材52は、例えば樹脂や金属で形成された棒状部材である。本実施形態の押さえ部材52は樹脂棒である。押さえ部材52は筐体部材20の内面24aから起立したボス部の上面にねじ52aで締結され、X2方向に突出している。これにより押さえ部材52はコネクタ部41をシート状部材30eの上からZ2側へと押さえ込むことができる。
【0041】
図5に示すように、コネクタ部41の表面41aとコンポーネント部43の表面43cとの間には段差Dが形成されている。具体的には、基板40の表面からコンポーネント部43の表面43cまでの高さは、基板40の表面からコネクタ部41の表面41aまでの高さよりも高い。
【0042】
カメラモジュール34は、例えば解像度が720×480ピクセル程度から1920×1200ピクセル程度のUSBビデオクラス(UBC:USB Video Class)に対応する場合と、これより高解像度の4K対応の場合とで、コンポーネント部43,44やレンズ部42の高さが異なる。コンポーネント部43の高さやレンズ部42の高さは製品メーカーによっても異なる。一方、コネクタ部41は所定の接続規格に準拠した薄型のコネクタ46で構成でき、解像度や製造メーカーが違っても共通の高さのものを用いることができる。このため表面41a,43c間には段差Dが形成されることになる。なお、カメラモジュール34の各構成要素の配置は適宜変更してもよい。例えばコネクタ部41の隣にレンズ部42が配置されてもよい。
【0043】
ここで、上記した段差Dを考慮せず、後述する孔部54を持たないシート状部材30eで表面41a,43cを覆った構成を検討した実験結果を説明する。この場合は、
図7に示すように、シート状部材30eが段差Dによって表面41a,43c間の隙間Cの上方(Z1側)でテントのようにZ1側に突っ張ることが分かった。特にシート状部材30eは上記した3層構造を有する。従って、シート状部材30eは、導電性シート30の他の部分30a~30dよりも厚みがあり、柔軟性が低い。従って、シート状部材30eは段差Dに追従することが一層難しく、隙間Cの上方で一層テント状に突っ張り易くなっている。このため、この構成では、隙間Cを跨ぐ部分で膨らんだシート状部材30eとコネクタ部41の周囲との間に大きな隙間Gが発生し、隙間Gがノイズ等の通り道となる懸念があることが分かった。さらに、突っ張ったシート状部材30eが押さえ部材52をZ1側に押圧して変形させることも分かった。この場合、押さえ部材52は、コネクタ部41の押付作用を喪失するばかりか、ベゼル部材21に干渉して剥がしてしまう懸念もある。
【0044】
そこで、本実施形態のシート状部材30eは、表面41a,43c間で突っ張ることを抑制するための孔部54を有する。
【0045】
図3~
図6に示すように、孔部54は、シート状部材30eのX方向で中央付近に設けられ、Y方向に延びた長孔である。孔部54は、一部が隙間Cと上下(Z方向)にオーバーラップする位置に設けられている。孔部54は隙間Cを跨ぐ部分でシート状部材30eを実質的にX方向に2分割できる必要がある。X1側の部分30e1はコネクタ部41を覆う部分である。X2側の部分30e2はコンポーネント部43の一部を覆う部分である。なお、部分30e1,30e2は例えば両面粘着テープで表面41a,43cに固定される。
【0046】
これによりシート状部材30eは、Z方向で下側の部分30e1が上側の部分30e2に引っ張られてテント状にZ1側に突っ張ることが抑制される。このためシート状部材30eはコネクタ部41の表面41a及びその周辺部を隙間なく確実に覆うことができる。
【0047】
より具体的には、孔部54は、X1側の側縁部54aがコネクタ部41のX2側側面よりもX2側に張り出した位置にあることが好ましい(
図4B及び
図5参照)。これによりシート状部材30eは、X1側の部分30e1で一層確実にコネクタ部41の表面41a及びその周辺部を覆うことができる。なお、X2側の側縁部54bはコンポーネント部43のX1側側面よりもX2側に引っ込んだ位置となる。
【0048】
孔部54は、Y1側の端部54cがコネクタ46の上面46aよりもZ1側に位置していることが好ましい(
図6参照)。換言すれば、コネクタ46と立壁25の壁面25aとの間には孔部54が配置されていないことが好ましい。これは、コネクタ46のY1側にシールド層50aを確実に配置し、コネクタ46に対するシールド性能を高めるためである。端部54cは、シールド性能の観点では、フレキシブル基板47も含めたコネクタ部41の表面41aよりもZ1側に位置していることが一層好ましい。但し、フレキシブル基板47の表面は絶縁材で覆われているため、コネクタ46のような電磁波シールドは必須ではない。このため端部54cは少なくともコネクタ46の上面46aよりもZ1側に位置していればよい。そうするとシート状部材30eは、孔部54による段差Dの吸収性能を担保しつつ、コネクタ46のシールド性能が一層向上する。
【0049】
孔部54のY2側の端部54dは、孔部54による段差Dの吸収性能を邪魔しない位置にあればよい。端部54dは、例えばコネクタ部41のY2側側面よりもY2側に位置していればよい(
図6参照)。
【0050】
孔部54の大きさは限定されない。本実施形態の場合、シート状部材30eのX方向の幅が例えば15mm程度であり、孔部54のX方向の幅が例えば1mm~3mm程度、本実施形態では2mmである。またシート状部材30eは、シールド性能のためにコネクタ部41を覆う部分30e1のX方向の幅が部分30e2の幅よりも多少大きくすることが好ましい。例えば部分30e1のX方向の幅が7.5mm程度であり、部分30e2のX方向の幅は5mm程度である。
【0051】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、カメラモジュール34のコネクタ部41の表面41aから段差Dがある隙間Cを跨いでカメラモジュール34の他の部品、例えばコンポーネント部43の表面43cまでを覆うように設けられた電磁波シールド用のシート状部材30eを備える。シート状部材30eは隙間Cと上下にオーバーラップする位置に孔部54を有する。従って、電子機器10は、シート状部材30eがコネクタ部41と、これと隣接する他の部品(コンポーネント部43)との間でテント状に突っ張ることが抑制される。このためシート状部材30eは、コネクタ部41をより隙間なく覆うことができ、カメラモジュール34でのシールド性を確保できる。換言すれば電子機器10は、カメラモジュール34の解像度や製品メーカー違いによってシート状部材30eを使い分ける必要がなく、部品コストを抑制できる。
【0052】
しかもシート状部材30eは、周囲がシールド層50aで囲まれた孔部54によって段差Dに追従する構成としている。すなわち段差Dに追従させるため、シート状部材30eは、例えば第1部分30aとの連接部とは反対側の縁部(
図4B中のY2側縁部)からY1方向へと切り込みを形成し、部分30e1,30e2を形成することも考えられる。ところがこの場合はシート状部材30eのY2側縁部でシールド層50aが分断され、この部分がノイズの通り道となる懸念がある。特にこのようにシールド層50aが分断されていると、工場での組立時に作業者が切り込みから部分30e1,30e2をスカート状に開いて固定してしまう可能性もあり、シールド性が一層低下する。この点、本実施形態のシート状部材30eは、孔部54の両端部54c,54dの外側にそれぞれ左右の部分30e1,30e2を繋ぐブリッジ部30e3,30e4を有する。このためシート状部材30eは部分30e1,30e2のシールド層50aが相互に繋がり、一層高いシールド性能が得られる。
【0053】
特に、カメラモジュール34は、基板40の一面から他の部品(コンポーネント部43)の表面43cまでの高さが基板40の一面からコネクタ部41の表面41aまでの高さよりも高い。このため、カメラモジュール34は、シート状部材30eとコネクタ部41との間に
図7に示すような隙間Gを一層生じ易くなっている。この点、当該電子機器10は、シート状部材30eに孔部54を設けたことで、隣接する他の部品よりも高さが低いコネクタ部41を一層確実にシールドすることが可能である。
【0054】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10 電子機器
11 第1筐体
18 ディスプレイパネル
20 筐体部材
21 ベゼル部材
25 立壁
30 導電性シート
30e 第5部分(シート状部材)
34 カメラモジュール
36b,47 フレキシブル基板
40 基板
41 コネクタ部
42 レンズ部
43,44 コンポーネント部
46 コネクタ
52 押さえ部材
54 孔部
【要約】
【課題】カメラモジュールでのシールド性を確保することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、カメラモジュールを搭載した電子機器であって、前記カメラモジュールは、基板と、前記基板に実装されたコネクタ部と、前記基板に実装されると共に、前記コネクタ部と隙間をあけて隣接し、その表面と前記コネクタ部の表面との間に段差が形成される部品と、を有し、前記コネクタ部の表面から前記隙間を跨いで前記部品の表面までを覆うように設けられた電磁波シールド用のシート状部材を備え、前記シート状部材は、前記隙間と上下にオーバーラップする位置に孔部を有する。
【選択図】
図4B