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特許7538941車両の制御装置、車両の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】車両の制御装置、車両の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20240815BHJP
【FI】
F16H61/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023503748
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007484
(87)【国際公開番号】W WO2022186024
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2021035861
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村住 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田坂 創
(72)【発明者】
【氏名】岩堂 圭介
(72)【発明者】
【氏名】床井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】大石 裕二
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-084742(JP,A)
【文献】特開2017-227297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を駆動する第1駆動源によって駆動される第1オイルポンプと、第2駆動源によって駆動される第2オイルポンプと、を有する自動変速機を備えた車両を制御する制御装置であって、
前記第1駆動源を始動したときと、前記第1駆動源の始動後に前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときと、に前記第2オイルポンプを駆動させ、
前記第1駆動源を始動したときの前記第2オイルポンプの駆動時間は、前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が前記所定時間以上続いたときの駆動時間よりも長い、
車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置であって、
前記第1駆動源は、エンジンである、
車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の制御装置であって、
前記第2駆動源は、モータである、
車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両の制御装置であって、
前記第1駆動源を始動したときの前記第2オイルポンプの駆動中に、前記第2オイルポンプの状態診断を実行する、
車両の制御装置。
【請求項5】
駆動輪を駆動する第1駆動源によって駆動される第1オイルポンプと、第2駆動源によって駆動される第2オイルポンプと、を有する自動変速機を備えた車両を制御する制御方法であって、
前記第1駆動源を始動したときと、前記第1駆動源の始動後に前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときと、に前記第2オイルポンプを駆動させ、
前記第1駆動源を始動したときの前記第2オイルポンプの駆動時間は、前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が前記所定時間以上続いたときの駆動時間よりも長い、
車両の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の制御方法であって、
前記第1駆動源を始動したときの前記第2オイルポンプの駆動中に、前記第2オイルポンプの状態診断を実行する、
車両の制御方法。
【請求項7】
駆動輪を駆動する第1駆動源によって駆動される第1オイルポンプと、第2駆動源によって駆動される第2オイルポンプと、を有する自動変速機を備えた車両のコンピュータが実行可能なプログラムであって、
前記第1駆動源を始動したときと、前記第1駆動源の始動後に前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときと、に前記第2オイルポンプを駆動させる手順を前記コンピュータに実行させ、
前記第1駆動源を始動したときの前記第2オイルポンプの駆動時間は、前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が前記所定時間以上続いたときの駆動時間よりも長い、
プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムであって、
前記第1駆動源を始動したときの前記第2オイルポンプの駆動中に、前記第2オイルポンプの状態診断を実行する手順、
を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置、車両の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定時間毎に電動オイルポンプの異常判定を実行し、異常発生の回数が所定回数を超えると電動オイルポンプに故障が発生したと判定するハイブリッド車両用自動変速機の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/140696号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電動オイルポンプの状態診断を所定時間毎に実行すると、電動オイルポンプの駆動要求がない状態でも電動オイルポンプを駆動することになり、運転者に違和感を与える可能性がある。これに対して、電動オイルポンプを駆動したタイミングで状態診断を実行することが考えられるが、その場合は、駆動要求がないと状態診断を実行できない。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、運転者に与える違和感を低減しつつ電動オイルポンプの状態診断を実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、駆動輪を駆動する第1駆動源によって駆動される第1オイルポンプと、第2駆動源によって駆動される第2オイルポンプと、を有する自動変速機を備えた車両を制御する制御装置であって、前記第1駆動源を始動したときと、前記第1駆動源の始動後に前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときと、に前記第2オイルポンプを駆動させ、前記第1駆動源を始動したときの前記第2オイルポンプの駆動時間は、前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が前記所定時間以上続いたときの駆動時間よりも長い、車両の制御装置が提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、駆動輪を駆動する第1駆動源によって駆動される第1オイルポンプと、第2駆動源によって駆動される第2オイルポンプと、を有する自動変速機を備えた車両を制御する制御装置であって、前記第1駆動源を始動したときと、前記第1駆動源の始動後に前記第2オイルポンプが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときと、に前記第2オイルポンプを駆動させ、前記第1駆動源を始動したときの前記第2オイルポンプの駆動中に、前記第2オイルポンプの状態診断を実行する、車両の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様では、第1駆動源を始動したときの第2オイルポンプの駆動中に、第2オイルポンプの状態診断を実行し、且つ、完了させることができる。また、第1駆動源を始動したときに第2オイルポンプの状態診断を実行することで、その後に第2オイルポンプの状態診断を実行する必要がなくなる。そのため、第2オイルポンプが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときの第2オイルポンプの駆動時間を、第2オイルポンプの状態診断を実行するために長くする必要がなく、第2オイルポンプを駆動した際に運転者に与える違和感を低減できる。よって、これらの態様によれば、運転者に与える違和感を低減しつつ電動オイルポンプの状態診断を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る制御装置を備える車両の概略構成図である。
図2図2は、第1エア抜き処理の内容を示すフローチャートである。
図3図3は、電動オイルポンプが正常判定される様子を示すタイムチャートである。
図4図4は、電動オイルポンプが異常判定される様子を示すタイムチャートである。
図5図5は、電動オイルポンプの状態診断が中止される様子を示すタイムチャートである。
図6図6は、第2エア抜き処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、車両100の概略構成図である。車両100は、第1駆動源としてのエンジンENGと、トルクコンバータTCと、前後進切替機構SWMと、バリエータVAと、制御装置としてのコントローラ2と、を備える。車両100では、自動変速機TMがトルクコンバータTCと、前後進切替機構SWMと、バリエータVAと、を有するベルト無段変速機とされる。
【0012】
エンジンENGは、車両100の駆動源を構成する。エンジンENGは、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンである。エンジンENGの動力は、トルクコンバータTC、前後進切替機構SWM、バリエータVAを介して駆動輪DWへと伝達される。換言すれば、トルクコンバータTC、前後進切替機構SWM、バリエータVAは、エンジンENGと駆動輪DWとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。
【0013】
トルクコンバータTCは、流体を介して動力を伝達する。トルクコンバータTCでは、ロックアップクラッチLUを締結することで、動力伝達効率が高められる。
【0014】
前後進切替機構SWMは、エンジンENGとバリエータVAとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。前後進切替機構SWMは、入力される回転の回転方向を切り替えることで車両100の前後進を切り替える。前後進切替機構SWMは、前進(D)レンジ選択の際に係合される前進クラッチFWD/Cと、リバース(R)レンジ選択の際に係合される後進ブレーキREV/Bと、を備える。前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bを解放すると、自動変速機TMがニュートラル状態、つまり動力遮断状態になる。
【0015】
バリエータVAは、プライマリプーリPRIと、セカンダリプーリSECと、プライマリプーリPRI及びセカンダリプーリSECに巻き掛けられたベルトBLTと、を有するベルト無段変速機構を構成する。プライマリプーリPRIには、プライマリプーリPRIの油圧であるプライマリプーリ圧が、セカンダリプーリSECには、セカンダリプーリSECの油圧であるセカンダリプーリ圧が、後述する油圧制御回路1からそれぞれ供給される。
【0016】
自動変速機TMは、第1オイルポンプとしてのメカニカルオイルポンプMPと、第2オイルポンプとしての電動オイルポンプEPと、第2駆動源としてのモータMと、メカニカルオイルポンプMPの吐出口側に設けられたチェックバルブ40と、電動オイルポンプEPの吐出口側に設けられたチェックバルブ50と、をさらに有して構成される。メカニカルオイルポンプMPは、ストレーナ61及び油路62を介してリザーバ(オイルパン)70から作動油を吸い上げて油圧制御回路1に作動油を圧送する。メカニカルオイルポンプMPは、エンジンENGの動力によって駆動される。電動オイルポンプEPは、モータMの動力によって駆動される。電動オイルポンプEPは、メカニカルオイルポンプMPとともに、或いは単独で駆動され、ストレーナ63及び油路64を介してリザーバ70から作動油を吸い上げて油圧制御回路1に作動油を圧送する。電動オイルポンプEPは、メカニカルオイルポンプMPに対して補助的に設けられる。電動オイルポンプEPはモータMを有して構成されると把握されてもよい。チェックバルブ40は、メカニカルオイルポンプMPから油圧制御回路1へ向かう作動油の流れを許容し、逆流を防止する。チェックバルブ50は、電動オイルポンプEPから油圧制御回路1へ向かう作動油の流れを許容し、逆流を防止する。
【0017】
自動変速機TMは、油圧制御回路1をさらに備える。油圧制御回路1は、複数の流路、複数の油圧制御弁で構成され、メカニカルオイルポンプMPや電動オイルポンプEPから供給される作動油の圧力を調圧して自動変速機TMの各部位に供給する。
【0018】
コントローラ2は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ2は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の処理を行う。コントローラ2は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。具体的には、コントローラ2は、自動変速機TMを制御するATCU、シフトレンジを制御するSCU、エンジンENGを制御するECU、等によって構成することもできる。
【0019】
コントローラ2は、各種センサ等から入力される信号に基づき、エンジンENG、油圧制御回路1、モータM等の動作を制御する。油圧制御回路1は、コントローラ2からの指示に基づき、ロックアップクラッチLU、前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B、プライマリプーリPRI、セカンダリプーリSEC等の油圧制御を行う。
【0020】
ところで、車両100は、イグニッション電源がOFFの状態では、メカニカルオイルポンプMP及び電動オイルポンプEPが作動しない。そのため、例えば、車両100が自宅の駐車場で長時間駐車された場合等は、自動変速機TM内の油路等から作動油が抜け落ちてしまう。
【0021】
ここで、車両100を走行させる際は、エンジンENGを作動させるので、エンジンENGによってメカニカルオイルポンプMPが駆動されて各部に作動油が充填される。しかしながら、上述したように、電動オイルポンプEPと油圧制御回路1との間にはチェックバルブ50が設けられるので、チェックバルブ50よりも電動オイルポンプEP側の油路には作動油が充填されない。そのため、電動オイルポンプEPの駆動要求があった場合に、電動オイルポンプEPから油圧制御回路1への作動油の供給に遅れが生じる可能性がある。
【0022】
これに対して、エンジンENGを始動したときに、電動オイルポンプEPを駆動させてチェックバルブ50よりも電動オイルポンプEP側の油路(チェックバルブ50よりも上流側の油路)に作動油を充填するエア抜き処理を実行することが考えられる。しかしながら、エア抜き処理を実行しても、その後に電動オイルポンプEPが駆動されていない状態が続くと、チェックバルブ50よりも電動オイルポンプEP側の油路から作動油が抜け落ちてしまう。
【0023】
そこで、本実施形態のコントローラ2は、エンジンENGを始動したときと、エンジンENGの始動後に電動オイルポンプEPが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときとに、電動オイルポンプEPを駆動させてチェックバルブ50よりも電動オイルポンプEP側の油路に作動油を充填するエア抜き処理を実行する。
【0024】
なお、アイドルストップを実行してエンジンENGを再始動する場合は、エンジンENGを始動してすぐに走行を開始することが多い。そのため、アイドルストップを実行してエンジンENGを再始動する場合には、イグニッション電源がONになって最初のエンジンENGの始動時と同様の電動オイルポンプEPのエア抜き処理は行わない。すなわち、本実施形態において、「エンジンENGを始動する」とは、車両100のイグニッション電源がONになってから最初にエンジンENGを始動することであり、アイドルストップを実行してエンジンENGを再始動することは、「エンジンENGを始動する」ことには含まれない。
【0025】
また、本実施形態のコントローラ2は、エンジンENGを始動したときのエア抜き処理を実行する際に、電動オイルポンプEPが駆動されることを利用して電動オイルポンプEPの状態診断を実行する。
【0026】
以下、エンジンENGを始動したときのエア抜き処理(以下、第1エア抜き処理という。)について、電動オイルポンプEPの状態診断と併せて説明する。図2は、第1エア抜き処理の内容を示すフローチャートである。
【0027】
ステップS11では、コントローラ2は、エンジンENGが始動されたか判定する。
【0028】
コントローラ2は、エンジンENGが始動されたと判定すると、処理をステップS12に進める。また、コントローラ2は、エンジンENGが始動されていないと判定すると、ステップS11の処理を繰り返す。
【0029】
ステップS12では、コントローラ2は、エア抜き開始条件が成立したか判定する。
【0030】
コントローラ2は、エア抜き開始条件が成立したと判定すると、処理をステップS13に進める。また、コントローラ2は、エア抜き開始条件が成立していないと判定すると、ステップS12の処理を繰り返す。
【0031】
ステップS13では、コントローラ2は、電動オイルポンプEPの状態診断を開始する。具体的には、コントローラ2は、電動オイルポンプEPの状態診断のうちの、正常診断と、異常診断の一部と、を開始する。
【0032】
ステップS14では、コントローラ2は、モータMを制御して電動オイルポンプEPを駆動させる。具体的には、コントローラ2は、第1エア抜き処理における電動オイルポンプEPの指示回転速度(第1指示回転速度TNp1)と、電動オイルポンプEPの状態診断における電動オイルポンプEPの指示回転速度(第2指示回転速度TNp2)と、のうちいずれか高い方に基づいてモータMを制御する。第1指示回転速度TNp1及び第2指示回転速度TNp2は、車両100の諸元や実験結果に基づいて予め設定される。第1指示回転速度TNp1及び第2指示回転速度TNp2は、油温等に基づいて補正してもよい。以下では、最終的にモータMの制御に用いられる指示回転速度を制御指示回転速度TNpcという。
【0033】
ステップS15では、コントローラ2は、エア抜きが完了したか判定する。具体的には、コントローラ2は、電動オイルポンプEPの駆動を開始してからの回転回数が所定回転回数以上になると、エア抜きが完了したと判定する。
【0034】
チェックバルブ50よりも電動オイルポンプEP側の油路に作動油を充填するために必要な電動オイルポンプEPの回転回数は、設計的に定まる。つまり、所定回転回数は、電動オイルポンプEPの回転回数が所定回転回数以上になった場合に、チェックバルブ50よりも電動オイルポンプEP側の油路に作動油が充填される値とされる。本実施形態では、所定回転回数は、電動オイルポンプEPの上流側の油路64及びリザーバ70から作動油を吸い上げるストレーナ63内における油面よりも上方の空間に作動油が充填されるように予め設定される。所定回転回数は、一般的な車両では30回~40回程度である。また、電動オイルポンプEPの駆動を開始してからエア抜きが完了するまでの時間は、1[sec]程度である。
【0035】
コントローラ2は、エア抜きが完了したと判定すると、処理をステップS16に進める。また、コントローラ2は、エア抜きが完了していないと判定すると、ステップS15の処理を繰り返す。
【0036】
ステップS16では、コントローラ2は、電動オイルポンプEPの状態診断のうちの異常診断を開始する。具体的には、コントローラ2は、ステップS13で開始された異常診断以外の異常診断を開始する。なお、ステップS16以降は、コントローラ2は、第2指示回転速度TNp2に基づいてモータMを制御する。つまり、ステップS16以降は、第2指示回転速度TNp2が制御指示回転速度TNpcとなる。
【0037】
ステップS17では、コントローラ2は、電動オイルポンプEPが異常か判定する。コントローラ2は、例えば、以下の条件(a)(b)のいずれか1つが成立した場合に、電動オイルポンプEPが異常であると判定する。
【0038】
(a)電動オイルポンプEPの実回転速度Npと制御指示回転速度TNpcとの差回転が所定値よりも大きい状態が所定判定時間以上続いた。
(b)モータMの消費電流値Imが所定電流値Isよりも低い状態が所定判定時間以上続いた。
【0039】
なお、電動オイルポンプEPの異常診断を、エア抜き開始条件が成立(ステップS12)すると開始する条件(a)の場合と、エア抜きが完了(ステップS15)すると開始する条件(b)の場合と、に分けているのは、条件(a)の異常を早く判定するためと、条件(b)について誤判定することを防止するためである。
【0040】
コントローラ2は、電動オイルポンプEPが異常であると判定すると、処理をステップS20に進める。また、コントローラ2は、電動オイルポンプEPが異常でないと判定すると、処理をステップS18に進める。
【0041】
ステップS20では、コントローラ2は、モータMを制御して電動オイルポンプEPを停止させる。
【0042】
ステップS18では、コントローラ2は、電動オイルポンプEPが正常か判定する。コントローラ2は、例えば、以下の条件(c)(d)がいずれも成立した場合に、電動オイルポンプEPが正常であると判定する。
【0043】
(c)電動オイルポンプEPの実回転速度Npと制御指示回転速度TNpcとの差回転が所定値以下の状態が所定判定時間以上続いた。
(d)モータMの消費電流値Imが所定電流値Is以上の状態が所定判定時間以上続いた。
【0044】
条件(a)(c)における各所定値は、車両100の諸元や実験結果に基づいて予め設定される。各所定値は、例えば、数十~数百[rpm]であって、同じ値である。また、条件(a)~(d)における各所定判定時間は、車両100の諸元や実験結果に基づいて予め設定される。各所定判定時間は、例えば、1~2[sec]であって、全て同じ時間としてもよいし、それぞれ異なる時間としてもよい。
【0045】
コントローラ2は、電動オイルポンプEPが正常であると判定すると、処理をステップS20に進める。また、コントローラ2は、電動オイルポンプEPが正常でないと判定すると、処理をステップS19に進める。
【0046】
ステップS19では、コントローラ2は、エア抜きが完了(ステップS15)してから所定診断時間が経過したか判定する。
【0047】
コントローラ2は、エア抜きが完了してから所定診断時間が経過したと判定すると、処理をステップS20に進める。また、コントローラ2は、エア抜きが完了してから所定診断時間が経過していないと判定すると、処理をステップS17に戻す。
【0048】
正常判定と異常判定とのいずれも確定しない状態でいつまでも電動オイルポンプEPを駆動させていると、運転者に違和感を与える可能性がある。よって、コントローラ2は、エア抜きが完了してから所定診断時間が経過すると、状態診断を中止して電動オイルポンプEPを停止させる。所定診断時間は、例えば、3~5[sec]である。
【0049】
続いて、図3図5を参照しながら、電動オイルポンプEPの状態診断について詳しく説明する。図3は、電動オイルポンプEPが正常判定される様子を示すタイムチャートである。図4は、電動オイルポンプEPが異常判定される様子を示すタイムチャートである。図5は、電動オイルポンプEPの状態診断が中止される様子を示すタイムチャートである。なお、図3図5は、実回転速度Npと制御指示回転速度TNpcとの差回転に基づいて電動オイルポンプEPの状態診断を実行する場合を例示したものである。
【0050】
まず、図3を参照しながら、電動オイルポンプEPが正常判定される様子について説明する。
【0051】
時刻t11でエア抜き開始条件が成立すると、エア抜き要求フラグがONになって第1指示回転速度TNp1が上昇する。また、正常診断が開始されて第2指示回転速度TNp2が上昇する。
【0052】
これにより、第1指示回転速度TNp1と第2指示回転速度TNp2とのうちいずれか高い方(制御指示回転速度TNpc)に基づいてモータMが制御され、電動オイルポンプEPの実回転速度Npが上昇する。なお、図3図5では、第1指示回転速度TNp1と第2指示回転速度TNp2とが同じ値である。
【0053】
また、実回転速度Npと制御指示回転速度TNpcとの差回転が所定値以下になることで、正常判定タイマのカウントが開始される。
【0054】
時刻t12でエア抜きが完了すると、エア抜き要求フラグがOFFになって第1指示回転速度TNp1がゼロになる。よって、その後は、第2指示回転速度TNp2が制御指示回転速度TNpcとなる。
【0055】
また、エア抜き要求フラグがOFFになると、エア抜き終了フラグがONになる。エア抜き終了フラグがONになると、診断タイマのカウントが開始される。
【0056】
時刻t13で正常判定タイマが所定判定時間に到達すると、正常判定フラグがONになる。これにより、正常判定が確定する。正常判定フラグは、イグニッション電源がOFFになるまで維持される。
【0057】
また、正常判定が確定すると、エア抜き終了フラグがOFFになって診断タイマがリセットされるとともに、第2指示回転速度TNp2がゼロになって実回転速度Npがゼロになる。
【0058】
次に、図4を参照しながら、電動オイルポンプEPが異常判定される様子について説明する。なお、時刻t22までの様子は、図2における時刻t12までの様子と同様であるので、説明を省略する。
【0059】
時刻t23で実回転速度Npと制御指示回転速度TNpcとの差回転が所定値よりも大きくなることで、正常判定タイマがリセットされるとともに異常判定タイマのカウントが開始される。
【0060】
時刻t24で異常判定タイマが所定判定時間に到達すると、異常判定フラグがONになる。これにより、異常判定が確定する。異常判定フラグは、イグニッション電源がOFFになるまで維持される。
【0061】
また、異常判定が確定すると、エア抜き終了フラグがOFFになって診断タイマがリセットされるとともに、第2指示回転速度TNp2がゼロになって実回転速度Npがゼロになる。
【0062】
次に、図5を参照しながら、電動オイルポンプEPの状態診断が中止される様子について説明する。なお、時刻t33までの様子は、図4における時刻t23までの様子と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
時刻t34で実回転速度Npと制御指示回転速度TNpcとの差回転が所定値以下になることで、異常判定タイマがリセットされるとともに正常判定タイマのカウントが開始される。
【0064】
図5の例では、その後も実回転速度Npが安定せず、時刻t35で正常判定タイマがリセットされるとともに異常判定タイマのカウントが開始され、時刻t36で異常判定タイマがリセットされるとともに正常判定タイマのカウントが開始される。
【0065】
時刻t37で診断タイマが所定診断時間に到達すると、状態診断中止フラグがONになる。これにより、状態診断が中止される。状態診断中止フラグは、イグニッション電源がOFFになるまで維持される。
【0066】
また、状態診断が中止されると、エア抜き終了フラグがOFFになるとともに、第2指示回転速度TNp2がゼロになって実回転速度Npがゼロになる。また、正常判定タイマのカウントがリセットされる。状態診断が中止されたタイミングで異常判定タイマがカウント中であれば、異常判定タイマのカウントがリセットされる。
【0067】
続いて、図6を参照しながら、エンジンENGの始動後に電動オイルポンプEPが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときのエア抜き処理(以下、第2エア抜き処理という。)について説明する。図6は、第2エア抜き処理の内容を示すフローチャートである。
【0068】
ステップS21では、コントローラ2は、エア抜き開始条件が成立したか判定する。具体的には、コントローラ2は、エンジンENGの始動後に電動オイルポンプEPが駆動されていない時間が所定時間以上続くと、エア抜き開始条件が成立したと判定する。所定時間は、例えば、数十[min]である。
【0069】
コントローラ2は、エア抜き開始条件が成立したと判定すると、処理をステップS22に進める。また、コントローラ2は、エア抜き開始条件が成立していないと判定すると、ステップS21の処理を繰り返す。
【0070】
ステップS22では、コントローラ2は、モータMを制御して電動オイルポンプEPを駆動させる。具体的には、コントローラ2は、第2エア抜き処理における電動オイルポンプEPの指示回転速度(第3指示回転速度TNp3)に基づいてモータMを制御する。第3指示回転速度TNp3は、車両100の諸元や実験結果に基づいて予め設定される。第3指示回転速度TNp3は、油温等に基づいて補正してもよい。
【0071】
ステップS23では、コントローラ2は、エア抜きが完了したか判定する。ステップS23の具体的な処理内容は、図2に示す第1エア抜き処理のステップS15と同様である。
【0072】
コントローラ2は、エア抜きが完了したと判定すると、処理をステップS24に進める。また、コントローラ2は、エア抜きが完了していないと判定すると、ステップS23の処理を繰り返す。
【0073】
ステップS24では、コントローラ2は、モータMを制御して電動オイルポンプEPを停止させる。
【0074】
このように、第2エア抜き処理においては、エア抜きが完了すると、速やかに電動オイルポンプEPが停止される。
【0075】
第1エア抜き処理においては、電動オイルポンプEPの状態診断を併せて実行するので、状態診断を完了するまで電動オイルポンプEPの駆動時間を長くしている。換言すると、第1エア抜き処理では、電動オイルポンプEPの駆動時間を長くすることで、電動オイルポンプEPの駆動中に、電動オイルポンプEPの状態診断を実行し、且つ、完了させることができるようにしている。
【0076】
一方、第2エア抜き処理においては、電動オイルポンプEPの状態診断を行う必要がないので、第1エア抜き処理と比べて、電動オイルポンプEPの駆動時間を短くすることができる。そのため、駆動要求がない状態で電動オイルポンプEPを駆動することで運転者に与える違和感を低減できる。
【0077】
電動オイルポンプEPの駆動時間についてより詳しく説明すると、第1指示回転速度TNp1、第2指示回転速度TNp2、及び第3指示回転速度TNp3の設定は、第2エア抜き処理における電動オイルポンプEPの駆動時間よりも、第1エア抜き処理における電動オイルポンプEPの最短駆動時間のほうが長くなるように設定されている。第1エア抜き処理における電動オイルポンプEPの最短駆動時間は、電動オイルポンプEPが最短で正常判定される場合の電動オイルポンプEPの駆動時間である。ただし、運転者のシフト操作などによって、シフトレンジが非走行レンジ(例えば、駐車(P)レンジ)から走行レンジ(例えば、Dレンジ)に変更された場合などは、運転者の走行要求に応えるために、エア抜き処理や状態診断を中断してシフトレンジを制御する。そのため、第1エア抜き処理における電動オイルポンプEPの最短駆動時間よりも駆動時間が短くなる場合がある。
【0078】
以上のように構成されたコントローラ2の主な作用効果についてまとめて説明する。
【0079】
(1)(2)(3)(5)(7)駆動輪DWを駆動する第1駆動源によって駆動されるメカニカルオイルポンプMPと、第2駆動源によって駆動される電動オイルポンプEPと、を有する自動変速機TMを備えた車両100を制御するコントローラ2は、第1駆動源を始動したときと、第1駆動源の始動後に電動オイルポンプEPが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときと、に電動オイルポンプEPを駆動させ、第1駆動源を始動したときの電動オイルポンプEPの駆動時間は、電動オイルポンプEPが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときの駆動時間よりも長い。本実施形態では、第1駆動源は、エンジンENGである。また、第2駆動源は、モータMである。
【0080】
これによれば、第1駆動源を始動したときの電動オイルポンプEPの駆動時間が、電動オイルポンプEPが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときの駆動時間よりも長い。そのため、第1駆動源を始動したときの電動オイルポンプEPの駆動中に、電動オイルポンプEPの状態診断を実行し、且つ、完了させることができる。また、第1駆動源を始動したときに電動オイルポンプEPの状態診断を実行することで、その後に電動オイルポンプEPの状態診断を実行する必要がなくなる。そのため、電動オイルポンプEPが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときの電動オイルポンプEPの駆動時間を、電動オイルポンプEPの状態診断を実行するために長くする必要がなく、電動オイルポンプEPを駆動した際に運転者に与える違和感を低減できる。よって、これによれば、運転者に与える違和感を低減しつつ電動オイルポンプEPの状態診断を実行できる。
【0081】
(4)(6)(8)コントローラ2は、第1駆動源を始動したときの電動オイルポンプEPの駆動中に、電動オイルポンプEPの状態診断を実行する。
【0082】
これによれば、第1駆動源を始動したときの電動オイルポンプEPの駆動中に、電動オイルポンプEPの状態診断を実行し、且つ、完了させることができる。また、第1駆動源を始動したときに電動オイルポンプEPの状態診断を実行することで、その後に電動オイルポンプEPの状態診断を実行する必要がなくなる。そのため、第1駆動源の始動後に電動オイルポンプEPが駆動されていない時間が所定時間以上続いたときの電動オイルポンプEPの駆動時間を、電動オイルポンプEPの状態診断を実行するために長くする必要がなく、電動オイルポンプEPを駆動した際に運転者に与える違和感を低減できる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0084】
例えば、上記実施形態では、電動オイルポンプEPの吐出口側にチェックバルブ50が設けられた場合について説明した。しかしながら、電動オイルポンプEPよりもリザーバ70側にチェックバルブ50が設けられてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、コントローラ2が、第1エア抜き処理における電動オイルポンプEPの指示回転速度(第1指示回転速度TNp1)と、電動オイルポンプEPの状態診断における電動オイルポンプEPの指示回転速度(第2指示回転速度TNp2)と、のうちいずれか高い方に基づいてモータMを制御する場合について説明した。しかしながら、コントローラ2は、エア抜きが完了したと判定して電動オイルポンプEPの異常診断を開始する場合に、第1エア抜き処理における電動オイルポンプEPの指示回転速度(第1指示回転速度TNp1)を継続してもよい。これにより、エア抜き処理と状態診断とを同じ回転速度で実施できるので、運転者に与える違和感を低減することができる。
【0086】
コントローラ2が実行する各種プログラムは、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体に記憶されたものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0087】
100 車両
2 コントローラ(制御装置、コンピュータ)
TM 自動変速機
ENG エンジン(第1駆動源)
MP メカニカルオイルポンプ(第1オイルポンプ)
EP 電動オイルポンプ(第2オイルポンプ)
M モータ(第2駆動源)
DW 駆動輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6