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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3225 20160101AFI20240815BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240815BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240815BHJP
   H10K 59/35 20230101ALI20240815BHJP
   H10K 59/80 20230101ALI20240815BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G09G3/3225
G09G3/20 612A
G09G3/20 642C
G09G3/20 680F
H10K59/12
H10K59/35
H10K59/80
G09F9/30 365
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023518562
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2021017430
(87)【国際公開番号】W WO2022234629
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】上野 雅史
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-60483(JP,A)
【文献】特開2011-60482(JP,A)
【文献】特開2007-248800(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105023935(CN,A)
【文献】特開2011-221070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
H10K 59/12
H10K 59/35
H10K 59/80
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を備え、各画素が、第1色の光を発する発光層を含む、第1サブ画素及び第2サブ画素、第2色の光を発する発光層を含む第3サブ画素、並びに第3色の光を発する発光層を含む第4サブ画素を有する表示パネルと、
前記第1サブ画素及び前記第3サブ画素に電流を供給する第1電源と、
前記第2サブ画素及び前記第4サブ画素に電流を供給する第2電源と、
各画素に対する入力信号を受けて、前記第1サブ画素に対応する第1信号、及び前記第2サブ画素に対応する第2信号を生成する信号処理回路と、
を備え
前記信号処理回路は、
前記複数の画素に含まれる前記第3サブ画素に前記第1電源が供給すべき電流量よりも、前記複数の画素に含まれる前記第4サブ画素に前記第2電源が供給すべき電流量の方が大きい場合、前記複数の画素に含まれる前記第1サブ画素に供給される電流量よりも、前記複数の画素に含まれる前記第2サブ画素に供給される電流量の方が小さくなるように前記第1信号及び前記第2信号を生成する表示装置。
【請求項2】
前記第1サブ画素及び前記第3サブ画素は、前記表示パネルの第1層に平面状に配置されており、
前記第2サブ画素及び前記第4サブ画素は、前記表示パネルの第2層に平面状に配置されており、
前記表示パネルの第1層と前記第2層とは、前記表示パネルの正面から見て重畳して配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1サブ画素は、前記第2サブ画素と重畳して配置されており、前記第3サブ画素は、前記第4サブ画素と重畳して配置されている、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素は、前記表示パネルにおける同一平面に配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記信号処理回路は、前記の場合に、前記第2信号の階調値を前記第1信号の階調値以下とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記信号処理回路は、
前記入力信号と前記第1色のサブ画素に供給すべき電流量との関係、前記入力信号と前記第2色のサブ画素に供給すべき電流量との関係、及び、前記入力信号と前記第3色のサブ画素に供給すべき電流量との関係を示すルックアップテーブルを参照して、
前記第1色のサブ画素に供給すべき電流値の、前記複数の画素の平均である第1平均値と、前記第2色のサブ画素に供給すべき電流値の、前記複数の画素の平均である第2平均値と、前記第3色のサブ画素に供給すべき電流値の、前記複数の画素の平均である第3平均値とを算出し、
前記第1色のサブ画素に供給すべき電流量および前記第1~第3平均値に基づいて、前記第1信号及び前記第2信号を生成する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記信号処理回路は、各画素の表示パネル上の位置に応じて、参照するルックアップテーブルを切り替える、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記信号処理回路は、前記ルックアップテーブルを参照して算出した電流値に、各画素の表示パネル上の位置に応じた補正係数を乗じることにより、前記第1信号及び前記第2信号を生成する、請求項6に記載の表示装置。
【請求項9】
前記信号処理回路は、前記入力信号のあるフレームに関する前記第1平均値、前記第2平均値および前記第3平均値に基づいて、前記あるフレームより後のフレームに対して、前記第1信号および前記第2信号を生成する、請求項6に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1色のサブ画素に供給する電流量のうち前記第1サブ画素に供給する電流量の比率を分配率として、
前記信号処理回路は、前記入力信号のあるフレームにおける分配率から前記あるフレームの次のフレームにおける分配率への変化量を所定量以下に制限する、請求項6に記載の表示装置。
【請求項11】
前記信号処理回路は、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素のうち、背面側に位置するサブ画素の方が、同じ入力階調値に対して出力電流が大きいものとして、前記第1信号および前記第2信号を生成する、請求項2に記載の表示装置。
【請求項12】
前記信号処理回路は、前記入力信号と前記第1サブ画素に供給すべき電流量との関係を示すルックアップテーブル、および前記入力信号と前記第2サブ画素に供給すべき電流量との関係を示すルックアップテーブルを参照して、前記第1信号および前記第2信号を生成する、請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記信号処理回路は、
前記入力信号と前記第1サブ画素に供給すべき電流量との関係を示すルックアップテーブルを参照して前記第1信号を生成し、
前記ルックアップテーブルを参照して得られた電流値に所定の係数を乗じた値を用いて前記第2信号を生成する、
請求項11に記載の表示装置。
【請求項14】
前記信号処理回路は、前記第1信号と前記第2信号を異なる値にする、請求項1~4までの何れか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、格子状に配置された電極を用いて各画素を制御するアクティブマトリクス方式によって駆動するTFT液晶が広く普及している。また、発光素子を有し、バックライトが不要なOLED(Organic light Emitting Diode)ディスプレイが知られている。特許文献1では、透光性に優れた中間電極を設けることで、各発光色を独立に制御可能とした有機エレクトロルミネッセンス素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2014/178282A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、表示パネルにおいて高輝度を出力するために、表示パネルに流れる電流が大きくなるほど、電圧降下の一種であるIRドロップの影響が大きくなり輝度低下が生じやすくなる。また、各色の発光層へ供給される電流量が異なる場合、色味ずれを引き起こす可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、表示パネルにおいて、IRドロップによる輝度低下及び色味ずれの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る表示装置は、複数の画素を備え、各画素が、第1色の光を発する発光層を含む、第1サブ画素及び第2サブ画素、第2色の光を発する発光層を含む第3サブ画素、並びに第3色の光を発する発光層を含む第4サブ画素を有する表示パネルと、前記第1サブ画素及び前記第3サブ画素に電流を供給する第1電源と、前記第2サブ画素及び前記第4サブ画素に電流を供給する第2電源と、各画素に対する入力信号を受けて、前記第1サブ画素に対応する第1信号、及び前記第2サブ画素に対応する第2信号を生成する信号処理回路と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、表示パネルにおいて、IRドロップによる輝度低下及び色味ずれの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る表示装置の機能ブロック図である。
図2】表示パネルの基板上に実装された画素を例示する概念図である。
図3】表示パネルが備える基板の回路図の一例である。
図4】既存の表示パネルにおいて各色の入力階調値と、当該入力階調値に対応する出力電流との関係例を示すグラフである。
図5】既存の表示パネルの表示画面例を示す図である。
図6】IRドロップによる出力輝度の低下の一例を示すグラフである。
図7】入力階調値と、出力電流との関係例を示すグラフである。
図8】各色の入力階調値と、当該入力階調値に対応する出力電流との関係例を示すグラフである。
図9】信号処理回路の処理手順例を示すフローチャートである。
図10】実施形態1の変形例1に係る表示パネルの基板上に実装された画素を示す概念図である。
図11】実施形態1の変形例2に係る表示パネルの基板上に実装された画素を示す概念図である。
図12】実施形態2に係る表示パネルにおいて、B1画素及びB2画素の入力階調値と、当該入力階調値に対応する出力電流との関係例を示すグラフである。
図13】実施形態3に係る表示パネルにおいて、入力階調値と、当該入力階調値に対応する出力電流であって、画面の各位置のR画素に供給される出力電流との関係例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態においては、画素において特定色のサブ画素を複数設けることにより、IRドロップによる輝度低下及び色味ずれの発生を抑制可能な表示装置について説明する。
【0010】
〔1.表示装置の構成例〕
本実施形態に係る表示装置について説明する。図1は、本実施形態に係る表示装置1の機能ブロック図である。表示装置1は、入力された画像信号に対応する画面を表示するディスプレイであって、表示パネル10、第1電源3、第2電源5、及び信号処理回路7を備えている。
【0011】
表示パネル10は、信号処理回路7から供給された信号に基づいて、画面上に動画像又はテキスト等を表示する。図2は、表示パネル10の基板上に実装された画素12を例示する概念図である。図2においては、単一の画素12を図示しているが、表示パネル10は、マトリクス状に配置された複数の画素12を備えている。各画素12は、図示しない前記基板上のソースドライバを介して供給されるソース信号、及び前記基板上のゲートドライバを介して供給されるゲート信号によって制御される。
【0012】
図1及び図2に示すように、画素12は、第1サブ画素14、第2サブ画素15、第3サブ画素16、及び第4サブ画素17を有している。第1サブ画素14及び第2サブ画素15は、第1色である青色の光を発する発光層を含んでいる。即ち、画素12は、目的とする階調値の青色の光を、複数のサブ画素に分けて発する。また、第3サブ画素16は、第2色である緑色の光を発する発光層を含んでおり、第4サブ画素17は、第3色である赤色の光を発する発光層を含んでいる。ここで、第1色は、サブ画素が発する光の原色のうち、サブ画素における消費電力が最も大きい原色に対応する。
【0013】
以下の説明においては、表示パネル10が備える画素及び各サブ画素の部材番号を、簡略化のため省略することもある。また、以下の説明においては、第1サブ画素をB1画素と呼称し、第2サブ画素をB2サブ画素と呼称することもある。また、第3サブ画素をG画素と呼称し、第4サブ画素をR画素と呼称することもある。また、B1画素とB2画素とを特に区別しない場合、その一方又は双方を単にB画素と呼称することもある。なお、各サブ画素と、発する光の色との組み合わせは前述したものに限定されない。
【0014】
第1電源3は、B1画素及びG画素に電流を供給する。換言すれば、B1画素及びG画素は、第1電源3から供給される電流によって発光する。第2電源5は、B2及びR画素に電流を供給する。換言すれば、B2画素及びR画素は、第2電源5から供給される電流によって発光する。
【0015】
図2の例において、B1画素及びG画素は、表示パネル10の第1層(上層)に平面状に配置されており、B2画素及びR画素は、表示パネル10の第2層(下層)に平面状に配置されている。図2の画素12上方に図示する矢印は、表示パネル10の前方方向を示しており、以降の図においても同様である。表示パネル10の第1層は、第2層よりも表示パネル10の前面側に配置されており、第1層と第2層とは、表示パネル10の正面から見て重畳して配置されている。加えて、B1画素は、B2画素と重畳して配置されており、G画素は、R画素と重畳して配置されている。これにより、B1画素の表面からは、B1画素からの光に加え、B2画素からの光が発される。また、G画素の表面からは、G画素からの光に加え、R画素からの光が発される。
【0016】
信号処理回路7は、表示装置1の外部等からの画像信号の入力に応答して、B1画素(第1サブ画素)に対応する第1信号、B2画素(第2サブ画素)に対応する第2信号、G画素(第3サブ画素)に対応する第3信号、及びR画素(第4サブ画素)に対応する第4信号を生成する。ここで、第1~第4信号とは、各第1~第4サブ画素が発光する階調値をそれぞれ規定する信号である。別の側面から言えば、第1~第4信号は、各第1~第4サブ画素に供給される電流量を規定する。信号処理回路7は、生成した各信号を表示パネル10のドライバに供給することによって、各画素の発光を制御する。なお、信号処理回路7は、表示パネル10が備える構成であってもよい。
【0017】
図3は、表示パネル10が備える基板の回路図の一例である。図3において、画素回路20が、B1画素とG画素とを有する第1層に対応し、画素回路21が、B2画素とR画素とを有する第2層に対応する。
【0018】
また、各色の複数のサブ画素は、ELVDD(ハイレベル電源電圧)とELVSS(ローレベル電源電圧)との間に配置される。図3のELVDD1は、第1電源3に対応し、ELVDD2は、第2電源5に対応する。各サブ画素は、データ信号線及び走査線に接続された選択TFT(Thin Film Transistor)23と、保持容量24と、電流供給線に接続された駆動TFT25と、ダイオード26とを備えている。第1サブ画素の発光ダイオード26は、青色光を発する発光層を含み、第2サブ画素の発光ダイオード26は、青色光を発する発光層を含み、第3サブ画素の発光ダイオード26は、緑色光を発する発光層を含み、第4サブ画素の発光ダイオード26は、赤色光を発する発光層を含む。なお、電源とは異なり、ソースドライバに接続されたデータ信号線と、ゲートドライバに接続された走査線とは、第1層と第2層とに共通して接続されていてもよい。
【0019】
表示パネル10が備える基板は、ゲートドライバからの信号に同期してソースドライバから各画素へのデータ信号(電圧)を書き込み、駆動TFTによってELVDD1及びELVDD2からの電流量を制御して1フレームの期間における電力供給を維持する。
【0020】
以下、信号処理回路7が各信号を生成する処理の前提となる、表示パネルの電流特性等ついて、既存の表示パネルを例に挙げて説明する。図4は、既存の表示パネルにおいて、各色の入力階調値と、当該入力階調値に対応する出力電流との関係例を示すグラフである。図4のグラフにおいて、横軸は、画像信号に対応する256段階の入力階調値を示しており、縦軸は、単一のサブ画素に供給される電流量である出力電流の値を示している。また、前記出力電流の値は、信号処理回路7に相当する回路が、当該回路自身が保存するLUT(Look Up Table)を参照して決定し得る。ここで、前記LUTは、表示パネルの輝度設定に応じたものが参照される。また、後述する各LUTにおいても同様である。通常、青色の発光層の消費電力は、他の色の発光層の消費電力よりも大きい。図4の例において、同一の入力階調値では、青色のサブ画素において必要な電流が、他の色のサブ画素において必要な電流の約1.8倍となっている。これは、同じ出力電流をサブ画素に供給したとしても、対象が青色のサブ画素である場合、他の色のサブ画素よりも低い階調値でしか発光しないことを意味している。
【0021】
青色のサブ画素において必要な電流が大きいことが一因となって、表示パネル全体における消費電力の増加、温度上昇、又は経時劣化等が生じる虞がある。また、表示パネルの消費電力が大きくなることによって、IRドロップによる画面の輝度低下及び輝度変動が生じやすくなる。
【0022】
図5は、既存の表示パネルの表示画面例を示す図である。図5において「255」とは、入力階調値が各原色について最大の255であること、即ち高輝度の白色が表示されていることを示している。また、画面31の方が画面30よりも白色が表示されている領域の面積及び消費電力が大きく、IRドロップの発生量が多い。
【0023】
前記の場合、図5に示すように、同じ階調値であっても、画面の明るさを示す出力輝度が、白色の領域において画面30よりも画面31の方が低くなり得る。
【0024】
図6は、IRドロップによる出力輝度の低下の一例を示すグラフである。図6のグラフにおいて、横軸は、画面全体に対して白色が表示された領域の割合を示している。また、白色が表示されていない領域は、図5の画面同様に、各原色について階調値が0の黒い背景が表示されているものとする。縦軸は、入力階調値に対応する出力輝度比を示している。例えばCV(入力階調値)=128のグラフにおいて、白色が表示された領域の割合が100%の場合、出力輝度比は約90%であるが、これは、階調値128の白色の90%の出力輝度で画面が表示されることを示している。また、CV=255のグラフにおいては、白色が表示された領域の割合が50%の場合、出力輝度比は約80%であるが、これは、階調値255の白色の80%の出力輝度で画面が表示されることを示している。図6に示すように、白色の階調値が大きい程、且つ白色が表示された領域の面積が大きい程、IRドロップの影響が大きくなり、出力輝度比が低下する。
【0025】
図7は、図6と同様の表示パネルにおいて、入力階調値と、出力電流との関係例を示すグラフである。図7のグラフにおいて、横軸は、256段階の白色の入力階調値を示している。縦軸は、最大の入力階調値255の白色に対応する出力電流値を1とした場合の正規化した出力電流値を示している。また、図7に対応する表示パネルのガンマ値は、約2.2に調整されている。入力階調値が128である場合、入力階調値が255である場合に比べて、出力電流及び出力輝度は、約1/4となる。図6及び図7に示すように、入力階調値128の白色が画面の100%の領域に表示される場合の出力電流値と、入力階調値255の白色が画面の25%の領域に表示される場合の出力電流値とが同程度となるため、出力輝度値も同程度に約90%となる。
【0026】
また、表示パネルに任意の表示画像が表示された場合のIRドロップによる出力輝度の低下度合は、入力階調値(或いは出力電流値)と表示面積(或いは画素数)との積の合計によって推定することができる。ただし、サブ画素の色ごとに必要な電流が異なるため、IRドロップによる影響も色ごとに異なり得る。また、表示パネル全体の消費電力が大きい程、IRドロップの影響が大きく、出力輝度の低下度合も大きくなる。
【0027】
以上、表示パネル10の電流特性等ついて、既存の表示パネルを例に挙げて説明した。続いて、本開示に係る表示パネル10において、信号処理回路7が、B1画素及びB2画素に供給すべき出力電流をどのように配分し、どのように第1信号及び第2信号を生成するかについて説明する。
【0028】
図8は、図4に対応するグラフであって、B1画素とB2画素とに配分する電流量の一例を示している。
【0029】
信号処理回路7は、R画素及びG画素については、各画素が備えるサブ画素が単数であるため、入力階調値に対応する出力電流値をそのまま設定する。一方で、信号処理回路7は、B画素については、R画素及びG画素に供給する出力電流値に応じて、B1画素とB2画素とに供給する出力電流値を調整する。
【0030】
別の側面から言えば、信号処理回路7は、複数の画素に含まれるG画素に第1電源3が供給すべき電流量と、複数の画素に含まれるR画素に第2電源5が供給すべき電流量とに応じて、第1信号及び第2信号を生成してもよい。信号処理回路7は、例えば画面全体に任意の色が表示される場合等に、第1層に供給される電流量と、第2層に供給される電流量とが均等になるように、第1信号及び第2信号を生成してもよい。
【0031】
例えばシアン色(R,G,B:0,255,255)が画面に表示される場合、第1層のG画素において電流が消費され、第2層のR画素においては消費されない。前記の場合、信号処理回路7は、第2層のB2画素に対して、第1層のB1画素に対してよりも多くの電流が供給されるように設定する。
【0032】
青色の入力階調値255に対応する出力電流が580nAであるとすると、信号処理回路7は、B1画素とB2画素とに供給する電流量の合計が580nAになるように設定する。ここで、信号処理回路7がB1画素とB2画素とに供給する電流量は互いに異なり得る。別の側面から言えば、信号処理回路7は、B1画素が発光する階調値(第1信号の階調値)と、B2画素が発光する階調値(第2信号の階調値)とが互いに異なる値になるように、第1信号と第2信号とを生成し得る。つまり、信号処理回路7は、第1信号と第2信号とを異なる値にしてもよい。
【0033】
信号処理回路7は、例えば以下の式により、B1画素に供給する電流量を140nAに設定する。以下の式において、300(nA)とは、緑色の入力階調値255に対応する出力電流値である。図8に示すように、B1画素に供給される電流量140nAは、青色の入力階調値112に対応する。
B1: (580-300)/2=140
また、信号処理回路7は、例えば以下の式により、B2画素に供給される電流量を440nAに設定する。前記電流量は、図8に示すように、青色の入力階調値222に対応する。したがって、B1画素及びB2画素は、少なくとも或る程度は高階調の出力が可能なことが望ましい。
B2: 300+(580-300)/2=440
これにより、単一の画素について、第1層に供給される電流量と、第2層に供給される電流量とは、共に440nAとなる。
【0034】
他の色の例として、マゼンタ色(R,G,B:255,0,255)が画面に表示される場合、信号処理回路7は、例えば以下の式により、B1画素とB2画素とに供給する電流量をそれぞれ450nAと130nAとに設定する。以下の式において、320(nA)とは、赤色の入力階調値255に対応する出力電流値である。
B1: 320+(580-320)/2=450
B2: (580-320)/2=130
前記の場合、単一の画素について第1層に供給される電流量と、第2層に供給される電流量とは、共に450nAとなる。
【0035】
また、白色(R,G,B:255,255,255)が画面に表示される場合、信号処理回路7は、例えば以下の式により、B1画素とB2画素とに供給する電流量をそれぞれ300nAと280nAとに設定する。
B1: 320+(580-320-300)/2=300
B2: 300+(580-320-300)/2=280
前記の場合、単一の画素について第1層に供給される電流量と、第2層に供給される電流量とは、共に600nAとなる。
【0036】
〔2.表示装置の処理例〕
上記では、例えば画面全体に任意の色が表示される場合の、信号処理回路7の処理の例を説明した。しかしながら、例えば自然画のように様々な色を含む画像を画面に表示する場合は、より厳密な処理を行うことが好ましい。そこで以下では、本開示に係る表示装置1が備える信号処理回路7が、画像信号の入力に応答して、第1~第4信号を生成する処理手順の一例について説明する。図9は、信号処理回路7の処理手順例を示すフローチャートである。
【0037】
ステップS101において、信号処理回路7は、第3信号及び第4信号を生成する。例えば、信号処理回路7は、各色の入力階調値と、対応するサブ画素の画素電極に印可する電圧との関係を示すLUTを参照して、入力された画像信号に対応する電圧値であって、各G画素及び各R画素の画素電極に印可する電圧値を含む第3信号及び第4信号を生成する。なお、本ステップS101の処理は、S102以降の処理と並行してなされてもよいし、ステップS104の処理に続いてなされてもよい。
【0038】
ステップS102において、信号処理回路7は、入力された画像信号に対応する出力電流値であって、表示パネル10が備えるR画素、G画素及びB画素へ供給すべき出力電流値を、例えば図4に対応するLUTを参照してそれぞれ算出する。なお、本ステップS102において算出する出力電流値は、図7を参照して上述したような正規化した値であってもよい。
【0039】
ステップS103において、信号処理回路7は、画面全体のサブ画素へ供給すべき出力電流値の平均を、サブ画素の色毎にそれぞれ算出する。
【0040】
信号処理回路7は、画面全体のR画素に供給すべき電流値の平均であるRAve、画面全体のG画素に供給すべき電流値の平均であるGAve、及び画面全体のB画素に供給すべき電流値の平均であるBAveを算出する。前記RAveは、本開示における第3平均値の一例であり、前記GAveは、本開示における第2平均値の一例である。また、前記BAveは、本開示における第1平均値の一例である。
【0041】
なお、全てのサブ画素へ供給される出力電流値を厳密に用いることは必須ではなく、例えば水平ライン単位で平均した値を全ライン分計算して、画面全体についての電流量の平均値を算出してもよい。
【0042】
ステップS104において、信号処理回路7は、各B1画素及び各B2画素に供給する電流量のそれぞれを、例えば以下の式によって算出する。以下の式において、Binは、対象となる画素においてB画素に供給する電流量を示している。B1rateは、Binに対する、B1画素に供給する電流量の分配率を示している。また、B1outは、対象となる画素においてB1画素に供給される電流量を示しており、B2outは、対象となる画素においてB2画素に供給される電流量を示している。
B1rate=(RAve-GAve)/2*BAve+0.5 (0≦B1rate≦1)
B1out=Bin*B1rate
B2out=Bin-B1out
また、信号処理回路7は、前記のB1rateが、0に満たない値であれば0にクリップし、1を超える値であれば1にクリップする。ここで、B1rateの値が0に満たない場合、B画素のうち、B2画素のみを発光させてB1画素を発光させないものとしても第1層の消費電流が第2層の消費電流を上回ることを意味する。また、B1rateの値が1を超える場合、B画素のうち、B1画素のみを発光させてB2画素を発光させないものとしても第2層の消費電流が第1層の消費電流を上回ることを意味する。このように、画像信号によっては、一部の画素において第1層と第2層とに供給される電流を均等にできない場合も生じ得る。
【0043】
例えばマゼンタ色(R,G,B:255,0,255)が画面に表示される場合に対して前述の式を算出すると、B1rate等の値は、以下の通りとなる。また、画面全体において青色の階調値が255となるので、上述した例を適用すると、Bin=BAve=580(nA)となる。
B1rate=(320-0)/(2*580)+0.5=0.776
B1out=580*0.776=450(nA)
B2out=580-450=130(nA)
また、白色(R,G,B:255,255,255)が画面に表示される場合に対して前述の式を適用すると、B1rate等の値は、以下の通りとなる。また、画面全体において緑色の階調値が255となるので、上述した例を適用すると、GAve=300(nA)となる。
B1rate=(320-300)/(2*580)+0.5=0.517
B1out=580*0.517=300(nA)
B2out=580-300=280(nA)
ステップS105において、信号処理回路7は、入力された画像信号に対応する、各B1画素及び各B2画素に供給する電流値に応じた電圧値であって、各B1画素及び各B2画素の画素電極に印可する電圧値を含む第1信号及び第2信号を生成する。また、本ステップS105の処理において信号処理回路7は、例えば図8に対応するLUTを参照して電流値に対応する入力階調値を算出し、続いて各色の入力階調値と、電圧値との関係を示すLUTを参照して、前述の電圧値を算出してもよい。或いは、信号処理回路7は、電流値と電圧値との関係を示す単一のLUTを参照してもよい。
【0044】
信号処理回路7が生成した第1~第4信号は、表示パネル10のドライバに供給されて、各画素を発光させる制御に用いられる。
【0045】
即ち、本例の信号処理回路7は、ステップS102~S105において以下の処理を実行する。
【0046】
(1)入力信号と第1色のサブ画素に供給すべき電流量との関係、入力信号と第2色のサブ画素に供給すべき電流量との関係、及び、入力信号と第3色のサブ画素に供給すべき電流量との関係を示すLUTを参照する。これにより、第1色のサブ画素に供給すべき電流値の、複数の画素の平均である第1平均値と、第2色のサブ画素に供給すべき電流値の、複数の画素の平均である第2平均値と、第3色のサブ画素に供給すべき電流値の、前記複数の画素の平均である第3平均値とを算出する。
【0047】
(2)第1色のサブ画素に供給すべき電流量および第1~第3平均値に基づいて、第1信号及び第2信号を生成する。
【0048】
本例において前述した方法においては、画面全体のサブ画素へ供給される電流量の平均値RAve等を、サブ画素の色毎にそれぞれ算出するため、1フレーム分のデータをメモリし、各画素についての演算を行うことを要する。そのため、少なくとも表示パネル10において1フレーム分の遅延が発生する。ただし、信号処理回路7は、前後のフレームにおいて大きな映像変化が無いものとして、画面全体のサブ画素に供給する電流量の過去のフレームの平均値を用いてもよい。換言すれば、信号処理回路7は、入力信号のあるフレームに関する第1平均値、第2平均値および第3平均値に基づいて、前記あるフレームより後のフレームに対して、第1信号および第2信号を生成してもよい。
【0049】
なお、信号処理回路7は、サブ画素へ供給する電流量の平均値RAve等を画面全体について求めてからB1画素に供給する電流量の分配率を算出する構成に限定されない。信号処理回路7は、例えば1~数ライン単位で平均値を算出して前記分配率を算出してもよいし、画素単位でB1画素及びB2画素に供給する電流量を算出してもよい。ただし、表示パネル10の画面全体において、第1層と第2層とに供給される電流量に差が生じ得るため、可能であれば前記RAve等を画面全体について求めてから前記分配率を算出することが望ましい。
【0050】
つまり信号処理回路7は、複数の画素に含まれるG画素に第1電源3が供給すべき電流量よりも、複数の画素に含まれるR画素に第2電源5が供給すべき電流量の方が大きい場合、複数の画素に含まれるB1画素に供給される電流量よりも、複数の画素に含まれるB2画素に供給される電流量の方が小さくなるように第1信号及び第2信号を生成することが望ましい。信号処理回路7は、前記の場合に、第2信号の階調値を第1信号の階調値以下としてもよい。
【0051】
また、信号処理回路7は、複数の画素に含まれるG画素に第1電源3が供給すべき電流量よりも、複数の画素に含まれるR画素に第2電源5が供給すべき電流量の方が小さい場合、複数の画素に含まれるB1画素に供給される電流量よりも、複数の画素に含まれるB2画素に供給される電流量の方が大きくなるように第1信号及び第2信号を生成することが望ましい。信号処理回路7は、前記の場合に、第2信号の階調値を第1信号の階調値以上としてもよい。
【0052】
また、前記分配率を厳密に毎フレーム更新すると、B画素における出力輝度の揺れが生じる可能性があるため、例えば前後のフレームにおける分配率の変動量に上下限を設定し、分配率を時間方向に滑らかに変動させる構成であってもよい。即ち、B画素に供給する電流量のうちB1画素に供給する電流量の比率を分配率として、信号処理回路7は、前記入力信号のあるフレームにおける分配率から前記あるフレームの次のフレームにおける分配率への変化量を所定量以下に制限してもよい。
【0053】
本実施形態の構成によれば、各画素において第1色に対応するサブ画素を複数設けた上で、別々の電源から電流を各サブ画素に供給することにより、IRドロップの発生を抑制できる。また、前記サブ画素へ供給する電流の分配率を調整することにより、色味ずれの発生を抑制することが可能となる。
【0054】
〔実施形態1の変形例1〕
続いて、実施形態1の第1の変形例について説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、重複する説明を繰り返さない。また、以降の変形例及び実施形態においても同様である。
【0055】
実施形態1においては、B1画素とB2画素とが重畳して配置されており、G画素とR画素とが重畳して配置される構成について説明したが、前記構成には限定されない。図10は、本変形例に係る表示パネル10の基板上に実装された画素を示す概念図である。
【0056】
仮に、G画素において必要な電流が、B画素及びR画素よりも大きい場合、画素36に示すように、G画素を複数のサブ画素38及び39として実現する構成としてもよい。前記構成の場合、緑色が本開示における第1色に相当する。
【0057】
また、同色のサブ画素同士が重畳することは必須ではなく、画素41に示すように、第1色のサブ画素が、異なる色に重畳する構成であってもよい。
【0058】
また、発光層にQLED(Quantum dot Light Emitting Diode)を用いる場合、他のサブ画素からの出力光による励起発光の影響を考慮する。例えばB画素からの出力光によってR画素の発光層において励起発光が生じる場合、B画素を第1層に配置し、R画素を第2層に配置することが望ましい。
【0059】
〔実施形態1の変形例2〕
続いて、実施形態1の第2の変形例について説明する。画素が備える各サブ画素は、互いに重畳して配置されることを必ずしも要しない。即ち、第1サブ画素、第2サブ画素、第3サブ画素及び第4サブ画素は、表示パネル10における同一平面に配置されていてもよい。図11は、本変形例に係る表示パネル10の基板上に実装された画素を示す概念図である。
【0060】
画素43は、各サブ画素が横並びに配置された構成例を示している。また、画素48は、各サブ画素が縦横に配置された構成例を示している。ここで、画素43の領域45及び画素48の領域50は、図2の画素12における第1層に相当し、画素43の領域46及び画素48の領域51は、画素12における第2層に相当する。即ち、画素43及び画素48の各構成において、第1色の青色のサブ画素は、別々の電源から電流を供給される。また、各サブ画素の面積は、均等であることに限定されず、互いに異なっていてもよい。本変形例の構成によれば、他のサブ画素からの出力光による励起発光の影響を、より抑制することが可能となる。
【0061】
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態について、以下に説明する。本実施形態においては、上述した表示パネル10の第1層と第2層とにおいて第1色の発光層の特性が互いに異なる場合の制御について説明する。また、上記実施形態と共通する事項については、重複する説明を繰り返さない。
【0062】
上述した表示パネル10の第1層の透過率が、実質的に100%でない場合、背面側に位置する第2層のサブ画素からの出力光の一部が遮光されることとなるため、第2層のサブ画素へ供給される出力電流を大きくする調整を行うことが望ましい。一態様として、第2層のサブ画素の厚み又は面積を、第1層のサブ画素よりも大きくする調整等が挙げられる。
【0063】
図12は、本実施形態に係る表示パネル10において、B1画素及びB2画素の入力階調値と、当該入力階調値に対応する出力電流との関係例を示すグラフである。図12に示すように、同じ入力階調値であっても第2層のB2画素に供給される出力電流の方が、第1層のB1画素に供給される出力電流よりも大きい値となる。これは、信号処理回路7が、B1画素及びB2画素のうち、背面側に位置するB2画素の方が、同じ入力階調値に対して出力電流が大きいものとして、第1信号および第2信号を生成することを示している。
【0064】
本実施形態に係る信号処理回路7は、実施形態1において上述したステップS104に相当する処理において、各B1画素及び各B2画素に供給する電流量のそれぞれを、例えば以下の式によって算出する。また、ステップS104以外のステップにおいては、実施形態1と同様の処理が実行される。以下の式において、B2kは、B2画素に対して、B1画素の何倍の出力電流が供給されるかを示す電流補正係数を示している。ここで、B2kは、第1層の透過率が低い程、大きい値となる。
【0065】
B1inは、上述したBinに相当する値であって、表示パネル10の第1層の透過率が、実質的に100%であると仮定した場合において、対象となる画素においてB画素に供給される電流量を示している。また、B2inは、B1inに対して、B2kを乗じて補正した値を示している。即ちB2inは、B1画素も第1層の透過率に応じて出力光の一部が遮光されると仮定した場合において、対象となる画素においてB画素に供給される電流量を示している。なお、信号処理回路7は、B1inおよびB2inの値を、図12に対応するLUTを参照して算出してもよい。換言すると、信号処理回路7は、入力信号とB1画素に供給すべき電流量との関係を示すLUT、および入力信号とB2画素に供給すべき電流量との関係を示すLUTを参照して、第1信号および第2信号を生成してもよい。或いは信号処理回路7は、B1inに係数B2kを乗じてB2inの値を算出してもよい。また、逆に、信号処理回路7は、B2inに所定の係数を乗じてB1inを算出しても良い。換言すると、信号処理回路7は、入力信号とB1画素に供給すべき電流量との関係を示すLUTを参照して第1信号を生成し、前記LUTを参照して得られた電流値に所定の係数を乗じた値を用いて第2信号を生成してもよい。
【0066】
B1rateは、B1inに対する、B1画素に供給される電流量の分配率を示しており、B2rateは、B2inに対する、B2画素に供給される電流の分配率を示している。
B1rate=(RAve-GAve)/(1+Bk2)*BAve+(B2k/(1+B2k)) (0≦B1rate≦1)
B2rate=1-B1rate
B1out=B1in*B1rate
B2out=B2in*B2rate
例えば白色(R,G,B:255,255,255)が画面の100%の領域に表示される場合であって、B2kの値を1.25とした場合、各サブ画素に供給される電流量は、以下の通りである。ここで、Goutは、対象となる画素においてG画素に供給される電流量を示しておりRoutは、対象となる画素においてR画素に供給される電流量を示している。また、G画素の透過率は、実質的に100%であるものとする。
B1rate=(320-300)/(2.25*580)+1.25/2.25=0.571
B1out=580*0.571=331(nA)
B2out=580*1.25*(1-0.571)=311(nA)
Gout+B1out=300+331=671(nA)
Rout=320+311=631(nA)
なお、係数B2kの値は、全ての入力階調値に対して一律であることを要せず、入力階調毎に異なる値であってもよい。例えば信号処理回路7は、入力階調値とB2kの値との関係を示すLUTを参照して、各入力階調値に対応するB2kの値を用いてもよい。
【0067】
本実施形態の構成によれば、表示パネル10の第1層と第2層とにおいて第1色の発光層の特性が互いに異なる場合であっても各サブ画素に対して供給する電流を好適に分配することができる。
【0068】
〔実施形態3〕
本発明の第3の実施形態について、以下に説明する。本実施形態においては、信号処理回路7が、各サブ画素の表示パネル10上の位置に応じて、参照するルックアップテーブルを切り替える場合の制御について説明する。また、実施形態1又は2と共通する事項については、重複する説明を繰り返さない。
【0069】
表示パネル10においては、電流供給源となる駆動ドライバから距離が離れている画素ほど、IRドロップの影響が大きくなり、出力輝度が低下する場合がある。例えば表示パネル10の下端に駆動ドライバが配置された構成の場合、画面上部に位置する画素ほど、出力輝度が低下し得る。
【0070】
図13は、本実施形態に係る表示パネル10において、入力階調値と、当該入力階調値に対応する出力電流であって、画面の各位置のR画素に供給される出力電流との関係例を示すグラフである。図13は、画面上部に位置する画素ほど、電流が流れにくくなり出力電流が低下する例を示している。
【0071】
本実施形態に係る信号処理回路7は、実施形態1において上述したステップS103に相当する処理において、入力階調値に対する出力電流が表示パネル10の領域に応じて異なるLUTを参照して、前述した出力電流値の合計を、サブ画素の色毎にそれぞれ算出する。換言すると、信号処理回路7は、前記出力電流値の合計を算出する場合に、対象となる画素の表示パネル10における位置に応じた出力電流値を用いる。また、信号処理回路7は、前記の出力電流値を用いてRAve、GAve及びBAveを算出する。
【0072】
また、信号処理回路7は、ステップS104に相当する処理において、対象となる画素においてB画素に供給する電流量であるBinが、表示パネル10の領域に応じて異なるLUTを参照して各B1画素及び各B2画素に供給する電流量を算出する。換言すると、信号処理回路7は、各B1画素に供給する電流量B1out、及び各B2画素に供給する電流量B2outを算出する場合に、対象となる画素の表示パネル10における位置に応じたBinを用いる。ここで、B1out及びB2outの算出に用いられる式自体は、以下の通り実施形態1と同様であってもよい。
B1rate=(RAve-GAve)/2*BAve+0.5 (0≦B1rate≦1)
B1out=Bin*B1rate
B2out=Bin-B1out
また、信号処理回路7は、ステップS105に相当する処理において、電流量に応じた電圧値を算出する場合にも、表示パネル10の領域に応じた電流―電圧関係を反映させて電圧値の算出を行う。信号処理回路7は、例えば図13に準ずるLUTを参照して、表示パネル10の領域に応じた電流値に対応する入力階調値を算出し、続いて各色の入力階調値と、電圧値との関係を示すLUTを参照して、前述の電圧値を算出してもよい。
【0073】
なお、信号処理回路7は、サブ画素に供給する電流量等を算出する場合において、ラインごとに参照するLUTを切り替える構成に限定されない。例えば矩形のブロックごとに出力輝度の低下度合が異なる場合、信号処理回路7は、前記ブロックごとに参照するLUTを切り替える構成であってもよい。
【0074】
また、信号処理回路7は、サブ画素に供給する電流量等を算出する場合において、表示パネル10の領域に応じて異なるLUTを参照する代わりに、基準のLUTを用いて換算した電流値に対して、パネル上の位置に応じた補正係数を用いて算出しても良い。例えば、信号処理回路7は、図13に示した画面中央のLUTを用いて換算した電流値に対し、画面位置に応じた係数として、画面上端であれば係数0.85を、画面下端であれば係数1.15を乗じて、サブ画素に供給する電流量等を算出するようにしても良い。
【0075】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る表示装置(1)は、複数の画素(12)を備え、各画素が、第1色の光を発する発光層を含む、第1サブ画素(14)及び第2サブ画素(15)、第2色の光を発する発光層を含む第3サブ画素(16)、並びに第3色の光を発する発光層を含む第4サブ画素(17)を有する表示パネル(10)と、前記第1サブ画素及び前記第3サブ画素に電流を供給する第1電源(3)と、前記第2サブ画素及び前記第4サブ画素に電流を供給する第2電源(5)と、各画素に対する入力信号を受けて、前記第1サブ画素に対応する第1信号、及び前記第2サブ画素に対応する第2信号を生成する信号処理回路(7)と、を備えている構成である。
【0076】
上記の構成によれば、表示パネルにおいて、IRドロップによる輝度低下及び色味ずれの発生を抑制できる。
【0077】
本発明の態様2に係る表示装置は、上記の態様1において、前記第1サブ画素及び前記第3サブ画素は、前記表示パネルの第1層に平面状に配置されており、前記第2サブ画素及び前記第4サブ画素は、前記表示パネルの第2層に平面状に配置されており、前記表示パネルの第1層と前記第2層とは、前記表示パネルの正面から見て重畳して配置されている構成としてもよい。
【0078】
上記の構成によれば、画素当たりの面積を小さくし、精細さを向上させることに寄与する。
【0079】
本発明の態様3に係る表示装置は、上記の態様2において、前記第1サブ画素は、前記第2サブ画素と重畳して配置されており、前記第3サブ画素は、前記第4サブ画素と重畳して配置されている構成としてもよい。
【0080】
上記の構成によれば、他のサブ画素からの出力光による励起発光の影響を、より抑制することが可能となる。
【0081】
本発明の態様4に係る表示装置は、上記の態様1において、前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素は、前記表示パネルにおける同一平面に配置されている構成としてもよい。
【0082】
上記の構成によれば、他のサブ画素からの出力光による励起発光の影響を、より抑制することが可能となる。
【0083】
本発明の態様5に係る表示装置は、上記の態様1から4までの何れかにおいて、前記信号処理回路は、前記複数の画素に含まれる前記第3サブ画素に前記第1電源が供給すべき電流量と、前記複数の画素に含まれる前記第4サブ画素に前記第2電源が供給すべき電流量とに応じて、前記第1信号及び前記第2信号を生成する構成としてもよい。
【0084】
上記の構成によれば、IRドロップによる輝度低下及び色味ずれの発生をより抑制することができる。
【0085】
本発明の態様6に係る表示装置は、上記の態様1から4までの何れかにおいて、前記信号処理回路は、前記複数の画素に含まれる前記第3サブ画素に前記第1電源が供給すべき電流量よりも、前記複数の画素に含まれる前記第4サブ画素に前記第2電源が供給すべき電流量の方が大きい場合、前記複数の画素に含まれる前記第1サブ画素に供給される電流量よりも、前記複数の画素に含まれる前記第2サブ画素に供給される電流量の方が小さくなるように前記第1信号及び前記第2信号を生成する構成としてもよい。
【0086】
上記の構成によれば、IRドロップによる輝度低下及び色味ずれの発生をより抑制することができる。
【0087】
本発明の態様7に係る表示装置は、上記の態様6において、前記信号処理回路は、前記の場合に、前記第2信号の階調値を前記第1信号の階調値以下とする構成としてもよい。
【0088】
上記の構成によれば、第1サブ画素と第2サブ画素とに供給する電流量を好適に調整することができる。
【0089】
本発明の態様8に係る表示装置は、上記の態様5~7までの何れかにおいて、前記信号処理回路は、前記入力信号と前記第1色のサブ画素に供給すべき電流量との関係、前記入力信号と前記第2色のサブ画素に供給すべき電流量との関係、及び、前記入力信号と前記第3色のサブ画素に供給すべき電流量との関係を示すルックアップテーブルを参照して、前記第1色のサブ画素に供給すべき電流値の、前記複数の画素の平均である第1平均値と、前記第2色のサブ画素に供給すべき電流値の、前記複数の画素の平均である第2平均値と、前記第3色のサブ画素に供給すべき電流値の、前記複数の画素の平均である第3平均値とを算出し、前記第1色のサブ画素に供給すべき電流量および前記第1~第3平均値に基づいて、前記第1信号及び前記第2信号を生成する構成としてもよい。
【0090】
上記の構成によれば、第1のサブ画素と第2のサブ画素とに供給する電流量を好適に調整することができる。
【0091】
本発明の態様9に係る表示装置は、上記の態様8において、前記信号処理回路は、各画素の表示パネル上の位置に応じて、参照するルックアップテーブルを切り替える構成としてもよい。
【0092】
上記の構成によれば、表示パネル上の位置に応じて出力輝度が変化する場合においてもIRドロップによる輝度低下及び色味ずれの発生を抑制できる。
【0093】
本発明の態様10に係る表示装置は、上記の態様8において、前記信号処理回路は、前記ルックアップテーブルを参照して算出した電流値に、各画素の表示パネル上の位置に応じた補正係数を乗じることにより、前記第1信号及び前記第2信号を生成する構成としてもよい。
【0094】
上記の構成によれば、より少数のルックアップテーブルでIRドロップの影響を補正することができるため、ルックアップテーブルを記憶するメモリを節約することができる。
【0095】
本発明の態様11に係る表示装置は、上記の態様8において、前記信号処理回路は、前記入力信号のあるフレームに関する前記第1平均値、前記第2平均値および前記第3平均値に基づいて、前記あるフレームより後のフレームに対して、前記第1信号および前記第2信号を生成する構成としてもよい。
【0096】
上記の構成によれば、信号処理回路における処理負荷を軽減させることに寄与する。
【0097】
本発明の態様12に係る表示装置は、上記の態様8において、前記第1色のサブ画素に供給する電流量のうち前記第1サブ画素に供給する電流量の比率を分配率として、前記信号処理回路は、前記入力信号のあるフレームにおける分配率から前記あるフレームの次のフレームにおける分配率への変化量を所定量以下に制限する構成としてもよい。
【0098】
上記の構成によれば、第1色のサブ画素において出力輝度に揺れが生じることを抑制することができる。
【0099】
本発明の態様13に係る表示装置は、上記の態様2において、前記信号処理回路は、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素のうち、背面側に位置するサブ画素の方が、同じ入力階調値に対して出力電流が大きいものとして、前記第1信号および前記第2信号を生成する構成としてもよい。
【0100】
上記の構成によれば、背面側に位置するサブ画素が発する光の一部が遮光される場合であっても、信号処理回路が第1のサブ画素および第2のサブ画素に供給する電流量を好適に算出することができる。
【0101】
本発明の態様14に係る表示装置は、上記の態様13において、前記信号処理回路は、前記入力信号と前記第1サブ画素に供給すべき電流量との関係を示すルックアップテーブル、および前記入力信号と前記第2サブ画素に供給すべき電流量との関係を示すルックアップテーブルを参照して、前記第1信号および前記第2信号を生成する構成としてもよい。
【0102】
上記の構成によれば、背面側に位置するサブ画素が発する光の一部が遮光される場合であっても、信号処理回路が第1のサブ画素および第2のサブ画素に供給する電流量を好適に算出することができる。
【0103】
本発明の態様15に係る表示装置は、上記の態様13において、前記信号処理回路は、前記入力信号と前記第1サブ画素に供給すべき電流量との関係を示すルックアップテーブルを参照して前記第1信号を生成し、前記ルックアップテーブルを参照して得られた電流値に所定の係数を乗じた値を用いて前記第2信号を生成する構成としてもよい。
【0104】
上記の構成によれば、背面側に位置するサブ画素が発する光の一部が遮光される場合であっても、より少数のルックアップテーブルでIRドロップの影響を補正することができるため、ルックアップテーブルを記憶するメモリを節約することができる。
【0105】
本発明の態様16に係る表示装置は、上記の態様1~4までの何れかにおいて、前記信号処理回路は、前記第1信号と前記第2信号を異なる値にする構成としてもよい。
【0106】
上記の構成によれば、信号処理回路は、第1のサブ画素と第2のサブ画素とに供給する電流量の比率を好適に調整することが可能となる。
【0107】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 表示装置
3 第1電源
5 第2電源
7 信号処理回路
10 表示パネル
12 画素
14 第1サブ画素
15 第2サブ画素
16 第3サブ画素
17 第4サブ画素
図1
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図5
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図13