(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】非対称特性を有する双方向サイリスタデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 29/747 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
H01L29/747
(21)【出願番号】P 2023531666
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2021082811
(87)【国際公開番号】W WO2022112322
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-07-04
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボベッキー,ヤン
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0245006(US,A1)
【文献】国際公開第2019/158594(WO,A1)
【文献】特開2003-282865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0294435(US,A1)
【文献】米国特許第05021855(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0051972(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/747
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面(21)と、前記第1の主面(21)に対向する第2の主面(22)との間で鉛直方向に延在する半導体本体(2)と、
前記第1の主面(21)上に配置された第1の主電極(31)と、前記第2の主面(22)上に配置された第2の主電極(32)と
を備える双方向サイリスタデバイス(1)であって、
前記半導体本体(2)は、第1の導電型の第1のベース層(51)と、前記第1の導電型の第2のベース層(52)と、前記第1のベース層(51)と前記第2のベース層(52)との間に配置された、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の第3のベース層(53)とを備え、
前記第1の主電極(31)は、動作条件に応じて、前記双方向サイリスタデバイス(1)の第1のサイリスタ機能要素(11)のためのカソードとして、または、前記双方向サイリスタデバイス(1)の第2の逆並列サイリスタ機能要素(12)のためのアノードとして作用することが可能であり、
前記第1の主電極(31)は、前記第2の導電型の少なくとも1つの第1のエミッタ領域(61)および前記第1の導電型の複数の第1のエミッタ短領域(71)に隣接し、
前記第2の主電極(32)は、前記第2の導電型の少なくとも1つの第2のエミッタ領域(62)および前記第1の導電型の複数の第2のエミッタ短領域(72)に隣接し、
前記第1の主面(21)における前記複数の第1のエミッタ短領域(71)の配置は、前記鉛直方向に沿って見たときに前記第2の主面(22)における前記複数の第2のエミッタ短領域(72)の配置と異なるため、前記双方向サイリスタデバイス(1)は、前記第1のサイリスタ機能要素(11)および前記第2の
逆並列サイリスタ機能要素(12)に関して非対称に構成され、
前記双方向サイリスタデバイス(1)は、
(i)前記第1の主面(21)上の第1のゲート電極(41)であって、前記第1の主電極(31)は、互いに離間された複数の第1のセグメント(310)を備え、前記第1のセグメント(310)のうちの少なくともいくつかは、前記鉛直方向に沿って見たときに前記第1のゲート電極(41)によって完全に囲まれる、第1のゲート電極(41)と、
(ii)前記第2の主面(22)上の第2のゲート電極(42)であって、前記第2の主電極(32)は、互いに離間された複数の第2のセグメント(320)を備え、前記第2のセグメント(320)のうちの少なくともいくつかは、前記鉛直方向に沿って見たときに前記第2のゲート電極(42)によって完全に囲まれる、第2のゲート電極(42)と
のうちの少なくとも一方を備える、
双方向サイリスタデバイス(1)。
【請求項2】
前記第1のベース層(51)と前記第3のベース層(53)との間のp-n接合における局所電荷キャリア再結合寿命は、前記第2のベース層(52)と前記第3のベース層(53)との間のp-n接合における局所電荷キャリア再結合寿命とは異なる、
請求項1に記載の双方向サイリスタデバイス(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの第1のエミッタ領域(61)は、前記鉛直方向に沿って見たときに第2のエミッタ短領域(72)と重なる、
請求項1または2に記載の双方向サイリスタデバイス(1)。
【請求項4】
前記第1のエミッタ短領域(71)のうちの少なくともいくつかの中心(710)は、前記鉛直方向に沿って見たときに前記複数
の第2のエミッタ短領域(72)の横に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の双方向サイリスタデバイス(1)。
【請求項5】
前記鉛直方向に沿って見たときに、前記複数の第1のエミッタ短領域(71)のうちの1つと、前記複数の第2のエミッタ短領域(72)のうちの関連する最も近いものとに対して、以下の基準、すなわち、
(i)前記第1のエミッタ短領域(71)の最大横方向範囲(E1)は、前記関連する最も近い第2のエミッタ短領域(72)の最大横方向範囲(E2)とは異なる、および
(ii)前記第1のエミッタ短領域(71)と前記複数の第1のエミッタ短領域(71)のうちのその最も近い近隣との間の中心間距離は、前記関連する最も近い第2のエミッタ短領域(72)と前記複数の第2のエミッタ短領域(72)のうちのその最も近い近隣との間の中心間距離とは異なる、
のうちの少なくとも1つが適用される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の双方向サイリスタデバイス(1)。
【請求項6】
前記第1のエミッタ短領域(71)によって形成される前記第1の主面(21)の面積の割合は、前記第2のエミッタ短領域(72)によって形成される前記第2の主面(22)の面積の割合とは異なる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の双方向サイリスタデバイス(1)。
【請求項7】
前記第1のサイリスタ機能要素(11)および前記第2の
逆並列サイリスタ機能要素(12)は、異なる電気定格を有するように構成される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の双方向サイリスタデバイス(1)。
【請求項8】
前記第1の主面(21)および前記第2の主面(22)の一方のみに、前記第1のゲート電極(41)または前記第2のゲート電極(42)の形態のゲート電極が設けられる、
請求項1から7のいずれか1項に記載の双方向サイリスタデバイス(1)。
【請求項9】
前記第1のサイリスタ機能要素(11)および前記第2の
逆並列サイリスタ機能要素(12)のうちの一方は、動作中に過負荷を引き起こす宇宙線障害または外部障害に対する保護デバイスとして構成される、
請求項8に記載の双方向サイリスタデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非対称特性を有する双方向サイリスタデバイスが規定される。
【背景技術】
【0002】
様々な用途では、従来のフレキシブル交流伝送システム(FACTS)のような費用効率の高い逆並列接続サイリスタが必要である。これらは、一般にハイブリッドマルチモジュラコンバータ(MMC)と呼ばれる高電圧直流(HVDC)伝送用の電圧源コンバータ(VSC)に基づく次世代バルブの概念にも有益である。
【0003】
双方向制御サイリスタ(BCT)は、1つのウェハ上の2つの分離された個別にトリガされる領域によって形成される2つのモノリシックに集積された逆並列サイリスタ機能によって得ることができる。しかしながら、プロセスフローは非常に複雑であり、デバイス面積に依存する電気的パラメータは半分になる。例えば、サージ電流は、フルウェハデバイスの半分であり、サイリスタの熱抵抗は、同じサイズのウェハにおける単一サイリスタの熱抵抗の2倍である。
【0004】
国際公開第2019/158594A1号は、いわゆるBiPCT概念を記載しており、デバイスは、両方の逆並列p-n-p-nセクションに対して共通のp-n-p領域を有する。この概念は、短い転流ターンオフ時間を得ることを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多くの用途は、現在別個のデバイスを使用して対処する必要がある異なる機能を有するデバイスを必要とする。
【0006】
したがって、本発明の目的は、異なる機能を提供することを可能にするデバイス概念を規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、とりわけ、請求項1に記載の双方向サイリスタデバイスによって達成される。開発および便宜は、さらなる請求項の主題である。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、双方向サイリスタデバイスは、第1の主面と、第1の主面に対向する第2の主面との間で鉛直方向に延在する半導体本体を備える。第1の主電極が第1の主面上に配置され、第2の主電極が第2の主面上に配置される。半導体本体は、第1の導電型の第1のベース層と、第1の導電型の第2のベース層と、第1のベース層と第2のベース層との間に配置された、第1の導電型とは異なる第2の導電型の第3のベース層とを備える。第1の主電極は、双方向サイリスタデバイスの第1のサイリスタ機能要素のためのカソードとして、および第2のサイリスタ機能要素のためのアノードとして作用し、双方向サイリスタデバイスは、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素に対して非対称に構成される。
【0009】
例えば、第1の主電極は、第2の導電型の少なくとも1つの第1のエミッタ領域および第1の導電型の複数の第1のエミッタ短領域に隣接し、第2の主電極は、第2の導電型の少なくとも1つの第2のエミッタ領域および第1の導電型の複数の第2のエミッタ短領域に隣接し、第1の主面における複数の第1のエミッタ短領域の配置は、鉛直方向に沿って見たときに第2の主面における複数の第2のエミッタ短領域の配置と少なくともいくつかの領域において異なるため、双方向サイリスタデバイスは、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素に関して非対称に構成される。
【0010】
例えば、双方向サイリスタデバイスは、2つの逆並列サイリスタ間の分離領域の必要性を回避するために、アノード領域とカソード領域との交互嵌合を有する同じデバイス内の2つの逆並列接続サイリスタ構造(第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素)を提供することができる。
【0011】
非対称構成を使用すると、双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの特徴的性質は、第1の主電極と第2の主電極との間の電圧の異なる極性に対して異なる。例えば、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素は、オン状態の電圧降下、サージ電流、ターンオフ時間、および技術曲線Qrr-VTのうちの少なくとも1つに関して互いに異なる。例えば、これらのパラメータのうちの少なくとも1つは、第1のサイリスタ機能要素と第2のサイリスタ機能要素との間で少なくとも10%異なる。代替的または追加的に、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素は、異なる機能を果たすように構成されてもよい。
【0012】
換言すれば、双方向サイリスタデバイスは、第1の主電極と第2の主電極との間の電圧の極性の変化に対して非対称に挙動するように意図的に構成される。
【0013】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のベース層と第3のベース層との間のp-n接合における局所電荷キャリア再結合寿命は、第2のベース層と第3のベース層との間のp-n接合における局所電荷キャリア再結合寿命とは異なる。したがって、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素は、それぞれのサイリスタ機能要素のカソードとして作用する主電極により近いベース層の間のp-n接合に近い電荷キャリア再結合寿命の局所値に関して互いに異なる。例えば、半導体本体は、電荷キャリア再結合寿命に関して、第1および第2のサイリスタ機能要素のターンオフ時間が互いに異なるように構成される。外部回路による電圧転流に応答してサイリスタが確実にオフになることができるようにするために、n型ベース層およびp型ベース層内の過剰な電荷キャリアの寿命は、p-n接合付近の電子、陽子または他のイオンの照射によって意図的に低減され得ることが分かっている。例えば、第1のベース層と第3のベース層との間のp-n接合における領域は、第2のベース層と第3のベース層との間のp-n接合における領域よりも大きい照射線量を受ける。
【0014】
例えば、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素は、電圧転流中の臨界(di/dt)critに対して異なる値を有する。この臨界値を超えると、電圧転流中のターンオフはない。この場合、ブロッキングp-n接合に近い電子正孔プラズマの濃度は、ゼロ電流レベルを横切る間に非常に高くなり、空間電荷領域(SCR)の形成が防止される。したがって、双方向サイリスタデバイスは、第1の主電極と第2の主電極との間の電圧の極性が変化した場合にオン状態のままであり得る。したがって、双方向サイリスタデバイスがその保持電流を下回った場合にのみ、ターンオフが起こり得る。
【0015】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の主電極は、第2の導電型の少なくとも1つの第1のエミッタ領域および第1の導電型の複数の第1のエミッタ短領域に隣接し、第2の主電極は、第2の導電型の少なくとも1つの第2のエミッタ領域および第1の導電型の複数の第2のエミッタ短領域に隣接する。例えば、第1の主電極は、第1のエミッタ領域を介して第1のサイリスタ機能要素のカソードとして作用し、第1のエミッタ短領域を介して第2のサイリスタ機能要素のアノードとして作用する。同様に、第2の主電極は、第2のエミッタ領域を介して第2のサイリスタ機能要素のカソードとして作用し、第2のエミッタ短領域を介して第1のサイリスタ機能要素のアノードとして作用する。換言すれば、1つのサイリスタ機能要素のカソード短領域は、同時に逆並列サイリスタ機能要素のアノード領域として作用する。
【0016】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の主面における複数の第1のエミッタ短領域の配置は、第2の主面における複数の第2のエミッタ短領域の配置と少なくともいくつかの領域において異なる。例えば、第1のエミッタ短領域の配置が第2の主面上の第2の短領域の配置と異なる第1の主面の割合は、第1の主面の面積の5%~100%になる。
【0017】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1のエミッタ領域は、鉛直方向に沿って見たときに第2のエミッタ短領域と重なる。この配置を使用して、第1のエミッタ領域と最も近い第2のエミッタ短領域との間の半導体本体内の電流経路の最小長さは、第1および第2の主面上のエミッタ短領域の完全に対称的な配置と比較して低減され得る。これは、双方向サイリスタデバイスのオン状態電圧降下を最小化するのに役立ち得る。
【0018】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のエミッタ短領域および第2のエミッタ短領域は、少なくともいくつかの領域において上面視で少なくとも1つの方向に沿って交互に配置される。例えば、第1のエミッタ短領域および第2のエミッタ短領域は、少なくともいくつかの領域において上面視で2つの方向に沿って交互に配置される。例えば、2つの方向の間の角度は、45°以上90°以下、例えば60°または90°である。
【0019】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のエミッタ短領域のうちの少なくともいくつかの中心は、鉛直方向に沿って見たときに複数の第2のエミッタ短領域の横に配置される。代替的または追加的に、第2のエミッタ短領域のうちの少なくともいくつかの中心は、鉛直方向に沿って見たときに第1のエミッタ短領域の横に配置される。例えば、鉛直方向に沿って見たときに、第1のエミッタ短領域の少なくとも2%および高々100%は、最も近い第2のエミッタ短領域と重ならない。
【0020】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、鉛直方向に沿って見たときに、以下の基準(i)および(ii)のうちの少なくとも1つが、複数の第1のエミッタ短領域のうちの1つと、複数の第2のエミッタ短領域のうちの関連する最も近いものとに対して適用される:
(i)第1のエミッタ短領域の最大横方向範囲は、関連する最も近い第2のエミッタ短領域の最大横方向範囲とは異なる、および
(ii)第1のエミッタ短領域と複数の第1のエミッタ短領域のうちのその最も近い近隣との間の中心間距離は、関連する最も近い第2のエミッタ短領域と複数の第2のエミッタ短領域のうちのその最も近い近隣との間の中心間距離とは異なる。上記の基準のうちの少なくとも1つはまた、鉛直方向に沿って見たときに、第1のエミッタ短領域およびそれらの関連する最も近い第2のエミッタ短領域の複数またはさらにはすべてに適用され得る。換言すれば、第1のエミッタ短領域の配置および第2のエミッタ短領域の配置は、関連する主面における中心間距離および最大横方向範囲の少なくとも1つに関して少なくともいくつかの領域において互いに異なっていてもよい。短領域が円形形状を有する場合、最大横方向範囲は直径である。例えば、第1のエミッタ短領域および関連する第2のエミッタ短領域のうちの1つまたは複数は、上記パラメータのうちの少なくとも1つにおいて互いに少なくとも10%異なる。これらのパラメータの異なる値を用いて、オン状態電圧VTまたは技術曲線Qrr-VTに対する非対称挙動を得ることができ、ここでQrrは回復電荷である。
【0021】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のエミッタ短領域によって形成される第1の主面の面積の割合は、第2のエミッタ短領域によって形成される第2の主面の面積の割合とは異なる。例えば、第1の主面における割合は、第2の主面における割合よりも少なくとも1.5倍または2倍または5倍大きいか、またはその逆である。あるいは、割合は、少なくとも5パーセントポイントまたは少なくとも10パーセントポイントまたは少なくとも20パーセントポイントおよび/または最大50パーセントポイントだけ異なってもよい。
【0022】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のサイリスタ機能要素および第2の機能要素は、異なる電気定格を有するように構成される。例えば、第1および第2のサイリスタ機能要素は、オン状態の電圧降下、サージ電流、およびターンオフ時間のうちの少なくとも1つに対する定格に関して互いに異なる。したがって、異なる電気定格を有する2つのサイリスタ機能要素は、単一の半導体本体を有する共通のデバイスに統合されてもよい。これは、コストを削減し、かつ/またはより小さい設置面積を得るのに役立ち得る。例えば、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素のうちの一方は、低いサージ電流ではクロウバーとして作用することができず、他方は、高いサージ電流に耐えることができるバイパスとして作用する。
【0023】
少なくとも1つの実施形態によれば、双方向サイリスタデバイスは、少なくとも1つのゲート電極を備える。例えば、双方向サイリスタデバイスは、第1の主面上の第1のゲート電極および第2の主面上の第2のゲート電極のうちの少なくとも一方を備える。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、双方向サイリスタデバイスは、第1の主面上に第1のゲート電極を備え、第1の主電極は、互いに離間された複数の第1のセグメントを備え、第1のセグメントのうちの少なくともいくつかは、鉛直方向に沿って見たときに第1のゲート電極によって完全に囲まれる。例えば、第1の主電極の第1のセグメントの各々は、第2の導電型の少なくとも1つの第1のエミッタ領域および第1の導電型の少なくとも1つの第1のエミッタ短領域に隣接する。
【0025】
第1の主電極のセグメントを囲む第1のゲート電極は、非常に速くオンになるサイリスタ機能要素を得ることを可能にする。例えば、第1のゲート電極は、第1の主面の全体に分布していてもよい。したがって、ゲート-カソード境界の長さが増加し、高速ターンオンのための増強されたdi/dt能力をもたらし得る。同時に、dV/dt能力は変化しないままであり得る。
【0026】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第2の主電極は、互いに離間された複数の第2のセグメントを備え、第2のセグメントのうちの少なくともいくつかは、鉛直方向に沿って見たときに第2のゲート電極によって完全に囲まれる。第1の主電極のセグメントを囲む第2のゲート電極は、両方の電流方向において非常に速くオンになる双方向サイリスタデバイスを得ることを可能にする。例えば、第2のゲート電極は、第2の主面の全体に分布していてもよい。
【0027】
したがって、逆並列に接続された2つのサイリスタ構造(第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素)のアノードおよびカソードの交互嵌合に加えて、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素の少なくとも一方に対してゲート領域の交互嵌合が得られてもよい。したがって、交互嵌合ゲート領域は、第1および第2の主面の少なくとも一方に設けられてもよい。
【0028】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のゲート電極または第2のゲート電極の形態のゲート電極が第1の主面および第2の主面の一方のみに設けられる。したがって、サイリスタ機能要素のうちの一方は、関連するゲートに印加される電流パルスを介して直接トリガすることができない。
【0029】
代替的に、第1および第2のゲート電極の両方が設けられていてもよい。この場合、双方向サイリスタデバイスは、第1および第2のゲート電極を介して両方の電流方向に電気的にトリガされてもよい。
【0030】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のサイリスタ機能要素および第2の機能要素のうちの一方は、動作中に過負荷を引き起こす宇宙線障害または外部障害に対する保護デバイスとして構成される。したがって、双方向サイリスタデバイスは、サイリスタ機能要素のうちの一方を介して統合された保護デバイス機能を提供する。例えば、サイリスタ機能要素のうちの一方は、標準的な位相制御サイリスタのようにゲート電極を介して非常に速くオンになるように構成され、逆並列に接続されたサイリスタ機能要素は、順方向阻止レジームにおいてオン能力を提供するためにのみ使用される。ターンオンは、例えば、宇宙線によって引き起こされる単一の事象によってトリガされてもよい。宇宙線は、順阻止レジームにおけるサイリスタを損傷なしにオン状態にトリガすることができることが分かっている。これは、保護焼成とも呼ばれる。第1および第2のサイリスタ機能要素は逆並列に電気的に接続されているため、それらのうちの一方は、印加電圧の極性に関係なく順方向阻止レジームにある。したがって、従来のデバイスにおける逆阻止下で起こり得る単一事象バーンアウトのリスクは、排除され得るか、または少なくとも大幅に低減され得る。逆並列に接続された追加の外部保護デバイスは不要であり得る。例えば、VT-Qrr技術曲線に関して、保護デバイスとして作用するサイリスタ機能要素の要件が低減されると、双方向サイリスタデバイスの構造パラメータは、サイリスタ機能要素の他方に対して最適化され得る。
【0031】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のサイリスタ機能要素と第2のサイリスタ機能要素の両方は、第1のベース層と第3のベース層との間に形成されるp-n接合の全エリアを使用する。例えば、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素の各々は、個々に、第2のベース層と第3のベース層との間に形成されるp-n接合の全エリアを使用する。例えば、第1の導電型がp型であり、第2の導電型がn型である場合、第1のサイリスタ機能要素および第2のサイリスタ機能要素は、共通のp-n-pベース層シーケンスを使用することができる。2つの逆並列サイリスタ間の分離領域は省略されてもよい。第1、第2および第3のベース層は、横方向、すなわち第1の主面に平行に延びる方向に完全に非構造化されてもよい。さらに、双方向サイリスタデバイスの同じ側に2つの別個の電極を設ける必要はなく、一方の電極は一方のサイリスタのアノードとして作用し、他方の電極は他方のサイリスタのカソードとして作用する。
【0032】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のゲート電極は第1のベース層とオーミックコンタクトを形成する。これは、例えば、第1のゲート電極と第1のベース層との間にp-n接合が存在しないことを意味する。代替的または追加的に、第2のゲート電極は、第2のベース層とオーミックコンタクトを形成してもよい。
【0033】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のゲート電極は、複数の第1のセルを有する第1のグリッド構造を備える。第1のセルは、第1の主面に向かって見て多角形形状を有してもよい。例えば、第1のセルは、六角形、八角形または四角形の形状を有することができる。例えば、双方向サイリスタデバイスは、20個以上2000個以下の第1のセルを備える。セルの数は、双方向サイリスタデバイスの特定の要件に応じて広範囲で変化し得る。例えば、第1のグリッド構造は、少なくともいくつかの領域にハニカムパターンを形成する。例えば、ハニカムパターンは、正六角形によって形成される。
【0034】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、複数の第1のエミッタ短領域が第1のセルのうちの1つの中に配置される。例えば、第1のセルのうちの1つの中の第1のエミッタ短領域の数は、2以上100以下である。しかしながら、1つの第1のエミッタ短領域のみでも十分であり得る。
【0035】
第2のゲート電極は、複数の第2のセルを有する第2のグリッド構造を備えてもよい。第1のゲート電極に関連して説明した特徴は、第2のゲート電極にも適用することができる。
【0036】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、増幅ゲート構造が第1のゲート電極および第2のゲート電極の少なくとも一方に統合される。増幅ゲート構造は、大きなウェハ領域にわたるトリガ電流の迅速な横方向分布によって短いターンオン時間を得るのに役立つ。増幅ゲート構造を使用することにより、第1のゲート電極および第2の電極の両方に対して短いターンオン時間を両方の電流方向において得ることができる。
【0037】
双方向サイリスタデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のゲート電極および第2のゲート電極は同じベース形状を有する。換言すれば、第2のゲート電極は、第1のゲート電極のコピーまたは少なくとも相似のコピーを表す。代替的に、第1および第2のゲート電極の構造が互いに異なっていてもよい。
【0038】
例示的な実施形態および図において、同様または同様に作用する構成部品には同じ参照符号が付されている。一般に、個々の実施形態に関する相違点のみを説明する。特に明記しない限り、一実施形態における部分または態様の説明は、別の実施形態における対応する部分または態様にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】双方向サイリスタデバイスの例示的な実施形態を示す断面図である。
【
図1B】第1の主面に向かって見た、双方向サイリスタデバイスの例示的な実施形態を示す図である。
【
図1C】第2の主面に向かって見た、双方向サイリスタデバイスの例示的な実施形態を示す図である。
【
図2】双方向サイリスタデバイスの例示的な実施形態を示す断面図である。
【
図3】双方向サイリスタデバイスの例示的な実施形態を示す上面図である。
【
図4A】エミッタ短領域によって覆われる主面の割合および照射線量が異なるサンプルについて、1.5kAの電流でのオン状態電圧VTの関数としての2kAの電流でのターンオフ時間tqの測定結果を示す図である。
【
図4B】エミッタ短領域によって覆われる主面の割合および照射線量が異なるサンプルについて、1.5kAの電流でのオン状態電圧VTの関数としての2kAの電流でのターンオフ時間tqの測定結果を示す図である。
【
図4C】エミッタ短領域によって覆われる主面の割合および照射線量が異なるサンプルについて、1.5kAの電流でのオン状態電圧VTの関数としての2kAの電流での(di/dt)maxの測定結果を示す図である。
【
図4D】エミッタ短領域によって覆われる主面の割合および照射線量が異なるサンプルについて、1.5kAの電流でのオン状態電圧VTの関数としての2kAの電流での(di/dt)maxの測定結果を示す図である。
【
図4E】異なるサイズのエミッタ短領域を有する2つのサンプルのオン状態電圧VTの関数としてのアノード電流を示す図である。
【
図4F】エミッタ短領域間の距離が大きいサンプルについて、時間の関数としての電流Iおよび電圧Vのターンオフ挙動を示す図である。
【
図4G】エミッタ短領域間の距離が小さいサンプルについて、時間の関数としての電流Iおよび電圧Vのターンオフ挙動を示す図である。
【
図5A】双方向サイリスタデバイスの例示的な実施形態の詳細を示す上面図である。
【
図6】異なる照射線量で処理したサンプルのdi/dtの関数としての電荷回復Qrrの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図に示されている要素およびそれらの互いのサイズ関係は、必ずしも縮尺通りではない。むしろ、個々の要素または層の厚さは、より良い表現可能性のために、および/またはより良い理解のために、誇張されたサイズで表されることがある。
【0041】
図1A、
図1Bおよび
図1Cは、双方向サイリスタデバイス1の例示的な実施形態を示す。双方向サイリスタデバイス1は、第1の主面21と第2の主面22との間に延在する半導体本体2を備える。
【0042】
半導体本体2は、第1の導電型の第1のベース層51と、第1の導電型の第2のベース層52と、鉛直方向において第1のベース層51と第2のベース層52との間に配置された、第1の導電型とは異なる第2の導電型の第3のベース層53とを備える。第1の主電極31が第1の主面21上に配置され、第2の主電極32が第2の主面22上に配置される。例えば、第1の導電型はp型であり、第2の導電型はn型であり、またはその逆である。
【0043】
第1の主電極31は、第1のサイリスタ機能要素11のカソードとして、および第2のサイリスタ機能要素12のアノードとして作用する。第2のサイリスタ機能要素12では、第1の主電極31は第1のエミッタ短領域71を介してアノードとして作用する。第1のサイリスタ機能要素11および第2のサイリスタ機能要素12は、各サイリスタ機能要素に対して4つのサイリスタ記号を使用して
図1Aに示されており、1つの機能サイリスタ要素に属するサイリスタ記号は電気的に並列に接続されている。第1のサイリスタ機能要素11および第2のサイリスタ機能要素12は、逆並列に接続され、同じ半導体本体2内に配置された2つのサイリスタ構造を表す。
【0044】
双方向サイリスタデバイス1は、第1のサイリスタ機能要素11および第2のサイリスタ機能要素12に対して非対称に構成される。
【0045】
第1の主電極31は、第2の導電型の少なくとも1つの第1のエミッタ領域61および第1の導電型の複数の第1のエミッタ短領域71に隣接する。
【0046】
第2の主電極32は、第2の導電型の少なくとも1つの第2のエミッタ領域62および第1の導電型の複数の第2のエミッタ短領域72に隣接する。第1のサイリスタ機能要素11は、この実施形態では、アノードとして作用する第2のエミッタ短領域72、第2のベース層52、第3のベース層53、第1のベース層51および第1のエミッタ領域61によって形成される。
【0047】
これに応じて、第2のサイリスタ機能要素12は、アノードとして作用する第1のエミッタ短領域71、第1のベース層51、第3のベース層53、第2のベース層52および第2のエミッタ領域62によって形成される。その結果、エミッタ短領域71、72はまた、関連する逆並列サイリスタ機能要素のアノードの機能を果たす。
【0048】
第1のベース層51と第3のベース層53との間、および、第3のベース層53と第2のベース層52との間には、半導体本体2の全エリアにわたって延在するp-n接合が形成される。したがって、第1のサイリスタ機能要素11と第2のサイリスタ機能要素12の両方がこれらのp-n接合の全エリアを使用してもよい。このようにして、同じサイズの単一サイリスタに近い高いサージ電流能力を得ることができる。
【0049】
半導体本体2は、例えば、シリコンを含む。しかしながら、他の半導体材料、例えばSiC(炭化ケイ素)を使用することもできる。
【0050】
双方向サイリスタデバイス1は、第1の主面21上の第1のゲート電極41および第2の主面22上の第2のゲート電極42をさらに備える。2つのゲート電極を有する双方向サイリスタデバイス1は、両方の電流方向に対してオンにされてもよい。
【0051】
しかし、第1および第2のゲート電極41、42の一方を省略してもよい。
第1のゲート電極41は、第1の主面21に隣接する半導体本体2の第1のゲートコンタクト領域91を介して、第1のベース層51とオーミックコンタクトを形成する。第2のゲート電極42は、第2の主面22に隣接する半導体本体2の第2のゲートコンタクト領域92を介して、第2のベース層52とオーミックコンタクトを形成する。第1のゲートコンタクト領域91および第2のゲートコンタクト領域92は、第1のベース層51と同じ導電型である。
【0052】
図示の例示的な実施形態では、増幅ゲート構造8が、第1のゲート電極41および第2のゲート電極42に一体化される。増幅ゲート構造8は、第1のゲート電極41のセクション80を備える。セクション80は、例えば、第1のゲート電極パッド410の周囲に延在するリング状に形成される。第1のゲート電極パッド410は、第1のゲート電極41に外部トリガ電流を印加するための外部コンタクトとして構成される。セクション80は、第1の導電型の第1の部分領域81および第2の導電型の第2の部分領域82と重なる。これにより、第1のゲート電極パッド410を介して第1のゲート電極41に印加される電流パルスが増幅される。原則として、これは、サイリスタ本体内に集積された2つのバイポーラトランジスタのダーリントン構成である。
【0053】
同様に、第2のゲート電極42は、第2のゲート電極パッド420の周りに延在するセクション80を有する増幅ゲート構造8を有する。
【0054】
図示の例示的な実施形態では、双方向サイリスタデバイス1は、第1のエミッタ短領域71および第2のエミッタ短領域72の異なる構成によって非対称に形成される。例示的には、第2のエミッタ短領域72は、第1のエミッタ短領域71よりも大きい。第1のエミッタ短領域71および第2のエミッタ短領域72は、双方向サイリスタデバイス1の全エリアにわたって、または例えば第1および第2のゲート電極41、42の近くの1つまたは複数の部分領域においてのみ互いに異なっていてもよい。
【0055】
例えば、第2のエミッタ短領域72の最大横方向範囲E2は、第1のエミッタ短領域の最大横方向範囲E1よりも少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも50%、または少なくとも2倍大きい。
【0056】
したがって、第1のエミッタ短領域71によって覆われる第1の主面21の面積の割合は、第2のエミッタ短領域72によって覆われる第2の主面22の面積の割合よりも小さい。例えば、この割合は、主面の一方が他方よりも少なくとも1.5倍または少なくとも2倍または少なくとも5倍大きい。代替的または追加的に、割合は、少なくとも5パーセントポイントまたは少なくとも10パーセントポイントまたは少なくとも20パーセントポイントおよび/または最大50パーセントポイントだけ異なってもよい。
【0057】
ターンオフ時間に対する第1および第2のエミッタ短領域71、72の割合の影響を
図4Aおよび
図4Bに示す。曲線931の場合、カソード側の被覆率は5%になり、アノード側の被覆率は30%になる。曲線932の場合、カソード側の被覆率は30%になり、アノード側の被覆率は5%になる。比較曲線939は、カソード側およびアノード側の両方で被覆率が30%である場合を示す。
【0058】
それぞれの曲線上の測定点は、異なるプロトン照射線量を有する試料を表す。
図4Aに示すように、カソード側とアノード側の短領域の被覆率の差が比較的大きい場合、陽子照射線量に関係なく非常に短いターンオフ時間tqを得ることができる。
【0059】
図4Bは、被覆率および被覆率間の差がより小さい場合、これが当てはまらないことを示している。曲線941は、カソード側で5%およびアノード側で17%の被覆率を表すのに対して、曲線942は、カソード側で17%およびアノード側で5%の被覆率を有するサンプルに属する。比較曲線949は、カソード側およびアノード側の両方で17%の被覆率に対応する。
【0060】
その結果、第1の主面上の第1のエミッタ短領域71および第2の主面上の第2のエミッタ短領域72の非対称構成を使用して、第1のサイリスタ機能要素11および第2のサイリスタ機能要素12に対して異なるターンオフ時間を得ることができる。
【0061】
2kAの電流での(di/dt)
maxの測定結果を、
図4Aおよび
図4Bに関連して説明したサンプルについて、それぞれ
図4Cおよび
図4Dに示す。
【0062】
図4Cの曲線951、952および959は、それぞれ曲線931、932および939と同じサンプルを指す。曲線951および952によって示されるように、転流ターンオフ中の高い(di/dt)
max能力が得られる。
【0063】
図4Dの曲線961、962および969は、それぞれ曲線941、942および949と同じサンプルを指す。
【0064】
図4Dの曲線は、より小さい被覆率およびより小さい差について、カソード側およびアノード側の両方について17%の同じ被覆率を有するサンプル969と比較して、曲線962のサンプルについてさらに良好な(di/dt)
max能力が得られ得ることを示す。カソード側で5%、アノード側で17%の被覆率を有する曲線961の場合、高いdi/dtでオフにする能力は、逆被覆率を有するサンプル962と比較して低下する。
【0065】
したがって、双方向サイリスタデバイス1の動的挙動は、第1のサイリスタ機能要素と第2のサイリスタ機能要素とで異なり得る。
【0066】
図4Eは、エミッタ短領域のサイズもアノード電流に影響を及ぼすことをさらに示す。曲線971のエミッタ短領域のサイズは、曲線972のエミッタ短領域のサイズよりも大きい。より大きなエミッタ短領域では、著しく低いオン状態電圧VTで同じアノード電流が得られる。
【0067】
追加的または代替的に、非対称挙動はまた、第1および第2のエミッタ短領域71、72間の異なる距離によって得られ得る。
【0068】
図4Fおよび
図4Gは、比較的長い距離を有するエミッタ短領域(
図4F)および狭い間隔のエミッタ短領域(
図4G)についての電流Iおよび電圧Vの時間の関数としてのターンオフ特性を示す。
図4Fの場合、電圧転流はデバイスのターンオフをもたらさない。変化するのは単に電流方向である。
【0069】
対照的に、
図4Gに示すサンプルでは、デバイスはオフになり、負の方向に大きな電流は流れない。
【0070】
したがって、双方向サイリスタデバイス1は、第1のサイリスタ機能要素11と第2のサイリスタ機能要素12とがターンオフ能力に関して互いに異なるように構成されてもよい。
【0071】
図1Aに示す例示的な実施形態では、半導体本体2は、傾斜接合終端を有するフルウェハである。しかしながら、半導体本体2はウェハの一部であってもよく、双方向サイリスタデバイス1は、処理されたウェハを個々のデバイスに個片化したチップである。この場合、双方向サイリスタデバイス1は、例えばガードリングまたは可変横方向ドーピング(VLD)を使用して、平面p-n接合終端を備えることができる。同時に、逆阻止能力のために深いp型シンクを設けることができる。以降の実施の形態においても同様である。
【0072】
図2および
図3に示す例示的な実施形態では、第1のエミッタ短領域71および第2のエミッタ短領域72は、鉛直方向に沿って見たときのそれらの相対位置に関して互いに異なる。
【0073】
図2に示すように、第1のエミッタ短領域71は、第2のエミッタ領域62と重なる。したがって、第1のエミッタ短領域71と第2のエミッタ短領域72とが同じ横位置を有する配置と比較して、第1のエミッタ短領域71と最も近い第2のエミッタ領域62との間の直流経路の長さが短くなる。
【0074】
図3に示すように、第1のエミッタ短領域71の中心710は、第2のエミッタ短領域72の横に横方向に配置されてもよい。同様に、第2のエミッタ短領域72の中心720は、第1のエミッタ短領域71の横に横方向に配置されてもよい。第1および第2のエミッタ短領域71、72は、鉛直方向に沿って見たときに、互いに重ならないように配置されてもよい。第1のエミッタ短領域71および第2のエミッタ短領域72は、2つの方向に沿って交互に配置される。図では、2つの方向間の角度は90°である。しかしながら、角度は90°と異なっていてもよい。例えば、2つの方向の間の角度は、45°以上90°以下である。
【0075】
図5Aおよび
図5Bに示す双方向サイリスタデバイス1の例示的な実施形態は、
図1A~
図1Cに関連して説明したものに本質的に対応する。
【0076】
そこから出発して、第1の主電極31は、互いに離間した複数の第1のセグメント310を備える。第1のセグメント310の少なくとも一部、例えば第1のセグメントの少なくとも50%、または少なくとも90%、または全部は、第1の主面21に向かって見て、第1のゲート電極41によって完全に囲まれる。
【0077】
第1のゲート電極41は、第1のゲート電極パッド410(
図1Aを参照)に接続された第1のグリッド構造411を有する。
【0078】
第1の主電極31の第1のセグメント310の各々は、第2の導電型の少なくとも1つの第1のエミッタ領域61および第1の導電型の少なくとも1つの第1のエミッタ短領域71に隣接する。
【0079】
図5Aに示す例示的な実施形態では、第1のグリッド構造411は六角形の複数の第1のセル4110を含み、それによってハニカム構造を形成する。しかしながら、他の多角形の第1のセル、例えば四角形または八角形も第1のグリッド構造411に適用され得る。
【0080】
図5Bの断面図に示すように、第2の主電極32および第2のゲート電極42は、半導体本体の第2の主面22上に配置される。第2の主電極32は、第1の主電極31と同様に、複数の第2のセグメント320に分割される。第2のセグメント320の少なくとも一部、例えば第2のセグメント320の少なくとも50%、または少なくとも90%、または全部は、第2の主面22に向かって見て、第2のゲート電極42によって完全に囲まれる。
【0081】
第2の主電極32の第2のセグメント320の各々は、第2の導電型の少なくとも1つの第2のエミッタ領域62および第1の導電型の少なくとも1つの第2のエミッタ短領域72に隣接する。
【0082】
双方向サイリスタデバイス1の動作中、第1の主電極31の第1のセグメント310は、例えば導電性プレートまたは導電性ウェハを第1の主電極31に押し付けることによって同じ電位に電気的に接触されてもよい。
図5Bに示すように、第1のグリッド構造411内の第1のゲート電極41の厚さは、第1の主電極31の厚さよりも小さい。したがって、第1のグリッド構造411はプレートまたはウェハと電気的接触を形成しない。第2の主電極32についても同様である。
【0083】
第1のセル4110の数は、双方向サイリスタデバイス1の意図される用途に応じて広い範囲で、例えば10から5000の間で変化し得る。例えば、100mmの直径を有するデバイスは、第1のグリッド構造411によって形成された数百の第1のセルを備えてもよい。
【0084】
第1の主面21に向かって見た図は、第2の主面22に向かって見た図に対応してもよい。したがって、第2の主面22に向かって見た図は、図面に明示的に示されていない。例えば、第1の主電極31、第1のゲート電極41、第1のグリッド構造411、第1のセル4110、第1のエミッタ領域61および第1のエミッタ短領域71に関連して、第1の主面21上の構成に関連して説明した特徴およびパラメータは、同様に、例えば、第2の主電極32、第2のゲート電極42、第2のグリッド構造421、第2のセル4210、第2のエミッタ領域62および第2のエミッタ短領域72それぞれについて、第2の主面22上の対応する要素にも適用され得る。しかしながら、パラメータはまた、双方向サイリスタデバイスが非対称であるように、第1の主面21と第2の主面22との間で異なってもよい。
【0085】
第1のセル4110の1つの辺4111の長さL1は、例えば、500μm以上5000μm以下、または、900μm以上3000μm以下である。長さL1が大きいほど、第1の主電極31の第1のセグメント310の連続面積が大きくなる。
【0086】
第1のセル4110のうちの少なくとも1つの一辺の幅W1は、100μm以上2000μm以下、例えば100μm以上500μm以下である。辺の幅は、それらの厚さとともに、第1のグリッド構造411の断面を画定する。第1のグリッド構造411の厚さは、例えば、3μm以上30μm以下または5μm以上12μm以下である。例えば、これらのパラメータを使用して、第1のグリッド構造411の断面は、第1のゲート電極パッドから第1のグリッド構造411の最外エリアまでのゲート経路に沿った著しい電圧降下を回避するのに十分な大きさである。
【0087】
「長さ」および「幅」という用語は、横方向の延長を指す。厚さは、鉛直方向、すなわち第1の主面に垂直な範囲を指す。
【0088】
第1のエミッタ短領域71の最大横方向範囲E1は、例えば、50μm以上1000μm以下、または100μm以上500μm以下である。
【0089】
同じ第1のセル内の2つのエミッタ短領域71間のエッジ間距離D1は、例えば、200μm以上1000μm以下、または300μm以上500μm以下である。エミッタ短領域間の距離は、十分に高いdV/dtを提供するように適切に選択することができる。
【0090】
第1のグリッド構造411と、第1のグリッド構造に最も近く配置された第1のエミッタ短領域との間のエッジ間距離D2は、例えば、50μm以上400μm以下、または100μm以上200μm以下である。
【0091】
上記のパラメータは、既存のデバイス概念に適用されない設計規則を考慮に入れることができる。例えば、これは、1つのサイリスタ機能要素のカソード側のエミッタ短領域が、同時に逆並列サイリスタ機能要素のアノード領域として作用するためである。
【0092】
例えば、
図5Aとは異なり、1つの第1のセル内に配置された第1のエミッタ短領域71はまた、最大横方向範囲について異なる値を有してもよい。例えば、第1のセグメントのエッジの近くに配置されたエミッタ短領域は、それぞれの第1のセグメントの中心の近くに配置された第1のエミッタ短領域の最大横方向範囲よりも小さくてもよい。
【0093】
代替的または追加的に、中央の第1のエミッタ短領域71は、いくつかのより小さい第1のエミッタ短領域71に置き換えられてもよい。
【0094】
例えば、第1のセルのエッジに近接して配置された第1のエミッタ短領域71は、100μm以上250μm以下の直径を有してもよく、セルの中心に近接して配置された第1のエミッタ短領域71は、150μm以上500μm以下の直径を有してもよい。
【0095】
図5Bに示す例では、各第1のセグメント310は、複数の第1のエミッタ短領域71と重なり、1つの第1のエミッタ短領域71は第1のセグメント310の中心に配置され、さらなる第1のエミッタ短領域71は第1のセグメント310の周囲に沿って配置される。しかしながら、単一のエミッタ短領域71でも十分であり得る。
【0096】
記載されたデバイス構造は、第1および第2の主面上のゲート電極と主電極との間の界面面積が大幅に増加するため、高いdi/dt能力を提供する。従来のデバイスと比較して、ゲート電流パルスの印加後の短いターンオン時間を得ることができる。
【0097】
従来のデバイスでは、主電極エッジからの短い領域の距離は、dV/dt能力に反比例するため、低く保たれている。これにより、di/dt能力が低下する。対照的に、dV/dtおよびdi/dtの高い値は、記載された双方向サイリスタデバイス1について、例えばゲート-カソード面積の大幅な増加に起因して同時に得られ得る。
【0098】
図5Bに示す例示的な実施形態では、第1のエミッタ短領域71および第2のエミッタ短領域72のサイズおよび位置は、第1の主面21および第2の主面22に対して同じである。
【0099】
第1のサイリスタ機能要素11および第2のサイリスタ機能要素12に対する双方向サイリスタデバイス1の非対称な挙動は、第1および第2のサイリスタ機能要素のターンオフ時間が互いに異なるように半導体本体2を構成することによって得ることができる。
【0100】
これは、第1のベース層51と第3のベース層53との間のp-n接合の半導体本体2の領域を、第2のベース層52と第3のベース層53との間のp-n接合の領域とは異なる照射線量にすることによって得ることができる。
【0101】
照射線量の影響は、異なる照射線量で処理されている3つのサンプルに属する曲線981、982および983を示す
図6に示されている。各曲線について、これらのサンプルの臨界値を表す(di/dt)
critの値が示されている。
【0102】
この臨界値を超えると、電圧転流中のターンオフはない。この臨界値を超えると、デバイスは物理的に破壊されることなく動作し、次のAC電圧波のいくつかにおいてdi/dtが臨界値(di/dt)
critを下回って戻ると、デバイスが過熱されない限り、ターンオフ能力が回復する。
図6は、(di/dt)
critの値を、デバイスの製造中の照射線量によって調整できることを示している。その結果、第1のサイリスタ機能要素11と第2のサイリスタ機能要素12とで異なる値が得られてもよい。
【0103】
より低い照射線量で照射されたデバイスは、より低い電気損失に反映されたオン状態のより低い電圧降下をさらに示す。例えば、直列のインダクタンスがより高いために、サイリスタ機能要素の一方がより低い転流di/dtを有する回路で動作する場合、このサイリスタ機能要素はより低い照射線量を必要とする可能性があり、オン状態での損失がより少ない可能性がある。オン状態電圧VTの低下は、サージ電流ITSMの大きさにも反映される。VTの値が低いほど、ITSMの大きさは大きくなる。
【0104】
したがって、サイリスタ機能要素の一方は、比較的低いサージ電流で機能しないクロウバーとして機能することができ、他方のサイリスタ機能要素は、高いサージ電流に耐えることができるバイパスとして機能する。
【0105】
前述の例示的な実施形態に関連して説明したデバイスには、異なる照射線量を適用することもできる。
【0106】
異なる電荷キャリア再結合寿命に代えて、またはそれに加えて、
図5Aおよび
図5Bに示す例示的な実施形態の双方向サイリスタデバイスは、先の例示的な実施形態で説明したように、第1のエミッタ短領域71および第2のエミッタ短領域72の配置を変更することによって非対称に構成されてもよい。
【0107】
また、上記実施形態と同様に、第1および第2のゲート電極41、42の一方を省略してもよい。
【0108】
双方向サイリスタデバイスの非対称挙動を得るための上記の方法の様々な組合せを使用して、1つの半導体本体に集積された異なるサイリスタ機能要素を得ることができる。
【0109】
なお、ここで説明する発明は、例示的な実施形態を用いて説明した内容に限定されるものではない。むしろ、本発明は、この特徴またはこの組合せ自体が請求項または例示的な実施形態において明示的に示されていなくても、特に請求項における特徴の任意の組合せを含む、任意の新規な特徴および特徴の任意の組合せを包含する。
【符号の説明】
【0110】
参照符号のリスト
1 サイリスタデバイス
11 第1のサイリスタ機能要素
12 第2のサイリスタ機能要素
2 半導体本体
21 第1の主面
22 第2の主面
31 第1の主電極
310 第1のセグメント
32 第2の主電極
320 第2のセグメント
41 第1のゲート電極
410 第1のゲート電極パッド
411 第1のグリッド構造
4110 第1のセル
4111 辺
42 第2のゲート電極
420 第2のゲート電極パッド
421 第2のグリッド構造
4210 第2のセル
51 第1のベース層
52 第2のベース層
53 第3のベース層
61 第1のエミッタ領域
62 第2のエミッタ領域
71 第1のエミッタ短領域
710 第1のエミッタ短領域の中心
72 第2のエミッタ短領域
720 第2のエミッタ短領域の中心
8 増幅ゲート構造
80 セクション
81 第1の部分領域(第1の導電型)
82 第2の部分領域(第2の導電型)
91 第1のゲートコンタクト領域
92 第2のゲートコンタクト領域
931、932、939 曲線
941、942、949 曲線
951、952、959 曲線
961、962、969 曲線
971、972 曲線
981、982、983 曲線
L1 辺の長さ
W1 辺の幅(第1/第2のゲート電極に覆われる)
E1 第1のエミッタ短領域の最大横方向範囲
E2 第2のエミッタ短領域の最大横方向範囲
D1 エッジ間距離
D2 エッジ間距離