(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240815BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20240815BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J153/02
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2023533114
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2022026547
(87)【国際公開番号】W WO2023282217
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021114312
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022048279
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃純
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳明
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/065662(WO,A1)
【文献】特開2016-060847(JP,A)
【文献】特開平01-095175(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068610(WO,A1)
【文献】特開2013-216852(JP,A)
【文献】特開昭56-163174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤組成物を含む粘着剤層を備える粘着テープであって、
前記粘着剤組成物は、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、第1のタッキファイヤー、第2のタッキファイヤー、及び第3のタッキファイヤーを含み、
前記スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、ブタジエン部分が部分的に水素添加され、
前記第1のタッキファイヤーは、23℃で液体のロジンエステル及び23℃で液体のテルペン系樹脂のうちの少なくとも1種であり、
前記第2のタッキファイヤーは、軟化点が70~120℃であり、
前記第3のタッキファイヤーは、軟化点が140℃以上であり、
前記粘着テープは、JIS Z0237に基づく70℃における保持力が100分以上であり、さらに前記粘着剤組成物の200℃の溶融粘度が10万cp以下であることを特徴と
し、
前記粘着剤組成物は、前記粘着剤組成物を100質量部としたとき、
前記スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を45~55質量部、
前記第1のタッキファイヤーを5~15質量部、
前記第2のタッキファイヤーを10質量部以上、
前記第2のタッキファイヤーと前記第3のタッキファイヤーとを合計で30~50質量部含有し、
前記スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、前記スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を100質量%としたとき、ジブロック共重合体を50~85質量%含み、
前記ジブロック共重合体は、スチレンに由来する単量体単位を含むブロックA-ブタジエンに由来する単量体単位を含むブロックBを含む、粘着テープ。
【請求項2】
前記第2のタッキファイヤーは、テルペン系樹脂を含む、請求項
1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記第3のタッキファイヤーは、ロジン系樹脂、または、テルペン系樹脂を含む、請求項1又は請求項2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着テープは、JIS Z0237に基づく80℃におけるポリプロピレン樹脂に対する粘着力が2.40N/cm以上である、請求項1又は請求項2に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
家電、自動車、建築等の各産業分野では、例えば、種々の組み立て部材の接合等を目的として、粘着テープが用いられている。
粘着テープに用いられる粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤があり、アクリル系粘着剤が多く使用されている。しかしながら、アクリル系粘着剤は、オレフィン系の材料に対する粘着力が十分ではなかった。
【0003】
ゴム系粘着剤として、特許文献1には、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体からなるベースポリマーと、水酸基価80mgKOH/g以上の粘着付与樹脂(TH)と、を含有する、粘着剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、スチレン系ブロック共重合体(A)と液状軟化剤(B)とを含有するホットメルト組成物であって、スチレン系ブロック共重合体(A)が、スチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加物であり、ホットメルト組成物は、140℃における溶融粘度(η1)と180℃における溶融粘度(η2)との粘度比(η1/η2)、及び、180℃における溶融粘度が特定の範囲であることを特徴とするホットメルト組成物が開示されている。
さらに、特許文献3には、スチレン系熱可塑性エラストマーA、粘着付与樹脂B、可塑剤C、及びエチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dを含有し、前記可塑剤Cの質量部をC、及び前記エチレン-カルボニル結合を有するビニル共重合体Dの質量部をDとした場合にD/Cで示される比率が0.10~0.80であることを特徴とするホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-216853号公報
【文献】特開2019-116608号公報
【文献】特開2020-203977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のゴム系粘着剤は、アクリル系粘着剤で接着しづらい材料、例えばオレフィン系材料に対しても高い粘着力を示す場合があるが、高温になると粘着力が低下する場合があり、耐熱性が十分でないという問題があった。また、従来の粘着テープは、粘着剤を溶剤や水等の溶媒に溶解させた粘着剤組成物を基材に塗布し、溶剤や水を揮発させる工程を有するものが主流であったため、製造に要されるエネルギーやコストが大きく、製造時間が長かった。よって、高温における溶融粘度が低く、例えば、種々のホットメルト工法で十分に塗工可能である接着剤組成物が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来のゴム系粘着剤を用いた粘着テープでは困難であった、高温におけるオレフィン系材料に対する保持力を有する粘着テープであって、かつ、高い粘着力を有する粘着テープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、粘着剤組成物を含む粘着剤層を備える粘着テープであって、前記粘着剤組成物は、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、第1のタッキファイヤー、第2のタッキファイヤー、及び第3のタッキファイヤーを含み、前記スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、ブタジエン部分が部分的に水素添加され、前記第1のタッキファイヤーは、23℃で液体のロジンエステル及び23℃で液体のテルペン系樹脂のうちの少なくとも1種であり、前記第2のタッキファイヤーは、軟化点が70~120℃であり、前記第3のタッキファイヤーは、軟化点が140℃以上であり、JISZ0237に基づく70℃における保持力が100分以上であり、さらに前記粘着剤組成物の200℃の溶融粘度が10万cp以下である、粘着テープが提供される。
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、粘着剤組成物を含む粘着剤層を備える粘着テープにおいて、粘着剤組成物に、ブタジエン部分が部分的に水素添加されたスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、並びにそれぞれ特定の物性を有する、第1のタッキファイヤー、第2のタッキファイヤー、及び第3のタッキファイヤーを配合し、該粘着テープの保持力及び該粘着剤組成物の高温での粘度を調整することで、保持力及び粘着力が十分に高い粘着テープとなることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[1]粘着剤組成物を含む粘着剤層を備える粘着テープであって、前記粘着剤組成物は、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、第1のタッキファイヤー、第2のタッキファイヤー、及び第3のタッキファイヤーを含み、前記スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、ブタジエン部分が部分的に水素添加され、前記第1のタッキファイヤーは、23℃で液体のロジンエステル及び23℃で液体のテルペン系樹脂のうちの少なくとも1種であり、前記第2のタッキファイヤーは、軟化点が70~120℃であり、前記第3のタッキファイヤーは、軟化点が140℃以上であり、前記粘着テープは、JISZ0237に基づく70℃における保持力が100分以上であり、さらに前記粘着剤組成物の200℃の溶融粘度が10万cp以下であることを特徴とする、粘着テープ。
[2]前記粘着剤組成物は、前記粘着剤組成物を100質量部としたとき、前記スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を45~55質量部、前記第1のタッキファイヤーを5~15質量部、前記第2のタッキファイヤーを10質量部以上、前記第2のタッキファイヤーと前記第3のタッキファイヤーとを合計で30~50質量部含有する、[1]に記載の粘着テープ。
[3]前記第2のタッキファイヤーは、テルペン系樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4]前記第3のタッキファイヤーは、ロジン系樹脂、または、テルペン系樹脂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の粘着テープ。
[5]前記粘着テープは、JISZ0237に基づく80℃におけるポリプロピレン樹脂に対する粘着力が2.40N/cm以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る粘着テープによれば、高温におけるオレフィン系材料に対する高い粘着力及び高温における保持力を有する粘着テープを得ることができる。本発明に係る粘着テープは、高温における溶融粘度が低く、例えば、種々のホットメルト工法で十分に塗工可能である接着剤組成物を含む粘着剤層を備える粘着テープを得ることができる。本発明に係る粘着テープは、その特性を活かし、家電、自動車、建築等の各産業分野で、より信頼性高く、低コストで、様々な部材同士を接着することができる。本発明の一実施形態に係る粘着テープは、上記の特徴を有するため、例えば、自動車のドアや天井、トランクルーム、インストルメントパネル周辺の部品の固定、エアコンやカーナビ周辺の組立等の自動車分野の内装部品の固定や、OA機器、家電等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着テープの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0013】
1.粘着剤組成物
本発明に係る粘着テープは、粘着剤組成物を含む粘着剤層を備える。
本発明に係る粘着剤組成物は、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、第1のタッキファイヤー、第2のタッキファイヤー、及び第3のタッキファイヤーを含む。
なお、本発明において、タッキファイヤーとは、粘着付与剤を意味し、常温において液状または固形である粘着性を高めるために添加される熱可塑性樹脂のことをいう。タッキファイヤーとしては、具体的には、ロジン系、テルペン系、石油系などが挙げられる。
【0014】
1.1 スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体
本発明に係るスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、スチレン由来の単量体単位を有するブロック及びブタジエン由来の単量体単位を有するブロックを含むブロック共重合体を意味する。スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、1種単独で用いることも可能であるし、例えば、スチレンに由来する単量体単位の含有率が異なるものや、ジブロック共重合体含有率が異なるものを2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0015】
スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、スチレンに由来する単量体単位の含有率が、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。スチレンに由来する単量体単位の含有率は、具体的には例えば、5,10,15,20,25,30,35,40,45,50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このような範囲にすることで、得られる粘着テープは、被着体に対する適度な粘着力、保持力を有するものとなる。スチレンに由来する単量体単位の含有率は、JIS K6383に基づき測定することができる。
【0016】
本発明に係るスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、ブタジエン部分が部分的に水素添加されている。スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体のブタジエン部分は、20~90質量%が水素添加されていることが好ましく、30~80質量%が水素添加されていることがより好ましい。
ブタジエン部分が部分的に水素添加されているスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体としては、具体的には、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)が挙げられる。
【0017】
本発明に係るスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、スチレンに由来する単量体単位を含むブロックA-ブタジエンに由来する単量体単位を含むブロックB-スチレンに由来する単量体単位を含むブロックCを含むトリブロック共重合体を含むことが好ましい。
また、本発明に係るスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、スチレンに由来する単量体単位を含むブロックA-ブタジエンに由来する単量体単位を含むブロックBを含むジブロック共重合体を含むことが好ましい。
ここで、ブタジエンに由来する単量体単位を含むブロックBは、その一部が水素添加されていることが好ましい。すなわち、ブタジエンに由来する単量体単位を含むブロックBは、ブタジエンブロック及びブチレンブロックを有することが好ましい。
本発明に係るスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を100質量%としたとき、上記ジブロック共重合体を50~85質量%含むことが好ましく、55~80質量%含むことがより好ましい。上記ジブロック共重合体の含有率は、具体的には例えば、50,55,60,65,70,75,80,85質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ジブロック共重合体の含有率を上記数値範囲内とすることにより、適度なタックを有する粘着剤組成物を得ることができる。本発明においては、粘着剤に用いるスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体は1種類でもよいが、2種類以上を組み合わせて用いる事もできる。粘度やスチレン含有率が異なる樹脂を適切に選択する事で、粘着力や、溶融粘度を適切な範囲に調整する事ができる。
【0018】
スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、好ましくは3万~50万であり、より好ましくは6万~30万である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により求めることができる。
【0019】
1.2 第1のタッキファイヤー
本発明に係る第1のタッキファイヤーは、23℃で液体のロジンエステル及び23℃で液体のテルペン系樹脂のうちの少なくとも1種である。第1のタッキファイヤーとしては、23℃で液体のロジンエステル、又は23℃で液体のテルペン系樹脂を、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような液体ロジンエステルとしては、一例として、荒川化学社よりスーパーエステルA-18、エステルガムATなどが販売されており、自由に選択して用いる事ができる。
特に、テルペン系樹脂は、塗工時の粘度を下げるが保持力を下げないため好ましく用いる事ができる。このようなテルペン系樹脂の一例として、ダイマロン(液状テルペン樹脂、引火点174℃)、YSレジンCP(液状テルペン樹脂、引火点178℃)、YSレジンPX300N(テルペン樹脂、引火点202℃)、YSポリスターT30(テルペンフェノール樹脂、引火点205℃)、YSレジンLP(芳香族変性テルペン樹脂、引火点220℃)がヤスハラケミカル社より市販されており、自由に選択して用いる事ができる。中でも、引火点が高く、加熱減量が低く、さらに本発明に係るスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体との相溶性が高い事からYSレジンLPを好ましく用いる事ができる。
【0020】
第1のタッキファイヤーは、25℃での粘度が、500~150000cpであることが好ましく、1000~100000cpであることがより好ましい。25℃での粘度は、例えば、500、1000、2000、5000、10000、20000、50000、100000、120000、150000cpであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
1.3 第2のタッキファイヤー
第2のタッキファイヤーは、軟化点が70~120℃である。第2のタッキファイヤーとしては、軟化点70~120℃のものを、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第2のタッキファイヤーは、軟化点が80~120℃であることが好ましく、85~115℃であることがより好ましい。
軟化点は、具体的には例えば、70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,120℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
第2のタッキファイヤーとしては、C9石油樹脂、水添C9石油樹脂、C5石油樹脂、脂環族系石油樹脂、脂環族/芳香族系石油樹脂、ロジン系樹脂(重合ロジンエステル、変性重合ロジンエステル、安定化ロジンエステルなど)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂など)、を用いる事ができる。本発明においては、保持力が良好な事からテルペン系樹脂から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。また、良好なタックを付与する観点から、第2のタッキファイヤーは、テルペン樹脂を含むことがより好ましい。
【0023】
1.4 第3のタッキファイヤー
第3のタッキファイヤーは、軟化点が140℃以上である。第3のタッキファイヤーとしては、軟化点が140℃以上のものを、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第3のタッキファイヤーは、軟化点が140~180℃であることが好ましく、140~170℃であることがより好ましい。軟化点は、具体的には例えば、140,145,150,155,160,165,170,175,180℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
タッキファイヤーの軟化点は、JIS K5902およびJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義できる。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃とできる。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とできる。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用できる。
また、軟化点はタッキファイヤーのガラス転移点の約50℃高い温度である事から、DSC(示差走査熱量測定機)を用いて、Tgを検出する事で軟化点を推定する事ができる。この手法を利用した粘着剤中のタッキファイヤーの軟化点の同定法としては分取HPLCを用いて、粘着剤中のタッキファイヤー成分を単離し、この単離した試料のDSC測定結果からTgを測定し、軟化点を推定する方法がある。
【0025】
第3のタッキファイヤーとしては、C9石油樹脂、水添C9石油樹脂、C5石油樹脂、脂環族系石油樹脂、脂環族/芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂など)、ロジン系樹脂(重合ロジンエステル、変性重合ロジンエステル、安定化ロジンエステルなど)、アルキルフェノール化合物等が挙げられる。溶融粘度と高温粘着力のバランスに優れるという観点からは、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂を含むことが好ましく、ロジン系樹脂、または、テルペンフェノール樹脂を含むことがより好ましい。軟化点が高く、かつスチレン系エラストマーと相溶性が良いという観点からは、重合ロジンエステルを含むことができる。また、第3のタッキファイヤーは、水添C9石油樹脂、C5石油樹脂、テルペン系樹脂を含むものとできる。コストの観点からは、水添C9石油樹脂、C5石油樹脂が好ましい。また、他の石油樹脂と比べて、臭気が少ないという観点から水添C9石油樹脂がより好ましい。溶融粘度が低く、塗工しやすい粘着剤組成物を得ることができる観点からは、テルペンフェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0026】
1.5 各成分の含有量
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、第1のタッキファイヤー、第2のタッキファイヤー、及び第3のタッキファイヤーを含むことを必須とする。また、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、該粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える粘着テープの保持力及び粘着剤組成物の溶融粘度が後述の範囲内に調整されれば、各々の成分の含有量は特に制限されない。本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、各成分の種類によるが、一例として、各成分の含有量を以下とすることで、該粘着テープの保持力及び粘着剤組成物の溶融粘度をより調整しやすく、また、該粘着テープの粘着力を制御しやすい。
【0027】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物を100質量部としたとき、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を45~55質量部含有することが好ましい。スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体の含有量は、具体的には例えば、45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物を100質量部としたとき、第1のタッキファイヤーを5~15質量部含有することが好ましい。第1のタッキファイヤーの含有量は、具体的には例えば、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物を100質量部としたとき、第2のタッキファイヤーを10質量部以上含有することが好ましく、10~40質量部含有することがより好ましく、15~25質量部含有することが更により好ましい。第2のタッキファイヤーの含有量は、具体的には例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物を100質量部としたとき、第2のタッキファイヤーと第3のタッキファイヤーとを合計で30~50質量部含むことが好ましい。第2のタッキファイヤーと第3のタッキファイヤーの含有量は、例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物を100質量部としたとき、第3のタッキファイヤーを10~30質量部含有することが好ましく、15~25質量部含有することが好ましい。第3のタッキファイヤーの含有量は、具体的には例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物を100質量部としたとき、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を45~55質量部、第1のタッキファイヤーを5~15質量部、第2のタッキファイヤーを10質量部以上、第2のタッキファイヤーと第3のタッキファイヤーとを合計で30~50質量部含有することが更に好ましく、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を45~55質量部、第1のタッキファイヤーを5~15質量部、第2のタッキファイヤーを10質量部以上、第3のタッキファイヤーを10質量部以上、第2のタッキファイヤーと第3のタッキファイヤーとを合計で30~50質量部含有することが更に好ましい。また、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物を100質量部としたとき、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を45~55質量部、第1のタッキファイヤーを5~15質量部、第2のタッキファイヤーを10~40質量部以上、第3のタッキファイヤーを10~30質量部含有することが更により好ましい。
【0033】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、各成分の含有量を上記数値範囲内とすることにより、該粘着テープの保持力、粘着力がより適切に調整され、該粘着剤組成物の200℃の溶融粘度がより低い粘着テープとなる。
【0034】
1.6 その他の成分
本発明に係る粘着剤組成物は、上記成分に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、改質剤、などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0035】
(可塑剤)
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、可塑剤を含有することができる。本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物100質量部に対し、可塑剤の含有量が、4質量部未満であることが好ましい。可塑剤の含有量は、具体的には例えば、0.5,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、可塑剤を含有しないものとすることもできる。
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、第1、第2及び第3のタッキファイヤーを有し、またこれらの配合量が、粘着テープの保持力及び粘着剤組成物の溶融粘度が適切になるよう調整されていることにより、可塑剤の含有量が少なくても、又は可塑剤を含まなくても、粘着テープの保持力、粘着力、該粘着剤組成物の200℃の溶融粘度のバランスに優れる粘着テープとなる。
【0036】
可塑剤としては、フタル酸エステル系の可塑剤、ポリブテン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィン、炭化水素系合成油等を挙げることができる。
【0037】
ポリブテンとしては、例えば、イソブテンのホモポリマー、イソブテンとn-ブテンとのコポリマー等が挙げられる。市販品としては、例えば、日本油脂社製「10N」、イネオス社製「インドポールH-100」、新日本石油化学製「日石ポリブテン」、新日本石油化学製「テトラックス」等が挙げられる。
パラフィン系プロセスオイルとしては、例えば、出光興産社製「PW-32」、出光興産社製「ダイアナフレシアS32」、出光興産社製「PS-32」等が挙げられる。
ナフテン系プロセスオイルとしては、例えば、PetroChina社製「KN4010」、出光興産社製「ダイアナフレシアN28」、出光興産社製「ダイアナフレシアN90」、出光興産社製「ダイアナフレシアU46」、出光興産社製「ダイアナプロセスオイルNR」等が挙げられる。
芳香族系プロセスオイルとしては、例えば、新日本石油社製「アロマックス」が挙げられる。流動パラフィンとしては、MORESCO社製「P-100」、Sonneborn社製「Kaydol」等が挙げられる。
炭化水素系合成油としては三井化学社製「ルーカントHC-10」、三井化学社製「ルーカントHC-20」等が挙げられる。
フタル酸エステル系の可塑剤としては、DINA(ジイソノニルアジペート)、DEHP(ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート)、DBP(ジブチルフタレート)、BBP(ブチルベンジルフタレート)、DINP(ジイソノニルフタレート)、DIDP(ジイソデシルフタレート)、DNOP(ジノルマルオクチルフタレート)が挙げられる。
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、上記に例示した可塑剤の合計含有量が、上記数値範囲内であることが好ましい。また、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、特には、フタル酸エステル系の可塑剤の合計含有量が、上記数値範囲内であることが好ましい。
【0038】
(酸化防止剤・紫外線吸収剤)
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルべンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等を例示できる。紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤を例示できる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0039】
(充填剤)
充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、雲母、スチレンビーズ、シリカ等が挙げられる。これらの微粒子充填剤は、単独又は混合して使用することができる。
【0040】
1.7 200℃の溶融粘度
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、ホットメルト塗工をするために200℃の溶融粘度が10万cp以下でなければならない。さらに200℃の溶融粘度は、2万cp以上、9万cp以下であることがより好ましい。
200℃の溶融粘度は、具体的には例えば、2万,3万,4万,5万,6万,7万,8万,9万,10万cpであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
200℃の溶融粘度は、粘着剤組成物の配合の種類を適切に選択し、さらにその配合量を、調整することによって、制御することができる。
粘着剤組成物の溶融粘度は、レオメーターを用いて200℃で、せん断速度10(1/s)で測定することができる。
【0041】
1.8 製造方法
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物の製造方法は、第1のタッキファイヤー、第2のタッキファイヤー、第3のタッキファイヤーを含む原料を、ニーダー混練機で混練するタッキファイヤー等混練工程を含むことができる。また、上記工程において、酸化防止剤、可塑剤をさらに添加することもできる。
タッキファイヤー等混練工程では、例えば、3~30分間、5~25rpmで、混練を行うことができる。
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物の製造方法は、上記タッキファイヤー等混練工程の後、さらにスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を添加して混練する、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体添加・混練工程を有することが好ましい。スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体添加・混練工程では、例えば、20~200分間、5~25rpmで、混練を行うことができる。
【0042】
2.粘着剤層・粘着テープ
本発明に係る粘着テープは、上記粘着剤組成物を含む粘着剤層を備える。
【0043】
粘着剤層は、粘着剤組成物を、例えばメルターで加温して溶解させ、基材に塗工することにより形成される。塗工方法に特に制限はないが、粘着剤の原料を加熱して溶融、混練してホットメルト方式により塗布することが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る粘着テープの製造方法は、上記粘着剤組成物を基材にホットメルト方式により塗布する塗工工程を含むことが好ましい。
従来の自動車分野用等の粘着テープは、粘着剤を溶剤や水等の溶媒に溶解させた粘着剤組成物を基材に塗布し、溶剤や水を揮発させる工程を有するものであったため、製造に要されるエネルギー、コストが大きく、製造時間が長かった。本発明に係る粘着剤組成物は、高温での粘度が低く、ホットメルト方式による塗工が可能であるため、少ないエネルギー及びコストで、かつ短時間で粘着テープを製造することができる。
塗工方法としては、非接触塗工方式又は接触方式を採用することができる。非接触塗工方式の例としては、クロスコートを挙げることができる。また、接触方式の例としては、スロットダイコーティングを挙げることができる。
【0044】
粘着剤層の厚みは特に限定はしないが、40~100μmとすることが望ましい。粘着剤層の厚みは、具体的には例えば、40,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。従来の溶剤型の粘着剤組成物は、厚い粘着剤層を形成しようとした場合、厚みに応じて乾燥工程が長くなり、費やすエネルギーやコストが増加したが、本発明に係る粘着剤組成物は、高温での粘度が特定の範囲であり、ホットメルト方式による塗工が可能であるため、比較的膜厚が厚い粘着剤層を、従来よりも少ないエネルギー及びコストで、かつ短時間で製造することができる。
【0045】
本発明に係る粘着テープは、不織布の両面に粘着剤層を有する、両面テープであることがより好ましい。また、本発明に係る粘着テープは、不織布の両面に上記厚みの粘着剤層を有することがより好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態に係る粘着テープの構成を
図1に示す。粘着テープは、不織布3の両面に粘着剤層2及び粘着剤層4を有する。また、粘着剤層2は、不織布と接する面と対向する面に、両面剥離フィルム1が貼合されている。
【0047】
2.1 粘着力
本発明に係る粘着テープは、JIS Z0237に基づく80℃におけるポリプロピレン樹脂に対する粘着力が2.40N/cm以上であることが好ましく、3.00N/cm以上であることがより好ましく3.50N/cm以上であることがさらにより好ましい。粘着力は、具体的には例えば、2.40,2.50,2.60,2.70,2.80,2.90,3.00,3.50,4.00,4.50,5.00,5.50,6.00,6.50,7.00,7.50,8.00,8.50,9.00,9.50,10.00N/cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
粘着力は、粘着剤組成物の配合の種類及び量を調整し、特には、粘着テープの保持力及び粘着剤組成物の溶融粘度を特定の数値範囲になるよう、粘着剤組成物の配合の種類及び量を調整することで制御することができる。粘着力は、JIS Z0237「10.粘着力」に基づき、80℃雰囲気下でポリプロピレン樹脂に対する180°ピール粘着力を測定することで求めることができる。
【0048】
2.2 保持力
本発明に係る粘着テープは、JIS Z0237に基づく70℃における保持力が100分以上であり、150分以上であることがより好ましい。保持力は、具体的には例えば、100,150,200,250,300,350,400,450,500,550,600,650,700,750,800,850,900,950,1000,1050,1100,1150,1200,1250,1300分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。保持力は、粘着剤組成物の配合の種類及び量を調整することで制御することができる。保持力は、JIS Z0237「13.保持力」に基づき70℃雰囲気下で、SUS板に粘着面積25mm×25mmで粘着テープを貼り付け、荷重1kgとして、おもりが落下するまでの時間を測定することで評価できる。
【0049】
本発明に係る粘着テープは、ポリプロピレン等のオレフィン系に対する高温でオレフィン系材料に対する高い粘着力及び高い保持力を有し、さらに、高温での粘度が低く、ホットメルト方式による塗工が可能であるため、少ないエネルギー及びコストで、かつ短時間で粘着テープを製造することができる。本発明に係る粘着テープは、このような特性を活かし、家電、自動車、建築等の各産業分野で、より信頼性高く、少ないコストで、様々な部材同士を接着することができる。本発明の一実施形態に係る粘着テープは、例えば、自動車のドアや天井、トランクルーム、インストルメントパネル周辺の部品の固定、エアコンやカーナビ周辺の組立等の自動車分野の内装部品の固定や、OA機器、家電等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0051】
(粘着剤組成物の調製)
事前にニーダー混練機(トーシン社製)を200℃に昇温した。ニーダー混練機に、第1のタッキファイヤー、第2のタッキファイヤー、第3のタッキファイヤー、酸化防止剤、可塑剤を添加して10分間15rpmで混練した。その後、ブタジエン部分が部分的に水素添加されたスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体を添加し、さらに100分15rpmで混練し、粘着剤組成物1~27を得た。各成分の配合量(質量部)を表1及び表2に示す。なお、表中の第1のタッキファイヤーの粘度は25℃での粘度である。
【0052】
第2のタッキファイヤーとして用いた成分の軟化点等を以下に示す。
アルコン P-110(荒川化学工業株式会社製):完全水添C9、軟化点110±5℃
PX1150N(ヤスハラケミカル社製):テルペン樹脂、軟化点115±5℃
ペトロタック90(東ソー株式会社製):C5/C9、軟化点95℃
ESCOREZ 1310(エクソンモービル):C5、軟化点88~98℃
【0053】
第3のタッキファイヤーとして用いた成分の軟化点等を以下に示す。
QUINTONE2940(日本ゼオン社製):C5、軟化点141℃
P-140(荒川化学社製):水添C9、軟化点140℃
T-145(ヤスハラケミカル社製):テルペンフェノール樹脂、軟化点145℃
T-160(ヤスハラケミカル社製):テルペンフェノール樹脂、軟化点160℃
DS-816(ハリマ化成社製):重合ロジンエステル、軟化点150℃
DS-822(ハリマ化成社製):重合ロジンエステル、軟化点165℃
【0054】
ブタジエン部分が部分的に水素添加されたスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体として用いた成分の重量平均分子量を以下に示す。
アサプレン N521(旭化成株式会社製):SBBS(ブタジエン部分が部分的に水素添加されているスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体である、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体)、重量平均分子量15万
タフテック P1500(旭化成株式会社製):SBBS(ブタジエン部分が部分的に水素添加されているスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体である、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体)、重量平均分子量8万
【0055】
(粘着テープの(両面テープ)の製造)
粘着剤組成物1~27を、メルターで200℃に加温して溶解させ、スロットダイコーター(ITWダイナテック社)でセルロース・レーヨン不織布(大福製紙、5200 18g/m2)に50μm厚で塗工し、両面剥離紙と貼合して巻き取った。さらに、粘着剤組成物が塗工されていない面に対して、同様にスロットダイコーター(ITWダイナテック社)を用いて50μm厚の粘着剤組成物を塗工した。本発明における膜厚とは、基材の膜厚をテープの層厚から差し引き、両面テープの場合はその膜厚を2で割る事で測定した。膜厚測定機は、バネ式のJIS B 7503に規定するダイヤルゲージを使用し、測定圧力は20~60kpaとした。
【0056】
(評価)
得られた粘着剤組成物、及び粘着テープについて、以下の評価を行った。
<粘着剤組成物の200℃粘度>
レオメーター(アントンパール製、MCR302)を用いて、200℃で、コーンプレート(1°、25mm径)を用いてせん断速度10(1/s)で粘度測定を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0057】
<粘着テープの粘着力>
JIS Z0237「10.粘着力」に基づき、80℃雰囲気下でポリプロピレン樹脂に対する粘着力(180°ピール粘着力)を測定した。まず、厚み25μmのPETフィルムを両面テープの片側に貼り付け、そのテープの他方の面をポリプロピレン板に貼り付け2kgで圧着した。このサンプルをオートグラフにセットし、30分経過後、粘着力測定を行った。本測定に使用したポリプロピレン板はコウベポリシート(品番 PP-N-BN、昭和電工マテリアルズ株式会社製)2mm厚を5cm×20cmに打ち抜いて使用した。結果を表1及び表2に示す。
【0058】
<粘着テープの保持力>
JIS Z0237「13.保持力」に基づき70℃における保持力を測定した。70℃雰囲気下で、SUS板に粘着面積25mm×25mmで粘着テープを貼り付けた。荷重は1kgとして、おもりが落下するまでの時間を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0059】
【0060】
【符号の説明】
【0061】
1 両面剥離フィルム
2 粘着剤層
3 不織布
4 粘着剤層