(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】筒状ワークの寸法測定装置及び同装置の位置決め方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/08 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
G01B5/08
(21)【出願番号】P 2024059323
(22)【出願日】2024-04-02
【審査請求日】2024-04-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】菊池 渡
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-269220(JP,A)
【文献】特開平09-170919(JP,A)
【文献】特開昭62-191709(JP,A)
【文献】特開2017-146188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
21/00-21/32
G01M 13/00-13/045
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ワークの径を測定する筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記筒状ワークの外に配置され前記筒状ワークに押し当てられる一対の第1接触子と、この第1接触子とは別に前記筒状ワークの外に配置され前記筒状ワークに押し当てられ前記第1接触子とは異なる径を測定する一対の第2接触子と、前記第1接触子の位置情報に基づいて前記一対の第1接触子間の距離を演算し、前記第2接触子の位置情報に基づいて前記一対の第2接触子間の距離を演算する制御部を備え、
前記筒状ワークの長手中心軸に直交する軸を直交中心軸としたときに、
前記第1接触子同士を結ぶ第1中心軸と、前記第2接触子同士を結ぶ第2中心軸とが、前記直交中心軸を基準にして線対称の位置に配置されていることを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記第1接触子と前記第2接触子は、各々シリンダユニットに設けられており、
このシリンダユニットは、ピストンを収納する細長いシリンダと、前記ピストンから前記シリンダの外まで延びて先端に前記第1接触子又は前記第2接触子を有するピストンロッドと、前記シリンダに設けられ前記ピストンの前記ピストンロッドから遠い方の面を押す圧縮エアを供給するエア口と、前記シリンダに設けられ前記ピストンの前記ピストンロッド側の面を押すリターンばねと、前記シリンダに収納され前記ピストンの位置を測定する位置測定機構とからなることを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記筒状ワークは外歯を有し、この外歯の歯先に接触させて大径を測定する接触子と、前記外歯の歯溝に挿入してオーバボール径を測定する接触子と、前記外歯の歯底に接触させて小径を測定する接触子との3種の接触子のうち、1つが前記第1接触子であり、残りのうちの1つが前記第2接触子であることを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項4】
請求項1記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
この筒状ワークの寸法測定装置は、前記筒状ワークを載置しつつ回すターンテーブルを備えると共に、このターンテーブルの外に配置され前記筒状ワークの回転基準を検出する基準検出センサを備えていることを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項5】
請求項4項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記ターンテーブルは、昇降機構で支持されていることを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項6】
請求項5項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記筒状ワークの高さ寸法内において、前記ターンテーブルの上面からの第1高さと、この第1高さより上位の第2高さが設定されたときに、
前記制御部は、前記第1中心軸に前記第1高さが合致するように前記昇降機構を制御し、前記第1高さで前記ターンテーブルを回しながら複数箇所の測定を実施し、次に、前記第1中心軸に前記第2高さが合致するように前記筒状ワークを上げ、前記第2高さで前記ターンテーブルを回しながら複数箇所の測定を実施し、次に、前記第1中心軸に前記第1高さが合致するように前記筒状ワークを下げる、一連の制御をなすことを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項7】
請求項6項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記ターンテーブルにマスターゲージを載せ、複数箇所の測定値を取得したときに、前記制御部は、取得した前記測定値に基づいて、前記筒状ワークにおける測定値を補正することを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項8】
請求項3記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記第1接触子は、前記オーバボール径を測定する接触子であり、
前記制御部は、オーバボール径を測定する接触子を、測定前に少なくとも1回だけ前記歯溝へ挿入する制御をなすことを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項9】
請求項7項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記制御部は、測定値が合格基準から外れたときに、不合格の表示を行うことを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項10】
請求項7項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記制御部は、取得した前記測定値を分析し、測定値が合格基準内であっても注意又は異常の表示を行うことを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項11】
請求項6項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記制御部は、精密測定の指令を受けたとき又は定期的に、測定箇所を増加する制御をなすことを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項12】
請求項4項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記ターンテーブルは、回転用制御モータで駆動され、
前記制御部は、前記回転用制御モータの回転角制御及び速度制御をなすことを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項13】
請求項5項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記昇降機構は、ターンテーブルに固定されたナットと、縦に延びて前記ナットにねじ込まれるねじ軸と、このねじ軸を回転自在に支える支持材と、前記ねじ軸の下端に固定された大径プーリと、モータ軸に小径プーリを有する昇降用制御モータと、前記大径プーリと前記小径プーリとに渡したベルトとを備え、
前記制御部は、前記筒状ワークが所定の高さになるように、前記昇降用制御モータを制御することを特徴とする筒状ワークの寸法測定装置。
【請求項14】
請求項1項記載の筒状ワークの寸法測定装置の位置決め方法であって、
前記筒状ワークの寸法測定装置は、前記筒状ワークの中心穴に嵌るセンター軸と、前記第1接触子及び第2接触子を各々支えるクランプ及びL字ブラケットと、前記L字ブラケットを支えるコラムと、このコラムに前記L字ブラケットを固定する固定ボルトとを含み、
前記センター軸に着脱自在に嵌めるボスと、このボスを貫通して前記L字ブラケットまで延びるバーと、前記クランプと同形であって前記バーの両端に取外し可能に取付けられる治具クランプとを、準備する工程と、
前記L字ブラケットから前記クランプ及び前記第1・第2接触子を外し、前記センター軸から前記筒
状ワークを外す工程と、
前記固定ボルトを緩めて前記L字ブラケットを移動可能にする工程と、
前記ボスを前記センター軸に嵌める工程と、
前記治具クランプを介して前記バーの両端に一対のL字ブラケットを固定する工程と、
この固定した状態で、前記固定ボルトを締め、前記一対のL字ブラケットを移動不能にする工程と、
前記治具クランプ、前記バー及び前記ボスを撤去する工程と、
位置決めされた一対のL字ブラケットへ前記クランプを介して前記第1接触子を固定し、位置決めされた一対のL字ブラケットへ前記クランプを介して前記
第2接触子を固定する工程とからなり、
前記ボス、前記バー及び前記治具クランプからなる調整治具を用いて、前記第1接触子及び前記第2接触子の位置決めを行う筒状ワークの寸法測定装置の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状ワークの径を測定する寸法測定装置及び同装置の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[用語の説明]
オーバボール径:OBDと略記される。ギヤの歯厚を測定するときに用いられる径である。
筒状ワークの径:OBD、OBDより大きな大径、OBDより小さい小径の総称である。
【0003】
[従来のオーバボール径測定装置]
筒状ワークの径を測定する寸法測定装置は、各種のものが実用に供されてきた。その一つに、オーバボール径測定装置が知られている(例えば、特許文献1(
図1)参照)。
【0004】
ギヤを製造すると、歯厚が規定値より大きくなる場合や小さくなる場合がある。歯厚が規定値から許容値を超えて大きくなる、又は小さくなると、そのギヤは不合格となる。
ギヤの歯厚をキャリパーで直接測定する他、オーバボール径による測定法が知られている。
【0005】
[オーバボール径による測定法]
所定の径のボールを2個準備する。ギヤの歯溝に、180°ピッチで2個のボールを挿入する。歯厚が大きいと歯溝が小さくなり、ボールは浅く入る。歯厚が小きいと歯溝が大さくなり、ボールは深く入る。2個のボールの外側同士(又は内側同士)を測る。この測定値に基づいて歯厚が規定値に収まっているか否かが判定できる。
【0006】
[従来の技術の概要]
特許文献1に開示されるオーバボール径測定装置では、主軸(θ軸)にギヤを取付ける。ギヤはθ軸回りに回される。θ軸に直交する軸(XU軸、XL軸、以下便宜的X軸という。)に沿って一対の接触子(ボール)が進退する。そして、θ軸に直交し且つXU軸に直交する直交軸(Y軸)に沿って、一対のボールは移動可能とされる。
【0007】
[従来の技術の利点]
仮に、一対のボールがY軸に沿って移動不能とした場合、ギヤが主軸(θ軸)で位置決めされているため、ギヤの歯溝にボールが円滑に入らないことがある。
この場合、特許文献1の技術であれば、ボール側がY軸に沿って移動し、結果としてギヤの歯溝にボールが円滑に入るとい利点がある。
【0008】
なお、X軸に沿ってボールを移動にする機構を便宜的にX軸移動機構と呼び、Y軸に沿って可動にする機構を便宜的にY軸移動機構と呼ぶことにする。
【0009】
X軸移動機構はY軸移動機構に載っている。そのため、仮にY軸移動機構が揺れる(または変形する)と、X軸移動機構は一緒に揺れる(または変形する)。
X軸移動機構はボールを移動する機構であるから、位置が変化することが好ましくない。対策として、Y軸移動機構の剛性を高めることが有効である。
【0010】
[従来の技術の欠点]
すなわち、特許文献1の技術では、Y軸移動機構にX軸移動機構を付設するため、オーバボール径測定装置は構造が複雑で、且つ高価になる。さらには、Y軸移動機構の剛性を高めるとさらに高価になると共にオーバボール径測定装置が大型になる。
【0011】
この種の寸法測定装置において、構造が複雑であるほど、故障が起こりやすくなり、補修費用が嵩む。このような費用の高騰は、寸法測定装置の普及を妨げる要因となる。
寸法測定装置の普及を促すためには、構造が簡単で、且つ安価な寸法測定装置を望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、構造が簡単で、且つ安価な寸法測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、課題を解決するために種々の検討を重ねる中で、2組(二対)の接触子を使用することの着想を得た。この着想を
図1(a)、(b)に基づいて説明する。
【0015】
図1(a)は比較例を説明する図である。
筒状ワーク101の外周を一対の接触子102、102で押圧した場合、接触子102、102の中心を通る中心軸104から、筒状ワーク101が中心軸104に直交する方向(図右又は左)へ移動する可能性がある。
この移動を許容する技術が特許文献1に開示される技術であると言える。
【0016】
特許文献1に開示される技術に代わる技術を、
図1(b)に基づいて、説明する。
図1(b)において、中心軸に符号11を与え、中心軸11を第1中心軸、第2中心軸と区別するときには、第1にA、第2にBを添え、第1中心軸11A、第2中心軸11Bと呼ぶことにする。以下、他の構成要素についても同様である。
【0017】
図1(b)において、Y軸から時計方向へ角度θだけ回転させた軸を第1中心軸11Aとし、この第1中心軸11A上に一対の第1接触子13A、13Aを配置する。筒状ワーク70の外周を一対の第1接触子13A、13Aで押圧すると、筒状ワーク70は第1中心軸11Aから第1中心軸11Aに直交する方向へ移動する可能性はある。
【0018】
Y軸から反時計方向へ角度θだけ回転させた軸を第2中心軸11Bとし、この第2中心軸11B上に一対の第2接触子13B、13Bを配置する。筒状ワーク70の外周を一対の第2接触子13B、13Bで押圧すると、筒状ワーク70は第2中心軸11Bから第2中心軸11Bに直交する方向へ移動する可能性はある。
なお、一対の第2接触子13B、13Bは、第1接触子13A、13Aとは異なる周面(径が異なる面)を押圧する。
【0019】
第1中心軸11Aに直交する方向への移動と、第2中心軸11Bに直交する方向への移動とが相殺し合い、バランスがとれた所で筒状ワーク70は静止する。筒状ワーク70の長手中心軸(図面表裏方向へ延びる中心軸)70aは、X軸とY軸の原点17からδだけ変位して静止する。
すなわち、一対の第1接触子13A、13Aと一対の第2接触子13B、13Bとにより、筒状ワーク70が位置決めされた。この状態で寸法測定が行われる。
【0020】
以上の知見に基づいて完成した発明は、次のとおりである。
請求項1に係る発明は、筒状ワークの径を測定する筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記筒状ワークの外に配置され前記筒状ワークに押し当てられる一対の第1接触子と、この第1接触子とは別に前記筒状ワークの外に配置され前記筒状ワークに押し当てられ前記第1接触子とは異なる径を測定する一対の第2接触子と、前記第1接触子の位置情報に基づいて前記一対の第1接触子間の距離を演算し、前記第2接触子の位置情報に基づいて前記一対の第2接触子間の距離を演算する制御部を備え、
前記筒状ワークの長手中心軸に直交する軸を直交中心軸としたときに、
前記第1接触子同士を結ぶ第1中心軸と、前記第2接触子同士を結ぶ第2中心軸とが、前記直交中心軸を基準にして線対称の位置に配置されていることを特徴とする。
【0021】
すなわち、
図1(b)において、筒状ワーク70の外に配置され筒状ワーク70に押し当てられる一対の第1接触子13A、13Aと、この第1接触子13A、13Aとは別に筒状ワーク70の外に配置され筒状ワーク70に押し当てられ第1接触子13A、13Aとは異なる径を測定する一対の第2接触子13B、13Bとを備え、筒状ワーク70の長手中心軸70aに直交する軸を直交中心軸70bとしたときに、第1接触子13A、13A同士を結ぶ第1中心軸11Aと、第2接触子13B、13B同士を結ぶ第2中心軸11Bとが、直交中心軸70bを基準にして線対称の位置に配置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記第1接触子と前記第2接触子は、各々シリンダユニットに設けられており、
このシリンダユニットは、ピストンを収納する細長いシリンダと、前記ピストンから前記シリンダの外まで延びて先端に前記第1接触子又は前記第2接触子を有するピストンロッドと、前記シリンダに設けられ前記ピストンの前記ピストンロッドから遠い方の面を押す圧縮エアを供給するエア口と、前記シリンダに設けられ前記ピストンの前記ピストンロッド側の面を押すリターンばねと、前記シリンダに収納され前記ピストンの位置を測定する位置測定機構とからなることを特徴とする。
【0023】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記筒状ワークは外歯を有し、この外歯の歯先に接触させて大径を測定する接触子と、前記外歯の歯溝に挿入してオーバボール径を測定する接触子と、前記外歯の歯底に接触させて小径を測定する接触子との3種の接触子のうち、1つが前記第1接触子であり、残りのうちの1つが前記第2接触子であることを特徴とする。
【0024】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
この筒状ワークの寸法測定装置は、前記筒状ワークを載置しつつ回すターンテーブルを備えると共に、このターンテーブルの外に配置され前記筒状ワークの回転基準を検出する基準検出センサを備えていることを特徴とする。
【0025】
請求項5に係る発明は、請求項4項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記ターンテーブルは、昇降機構で支持されていることを特徴とする。
【0026】
請求項6に係る発明は、請求項5項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記筒状ワークの高さ寸法内において、前記ターンテーブルの上面からの第1高さと、この第1高さより上位の第2高さが設定されたときに、
前記制御部は、前記第1中心軸に前記第1高さが合致するように前記昇降機構を制御し、前記第1高さで前記ターンテーブルを回しながら複数箇所の測定を実施し、次に、前記第1中心軸に前記第2高さが合致するように前記筒状ワークを上げ、前記第2高さで前記ターンテーブルを回しながら複数箇所の測定を実施し、次に、前記第1中心軸に前記第1高さが合致するように前記筒状ワークを下げる、一連の制御をなすことを特徴とする。
【0027】
請求項7に係る発明は、請求項6項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記ターンテーブルにマスターゲージを載せ、複数箇所の測定値を取得したときに、前記制御部は、取得した前記測定値に基づいて、前記筒状ワークにおける測定値を補正することを特徴とする。
【0028】
請求項8に係る発明は、請求項3記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記第1接触子は、前記オーバボール径を測定する接触子であり、
前記制御部は、オーバボール径を測定する接触子を、測定前に少なくとも1回だけ前記歯溝へ挿入する制御をなすことを特徴とする。
【0029】
請求項9に係る発明は、請求項7項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記制御部は、測定値が合格基準から外れたときに、不合格の表示を行うことを特徴とする。
【0030】
請求項10に係る発明は、請求項7項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記制御部は、取得した前記測定値を分析し、測定値が合格基準内であっても注意又は異常の表示を行うことを特徴とする。
【0031】
請求項11に係る発明は、請求項6項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記制御部は、精密測定の指令を受けたとき又は定期的に、測定箇所を増加する制御をなすことを特徴とする。
【0032】
請求項12に係る発明は、請求項4項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記ターンテーブルは、回転用制御モータで駆動され、
前記制御部は、前記回転用制御モータの回転角制御及び速度制御をなすことを特徴とする。
【0033】
請求項13に係る発明は、請求項5項記載の筒状ワークの寸法測定装置であって、
前記昇降機構は、ターンテーブルに固定されたナットと、縦に延びて前記ナットにねじ込まれるねじ軸と、このねじ軸を回転自在に支える支持材と、前記ねじ軸の下端に固定された大径プーリと、モータ軸に小径プーリを有する昇降用制御モータと、前記大径プーリと前記小径プーリとに渡したベルトとを備え、
前記制御部は、前記筒状ワークが所定の高さになるように、前記昇降用制御モータを制御することを特徴とする。
【0034】
請求項14に係る発明は、請求項1項記載の筒状ワークの寸法測定装置の位置決め方法であって、
前記筒状ワークの寸法測定装置は、前記筒状ワークの中心穴に嵌るセンター軸と、前記第1接触子及び第2接触子を各々支えるクランプ及びL字ブラケットと、前記L字ブラケットを支えるコラムと、このコラムに前記L字ブラケットを固定する固定ボルトとを含み、
前記センター軸に着脱自在に嵌めるボスと、このボスを貫通して前記L字ブラケットまで延びるバーと、前記クランプと同形であって前記バーの両端に取外し可能に取付けられる治具クランプとを、準備する工程と、
前記L字ブラケットから前記クランプ及び前記第1・第2接触子を外し、前記センター軸から前記筒状ワークを外す工程と、
前記固定ボルトを緩めて前記L字ブラケットを移動可能にする工程と、
前記ボスを前記センター軸に嵌める工程と、
前記治具クランプを介して前記バーの両端に一対のL字ブラケットを固定する工程と、
この固定した状態で、前記固定ボルトを締め、前記一対のL字ブラケットを移動不能にする工程と、
前記治具クランプ、前記バー及び前記ボスを撤去する工程と、
位置決めされた一対のL字ブラケットへ前記クランプを介して前記第1接触子を固定し、位置決めされた一対のL字ブラケットへ前記クランプを介して前記第2接触子を固定する工程とからなり、
前記ボス、前記バー及び前記治具クランプからなる調整治具を用いて、前記第1接触子及び前記第2接触子の位置決めを行う筒状ワークの寸法測定装置の位置決め方法を提供する。
【発明の効果】
【0035】
請求項1に係る発明では、2組(二対)以上の接触子により、異なる径(例えば、オーバボール径、大径、小径)など多種類の寸法を、1台の寸法測定装置で測定することができる。しかも、2組(二対)の接触子を、直交中心軸を基準にして線対称に配置して筒状ワークを押圧することで、筒状ワークの位置決めが可能となる。
【0036】
仮に、ワーク位置決め装置と寸法測定装置を各々準備すると、設備コストが嵩む。対して、本発明では、寸法測定装置でワークの位置決めもなすため、設備コストを圧縮することができる。そして、寸法測定装置は、複数対の接触子を備えるだけであるから、構造は簡単であり、安価となる。
すなわち、本発明により、構造が簡単で、且つ安価な寸法測定装置が提供される。
【0037】
請求項2に係る発明では、接触子は細長いシリンダユニットで支持される。細長いため、狭い箇所に接触子を配置することができる。結果、寸法測定装置に、筒状ワークの外周に沿って多数の接触子を容易に配置し、1回で多種類の外径を測定することができる。
【0038】
請求項3に係る発明では、筒状ワークは外歯を有し、寸法測定装置でオーバボール径と大径、又はオーバボール径と小径が測定可能である。
オーバボール径を測定するため、歯溝を有する筒状ワークの品質を向上させることができる。
【0039】
請求項4に係る発明では、筒状ワークをターンテーブルで回しながら寸法測定を行うため、筒状ワークの外周の多数箇所の寸法を自動的に測定することができる。
【0040】
請求項5に係る発明では、ターンテーブルは、昇降機構で支持されているため、高さが異なる複数箇所の寸法を測定することができる。したがって、クラッチプーリなど円板の周縁を折り曲げて立てた側壁に長い歯溝を形成する筒状ワークに対し、高さが異なる複数箇所の測定値に基づいて、歯溝に沿った曲がりを評価することができ、不良品を検出することができる。
【0041】
請求項6に係る発明では、第1高さにおける寸法測定を複数箇所実施し、第1高さより上位の第2高さにおける寸法測定を複数箇所実施し、一連の測定が終わったら筒状ワークを最初の高さに戻す。寸法測定を効率よく、迅速に行うことができる。測定が短時間で終わるため、本発明に係る寸法測定装置を、自動加工ラインに適用することができる。
【0042】
請求項7に係る発明では、マスターゲージを用いて補正値を決定し、この補正値で測定値を補正するため、測定値の信頼性がより高まる。
【0043】
請求項8に係る発明では、測定前に第1接触子で筒状ワークの位置を修正する。この修正により、第1接触子のボールを、より確実に歯溝へ挿入することができる。結果、オーバボール径の測定値の信頼性(測定精度)がさらに高まる。
【0044】
請求項9に係る発明では、測定値が合格基準から外れたときに、不合格の表示を行う。 量産に適用した場合、量産中に不合格を表示することで、不良品の流出を早期に阻むことができる。
【0045】
請求項10に係る発明では、測定値が合格基準内であっても注意又は異常の表示を行うため、不良品の流出をさらに早期に阻むことができる。
【0046】
請求項11に係る発明では、精密測定を適宜実施することで、測定精度の確認ができる。
【0047】
請求項12に係る発明では、ターンテーブルは、回転用制御モータで駆動される。筒状ワークの回転方向における位置が精度よく決定される。
【0048】
請求項13に係る発明では、ターンテーブルは、昇降用制御モータとねじ軸により昇降される。筒状ワークの高さ方向における位置が精度よく決定される。
【0049】
請求項14に係る発明では、調整治具を用いて、接触子の位置決め(特に、軸合わせ)が容易になされる。
そのための、調整治具は、ボス、バー及び治具クランプからなる簡単な治具であり、治具は安価であり、それの調達は容易である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の基本原理を説明する図であり、(a)は比較例を説明する図であり、(b)は実施例を説明する図である。
【
図2】本発明で使用する接触子の基本構造を説明する図であり、(a)は接触子を有するシリンダユニットの構造を説明する断面図、(b)は第1接触子の作用図、(c)は第2・第3接触子の作用図、(d)は位置測定機構の作用図である。
【
図3】本発明に係る筒状ワークの寸法測定装置の正面図である。
【
図4】L字ブラケット、クランプ及びシリンダユニットの斜視図である。
【
図5】本発明に係る筒状ワークの寸法測定装置の平面図である。
【
図6】(a)は筒
状ワークの斜視図、(b)は(a)のb部拡大図、(c)は基準検出センサの原理図、(d)は基準検出センサの作用図である。
【
図8】制御部で実施する通常測定モードを説明するフロー図である。
【
図9】制御部で実施する通常測定モードを説明するフロー図である。
【
図10】制御部で実施する通常測定モードを説明するフロー図である。
【
図11】(a)、(b)は測定値の傾向を説明する図である。
【
図12】制御部で実施する精密測定モードを説明するフロー図である。
【
図13】(a)~(d)は調整治具の構成及び作用を説明する図である。
【
図14】制御部で実施する補正値決定モードを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0052】
[接触子]
図2(a)に示すように、接触子13は、シリンダユニット20に設けられている。なお、接触子13をさらに第1~第3に区別するときには、先に説明したように、第1にA、第2にBを添え、さらに第3にCを添えて、第1接触子13A、第2接触子13B、第3接触子13Cと呼ぶ。
【0053】
図2(b)に示すように、第1接触子13Aは、外歯73の歯溝に挿入してオーバボール径を測定する接触子である。そのために、第1接触子13Aは先端に所定の外径のボール14を有する。
【0054】
図2(c)に示すように、第2接触子13Bは、外歯73の歯先74に接触して大径を測定する接触子である。そのために、第2接触子13Bは先端が尖り先となっている。
第3接触子13Cは、外歯73の歯底75に接触して小径を測定する接触子である。そのために、第3接触子13Cも先端が尖り先となっている。先尖りは、円錐台であってもよい。
【0055】
[シリンダユニット]
図2(a)に示すように、シリンダユニット20は、ピストン21を収納する細長いシリンダ22と、ピストン21からシリンダ22の外まで延びて先端に第1接触子13Aと第2接触子13Bと第3接触子13Cの一つを有するピストンロッド23と、シリンダ22に設けられピストン21のピストンロッド23から遠い方の面を押す圧縮エアを供給するエア口24と、シリンダ22に設けられピストン21のピストンロッド23側の面を押すリターンばね25と、シリンダ22に収納されピストン21の位置(すなわち、接触子13の位置)を測定する位置測定機構30とからなる。
【0056】
好ましくは、エア口24は、シリンダ22の開口を閉じるリッド26に設けられる。また、ピストン21の後退限を規定するために、リッド26を開けて、所定長さの筒状ストッパ27を挿入する。
【0057】
例えば、三方弁型のエア弁28を切り換えて、圧縮空気源29の圧縮エアをエア口24へ供給すると、ピストン21がリターンばね25を圧縮するように前進し、ピストンロッド23と共に接触子13が前進する。
エア弁28を切り換えて、圧縮空気源29からの供給を遮断し、エア口24を大気に開放すると、リターンばね25の作用でピストンロッド23と共に接触子13が後進し、元の位置(待機位置)へ戻る。
【0058】
シリンダユニット20が細長いため、限られたスペースに多数本のシリンダユニット20を効率よく配置することができる。
【0059】
[位置測定機構]
シリンダユニット20に収納される位置測定機構30は、例えば、ピストンロッド23の逆側へピストン21から延びるスケール板31と、このスケール板31を挟むようにして配置される投光器32と受光器33とからなる。
【0060】
図2(d)に示すように、スケール板31には、狭い帯状の通穴であるスリット34が複数個設けられている。投光器32からレーザ光を発射すると、一部がスリット34を通過して、受光器33に到達する。受光器33は微細な受光素子が密に並んでおり、受光した素子と未受光素子とが区分されることから、受光長さL1とL2とが認識される。
【0061】
スケール板31が前進する又は後進すると、(スリット34の幅/受光長さL1)と(スリット34の幅/受光長さL2)の比率が変化する。この変化を監視し、スケール板31の位置を演算する。結果、位置測定機構30により、接触子13の位置が測定される。
【0062】
[筒状ワークの寸法測定装置]
図3に示すように、筒状ワークの寸法測定装置40(以下、寸法測定装置40と記す。)は、筒状ワーク70を載置しつつ回すターンテーブル41と、このターン
テーブル41を支持する昇降機構45と、接触子13を支えるクランプ42及びスタンド43と、これらを一括して支えるベース44とを備える。
【0063】
[昇降機構]
昇降機構45は、例えば、ベース44に立てられる支持材46と、この支持材46に軸受47を介して縦向きに取付けられるねじ軸48と、このねじ軸48にねじ結合されると共に支持材46で昇降可能にガイドされるナット49と、このナット49から上に延びる軸51と、ねじ軸48の下端に固定される大径プーリ52と、支持材46に固定される昇降用制御モータ53と、この昇降用制御モータ53のモータ軸に取付けられる小径プーリ54と、この小径プーリ54と大径プーリ52とに掛け渡されるベルト55とからなる。
【0064】
昇降用制御モータ53は、ステッピングモータが好適であるが、回転角度の細かな制御や精密な位置制御が可能な制御モータであればよく、種類は問わない。
【0065】
支持材46に縦溝56が設けられ、ナット49にキー57が設けられ、このキー57が縦溝56に嵌っている。キー57及び縦溝56はスプラインであってもよい。
昇降用制御モータ53で、小径プーリ54、ベルト55及び大径プーリ52を介してねじ軸48が回される。キー57の存在により、ナット49は回転しない。そのため、ナット49は上昇又は下降する。結果、ターンテーブル41は昇降する。すなわち、昇降用制御モータ53により、ターンテーブル41の高さは精密に制御される。
【0066】
[ターンテーブル]
ターンテーブル41は、軸受58を介して軸51に回転可能に支持されている。ナット49に回転用制御モータ61が取付けられ、この回転用制御モータ61のモータ軸に小径ギヤ62が取付けられ、この小径ギヤ62がターンテーブル41の下部に一体形成された(または取付けられた)大径ギヤ63に噛み合っている。
回転用制御モータ61で、小径ギヤ62及び大径ギヤ63を介してターンテーブル41が回される。回転用制御モータ61により、ターンテーブル41の回転角度は精密に制御される。
【0067】
回転用制御モータ61は、ステッピングモータが好適であるが、回転角度の細かな制御や精密な位置制御が可能な制御モータであればよく、種類は問わない。
【0068】
[スタンド]
接触子13を支えるスタンド43は、例えば、ベース44から上へ延ばしたコラム64と、このコラム64に載せたL字ブラケット65と、このL字ブラケット65をコラム64に固定する固定ボルト66とからなる。
なお、L字ブラケット65の縦寸法を十分に大きくすることで、コラム64を省くことは差し支えない。しかし、固定ボルト66の高さ位置が下がり作業性が悪くなるので、コラム64で嵩上げすることにより、固定ボルト66を高い位置に配置することが望ましい。
【0069】
[L字ブラケットとクランプ]
図4に示すように、L字ブラケット65は、横部65aとこの横部65aから上へ延びる縦部65bとからなり、L字形を呈する部材である。そして、横部65aに水平に延びる長穴65cを有する。また、縦部65bに雌ねじ部65dを有する。
【0070】
クランプ42は、クランプ本体42aと、抑え部材42bと、第1ボルト42cと、第2ボルト42dとからなる。クランプ本体42aと抑え部材42bに、シリンダユニット20に対応する溝42eが各々形成されている。
【0071】
シリンダユニット20にクランプ本体42aを当てる。次に、シリンダユニット20に抑え部材42bを被せる。この抑え部材42bを第1ボルト42cでクランプ本体42aに固定する。これで、クランプ42が、シリンダユニット20にセットされた。
【0072】
次に、第2ボルト42dを雌ねじ部65dにねじ込むことにより、クランプ本体42aをL字ブラケット65に取付ける。
次に、L字ブラケット65を、
図3に示すコラム64へ固定ボルト66を用いて固定する。
【0073】
以上により、
図3に示すように、接触子13がクランプ42及びスタンド43を介してベース44に固定される。
なお、クランプ42の構成を、変更することは差し支えない。
【0074】
図5は寸法測定装置の平面図である。
図5に示すように、スタンド43へクランプ42により第1接触子13Aが固定され、同様に、第2接触子13B及び第3接触子13Cが固定されている。
Y軸から時計方向に角度θだけ回転した第1中心軸11Aに第1接触子13A、13Aが配置され、Y軸から反時計方向に角度θだけ回転した第2中心軸11Bに第2接触子13B、13Bが配置され、X軸上の第3中心軸11Cに第3接触子13C、13Cが配置されている。角度θは、この例では30°である。
【0075】
[基準検出センサ]
加えて、筒状ワークの回転基準を検出する基準検出センサ68が、ターンテーブル41の外に配置されている。
【0076】
[筒状ワーク]
図6(a)に示すように、筒状ワーク70は、例えば、周壁71と、この周壁71の一端を閉じる底部72と、周壁71の外面に形成された外歯73とからなる。底部72には中心に、中心穴72aが設けられている。
この中心穴72aは、
図3において、ターンテーブル41から上へ延びるセンター軸41aに対して、隙間を加えた穴である。そのため、筒状ワーク70は水平に隙間の分だけ移動可能である。
【0077】
図6(b)に示すように、外歯73は、歯先74と歯底75とを有し、歯底75に小径の基準穴76が貫通する形態で設けられている。
図6(a)に示すように、基準穴76は高さ違いで、第1基準穴76Aと、第2基準穴76Bと、第3基準穴76Cとからなる。
【0078】
第1基準穴76Aは、後述する「第1高さ」に対応する穴であり、それより上位に設定された第2基準穴76Bは、「第2高さ」に対応する穴であり、それより上位の第3基準穴76Cは、「第3高さ」に対応する穴である。
【0079】
第1基準穴76Aは1個でも差し支えないが、この第1基準穴76Aを基準検出センサ68で検出することを考慮すると、全ての歯底75に設けるなど、複数個設けることが望ましい。第2・第3基準穴76B、76Cも同様である。穴の数が多いほど、少ない回転角度で基準検出が完了し、測定時間の短縮化が図れるからである。
【0080】
[基準検出センサ]
図6(c)に示すように、基準検出センサ68は、例えば、ケース68a内に発光素子68bと受光素子68cとを有する。
発光素子68bから発射したレーザ光68dが歯先74又は歯底75で反射されると、反射光が受光素子68cに到達する。受光素子68cは反射光を電気的に認識する。
【0081】
図6(d)に示すように、基準検出センサ68の中心が基準穴76に合致すると、レーザ光68dは基準穴76へ進入し、反射光が得られない。得られても弱い反射光となる。このときに、受光素子68cは基準穴76を検出する。
よって、
図5において、ターンテーブル41で筒状ワーク70が回されると、基準検出センサ68が基準穴76を検出する。
【0082】
[制御部]
図7に示すように、制御部80は、基準検出センサ68から基準検出情報を得る。
制御部80は、回転用制御モータ61の回転角制御及び速度制御をなす。
制御部80は、昇降用制御モータ53の回転角制御をなす。昇降用制御モータ53の回転角制御により、ターンテーブルの高さ位置が正確に制御される。
【0083】
制御部80は、エア弁28を開閉制御することで、一対の第1接触子13Aを前進/後進させ、オーバボール径測定値を取得し、一対の第2接触子13Bを前進/後進させ、大径測定値を取得し、一対の第3接触子13Cを前進/後進させ、小径測定値を取得する。
制御部80は、得られた測定値を、基準値と比較して、合否判定を行う。
【0084】
さらに、制御部80は、後述するフローに基づき、通常測定モード、補正値決定モード、精密測定モードなどを実行する。
【0085】
[通常測定モード]
図8に示すように、ステップ番号(以下、STと略記する。)01にて、筒状ワークをロボット(または人手)によりターンテーブルに載せる。
昇降機構を制御して、筒状ワークを「第1高さ」に設定する(ST02)。そして、ターンテーブルを所定の速度で回す(ST03)。
基準検出センサが第1基準穴を検出したら(ST04)、ターンテーブルを止める(ST05)。
【0086】
ST06にて、一対の第1接触子(OBD測定用接触子)を、前進させ後進させる。この動作は原則として1回実施する。複数回繰り返すことは差し支えない。
図2(b)に示すように、ボール14が歯溝に進入する。この進入により、筒状ワークの位相がずれている場合、このずれが是正される。
【0087】
ST07にて、第1接触子でOBDを測定し(
図2(b)参照)、第2接触子で大径を測定し(
図2(c)参照)、第3接触子で小径(
図2(c)参照)を測定する。
得られた測定値を基準値と比較して評価し(ST08)、合否を判定する(ST09)。
不合格の場合は、不合格であることを表示する(ST10)。不合格の場合は、このフローを終える。
【0088】
合格の場合は、ST11にて、ターンテーブルを所定角度(例えば120°)だけ回し、ターンテーブルを止める(ST12)。
ST13にて、一対の第1接触子(OBD測定用)を、前進させ後進させる。
そして、新しい箇所を対象に、測定を実施し(ST14)、測定値を評価し(ST15)、合否判定を行い(ST16)、不合格の場合は不合格を表示する(ST17)。
【0089】
ST18にて、第1高さでの測定を続ける場合は、ST11に戻り、ST12~ST17を繰り返す。
この繰り返しにより、第1高さにおいて複数の測定値が得られる。
ST18にて、第1高さでの測定を終了する場合は、
図9へ進む。
【0090】
図9のST21にて、昇降機構を制御して、筒状ワークを「第2高さ」に設定する
図9のST22~ST36は、
図8のST03~ST17と同じであるため、詳細な説明は省略する。
すなわち、
図9にて、第2高さにおける測定を実施する。
ST37にて、第2高さでの測定を続ける場合は、ST30に戻り、ST31~ST36を繰り返す。
この繰り返しにより、第2高さにおいて複数の測定値が得られる。
ST37にて、第2高さでの測定を終了する場合は、
図10へ進む。
【0091】
図10のST41にて、昇降機構を制御して、筒状ワークを「第3高さ」に設定する
図10のST42~ST56は、
図9のST22~ST36と同じであるため、詳細な説明は省略する。
すなわち、
図10にて、第3高さにおける測定を実施する。
ST57にて、第3高さでの測定を続ける場合は、ST50に戻り、ST51~ST56を繰り返す。
この繰り返しにより、第3高さにおいて複数の測定値が得られる。
ST57にて、第3高さでの測定を終了する場合は、ST58にて、筒状ワークをターンテーブルから取り外す。
以上で、通常測定モードが終了する。
【0092】
以上によれば、第1高さでOBD測定値が3個得られ、第2高さでOBD測定値が3個得られ、第3高さでOBD測定値が3個得られる。合計9個が得られる。
第1高さにおける最初のOBD測定値と、第2高さにおける最初のOBD測定値と第3高さにおける最初のOBD測定値とは、共通の歯溝における測定値である。
【0093】
共通の歯溝における3個のOBD測定値が同一(またはほぼ同一)であれば、歯溝は鉛直軸に沿って真っ直ぐである。
一方、共通の歯溝における3個のOBD測定値に差異があれば、歯溝の異常が疑われる。異常には、歯溝が傾いている、湾曲している、蛇行しているなどが挙げられる。異常が認められた場合は、その筒状ワークは不良品として除外される。
【0094】
OBDは、狭義にはボールの外面とボールの外面の寸法であるが、高さ違いのOBDを測定することで、歯溝の形状異常を検出することができる。
このことにより、本発明に係る寸法測定装置40の付加価値が高まる。
【0095】
図8のST08、09で説明した合否判定は、測定値を基準値と比較する他、測定値の変化の傾向を調べるようにしてもよい。
図11(a)に示すように、ある測定値が基準値を超えているが、上の許容値未満であったとする。斜線で示す部分が(測定値―基準値)で計算される「差」である。
「差」を時系列的に並べたものが
図11(b)である。
【0096】
図11(b)に示すように、「差」が増加傾向にあり、近い将来に許容値を超えることが想定されるときには、注意や警告を発することが推奨される。
すなわち、制御部は、取得した測定値の傾向を調べ、測定値が合格基準内であっても注意又は異常の表示を行う。
【0097】
注意又は異常の表示に基づいて、不合格品が発生する前に、対策を講じることにより、不合格品の発生を防止又は抑制することができる。
【0098】
[精密測定モード]
周知のとおり、検査手法には、全数検査と抜き取り検査とがある。全数検査は理想であるが、検査コストが嵩む。抜き取り検査は検査コストが小さくなるという利点がある。
上述した通常測定モードは抜き取り検査に相当する。
図6(a)に示す筒状ワーク70は、いわゆるプレス成形品である。すなわち、プレス機に金型をセットし、この金型でブランク材に塑性加工を施すことにより、プレス成形品が得られる。このときに、金型は徐々に摩耗する。そこで、金型は定期的(所定のショット回数に到達したときなど)に交換される。
【0099】
金型を交換したときに、この金型の確からしさを検証することは重要である。そこで、交換した金型で製造された筒状ワーク70に、全数検査に相当する精密測定を行うことが望まれる。
【0100】
図12のST61で、精密測定モードが選択されたか否かを調べる。
否であって、ST62で通常測定モードが選択されているときには、
図8~
図10を実施する(ST63)。
ST61で、精密測定モードが選択されているときには、ST64で、外歯の歯数のN%を測定するかを、設定する。Nが100%であれば全数検査となり、Nが50%であれば半数検査となる。
ST65にて、
図8~
図10に基づいてN%を測定する。
【0101】
図5において、一対の第1接触子13A、13Aを結ぶ第1中心軸11Aが、センター軸41aの中心(ほぼ中心を含む。)を通るように、第1接触子13A、13Aを位置決め(軸合わせ)することは重要である。第2接触子13B、第3接触子13Cについても同様である。
この位置決め(軸合わせ)の作業は、十分に慎重に行われるため、作業時間は長くなる。この作業時間を短くすることが望まれる。
作業時間を短くすることができる調整治具85を提供すると共にこの調整治具85を用いて実施する寸法測定装置の位置決め方法を、以下に説明する。
【0102】
[調整治具]
図13(a)は、
図5の部分図である。
図13(a)において、接触子13、シリンダユニット20及びクランプ42をL字ブラケット65から外す。外した状態が、
図13(b)に示される。
図13(c)に示すように、調整治具85は、センター軸41aに着脱自在に嵌めることができるボス86と、このボス86を貫通してL字ブラケット65まで延びるバー87と、このバー87の両端に嵌める治具クランプ88とからなる。
【0103】
治具クランプ88は、クランプ(
図3、符号42)と同構造であるが、寸法は異なる。シリンダユニット20が外径とバー87の外径が異なるからである。
ただし、
図13(d)に示す治具クランプ88の中心高さhaが、
図13(a)に示すクランプ42の中心高さhaと同じに設定される。これにより、クランプ42の代わりに治具クランプ88を用いても、シリンダユニット20(すなわち、接触子13)の軸合わせが可能となる。
【0104】
[位置決め方法]
位置決め方法は、
図3~
図5に示す寸法測定装置40及び
図13(c)に示す調整治具85を準備する工程が最初の工程となる。
次に、
図13(a)、(b)に示すように、L字ブラケット65からクランプ42及び第1接触子13Aを外す。第2・第3接触子13B、13Cについても同様に外す。
【0105】
図3に示すように、センター軸41aに筒状ワーク70が嵌っているときにはセンター軸41aから筒状ワーク70を外す。
【0106】
次に、
図13(b)にて、固定ボルト66を緩めてL字ブラケット65を移動可能にする。
次に、
図13(d)に示すように、治具クランプ88を介してバー87の両端に一対のL字ブラケット65を固定する。この固定した状態で、固定ボルト66を締め、L字ブラケット65を移動不能にする。
【0107】
次に、
図13(d)において、治具クランプ88、バー87及びボス86を撤去する。
撤去後の形態は、
図13(b)と同様になる。
図13(b)において、位置決めされたL字ブラケット65へクランプ42を介して第1接触子13Aを固定する。結果、
図13(a)の形態に戻り、一対の第1接触子13Aは正確に位置決めされている。第2・第3接触子13B、13Cについても同様に位置決めされる。
【0108】
以上のように、ボス86、バー87及び治具クランプ88からなる調整治具85を用いて、第1~第3接触子13A~13Cの位置決めを行うことで、迅速に且つ容易に筒状ワークの寸法測定装置40の位置決めを行うことができる。
【0109】
[マスターモデル]
マスターモデルは、
図6(a)に示す筒状ワーク70と外観は同一である。だだし、マスターモデルは鋼材から削り出すことで、製造される機械加工品である。機械加工品はプレス成形品に比較して格段に寸法の精度が良くなる。
このようなマスターモデルを用いて、補正値を求めることができる。
【0110】
[補正値決定モード]
図14のST71にて、マスターモデルをターンテーブルに載せる。
昇降機構を制御して、筒状ワークを所定高さに設定する(ST72)。そして、ターンテーブルを所定の速度で回す(ST73)。
基準検出センサが基準穴を検出したら(ST74)、ターンテーブルを止める(ST75)。
【0111】
ST76にて、一対の第1接触子(OBD測定用)を、前進させ後進させる。
ST77にて、第1接触子でOBDを測定する。(OBD基準値―OBD測定値=OBD補正値)の算式により、OBD補正値を決定する(ST78)。
ST79にて、第2接触子で大径を測定する。(大径基準値―大径測定値=大径補正値)の算式により、大径補正値を決定する(ST80)。
ST81にて、第3接触子で小径を測定する。(小径基準値―小径測定値=小径補正値)の算式により、小径補正値を決定する(ST82)。
【0112】
制御部は、OBDを測定し、得られた測定値をOBD補正値で補正する。同様に、大径を測定し、得られた測定値を大径補正値で補正し、小径を測定し、得られた測定値を小径補正値で補正する(ST83)。
以上により、測定値の信頼性をより高めることができる。
【0113】
尚、本発明の寸法測定装置40は、外歯を有する筒状ワークに好適であるが、外歯を有していない筒状ワークに適用することは差し支えない。
【0114】
また、
図3に示す筒状ワークの寸法測定装置40の構造は、適宜変更することは差し支えない。
また、
図5にて、三対の接触子を配置したが、二対の接触子を配置することや、四対以上の接触子を配置することは差し支えない。
また、ターンテーブルは120°の他、中間の60°なども追加して測定箇所を増加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、筒状ワークの外周における大径や小径を測定する寸法測定装置に好適である。
【符号の説明】
【0116】
11A…第1中心軸、11B…第2中心軸、13…接触子、13A…第1接触子、13B…第2接触子、14…ボール、20…シリンダユニット、21…ピストン、22…シリンダ、23…ピストンロッド、24…エア口、25…リターンばね、30…位置測定機構、40…筒状ワークの寸法測定装置(寸法測定装置)、41…ターンテーブル、41a…センター軸、42…クランプ、45…昇降機構、46…支持材、48…ねじ軸、49…ナット、52…大径プーリ、53…昇降用制御モータ、54…小径プーリ、55…ベルト、61…回転用制御モータ、64…コラム、65…L字ブラケット、66…固定ボルト、68…基準検出センサ、70…筒状ワーク、70a…長手中心軸、70b…直交中心軸、72a…中心穴、73…外歯、74…歯先、75…歯底、80…制御部、85…調整治具、86…ボス、87…バー、88…治具クランプ。
【要約】
【課題】構造が簡単な寸法測定装置を提供する。
【解決手段】筒状ワーク(70)の径を測定する寸法測定装置であって、筒状ワーク(70)の外に配置され筒状ワーク(70)に押し当てられる一対の第1接触子(13A)と、この第1接触子(13A)とは別に筒状ワーク(70)の外に配置され筒状ワーク(70)に押し当てられ第1接触子(13A)とは異なる径を測定する一対の第2接触子(13B)とを備え、筒状ワーク(70)の長手中心軸(70a)に直交する軸を直交中心軸(70b)としたときに、第1接触子(13A)同士を結ぶ第1中心軸(11A)と、第2接触子(13B)同士を結ぶ第2中心軸(11B)とが、直交中心軸(70b)を基準にして線対称の位置に配置されている。一対の接触子(13A、13A)と別の一対の接触子(13B、13B)とで筒状ワーク(70)を押圧することで、筒状ワーク(70)の位置決めが可能となる。
【選択図】
図1