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特許7539004通電状態検出装置および通電状態検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】通電状態検出装置および通電状態検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20240816BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20240816BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20240816BHJP
   G01R 19/15 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H02G1/02
H04B17/318
G06T7/70 B
G01R19/15
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023508806
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2022006829
(87)【国際公開番号】W WO2022202030
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021047414
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】田坂 啓
(72)【発明者】
【氏名】谷本 真一
(72)【発明者】
【氏名】松原 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤野 新九郎
(72)【発明者】
【氏名】国本 浩
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/138942(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/33896(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/2466(WO,A1)
【文献】特開2004-125426(JP,A)
【文献】特開2018-114807(JP,A)
【文献】特開2020-78209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H04B 17/318
G06T 7/70
G01R 19/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項20】
前記受信強度情報を補正するステップにおいて、前記プロセッサは、前記電線の向きと前記アンテナの向きとの間のなす角θに応じた値を前記受信強度情報が示す受信強度に乗じることにより、前記受信強度情報を補正する、
請求項13から請求項19のうちいずれか一項に記載の通電状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通電状態検出装置および通電状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には送電設備監視装置が記載されている。送電設備監視装置は、撮像部と、電磁波検出部と、送信部と、指示情報取得部と、飛行制御部とを有する。送電設備監視装置は無人飛行体に搭載される。撮像部は送電設備を撮像する。電磁波検出部は送電設備が発する電磁波を検出する。送信部は、撮像部により撮像された画像に基づく画像情報と、電磁波検出部により検出された電磁波に基づく電磁波情報とのうち、少なくとも1つを他装置に送信する。指示情報取得部は、無人飛行体を操縦する操縦者の端末から、無人飛行体の飛行を指示する指示情報を取得する。飛行制御部は、指示情報取得部により取得された指示情報に基づいて、無人飛行体の飛行を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/138942号
【発明の概要】
【0004】
本開示は、精度の高い通電状態検出装置および通電状態検出方法を提供することを目的とする。
【0005】
本開示は、電線の通電状態を検出する通電状態検出装置であって、プロセッサとメモリとを備え、前記プロセッサは、前記電線の通電状態に対応するアンテナの受信強度を示す、受信強度情報を取得し、前記電線の向きを示す情報と、前記アンテナの向きを示す情報とに基づいて前記受信強度情報を補正する、通電状態検出装置を提供する。
【0006】
本開示は、プロセッサとメモリとを備えた装置による、電線の通電状態を検出する通電状態検出方法であって、前記プロセッサが、前記電線の通電状態に対応するアンテナの受信強度を示す、受信強度情報を取得するステップと、前記プロセッサが、前記電線の向きを示す情報と、前記アンテナの向きを示す情報とに基づいて前記受信強度情報を補正するステップとを有する、通電状態検出方法を提供する。
【0007】
本開示によれば、精度の高い通電状態検出装置および通電状態検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電線軸の検出例を示す概念図
図2】アンテナ軸と、電線軸とアンテナ軸との間のなす角とを例示する概念図
図3】本開示の実施形態に係る通電状態検出システムの構成例を示すブロック図
図4】通電状態検出装置を例示する概念図
図5】通電状態検出装置へのアンテナの配置例を示す概念図
図6】電線の通電状態を検出する処理を例示するフローチャート
図7】電線の通電状態の提示例を示す概念図
図8】アンテナの向きの修正を促す情報の出力例を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示に至る経緯)
変電所等においては、作業員(以下、ユーザと表記)が巡視や保守に伴う作業や工事を行う場合がある。このような作業を行う場合、該当する機器の近傍にて作業を行うことになる。機器の保守点検あるいは工事を行うユーザは、作業中における周囲の機器の充電あるいは運転状態を認識することが難しかった。
【0010】
また、ユーザの作業中か否かにかかわらず、安全性の観点から、電線における高電圧の有無を確認することが好ましい。ユーザが電線に直接接触することは危険であるため、非接触による検知が望まれる。
【0011】
非接触による検知を実現する手法の1つは、通電している電線には電磁波が出ているため、この電磁波を測定するものである。すなわち、機器に接続した送電線から漏洩する漏洩電界の発生源の方向、すなわち漏洩電界の到来方向を知ることにより、通電の有無を確認することができる。
【0012】
ところで、電線が延びる方向と、電磁波を測定するためのアンテナが延びる方向との間の角度に応じて、アンテナが受信する信号の受信強度は変化する。そのため、電線の通電状態の検出精度は、上記の角度に応じて異なるものとなる。
【0013】
そこで、以下に示す各実施の形態においては、電磁波を測定するためのアンテナを用いて電線の通電状態を検出する場合に、アンテナの向きによらない検出精度を維持できる通電状態検出装置および通電状態検出方法の例を説明する。
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る通電状態検出装置および通電状態検出方法の構成および動作を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0015】
(実施形態)
以下、図面を用いて、本開示に係る通電状態検出装置および通電状態検出方法を説明する。図1は、電線軸の検出例を示す概念図である。電線軸とは、電線が延びる方向を示す軸を意味する。電線軸は、例えばベクトルによって表現可能である。ベクトル形式で表現された電線軸を、電線ベクトルと表記する。図1は、カメラ60によって撮像された撮像画像を概念図として表現したのである。
【0016】
撮像画像には電線が映り込んでいる。後述の通電状態検出装置10が、撮像画像に対して所定の処理を実行することにより、電線が延びる方向、すなわち電線ベクトルを計算する。なお、後述するように、撮像画像に対する画像処理以外の方法によって電線ベクトルが計算されてもよい。
【0017】
図2は、アンテナ軸と、電線軸とアンテナ軸との間のなす角θとを例示する概念図である。アンテナ軸は、アンテナが延びる方向を示す軸を意味する。図2の例においては、カメラ60の光軸とアンテナ軸とが直交するようにアンテナが固定されている。ただし、本実施の形態は前記の態様には限られず、例えばカメラ60の光軸とアンテナ軸とが平行になるようにアンテナが位置決めされてもよい。また、カメラ60の光軸とアンテナ軸との間の角度が所定の値になるようにアンテナが位置決めされてもよい。アンテナおよびカメラ60は同一の装置に内蔵されていてもよく、別々の構成要素であってもよい。電線軸とアンテナ軸との間のなす角をθとする。なお、電線ベクトルは、なす角θを求めるために用いられるベクトルである。
【0018】
図3は、本開示の実施形態に係る通電状態検出システム100の構成例を示すブロック図である。本開示の実施形態に係る通電状態検出システム100は、通電状態検出装置10と、アンテナ20と、二つのオーディオボード30および40と、オーディオインターフェース50と、カメラと、キャプチャボード70とを含む。
【0019】
アンテナ20は、通電中の電線から到来する電磁波を検出する。アンテナ20は例えばコイルを芯に巻きつけて形成され、芯がフェライトにより構成される場合はフェライトアンテナにより構成される。フェライトアンテナは、フェライト等の透磁率の高い棒状の芯に、表面を絶縁被覆した電線コイルを巻き付けることにより形成される。コイルの両端が閉じている場合は、周囲の磁界変化に応じてアンテナの内部を磁力線が通過し、電磁誘導によりコイルに起電力を発生させるため、磁界を測定することができる(ループアンテナの動作)。コイルの一端が開放されている場合、周囲の電界に応じてコイルに電圧が誘導されるため、電界を測定することができる(モノポールアンテナの動作)。なお、芯が延びる方向がアンテナ軸の方向に相当する。アンテナ20はジャイロスコープ21を備えることがある。ジャイロスコープ21については後述する。
【0020】
オーディオボード30および40は、オーディオ情報を処理する装置である。オーディオボード30はアンテナ20と接続されている。オーディオボード40はオーディオインターフェース50と接続されている。そして、オーディオインターフェース50は通電状態検出装置10と接続されている。つまり、アンテナ20と通電状態検出装置10との間に、オーディオボード30およびオーディオボード40とが介在することにより、アンテナ20と通電状態検出装置10を離隔することができる。ただし、アンテナ20は通電状態検出装置10に内蔵されていてもよく、この場合にはオーディオボード30、オーディオボード40、およびオーディオインターフェース50は不要となる。
【0021】
オーディオボード30はAD変換回路31を備えている。オーディオボード30は、アンテナ20が受信した信号をAD変換回路31によりアナログ信号からデジタル信号へと変換する。オーディオボード30は変換後のデジタル信号をオーディオボード40へと無線送信する。オーディオボード40はDA変換回路41を備えている。オーディオボード40は、オーディオボード30から受信したデジタル信号をアナログ信号へと変換する。オーディオボード40は、変換後のアナログ信号をオーディオインターフェース50のオーディオ入力部51へと入力する。
【0022】
オーディオインターフェース50は、オーディオ入力部51と、AD変換回路52と、オーディオバッファ53とを備える。オーディオボード40からオーディオ入力部51へと入力されたアナログ信号は、AD変換回路52によりデジタル信号へと変換される。変換後のデジタル信号はオーディオバッファ53に蓄積される。オーディオバッファ53に蓄積されたデジタル信号は、電線の通電状態に対応するアンテナ20の受信強度を示す、受信強度情報として、通電状態検出装置10へと入力される。
【0023】
カメラ60は、電線が映り込んだ撮像画像を撮像する。撮像画像はキャプチャボード70へと送信される。キャプチャボード70はAD変換回路71とフレームバッファ72とを備えている。キャプチャボード70は受信した撮像画像をAD変換回路71によりアナログ信号からデジタル信号へと変換する。キャプチャボード70は変換後の撮像画像のデジタル信号をフレームバッファ72に蓄積する。フレームバッファ72に蓄積された撮像画像のデジタル信号は、通電状態検出装置10へと入力される。
【0024】
外部ファイル80は、通電状態検出装置10の外部にある記憶媒体に保存されている。外部ファイル80には、カメラ60の光軸の向きを示す情報と、アンテナ20のアンテナ軸の向きを示す情報とが記録されている。例えば、外部ファイル80には、カメラ60の光軸の向きを示す光軸ベクトルと、アンテナ軸の向きを示すアンテナ軸ベクトルとが、ベクトルデータとして記録されている。通電状態検出装置10は、この外部ファイル80に記録されたデータを読み込んで、メモリ12に保存する。なお、光軸ベクトルおよびアンテナ軸ベクトルのデータは、事前にメモリ12に記憶されていてもよい。すなわち、図2に示すように、アンテナ20は、カメラ60に対して固定されていてもよい。この場合、アンテナ軸ベクトルのデータ(アンテナの向きを示す情報の一例)は、カメラ60の光軸に対する、アンテナ20の向きを示す情報である。
【0025】
なお、アンテナ20がジャイロスコープ21を備える場合には、通電状態検出装置10はアンテナ軸ベクトルのデータを、アンテナ20からオーディオボード30、オーディオボード40およびオーディオインターフェース50を経由して取得してもよい。
【0026】
通電状態検出装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、グラフィックメモリ13と、出力装置14とを備える。メモリ12、グラフィックメモリ13および出力装置14は、それぞれプロセッサ11との間でデータもしくは情報の入出力が可能に内部バス等で接続される。
【0027】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。プロセッサ11は通電状態検出装置10の制御部として機能し、通電状態検出装置10の各部の動作を全体的に統括するための制御処理、通電状態検出装置10の各部との間のデータもしくは情報の入出力処理、データの演算処理、およびデータもしくは情報の記憶処理を行う。プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムに従って動作する。
【0028】
メモリ12は、例えばプロセッサ11の処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ11の処理を規定したプログラムを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ11により生成あるいは取得されたデータが一時的に保存される。ROMには、プロセッサ11の処理を規定するプログラムが書き込まれている。なお、メモリ12は通電状態検出装置10に各種の機能を実行させるためのプログラムデータおよび、当該プログラムが用いるデータを記憶してよい。メモリ12は、アンテナ20からオーディオボード30、オーディオボード40およびオーディオインターフェース50を介して取得したデータを保存してもよい。メモリ12は、カメラ60からキャプチャボード70を介して取得したデータを保存してもよい。メモリ12は外部ファイル80に記録されているデータを保存してもよい。
【0029】
グラフィックメモリ13は、ユーザに対して情報表示を行う場合の表示データを一時的に蓄積するメモリである。この情報表示は、出力装置14に含まれるディスプレイ等に対して行われる。
【0030】
出力装置14は、プロセッサ11による制御に基づいてユーザに情報を出力する装置である。出力装置14には、例えば、ディスプレイ、スピーカ、通電状態検出装置10を振動させる振動装置等が含まれる。ただし、これら以外の出力装置が用いられてもよい。本実施の形態においては、出力装置14として、主にディスプレイを例示して説明を行う。出力装置14であるディスプレイには、グラフィックメモリ13に蓄積された表示データが表示される。
【0031】
図4は、通電状態検出装置10を例示する概念図である。通電状態検出装置10は、カメラ60を内蔵していても、内蔵していなくともよい(図3および図4参照)。図4は、カメラ60を内蔵するタイプの通電状態検出装置10を例示している。通電状態検出装置10Aはスマートフォンである。例えばスマートフォンの背面にカメラ60が配置される。スマートフォンが備えるディスプレイが出力装置14に相当する。その他、スマートフォンが備えるスピーカやバイブレーション発生装置等もまた、出力装置14に相当する。
【0032】
通電状態検出装置10Bはスマートグラスである。例えば、スマートグラスを装着したユーザが前方を見た時の目線方向に光軸を向けるような位置に、カメラ60が配置される。スマートグラスの場合、左右のレンズ部分に情報がAR表示される。なお、AR表示とは、現実空間に重畳するように情報を表示することを意味する。スマートグラスのレンズ部分に情報を投影する投影装置などが、出力装置14に相当する。また、スマートグラスが備えるスピーカ等もまた、出力装置14に相当する。
【0033】
通電状態検出装置10Cは多機能式の腕時計である。例えば、腕時計の側面部分等にカメラ60が配置される。腕時計の文字盤の部分に配置されたディスプレイや、アラーム音を発生させる内蔵式スピーカ等が、出力装置14に相当する。
【0034】
図5は、通電状態検出装置10Aへのアンテナの配置例を示す概念図である。通電状態検出装置10は、アンテナ20を内蔵していても、内蔵していなくてもよい(図3および図5参照)。図5は、アンテナ20を内蔵するタイプの通電状態検出装置10Aを例示している。
【0035】
図5におけるアンテナ20は、スマートグラスである通電状態検出装置10Aのフレームに沿って、第1部分20a、第2部分20bおよび第3部分20cの3つの部分から構成されている。アンテナ20の第1部分20aには、アンテナ軸aが対応する。アンテナ20の第2部分20bには、アンテナ軸bが対応する。アンテナ20の第3部分20cには、アンテナ軸cが対応する。アンテナ20全体についてのアンテナ軸は、アンテナ軸a、アンテナ軸bおよびアンテナ軸cのそれぞれが規定するアンテナベクトルを合成した合成ベクトルの方向に延びる。
【0036】
図6は、電線の通電状態を検出する処理を例示するフローチャートである。プロセッサ11は、受信強度情報を取得する(St101)。受信強度情報は、電線の通電状態に対応する、アンテナ20の受信強度を示す情報を含んでいる。受信強度情報は、図3においては、オーディオインターフェース50のオーディオバッファ53に蓄積された情報に相当する。なお、受信強度情報を取得するタイミングはユーザの操作によって開始することもできるが他の方法を用いても良い。例えばGPS(Global Positioning System)情報
等の位置情報を用いてユーザが電線又は鉄塔の付近に近づいたことをプロセッサ11が検知して自動的に受信強度情報を取得してもよい。或いはGPS情報等の位置情報を用いてユーザが電線又は鉄塔の付近に近づいたことをプロセッサ11が検知してユーザに受信強度情報の取得を開始するように促しても良い。これらのようにするとより安全にユーザが通電状態を検知することができる。
【0037】
プロセッサ11は、受信強度情報が示す受信強度が第1の閾値を超えるか否かを判定する(St102)。ここでいう受信強度は、例えばアンテナ20が受信した信号の振幅に対応する値であってよい。第1の閾値は、所定の値として例えばメモリ12等に予め記憶されていてよい。受信強度情報が示す受信強度が第1の閾値を超える場合(St102:Yes)はステップSt103へと処理が遷移する。受信強度情報が示す受信強度が第1の閾値を超えない場合(St102:No)は、ステップSt101へと処理が戻る。
【0038】
ステップSt103においてプロセッサ11は、カメラ60が電線を撮像することにより得られた撮像画像を取得する。プロセッサ11は、取得した撮像画像に対して画像処理を行い、電線ベクトルを算出する(St104)。電線ベクトルは、電線の向きを示す情報に相当する。プロセッサ11が実行する電線ベクトルの算出方法として、種々の態様が考えられる。例えば、撮像画像に基づいて、画像が示す空間上の点集合の中から一定以上の長さがあるものを抽出する。この一定以上の長さを有する点集合の一端を始点とし、他端を終点とするベクトルを、電線ベクトルと推定することができる。また、鉄塔は通常、同じ高さのものが用いられる事が一般的である。そこで、撮像画像から2つの鉄塔を任意の画像認識技術を用いて特定し、2つの鉄塔における所定の位置同士を結ぶベクトルを、電線ベクトルと推定することも考えられる。その他、当業者は任意の方式を用いて電線ベクトルを算出してよい。
【0039】
続いて、プロセッサ11は、ステップSt101で取得した受信強度情報を補正する(St105)。受信強度情報の補正には、ステップSt104で算出された電線ベクトルの値を用いる。
【0040】
補正後の受信強度情報が示す受信強度を、補正強度と表記する。補正強度は下記の式(1)によって計算することができる。
【0041】
補正強度=受信強度×f(θ)・・・(1)
式(1)におけるθは、図2に基づいて上述した、電線軸とアンテナ軸との間のなす角である。なお、通電状態検出装置10は、アンテナ軸の方向を外部ファイル80もしくはアンテナ20が備えるジャイロスコープ21等に基づいて取得済みである(図3参照)。また、電線軸の方向も、電線ベクトルとしてステップSt104で取得済みである。従ってプロセッサ11は、なす角θを計算することができる。
【0042】
式(1)における関数f()は、なす角θに応じて受信強度をどの程度補正すればよいかを規定する関数である。この関数f()はメモリ12等に予め記憶されていてよく、プロセッサ11は関数f()をメモリ12から読み出し、なす角θを入力変数として用いて関数fを計算する。関数f()の出力値を、受信強度に乗じることにより、補正強度の値を計算することができる。すなわち、ステップSt105においてプロセッサ11は、上記の式(1)に基づいて補正強度を算出することにより、受信強度情報を補正する。
【0043】
プロセッサ11は、補正強度が第2の閾値を超えるか否かを判定する(St106)。第2の閾値は、所定の値として例えばメモリ12等に予め記憶されていてよい。補正強度が第2の閾値を超える場合(St106:Yes)はステップSt107へと処理が遷移する。補正強度が第2の閾値を超えない場合(St106:No)は、ステップSt101へと処理が戻る。
【0044】
ステップSt107においてプロセッサ11は、出力装置14を制御して、電線の通電状態をユーザに対して提示する。すなわち、プロセッサ11は、ステップSt105において補正された受信強度情報が示す受信強度に基づいて、電線の通電状態を示す情報を出力装置14に出力させる。
【0045】
図7は、電線の通電状態の提示例を示す概念図である。本実施の形態における腕時計形の通電状態検出装置10は、プロセッサ11による制御により、文字盤部分に配置されたディスプレイに「通電中」の文字を表示させる。なお、「通電中」の文字は、電線の通電状態を示す情報に相当する。電線の通電状態を示す情報が出力装置14から出力されることにより、腕時計を装着しているユーザは、電線が通電中である事を認識することができる。なお、通電状態検出装置10が振動機能や音声出力機能を備えている場合は、振動や音声等によって、ユーザに対して電線が通電中である事を提示してもよい。なお、「通電中」の文字の表示などの電線の通電状態を示す情報の出力は、補正強度が第2の閾値を超える場合に行われるので、受信強度情報が示す受信強度に基づいて行われている。
【0046】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
【0047】
(対象物までの距離を考慮した電線ベクトルの算出)
カメラ60が二眼カメラや三眼カメラなどの、二眼以上のカメラ(二以上のレンズを有するカメラ)である場合、カメラ60が有するプロセッサまたは通電状態検出装置10のプロセッサ11が、撮像画像に含まれる電線などの対象物とカメラ60との間の距離を、視差を用いて測定することができる。ステップSt104におけるプロセッサ11は、撮像画像と前記距離とに基づいて、3次元空間上の電線ベクトルを算出することができる。この電線ベクトルを用いることにより、ステップSt105におけるプロセッサ11は、受信強度情報をより高い精度で補正することができる。
【0048】
(撮像画像に基づいた電線ベクトルの種々の算出方法)
ステップSt104における電線ベクトルの算出は、カメラ60による撮像画像に対する画像処理以外の方法によって行われてもよい。例えば、GPS情報受信装置を用いて電線ベクトルが算出されてもよい。電線は通常、鉄塔と鉄塔との間に張られるものである。鉄塔は構造物であるため、鉄塔を建てるには法的な許可が必要になるのが一般的である。また、地図情報に、鉄塔の位置を示す情報が含まれていることがある。そこで通電状態検出装置10は、図示を省略するGPS情報受信装置を備えていてよい。GPS情報受信装置は、通電状態検出装置10の現在位置を示す位置情報を取得する。また、通電状態検出装置10は、鉄塔の位置を示す情報を含んだマップ情報を外部から無線通信回線等を介して取得することができる。通信回線を介した外部からの情報取得技術は一般的なものであるため、その具体的な実装形態については説明を省略する。通電状態検出装置10のメモリ12に、鉄塔の位置を示す情報を含んだマップ情報が前もって記憶されていてもよい。プロセッサ11は、GPS情報受信装置が取得した通電状態検出装置10の現在位置を示す情報と、上記のマップ情報に含まれる、現在位置の近傍にある2以上の鉄塔の位置を示す情報とに基づいて、電線ベクトルを算出することができる。
【0049】
また、電線ベクトルの算出に用いる撮像画像は例えばグレースケール画像であってよい。ただし、グレースケール画像には限られない。通電状態検出装置10は、アンテナ軸に対する位置関係を算出する為に用いることができる画像であれば種々の画像を用いることができる。例えば、カメラ60が撮像した画像からエッジを検出することで鉄塔や電線の存在を強調した画像を撮像画像として用いても良い。航空写真や巡回する車両が連続的に撮像した画像などのように、他の装置や乗り物によって種々の角度から撮像された画像を撮像画像として用いてもよく、これにより、より精度の高い電線ベクトルを算出することができる。
【0050】
(光軸とアンテナ軸との間の角度)
カメラ60の光軸とアンテナ20のアンテナ軸との間の角度は、固定値であってよい。この固定値は、図3に示されている外部ファイル80またはメモリ12に記録されていてよい。しかし、カメラ60の光軸とアンテナ20のアンテナ軸との間の角度は変化してもよい。例えば、カメラ60とアンテナ20とが別々に設けられている場合や、カメラ60とアンテナ20とが一つの装置に内蔵されているが、カメラ60の向きまたはアンテナ20の向きを変える機構(アンテナを90度回転させる機構等)が設けられている場合には、カメラ60の光軸とアンテナ20のアンテナ軸との間の角度が変化する。このような場合に、カメラ60およびアンテナ20のうち少なくとも一方にジャイロスコープを付加する。例えば、図3に記載されているジャイロスコープ21等が、これに該当する。プロセッサ11は、ジャイロスコープから取得した情報に基づいて、光軸とアンテナ軸との間の相対角度を補正する。すなわち、一例において、通電状態検出装置10は、アンテナ20の角速度を検出するジャイロスコープ21を有する。プロセッサ11は、ジャイロスコープ21が検出した角速度に基づき、アンテナ20の向きを算出することができる。すなわち、アンテナ20の向きを示す情報は、ジャイロスコープ21が検出したアンテナ20の角速度に基づく情報である。これにより、カメラ60の光軸とアンテナ20のアンテナ軸との間の角度が変化する場合であっても、プロセッサ11が、上述の相対角度を正しく算出することができる。
【0051】
(受信強度が小さい場合の処理)
ステップSt101において取得した受信強度情報が示す受信強度が小さい場合、2通りの状況が想定される。第1の状況は、電線が通電していないという状況である。第2の状況は、電線は通電しているが、電線に対するアンテナ20の向きが悪いため、アンテナ20による受信が弱いという状況である。
【0052】
ユーザが、実際には第2の状況であるのに、第1の状況であると誤認することを回避するために、プロセッサ11は、ステップSt101において取得した受信強度情報が示す受信強度が第3の閾値よりも小さい場合に、ユーザに対しアンテナ20の向きの修正を促す情報を出力装置14に出力させてよい。
【0053】
図8は、アンテナの向きの修正を促す情報の出力例を示す概念図である。本実施の形態において、出力装置14は通電状態検出装置10が備えるディスプレイである。このディスプレイには、通電状態検出装置10に内蔵されたカメラ60が撮像した撮像画像がリアルタイムで表示されている。また、通電状態検出装置10にはアンテナ20も内蔵されている。
【0054】
本実施の形態においては、アンテナ20の向きの修正を促す情報として、情報D1、情報D2、および情報D3の3種類が表示されている。情報D1は、現在のアンテナ軸の向きを示す直線である。情報D2は、目標となるアンテナ軸の向きを示す直線である。情報D3は、通電状態検出装置10を動かすべき方向を示す矢印である。情報D3に基づいて、ユーザは通電状態検出装置10を時計回りに回転させる。すると、情報D1として表示された直線と、情報D2として表示された直線とが重なる。この時、電線軸とアンテナ軸との間のなす角θは、受信強度が増大するような角度になる。
【0055】
アンテナの向きの修正を促す情報の出力は、ステップSt102からステップSt101へと処理が戻る途中に行われてよい。この時、第3の閾値は、第1の閾値以下の値であってよい。また、出力装置14による出力対象となる、アンテナの向きの修正を促す情報を取得するために、プロセッサ11はステップSt103およびSt104と同様の処理を行って、電線ベクトルを算出してもよい。そしてプロセッサ11は、算出した電線ベクトルと、カメラ60の光軸に対するアンテナ20のアンテナ軸の方向とに基づいて、上記の情報D1、D2、D3を算出してよい。
【0056】
以上のように、電線の通電状態を検出する通電状態検出装置10がプロセッサ11とメモリ12とを備える。プロセッサ11は、電線の通電状態に対応するアンテナ20の受信強度を示す、受信強度情報を取得する。プロセッサは、電線の向きを示す情報と、アンテナの向きを示す情報とに基づいて受信強度情報を補正する。これにより、アンテナの向きによらず、精度の高い通電状態検出装置を提供することができる。
【0057】
通電状態検出装置10は、ユーザに対し情報を出力する出力装置14をさらに備える。プロセッサ11は、受信強度情報が示す受信強度に基づいて、電線の通電状態を示す情報を出力装置14に出力させる。これにより、受信強度が強い場合にユーザに対して行う通知を高精度に行うことができる。
【0058】
プロセッサ11は、受信強度情報が示す受信強度が所定の閾値より小さい場合に、ユーザに対しアンテナ20の向きの修正を促す情報を出力装置14に出力させる。これにより、受信強度が小さい場合に、アンテナの向きをユーザが修正する機会を設けることができる。また、ユーザが、電線が通電していない場合と、電線が通電しているがアンテナの向きに関係して受信強度が弱い場合とを切り分けて認識することができる。
【0059】
プロセッサ11は、カメラ60が電線を撮像することにより得られた撮像画像に基づいて、電線の向きを示す情報を算出する。これにより、カメラによる撮像画像から電線の向きを特定して、受信強度を適切に補正することができる。
【0060】
撮像画像は航空写真であってよい。これにより、種々の角度から画像を撮像することができ、より精度の高い電線ベクトルを算出することができる。
【0061】
カメラ60は二以上のレンズを有する。プロセッサ11は、撮像画像と、撮像画像に含まれる対象物とカメラ60との間の距離とに基づいて、電線の向きを示す情報を算出する。これにより、二眼以上のカメラの視差を活用して、電線の向きをより正確に算出することができる。
【0062】
通電状態検出装置10がGPS情報受信装置をさらに備える。プロセッサ11は、GPS情報受信装置が取得した通電状態検出装置の位置情報と、所定のマップ情報とに基づいて、電線の向きを示す情報を算出する。これにより、通電状態検出装置10の現在位置と、マップ情報に含まれる鉄塔の位置等に基づいて、電線の向きを推定することができる。
【0063】
プロセッサ11は、電線の向きとアンテナ20の向きとの間のなす角θに応じた値を受信強度情報が示す受信強度に乗じることにより、受信強度情報を補正する。これにより、なす角θに応じて適切に受信強度を補正することができる。
【0064】
プロセッサ11とメモリ12とを備えた装置10による、電線の通電状態を検出する通電状態検出方法において、プロセッサ11が、電線の通電状態に対応するアンテナ20の受信強度を示す、受信強度情報を取得する。プロセッサ11が、電線の向きを示す情報と、アンテナ20の向きを示す情報とに基づいて受信強度情報を補正する。これにより、アンテナの向きによらず、精度の高い通電状態検出装置を提供することができる。
【0065】
通電状態検出装置10が、ユーザに対し情報を出力する出力装置14をさらに備える。通電状態検出方法は、プロセッサ11が、受信強度情報が示す受信強度に基づいて、電線の通電状態を示す情報を出力装置14に出力させるステップを有する。これにより、受信強度が強い場合にユーザに対して行う通知を高精度に行うことができる。
【0066】
通電状態検出方法は、受信強度情報が示す受信強度が所定の閾値より小さい場合に、プロセッサ11が、ユーザに対しアンテナ20の向きの修正を促す情報を出力装置14に出力させるステップを有する。これにより、受信強度が小さい場合に、アンテナの向きをユーザが修正する機会を設けることができる。また、ユーザが、電線が通電していない場合と、電線が通電しているがアンテナの向きに関係して受信強度が弱い場合とを切り分けて認識することができる。
【0067】
通電状態検出方法は、プロセッサ11が、カメラ60が電線を撮像することにより得られた撮像画像に基づいて電線の向きを示す情報を算出するステップを有する。これにより、カメラによる撮像画像から電線の向きを特定して、受信強度を適切に補正することができる。
【0068】
撮像画像は航空写真であってよい。これにより、種々の角度から画像を撮像することができ、より精度の高い電線ベクトルを算出することができる。
【0069】
カメラ60は二以上のレンズを有する。電線の向きを示す情報を算出するステップにおいて、プロセッサ11は、撮像画像と、撮像画像に含まれる対象物とカメラ60との間の距離とに基づいて、電線の向きを示す情報を算出する。これにより、二眼以上のカメラの視差を活用して、電線の向きをより正確に算出することができる。
【0070】
通電状態検出装置10がGPS情報受信装置をさらに備える。通電状態検出方法は、プロセッサ11が、GPS情報受信装置が取得した通電状態検出装置の位置情報と、所定のマップ情報とに基づいて、電線の向きを示す情報を算出するステップを有する。これにより、通電状態検出装置10の現在位置と、マップ情報に含まれる鉄塔の位置等に基づいて、電線の向きを推定することができる。
【0071】
受信強度情報を補正するステップにおいて、プロセッサ11は、電線の向きとアンテナ20の向きとの間のなす角θに応じた値を受信強度情報が示す受信強度に乗じることにより、受信強度情報を補正する。これにより、なす角θに応じて適切に受信強度を補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示は、精度の高い通電状態検出装置および通電状態検出方法として有用である。
【符号の説明】
【0073】
10、10A、10B、10C 通電状態検出装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 グラフィックメモリ
14 出力装置
20 アンテナ
21 ジャイロスコープ
30 オーディオボード
31 AD変換回路
40 オーディオボード
41 DA変換回路
50 オーディオインターフェース
51 オーディオ入力部
52 AD変換回路
53 オーディオバッファ
60 カメラ
70 キャプチャボード
71 AD変換回路
72 フレームバッファ
80 外部ファイル
100 通電状態検出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8