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特許7539006体感空間切替方法、体感空間切替システム、体感空間切替装置、並びに体感空間切替プログラム及びそれを記録した記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】体感空間切替方法、体感空間切替システム、体感空間切替装置、並びに体感空間切替プログラム及びそれを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240816BHJP
【FI】
G06T19/00 600
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024510536
(86)(22)【出願日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2023037877
【審査請求日】2024-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321001355
【氏名又は名称】株式会社ABAL
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】尾小山 良哉
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-117770(JP,A)
【文献】特許第7138392(JP,B1)
【文献】特表2023-517073(JP,A)
【文献】国際公開第2023/176374(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/00-19/00
A63F 13/00
G06F 3/048
G06Q 30/00
H04N 13/00
H04N 7/18
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムによって実行され、環境出力器を介してユーザに認識させる空間を切り替える体感空間切替方法において、
現実空間認識部が、前記ユーザが存在する現実空間を認識するステップと、
仮想オブジェクト生成部が、前記ユーザに認識させる仮想のオブジェクトを生成するステップと、
複合空間生成部が、前記現実空間に前記仮想のオブジェクトを存在させた空間である複合空間を生成するステップと、
ユーザ環境決定部が、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記複合空間の環境を決定するステップと、
ユーザ動作認識部が、前記現実空間における前記ユーザの動作を認識するステップと、
トリガーイベント認識部が、前記ユーザが前記仮想のオブジェクトを対象として行う動作である所定のトリガーイベントを認識するステップと、
仮想空間生成部が、前記所定のトリガーイベントが認識されたときに、仮想空間を生成するステップと、
前記ユーザ環境決定部が、前記所定のトリガーイベントが認識される前に前記ユーザに認識させていた前記複合空間の環境に代わり、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境を決定するステップと
対象者認識部が、前記現実空間に存在する複数の人物から、体感させる空間の種類の切り替えが行われる対象者である前記ユーザ、及び体感させる空間の種類の切り替えが行われない非対象者を認識するステップと、
アバター生成部が、前記ユーザの動作に対応して動作する第1アバター、及び前記非対象者の動作に対応して動作する第2アバターを生成するステップとを備え、
前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境は、前記第1アバター及び前記第2アバターを含むことを特徴とする体感空間切替方法。
【請求項2】
コンピュータシステムによって実行され、環境出力器を介してユーザに認識させる空間を切り替える体感空間切替方法において、
現実空間認識部が、前記ユーザが存在する現実空間を認識するステップと、
仮想オブジェクト生成部が、前記ユーザに認識させる仮想のオブジェクトを生成するステップと、
複合空間生成部が、前記現実空間に前記仮想のオブジェクトを存在させた空間である複合空間を生成するステップと、
ユーザ環境決定部が、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記複合空間の環境を決定するステップと、
ユーザ動作認識部が、前記現実空間における前記ユーザの動作を認識するステップと、
トリガーイベント認識部が、前記ユーザが前記仮想のオブジェクトを対象として行う動作である所定のトリガーイベントを認識するステップと、
仮想空間生成部が、前記所定のトリガーイベントが認識されたときに、仮想空間を生成するステップと、
前記ユーザ環境決定部が、前記所定のトリガーイベントが認識される前に前記ユーザに認識させていた前記複合空間の環境に代わり、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境を決定するステップとを備え、
前記仮想空間の形状は、前記トリガーイベントが認識された時点における前記現実空間の形状に応じて生成されることを特徴とする体感空間切替方法。
【請求項3】
コンピュータシステムによって実行され、環境出力器を介してユーザに認識させる空間を切り替える体感空間切替方法において、
現実空間認識部が、前記ユーザが存在する現実空間を認識するステップと、
仮想オブジェクト生成部が、前記ユーザに認識させる仮想のオブジェクトを生成するステップと、
複合空間生成部が、前記現実空間に前記仮想のオブジェクトを存在させた空間である複合空間を生成するステップと、
ユーザ環境決定部が、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記複合空間の環境を決定するステップと、
ユーザ動作認識部が、前記現実空間における前記ユーザの動作を認識するステップと、
トリガーイベント認識部が、前記ユーザが前記仮想のオブジェクトを対象として行う動作である所定のトリガーイベントを認識するステップと、
仮想空間生成部が、前記所定のトリガーイベントが認識されたときに、仮想空間を生成するステップと、
前記ユーザ環境決定部が、前記所定のトリガーイベントが認識される前に前記ユーザに認識させていた前記複合空間の環境に代わり、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境を決定するステップと、
前記仮想空間生成部が、前記複合空間と前記仮想空間とを混在させた空間を生成するステップとを備え、
前記ユーザ環境決定部は、前記所定のトリガーイベントが認識される前に前記ユーザに認識させていた前記複合空間の環境に代わり、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる、前記複合空間と前記仮想空間とを混在させた前記空間の環境を決定した後、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境を決定するステップとを備えていることを特徴とする体感空間切替方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の体感空間切替方法において、
前記仮想のオブジェクトは、該仮想のオブジェクトを対象として前記所定のトリガーイベントが行われた際に生成される前記仮想空間の属性に対応した属性を有していることを特徴とする体感空間切替方法。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の体感空間切替方法を実行するコンピュータシステムであることを特徴とする体感空間切替システム。
【請求項6】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の体感空間切替方法を実行するコンピュータシステムであることを特徴とする体感空間切替装置。
【請求項7】
コンピュータシステムに、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の体感空間切替方法を実行させることを特徴とする体感空間切替プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の体感空間切替プログラムを記録し、前記体感空間切替プログラムを前記コンピュータシステムが読み取り可能であることを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境出力器を介してユーザに体感させる空間を切り替えるためのコンピュータシステムによって実行される体感空間切替方法、そのコンピュータシステムである体感空間切替システム、そのコンピュータシステムである体感空間切替装置、並びにコンピュータシステムにその体感空間切替方法を実行させる体感空間切替プログラム、及びそのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバなどで仮想空間を生成し、ヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」ということがある。)を介して、その仮想空間の画像をユーザに認識させ、ユーザ自身がその仮想空間に存在していると認識させる仮想空間体感システムがある。
【0003】
この種の仮想空間体感システムとしては、所定のトリガーイベント(例えば、ユーザの所定の動作)が認識されたときに、ユーザに体感させる仮想空間の環境(例えば、仮想空間におけるユーザの視点の位置)を変更するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-177607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の仮想空間体感システムは、ある1つの仮想空間の内部において、ユーザに体感させる環境を一人称視点から三人称視点に切り替え可能としているに過ぎない。すなわち、ユーザに体感させる仮想空間の環境の切り替えも、現実空間においても実現し得るようなものに過ぎない。
【0006】
そのため、特許文献1に記載の仮想空間体感システムでは、ユーザに体感させる仮想空間の環境の切り替えを行ったとしても、ユーザに、現実空間では体験できないような環境を十分に体験させることができないという問題があった。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、現実空間では体験できない環境を十分に体験させることができる体感空間切替方法、体感空間切替システム、体感空間切替装置、並びに体感空間切替プログラム及びそれを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下において、「複合空間」とは、現実空間に仮想のオブジェクトを存在させるとともに、その仮想のオブジェクトに対して現実空間に存在するユーザが影響を与えること(例えば、その仮想のオブジェクトを移動させることなど)を可能とした、いわゆる複合現実空間(MR空間)である。
【0009】
また、「仮想空間」とは、ユーザが、ユーザ自身が存在する現実空間に代わって認識する仮想的な空間である、いわゆる仮想現実空間(VR空間)である。その仮想空間には、仮想のオブジェクト、ユーザの動作に対応して動作するアバターなどが配置される場合もある。
【0010】
本発明の体感空間切替方法は、
コンピュータシステムによって実行され、環境出力器を介してユーザに認識させる空間を切り替える体感空間切替方法において、
現実空間認識部が、前記ユーザが存在する現実空間を認識するステップと、
仮想オブジェクト生成部が、前記ユーザに認識させる仮想のオブジェクトを生成するステップと、
複合空間生成部が、前記現実空間に前記仮想のオブジェクトを存在させた空間である複合空間を生成するステップと、
ユーザ環境決定部が、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記複合空間の環境を決定するステップと、
ユーザ動作認識部が、前記現実空間における前記ユーザの動作を認識するステップと、
トリガーイベント認識部が、前記ユーザが前記仮想のオブジェクトを対象として行う動作である所定のトリガーイベントを認識するステップと、
仮想空間生成部が、前記所定のトリガーイベントが認識されたときに、仮想空間を生成するステップと、
前記ユーザ環境決定部が、前記所定のトリガーイベントが認識される前に前記ユーザに認識させていた前記複合空間の環境に代わり、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境を決定するステップと
対象者認識部が、前記現実空間に存在する複数の人物から、体感させる空間の種類の切り替えが行われる対象者である前記ユーザ、及び体感させる空間の種類の切り替えが行われない非対象者を認識するステップと、
アバター生成部が、前記ユーザの動作に対応して動作する第1アバター、及び前記非対象者の動作に対応して動作する第2アバターを生成するステップとを備え、
前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境は、前記第1アバター及び前記第2アバターを含むことを特徴とする。
【0011】
このように、本発明の体感空間切替方法では、所定のトリガーイベントが認識される前までは、ユーザに認識させる環境は複合空間に基づいて決定されるので、ユーザは、複合空間を体感することになる。一方、所定のトリガーイベントが認識された後は、ユーザに体感させる環境は仮想空間に基づいて決定されるので、ユーザは、仮想空間を体感することになる。
【0012】
すなわち、この体感空間切替方法は、ユーザに体感させる環境を、現実空間に仮想のオブジェクトを存在させた複合空間と現実空間とは切り離された仮想空間との区別なく、切替可能なものとなっている。
【0013】
ここで、その切り替えのトリガーとなるトリガーイベントは、複合空間に存在する仮想のオブジェクトを対象としてユーザが行う動作である。そして、その仮想のオブジェクトは、仮想のものであるので、現実空間に存在しながらも仮想空間を連想させるものである。
【0014】
そのため、その仮想のオブジェクトに対して動作を行ったユーザは、仮想のオブジェクトをトリガーとして、空間が切り替わることを、意識せずとも認識しやすくなっている。その結果、複合空間から仮想空間への切り替えを、そのユーザに違和感を与えることなく行うことができる。
【0015】
したがって、本発明の体感空間切替方法によれば、ユーザに体験させる環境を、従来のように複合空間又は仮想空間に限定されたものではなく、複合空間と仮想空間とを織り交ぜたものにすることができる。また、複合空間から仮想空間への切り替えをユーザに違和感を与えることなく行うことができるので、その切り替えによってユーザの没入感を阻害することも抑制できる。ひいては、この体感空間切替方法によれば、現実空間では体験できない環境を、従来よりも幅広い形で、ユーザに体験させることができる。
【0017】
本発明の体感空間切替方法を実行するとき、現実空間の同じ領域にいる複数のユーザに1つの複合空間を体感させ、さらに、それらの複数のユーザのうちの一部の者(対象者)に体感させる空間のみを仮想空間に切り替えるように構成する場合がある。また、現実空間の同じ領域に、複合空間及び仮想空間を体感させる者(対象者)と仮想空間又は複合空間を体感させない者(非対象者)とが、同時に存在できるように構成する場合もある。
【0018】
しかし、そのように構成する場合、対象者であるユーザに体感させる空間の種類の切り替えが行われたときに、その対象者であるユーザは非対象者を認識できなくなるので、その切り替えが行われた後に、その対象者であるユーザが非対象者に意図せず接触してしまうおそれが生じる。
【0019】
そこで、このように、対象者であるユーザに体感させる空間のみが切り替わる場合であっても、その切り替わった仮想空間に、対象者であるユーザに対応する第1アバターだけでなく、非対象者に対応する第2アバターも含ませるようにするとよい。
【0020】
これにより、第1ユーザは、第2アバターを介して、非対象者の位置を把握することができるようになるので、第1ユーザが非対象者に意図せず接触することを抑制することができる。また、第1ユーザの没入感を阻害することも抑制することができる。
【0021】
また、本発明の体感空間切替方法においては、
前記仮想のオブジェクトは、該仮想のオブジェクトを対象として前記所定のトリガーイベントが行われた際に生成される前記仮想空間の属性に対応した属性を有していることが好ましい。
【0022】
ここで、「属性」とは、仮想空間の形状、模様、色彩、又はそれらの組み合わせなどが挙げられる。また、仮想のオブジェクトの属性と仮想空間の属性とは、一致するものの他、関連性を相互に連想させるものであってもよい。具体的には、例えば、例えば、仮想空間の背景の模様及び仮想のオブジェクトの模様を一致させることの他、仮想空間が「オフィス」を模した空間である場合には、仮想のオブジェクトの形状を「ビル」にすることなどが挙げられる。
【0023】
このように、トリガーイベントのトリガーとなる仮想のオブジェクトの属性と、そのトリガーイベントをトリガーとして生成される仮想空間の属性とを対応させるように構成すると、その仮想のオブジェクトを介してトリガーイベントを生じさせるユーザは、その後に自らが移動する仮想空間の属性を無意識に予測できる。これにより、そのユーザにさらに違和感を与えることなく、体感させる空間の種類の切り替えを行うことができる。
【0024】
また、本発明の体感空間切替方法は、
コンピュータシステムによって実行され、環境出力器を介してユーザに認識させる空間を切り替える体感空間切替方法において、
現実空間認識部が、前記ユーザが存在する現実空間を認識するステップと、
仮想オブジェクト生成部が、前記ユーザに認識させる仮想のオブジェクトを生成するステップと、
複合空間生成部が、前記現実空間に前記仮想のオブジェクトを存在させた空間である複合空間を生成するステップと、
ユーザ環境決定部が、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記複合空間の環境を決定するステップと、
ユーザ動作認識部が、前記現実空間における前記ユーザの動作を認識するステップと、
トリガーイベント認識部が、前記ユーザが前記仮想のオブジェクトを対象として行う動作である所定のトリガーイベントを認識するステップと、
仮想空間生成部が、前記所定のトリガーイベントが認識されたときに、仮想空間を生成するステップと、
前記ユーザ環境決定部が、前記所定のトリガーイベントが認識される前に前記ユーザに認識させていた前記複合空間の環境に代わり、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境を決定するステップとを備え、
前記仮想空間の形状は、前記トリガーイベントが認識された時点における前記現実空間の形状に応じて生成されることを特徴とする。
【0025】
現実空間の形状(例えば、配置されている家具の種類など)は種々様々であり、また時間の経過によって変化することもあるので、現実空間の形状にかかわらず一定の形状の仮想空間を生成した場合、現実空間の形状によって、同じ仮想空間であるのに動作可能な範囲が異なることがある。ひいては、ユーザに違和感を与えてしまうおそれがある。
【0026】
そこで、このように、生成される仮想空間の形状を仮想空間の生成のトリガーとなるトリガーイベントが認識された時点における現実空間の形状に応じたものにすると、生成された仮想空間で動作可能な範囲を、その現実空間と一致させることができる。これにより、仮想空間の形状と現実空間の形状との差異に起因して、ユーザに違和感を与えてしまうことを抑制することができる。
【0027】
また、本発明の体感空間切替方法は、
コンピュータシステムによって実行され、環境出力器を介してユーザに認識させる空間を切り替える体感空間切替方法において、
現実空間認識部が、前記ユーザが存在する現実空間を認識するステップと、
仮想オブジェクト生成部が、前記ユーザに認識させる仮想のオブジェクトを生成するステップと、
複合空間生成部が、前記現実空間に前記仮想のオブジェクトを存在させた空間である複合空間を生成するステップと、
ユーザ環境決定部が、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記複合空間の環境を決定するステップと、
ユーザ動作認識部が、前記現実空間における前記ユーザの動作を認識するステップと、
トリガーイベント認識部が、前記ユーザが前記仮想のオブジェクトを対象として行う動作である所定のトリガーイベントを認識するステップと、
仮想空間生成部が、前記所定のトリガーイベントが認識されたときに、仮想空間を生成するステップと、
前記ユーザ環境決定部が、前記所定のトリガーイベントが認識される前に前記ユーザに認識させていた前記複合空間の環境に代わり、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境を決定するステップと、
前記仮想空間生成部が、前記複合空間と前記仮想空間とを混在させた空間を生成するステップを備え、
前記ユーザ環境決定部は、前記所定のトリガーイベントが認識される前に前記ユーザに認識させていた前記複合空間の環境に代わり、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる、前記複合空間と前記仮想空間とを混在させた前記空間の環境を決定した後、前記環境出力器を介して前記ユーザに認識させる前記仮想空間の環境を決定するステップとを備えていることを特徴とする。
【0028】
このように構成すると、体感させる空間を複合空間から仮想空間へ切り替える際に、ユーザに与えてしまうおそれのある唐突さを抑制することができる。ひいては、体感させる空間の種類の切り替えを、さらにユーザに違和感を与えることなく行うことができる。
【0029】
本発明の体感空間切替システムは、
上記いずれかの体感空間切替方法を実行するコンピュータシステムであることを特徴とする。
【0030】
本発明の体感空間切替装置は、
上記いずれかの体感空間切替方法を実行するコンピュータシステムであることを特徴とする。
【0031】
本発明の体感空間切替プログラムは、
コンピュータシステムに、上記いずれかの体感空間切替方法を実行させることを特徴とする。
【0032】
本発明の記録媒体は、
上記の体感空間切替プログラムを記録し、前記体感空間切替プログラムを前記コンピュータシステムが読み取り可能であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る空間体感システムの概略構成を示す模式図。
図2図1の空間体感システムの処理部の構成を示すブロック図。
図3図1の空間体感システムが生成する複合空間の一例を示す模式図。
図4図1の空間体感システムが生成する仮想空間の一例を示す模式図。
図5図1の空間体感システムの生成する仮想空間の形状、及びそれに対応する現実空間の形状を模式図。
図6図1の空間体感システムが、ユーザに体感させる空間を切り替える際に、ユーザに認識させる空間の状態を示す模式図。
図7図1の空間体感システムが、ユーザに複合空間を体感させている状態において実行する処理を示すフローチャート。
図8A図1の空間体感システムが、ユーザに体感させる空間を切り替える際に実行する処理のうち前半の処理を示すフローチャート。
図8B図1の空間体感システムが、ユーザに体感させる空間を切り替える際に実行する処理のうち後半の処理を示すフローチャート。
図9図1の空間体感システムが、ユーザに仮想空間を体感させている状態において実行する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図1図9を参照して、実施形態に係るシステムS(体感空間切替システム)、及びそのシステムSが実行する処理(体感空間切替方法)について説明する。
【0035】
システムSは、現実空間RSの所定の領域(例えば、1つの部屋など。図1参照。)に共に存在する第1ユーザU1及び第2ユーザU2(以下、総称する場合は「ユーザU」という。)に対し、複合空間MS又は仮想空間VSを体感させるためのコンピュータシステムである。
【0036】
システムSは、その現実空間RSに対応する複合空間MS(図3参照)の環境(例えば、画像、音など)を認識させることによって、その複合空間MSを体感させる認識させる(例えば、自らが存在している認識させる)。また、システムSは、所定のトリガーイベントをトリガーとして、対象となるユーザUに対し、その現実空間RSに対応する仮想空間VS(図4参照)の環境を認識させることによって、その仮想空間VSを体感させるものである。
【0037】
ここで、「複合空間」とは、現実空間に仮想のオブジェクトを存在させるとともに、その仮想のオブジェクトに対して現実空間に存在するユーザが影響を与えること(例えば、その仮想のオブジェクトを移動させることなど)を可能とした、いわゆる複合現実空間(MR空間)である。
【0038】
また、「仮想空間」とは、ユーザが、ユーザ自身が存在する現実空間に代わって認識する仮想的な空間であり、いわゆる仮想現実空間(VR空間)である。その仮想空間には、仮想のオブジェクト、ユーザの動作に対応して動作するアバターなどが配置される場合もある。
【0039】
なお、本実施形態では、理解を容易にするために、ユーザは、第1ユーザU1及び第2ユーザU2の2人としている。しかし、本発明の体感空間切替システムを使用するユーザの数は、そのような構成に限定されるものではなく、1人であってもよいし、3人以上であってもよい。
【0040】
[システムの概略構成]
まず、図1を参照して、システムSの概略構成について説明する。
【0041】
図1に示すように、システムSは、現実空間RSに存在するユーザUに取り付けられる複数の標識1と、ユーザU(厳密には、ユーザUに取り付けられた標識1)を撮影するカメラ2と、ユーザUに体感させる複合空間MS又は仮想空間VS1の環境を決定するサーバ3(体感空間切替システム)と、決定された環境をユーザに認識させる環境出力器であるヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD4」という。)とを備えている。
【0042】
システムSでは、カメラ2、サーバ3及びHMD4は、インターネット網、公衆回線、近距離無線通信などを介して、無線で相互に情報を送受信可能となっている。ただし、それらのいずれか同士を有線で相互に情報を送受信可能に構成してもよい。
【0043】
複数の標識1は、ユーザUの装着するHMD4、手袋及び靴を介して、ユーザUの頭部、両手及び両足のそれぞれに取り付けられている。なお、複数の標識1は、後述するようにユーザUの現実空間RSにおける動作を認識するために用いられるものである。そのため、システムSを構成する他の機器に応じて、標識1を取り付ける位置、取り付ける数などは適宜変更してよい。
【0044】
カメラ2は、ユーザUの存在する現実空間RSのユーザUが動作可能範囲(すなわち、ユーザUが移動可能、且つ、動作可能な範囲)を多方向から撮影可能なように設置されている。
【0045】
サーバ3(体感空間切替システム)は、カメラ2が撮影した画像から標識1を認識(例えば、検出又は算出)し、その認識された標識1の現実空間RSにおける位置に基づいて、ユーザUの動作(例えば、姿勢及び座標の変化など)を認識する。また、サーバ3は、その動作に基づいて、ユーザUに認識させる複合空間MS又は仮想空間VSの環境を決定する。
【0046】
HMD4は、ユーザに複合空間MS又は仮想空間VSの環境(例えば、画像及び音声など)を出力して認識させる環境出力器である。HMD4は、ユーザUの頭部に装着される。HMD4は、ユーザUに、サーバ3によって決定された複合空間MS又は仮想空間VSの画像をユーザUの認識させるためのモニタ40と、サーバ3によって決定された複合空間MS又は仮想空間VSの音をユーザUに認識させるためのスピーカ41とを有している(図2参照)。
【0047】
モニタ40は、複合空間MSをユーザUに体感させる状態においては、そのモニタ40を透過して、現実空間RSを観察可能なものとなっている。
【0048】
システムSを用いて複合空間MSを体感させる場合、ユーザUは、現実空間RSの画像及び音とともに、体感せられる複合空間MSに対応した仮想のオブジェクトに関する画像及び音を認識させられる。なお、その仮想のオブジェクトは、ユーザUの動作に応じて、所定の動作(例えば、座標の移動など)を行うものとして構成されている。
【0049】
また、システムSを用いて仮想空間VSを体感させる場合、ユーザUは、HMD4を介して、仮想空間VSの画像と音のみを認識させられて、自らが仮想空間VSに存在していると認識させられる。すなわち、システムSは、いわゆる没入型のシステムとして構成されている。
【0050】
なお、本発明の体感空間切替システムは、前述のような標識及びカメラを用いた構成(いわゆるモーションキャプチャー装置)に限定されるものではなく、現実空間及びユーザの動作を認識できように構成されていればよい。
【0051】
そのため、例えば、標識及びカメラの数及び配置が図1において図示した数及び配置とは異なる構成のものを用いてもよい。具体的には、ユーザの特徴点及び現実空間の特徴点の少なくとも一方の特徴点を認識するために、ユーザだけではなく現実空間に存在する実在のオブジェクトに標識を取り付けてもよい。標識を用いずに、画像そのものから特徴点を認識するようにしてもよい。
【0052】
また、例えば、標識及びカメラに代わり、HMDにGPSなどのセンサを搭載し、そのセンサからの出力に基づいて、ユーザの動作を認識するようにしてもよい。また、そのようなセンサと、上記のようなモーションキャプチャー装置とを併用してもよい。
【0053】
また、本発明の体感空間切替システムは、1つのサーバによって構成されるものに限定されるものではなく、体感空間切替システムを構成しているいずれかの機器が後述する処理部を備えているように構成されていればよい。
【0054】
そのため、例えば、複数のサーバによって体感空間切替システム全体を構成してもよい。また、カメラ、HMD又はその他の機器に処理部の少なくとも1つ又はその処理部の機能の少なくとも一部を実装して、それらの機器とサーバとで協働して、又はそれらの機器のみで、システムを構成してもよい。
【0055】
[処理部の構成]
次に、図1図6を参照して、システムSを構成している処理部の構成について説明する。
【0056】
システムSを構成するカメラ2、サーバ3及びHMD4は、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む1つ又は複数の電子回路ユニットにより構成されている。
【0057】
図2に示すように、サーバ3は、実装されたハードウェア構成及びプログラムの少なくとも一方により実現される機能(処理部)として、現実空間認識部30と、複合環境生成部31と、ユーザ環境決定部32と、ユーザ状態認識部33(ユーザ動作認識部)と、仮想オブジェクト制御部34と、トリガーイベント認識部35と、対象ユーザ認識部36(対象者認識部)と、仮想環境生成部37と、アバター状態制御部38を備えている。
【0058】
現実空間認識部30は、カメラ2が撮影した現実空間RSの画像データを認識し、その画像データに基づいて、現実空間RSの状況を認識する。現実空間RSの状況とは、例えば、現実空間RSに存在するユーザU及び実在のオブジェクト(本実施形態では、テーブルRO1、本棚RO2、引き出しRO3)の姿勢及び座標などである。
【0059】
複合環境生成部31は、仮想オブジェクト生成部31aと、複合空間生成部31bとを有している。
【0060】
仮想オブジェクト生成部31aは、複合空間MSに存在させて、ユーザUに認識させる仮想のオブジェクト(本実施形態では、城の模型の仮想のオブジェクトである模型MO、本棚RRO2に詰め込まれた仮想の本のオブジェクトなど)を生成する(図3等参照)。その仮想のオブジェクトには、複合空間MSでユーザUの動作に応じて動作するもの(例えば、複合空間MSにおける姿勢及び座標の変更可能なもの)が含まれている。
【0061】
複合空間生成部31bは、現実空間認識部30で認識された現実空間RSに、仮想オブジェクト生成部31aで生成された仮想のオブジェクトを存在させて、図3に示すような複合空間MSを生成する。
【0062】
ここで、前述のようにHMD4に搭載されているモニタ40は、そのモニタ40を透過して現実空間RSを観察可能なものとなっている。そのため、決定された複合空間MSをユーザUに体感させる際には、そのモニタ40を透過して認識される現実空間RSに、決定された仮想のオブジェクトを重畳させるように表示させ、HMD4に搭載されているスピーカ41に決定された音を発生させる。
【0063】
そのため、複合空間生成部31bは、ユーザUがHMD4のモニタ40を透過して観察している現実空間RSにおける仮想のオブジェクトの姿勢及び座標、並びにその仮想のオブジェクトに基づいて発生させる音を決定することによって、間接的に複合空間を生成する。
【0064】
なお、複合空間を生成する処理としては、ユーザがHMDを透過して観察している現実空間を利用せずに、HMDに設けられたカメラなどによって取得された現実空間の画像に仮想のオブジェクトを重畳させた画像を生成して、その画像を複合空間としてもよい。
【0065】
ユーザ環境決定部32は、ユーザUに、HMD4のモニタ40及びスピーカ41を介して認識させる複合空間MS又は仮想環境VSの環境を決定する。
【0066】
ここで、ユーザに「認識させる環境」とは、そのユーザに五感によって体感させる複合空間又は仮想空間の環境を指す。例えば、その環境とは、ユーザに認識させる複合空間又は仮想空間に存在する仮想のオブジェクトの画像、その仮想のオブジェクトに基づいて発生される音などによって構成される環境である。
【0067】
ユーザ状態認識部33(ユーザ動作認識部)は、カメラ2が撮影したユーザUの画像データを認識し、その画像データに基づいて、ユーザUの現実空間RSにおける状態を認識する。ここで、ユーザUの現実空間RSにおける状態とは、ユーザUの姿勢及び座標であり、ひいては、その変化量で示されるユーザUの動作である。ユーザ状態認識部33は、ユーザ姿勢認識部33aと、ユーザ座標認識部33bとを有している。
【0068】
ユーザ姿勢認識部33aは、入力されたユーザUの画像データからユーザUの身体などの特徴点を抽出し、その抽出結果に基づいて、現実空間RSにおけるユーザUの姿勢を認識する。
【0069】
ユーザ座標認識部33bは、入力されたユーザUの画像データから抽出されたユーザUの身体などの特徴点の抽出結果、及び、現実空間認識部30が認識した現実空間RSの状況(例えば、実在のオブジェクトの座標など)に基づいて、現実空間RSにおけるユーザUの座標を認識する。
【0070】
仮想オブジェクト制御部34は、ユーザ動作認識部によって認識されたユーザUの現実空間RSにおける動作に基づいて、そのユーザUに体感させている複合空間MSに存在している仮想のオブジェクトの状態を制御する。
【0071】
具体的には、仮想オブジェクト制御部34は、ユーザUが仮想のオブジェクトに対して何らかの動作を行った際に、その動作に応じて、その仮想のオブジェクトの複合空間MSにおける姿勢、座標、形状などを変化させる。
【0072】
トリガーイベント認識部35は、システム設計者などが予め定めた条件を満たした際に、所定のトリガーイベントが発生したことを認識する。本実施形態では、ユーザUのいずれかが仮想のオブジェクトに触れる動作が、所定のトリガーイベントとして設定されている。
【0073】
なお、本発明の所定のトリガーイベントは、そのような構成に限定されるものではなく、ユーザが仮想のオブジェクトを対象として行う動作であればよい。
【0074】
そのため、例えば、所定のトリガーイベントは、仮想のオブジェクトに触れないような動作であってもよい。具体的には、仮想のオブジェクトを指さすような動作、仮想又は実在のタブレットなどを介して仮想のオブジェクトを選択するような動作などであってもよい。
【0075】
また、例えば、所定のトリガーイベントは、ユーザがその発生を認識していないものであってもよい。具体的には、トリガーイベントは、所定時間の経過(例えば、仮想のオブジェクトから一定範囲の領域の内部で一定時間立ち止まるなど)といったユーザの意図に起因しないものであってよい。
【0076】
対象ユーザ認識部36は、認識したトリガーイベントの種類、及びトリガーイベントが生じた際のユーザUの動作に基づいて、後述するような体感させる空間の種類の切り替えが行われる第1ユーザ(対象者)と、体感させる空間の種類の切り替えが行われない第2ユーザ(非対象者)とを認識する。
【0077】
本実施形態では、仮想のオブジェクトのうち、トリガーイベントのトリガーとなることが予め設定されている仮想のオブジェクト(本実施形態では、城の模型の仮想のオブジェクトである模型MO)に触れるような動作を行ったユーザUを、第1ユーザU1として認識し、それ以外のユーザを第2ユーザU2として認識する。
【0078】
なお、本発明における対象ユーザ認識部は、そのような構成に限定されるものではなく、複数のユーザから、体感させる空間の種類の切り替えが行われる第1ユーザ、及び体感させる空間の種類の切り替えが行われない第2ユーザを認識するものであればよい。そのため、第1ユーザと第2ユーザの区別のつけ方は、システム設計者が適宜設定してよい。
【0079】
例えば、予め所定のグループを設定しておき、そのグループに属するユーザのうちの一人がトリガーイベントを発生させた際には、そのグループに属する全てのユーザに体感させる空間を切り替える(すなわち、そのグループに属する全てのユーザを第1ユーザとして認識する)ように構成してもよい。
【0080】
また、本実施形態においては、ユーザが複数存在するため、体感させる空間の種類の切り替えが行われる対象者である第1ユーザ、及び体感させる空間の種類の切り替えが行われない非対象者である第2ユーザを認識するという処理を行っている。
【0081】
これは、それらの複数のユーザが相互に知り合いではない場合などには、一方のユーザ(第1ユーザ)の動作によって所定のトリガーイベントが認識されて体感させる空間の種類の切り替えが生じると、他方のユーザ(第2ユーザ)は、体験している空間が突然切り替わることになるので、その第2ユーザに違和感を与えてしまうおそれがあるためである。
【0082】
そのため、体感空間切替システムを用いて空間を体感させているユーザが一人だけの場合、複数のユーザが相互に知り合いであって、一人のユーザの行動によって全てのユーザに体感させる空間が切り替わっても問題がない場合などには、第1ユーザ及び第2ユーザを認識する処理を実行する必要はなく、対象ユーザ認識部を省略してもよい。
【0083】
仮想環境生成部37は、アバター生成部37aと、仮想空間生成部37bとを有している。
【0084】
アバター生成部37aは、前述の所定のトリガーイベントが認識されたときに、仮想空間VSに存在させるアバターを生成する。
【0085】
そのアバターには、第1ユーザU1に対応する第1アバターA1、及び第2ユーザU2に対応する第2アバターA2が含まれる(図4参照)。第1アバターA1及び第2アバターA2(以下、総称する場合は「アバターA」という。)は、対応するユーザUの現実空間RSにおける動作に対応して、仮想空間VSにおいて動作する。
【0086】
なお、本実施形態では、システムSを用いて仮想空間VSを体感させる場合、ユーザUは、仮想空間VSの画像と音のみを認識して、ユーザU自身が仮想空間VSに存在していると認識させられる。すなわち、システムSは、いわゆる没入型のシステムとして構成されている。
【0087】
しかし、本発明の空間切替システムは、そのような構成に限定されるものではなく、仮想空間にアバターが存在していなくてもよい。すなわち、本発明の空間切替システムにおける仮想空間を体感させるためのシステムは、没入型のシステムでなくてもよい。
【0088】
仮想空間生成部37bは、前述の所定のトリガーイベントが認識されたときに、図4に示すような、ユーザUが存在する現実空間RS(図1図5参照)に対応する仮想空間VSを生成する。具体的には、仮想空間生成部37bは、仮想空間VSの背景及び仮想空間VSに存在する仮想のオブジェクト及びアバターAとなる画像、及び、それらの画像に関連する音を生成する。
【0089】
なお、本実施形態のシステムSは備えていないが、空間切替システムが、所定の感触を実現する構成(例えば、硬さの変わるクッションなど)、所定の匂いを生成する構成などを備えている場合には、仮想空間生成部は、画像及び音に加えて、それらの感触、匂いを用いて、仮想空間を生成するようにしてもよい。
【0090】
ここで、図5に示すように、仮想空間生成部37bによって生成される仮想空間VSの形状は、トリガーイベントが認識された時点における現実空間RSの形状に応じて生成されるように構成されている。
【0091】
ここで、「現実空間の形状」とは、仮想空間を生成する領域の形状、及びその現実空間に存在する実在のオブジェクト(例えば、本実施形態では、テーブルRO1、本棚RO2、引き出しRO3)の姿勢、座標及び形状などに基づいて認識されるものである。
【0092】
また、「仮想空間の形状」とは、本実施形態のような没入型のシステムにおいては、ユーザに対応するアバターが動作可能な領域を指す。具体的には、仮想空間VSの背景の画像と、仮想空間に配置された仮想のオブジェクトによって規定される範囲である。
【0093】
現実空間RSの形状は種々様々であり、また時間の経過によって変化することもあるので、現実空間RSの形状にかかわらず一定の形状の仮想空間VSを生成した場合、現実空間RSの形状によって、同じ仮想空間VSであるのに動作可能な範囲が異なってしまうおそれがある。ひいては、ユーザUに違和感を与えてしまうおそれがある。
【0094】
そこで、このように、生成される仮想空間VSの形状を仮想空間VSの生成のトリガーとなるトリガーイベントが認識された時点における現実空間RSの形状に応じたものにすると、生成された仮想空間VSで動作可能な範囲を、その現実空間RSと一致させることができる。これにより、仮想空間VSの形状と現実空間RSの形状との差異に起因して、ユーザUに違和感を与えてしまうことを抑制することができる。
【0095】
本実施形態では、仮想空間VSの背景の画像の大きさを、現実空間RSの領域と一致させる大きさとするとともに、現実空間RSに存在するテーブルRO1、本棚RO2、引き出しRO3の姿勢、座標及び形状に対応させて、仮想空間VSに仮想のオブジェクトである岩VO1、岩壁VO2、柱VO3を生成している。
【0096】
なお、本発明の空間切替システムは、このような構成に限定されるものではなく、生成される仮想空間の形状と現実空間の形状とを必ずしも対応させなくてもよい。例えば、空間切替システムにおける仮想空間を体感させるためのシステムが没入型のものではない場合には、ユーザの移動が生じないので、仮想空間の形状を現実空間の形状と異なるようにしてもよい。
【0097】
また、ここで、仮想空間生成部37bによって生成される仮想空間VSの属性は、その仮想空間VSが生成されるトリガーとなった仮想のオブジェクト(本実施形態では、城の模型の仮想のオブジェクトである模型MO)の属性に対応したものになっている。
【0098】
ここで、「属性」とは、仮想空間の形状、模様、色彩、又はそれらの組み合わせなどが挙げられる。また、仮想のオブジェクトの属性と仮想空間の属性とは、一致するものの他、関連性を相互に連想させるものであってもよい。具体的には、例えば、仮想空間の背景の模様及び仮想のオブジェクトの模様を一致させることの他、仮想空間が「オフィス」を模した空間である場合には、仮想のオブジェクトの形状を「ビル」にすることなどが挙げられる。
【0099】
このように、トリガーイベントのトリガーとなる仮想のオブジェクトである模型MOの属性と、そのトリガーイベントをトリガーとして生成される仮想空間VSの属性とを対応させるように構成すると、その模型MOを介してトリガーイベントを生じさせるユーザUは、その後に自らが移動する仮想空間VSの属性を無意識に予測できる。これにより、そのユーザUにさらに違和感を与えることなく、体感させる空間の種類の切り替えを行うことができる。
【0100】
また、本実施形態では理解を容易にするために、トリガーイベントのトリガーとなる仮想のオブジェクトとして、模型MOのみが存在しているとして説明しているが、仮想のオブジェクトは複数存在してもよい。
【0101】
そして、仮想のオブジェクトが複数存在し、且つ、それらの仮想のオブジェクトの属性(ひいては、その仮想のオブジェクトに基づいて生成される仮想空間の属性)を異ならせておけば、仮想のオブジェクトを選択するという容易な動作だけで、ユーザ自身が、切り替わる仮想空間を選択することができるようになる。
【0102】
なお、本発明の空間切替システムは、このような構成に限定されるものではなく、トリガーイベントのトリガーとなる仮想のオブジェクトの属性とトリガーイベントの属性とを、必ずしも対応させていなくてもよい。
【0103】
ただし、ユーザの意図しないタイミングで体感させる空間の種類の切り替えが生じてしまうとユーザに違和感を与えてしまうので、その仮想のオブジェクトに対して何らかの動作を行った場合に体感させる空間の種類の切り替えが生じることを、明示的又は暗示的に示しておく方がよい。例えば、仮想のオブジェクト付近に仮想のメッセージボードを生成し、そのメッセージボードに、仮想のオブジェクトに触れた際に切り替わる仮想空間の情報を記載しておくなどの処理をしておくとよい。
【0104】
また、本実施形態のシステムSでは採用していないが、本発明の空間切替システムは、予測される現実空間の状態(形状など)に対応した複数の仮想空間を、トリガーイベントのトリガーとなる仮想のオブジェクトごとに、予め生成しておき、トリガーイベントを認識した際に、そのトリガーイベントの種類と現実空間の状態に応じて仮想空間を選択して、その選択された仮想空間を対象となるユーザに体感させるように構成されていてもよい。
【0105】
アバター状態制御部38は、ユーザ状態認識部33によって認識されたユーザUの現実空間RSにおける状態(すなわち、姿勢及び座標)に基づいて、そのユーザUに対応するアバターAの仮想空間VSにおける状態を制御する。
【0106】
このような処理部を備えているシステムSでは、所定のトリガーイベントが認識される前までは、ユーザUに認識させる環境は複合空間MSに基づいて決定されるので、いずれのユーザUも、複合空間MSを体感することになる。
【0107】
一方、所定のトリガーイベントが認識された後は、ユーザUに体感させる環境は仮想空間に基づいて決定されるので、ユーザUのうちトリガーイベントを発生させた第1ユーザU1は、それまで体感していた複合空間MSに代わり、仮想空間VSを体感することになる。
【0108】
すなわち、このシステムSは、ユーザUに体感させる環境を、現実空間RSに仮想のオブジェクトを存在させた複合空間MSと現実空間RSとは切り離された仮想空間VSとの区別なく、切替可能なものとなっている。
【0109】
ここで、その切り替えのトリガーとなるトリガーイベントは、複合空間MSに存在する仮想のオブジェクト(本実施形態では、城の模型の仮想のオブジェクトである模型MO)を対象としてユーザUが行う動作である。そして、その模型MOは、仮想のオブジェクトであるので、現実空間RSに存在しながらも仮想空間VSを連想させるものである。
【0110】
そのため、その模型MOに触れたユーザUは、仮想のオブジェクトをトリガーとして、空間が切り替わることを、意識せずとも認識しやすくなっている。その結果、複合空間MSから仮想空間VSへの切り替えを、そのユーザUに違和感を与えることなく行うことができる。
【0111】
したがって、システムSによれば、ユーザにU体験させる環境を、従来のように複合空間MS又は仮想空間VSに限定されたものではなく、複合空間MSと仮想空間VSとを織り交ぜたものにすることができる。また、複合空間MSから仮想空間VSへの切り替えをユーザUに違和感を与えることなく行うことができるので、その切り替えによってユーザUの没入感を阻害することも抑制できる。ひいては、このシステムSによれば、現実空間RSでは体験できない環境を、従来よりも幅広い形で、ユーザUに体験させることができる。
【0112】
また、複合空間から仮想空間への切り替えは、トリガーイベントが認識された後、仮想空間を生成する処理が完了した時点で、すぐに行ってもよいし、体感させる空間の種類の切り替えが行われるユーザ(第1ユーザ)に、一旦、複合空間と仮想空間とが混在した空間を体感させてから行ってもよい。
【0113】
このように構成すると、体感させる空間を複合空間から仮想空間へ切り替える際に、ユーザに与えてしまうおそれのある唐突さを抑制することができる。ひいては、体感させる空間の種類の切り替えを、さらにユーザに違和感を与えることなく行うことができる。
【0114】
例えば、本実施形態では、図6に示すように、仮想空間を生成する処理が完了した後、複合空間MSが所定の起点(本実施形態では、複合空間MSの図面左側)から仮想空間VSに塗り替えられ、自身を含むユーザUもアバターAに置き換わっていくという空間を、第1ユーザU1に、一旦体感させてから、仮想空間VSを体感させている。
【0115】
また、複合空間と仮想空間とが混在した空間は、このような構成に限定されるものではない。そのため、例えば、トリガーイベントのトリガーとなる仮想のオブジェクトが、ユーザを飲み込むように拡大していって仮想空間VSになるようなものでもよい。
【0116】
また、複合空間と仮想空間とが混在した空間は、1種類である必要はなく、複数種類あってもよい。例えば、同じ仮想空間への切り替えを行う場合であっても、トリガーとなるトリガーイベントの内容(対象となる仮想のオブジェクトの種類、仮想のオブジェクトに対する動作の種類など)によって、その混在した空間を異ならせるようにしてもよい。
【0117】
ところで、システムSでは、前述のように、前記現実空間に存在する複数の人物から、体感させる空間の種類の切り替えを行う対象者である第1ユーザU1と、体感させる空間の種類の切り替えを行わない非対象者である第2ユーザU2とを認識して、トリガーイベントが認識された場合には、第1ユーザに体感させる空間の種類の切り替えのみを行うように構成されている。
【0118】
しかし、そのようにユーザUごとに体感させる空間の種類の切り替えを行うように構成すると、複数のユーザUが現実空間RSの同じ領域にいる場合には、第1ユーザU1に体感させる空間の種類の切り替えが行われたときに、その第1ユーザU1は第2ユーザU2を認識できなくなるので、体感させる空間の種類の切り替えが行われた後に、その第1ユーザU1が第2ユーザU2に意図せず接触してしまうおそれが生じる。
【0119】
また、現実空間の同じ領域に、複合空間及び仮想空間を体感させる者(対象者)と仮想空間又は複合空間を体感させない者(非対象者)とが、同時に存在できるように構成する場合も想定し得る。そのような場合も、対象者に体感させる空間の種類の切り替えが行われたときに、その対象者は非対象者を認識できなくなるので、その切り替えが行われた後に、その対象者が非対象者に意図せず接触してしまうおそれが生じる。
【0120】
そこで、図4に示すように、システムSは、第1ユーザU1に体感させる空間のみが切り替わる場合であっても、その切り替わった仮想空間VSに、対象者である第1ユーザU1に対応する第1アバターA1だけでなく、第2ユーザU2のような非対象者に対応する第2アバターA2も含ませるように構成されている。
【0121】
これにより、第1ユーザU1は、第2アバターU2を介して、第2ユーザU2のような非対象者の位置を把握することができるようになるので、第1ユーザU1が第2ユーザU2のような非対象者に意図せず接触することを抑制することができる。また、第1ユーザU1の没入感を阻害することも抑制することができる。
【0122】
なお、本発明の体感空間切替システムは、このような構成に限定されるものではない。例えば、現実空間が十分に広かったり、移動経路が固定されていたりする場合などには、対象者に体感させる空間のみを切り替えたとしても、ユーザ同士の接触の可能性が低いので、体感させる空間の種類の切り替えの行われない非対象者に対応する第2アバターを、必ずしも仮想空間に含ませなくてもよい。
【0123】
なお、本実施形態では、対象者である第1ユーザU1に対応して動作する第1アバターA1と、非対象者である第2ユーザU2に対応して動作する第2アバターA2とは、いずれも動物のアバターとなるように構成されている。しかし、対象者に対応するアバターの形態と、非対象者に対応するアバターの形態とは、必ずしも同じ形態のものでなくてもよい。
【0124】
例えば、対象者に対応して動作するアバターを人間をデフォルメしたものにするとともに、非対象者に対応して動作するアバターを動物にしたり、対象者に対応して動作するアバターを背景を透過しないものにするとともに、非対象者に対応して動作するアバターを背景を透過する半透明のものにしたりしてもよい。
【0125】
このように、対応して動作するアバターの形態を対象者と非対象者とで異なるように構成すると、それらのアバターを認識する対象者に、対象者に対応して動作するアバターと非対象者に対応して動作するアバターとの区別を、直感的に行わせることができるようになる。
【0126】
[各処理部で実行される処理]
次に、図2図9を参照して、システムSを用いてユーザUに複合空間MS又は仮想空間VSを体感させる際に、システムSの実行する処理(すなわち、空間切替方法)について説明する。
【0127】
[複合空間を体感させる際における処理]
まず、図1図3及び図7を参照して、システムSが、ユーザUに、複合空間MSを体感させる際に実行する処理について説明する。
【0128】
この処理においては、まず、サーバ3の現実空間認識部30は、ユーザUが存在している現実空間RSの状況(図1参照)を認識する(図7/STEP100)。
【0129】
次に、サーバ3の複合環境生成部31の仮想オブジェクト生成部31aは、複合空間MSに存在させて、ユーザUに認識させる仮想のオブジェクトを生成する(図7/STEP101)。
【0130】
本実施形態では、仮想オブジェクト生成部31aは、複合空間MSに存在させる仮想のオブジェクトとして、トリガーイベントのトリガーとなる模型MO(図3参照)を生成する。
【0131】
次に、複合環境生成部31の複合空間生成部31bは、現実空間認識部30で認識された現実空間RSに、仮想オブジェクト生成部31aで生成された仮想のオブジェクトを存在させて、図3に示すような複合空間MSを生成する(図7/STEP102)。
【0132】
次に、サーバ3のユーザ状態認識部33は、カメラ2が撮影したユーザUの画像データを認識し、その画像データに基づいて、ユーザUの状態(現実空間RSにおける姿勢及び座標)を認識する(図7/STEP103)。
【0133】
次に、サーバ3のユーザ環境決定部32は、ユーザUの状態に基づいて、ユーザUに認識させる複合空間MSの環境を決定する(図7/STEP104)。
【0134】
具体的には、ユーザ環境決定部32は、ユーザUに認識させる環境として、ユーザUの現実空間RSの姿勢及び座標に基づいて、現実空間RSに重畳して表示させる仮想のオブジェクトの状態、及びそれに伴う音を決定する。
【0135】
次に、ユーザUに装着されたHMD4は、決定された環境を出力する(図7/STEP105)。
【0136】
具体的には、HMD4は、HMD4に搭載されているモニタ40を透過して観察している現実空間RSに対し、決定された仮想のオブジェクトを重畳させるように表示させ、HMD4に搭載されているスピーカ41に決定された音を発生させる。
【0137】
次に、サーバ3のユーザ状態認識部33は、ユーザUがなんらかの動作を行ったか否かを判断する(図7/STE106)。
【0138】
ユーザUが動作しなかった場合(STEP106でNOの場合)、ユーザ状態認識部33は、所定の制御周期でその判断を繰り返す。
【0139】
一方、ユーザUが動作した場合(STEP106でYESの場合)、サーバ3の仮想オブジェクト制御部34は、そのユーザUの動作が仮想のオブジェクトに対する動作であるか否かを判断する(図7/STEP107)。
【0140】
ユーザUの動作が仮想のオブジェクトに対する動作であった場合(STEP107でYESの場合)、仮想オブジェクト制御部34は、ユーザUの動作の種類に応じて、仮想のオブジェクトを制御する(図7/STEP108)。
【0141】
例えば、仮想オブジェクト制御部34は、ユーザUの動作が仮想のオブジェクトを移動させるような動作であった場合には、その動作の内容に応じて、仮想のオブジェクトの座標を変化させる。
【0142】
仮想のオブジェクトを制御する処理(STEP108の処理)を実行した後、又は、ユーザUの動作が仮想のオブジェクトに対する動作でなかった場合(STEP107でNOの場合)、サーバ3は、処理の終了を指示する信号を認識したか否かを判断する(図7/STEP109)。
【0143】
終了を指示する信号を認識しなかった場合(STEP109でNOの場合)、STEP104に戻り、再度、STEP104以降の処理が実行される。
【0144】
具体的には、まず、ユーザ環境決定部32は、その時点におけるユーザUの状態及び複合空間MSの状況に基づいて、ユーザUに認識させる複合空間MSにおける環境を決定し、次に、HMD4は、決定された環境を出力した後、改めて、ユーザ状態認識部33は、ユーザUの動作を認識し、そのユーザUの動作に応じて、仮想オブジェクト制御部34は、仮想のオブジェクトを制御する。
【0145】
一方、終了を指示する信号を認識した場合(STEP109でYESの場合)、システムSは、今回の処理を終了する。
【0146】
以上の処理により、図3に示すように、ユーザUは、装着したHMD4で表示される画像及び発生される音によって、現実空間RSに仮想のオブジェクトを存在させた複合空間MSを認識させられるとともに、その複合空間MSで仮想のオブジェクトを操作することができる状態となる。
【0147】
なお、このとき、複合空間MSは現実空間RSを基準として生成されたものであるので、第1ユーザU1及び第2ユーザU2の一方が認識している複合空間MSには、第1ユーザU1及び第2ユーザU2の他方も存在する。
【0148】
[空間を切り替える際における処理]
次に、図1図4図6図8A及び図8Bを参照して、システムSは、第1ユーザU1に体感させる空間を切り替える際に実行する処理(体感空間切替方法)について説明する。
【0149】
この処理においては、まず、サーバ3のトリガーイベント認識部35は、所定のトリガーイベントを認識したか否かを判断する(図8A/STEP200)。
【0150】
本実施形態では、トリガーイベント認識部35は、ユーザUのいずれかが、トリガーイベントのトリガーとなる仮想のオブジェクトである模型MOに対して、触れるような動作をしたか否かを判断する。
【0151】
トリガーイベントを認識しなかった場合(STEP201でNOの場合)、トリガーイベント認識部35は、所定の制御周期でその判断を繰り返す。
【0152】
一方、
トリガーイベントを認識した場合(STEP200でYESの場合)、サーバ3の仮想環境生成部37の仮想空間生成部37bは、トリガーイベントのトリガーとなった仮想のオブジェクトの属性に基づいて、生成する仮想空間VSの属性を認識する(図8A/STEP201)。
【0153】
本実施形態では、トリガーイベントのトリガーとなった仮想のオブジェクトは、城の模型の仮想のオブジェクトである模型MOであるので、生成される仮想空間VSは、城をテーマにしたものになる。具体的には、岩壁VO2、岩でできた柱VO3などで構成された自然を利用した城のような空間になる。
【0154】
次に、仮想空間生成部37bは、現実空間RSの形状を認識する(図8A/STEP202)。
【0155】
具体的には、仮想空間生成部37bは、トリガーイベントが認識された時点でカメラ2で撮影された現実空間RSの画像から、これから仮想空間VSを生成する現実空間RSの領域の大きさ、及びその現実空間RSに存在する実在のオブジェクト(例えば、本実施形態では、テーブルRO1、本棚RO2、引き出しRO3)の姿勢、座標及び形状を認識する。
【0156】
次に、仮想空間生成部37bは、現実空間RSの形状に基づいて、生成する仮想空間VSの形状を認識する(図8A/STEP203)。
【0157】
具体的には、仮想空間生成部37bは、認識した現実空間RSの領域の大きさに基づいて、仮想空間VSの背景の画像の大きさを認識し、認識した実在のオブジェクトの姿勢、座標及び形状に基づいて、それらの実在のオブジェクトに対応する仮想のオブジェクト(岩VO1、岩壁VO2、柱VO3)の姿勢、座標及び形状を認識する。
【0158】
次に、サーバ3のユーザ状態認識部33は、ユーザUの状態を認識する(図8A/STEP204)。
【0159】
具体的には、ユーザ状態認識部33は、トリガーイベントが認識された時点におけるユーザUの現実空間RSにおける姿勢及び座標を認識する。
【0160】
次に、サーバ3の仮想環境生成部37のアバター生成部37aは、ユーザUの状態に基づいて、仮想空間VSに存在させるアバターAを生成する(図8A/STEP205)。
【0161】
次に、サーバ3の仮想環境生成部37の仮想空間生成部37bは、アバター生成部37aが生成したアバターを含む仮想空間VSを生成する(図8A/STEP206)。
【0162】
具体的には、仮想空間生成部37bは、STEP201で認識した仮想空間VSの属性及びSTEP203で認識した仮想空間VSの形状に基づいて、仮想空間VSの背景の画像及び仮想のオブジェクトを生成するとともに、その画像に、STEP205で生成されたアバターAを含ませて、図5に示すような仮想空間VSを生成する。
【0163】
次に、サーバ3のユーザ環境決定部32は、複合空間MSと仮想空間VSとが混在した空間を生成する(図8A/STEP207)。
【0164】
具体的には、ユーザ環境決定部32は、複合環境生成部31が生成し、現在ユーザUに体感させている複合空間MSと、仮想環境生成部37が生成し、これからユーザUに体感させる仮想空間VSの画像とを、混在させた空間を生成する。
【0165】
本実施形態では、その混在させた空間は、図6に示すように、複合空間MSが所定の起点(本実施形態では、複合空間MSの図面左側)から仮想空間VSに塗り替えられ、自身を含むユーザUもアバターAに置き換わっていくという空間である。
【0166】
次に、サーバ3の対象ユーザ認識部36は、トリガーイベントの内容に基づいて、切り替えの処理の対象となるユーザを認識する(図8B/STEP208)。
【0167】
具体的には、対象ユーザ認識部36は、認識したトリガーイベントの種類、及びトリガーイベントが生じた際のユーザUの動作に基づいて、体感させる空間の種類の切り替えが行われるユーザ(第1ユーザ)と、体感させる空間の種類の切り替えが行われないユーザ(第2ユーザ)とを認識する。
【0168】
本実施形態では、トリガーイベントのトリガーとなる仮想のオブジェクトである模型MOに触れるような動作を行ったユーザUを、第1ユーザU1として認識し、それ以外のユーザを第2ユーザU2として認識する。
【0169】
次に、ユーザ環境決定部32は、第1ユーザU1及び第2ユーザU2の状態に基づいて、体感させる空間の種類の切り替えの対象となる第1ユーザU1に認識させる複合空間MSと仮想空間VSとが混在した空間の環境を決定する(図8B/STEP209)。
【0170】
次に、第1ユーザU1に装着されたHMD4は、決定された環境を出力する(図8B/STEP210)。
【0171】
具体的には、HMD4は、HMD4に搭載されているモニタ40に決定された画像を表示させ、HMD4に搭載されているスピーカ41に決定された音を発生させる。
【0172】
次に、ユーザ環境決定部32は、所定時間が経過したか否かを判断する(図8B/STEP211)。
【0173】
具体的には、ユーザ環境決定部32は、複合空間MSと仮想空間VSとが混在した空間を介して複合空間MSから仮想空間VSへの切り替えが完了するまでの時間が経過がしたか否かを判断する。
【0174】
その後、所定時間が経過するまで(STEP211でNOの場合)、ユーザ環境決定部32は、STEP211の判断を繰り返す。
【0175】
一方、所定時間が経過した場合(STEP211でYESの場合)、サーバ3のユーザ状態認識部33は、ユーザUの状態を、改めて認識する(図8B/STEP212)。
【0176】
次に、サーバ3のアバター状態制御部38は、ユーザUの状態に基づいて、アバターAの状態を決定する(図8B/STEP213)。
【0177】
次に、サーバ3のユーザ環境決定部32は、第1ユーザU1の第1アバターA1及び第2ユーザU2の第2アバターA2の状態に基づいて、第1ユーザU1に認識させる仮想空間VSの環境を決定する(図8B/STEP214)。
【0178】
具体的には、ユーザ環境決定部32は、第1ユーザU1に認識させる環境として、第1アバターA1の環境(第2ユーザU2に対応する第2アバターA2との相対的な座標なども含む)を表す仮想空間VSの画像及び音を決定する。
【0179】
次に、第1ユーザU1に装着されたHMD4は、決定された環境を出力して(図8B/STEP215)、システムSは、今回の処理を終了する。
【0180】
以上の処理により、図3図4及び図6に示すように、第1ユーザU1に体感させる空間が、複合空間MSから、複合空間MSと仮想空間VSとが混在する空間を介して、仮想空間VSへと切り替えられる。一方、第2ユーザU2に体感させる空間は、複合空間MSのまま維持される。
【0181】
[仮想空間を体感させる際における処理]
次に、図1図2図4及び図9を参照して、システムSが、第1ユーザU1に、仮想空間Sを体感させる際に実行する処理について説明する。
【0182】
この処理においては、まず、サーバ3のユーザ状態認識部33は、カメラ2が撮影したユーザUの画像データを認識し、その画像データに基づいて、第1ユーザU1及び第2ユーザU2の状態(現実空間RS(図1参照)における姿勢及び座標)を認識する(図9/STEP300)。
【0183】
次に、サーバ3のアバター状態制御部38は、第1ユーザU1及び第2ユーザU2の状態に基づいて、第1アバターA1及び第2アバターA2の状態(仮想空間VS(図4参照)における姿勢及び座標)を決定する(図9/STEP301)。
【0184】
次に、サーバ3のユーザ環境決定部32は、第1アバターA1及び第2アバターA2の状態に基づいて、第1ユーザU1に認識させる仮想空間VSの環境を決定する(図9/STEP302)。
【0185】
具体的には、ユーザ環境決定部32は、第1ユーザU1に認識させる環境として、第1アバターA1の環境(第2アバターA2の相対的な座標なども含む)を表す仮想空間VS1の画像及び音を決定する。
【0186】
次に、第1ユーザU1に装着されたHMD4は、決定された環境を出力する(図9/STEP303)。
【0187】
具体的には、HMD4は、HMD4に搭載されているモニタ40に決定された画像を表示させ、HMD4に搭載されているスピーカ41に決定された音を発生させる。
【0188】
次に、サーバ3のユーザ状態認識部33は、第1ユーザU1又は第2ユーザU2がなんらかの動作を行ったか否かを判断する(図9/STEP304)。
【0189】
次に、第1ユーザU1又は第2ユーザU2がなんらかの動作を行った場合(STEP304でYESの場合)、STEP301に戻り、再度、STEP301以降の処理が実行される。
【0190】
一方、第1ユーザU1又は第2ユーザU2がなんらかの動作を行っていなかった場合(STEP304でNOの場合)、サーバ3は、処理の終了を指示する信号を認識したか否かを判断する(図9/STEP305)。
【0191】
終了を指示する信号を認識しなかった場合(STEP305でNOの場合)、STEP304に戻り、再度、STEP304以降の処理が実行される。
【0192】
一方、終了を指示する信号を認識した場合(STEP305でYESの場合)、システムSは、今回の処理を終了する。
【0193】
以上の処理により、図5に示すように、第1ユーザU1は、自らが仮想空間VSに、第1アバターA1として存在していると認識させられる。このとき、第2ユーザU2に対して、引き続き前述の複合空間を体感させる際における処理が実行されているのであれば、第2ユーザU2は、引き続き複合空間MSを体感している状態となっている。しかし、第1ユーザU1に体感させている仮想空間VSでは、その第2ユーザU2に対応する第2アバターA2が、第2ユーザU2の動作に応じて動作している状態となる。
【0194】
[その他の実施形態]
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0195】
例えば、上記実施形態では、体感空間切替システムであるシステムSが1つのコンピュータシステムである場合について説明した。しかし、本発明は、コンピュータシステムに限らず、本発明の体感空間切替方法を実行させるためのものであればよい。
【0196】
そのため、例えば、上記実施形態で説明した処理部を備える1つのコンピュータによって構成された体感空間切替装置であってもよい。また、前述の体感空間切替方法を任意の1つ又は複数のコンピュータによって実行させるための体感空間切替プログラム、及びそのプログラムを記録し、且つ、そのプログラムを、ユーザなどが利用するコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0197】
1…標識、2…カメラ、3…サーバ(体感空間切替システム)、4…HMD(環境出力器)、30…現実空間認識部、31…複合環境生成部、31a…仮想オブジェクト生成部、31b…複合空間生成部、32…ユーザ環境決定部、33…ユーザ状態認識部(ユーザ動作認識部)、33a…ユーザ姿勢認識部、33b…ユーザ座標認識部、34…仮想オブジェクト制御部、35…トリガーイベント認識部、36…対象ユーザ認識部(対象者認識部)、37…仮想環境生成部、37a…アバター生成部、37b…仮想空間生成部、38…アバター状態制御部、40…モニタ、41…スピーカ、A…アバター、A1…第1アバター、A2…第2アバター、MO…模型、MS…複合空間、RO1…テーブル、RO2…本棚、RO3…引き出し、RS…現実空間、S…システム、U…ユーザ、U1…第1ユーザ(対象者)、U2…第2ユーザ(非対象者)、VO1…岩、VO2…岩壁、VO3…柱、VS 仮想空間。
【要約】
システムSは、サーバ3と、HMD4とを備える。サーバ3は、複合空間を生成する複合空間生成部31bと、HMD4を介してユーザに認識させる空間を決定するユーザ環境決定部32と、ユーザの動作を認識するユーザ状態認識部33と、ユーザが仮想のオブジェクトを対象として行う動作であるトリガーイベントを認識するトリガーイベント認識部35と、仮想空間を生成する仮想空間生成部37bとを有する。トリガーイベントが認識されると、ユーザ環境決定部32は、ユーザに、複合空間に代わり、仮想空間を認識させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9