(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/32 20060101AFI20240816BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20240816BHJP
F16L 3/08 20060101ALI20240816BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240816BHJP
H01B 7/40 20060101ALI20240816BHJP
H01B 7/36 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B2/10 E
F16L3/08 Z
H01B7/00 301
H01B7/40 307Z
H01B7/36 Z
(21)【出願番号】P 2021015800
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 久範
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-117725(JP,A)
【文献】国際公開第2019/122543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
F16B 2/10
F16L 3/08
H01B 7/00
H01B 7/40
H01B 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線部材と、
前記電線部材を取付対象に対して固定するクランプと、を備え、
前記クランプは、前記電線部材に固定される第1固定部及び前記取付対象に固定される第2固定部を有するクランプ本体と、
前記第1固定部に固定される位置とは異なる位置の前記電線部材に掛止可能な掛止部と、前記クランプ本体に対して前記掛止部を回転可能に連結する連結部と、を有しており、
前記掛止部は、前記電線部材に掛止可能な第1位置と、前記クランプ本体と共に前記電線部材を挟むことで前記電線部材を保持可能な第2位置とに移動可能に構成されている、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記クランプは、前記掛止部が前記第2位置にある状態において、前記掛止部と前記クランプ本体とを係合する係合構造を有している、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記係合構造は、前記掛止部及び前記クランプ本体の一方に設けられる係合凸部と、前記掛止部及び前記クランプ本体の他方に設けられる係合凹部とを有しており、
前記係合凸部は、前記係合凹部に係合可能に構成されている、
請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第1固定部は、前記電線部材と共にテープにより巻き付けられることで前記電線部材に固定されている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記電線部材は、前記掛止部を掛止する位置を示す目印を有している、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワイヤハーネスの仮止め構造が開示されている。このワイヤハーネスの仮止め構造は、ループ状に巻かれた電線部材の複数箇所を合成樹脂製の複数のクランプで相互に仮固定するものである。
【0003】
例えば、電線部材が二重巻きにされる場合においては、第1のクランプが、電線部材の一巻き目の巻き始めの部分に装着される。また、第2のクランプが、電線部材の二巻き目の巻き終わりの部分に装着される。
【0004】
各クランプは、突起部及び孔部を有している。第1のクランプの突起部を第2のクランプの孔部に係合させることで、第1のクランプと第2のクランプとが相互に仮固定される。これにより、電線部材がループ状に巻かれた状態で仮止めされる。
【0005】
こうした仮止め構造によれば、例えば車体フレームに対して電線部材を組み付ける際に、電線部材をループ状に巻いた状態で対象物上に安定した姿勢で仮置きすることができる。これにより、上記対象物を車体フレームに組み付ける際に、対象物上に仮置きされている電線部材が位置ずれしたり、脱落したりすることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているワイヤハーネスの仮止め構造の場合、電線部材の複数箇所に複数のクランプを装着する工程が必要となる。また、複数のクランプが必要となるため、部品点数が多くなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのワイヤハーネスは、電線部材と、前記電線部材を取付対象に対して固定するクランプと、を備え、前記クランプは、前記電線部材に固定される第1固定部及び前記取付対象に固定される第2固定部を有するクランプ本体と、前記電線部材に掛止可能な掛止部と、前記クランプ本体に対して前記掛止部を回転可能に連結する連結部と、を有しており、前記掛止部は、前記電線部材に掛止可能な第1位置と、前記クランプ本体と共に前記電線部材を挟むことで前記電線部材を保持可能な第2位置とに移動可能に構成されている。
【0009】
同構成によれば、クランプの第1固定部が電線部材に固定された状態で、第2固定部が車体フレームなどの取付対象に固定される。この状態において、掛止部を第1位置にすることで、掛止部を電線部材に掛止することが可能となる。これにより、電線部材の長さ方向において取付対象に対して固定されていない他の部分をクランプによって仮保持することができる。
【0010】
また、上記構成によれば、掛止部を第2姿勢にすることで、掛止部とクランプ本体とによって電線部材を挟むことで電線部材を保持することが可能となる。このため、第1固定部と掛止部とによって電線部材が2箇所で保持されるようになる。これにより、クランプにより電線部材を安定して保持することができる。
【0011】
したがって、部品点数の増加を抑制しつつ、電線部材同士を仮保持することができる。
上記ワイヤハーネスにおいて、前記クランプは、前記掛止部が前記第2位置にある状態において、前記掛止部と前記クランプ本体とを係合する係合構造を有していることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、第2位置にある掛止部がクランプ本体と係合されるため、掛止部を第2位置に保持するための別部材が不要となる。これにより、部品点数の増加を抑制できる。
【0013】
上記ワイヤハーネスにおいて、前記係合構造は、前記掛止部及び前記クランプ本体の一方に設けられる係合凸部と、前記掛止部及び前記クランプ本体の他方に設けられる係合凹部とを有しており、前記係合凸部は、前記係合凹部に係合可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、係合凸部と係合凹部との凹凸の係合関係によって係合構造を容易に具現化することができる。
上記ワイヤハーネスにおいて、前記第1固定部は、前記電線部材と共にテープにより巻き付けられることで前記電線部材に固定されていることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、第1固定部の構成を簡単にすることができる。
上記ワイヤハーネスにおいて、前記電線部材は、前記掛止部を掛止する位置を示す目印を有していることが好ましい。
【0016】
同構成によれば、電線部材において掛止部が掛止される位置が作業者によってばらつくことが抑制される。これにより、電線部材同士の仮保持を効果的に行うことができる。
また、作業者は、電線部材において掛止部を掛止する位置を目視にて容易に把握することができる。したがって、電線部材同士の仮保持の作業性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品点数の増加を抑制しつつ、電線部材同士を仮保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】掛止部が第1位置にある状態のクランプを示す斜視図。
【
図3】クランプの掛止部が第2位置にある状態のワイヤハーネスを示す斜視図。
【
図4】クランプの掛止部が第2位置にある状態のワイヤハーネスを示す断面図。
【
図5】変形例のワイヤハーネスについて、
図4に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1~
図4を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、電線部材11と、電線部材11を取付対象である車体フレーム50のブラケット51に対して固定するクランプ12とを備えている。
【0020】
電線部材11は、図示しない機器同士を電気的に接続するものである。電線部材11の両端には、図示しないコネクタが設けられている。
図1及び
図2に示すように、クランプ12は、クランプ本体20と、掛止部23と、連結部24とを有している。クランプ12は、樹脂製であり、一体に形成されている。
【0021】
図2に示すように、クランプ本体20は、平板状のベース部20Aを有している。以降において、ベース部20Aの一方の面(同図の手前側の面)及び他方の面をそれぞれ第1面及び第2面として説明する。
【0022】
ベース部20Aは、長尺状の第1部分20aと、第1部分20aの長手方向の一端側から屈曲して延在する第2部分20bとを有している。第1部分20aの長手方向と、第2部分20bの延在方向とは、直交している。第2部分20bの延在方向の長さは、第1部分20aの長手方向の長さよりも短い。
【0023】
第1部分20aの長手方向の他端側には、電線部材11に固定される第1固定部21が設けられている。
第1固定部21は、第1部分20aの第1面に電線部材11を沿わせた状態で、電線部材11と共にテープ40により巻き付けられることで電線部材11に固定されている(
図1及び
図3参照)。
【0024】
第1部分20aの第2面には、ブラケット51に固定される第2固定部22が設けられている。第2固定部22は、基端側(同図の下端側)に向かって開口するとともにブラケット51が挿入される挿入穴22aを有している。第2固定部22は、第1部分20aの長手方向において第2部分20bと第1固定部21との間に設けられている。
【0025】
掛止部23は、第2部分20bの延在方向(同図の上下方向)に沿って延在する板部23aと、板部23aの先端側(同図の上側)に連なるとともに電線部材11に掛止可能な湾曲部23bとを有している。湾曲部23bは、断面U字状である。
【0026】
第1固定部21、第2固定部22、及び掛止部23は、第1部分20aの長手方向、すなわち電線部材11におけるクランプ12が取り付けられる部位の長さ方向において順に並んで設けられている。
【0027】
連結部24は、クランプ本体20の第2部分20bに対して掛止部23を回転可能に連結するヒンジである。
掛止部23は、電線部材11に掛止可能な第1位置と、クランプ本体20と共に電線部材11を挟むことで電線部材11を保持可能な第2位置とに移動可能に構成されている。
【0028】
図1及び
図2に示すように、掛止部23が第1位置にある状態においては、板部23aは、連結部24に対してベース部20Aとは反対側に位置している。
図3及び
図4に示すように、掛止部23が第2位置にある状態においては、板部23aは、連結部24に対してベース部20Aと同じ側に位置している。
【0029】
クランプ12は、掛止部23が第2位置にある状態において、掛止部23とクランプ本体20とを係合する係合構造30を有している。
係合構造30は、掛止部23に設けられる係合凸部31と、クランプ本体20に設けられる係合凹部32とを有している。
【0030】
係合凸部31は、掛止部23の板部23aに突設されている。係合凸部31の先端部には、先細状をなすとともに係合凹部32からの抜け止めをするカエシ形状の係止部31aが設けられている(
図4参照)。
【0031】
係合凹部32は、第2部分20bを板厚方向に貫通する孔である。
係合凸部31は、係合凹部32に係合可能に構成されている。
電線部材11は、掛止部23を掛止する位置を示す目印11aを有している。目印11aは、テープなどによって構成されてもよいし、電線部材11の絶縁被覆に着色されることにより構成されてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
クランプ12の第1固定部21が電線部材11に固定された状態で、第2固定部22が車体フレーム50のブラケット51に固定される。この状態において、掛止部23を第1位置にすることで、掛止部23を電線部材11に掛止することが可能となる(以上、作用1)。
【0033】
また、掛止部23を第2姿勢にすることで、掛止部23とクランプ本体20とによって電線部材11を挟むことで電線部材11を保持することが可能となる。このため、第1固定部21と掛止部23とによって電線部材11が2箇所で保持されるようになる(以上、作用2)。
【0034】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)クランプ12は、電線部材11に固定される第1固定部21及びブラケット51に固定される第2固定部22を有するクランプ本体20と、電線部材11に掛止可能な掛止部23と、クランプ本体20に対して掛止部23を回転可能に連結する連結部24とを有している。掛止部23は、電線部材11に掛止可能な第1位置と、クランプ本体20と共に電線部材11を挟むことで電線部材11を保持可能な第2位置とに移動可能に構成されている。
【0035】
こうした構成によれば、上記作用1を奏することにより、電線部材11の長さ方向において車体フレーム50のブラケット51に対して固定されていない他の部分をクランプ12によって仮保持することができる。
【0036】
また、上記構成によれば、上記作用2を奏することにより、クランプ12により電線部材11を安定して保持することができる。
したがって、部品点数の増加を抑制しつつ、電線部材11同士を仮保持することができる。
【0037】
(2)クランプ12は、掛止部23が第2位置にある状態において、掛止部23とクランプ本体20とを係合する係合構造30を有している。
こうした構成によれば、第2位置にある掛止部23がクランプ本体20と係合されるため、掛止部23を第2位置に保持するための別部材が不要となる。これにより、部品点数の増加を抑制できる。
【0038】
(3)係合構造30は、掛止部23に設けられる係合凸部31と、クランプ本体20に設けられる係合凹部32とを有している。係合凸部31は、係合凹部32に係合可能に構成されている。
【0039】
こうした構成によれば、係合凸部31と係合凹部32との凹凸の係合関係によって係合構造30を容易に具現化することができる。
(4)第1固定部21は、電線部材11と共にテープ40により巻き付けられることで電線部材11に固定されている。
【0040】
こうした構成によれば、第1固定部21の構成を簡単にすることができる。
(5)電線部材11は、掛止部23を掛止する位置を示す目印11aを有している。
こうした構成によれば、電線部材11において掛止部23が掛止される位置が作業者によってばらつくことが抑制される。これにより、電線部材11同士の仮保持を効果的に行うことができる。
【0041】
また、作業者は、電線部材11において掛止部23を掛止する位置を目視にて容易に把握することができる。したがって、電線部材11同士の仮保持の作業性が向上する。
(6)第1固定部21、第2固定部22、及び掛止部23が、電線部材11におけるクランプ12が取り付けられる部位の長さ方向において順に並んで設けられている。
【0042】
こうした構成によれば、作業者は、第1固定部21、第2固定部22、及び掛止部23を視認しやすい。したがって、ワイヤハーネス10のブラケット51への取り付け作業を容易に行うことができる。
【0043】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・クランプ本体20のベース部20Aは、電線部材11の周囲を囲む樋状に構成されていてもよい。
・目印11aは、省略することができる。
【0045】
・第1固定部21は、テープ40が巻き付けられる構成に限定されない。例えば、電線部材11と共に結束バンドが巻き付けられる構成であってもよい。この場合、第1固定部21に結束バンドが挿通される孔を設けるようにしてもよい。
【0046】
・係合凸部31の係止部31aを省略してもよい。
・係合凹部32は第2部分20bを貫通しない凹部であってもよい。
・係合構造30は、上記実施形態において例示した構造に限定されない。例えば、掛止部23に係合凹部32を設けるとともに、第2部分20bに係合凸部31を設けるようにしてもよい。また、
図5に示すように、掛止部23の湾曲部23bの先端に屈曲部33を設けるようにしてもよい。屈曲部33は、掛止部23が第2位置にある状態において、第1部分20aの第2面側に回り込むとともに第2面に係合される。
【0047】
・係合構造30を省略することもできる。この場合、掛止部23を第2姿勢にある状態に保持する保持部材をクランプ12とは別体にて設けるようにすればよい。
・例えば、第2固定部22を第2部分20bの第2面側に設けるようにしてもよい。すなわち、第2固定部22が、電線部材11におけるクランプ12が取り付けられる部位の長さ方向において掛止部23と同一の位置に設けられているものであってもよい。
【0048】
・第2固定部22は、取付対象に固定される形状であればよく、取付対象の形状に合わせて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…ワイヤハーネス
11…電線部材
11a…目印
12…クランプ
20…クランプ本体
20A…ベース部
20a…第1部分
20b…第2部分
21…第1固定部
22…第2固定部
22a…挿入穴
23…掛止部
23a…板部
23b…湾曲部
24…連結部
30…係合構造
31…係合凸部
31a…かえし部
32…係合凹部
33…屈曲部
40…テープ
50…車体フレーム
51…ブラケット(取付対象)