(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】筒状梱包緩衝材の構造
(51)【国際特許分類】
B65D 81/05 20060101AFI20240816BHJP
B65D 5/50 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B65D81/05 200
B65D5/50 101A
(21)【出願番号】P 2021009499
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 明
(72)【発明者】
【氏名】水木 健二
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114530(JP,A)
【文献】特開2018-070188(JP,A)
【文献】登録実用新案第3009526(JP,U)
【文献】実開平06-078220(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 57/00-59/08
B65D 81/00-81/17
B65D 5/00- 5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状梱包緩衝材の構造であって、
梱包緩衝材は、互いに周方向に連なる複数の外壁でもって筒状に折り曲げ形成される外壁体と、
前記複数の外壁の下端に繋がり、該外壁との繋がり部位で内側に折り曲げられる、前記外壁の高さ寸法よりも短い高さ寸法を持つ複数の
繋がった内壁でもって筒状に折り曲げ形成される内壁体を備え、
前記内壁体は、前記外壁体に対峙すると共に、筒状への折り曲げによる内外周差により前記外壁体に対して斜め上方を向く姿勢となり、
前記内壁の内側への折り曲げにより上端となった
筒状に繋がった部位が、梱包対象物の底面を保持する保持部となることを特徴とする筒状梱包緩衝材の構造。
【請求項2】
前
記内壁の隣り合う境界領域にあって、前記内壁を筒状に折り曲げた際に重なる箇所に、
前記内壁の隣り合う繋ぎ部を一部残して切り欠きを形成したことを特徴とする請求項1に記載の筒状梱包緩衝材の構造。
【請求項3】
前記外壁体を構成する周方向に連なる複数の外壁のうちの、一端側の外壁と他端側の外壁とは内外に重ね合わされ、
内側に位置される外壁は、その一部に切込み部を有し、
外側に位置される外壁は、その一部に切り込みにより形成され、前記切込み部に嵌め込まれる押込み部を有し、
前記押込み部が前記切込み部に押し込まれることで、前記一端側の外壁と他端側の外壁との内外重ね合わせ状態を保持することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の筒状梱包緩衝材の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包対象物を立体的に保持する筒状の梱包緩衝材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の梱包緩衝材は、通常、筒パッド構造の緩衝材で成るが、緩衝性を持たせるために、側壁を構成する複数の矩形板状部材の折り目で下方に折り曲げ、さらにもう一つの折り目で上方に折り曲げることにより形成した二重の脚部を有した緩衝梱包材が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、長方形状のシート部材を短尺方向に折り曲げ、長尺方向に筒状に折り曲げ加工することにより作成された緩衝梱包材が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5174410号公報
【文献】特開2017-100765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される緩衝梱包材においては、折り曲げ加工の回数が多く、複雑な折り加工を必要とし相応のコスト高となり、また梱包対象物を緩衝保持する性能も十分とは言えない。また、特許文献2に示される緩衝梱包材においては、天面が開放され側面が二重となった箱体であり、梱包対象物を底面から浮かせて保持するものではなく、緩衝保持性能が低い。
【0005】
本発明は、上記問題を解消するもので、部品点数を削減し、かつ複雑な加工を必要とせず、梱包対象物を大きな緩衝効果を持って立体的に保持することが可能な筒状梱包緩衝材の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筒状梱包緩衝材の構造であって、
梱包緩衝材は、互いに周方向に連なる複数の外壁でもって筒状に折り曲げ形成される外壁体と、
前記複数の外壁の下端に繋がり、該外壁との繋がり部位で内側に折り曲げられる、前記外壁の高さ寸法よりも短い高さ寸法を持つ複数の繋がった内壁でもって筒状に折り曲げ形成される内壁体を備え、
前記内壁体は、前記外壁体に対峙すると共に、筒状への折り曲げによる内外周差により前記外壁体に対して斜め上方を向く姿勢となり、
前記内壁の内側への折り曲げにより上端となった筒状に繋がった部位が、梱包対象物の底面を保持する保持部となることを特徴とする。
【0007】
上記筒状梱包緩衝材の構造において、前記内壁の隣り合う境界領域にあって、前記内壁を筒状に折り曲げた際に重なる箇所に、前記内壁の隣り合う繋ぎ部を一部残して切り欠きを形成したものであることが望ましい。
【0008】
上記筒状梱包緩衝材の構造において、前記外壁体を構成する周方向に連なる複数の外壁のうちの、一端側の外壁と他端側の外壁とは内外に重ね合わされ、内側に位置される外壁は、その一部に切込み部を有し、外側に位置される外壁は、その一部に切り込みにより形成され、前記切込み部に嵌め込まれる押込み部を有し、前記押込み部が前記切込み部に押し込まれることで、前記一端側の外壁と他端側の外壁との内外重ね合わせ状態を保持するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない緩衝材の部品点数で、筒状緩衝材の加工に少ない折り加工を行うだけの簡単な加工でもって、梱包対象物を底面から浮かせて立体的に保持でき、対象物の保持能力が高く、しかも緩衝効果も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る筒状梱包緩衝材を示す斜視図。
【
図2】同梱包緩衝材を成す段ボールの展開状態を示す平面斜視図。
【
図3】同段ボールの展開状態から内壁となる部位を内側に折り曲げた状態を示す平面斜視図。
【
図4】同段ボールの筒状に折り曲げる前の状態を示す斜視図。
【
図5】同段ボールの筒状に折り曲げ途上の状態を示す斜視図。
【
図6】同梱包緩衝材に梱包対象物を梱包した状態での縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る梱包緩衝材について図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係る梱包緩衝材1の外観を示す。
図1において、梱包緩衝材1は、1枚の段ボール10(
図2)を折り曲げることにより形成され、筒状に形成された外壁体2と、外壁体2にその内側で対峙する内壁体3と、を備える。外壁体2は、互いに周方向に連なる複数の外壁21~25でもって筒状(スリーブ状)に折り曲げ形成されている。内壁体3は、複数の内壁31~34でもって外壁体2の内側に対峙して筒状に折り曲げ形成されている。内壁31~34は外壁21~24の高さよりも低いものとされている。なお、本実施形態の外壁体2は、四角形の筒状のものを示しているが、その他の多角形であってもよい。
図1の矢印Hは高さ方向を示し、矢印Cは周方向を示す。
【0012】
内壁31~34の各々は、その下端が外壁21~24の下端に繋がり、この繋がり部位で内側に折り曲げられ、また、周方向にも一部の繋ぎ部6(その詳細は
図2で説明)で繋がっている。外壁21~25は、周方向での連なり部位で筒状に折り曲げられている。この外壁21~25の筒状への折り曲げが、内壁31~34を内側に折り曲げた状態で行われることにより、内壁31~34も筒状に折り曲げられる。内壁31~34が、外壁体2の内側で筒状に折り曲げられることで、それらの内外周差により外壁21~25に対して斜め上方を向く姿勢となる。内壁31~34は、元に戻ろうとするが、周方向に繋ぎ部6で繋がっているため、斜め上方を向く姿勢が維持される。内壁31~34の内側への折り曲げにより上端となった部位が、梱包対象物の底面を保持する保持部30となる。
【0013】
梱包緩衝材1の筒状の外壁体2が成す矩形空間の上面及び下面は開口し、その矩形空間内の保持部30より上部に梱包対象物が梱包保持され、保持部30より下部の空間は例えば梱包対象物の付属品等の収納に利用可能である。かくして、少ない緩衝材の部品点数で簡単な折り加工を行うだけで、内壁31~34は斜め上方を向く姿勢となり、その上端部位が梱包対象物の底面を保持する保持部30となる。このため、梱包対象物を浮かせて立体的に保持でき、その保持能力は高く、しかも緩衝効果(クッション性)も高くなる。
【0014】
本実施形態においては、外壁体2の複数の外壁を筒状に折り曲げた状態を保持するため、外壁21~25のうちの、一端側の外壁21と他端側の外壁25とは内外に重ね合わされている。そして、内側に位置される外壁21は、その上端部に台形状に形成された切込み部21aを有し、外側に位置される外壁25は、その上端部に切り込みにより形成された台形状の押込み部25aを有している。この押込み部25aが、台形状の切込み部21aに嵌め込まれることで、一端側の外壁21と他端側の外壁25との重ね合わせ状態を保持する。すなわち、切込み部21aと押込み部25aとは係止部4を構成している。この構成により、別の部材を用いることなく、ワンタッチで容易に外壁体2を筒状に保持させることができる。
【0015】
なお、係止部4は、外壁体2の複数の外壁21~25を筒状に折り曲げた状態を保持できるものであれば、本実施形態の構成に限られず任意の形態を採用できる。例えば、外壁21の任意箇所(一部)に任意形状の切込み部21aを形成し、外壁25の任意箇所(一部)に任意形状の押込み部25aを形成してもよい。また、これら切込み部と押込み部とは、相対的なものであるので、外壁21に押込み部を形成し、外壁25に切込み部を形成してもよく、技術的範囲にはこのような形態をも含む。
【0016】
図2は梱包緩衝材1を構成する段ボール10の展開状態を示す。
図2において、段ボール10は、波状の中芯の表裏に表ライナーと裏ライナーとを貼り合わせたものであり、中芯の目の方向(中空が流れている方向)が周方向Cとなるように所定形状に裁断されている。段ボール10は、外壁体2を構成する互いに周方向に連なる複数の外壁21~25の領域と、これらのうち、外壁21~24の領域の下端に繋がる内壁体3を構成する内壁31~34の領域とを有する。外壁21~25の高さ方向寸法(H1)よりも内壁31~34の高さ方向寸法(H2)は小さい。
【0017】
これら外壁21~24の領域と内壁31~34の領域との繋がり部位に罫線L1が設けられ、この罫線L1に沿って内壁31~34の領域は内側に折り曲げられる。外壁21~25は、各々の周方向Cでの連なり部位に罫線L2~L5が設けられ、これら罫線L2~L5で筒状に折り曲げられる。各罫線L1~L5は段ボール10を厚み方向に潰すことにより形成される。なお、中芯の目の方向に平行に折り曲げると、折り位置は、最大、中芯の波の幅分ずれてしまうので、寸法精度を要求される場合は、罫線と中芯の方向が垂直であることが好ましい。本実施形態では、罫線L2~L5を折り曲げて筒状を形成するが、梱包対象物を保持する必要があるため寸法精度が要求される。そのため、罫線L2~L5は中芯の目の方向に対して垂直方向とすることが好ましい。罫線L1は、目の方向に対して精度が出ない折りとなるが、この罫線L1には、いくつかのミシン目を入れることで、折り曲げの際にずれが極力生じ難いものとすることが好ましい。外壁21には切込み部21aが設けられ、外壁25には押込み部25aが設けられる。
【0018】
複数の内壁31~34の隣り合う境界領域にあって、これら内壁31~34を筒状に折り曲げた際に重なる箇所に、一部の繋ぎ部6を残して切り欠き5を形成している。この切り欠き5の各々は、略二等辺三角形とされ、その頂点が罫線L1と罫線L2~L4との交点に位置し、その底辺は、内壁31~34の折り曲げにより上端となる保持部30(
図2では下端)よりも内方に位置する。これにより、内壁31~34の繋ぎ部6が形成される。繋ぎ部6が有ることで、罫線L1に沿って内壁31~34を一体に内側に折り曲げる作業が容易になる。また、このような形状の切り欠き5を有していることで、内壁31~34を筒状に折り曲げる作業が容易となる。なお、切り欠き5は、任意の形状を採用し得る。
【0019】
図3乃至
図5は、段ボール10を折り曲げて梱包緩衝材1を形成する要領を示す。先ず、
図3に示すように、内壁体3となる内壁31~34を罫線L1に沿って折り曲げる。次に、
図4から
図5に示すように、外壁体2となる外壁21~25を罫線L2~L5により筒状に折り曲げていく。最終的に外壁21と外壁25との重ね合わせ状態を保持させ、上述した
図1に示した梱包緩衝材1の構成とする。内壁31~34を筒状に折り曲げた際に重なる箇所に、一部の繋ぎ部6を残して切り欠き5を形成していることで、筒状への折り曲げは容易である。なお、
図1、
図4及び
図5においては、繋ぎ部6を外壁21~24の方向に曲げているが、内側に曲げても、梱包対象物の保持能力や緩衝効果への影響はない。また、繋ぎ部6の曲げ方向を全て同じにしなくとも、同様に保持能力や緩衝効果への影響はない。
【0020】
図6は、梱包緩衝材1に梱包対象物9を梱包した状態での縦断面構成を示す。梱包対象物9は、その底面が、斜め姿勢の内壁31~34の上端部位の保持部30に保持される。かくして、梱包対象物9は浮かんで立体的に保持される。外壁25の押込み部25aを外壁21の切込み部21aに嵌め込んだ状態では、切込み部21aの上部は開口しているので、この開口に作業者又は使用者の手指を差し込んで梱包対象物9を取り出すことが容易となる。なお、外壁21~24の高さ方向寸法(H1)から斜め姿勢の内壁31~34の寸法(H2)の高さ分を引いた寸法を、梱包対象物9の高さ寸法に略合わせておくことで、外壁体2の上端と梱包対象物9の上面とを略面一にでき、梱包緩衝材1を高さ方向に積み重ねるときに好都合である。
【0021】
以上のように本実施形態の梱包緩衝材1によれば、1枚の緩衝材の形状を工夫し、外壁21~25の領域に繋がる内壁31~34の領域に相当する緩衝材の下半分を折り曲げ、さらに全体を筒状に折り曲げる簡単な加工を施すだけで、内外の周差を利用して斜め上方を向く姿勢の内壁体3を形成できる。そのため、少ない緩衝材の部品点数でもって梱包対象物を底面から浮かせて立体的に保持する構造が得られ、梱包対象物の保持能力が高く、しかも緩衝効果も高いものとなる。また、内壁31~34の領域を折り曲げた状態を保持したまま筒状への加工が容易で、作業効率が良い。さらには、梱包緩衝材1の分解も容易にできることから、リサイクル性にも優れている。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、内壁31~34を筒状に折り曲げた際に重なる箇所に一部の繋ぎ部6を残して切り欠き5を形成したものを示したが、切り欠き5及び繋ぎ部6に替えて、内壁31~34を筒状に折り曲げ可能に罫線又はミシン目等を施したものであっても構わない。また、本実施形態のような梱包緩衝材1が複数個、一つの包装箱に詰め合わせ収納される場合があり、そのような場合には、梱包緩衝材1の各々の外壁21と外壁25との重ね合わせ状態保持には、より簡易な構成を採用すればよい。
【符号の説明】
【0023】
1 梱包緩衝材
10 段ボール
2 外壁体
21~25 外壁
21a 切込み部
25a 押込み部
3 内壁体
30 保持部
31~34 内壁
4 係止部
5 切り欠き
6 繋ぎ部
9 梱包対象物
L1~L5 罫線