(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】パウチ及びパウチの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 75/62 20060101AFI20240816BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20240816BHJP
B65D 65/28 20060101ALI20240816BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B65D75/62 A
B65D33/00 C
B65D65/28
B32B27/32 E
(21)【出願番号】P 2021008112
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 清
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-183133(JP,A)
【文献】特開2020-203408(JP,A)
【文献】特開2020-128250(JP,A)
【文献】特開2019-069823(JP,A)
【文献】特開2019-059512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0081405(US,A1)
【文献】特開平11-240543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/62
B65D 33/00
B65D 65/28
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面及び外面を含む積層体から構成されるパウチであって、
内容物を収容する収容部と、
前記収容部を画成する内縁を含み、前記積層体の前記内面同士が接合されているシール部と、
前記シール部の前記内縁に交わる第1交点及び第2交点を含み、前記収容部を横切るハーフカット線と、を備え、
前記積層体は、ポリエチレンフィルムを含む基材と、前記基材に対して前記内面の側に位置し、ポリエチレンフィルムを含むシーラント層と、前記基材と前記シーラント層との間に位置し、レーザーを吸収して発熱する発熱体を含む発熱層と、を備え、
前記シーラント層の前記ポリエチレンフィルムは、50μm以上200μm以下の厚さを有し、
前記ハーフカット線は、前記基材を貫通する貫通孔を含み、
前記貫通孔において前記シーラント層の面が露出しており、
前記貫通孔は、前記基材の内側の端において第1幅を有し、
前記第1幅は
40μm以上120μm以下である、パウチ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記基材の外側の端において第2幅を有し、
前記第2幅は前記第1幅よりも大きい、請求項
1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記第2幅は220μm以下である、請求項
2に記載のパウチ。
【請求項4】
前記発熱体は、金属酸化物、ビスマス系化合物、モリブデン系化合物、銅系化合物又はカーボンブラックを含む、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のパウチ。
【請求項5】
前記基材の前記ポリエチレンフィルムは、10μm以上50μm以下の厚さを有する延伸ポリエチレンフィルムである、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のパウチ。
【請求項6】
前記基材は、前記貫通孔の外側の端に接する隆起部を含み、
前記隆起部の高さが10μm以上である、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のパウチ。
【請求項7】
内容物を収容する収容部を備えるパウチの製造方法であって、
内面及び外面を含む積層体を準備する工程と、
前記積層体の前記内面同士を接合することによってシール部を形成する工程と、を備え、
前記積層体は、ポリエチレンフィルムを含む基材と、前記基材に対して前記内面の側に位置し、ポリエチレンフィルムを含むシーラント層と、前記基材と前記シーラント層との間に位置し、レーザーを吸収して発熱する発熱体を含む発熱層と、を備え、
前記シーラント層の前記ポリエチレンフィルムは、50μm以上200μm以下の厚さを有し、
前記パウチには、前記基材を貫通する貫通孔を含むハーフカット線が形成されており、
前記貫通孔において前記シーラント層の面が露出しており、
前記貫通孔は、前記基材の内側の端において第1幅を有し、
第1幅は
40μm以上120μm以下であり、
前記製造方法は、前記積層体にレーザーを照射することによって前記ハーフカット線を形成するレーザー工程を備える、パウチの製造方法。
【請求項8】
前記レーザー工程は、前記積層体に対してレーザーを相対的に移動させながら前記レーザーを前記積層体に照射し、
移動速度は5mm/s超である、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記レーザーのスポット径は500μm以下である、請求項
7又は
8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ及びパウチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体や粉体などの流動性を有する内容物を収容するための容器として、パウチが用いられている。パウチは、基材及びシーラント層を含む積層体から構成される。
【0003】
近年、パウチをリサイクルすることが求められている。リサイクルの観点からは、基材及びシーラント層が同種の樹脂材料を含むことが好ましい。例えば特許文献1は、基材及びシーラント層をポリエチレンから構成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パウチの開封を容易化するため、パウチにハーフカット線が形成されることがある。ハーフカット線は、基材を貫通するがシーラント層を貫通はしない。ハーフカット線を形成する方法として、積層体にレーザーを照射する方法が知られている。
【0006】
基材及びシーラント層が異種の樹脂材料を含む場合、基材には吸収されるがシーラント層には吸収されないレーザーを選択することにより、基材に貫通孔を形成できる。しかしながら、基材及びシーラント層が同種の樹脂材料を含む場合、基材を加工する際にシーラント層にもダメージが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得るパウチ及びパウチの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内面及び外面を含む積層体から構成されるパウチであって、
内容物を収容する収容部と、
前記収容部を画成する内縁を含み、前記積層体の前記内面同士が接合されているシール部と、
前記シール部の前記内縁に交わる第1交点及び第2交点を含み、前記収容部を横切るハーフカット線と、を備え、
前記積層体は、ポリエチレンフィルムを含む基材と、前記基材に対して前記内面の側に位置し、ポリエチレンフィルムを含むシーラント層と、前記基材と前記シーラント層との間に位置し、レーザーを吸収して発熱する発熱体を含む発熱層と、を備え、
前記ハーフカット線は、前記基材を貫通する貫通孔を含み、
前記貫通孔は、前記基材の内側の端において第1幅を有し、
前記第1幅は140μm以下である、パウチである。
【0009】
本発明によるパウチにおいて、前記第1幅は120μm以下であってもよい。
【0010】
本発明によるパウチにおいて、前記第1幅は40μm以上であってもよい。
【0011】
本発明によるパウチにおいて、前記貫通孔は、前記基材の外側の端において第2幅を有し、前記第2幅は前記第1幅よりも大きくてもよい。
【0012】
本発明によるパウチにおいて、前記第2幅は220μm以下であってもよい。
【0013】
本発明によるパウチにおいて、前記発熱体は、金属酸化物、ビスマス系化合物、モリブデン系化合物、銅系化合物又はカーボンブラックを含んでいてもよい。
【0014】
本発明によるパウチにおいて、前記基材の前記ポリエチレンフィルムは、10μm以上50μm以下の厚さを有する延伸ポリエチレンフィルムであってもよい。
【0015】
本発明によるパウチにおいて、前記シーラント層の前記ポリエチレンフィルムは、50μm以上200μm以下の厚さを有していてもよい。
【0016】
本発明によるパウチにおいて、前記基材は、前記貫通孔の外側の端に接する隆起部を含み、前記隆起部の高さが10μm以上であってもよい。
【0017】
本発明は、内容物を収容する収容部を備えるパウチの製造方法であって、
内面及び外面を含む積層体を準備する工程と、
前記積層体の前記内面同士を接合することによってシール部を形成する工程と、を備え、
前記積層体は、ポリエチレンフィルムを含む基材と、前記基材に対して前記内面の側に位置し、ポリエチレンフィルムを含むシーラント層と、前記基材と前記シーラント層との間に位置し、レーザーを吸収して発熱する発熱体を含む発熱層と、を備え、
前記パウチには、前記基材を貫通する貫通孔を含むハーフカット線が形成されており、
前記貫通孔は、前記基材の内側の端において第1幅を有し、
第1幅は140μm以下であり、
前記製造方法は、前記積層体にレーザーを照射することによって前記ハーフカット線を形成するレーザー工程を備える、パウチの製造方法である。
【0018】
本発明によるパウチの製造方法において、前記レーザー工程は、前記積層体に対してレーザーを移動させながら前記レーザーを前記積層体に照射し、移動速度は5mm/s超であってもよい。
【0019】
本発明によるパウチの製造方法において、前記レーザーのスポット径は500μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ハーフカット線を備え、リサイクル可能なパウチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態におけるパウチを示す正面図である。
【
図2】ハーフカット線の貫通孔の一例を示す断面図である。
【
図4】積層体にレーザーを照射する工程の一例を示す図である。
【
図5】積層体にレーザーを照射する工程の一例を示す図である。
【
図6】積層体にせん断力を加えたときの様子の一例を示す図である。
【
図7】積層体にせん断力を加えたときの様子の一例を示す図である。
【
図8】積層体にせん断力を加えたときの様子の一例を示す図である。
【
図9】貫通孔の寸法の測定方法を説明するための図である。
【
図10】ハーフカット線の一変形例を示す正面図である。
【
図19】例11~例18の貫通孔の観察結果を示す図である。
【
図20】例19の貫通孔の観察結果を示す図である。
【
図21】例21~例28の貫通孔の観察結果を示す図である。
【
図22】例31~例38の貫通孔の観察結果を示す図である。
【
図23】例11~例19のパウチの評価結果を示す図である。
【
図24】例21~例28のパウチの評価結果を示す図である。
【
図25】例31~例38のパウチの評価結果を示す図である。
【
図26】レーザー装置の移動速度と貫通孔の第1幅との関係を示す図である。
【
図27】レーザー装置の移動速度と貫通孔の第2幅との関係を示す図である。
【
図28】レーザー装置の移動速度と、第1幅に対する第2幅の比率との関係を示す図である。
【
図29】例11~例19のパウチの隆起部の観察結果を示す図である。
【
図30】例21~例28のパウチの隆起部の観察結果を示す図である。
【
図31】例31~例38のパウチの隆起部の観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから適宜変更し誇張してある。
【0023】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0024】
パウチ
図1は、本実施の形態によるパウチ10を示す正面図である。パウチ10は、ボトルへ詰め替えられる液体や紛体などの流動性を有する内容物を収容するよう構成されている。なお、
図1においては、内容物が充填される前の状態(内容物が収容されていない状態)のパウチ10が示されている。パウチ10に収容される液体の例は、液体洗剤、シャンプー等である。
【0025】
本実施の形態において、パウチ10は、自立可能に構成されたガセット式のパウチである。パウチ10は、上部11、下部12及び側部13を含み、正面図において略矩形状の輪郭を有する。なお、「上部」、「下部」及び「側部」などの名称、並びに、「上方」、「下方」などの用語は、ガセット部を下にしてパウチ10が自立している状態を基準としてパウチ10やその構成要素の位置や方向を相対的に表したものに過ぎない。パウチ10の輸送時や使用時の姿勢などは、本明細書における名称や用語によっては限定されない。
【0026】
パウチ10は、収容部17、シール部19及びハーフカット線26を含む。収容部17は、内容物を収容する。シール部19は、収容部17を画成する内縁19xを含む。シール部19は、パウチ10を構成するフィルムの内面同士を接合することによって構成されている。
図1などの平面図においは、シール部19にハッチングが施されている。
【0027】
収容部17は、注出口部20を含んでいてもよい。注出口部20は、パウチ10から内容物を取り出す際に液体が通る部分である。注出口部20の幅は、収容部17のその他の部分の幅よりも狭い。このため、使用者は、注出口部20を通ってパウチ10から注出される内容物の注出方向を精度良く定めることができる。
【0028】
ハーフカット線26は、パウチ10の引き裂き性を高めるためにパウチ10に形成されている。ハーフカット線26は、平面視において収容部17を横切る。
図1に示す例において、ハーフカット線26は、平面視において注出口部20を横切る。
図1に示すように、パウチ10の外縁には、ハーフカット線26に隣接する切り欠き28が形成されていてもよい。切り欠き28に替えて切り込みがパウチ10の外縁に形成されていてもよい。
【0029】
引き裂き性とは、パウチ10に加えられるせん断力に基づいて生じるパウチ10の破断の進行のし易さを意味する。パウチ10が高い引き裂き性を有する場合、使用者が適度なせん断力をパウチ10に加えることにより、ハーフカット線26に沿ってパウチ10のフィルムを破断させることができる。パウチ10が低い引き裂き性を有する場合、使用者が大きなせん断力をパウチ10に加えたとしても、ハーフカット線26に沿うパウチ10の破断が進行しにくい。例えば、パウチ10に加えるせん断力が、パウチ10の一部の層を伸ばす力として利用されたり、パウチ10の一部の層を他の層から剥離させる力として利用されたりする。このため、フィルムの破断が進行しにくい。
【0030】
パウチ10は、表面を構成する表面フィルム14、裏面を構成する裏面フィルム15、及び、下部12を構成する下部フィルム16を備える。下部フィルム16は、折り返し部16fで折り返された状態で、表面フィルム14と裏面フィルム15との間に配置されている。
【0031】
なお、「表面フィルム」、「裏面フィルム」及び「下部フィルム」という用語は、位置関係に応じて各フィルムを区画したものに過ぎず、パウチ10を製造する際のフィルムの提供方法が、上述の用語によって限定されることはない。例えば、パウチ10は、表面フィルム14と裏面フィルム15と下部フィルム16が連設された1枚のフィルムを用いて製造されてもよく、表面フィルム14と下部フィルム16が連設された1枚のフィルムと1枚の裏面フィルム15の計2枚のフィルムを用いて製造されてもよく、1枚の表面フィルム14と1枚の裏面フィルム15と1枚の下部フィルム16の計3枚のフィルムを用いて製造されてもよい。
【0032】
図1に示すように、シール部19は、下部シール部12a、側部シール部13a及び注出口シール部20aを含む。下部シール部12aは、下部12に広がっている。側部シール部13aは、一対の側部13に沿って延びている。注出口シール部20aは、注出口部20を画成している。注出口シール部20aの内縁の間の距離は、一対の側部シール部13a間の内縁の間の距離よりも小さい。注出口部20がパウチ10の上部11と側部13との間の隅部に形成される場合、注出口シール部20aは側部シール部13aに接続される。
【0033】
内容物が収容されていない状態のパウチ10においては、
図1に示すように、パウチ10の上部11は開口部11bになっている。開口部11bを介してパウチ10に内容物を収容した後、表面フィルム14の内面と裏面フィルム15の内面とを上部11において接合することにより、開口部11bに上部シール部が形成される。これにより、収容部17がパウチ10の外部から封止される。
【0034】
側部シール部13a、注出口シール部20a及び上部シール部は、表面フィルム14の内面と裏面フィルム15の内面とを接合することによって構成される。下部シール部12aは、表面フィルム14の内面と下部フィルム16の内面とが接合されている部分、及び、裏面フィルム15の内面と下部フィルム16の内面とが接合されている部分を含む。
図1において符号13cが付された点線で示すように、下部フィルム16の一部に切り欠きが形成されていてもよい。切り欠きの位置においては、表面フィルム14の内面と裏面フィルム15の内面とが接合されていてもよい。
【0035】
対向するフィルム同士を接合してパウチ10を封止することができる限りにおいて、シール部19を形成するための方法は特には限られない。例えば、加熱などによってフィルムの内面を溶融させ、内面同士を溶着させることによって、すなわちヒートシールによって、シール部が形成されてもよい。若しくは、接着剤などを用いて対向するフィルムの内面同士を接着することによって、シール部が形成されてもよい。
【0036】
ハーフカット線
ハーフカット線26について詳細に説明する。
図2は、表面フィルム14に形成されているハーフカット線26を示す図である。
図2は、
図1において符号Aで示すように、ハーフカット線26が延びる方向に直交する方向に沿って表面フィルム14を切断した場合を示す断面図である。図示はしないが、裏面フィルム15にもハーフカット線26が形成されていてもよい。表面フィルム14のハーフカット線26と裏面フィルム15のハーフカット線26とは、表面フィルム14の法線方向に沿って見た場合に重なっていてもよい。
【0037】
まず、表面フィルム14の層構成について説明する。表面フィルム14は、複数の層を含む積層体30によって構成されている。図示はしないが、裏面フィルム15も、表面フィルム14の積層体30と同一の積層体30によって構成されていてもよい。
【0038】
積層体30は、内面30x及び外面30yを含む。内面30xは、内容物に接する面である。外面30yは、内面30xの反対側に位置する面である。積層体30は、基材40、発熱層50及びシーラント層70を少なくとも備える。シーラント層70は、基材40に対して内面30xの側に位置している。発熱層50は、基材40とシーラント層70との間に位置する。発熱層50は、レーザーを吸収して発熱する発熱体を含む。
【0039】
積層体30は、接着剤層60を備えていてもよい。接着剤層60は、基材40とシーラント層70との間に位置する。
図2に示す積層体30は、外面側から内面側へ順に
基材/発熱層/接着剤層/シーラント層
を備えている、と言える。なお、「/」は層と層の境界を表している。
【0040】
積層体30は、
図2に示されていない層を更に備えていてもよい。例えば、積層体30は、基材40とシーラント層70との間に、例えば基材40と発熱層50との間に位置する印刷層を備えていてもよい。印刷層は、パウチ10に製品情報を示したり美感を付与したりする層である。印刷層は、文字、数字、記号、図形、絵柄などを表現する。印刷層を構成する材料としては、グラビア印刷用のインキやフレキソ印刷用のインキを用いることができる。発熱層50が印刷層として機能してもよい。
【0041】
ハーフカット線26は、基材40を貫通する貫通孔27を含む。
図3は、貫通孔27を拡大して示す断面図である。貫通孔27は、積層体30にレーザーを照射することによって形成される。
【0042】
基材40に貫通孔27が形成される原理一例を説明する。積層体30にレーザーを照射すると、発熱体がレーザーを吸収することにより、発熱層50の温度が上昇する。これにより、例えば、加熱された発熱層50の周囲にガスが発生する。ガスの温度が上昇し、ガスの圧力が増加すると、基材40の一部が飛散し、貫通孔27が形成される。なお、別の原理によって基材40に貫通孔27が形成されてもよい。
【0043】
図4に示すように、外面30y側から積層体30にレーザーLが照射されてもよい。
図5に示すように、内面30x側から積層体30にレーザーLが照射されてもよい。
【0044】
貫通孔27及びその周囲の構造について、
図3を参照して詳細に説明する。
図3に示すように、基材40は、第1面41、第2面42及び壁面43を含む。第1面41は、外面30y側に位置する基材40の面であり、第2面42は、内面30x側に位置する基材40の面である。壁面43は、貫通孔27に面している。
【0045】
貫通孔27は、第1幅W1及び第2幅W2を有する。第1幅W1は、基材40の内側の端431における貫通孔27の幅である。内側の端431とは、第2面42側に位置する壁面43の端である。第2幅W2は、基材40の外側の端432における貫通孔27の幅である。外側の端432とは、第1面41側に位置する壁面43の端である。以下の説明において、内側の端431を内端431とも称し、外側の端432を外端432とも称する。第1幅W1は、ハーフカット線26が延びる方向に直交する方向において対向する内端431の間の距離として定義される。第2幅W2は、ハーフカット線26が延びる方向に直交する方向において対向する外端432の間の距離として定義される。
図3に示すように、第2幅W2は第1幅W1よりも大きくてもよい。
【0046】
図3に示すように、シーラント層70は、第3面71及び第4面72を含む。第3面71は、外面30y側に位置するシーラント層70の面であり、第4面72は、内面30x側に位置するシーラント層70の面である。貫通孔27は、基材40に加えて発熱層50及び接着剤層60を貫通していてもよい。この場合、貫通孔27において第3面71が露出している。以下の説明において、貫通孔27に重なるシーラント層70の部分のことを露出部分とも称する。
【0047】
レーザーの照射によって貫通孔27を形成する場合、発熱層50がレーザーから吸収するエネルギーが大きいほど、貫通孔27の第1幅W1が大きくなる。発熱層50がレーザーから吸収するエネルギーが大き過ぎる場合、基材40だけでなくシーラント層70もダメージを受けることが考えられる。例えば、シーラント層70の第3面71に凹部が形成されたり、シーラント層70に貫通孔が形成されたりすることが考えられる。シーラント層70がダメージを受けると、パウチ10の密封性などの特性が低下することが考えられる。これらの点を考慮し、貫通孔27の第1幅W1が上限を有することが好ましい。例えば、後述する実施例によってサポートされるように、第1幅W1が140μm以下であることが好ましい。
【0048】
シーラント層70がダメージを受けているか否かは、シーラント層70の露出部分の厚さT21と、露出部分以外のシーラント層70の厚さT20との差に基づいて判断されてもよい。例えば、厚さT20と厚さT21の差が5μm以上である場合、シーラント層70がダメージを受けていると判断されてもよい。露出部分以外のシーラント層70の厚さT20は、シーラント層70の面方向において露出部分から5mm離れている位置で測定される。厚さT21は、露出部分の厚さの最小値である。
【0049】
また、第1幅W1が大き過ぎる場合、パウチ10の引き裂き性が低下することも考えられる。この現象について、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0050】
図6は、第1幅W1が適切な範囲内である場合に、積層体30が破断する様子の一例を示す図である。使用者がハーフカット線26に沿ってパウチ10を引き裂く時、積層体30にせん断力が加えられる。貫通孔27と重なるシーラント層70の部分は基材40に固定されていない。このため、積層体30にせん断力が加えられると、
図6に示すように、シーラント層70の露出部分が、シーラント層70のその他の部分に比べて優先的に伸びる。露出部分の一部分に力が集中し、一部分の伸度が破断伸度に達すると、
図6に示すように、露出部分の一部分が破断する。このようなシーラント層70の破断がハーフカット線26に沿って進行することにより、積層体30が引き裂かれる。
【0051】
図7は、第1幅W1が大き過ぎる場合に、積層体30にせん断力を加えたときの様子の一例を示す図である。第1幅W1が大きいほど、シーラント層70の露出部分の寸法も大きくなる。このため、
図7に示すように、積層体30にある程度のせん断力が加えられたとしても、露出部分の伸度が破断伸度に達しないことがある。この場合、シーラント層70を破断させるためにより大きなせん断力が必要になる。若しくは、シーラント層70を破断させることができない。このように、第1幅W1が大き過ぎる場合、パウチ10の引き裂き性が低下することがある。
【0052】
この点を考慮し、後述する実施例によってサポートされるように、貫通孔27の第1幅W1は、例えば120μm以下であってもよく、110μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。
【0053】
一方で、第1幅W1が小さ過ぎる場合にも、パウチ10の引き裂き性が低下することが考えられる。この現象について、
図8を参照して説明する。
【0054】
図8は、第1幅W1が小さ過ぎる場合に、積層体30にせん断力を加えたときの様子の一例を示す図である。第1幅W1が小さいほど、シーラント層70の露出部分の寸法も小さくなる。この場合、露出部分の一部分に力が集中して破断が生じるよりも前に、
図8に示すように、貫通孔27の周囲において層間剥離が生じることがある。例えば、貫通孔27の周囲に位置するシーラント層70が接着剤層60から剥離することがある。この場合、シーラント層70の露出部分に加えてシーラント層70の剥離部分にも伸びが生じるので、シーラント層70の破断が生じにくくなる。このように、第1幅W1が小さ過ぎる場合、パウチ10の引き裂き性が低下することがある。
【0055】
この点を考慮し、後述する実施例によってサポートされるように、貫通孔27の第1幅W1は、例えば40μm以上であり、50μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。
【0056】
第2幅W2は、例えば80μm以上であり、90μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。第2幅W2は、例えば220μm以下であり、210μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。
【0057】
第1幅W1に対する第2幅W2の比率であるW2/W1は、例えば1.05以上であり、1.10以上であってもよく、1.20以上であってもよい。W2/W1は、例えば3.50以下であり、3.30以下であってもよく、3.00以下であってもよい。
【0058】
図3に示すように、基材40は、貫通孔27の外端432に接する隆起部44を含んでいてもよい。これにより、貫通孔27の周囲における基材40の厚みT11が、その他の基材40の部分の厚さT10よりも大きくなる。このため、貫通孔27の周囲における基材40の剛性が高くなる。
【0059】
隆起部44の高さT12は、例えば10μm以上であり、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。隆起部44の高さT12は、隆起部44の位置における基材40の厚さT11から、その他の基材40の部分の厚さT10を引くことにより算出される。厚さT10は、基材40の面方向において隆起部44から5mm離れている位置で測定される。
【0060】
図3に示すように、隆起部44は、幅方向におけるハーフカット線26の一端及び他端の両方に現れてもよい。一方の隆起部44を第1の隆起部441とも称し、他方の隆起部を第2の隆起部442とも称する。
【0061】
幅及び厚さの算出方法を、
図9を参照して説明する。
図9に示すように、ハーフカット線26は、第1交点261及び第2交点262においてシール部19の内縁19xに交わる。点P1、P2、P3は、第1交点261から第2交点262までのハーフカット線26の区間を4分割した場合の境界に位置する。ハーフカット線26が延びる方向に直交するとともに点P1、P2、P3を通る直線に沿ってパウチ10を切断する。3つの切断面を観察し、幅W1、W2及び厚さT11、T21を測定する。幅W1、W2及び厚さT11、T21の3つの測定値の平均値を、上述の幅W1、W2及び厚さT11、T21として用いる。切断面を観察する装置としては、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ VHX-6000を用いる。観察倍率は500倍である。幅及び厚さの測定は、VHX-6000の測長機能により実施される。
【0062】
図10に示すように、パウチ10は、収容部17を横切る複数のハーフカット線26を備えていてもよい。この場合、少なくとも1つのハーフカット線26から算出される幅W1、W2及び厚さT11、T21が、上述の条件を満たしている。2以上のハーフカット線26から算出される幅W1、W2及び厚さT11、T21が、上述の条件を満たしていてもよい。全てのハーフカット線26から算出される幅W1、W2及び厚さT11、T21が、上述の条件を満たしていてもよい。
【0063】
図11は、貫通孔27の一変形例を示す断面図である。
図11に示すように、接着剤層60には貫通孔が形成されていなくてもよい。この場合であっても、シーラント層70の露出部分には基材40が固定されていないので、せん断応力が積層体30に加えられたときに露出部分が伸びやすい。
【0064】
図12は、貫通孔27の一変形例を示す断面図である。
図12に示すように、発熱層50は、外端432から貫通孔27の中心に向かって延びる部分を含んでいてもよい。この場合であっても、シーラント層70の露出部分には基材40が固定されていないので、せん断応力が積層体30に加えられたときに露出部分が伸びやすい。
【0065】
次に、積層体30の各層について詳細に説明する。
【0066】
〔基材〕
基材40は、ポリエチレンフィルムを含む。基材40は、所定の方向において延伸された延伸ポリエチレンフィルムを含んでいてもよい。延伸ポリエチレンフィルムは、所定の一方向において延伸された一軸延伸ポリエチレンフィルムであってもよい。延伸ポリエチレンフィルムは、所定の二方向において延伸された二軸延伸ポリエチレンフィルムであってもよい。
【0067】
延伸ポリエチレンフィルムの長さ方向(MD)の延伸倍率は、例えば2倍以上であり、3倍以上であってもよい。長さ方向(MD)の延伸倍率は、例えば10倍以下であり、7倍以下であってもよい。延伸ポリエチレンフィルムの横方向(TD)の延伸倍率は、例えば2倍以上であり、3倍以上であってもよい。横方向(TD)の延伸倍率は、例えば10倍以下であり、7倍以下であってもよい。延伸ポリエチレンフィルムを用いることにより、基材40の印刷適性及び強度を高めることができる。また、基材40の透明性を高めることができる。
【0068】
延伸ポリエチレンフィルムの製造工程においては、まず、原料となるポリエチレンを溶融押出成形法によって成形することにより、ポリエチレンフィルムを作製する。続いて、ポリエチレンフィルムに延伸処理を施す。これによって、延伸ポリエチレンフィルムが得られる。溶融押出成形法は、例えばインフレーション成形法、T-ダイ成形法などである。樹脂材料のメルトフローレート(MFR)は、例えば0.5g/10分以上であり、0.8g/10分以上であってもよい。MFRは、例えば20g/10分以下であり、5g/10分以下であってもよい。
【0069】
基材40のポリエチレンフィルムの厚さは、例えば10μm以上であり、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。基材40のポリエチレンフィルムの厚さは、例えば50μm以下であり、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。厚さが10μm以上であることにより、基材40の強度を確保できる。厚さが50μm以下であることにより、基材40に貫通孔27を形成しやすい。
【0070】
基材40のポリエチレンは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などである。基材40は、これらのポリエチレンを2種以上含んでいてもよい。印刷適性、強度、耐熱性及び延伸適性の観点からは、高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンが好ましい。延伸適性の観点からは、中密度ポリエチレンがより好ましい。
【0071】
本願において、HDPEは、0.945g/cm3以上の密度を有するポリエチレンを意味する。MDPEは、0.925g/cm3以上0.944g/cm3以下の密度を有するポリエチレンを意味する。LDPEは、0.925g/cm3未満の密度を有するポリエチレンを意味する。
【0072】
各種のポリエチレンは、グラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、及び高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0073】
シングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒である。シングルサイト触媒は、例えば、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて均一な活性点構造を有する。このため、シングルサイト触媒は、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合できる。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む。
【0074】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0075】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基等が挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種又は二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0076】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、又は触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタン等のランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0077】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機又は有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機又は有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等又はこれらの混合物が挙げられる。また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0078】
基材40のポリエチレンフィルムは、エチレンと他のモノマーとの共重合体を含んでいてもよい。エチレン共重合体としては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとからなる共重合体が挙げられ、炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3ーメチルー1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、6-メチル-1-ヘプテンなどが挙げられる。また、基材40のポリエチレンフィルムは、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等との共重合体を含んでいてもよい。
【0079】
ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンを用いてもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンはカーボニュートラルな材料である。このため、パウチ10の環境負荷をより低減できる。このようなバイオマス由来のポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されているような方法にて製造することができる。また、市販されているバイオマス由来のポリエチレン(例えば。ブラスケム社から市販されているグリーンPE等)を使用してもよい。
【0080】
基材40のポリエチレンフィルムにおけるポリエチレンの含有量は、例えば50質量%以上であり、70質量%以上であってもよい。
【0081】
基材40のポリエチレンフィルムは、ポリエチレンを含む単一の層から構成されていてもよく、ポリエチレンを含む複数の層を備えていてもよい。複数の種類のポリエチレン樹脂を共押出し法によって成形することにより、複数の層を含むポリエチレンフィルムを作製できる。
【0082】
例えば
図13に示すように、基材40は、第1面41から第2面42に向かって並ぶ第1層401及び第2層402を含んでいてもよい。
図13に示す例において、第1層401及び第2層402は、例えばHDPE及びMDPEからなる。
【0083】
例えば
図14に示すように、基材40は、第1面41から第2面42に向かって並ぶ第1層401、第2層402及び第3層403を含んでいてもよい。
図14に示す例において、第1層401、第2層402及び第3層403は、例えばHDPE、MDPE及びHDPEからなる。第1層401及び第3層403は、第2層402よりも薄くてもよい。第2層402の厚さに対する第1層401の厚さ及び第3層403の厚さの比率は、例えば1.0未満であり、1/2以下であってもよい。これにより、ポリエチレンフィルムの延伸適性を高めることができる。第2層402の厚さに対する第1層401の厚さ及び第3層403の厚さの比率は、例えば1/10以上であり、1/5以上であってもよい。これにより、基材40の強度及び耐熱性を高めることができる。
【0084】
例えば
図15に示すように、基材40は、第1面41から第2面42に向かって並ぶ第1層401、第2層402、第3層403、第4層404及び第5層405を含んでいてもよい。
図15に示す例において、第1層401、第2層402、第3層403、第4層404及び第5層405は、例えばHDPE、MDPE、LDPE、MDPE及びHDPEからなる。第3層403のLDPEの密度は、0.900g/cm
3未満であってもよい。
【0085】
第1層401及び第5層405は、第2層402及び第4層404よりも薄くてもよい。第2層402の厚さ及び第4層404の厚さに対する第1層401の厚さ及び第5層405の厚さの比率は、例えば1.0未満であり、1/2以下であってもよい。これにより、ポリエチレンフィルムの延伸適性を高めることができる。第2層402の厚さ及び第4層404の厚さに対する第1層401の厚さ及び第5層405の厚さの比率は、例えば1/10以上であり、1/5以上であってもよい。これにより、基材40の強度及び耐熱性を高めることができる。
【0086】
第3層403は、第2層402及び第4層404よりも薄くてもよい。第2層402の厚さ及び第4層404の厚さに対する第3層403の厚さの比率は、例えば1.0未満であり、1/2以下であってもよい。
【0087】
基材40の第1面41や第2面42をHDPEで構成することにより、基材40の耐熱性及び寸法安定性を高めることができる。HDPEからなる層の厚みを小さくすることにより、ポリエチレンフィルムの延伸適性を高めることができる。ポリエチレンフィルムが、密度の異なる複数の層を含むことにより、隣接する2つの層における密度差を低減できる。これにより、層間の密着性を高めることができる。
【0088】
〔シーラント層〕
シーラント層70は、ポリエチレンフィルムを含む。シーラント層70のポリエチレンフィルムは、好ましくは未延伸フィルムである。「未延伸」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
【0089】
シーラント層70のポリエチレンフィルムの厚さは、例えば50μm以上であり、60μm以上であってもよく、80μm以上であってもよい。シーラント層70のポリエチレンフィルムの厚さは、例えば200μm以下であり、150μm以下であってもよく、120μm以下であってもよい。
【0090】
シーラント層70のポリエチレンは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などである。シーラント層70は、これらのポリエチレンを2種以上含んでいてもよい。シーラント層70は、エチレンとその他のモノマーとの共重合体を含んでいてもよい。ヒートシール性の観点からは、シーラント層70がLDPE及びLLDPEを含むことが好ましい。耐衝撃性の観点からは、シーラント層70がLLDPEを含むことが好ましい。引き裂き性の観点からは、シーラント層70がLDPEを含むことが好ましい。シーラント層70がLDPE及びLLDPEを含む場合、LLDPEの含有量(質量%)がLDPEの含有量(質量%)よりも大きくてもよい。環境負荷の観点からは、これらポリエチレンは、バイオマス由来のものであることが好ましい。
【0091】
シーラント層70のポリエチレンフィルムにおけるポリエチレンの含有量は、例えば50質量%以上であり、70質量%以上であってもよい。シーラント層70のポリエチレンフィルムは、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等である。
【0092】
〔発熱層〕
発熱層50は、バインダー樹脂及び発熱体を含む。バインダー樹脂は、例えばウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等である。バインダー樹脂は、これらの樹脂を2種以上含んでいてもよい。
【0093】
発熱体は、例えば金属酸化物、ビスマス系化合物、モリブデン系化合物、銅系化合物又はカーボンブラック等である。発熱体は、これらの材料を2種以上含んでいてもよい。
【0094】
金属酸化物は、例えば酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化ネオジム、マイカ、ゼオライト、カオリナイト、銅系化合物、モリブデン系化合物、銅・モリブデン複合酸化物、銅・タングステン化合物、金属塩等である。
【0095】
ビスマス系化合物は、例えば酸化ビスマス、硝酸ビスマス、オキシ硝酸ビスマス等の硝酸ビスマス系、塩化ビスマス等のハロゲン化ビスマス系、オキシ塩化ビスマス、硫酸ビスマス、酢酸ビスマス、クエン酸ビスマス、水酸化ビスマス、チタン酸ビスマス、次炭酸ビスマス等である。
【0096】
モリブデン系化合物は、例えば二酸化モリブデン、三酸化モリブデンなどの酸化モリブデン、モリブデン、塩化モリブデン、モリブデン酸金属等である。モリブデン酸金属における金属成分は、例えばK、Zn、Ca、Ni、ビスマス、Mg等である。
【0097】
銅系化合物は、例えば銅、酸化銅、ハロゲン化銅、ギ酸、クエン酸、サリチル酸、ラウリル酸、シュウ酸、マレイン酸等の有機酸銅、リン酸銅、ヒドロキシリン酸銅等である。
【0098】
発熱層50における発熱体の含有量は、例えば5質量%以上であり、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。発熱層50における発熱体の含有量は、例えば65質量%以下であり、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよい。
【0099】
発熱層50の厚さは、例えば0.5μm以上であり、1.0μm以上であってもよく、1.5μm以上であってもよい。発熱層50の厚さは、例えば4.0μm以下であり、3.5μm以下であってもよく、3.0μm以下であってもよい。
【0100】
〔接着剤層〕
接着剤層60は、基材40及び発熱層50を含むフィルムとシーラント層70を含むフィルムとをドライラミネート法により接着する層である。接着剤は、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤及びシリコーン系接着剤等である。
【0101】
積層体30は、基材40及び発熱層50を含むフィルムの上にシーラント層70を構成する樹脂材料を押し出すことによって作製されてもよい。この場合、接着剤層60が設けられていなくてもよい。
【0102】
下部フィルムの層構成
次に、下部フィルム16の層構成について説明する。
【0103】
表面フィルム14の内面及び裏面フィルム15の内面と接合可能な内面を有する限りにおいて、下部フィルム16の層構成は任意である。例えば、表面フィルム14及び裏面フィルム15と同様に、下部フィルム16として上述の積層体30を用いてもよい。若しくは、内面がシーラント層によって構成され、且つ積層体30とは異なる構成のフィルムを、下部フィルム16として用いてもよい。例えば、下部フィルム16には引き裂き性が求められないので、下部フィルム16のシーラント層における低密度ポリエチレンの含有量(質量%)は、表面フィルム14及び裏面フィルム15のシーラント層70における低密度ポリエチレンの含有量(質量%)よりも小さくてもよい。若しくは、下部フィルム16のシーラント層は、低密度ポリエチレンを含んでいなくてもよい。
【0104】
積層体の製造方法
積層体30の製造方法の一例を説明する。
【0105】
基材40を作製する。まず、基材40の原料となるポリエチレン樹脂を準備する。ポリエチレンフィルムが複数の層を含む場合、複数の種類のポリエチレン樹脂を準備する。続いて、溶融押出成形法によってポリエチレンフィルムを作製する。続いて、ポリエチレンフィルムに延伸処理を施す。これによって、基材40の延伸ポリエチレンフィルムが得られる。
【0106】
続いて、基材40の第2面42に発熱層50を形成する。例えば、バインダー樹脂及び発熱体を構成するための組成物を、第2面42上に塗布する。塗布方法は、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などの印刷法である。続いて、組成物を乾燥させる。これにより、発熱層50が得られる。
【0107】
また、シーラント層70を作製する。まず、シーラント層70の原料となるポリエチレン樹脂を準備する。続いて、溶融押出成形法によってポリエチレンフィルムを作製する。これによって、シーラント層70の未延伸ポリエチレンフィルムが得られる。
【0108】
続いて、ドライラミネート法により、発熱層50が形成された基材40と、シーラント層70とを、接着剤層60を介して積層する。これによって、積層体30が得られる。
【0109】
ドライラミネート法においては、まず、積層される2つのフィルムのうちの一方に接着剤組成物を塗布する。続いて、塗布された接着剤組成物を乾燥させて溶剤を揮発させる。その後、乾燥後の接着剤組成物を介して2つのフィルムを積層する。続いて、積層された2つのフィルムを巻き取った状態で、例えば20℃以上の環境下で24時間以上にわたってエージングする。
【0110】
パウチの製造方法
積層体30を準備する。続いて、積層体30にハーフカット線26を形成する。具体的には、
図4又は
図5に示すように、積層体30にレーザーLを照射する。発熱層50の発熱体がレーザーLのエネルギーを吸収することにより、基材40に貫通孔27が形成される。
【0111】
レーザーLの照射は、積層体30におけるレーザーLの照射位置を移動させながら実施される。例えば、レーザーを積層体30に向けて放射するレーザー装置を積層体30に対して相対的に移動させながら実施される。これにより、レーザー装置の移動経路に沿って貫通孔27が形成される。この結果、レーザー装置の移動経路に対応する方向に延びるハーフカット線26が積層体30に形成される。相対的な移動は、レーザー装置を積層体30に対して移動させることを含んでいてもよく、積層体30をレーザー装置に対して移動させることを含んでいてもよい。また、ガルバノミラーなどを用いてレーザーLの軌道を変化させることにより、積層体30におけるレーザーLの照射位置を移動させてもよい。
【0112】
レーザーLの出力が2.5W以上25W以下である場合、照射位置の移動速度は、例えば10mm/s超であり、20mm/s超であってもよい。移動速度を一定値以上にすることにより、発熱層50が過剰にレーザーLのエネルギーを吸収することを抑制できる。これにより、シーラント層70にダメージが生じることを抑制できる。また、貫通孔27の第1幅W1が大きくなり過ぎることを抑制できる。シーラント層70のダメージは、シーラント層70の厚さが大きいほど生じにくい。シーラント層70のダメージの抑制という観点からは、移動速度は、シーラント層70の厚みに応じて定められてもよい。例えば、シーラント層70の厚さが130μm以上である場合、移動速度は、5mm/s超であってもよく、6mm/s超であってもよい。
【0113】
レーザーLの出力が2.5W以上25W以下である場合、照射位置の移動速度は、例えば200mm/s未満であり、150mm/s以下であってもよく、100mm/s以下であってもよい。これにより、発熱層50がレーザーLのエネルギーを適切に吸収できる。このため、基材40に貫通孔27を形成できる。また、貫通孔27の第1幅W1を適切に確保できる。
【0114】
レーザーLのスポット径dは、例えば40μm以上であり、60μm以上であってもよい。レーザーLのスポット径dは、例えば500μm以下であり、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。
【0115】
レーザーLの波長は、例えば700nm以上であり、800nm以上であってもよく、1000nm以上であってもよい。レーザーLの波長は、例えば2000nm以下であり、1800nm以下であってもよく、1500nm以下であってもよい。レーザーLは、例えばファイバレーザー、YAGレーザー、YV04レーザー、半導体レーザー等である。
レーザーLは、炭酸ガスレーザーであってもよい。この場合、レーザーLの波長は、例えば10.6μmである。
【0116】
ハーフカット線26が形成された積層体30を2つに切断する。これにより、表面フィルム14及び裏面フィルム15が得られる。続いて、表面フィルム14と裏面フィルム15との間に、折り返した状態の下部フィルム16を挿入する。続いて、各フィルムの内面同士をヒートシールすることにより、下部シール部12a、側部シール部13a、注出口シール部20aなどのシール部を形成する。また、ヒートシールによって互いに接合されたフィルムを適切な形状に切断する。これにより、
図1に示すパウチ10が得られる。
【0117】
続いて、パウチ10の収容部17に内容物を充填する。その後、上部11をヒートシールすることによって上部シール部を形成する。このようにして、内容物が収容され封止されたパウチ10が得られる。
【0118】
本実施の形態においては、積層体30の基材40及びシーラント層70がいずれもポリエチレンフィルムを含む。これにより、積層体30におけるポリエチレンの構成比率を高めることができる。このため、積層体30及びパウチ10のリサイクル適性を高めることができる。
【0119】
積層体30が発熱層50を備えるので、積層体30にレーザーを照射することによって積層体30にハーフカット線26を形成できる。レーザーの移動速度、スポット径等を適切に制御することにより、シーラント層70にダメージが生じることを抑制できる。また、ハーフカット線26の貫通孔27の形状を適切に制御できる。これにより、パウチ10の引き裂き性を高めることができる。
【0120】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0121】
上述の実施の形態においては、パウチ10がガセット式のパウチである例を示したが、パウチ10の具体的な構成が特に限定されることはない。例えば、パウチ10は、
図16及び
図17に示すように、下部フィルム16を備えていなくてもよい。
図16及び
図17の例において、パウチ10の下部シール部12a及び側部シール部13aは、積層体30からなる表面フィルム14及び裏面フィルム15の内面同士を接合することによって形成されている。パウチ10に内容物を収容した後、表面フィルム14の内面と裏面フィルム15の内面とを上部11の開口部11bにおいて接合することにより、パウチ10が封止される。
図16及び
図17の例においても、パウチ10は、収容部17を横切るハーフカット線26を備えている。これにより、パウチ10の引き裂き性を高めることができる。
【0122】
図18に示すように、パウチ10はピローパウチであってもよい。パウチ10は、表面フィルム14及び裏面フィルム15を構成する積層体30の端部を重ねることにより構成される合掌部18を含む。合掌部18は、積層体30の内面同士が接合された合掌部シール部18aを含む。
図18に示す例において、貫通孔27は、収容部17及び合掌部18を横切るよう形成されている。
図18に示すように、合掌部の外縁に、ハーフカット線26に接する切り欠き28又は切り込みが形成されていてもよい。
【実施例】
【0123】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0124】
実施例1
溶融押出成形法によって、
図15に示す、第1層401、第2層402、第3層403、第4層404及び第5層405を含むポリエチレンフィルムを作製した。第1層401、第2層402、第3層403、第4層404及び第5層405は、HDPE、MDPE、LDPE、MDPE及びHDPEからなる。第1層401、第2層402、第3層403、第4層404及び第5層405の厚さは、12.5μm、43.75μm、12.5μm、43.75μm及び12.5μmであった。続いて、ポリエチレンフィルムに延伸処理を施した。これによって、厚さ25μmの延伸ポリエチレンフィルムを含む基材40を得た。延伸処理後の第1層401、第2層402、第3層403、第4層404及び第5層405の厚さは、2.5μm、8.75μm、2.5μm、8.75μm及び2.5μmであった。
【0125】
続いて、基材40の第2面42に発熱層50を形成した。まず、バインダー樹脂及び発熱体を構成するための組成物を、印刷法によって第2面42上に塗布した。バインダー樹脂は、ウレタン樹脂を含む。発熱体は、酸化チタンを含む。続いて、組成物を乾燥させることにより、発熱層50を得た。乾燥後の発熱層50の厚さは1.5μmであった。発熱層50における酸化チタンの含有量は30質量%であった。
【0126】
溶融押出成形法によって、LLDPEからなるポリエチレンフィルムを備えるシーラント層70を作製した。シーラント層70の厚さは140μmであった。
【0127】
ドライラミネート法により、発熱層50が形成された基材40と、シーラント層70とを、接着剤層60を介して積層した。接着剤層60の厚さは3.5μmであった。このようにして、基材40、発熱層50、接着剤層60及びシーラント層70を備える積層体30を作製した。
【0128】
続いて、ファイバレーザー装置を用いて積層体30に外面30y側からレーザーを照射することにより、積層体30にハーフカット線26を形成した。ファイバレーザー装置としては、パナソニック株式会社製のLP-Z250を用いた。ファイバレーザー装置の駆動条件は下記のとおりである。
レーザーパワー:20W
移動速度:500、200、100、50、20、10、8、5mm/s
スポット径:70μm
パルス周期:10μs
【0129】
実施例1において、移動速度が500、200、100、50、20、10、8、5mm/sである例を、それぞれ例11、12、13、14、15、16、17、18と称する。
【0130】
また、ファイバレーザー装置を用いて積層体30に内面30x側からレーザーを照射することにより、積層体30にハーフカット線26を形成した。この例を例19と称する。ファイバレーザー装置の移動速度は100mm/sであった。その他のファイバレーザー装置の駆動条件は、例11~18の場合と同一である。
【0131】
キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ VHX-6000を用いて、例11~19の積層体30の断面形状を観察した。例11~18の積層体30の観察結果を
図19に示す。例19の積層体30の観察結果を、例13の結果とともに
図20に示す。
【0132】
VHX-6000の測長機能を用いて、例11~19の貫通孔27の第1幅W1及び第2幅W2を測定した。結果を
図23に示す。また、例11~19の基材40の厚さT10、第1の隆起部441の位置における基材40の厚さT11、及び第2の隆起部442の位置における基材40の厚さT11を測定した。厚さT10及びT11に基づいて、第1の隆起部441の高さT12及び第2の隆起部442の高さT12を算出した。結果を
図29に示す。
【0133】
積層体30に手でせん断力を加えた場合に積層体30の破断がハーフカット線26に沿ってスムーズに進行するか否かを評価した。結果を
図23に示す。「OK」は、破断がスムーズに進行したことを意味する。「NG」は、破断がスムーズに進行しなかったことを意味する。
【0134】
断面形状の観察結果に基づいて、シーラント層70にダメージが生じているか否かを判定した。結果を
図23に示す。「OK」は、シーラント層70の変形が生じていなかったことを意味する。「NG」は、シーラント層70の変形が生じていたことを意味する。シーラント層70の変形は、例えば、発熱層50の熱によってシーラント層70が溶けることによって生じる。
【0135】
実施例2
基材40の厚さが30μmであったこと以外は、実施例1の場合と同様の方法によって基材40を作製した。続いて、実施例1の場合と同様の方法によって基材40の第2面42上に発熱層50を形成した。また、シーラント層70の厚さが100μmであったこと以外は、実施例1の場合と同様の方法によってシーラント層70を作製した。続いて、実施例1の場合と同様に、ドライラミネート法によって基材40とシーラント層70とを積層することにより、積層体30を得た。
【0136】
実施例1の場合と同様の方法によって、積層体30に外面30y側からレーザーを照射することにより、積層体30にハーフカット線26を形成した。実施例2において、移動速度が500、200、100、50、20、10、8、5mm/sである例を、それぞれ例21、22、23、24、25、26、27、28と称する。
【0137】
実施例1の場合と同様の方法によって、例21~28の積層体30の断面形状を観察した。観察結果を
図21に示す。
【0138】
実施例1の場合と同様の方法によって、例21~28の貫通孔27の第1幅W1及び第2幅W2を測定した。また、実施例1の場合と同様の方法によって、例21~28の積層体30の引き裂き評価及びダメージ評価を実施した。結果を
図24に示す。また、実施例1の場合と同様の方法によって、例21~28の基材40の厚さT10及びT11を測定し、隆起部441,442の高さT12を算出した。結果を
図30に示す。
【0139】
実施例3
基材40の厚さが30μmであったこと以外は、実施例1の場合と同様の方法によって基材40を作製した。続いて、実施例1の場合と同様の方法によって基材40の第2面42上に発熱層50を形成した。また、シーラント層70の厚さが60μmであったこと以外は、実施例1の場合と同様の方法によってシーラント層70を作製した。続いて、実施例1の場合と同様に、ドライラミネート法によって基材40とシーラント層70とを積層することにより、積層体30を得た。
【0140】
実施例1の場合と同様の方法によって、積層体30に外面30y側からレーザーを照射することにより、積層体30にハーフカット線26を形成した。実施例3において、移動速度が500、200、100、50、20、10、8、5mm/sである例を、それぞれ例31、32、33、34、35、36、37、38と称する。
【0141】
実施例1の場合と同様の方法によって、例31~38の積層体30の断面形状を観察した。観察結果を
図22に示す。
【0142】
実施例1の場合と同様の方法によって、例31~38の貫通孔27の第1幅W1及び第2幅W2を測定した。また、実施例1の場合と同様の方法によって、例31~38の積層体30の引き裂き評価及びダメージ評価を実施した。結果を
図25に示す。また、実施例1の場合と同様の方法によって、例31~38の基材40の厚さT10及びT11を測定し、隆起部441,442の高さT12を算出した。結果を
図31に示す。
【0143】
例13と例19の比較から分かるように、第1幅W1に関して、レーザーの照射方向に起因する有意な差は見られなかった。
【0144】
例18、26~28、35~38から分かるように、移動速度が小さ過ぎる場合、シーラント層70にダメージが生じた。シーラント層70の厚さが小さいほど、ダメージが生じやすかった。
【0145】
例17、18から分かるように、シーラント層70の厚さが大きく、且つ貫通孔27の第1幅W1が大き過ぎる場合、積層体30の引き裂き性が低下した。
図7に示すように、シーラント層70の露出部分の伸度が破断伸度に達しなかったと考えられる。
【0146】
例11、12、21、22、31、32に示すように、移動速度が大き過ぎる場合、基材40に貫通孔27が形成されないか、若しくは貫通孔27の第1幅W1が40μm未満であった。このため、積層体30の引き裂き性が低下した。基材40の厚みが大きいほど、基材40に貫通孔27が形成されないという現象が生じやすかった。
【0147】
例13~16、23~25、33~34から分かるように、貫通孔27の第1幅W1が40μm以上120μm以下である場合、基材40の厚さ及びシーラント層70の厚さに依らず、シーラント層70へのダメージを抑制しながら引き裂き性を確保できた。
【0148】
レーザー装置の移動速度と貫通孔27の第1幅W1との関係を
図26に示す。レーザー装置の移動速度と貫通孔27の第2幅W2との関係を
図27に示す。レーザー装置の移動速度と、第1幅W1に対する第2幅W2の比率との関係を
図28に示す。シーラント層70の厚みが小さいほど、貫通孔27の第1幅W1が大きくなる傾向が見られた。シーラント層70の厚みが大きいほど、W2/W1が大きくなる傾向が見られた。
【0149】
例13~16、23~28、33~38から分かるように、引き裂き評価がOKである場合、隆起部44の高さT12の平均が10μmであった。隆起部44の存在が、積層体30の引き裂き性を高めている可能性がある。
【符号の説明】
【0150】
10 パウチ
11 上部
12 下部
12a 下部シール部
13 側部
13a 側部シール部
14 表面フィルム
15 裏面フィルム
16 下部フィルム
17 収容部
20 注出口部
20a 注出口シール部
26 ハーフカット線
27 貫通孔
28 切り欠き
30 積層体
30x 内面
30y 外面
40 基材
41 第1面
42 第2面
43 壁面
431 内端
432 外端
44 隆起部
50 発熱層
60 接着剤層
70 シーラント層