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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240816BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L21/302 102
H01L21/302 105A
H01L21/78 Q
H01L21/78 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020201197
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022089007
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】針貝 篤史
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰宏
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-50237(JP,A)
【文献】特開2019-160883(JP,A)
【文献】特開2006-203145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0065276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、表面に粘着層を有し前記粘着層を介して前記基板を保持する保持部材と、を備え、前記基板の外側に前記粘着層の露出した露出部を有するワークを、チャンバ内に設けられたステージに載置する工程と、
前記チャンバ内に発生させたプラズマにより、前記露出部が前記プラズマに晒される状態で前記基板をエッチングするプラズマエッチング工程と、を備え、
前記プラズマエッチング工程の中断が発生した場合に、酸化性ガスを含むプラズマに前記基板の表面を晒すクリーニング工程を行った後、前記プラズマエッチング工程を再開する、プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記粘着層は、エポキシ系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記プラズマエッチング工程は、
(i)前記基板に形成された溝の少なくとも側壁に保護膜を形成する保護膜堆積工程と、
(ii)前記溝の底部に堆積した保護膜を除去する保護膜除去工程と、
(iii)前記溝の底部をエッチングする工程と、をこの順で繰り返し実行する工程を含み、
前記工程(i)~(iii)のいずれかにおいて中断が発生した場合に、前記クリーニング工程を行った後、前記工程(i)から再開する、請求項1または2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記基板は、複数の素子領域および前記素子領域を画定する分割領域が設けられた半導体層と、前記素子領域において前記半導体層を被覆するとともに前記分割領域において前記半導体層を露出させるマスクと、を有し、
前記プラズマエッチング工程において、前記マスクから露出した前記半導体層をエッチングすることにより、前記分割領域に溝を形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
プラズマエッチング工程において、前記ステージの温度は前記チャンバの内壁の温度よりも低い、請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板をダイシングにより個片化する方法として、プラズマ照射によるプラズマダイシングが試みられている。プラズマダイシングを行うプラズマ処理装置として、例えば、特許文献1に示す構成が挙げられる。
【0003】
プラズマ処理装置において、基板は搬送キャリアに取り付けられ、搬送キャリアがプラズマ処理装置のステージに固定されることによって、基板がステージに固定される。搬送キャリアは、通常、円盤状の保持シート(ダイシングテープと呼ばれる)と、保持シートの周縁部において保持シートに貼付けられるリング状のフレームと、を備える。保持シートの中央部において、基板は保持シートに貼着され、これにより基板が搬送キャリアに固定される。
【0004】
プラズマダイシング対象の基板は、例えば半導体ウェハである。半導体ウェハの大きさは、年月を経るに伴って大径化しており、近年では、主として直径8インチ(200mm)のウェハおよび直径12インチ(300mm)のウェハが、ともに利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-160883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現状、大きさの異なる複数種のウェハに対して、同じプラズマ処理装置を用いてプラズマダイシングを行いたいという要望が増加している。
【0007】
しかしながら、例えば直径8インチのウェハと直径12インチのウェハとを同じプラズマ処理装置で処理するとした場合、直径12インチのウェハ用のフレームが貼着された保持シートに直径8インチのウェハを貼着固定することとなる。このとき、フレームとウェハとの間に、保持シートが露出する。保持シートの露出部分が増大すると、プラズマ処理中に保持シートの粘着層の有機成分が飛散し、チャンバ内壁に付着し易い。チャンバ内壁に付着した有機成分は、再度ウェハ等に付着することがある。
【0008】
特に、プラズマ処理中にエラーが発生した場合、ウェハは冷却された状態でチャンバ内に保持されるため、粘着層の成分がウェハに付着し易く、ウェハが汚染される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面は、基板と、表面に粘着層を有し前記粘着層を介して前記基板を保持する保持部材と、を備え、前記基板の外側に前記粘着層の露出した露出部を有するワークを、チャンバ内に設けられたステージに載置する工程と、前記チャンバ内に発生させたプラズマにより、前記露出部が前記プラズマに晒される状態で前記基板をエッチングするプラズマエッチング工程と、を備え、前記プラズマエッチング工程の中断が発生した場合に、酸化性ガスを含むプラズマに前記基板の表面を晒すクリーニング工程を行った後、前記プラズマエッチング工程を再開する、プラズマ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保護部材の粘着層がプラズマに晒されることにより飛散し易い環境下で、プラズマ処理中にエラーが発生した場合においても、ウェハの汚染を除去してプラズマ処理を再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のプラズマ処理方法を示すフローチャートの一例である。
図2】本発明の実施形態のプラズマ処理方法に用いられるワークの構成の一例を模式的に示す断面構造図である。
図3】本発明の実施形態のプラズマ処理方法に用いられるプラズマ処理装置の構成の一例を模式的に示す断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るプラズマ処理方法は、基板が取り付けられたワーク(搬送キャリア)をチャンバ内に設けられたステージに載置する工程と、チャンバ内に発生させたプラズマにより基板をエッチングするプラズマエッチング工程と、を備える。ワークは、基板と、基板を保持する保持部材と、を備える。保持部材は、ワークを構成するテープなどの部材であり、粘着層を有し、基板よりも大きい。このため、ワークは、基板の外側に粘着層の露出した露出部を有する。この露出部がプラズマに晒される状態で基板のエッチングを行うと、粘着層に由来する有機成分が揮発し、チャンバ内に飛散して、その一部はチャンバの内壁に付着し得る。
【0013】
保持部材が基板よりも大きいとは、基板の面方向に垂直な方向から基板および保持部材を投影したとき、基板の輪郭線が保持部材の輪郭線と重ならず、且つ保持部材の輪郭線の内側にあることをいう。基板の輪郭線と保持部材の輪郭線基板との間の領域の面積は、概ね、露出部の面積に等しい。基板の輪郭線と保持部材の輪郭線との間の距離は、10mm以上であってもよい。この場合に、露出部の面積が大きく、チャンバ内に飛散する有機成分の量が多くなり易く、異常発生時に基板に付着する有機成分の付着量も多くなり易い。
【0014】
プラズマ処理方法は、酸化性ガスを含むプラズマに基板の表面を晒すクリーニング工程をさらに備える。酸化性ガスとは、酸素もしくは酸素化合物を含むガスであり、プラズマ中で、酸素ラジカル、酸素イオンなどの酸化作用を有する成分を生成させる。上記プラズマエッチング工程において、エラーにより中断が発生した場合には、このクリーニング工程を行ってから、プラズマエッチング工程を再開する。クリーニング工程により、ウェハに付着した粘着層に由来する有機成分を分解により除去する。その後、分解生成物を含むガスを排気するなど、必要な処理を実行してもよい。これにより、基板もしくはウェハのリカバリーが容易となる。
【0015】
保持部材に設けられる粘着層の材料は、限定されるものではないが、例えば、エポキシ系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0016】
このプラズマ処理方法は、基板のダイシング(例えば個片化)に好ましく利用することができる。好ましくは、基板は、複数の素子領域および素子領域を画定する分割領域が設けられた半導体層と、素子領域において半導体層を被覆するとともに分割領域において半導体層を露出させるマスクと、を有する。このような基板に対して、プラズマエッチング工程を実行し、マスクから露出した半導体層をエッチングすることにより、分割領域に溝を形成する。分割領域に保持部材に達する深さの溝を分割領域に形成することで、素子領域を備える複数の素子チップに、基板が個片化される。この場合、深い溝を形成する必要があることから、粘着層がプラズマに晒される処理時間も長くなり、粘着層に由来する有機成分の飛散量も多くなり、プラズマエッチング工程の中断中に基板に付着する有機成分の付着量も多くなり易い。本実施形態のプラズマ処理方法では、溝の形成途中でプラズマエッチング工程が中断した場合であっても、クリーニング工程により基板上の有機成分を効果的に除去し、その後プラズマエッチング工程を再開できるため、溝の深さが保持部材に達するまで、プラズマダイシングを継続することができる。
【0017】
プラズマ処理方法は、所謂ボッシュプロセスを利用したプラズマダイシングに用いられてもよい。ボッシュプロセスでは、基板に形成された溝の少なくとも側壁に保護膜を形成する保護膜堆積工程と、基板の溝の底部に堆積した保護膜を除去する保護膜除去工程と、基板の溝の底部をエッチングする工程と、がこの順で繰り返し実行される。これにより、ダイシングにより基板に深い溝を形成するに際して、溝の側壁に保護膜を形成し、溝内において面方向のエッチングを保護膜により抑制しながら、深さ方向のエッチングを行うことができ、アスペクト比(溝の幅に対する深さの比)の大きな溝を形成することができる。
【0018】
プラズマエッチング工程は、上記ボッシュプロセスにおける保護膜堆積工程と、保護膜除去工程と、溝の底部をエッチングする工程と、を繰り返し実行する工程を含み得る。その場合、異常検出によるプロセスの中断、および、この結果として生じる粘着層に由来する有機成分の基板への付着は、上記3工程のいずれにおいても起こり得る。しかしながら、中断後のクリーニング工程では、粘着層に由来する有機成分が除去される一方、溝の側壁に形成した保護膜も除去され得る。よって、プロセスの中断が上記3工程のいずれにおいて発生したかに拘らず、クリーニング工程後のプラズマエッチング工程は、保護膜堆積工程からボッシュプロセスを再開することが好ましい。
【0019】
プラズマエッチング工程において、チャンバの内壁への反応生成物の付着を抑制するとともにボッシュプロセスにおける保護膜の堆積および除去の制御性を向上させる観点から、例えば、チャンバの内壁はチャンバに取り付けたヒータにより加熱し、ステージは内部に形成した流路に冷媒を流すことにより冷却してもよい。すなわち、ワークが載置されるステージの温度はチャンバの内壁の温度よりも低くてもよい。例えば、プラズマエッチング工程において、ステージとチャンバの内壁との間の温度差は、50℃以上であってもよい。基板の温度がチャンバの内壁の温度よりも低いと、プロセスの中断中に粘着層に由来する有機成分の基板への付着が顕著になり易い。よって、この場合に、クリーニング工程を備えた本実施形態のプラズマ処理方法が効果的である。
【0020】
プラズマエッチング工程において、ステージは0℃以下(例えば、-10℃)に冷却されていてもよい。これに対し、プラズマエッチング工程において、チャンバ内壁は50℃以上(例えば、70℃)に加熱されていてもよい。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法について、具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理方法において、プラズマエッチング工程の途中で処理が中断した場合における処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、処理の中断がない場合、図1における工程ST03およびST04は実行されず、ST02の完了により処理は終了する。
【0023】
図1の例では、先ず、ワーク(基板を保持する搬送キャリア)をチャンバ内に設けられたステージに載置する(ST01)。その後、チャンバ内に発生させたプラズマにより基板をエッチングするプラズマエッチング工程が行われる(ST02)。
【0024】
(載置工程)
(プラズマエッチング工程)
図2に、プラズマ処理方法で用いられるワーク(基板を保持する搬送キャリア)の断面構造図を示す。ワーク20は、基板10と、フレーム21と、シート状の保持部材(ダイシングテープ)22と、を備える。保持部材22の基板に対向する面22Xには、図示しない粘着層が設けられている。粘着層により、保持部材22の中央領域において、基板10の一方の主面が保持部材22に貼着され、基板10が搬送キャリアに固定される。また、粘着面22Xの外周縁部は、フレーム21の一方の面に貼着し、保持部材22がフレーム21に固定されている。
【0025】
保持部材22において、粘着層が設けられる基材層(非粘着層)の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、アクリル基等の光重合反応を示す官能基を有していてもよい。基材層の厚みは特に限定されず、例えば、50μm以上、300μm以下であり、好ましくは50μm以上、150μm以下である。
【0026】
粘着層は、紫外線(UV)の照射によって粘着力が減少する粘着成分からなることが好ましい。これにより、プラズマダイシング後に素子チップをピックアップする際、UV照射を行うことにより、素子チップが粘着層から容易に剥離されて、ピックアップし易くなる。例えば、粘着層は、非粘着層の片面に、UV硬化型アクリル粘着剤あるいはエポキシ粘着剤を5μm以上100μm以下(好ましくは5μm以上15μm以下)の厚みに塗布することにより得られる。
【0027】
フレーム21は、基板よりも大面積の開口を有した枠体であり、所定の幅および略一定の薄い厚みを有している。フレームは、ダイシングテープおよび基板を保持した状態で搬送できる程度の剛性を有している。フレームの開口の形状は特に限定されないが、例えば、円形や、矩形、六角形など多角形であってもよい。フレームの材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、樹脂等が挙げられる。
【0028】
基板10は、図示しないが、半導体層を有する。半導体層には、複数の素子領域と、素子領域を画定する分割領域が設けられている。素子領域の半導体層は、マスクで覆われている一方、分割領域では半導体層が露出している。プラズマエッチング工程では、分割領域において露出した半導体層がプラズマに晒され、エッチングされることにより分割領域に溝を形成する。溝は、実質的に保持部材22に達する深さまで形成され得る。これにより、基板10は、それぞれが1つの素子領域を有する複数の素子チップに分割され、個片化され得る。
【0029】
保持部材22のシート上面から見た大きさ(面積)が基板10の面積に対して十分大きい場合、基板10が貼着されている保持部材22の中央領域とフレーム21が貼着されている保持部材22の周縁部との間に粘着面22Xが露出し、粘着面22XがプラズマPに晒される。結果、粘着層に由来する有機成分がチャンバ内に揮発し、その一部はチャンバ内の内壁および基板に付着する。
【0030】
プラズマエッチング工程において、プラズマ処理装置は、ガス流量、圧力、ICPコイルへの印加パワー、バイアスなどのパラメータを制御してプラズマを発生させるとともに、これらのパラメータの値を観測する。そして、パラメータの観測値が規定値を超えた場合には、異常が発生したと判断し、プラズマエッチング工程を中断させる(ST03)。
【0031】
異常によりプラズマエッチング工程が中断すると、チャンバ内壁に付着した有機成分がチャンバ内に揮発し、中断期間中に基板10に再付着することがある。基板10に再付着した有機成分はエッチングを阻害するため、プラズマエッチングを再開する前に、基板10に付着した有機成分を除去する必要がある。
【0032】
(クリーニング工程)
異常の原因が取り除かれ、プラズマエッチング工程を再開可能な状態になると、クリーニング工程が行われる(ST04)。クリーニング工程では、酸化性ガスをチャンバ内に供給する。これにより、酸化性ガスを含むプラズマに基板が晒され、基板に付着していた有機成分が分解除去される。
【0033】
酸化性ガスは、酸素ガス(O)および/またはオゾン(O)を含むことが好ましい。酸素ガスの他に、アルゴン(Ar)などの不活性ガスや、酸素化合物が含まれていてもよい。酸素化合物としては、H、HO、CO、SO、NO、およびNO(xは1以上の整数)からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
以下に、クリーニング工程においてプラズマを発生させる条件の一例を示すが、条件は以下に限定されず、様々な変更が可能である。
供給ガス:酸素(O)ガス
流量: 100sccm
全圧: 1.0Pa
ICPコイルへの印加パワー: 3000W
バイアス: 50W
処理時間: 60秒
【0035】
クリーニング工程が終了すると、プラズマエッチング工程を再開する(ST05)。再開したプラズマエッチング工程ST05においても異常が検出された場合、工程ST05を再度中断し、クリーニング工程ST04に戻って、工程ST04およびST05を繰り返す。
【0036】
プラズマエッチング工程ST02および中断後に再開されたプラズマエッチング工程ST05において、半導体層をエッチングするプラズマの発生条件は、半導体層の材質などに応じて設定される。
【0037】
以下に、プラズマエッチング工程ST02およびST05において、半導体層がシリコン(Si)を含み、且つボッシュプロセスを採用する場合の、(i)保護膜堆積工程、(ii)保護膜除去工程、および(iii)半導体層の底部エッチング工程のそれぞれにおいてプラズマを発生させる条件の一例を示す。ただし、条件は以下に限定されず、様々な変更が可能である。
【0038】
(i)保護膜堆積工程:
供給ガス:Cガス
流量: 150~250sccm
全圧: 15~25Pa
ICPコイルへの印加パワー: 1500~2500W
バイアス: 0~50W
処理時間: 2~15秒
【0039】
(ii)保護膜除去工程:
供給ガス:SFガス
流量: 200~400sccm
全圧: 5~15Pa
ICPコイルへの印加パワー: 1500~2500W
バイアス: 300~1000W
処理時間: 2~10秒
【0040】
(iii)底部エッチング工程:
供給ガス:SFガス
流量: 200~400sccm
全圧: 5~15Pa
ICPコイルへの印加パワー: 1500~2500W
バイアス: 50~5000W
処理時間: 10~20秒
【0041】
(プラズマ処理装置)
図3に、本実施形態のプラズマ処理方法にて用いられるプラズマ処理装置の構成の一例を示す。
【0042】
プラズマ処理装置100は、ステージ111を備えている。ワーク(搬送キャリア)20は、保持部材22の基板10を保持している面が上方を向くように、ステージ111に搭載される。ステージ111は、ワーク20の全体を載置できる程度の大きさを備える。ステージ111の上方には、基板10の少なくとも一部を露出させるための窓部124Wを有するカバー124が配置されている。カバー124には、フレーム21がステージ111に載置されている状態のとき、フレーム21を押圧するための押さえ部材107が配置されている。押さえ部材107は、フレーム21と点接触できる部材(例えば、コイルバネや弾力性を有する樹脂)であることが好ましい。これにより、フレーム21およびカバー124の熱が互いに影響し合うことを抑制しながら、フレーム21の歪みを矯正することができる。
【0043】
カバー124は、ワーク20の保持部材22の露出部を覆い、露出部がプラズマに晒されるのを抑制する役割を有している。図3の例では、露出部の全面が実質的にカバー124で覆われており、露出部がプラズマに晒されることは抑制されている。しかしながら、フレーム21に対して想定よりも小面積の基板10を保持部材22に貼着する場合には、カバー124は、ワーク20の保持部材22の露出部を完全に覆うことはできず、露出部がプラズマに晒される。結果、露出部における粘着層の有機成分がチャンバ内に飛散し、チャンバ内壁に付着する。例えば異常検出によりプラズマ処理が中断すると、チャンバ内に飛散あるいはチャンバ内壁に付着した有機成分が基板10に付着することがある。
【0044】
プラズマ処理装置100を上から見たとき、カバー124の内縁と基板10の外縁との距離は、10mm以上であってもよい。この場合、カバー124により覆われない露出部の面積が大きく、プラズマに晒される露出部の面積が大きくなり、粘着層の有機成分のチャンバ内への飛散量およびチャンバ内壁への付着量が顕著に大きくなる。また、プラズマは、カバー124と基板10との隙間を介して露出部に到達し得る。プラズマ処理装置100を上から見たとき、フレーム21の内縁と基板10の外縁との距離は、30mm以上であってもよい。この場合、プラズマに直接あるいは隙間を介して晒される露出部の面積が大きくなり、粘着層の有機成分のチャンバ内への飛散量およびチャンバ内壁への付着量が顕著に大きくなる。これらの場合において、クリーニング工程を備える本発明のプラズマ処理方法が効果的である。
【0045】
ただし、露出部の面積が大きくなるほど、基板10に付着した有機成分の付着量が多くなり、クリーニング工程に時間を要する。短時間でクリーニング可能な程度に粘着層の有機成分の基板への付着量を低減する観点から、カバー124の内縁と基板10の外縁との距離は、150mm以下であってもよい。同様に、フレーム21の内縁と基板10の外縁との距離は、180mm以下であってもよい。
【0046】
ステージ111およびカバー124は、真空チャンバ103内に配置されている。真空チャンバ103は、上部が開口した概ね円筒状であり、上部開口は蓋体である誘電体部材108により閉鎖されている。真空チャンバ103を構成する材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、表面をアルマイト加工したアルミニウム等が例示できる。誘電体部材108を構成する材料としては、酸化イットリウム(Y)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、石英(SiO)等の誘電体材料が例示できる。誘電体部材108の上方には、上部電極としての第1の電極109が配置されている。第1の電極109は、第1の高周波電源110Aと電気的に接続されている。ステージ111は、真空チャンバ103内の底部側に配置される。
【0047】
真空チャンバ103には、ガス導入口103aが接続されている。ガス導入口103aには、プラズマ発生用ガス(プロセスガス)の供給源であるプロセスガス源112およびアッシングガス源113が、それぞれ配管によって接続されている。また、真空チャンバ103には、排気口103bが設けられており、排気口103bには、真空チャンバ103内のガスを排気して減圧するための真空ポンプを含む減圧機構114が接続されている。真空チャンバ103内にプロセスガスが供給された状態で、第1の電極109に第1の高周波電源110Aから高周波電力が供給されることにより、真空チャンバ103内にプラズマが発生する。
【0048】
ステージ111は、それぞれ略円形の電極層115と、金属層116と、電極層115および金属層116を支持する基台117と、電極層115、金属層116および基台117を取り囲む外周部118とを備える。外周部118は導電性および耐エッチング性を有する金属により構成されており、電極層115、金属層116および基台117をプラズマから保護する。外周部118の上面には、円環状の外周リング129が配置されている。外周リング129は、外周部118の上面をプラズマから保護する役割をもつ。電極層115および外周リング129は、例えば、上記の誘電体材料により構成される。
【0049】
電極層115の内部には、静電吸着(Electrostatic Chuck)用電極(以下、ESC電極119と称す。)と、第2の高周波電源110Bに電気的に接続された第2の電極120とが配置されている。ESC電極119には、直流電源126が電気的に接続されている。静電吸着機構は、ESC電極119および直流電源126により構成されている。静電吸着機構によって、保持部材22はステージ111に押し付けられて固定される。保持部材22のステージ111への固定は、図示しないクランプによって行われてもよい。
【0050】
金属層116は、例えば、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等により構成される。金属層116内には、冷媒流路127が形成されている。冷媒流路127は、ステージ111を冷却する。ステージ111が冷却されることにより、ステージ111に搭載された保持部材22が冷却されるとともに、ステージ111にその一部が接触しているカバー124も冷却される。これにより、基板10や保持部材22が、プラズマ処理中に加熱されることによって損傷されることが抑制される。冷媒流路127内の冷媒は、冷媒循環装置125により循環される。
【0051】
ステージ111の外周付近には、ステージ111を貫通する複数の支持部122が配置されている。支持部122は、ワーク20のフレーム21を支持する。支持部122は、第1の昇降機構123Aにより昇降駆動される。ワーク20が真空チャンバ103内に搬送されると、所定の位置まで上昇した支持部122に受け渡される。支持部122の上端面がステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、ワーク20は、ステージ111の所定の位置に載置される。
【0052】
カバー124の端部には、複数の昇降ロッド121が連結しており、カバー124を昇降可能にしている。昇降ロッド121は、第2の昇降機構123Bにより昇降駆動される。第2の昇降機構123Bによるカバー124の昇降の動作は、第1の昇降機構123Aとは独立して行うことができる。
【0053】
制御装置128は、第1の高周波電源110A、第2の高周波電源110B、プロセスガス源112、アッシングガス源113、減圧機構114、冷媒循環装置125、第1の昇降機構123A、第2の昇降機構123Bおよび静電吸着機構を含むプラズマ処理装置100を構成する要素の動作を制御する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るプラズマ処理方法は、プラズマダイシングにより基板を個片化し、複数の素子チップを製造するプロセスに利用可能であり、特に大きさが異なる基板に対して、同じプラズマ処理装置を用いて基板の個片化を実施できる。
【符号の説明】
【0055】
10:基板
20:ワーク(搬送キャリア)
21:フレーム
22:保持部材(ダイシングテープ)
22X:粘着面
22Y:非粘着面
100:プラズマ処理装置
103:真空チャンバ
103a:ガス導入口
103b:排気口
108:誘電体部材
109:第1の電極
110A:第1の高周波電源
110B:第2の高周波電源
111:ステージ
112:プロセスガス源
113:アッシングガス源
114:減圧機構
115:電極層
116:金属層
117:基台
118:外周部
119:ESC電極
120:第2の電極
121:昇降ロッド
122:支持部
123A、123B:昇降機構
124:カバー
124W:窓部
125:冷媒循環装置
126:直流電源
127:冷媒流路
128:制御装置
129:外周リング
図1
図2
図3