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特許7539065IgE抗体産生B細胞の膜結合型IgE抗体に特異的に結合する抗IgE抗体とこれを用いたアレルギー症状の診断および治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】IgE抗体産生B細胞の膜結合型IgE抗体に特異的に結合する抗IgE抗体とこれを用いたアレルギー症状の診断および治療方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/42 20060101AFI20240816BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240816BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240816BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C07K16/42 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
A61K39/395 N
A61P37/08
G01N33/53 N
G01N33/53 Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020549095
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2019036864
(87)【国際公開番号】W WO2020059832
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2018176768
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】508141391
【氏名又は名称】動物アレルギー検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】増田 健一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190555(WO,A1)
【文献】特開平04-126094(JP,A)
【文献】特表2017-518320(JP,A)
【文献】Homo sapiens Ig heavy chain epsilon-1 (V-D-J region) (IGHE) gene, complete cds,Database GenBank,[online],AH005278,2016年07月28日,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AH005278,[令和6年1月26日検索]
【文献】Veterinary Immunology and Immunopathology,2011年,Vol.139,p.99-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K1/00-19/00
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:11または18に記載のアミノ酸配列からなるペプチドに結合し、かつ
(1)B細胞表面上のIgE抗体に結合する、
(2)56℃で15分間にわたり加熱処理した遊離形態のIgE抗体に結合する、かつ
(3)加熱処理前の遊離形態のIgE抗体に対するよりも、56℃で15分間にわたり加熱処理した前記遊離形態のIgE抗体に対して強い親和性を有する、
単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント{但し、前記IgE抗体は配列番号19に記載のアミノ酸配列からなり、かつ、配列番号19に記載のアミノ酸配列からなるヒトIgE抗体のアミノ酸配列の421番目のアスパラギン(N)に糖鎖を有し、非加熱状態ではFcεRIに結合することができるIgE抗体である}。
【請求項2】
肥満細胞表面上のIgE抗体に対するよりも、B細胞表面上のIgE抗体に対して強い親和性を有する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号:4に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号:5に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号:6に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号:7に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と
を有する、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
配列番号:8に記載のアミノ酸配列の23~179番目のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号:9に記載のアミノ酸配列の23~128番目のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体のヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体のネコ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、加熱した遊離形態のIgE抗体の検出に用いるための組成物。
【請求項10】
哺乳動物においてアレルギー症状またはその発症リスクを検査する方法であって、
哺乳動物から得られた生体試料を56℃で10分から1時間にわたって加熱することと、
得られた生体試料と請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させることと、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
加熱前の哺乳動物の生体試料と請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させることをさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
哺乳動物から得られた生体試料に対する請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの反応性を生体試料の加熱前後で比較することをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgE抗体産生B細胞の膜結合型IgE抗体に特異的に結合する抗IgE抗体とこれを用いたアレルギー症状の診断および治療方法に関する。より具体的には、本発明は、IgE抗体産生B細胞の膜結合型IgE抗体に結合し、肥満細胞に結合したIgE抗体に対しては実質的に結合しない抗IgE抗体を提供する。本発明は、非加熱IgE抗体に対しては実質的に結合せず、加熱IgE抗体に対して結合する抗IgE抗体を提供する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー症状には、肥満細胞が関与していることが知られている。例えば、花粉症や気管支喘息のアレルギーは、花粉やダニ由来のタンパク質などのアレルゲンと反応した肥満細胞がヒスタミンなどの生理活性物質を放出することにより炎症を引き起こす。肥満細胞の細胞表面にはIgE抗体に高親和性を有するIgE抗体受容体(FcεRI)が発現している。IgE抗体は、FcεRIに結合すると構造変化を引き起こし、アレルゲンとの接触に備える。そして、IgE抗体がアレルゲンに結合し、少なくとも2分子のIgE抗体が架橋されるとFcεRIが集合し、FcεRIシグナルが細胞に伝達されて、肥満細胞から脱顆粒によりヒスタミンなどが放出される。
【0003】
IgE抗体の機能を押さえることによるアレルギー症状の治療戦略が試みられてきた。例えば、非特許文献1では、抗IgE抗体であるオマリズマブは、血中IgE抗体と結合する抗体をであり、血中IgE抗体濃度を低下させることでアレルギー症状を抑制しようとする抗体医薬である(非特許文献1)。しかしながら、オマリズマブは、IgE抗体産生細胞には反応せず、IgE抗体の産生を抑制することはできないと考えられる(非特許文献1)。また、クイリズマブは、IgE抗体産生細胞の膜結合型IgE抗体に結合する抗体であり、これによってIgE抗体産生細胞を排除することが可能であることから、アレルギー症状を抑制しようとする抗体医薬である(非特許文献2および3)。しかし、クイリズマブは、血中のIgE抗体とも反応するため、血中IgE抗体濃度の高い患者では、血中で抗体が消費されてしまうために、アレルギー症状の抑制効果が低いことが問題となっている(非特許文献2および3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015/190555号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【文献】Zheng, L. et al., 2008, Biochem. Biophys. Res. Commun., 375: 619-622
【文献】Harris, J.M. et al., 2016, J. Allergy Clin. Immunol., 138: 1730-1732
【文献】Harris, J.M. et al., 2016, Respir. Res., 17: 29
【発明の概要】
【0006】
本発明は、IgE抗体産生B細胞の膜結合型IgE抗体に特異的に結合する抗IgE抗体とこれを用いたアレルギー症状の診断および治療方法を提供する。
【0007】
本発明者らは、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる配列を有する13アミノ酸長のペプチドを免疫原として得られたモノクローナル抗体が、IgE抗体産生B細胞、及び加熱により構造変化させたIgE抗体(以下、「加熱したIgE抗体」と呼ぶことがある)に結合することを見出した。本発明者らはまた、臨床検体中の非加熱の(加熱による構造変化のない)IgE抗体(以下、「非加熱IgE抗体」と呼ぶことがある)や、肥満細胞表面上のIgE抗体には実質的に結合しないことを見出した。本発明は、このような知見に基づく発明である。
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]配列番号:1または18に記載のアミノ酸配列からなる配列を有するペプチドに結合し、かつ
(1)B細胞表面上のIgE抗体に結合する、および/または
(2)56℃で加熱処理したIgE抗体に結合する、
単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[2]配列番号:1または18に記載のアミノ酸配列からなる配列を有するペプチドに結合し、かつ
(1)B細胞表面上のIgE抗体に結合する、
上記[1]に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[3]配列番号:1または18に記載のアミノ酸配列からなる配列を有するペプチドに結合し、かつ
(2)56℃で加熱処理した遊離形態のIgE抗体に結合する、上記[1]に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[4]上記[1]に記載の抗体であって、
(1)B細胞表面上のIgE抗体に結合し、かつ
(2)56℃で加熱処理した遊離形態のIgE抗体に結合する、
抗体またはその抗原結合フラグメント。
[5]肥満細胞表面上のIgE抗体に対するよりも、B細胞表面上のIgE抗体に対して強い親和性を有する、上記[2]または[4]に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[6]加熱処理前の遊離形態のIgE抗体に対するよりも、56℃で加熱処理した遊離形態のIgE抗体に対して強い親和性を有する、上記[3]または[4]に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[7]配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号:4に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号:5に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号:6に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号:7に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と
を有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[8]配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号:9に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する、上記[7]に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の抗体のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
[10]上記[1]~[8]のいずれかに記載の抗体のネコ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
[11]上記[2]、[4]、[5]、[7]及び[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、医薬組成物。
[12]上記[3]、[4]、[6]、[7]及び[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、加熱した遊離形態のIgE抗体の検出に用いるための組成物。
[13]哺乳動物においてアレルギー症状またはその発症リスクを検査する方法であって、
哺乳動物から得られた生体試料を加熱して、上記[3]、[4]、[6]、[7]及び[8]のいずれかに記載の抗体と反応する遊離解体のIgE抗体を含む生体試料を得ることと、
加熱した生体試料と上記[3]、[4]、[6]、[7]及び[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させることと、
を含む、方法。
[14]上記[13]に記載の方法であって、
加熱前の哺乳動物の生体試料と上記[3]、[4]、[6]、[7]及び[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させることをさらに含む、方法。
[15]上記[14]に記載の方法であって、
哺乳動物から得られた生体試料に対する上記[3]、[4]、[6]、[7]及び[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの反応性を生体試料の加熱前後で比較することをさらに含む、方法。
【0009】
従って、血中の遊離形態のIgE抗体に結合せず、肥満細胞に結合したIgE抗体にも結合せず、IgE抗体産生B細胞(形質細胞)の膜結合型IgE抗体に結合する抗体は、アレルギー疾患または状態の治療に有益でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の抗IgE抗体が様々な哺乳動物のIgE抗体と結合することを示す。
図2図2は、本発明の抗IgE抗体が様々な哺乳動物のIgG抗体とは実質的に結合しないことを示す。
図3図3は、本発明の抗IgE抗体が臨床的なアレルギー症例においては、血清を加熱することで構造変化したIgE抗体と結合することを示す。図3はまた、実験的に感作した例においては、血清加熱前後のいずれのIgE抗体にも結合することを示す。
図4図4は、非加熱IgE抗体は肥満細胞表面のFcεRIに結合するのに対して、加熱して構造変化したIgE抗体はFcεRIには結合しないことを示す。また、本発明の抗IgE抗体が加熱して構造変化したIgE抗体に特異的に結合することを説明する。
図5図5は、肥満細胞の表面のFcεRIに結合できるIgE抗体の血清濃度(病原性IgE抗体の量)が、本発明の抗IgE抗体による加熱後のIgE抗体値から加熱前のIgE抗体値を控除することにより得られることを示す。
図6図6は、本発明の抗IgE抗体がIgE抗体産生B細胞に対して結合することを示す。
図7図7は、本発明の抗IgE抗体が、インビトロで肥満細胞のFcεRIに結合したIgE抗体に対して結合しないことを示す。
図8図8は、本発明の抗IgE抗体が、インビボで肥満細胞上のIgEを架橋して肥満細胞を脱顆粒させず、それによるアレルギー炎症反応(膨疹形成)を誘発させないことを示す。
図9図9は、6C12抗体の組換えマウス抗体のイヌ及びネコのIgE抗体及びIgG抗体に対する反応性を示す。
図10図10は、6C12抗体のイヌキメラ抗体のイヌ及びネコのIgE抗体及びIgG抗体に対する反応性を示す。
図11図11は、6C12抗体のイヌキメラ抗体のヒト及びラットのIgE抗体に対する反応性を示す。
図12図12は、インビボで病原性IgEがアレルギー反応を起し、非病原性IgEがアレルギー反応を起さないことを示す。図5に使用した血清の中から、病原性IgEのみを含む症例犬血清と非病原性IgEのみを含む実験感作犬血清をそれぞれ1検体ずつ選別し、各種濃度に希釈して健常犬皮膚に注射した後、24時間後に同部位にアレルゲン(Der f 2)を皮内注射し、膨疹形成によってそれぞれのIgEが肥満細胞に結合したか否かを示す。病原性IgEは肥満細胞に結合してDer f 2に対して膨疹を形成したが、非病原性IgEは肥満細胞に結合しないため膨疹を形成しないことを示す。
図13図13は、6C12抗体の成熟したIgE抗体産生B細胞に対する結合性を示す。
図14図14は、6C12抗体による成熟したIgE抗体産生B細胞に対する細胞傷害性を示す。
図15図15は、病原性IgE抗体に対する6C12抗体の結合性が加熱依存的であること、およびPNGaseFによる病原性IgE抗体の糖鎖修飾の分解の結果を示す。
図16図16は、病原性IgE抗体に対してPNGaseFによる糖鎖修飾分解後には6C12抗体が結合することができることを示す。
図17図17は、病原性IgE抗体に対する6C12抗体の結合性が加熱依存的であること、およびEndoHによる病原性IgE抗体の糖鎖修飾の分解の結果を示す。
図18図18は、病原性IgE抗体に対してEndoHによる糖鎖修飾分解後に6C12抗体が結合することができることを示す。
図19図19は、病原性IgE抗体に対する6C12抗体の結合性が加熱依存的であること、およびα-2,3ノイラミニダーゼによる病原性IgE抗体の糖鎖修飾の分解の結果を示す。
図20図20は、病原性IgE抗体に対してα-2,3ノイラミニダーゼによる糖鎖修飾分解後に6C12抗体が結合することができないことを示す。
図21図21は、各種ペプチドと6C12抗体との結合性を示す。
図22図22は、6C12抗体とIgE抗体との結合状態のシミュレーションを示す。
図23図23は、上からヒト、イヌ、ネコ、ラット、およびマウスのIgE抗体の重鎖のアミノ酸配列のアラインメントデータを示す。
図24図24は、IgE抗体の指定した領域の配列のヒトおよびイヌ間での比較を示す。
【発明の具体的な説明】
【0011】
本明細書において、「対象」とは、哺乳動物、例えば、イヌ及びネコなどの愛玩動物、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、及びブタなどの家畜、ラット及びハムスターなどの齧歯類、サル、オランウータン、ゴリラ、チンパンジ、ボノボ及びヒトなどの霊長類を意味する。
【0012】
本明細書において、「抗体」は、免疫グロブリンを意味し、一対のジスルフィド結合で安定化された2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)が会合した構造をとるタンパク質をいう。重鎖は、重鎖可変領域VH、重鎖定常領域CH1、CH2、CH3、及びCH1とCH2の間に位置するヒンジ領域からなり、軽鎖は、軽鎖可変領域VLと軽鎖定常領域CLとからなる。この中で、VHとVLからなる可変領域断片(Fv)が、抗原結合に直接関与し、抗体に多様性を与える領域である。また、VL、CL、VH、CH1からなる抗原結合領域をFab領域と呼び、ヒンジ領域、CH2、CH3からなる領域をFc領域と呼ぶ。重鎖および軽鎖は、細胞内ではシグナル配列を有する前駆体として産生されるが、切断されて除去され、抗体産生細胞から抗体として産生され得る。
可変領域のうち、直接抗原と接触する領域は特に変化が大きく、相補性決定領域(complementarity-determining region: CDR)と呼ばれる。CDR以外の比較的変異の少ない部分をフレームワーク(framework region: FR)と呼ぶ。軽鎖と重鎖の可変領域には、それぞれ3つのCDRが存在し、それぞれN末端側から順に、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3と呼ばれる。
【0013】
本明細書において「処置」とは、治療または予防を意味する。従って、本明細書において「がんを処置することに用いる医薬組成物」とは、がんを治療または予防することに用いる医薬組成物を意味し、抗がん剤を一例として含む意味で用いられる。
【0014】
本発明のIgE抗体に結合する抗体は、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。また、本発明のIgE抗体に結合する抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEのいずれのアイソタイプであってもよい。モノクローナル抗体は、1つの細胞株から産生される非組換え抗体および組換え抗体などの、実質的に単一の種類の抗体からなる抗体であり得る。マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ニワトリなどの非ヒト動物を免疫して作製したものであってもよいし、組換え抗体であってもよく、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体、イヌ化抗体、完全イヌ抗体、ネコ化抗体、完全ネコ抗体等であってもよい。キメラ型抗体とは、異なる種に由来する抗体の断片が連結された抗体をいう。本発明のIgE抗体に結合する抗体は、好ましくは、IgE抗体以外の抗体のアイソタイプに対しては実質的に結合しない。本発明のIgE抗体に結合する抗体は、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)および/または補体依存性細胞傷害活性(CDC活性)を有する抗体とし得る。これにより、IgE抗体産生B細胞を攻撃し、生体から除去する効果が期待できる。IgG1、及びIgG2aのアイソタイプは、強いADCC活性を有し得る。本明細書では、「IgE抗体に結合する抗体」を「抗IgE抗体」と呼ぶことがある。本発明のIgE抗体に結合する抗体またはそのIgE抗体結合性断片は、細胞傷害剤との薬物抗体コンジュゲート(ADC)の形態であってもよい。これにより、IgE抗体産生B細胞を攻撃し、生体から除去する効果が期待できる。また、本発明では、「IgE抗体」と述べた場合には、断りの無い限り、遊離形態のIgE抗体を意味する。「遊離形態のIgE抗体」とは、膜結合型IgE抗体との対比において、膜に結合していない形態のIgE抗体であることを意味する。本明細書では、「病原性IgE抗体」とは、肥満細胞に結合することができるIgE抗体を言う。
【0015】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト由来の抗体に特徴的なアミノ酸配列で、ヒト抗体の対応する位置を置換した抗体を意味し、例えば、マウス又はラットを免疫して作製した抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を有し、重鎖及び軽鎖のそれぞれ4つのフレームワーク領域(FR)を含むその他のすべての領域がヒト抗体に由来するものが挙げられる。かかる抗体は、CDR移植抗体と呼ばれる場合もある。用語「ヒト化抗体」は、ヒトキメラ抗体を含む場合もある。
「ヒトキメラ抗体」は、非ヒト由来の抗体において、非ヒト由来の抗体の定常領域がヒトの抗体の定常領域に置換されている抗体である。ヒトキメラ抗体では、ADCC活性を高める観点では、例えば、定常領域に用いるヒトの抗体のサブタイプはIgG1とすることができる。
【0016】
「イヌ化抗体」とは、非イヌ由来の抗体に特徴的なアミノ酸配列で、イヌ抗体の対応する位置を置換した抗体を意味し、例えば、マウス又はラットを免疫して作製した抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を有し、重鎖及び軽鎖のそれぞれ4つのフレームワーク領域(FR)を含むその他のすべての領域がイヌ抗体に由来するものが挙げられる。かかる抗体は、CDR移植抗体と呼ばれる場合もある。用語「イヌ化抗体」は、イヌキメラ抗体を含む場合もある。
「イヌキメラ抗体」は、非イヌ由来の抗体において、非イヌ由来の抗体の定常領域がイヌの抗体の定常領域に置換されている抗体である。イヌキメラ抗体では、ADCC活性を高める観点では、例えば、定常領域に用いるイヌの抗体のサブタイプは、特に限定されないが例えばIgGbとすることができる。
【0017】
「ネコ化抗体」とは、非ネコ由来の抗体に特徴的なアミノ酸配列で、ネコ抗体の対応する位置を置換した抗体を意味し、例えば、マウス又はラットを免疫して作製した抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を有し、重鎖及び軽鎖のそれぞれ4つのフレームワーク領域(FR)を含むその他のすべての領域がネコ抗体に由来するものが挙げられる。かかる抗体は、CDR移植抗体と呼ばれる場合もある。用語「ネコ化抗体」は、ネコキメラ抗体を含む場合もある。
「ネコキメラ抗体」は、非ネコ由来の抗体において、非ネコ由来の抗体の定常領域がネコの抗体の定常領域に置換されている抗体である。
【0018】
哺乳動物化抗体とは、哺乳動物のある種について、当該種以外の抗体に特徴的なアミノ酸配列で当該種の抗体に対応する位置を置換した抗体を意味し、例えば、マウス又はラットを免疫して作製した抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を有し、重鎖及び軽鎖のそれぞれ4つのフレームワーク領域(FR)を含むその他のすべての領域が当該種の抗体に由来するものが挙げられる。かかる抗体は、CDR移植抗体と呼ばれる場合もある。用語「哺乳動物化抗体」は、哺乳動物キメラ抗体を含む場合もある。
「哺乳動物キメラ抗体」は、哺乳動物のある種について、当該種以外の抗体において、当該種以外の抗体の定常領域が当該種の抗体の定常領域に置換されている抗体である。哺乳動物キメラ抗体では、ADCC活性を高める観点では、例えば、定常領域に用いる哺乳動物の抗体のサブタイプはIgG1あるいはイヌにおいてはIgGbとすることができる。
霊長類化抗体、霊長類キメラ抗体も同様の意味で用いられる。
【0019】
本明細書において、「抗原結合フラグメント」とは、抗体のフラグメントであって、IgE抗体に結合する能力を維持したフラグメントをいう。具体的には、VL、VH、CL及びCH1領域からなるFab;2つのFabがヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結されているF(ab’)2;VL及びVHからなるFv;VL及びVHを人工のポリペプチドリンカーで連結した一本鎖抗体であるscFvのほか、diabody型、scDb型、tandem scFv型、ロイシンジッパー型などの二重特異性抗体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書では、「IgE抗体」は、免疫グロブリンのうち、2つの重鎖(ε鎖)と2つの軽鎖(κ鎖またはλ鎖)から形成される分子である。本明細書では、「IgE抗体」を「IgE」と呼ぶことがある。IgE抗体の重鎖の定常領域は、4つのドメインから構成され、それぞれ可変領域からCε1~4と呼ばれる。IgE抗体のCε3は、IgE受容体(Fcε受容体)との結合に関与している。Fcε受容体は、肥満細胞やIgE抗体産生B細胞の膜表面に発現している。Fcε受容体には、IgE抗体に対して高親和性を示すFcεRIと低親和性を示すFcεRIIとが存在する。FcεRIは、肥満細胞表面に発現し、FcεRIIは、B細胞表面で発現する。IgE抗体が肥満細胞のFcεRIと結合し、アレルゲンや病原体と反応すると、肥満細胞からヒスタミンなどのメディエーターが放出され、アレルギー反応を引き起こす。本明細書では、肥満細胞に結合するIgE抗体を「病原性IgE抗体」または「病原性IgE」ということがある。本明細書では、加熱したIgE抗体や肥満細胞に結合しないIgE抗体を「非病原性IgE抗体」または「非病原性IgE」ということがある。ヒトIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:AH005278において登録されたアミノ酸配列であり得る。イヌIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:L36872において登録されたアミノ酸配列であり得る。ネコIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:AF162134において登録されたアミノ酸配列であり得る。ラットIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:K02901において登録されたアミノ酸配列であり得る。マウスIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:LC387253において登録されたアミノ酸配列であり得る。
本明細書では、「B細胞膜表面上のIgE抗体」とは、B細胞に結合したIgE抗体を意味する。IgE抗体は、B細胞表面にFcε受容体を介して結合し得る。IgE抗体はまた、IgE抗体を産生するB細胞の膜表面に膜結合タンパク(たとえば、マウスではM1タンパク、ヒトではM1’タンパク)によって発現しうる。B細胞膜表面上のIgE抗体は、B細胞受容体であり得る。B細胞は、刺激(例えば、CD40への刺激とIL-4またはIL-13による刺激)により活性化していることができる。CD40は、抗CD40抗体などの公知の様々な方法によって刺激することができる。また、抗CD40抗体の代わりにC4b-binding protein(C4BP)を使うこともでB細胞上のCD40を刺激することもできる。さらに、CD40によるB細胞刺激はB細胞内のTRAF(TNF-receptor associated factor)分子を活性化させるが、その活性化刺激はLMP1、CD40以外のTNF受容体(CD120a、CD120bなど)、CD27、CD30、CD267、CD269、B cell activation factor (BAFF/Blys/CD257)-receptor(CD268)、Toll様受容体(TLR)によってもCD40に対する刺激と同等の効果を得ることができる。あるいは、TNFファミリーのサイトカイン(TNFやAPRIL/CD256など)をB細胞に接触させても誘導できる。さらにヒトB細胞においては、B細胞の腫瘍化増殖を誘導するエプスタイン・バール・ウイルス(EBV、Epstein-Barr Virus)をB細胞に感染させてもよい。また、CD40刺激を使用せずにB細胞のIgE産生を誘導する方法として、IL-4、BAFF、および抗IgM抗体を同時にB細胞に接触さえる方法を用いることもできる。IL-4の代わりとして、その構造が類似したサイトカインのIL-13を用いることもできる。このように、様々な公知の方法を適宜用いることによって、当業者は、刺激されたB細胞を得ることができる。本発明の抗体は、このようにして刺激したB細胞表面上のIgEに結合し得る。
本明細書では、「肥満細胞表面上のIgE抗体」とは、肥満細胞に結合したIgE抗体を意味する。IgE抗体は、肥満細胞にFcε受容体を介して結合し得る。
本発明によれば、6C12は、加熱変性したIgE抗体とB細胞膜表面上のIgE抗体に結合性を示したが、加熱変性前のIgE抗体と肥満細胞表面上のIgE抗体に対しては反応性を示さなかった。このことから、B細胞膜表面上のIgE抗体は、少なくとも6C12のエピトープ部分において加熱変性したIgE抗体と同様の構造を取るが、加熱変性前のIgE抗体や肥満細胞表面上のIgE抗体とは異なる構造を取ると考えられる。
本明細書では、「肥満細胞表面上のIgE抗体」とは、肥満細胞に結合したIgE抗体を意味する。IgE抗体は、肥満細胞にFcε受容体を介して結合し得る。
【0021】
本明細書では、「IgE抗体産生B細胞」とは、IgE抗体を産生するB細胞(形質細胞)を意味する。B細胞は、免疫グロブリンのV(D)J組換えを終了すると細胞表面にIgMを発現し、そしてIgDを共発現する成熟B細胞になる。成熟B細胞が抗原を認識すると、形質細胞に変化する。成熟B細胞の形質細胞への最終分化の過程においては、重鎖定常領域のクラススイッチ組換えが起こり、IgMのIgEへのアイソタイプの変更が生じて、IgE抗体を産生するB細胞(形質細胞)が生成される。IgE抗体を産生するB細胞(形質細胞)により産生される成熟したCεのmRNAは、VDJ領域にCε領域が連結したタンパク質をコードするものであり得る。
【0022】
本明細書では、「ADCC活性」とは、抗体依存性細胞傷害活性を意味する。ADCC活性は、標的細胞の細胞表面抗原に本発明の抗体が結合した際、そのFc部分にFcγ受容体保有細胞(エフェクター細胞)がFcγ受容体を介して結合し、標的細胞に障害を与える活性を意味する。
【0023】
本明細書では、「CDC活性」とは、補体依存性細胞傷害活性を意味する。CDC活性は、抗体に結合した補体による細胞傷害活性を意味する。
【0024】
本明細書では、「単離」とは、抗体が産生された環境下から取り出されたことを意味する。単離は、例えば、生じた環境に存在する細胞やその破片、培養液中の他の成分を除去する処理であり得、例えば、抗体の特異的吸着材(プロテインAまたはプロテインGによるアフィニティーカラム等)により精製されることを含む意味で用いられる。単離は、例えば、溶媒の交換を含み得る。
【0025】
本発明によれば、配列番号:1に記載のアミノ酸配列(NTNDWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、B細胞膜表面上のIgE抗体に結合する抗体が提供される。本発明によれば、配列番号:11に記載のアミノ酸配列(HHHHHHGGSGGSDWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体が提供される。本発明によれば、配列番号:11に記載のアミノ酸配列(HHHHHHGGSGGSDWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、B細胞膜表面上のIgE抗体に結合する抗体が提供される。いくつかの態様では、配列番号:11に記載のアミノ酸配列(HHHHHHGGSGGSDWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体は、配列番号:12~17のいずれか1以上のペプチドには、配列番号:11に記載のアミノ酸配列を有するペプチドよりも弱い親和性で結合する。
本発明によれば、配列番号:18に記載のアミノ酸配列(DWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体が提供される。本発明によれば、配列番号:18に記載のアミノ酸配列(DWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、B細胞膜表面上のIgE抗体に結合する抗体が提供される。いくつかの態様では、配列番号:18に記載のアミノ酸配列(DWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体は、配列番号:12~17のいずれか1以上のペプチドには、配列番号:18に記載のアミノ酸配列(DWIEGETYYC)を有するペプチドよりも弱い親和性で結合する。
【0026】
本発明の抗体は、肥満細胞膜表面上のIgE抗体に対しては、実質的に反応を示さない。実質的に反応を示さないとは、例えば、陰性対照となる抗体(IgE抗体に対して特異性を有しない抗体等、例えば、特定の抗原と反応しないアイソタイプコントロール抗体等)と比較して5倍以下、4倍以下、3倍以下、2倍以下、または1.5倍以下の反応性を有することを意味する。反応性は、ELISAやフローサイトメトリーなどの周知技術によって確認することができる。
【0027】
本発明によれば、配列番号:1に記載のアミノ酸配列(NTNDWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、加熱したIgE抗体に結合する抗体が提供される。本発明によれば、配列番号:11に記載のアミノ酸配列(HHHHHHGGSGGSDWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、加熱したIgE抗体に結合する抗体が提供される。本発明によれば、配列番号:18に記載のアミノ酸配列(DWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、加熱したIgE抗体に結合する抗体が提供される。
【0028】
本発明の抗体は、ある態様では、加熱したIgE抗体(例えば、病原性IgE、ヒトIgEにおいてN394に糖鎖修飾を有する抗体であり得る)に結合し得る。IgE抗体の加熱は、例えば、56℃で、例えば、1時間~数時間、例えば、10~20分、例えば15分行うことができる。本発明の抗体は、ある態様では、加熱していないIgE抗体(例えば、4℃~37℃で静置された抗体)に対しては、実質的に反応を示さない。実質的に反応を示さないとは、例えば、陰性対照となる抗体(IgE抗体に対して特異性を有しない抗体等、例えば、特定の抗原と反応しないアイソタイプコントロール抗体等)と比較して5倍以下、4倍以下、3倍以下、2倍以下、または1.5倍以下の反応性を有することを意味する。反応性は、ELISAやフローサイトメトリーなどの周知技術によって確認することができる。本発明の抗体は、ある態様では、加熱していないIgE抗体に対しては、結合乖離定数K値が、10-5以下、10-4以下、10-3以下、または10-2以下であり得る。
【0029】
本発明の抗体は、ある態様では、加熱したIgE抗体に対して、非加熱IgE抗体に対するよりも5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上高い結合親和性を有し得る。本発明の抗体は、ある態様では、加熱したIgE抗体に対して、非加熱IgE抗体に対するよりも、10-3、10-4、10-5、10-6、10-7、10-8、または10-9低い結合乖離定数K値を有し得る(すなわち、加熱したIgE抗体に対してより強く結合する)。
【0030】
本発明によれば、配列番号:1に記載のアミノ酸配列(NTNDWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、B細胞膜表面上のIgE抗体に結合し、かつ、加熱したIgE抗体に結合する抗体が提供される。本発明によれば、配列番号:11に記載のアミノ酸配列(HHHHHHGGSGGSDWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、B細胞膜表面上のIgE抗体に結合し、かつ、加熱したIgE抗体に結合する抗体が提供される。いくつかの態様では、抗体は、単離されたモノクローナル抗体である。本発明によれば、配列番号:18に記載のアミノ酸配列(DWIEGETYYC)を有するペプチドに結合する抗体であって、B細胞膜表面上のIgE抗体に結合し、かつ、加熱したIgE抗体に結合する抗体が提供される。いくつかの態様では、抗体は、単離されたモノクローナル抗体である。
本発明によれば、加熱した病原性IgE若しくはB細胞表面上のIgEまたは配列番号:11に記載のアミノ酸配列(HHHHHHGGSGGSDWIEGETYYC)を有するペプチドとの結合に関して、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号:9に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する抗体と競合する、単離されたモノクローナル抗体が提供される。本発明によれば、加熱した病原性IgE若しくはB細胞表面上のIgEまたは配列番号:18に記載のアミノ酸配列(DWIEGETYYC)を有するペプチドとの結合に関して、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号:9に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する抗体と競合する、単離されたモノクローナル抗体が提供される。
【0031】
本発明のIgE抗体に結合する抗体は、例えば、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する13アミノ酸長のペプチドを、キャリアタンパク質と連結させて動物に免疫することにより取得することができる。キャリアタンパク質としては、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を用いることができる。ペプチドとキャリアタンパク質との連結は、例えば、1-エチル1-3-[ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドハイドリクロライド(EDC)を用いて行うことができる。ペプチドとキャリアタンパク質との連結はまた、ペプチドとキャリアタンパク質の融合タンパク質として発現させてもよい。
【0032】
抗体が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列(NTNDWIEGETYYC)を有するペプチドまたは配列番号:11に記載のアミノ酸配列(HHHHHHGGSGGSDWIEGETYYC)を有するペプチド若しくは配列番号:18に記載のアミノ酸配列(DWIEGETYYC)を有するペプチドに結合するか否かは、適宜スペーサーを介して固相化した当該ペプチドに対して抗体が結合し得るか否かによって確認することができる。抗体が固相化したペプチドに結合したか否かは、調べたい抗体を標識して接触させることによって、あるいは、調べたい抗体を接触させた後に標識した二次抗体を用いて検出することができる。標識は、特に限定されないが、ビオチン標識、蛍光標識、酵素標識、及びラジオアイソトープ標識などが挙げられる。陰性対照としては、特定の抗原と反応しないアイソタイプコントロール抗体を用いることができる。抗体は、投与対象に応じて、当該投与対象のIgE抗体の重鎖アミノ酸配列における、配列番号1、11または18に対応するアミノ酸配列を有するペプチドに結合する抗体とすることができる。
【0033】
抗体が、B細胞表面上のIgE抗体に結合するか否かは、IgE抗体産生B細胞を用いたフローサイトメトリーにより確認することができる。例えば、調べたい抗体を蛍光標識し、IgE抗体産生B細胞と接触させ、フローサイトメトリーで蛍光に基づいて調べたい抗体が細胞に結合したかを検出することができる。調べたい抗体を蛍光標識した場合には、細胞に調べたい抗体が結合すれば、細胞は抗体の蛍光標識に由来する蛍光を発するはずである。陰性対照としては、特定の抗原と反応しないアイソタイプコントロール抗体を用いることができる。いくつかの態様では、刺激したB細胞の表面上のIgE抗体に結合するか否かを確認することができる。
【0034】
抗体が、肥満細胞表面上のIgE抗体に結合するか否かは、以下のように確認することができる。まず、肥満細胞とIgE抗体とを接触させ、肥満細胞表面のFcεRIにIgE抗体を結合させることができる。また、例えば、調べたい抗体を蛍光標識し、IgE抗体を結合させた肥満細胞と接触させ、フローサイトメトリーで蛍光に基づいて調べたい抗体が細胞に結合したかを検出することができる。調べたい抗体を蛍光標識した場合には、細胞に調べたい抗体が結合すれば、細胞は抗体の蛍光標識に由来する蛍光を発するはずである。陰性対照としては、特定の抗原と反応しないアイソタイプコントロール抗体を用いることができる。
【0035】
抗体が、56℃で加熱したIgE抗体と結合するか否かは、IgE抗体を56℃で、例えば、1時間~数時間、例えば、10~20分間、例えば、15分間加熱し、得られるIgE抗体と調べたい抗体とを接触させることにより確認することができる。より具体的には、加熱したIgE抗体を固相化し、これに対して調べたい抗体を標識して接触させることによって、あるいは、調べたい抗体を接触させた後に標識した二次抗体を用いて検出することができる。標識は、特に限定されないが、ビオチン標識、蛍光標識、酵素標識、及びラジオアイソトープ標識などが挙げられる。陰性対照としては、特定の抗原と反応しないアイソタイプコントロール抗体を用いることができる。
【0036】
抗体が、加熱前のIgE抗体(非加熱のIgE抗体)と結合するか否かは、例えば、IgE抗体を37℃以下の環境に維持し、得られるIgE抗体と調べたい抗体とを接触させることにより確認することができる。より具体的には、非加熱のIgE抗体を固相化し、これに対して調べたい抗体を標識して接触させることによって、あるいは、調べたい抗体を接触させた後に標識した二次抗体を用いて検出することができる。標識は、特に限定されないが、ビオチン標識、蛍光標識、酵素標識、及びラジオアイソトープ標識などが挙げられる。陰性対照としては、特定の抗原と反応しないアイソタイプコントロール抗体を用いることができる。
【0037】
本発明によれば、IgE抗体に結合する抗体は、
配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号:4に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号:5に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号:6に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号:7に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と
を有する。
【0038】
本発明によれば、IgE抗体に結合する抗体は、
(i)配列番号:8に記載の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号:9に記載の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖とを有し得る。本発明によれば、また、(ii)IgE抗体に結合する抗体は、配列番号8に記載の重鎖のアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号9に記載の軽鎖のアミノ酸配列を有する軽鎖とを有し得る。
本発明によればまた、IgE抗体に結合する抗体は、上記(i)または(ii)に記載されたIgE抗体に結合する抗体と、IgE抗体との結合に関して競合する抗体であり得る。本発明によればまた、IgE抗体に結合する抗体は、上記(i)または(ii)に記載されたIgE抗体に結合する抗体と、配列番号1、11、または18のアミノ酸配列を有するペプチドとの結合に関して競合する抗体であり得る。
【0039】
本発明によれば、IgE抗体に結合する抗体は、イヌキメラ抗体、イヌ化抗体、ネコキメラ抗体またはネコ化抗体などの哺乳動物キメラ抗体または哺乳動物化抗体であり得、例えば、イヌやネコに投与する用途で用いられる。
【0040】
本発明によれば、IgE抗体に結合する抗体は、ヒトキメラ抗体、またはヒト化抗体であり得、例えば、ヒトに投与する用途で用いられる。
【0041】
本発明によれば、IgE抗体に結合する抗体は、哺乳動物に投与する用途で用いられる場合には、IgG1抗体とすることができる。
【0042】
抗体がADCC活性を有するか否かは、IgE抗体産生B細胞とエフェクター細胞と本発明のIgE抗体に結合する抗体とを用いて確認することができる。エフェクター細胞としては、例えば、マウス脾細胞、ヒト末梢血や骨髄から分離した単球核を利用することができる。標的細胞としては、例えばIgE抗体産生B細胞を用いることができる。標的細胞をあらかじめ51Cr等で標識し、これに本発明の抗体を加えてインキュベーションし、その後標的細胞に対して適切な比のエフェクター細胞を加えてインキュベーションを行う。インキュベーション後、上清を採取し、上清中の上記標識をカウントすることにより、測定することが可能である。
【0043】
抗体がCDC活性を有するか否かは、ADCC活性の試験において、エフェクター細胞の代わりに補体を用いることにより確認することができる。
【0044】
本発明では、IgE抗体に結合する抗体またはそのIgE抗体結合断片は、細胞傷害剤との薬物抗体コンジュゲート(ADC)の形態であってもよい。細胞傷害剤としては、抗がん剤として用いられる細胞傷害剤を用いることができる。細胞傷害剤としては、例えば、化学療法剤(例えば、市販の抗がん剤などの抗がん剤、例えば、アウリスタチン(アウリスタチンE、アウリスタチンFフェニレンジアミン(AFP)、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンFとそれらの誘導体)、メイタンシノイドDM1およびDM4とそれらの誘導体)、カンプトテシン(SN-38、トポテカンおよびエキソテカンとそれらの誘導体)、DNA副溝結合剤(エネジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシンとそれらの誘導体)、タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセルとそれらの誘導体)、ポリケチド(ディスコデルモライドとその誘導体)、アントラキノン系(ミトキサントロンとその誘導体)、ベンゾジアゼピン(ピロロベンゾジアゼピン、インドリノベンゾジアゼピン、およびオキサゾリジノベンゾジアゼピンとそれらの誘導体)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビンとそれらの誘導体)、ドキソルビシン類(ドキソルビシン、モルホリノ-ドキソルビシン、およびシアノモルホリノ-ドキソルビシンとそれらの誘導体)、強心配糖体(ジギトキシンやその誘導体)、カレキアマイシン、エポチロン、クリプトフィシン、セマドチン、セマドチン、リゾキシン、ネトロプシン、コンブレタスタチン、エリュテロビン、エトポシド、T67(チュラリク)、およびノコダゾール)、放射性同位体(例えば、32P、60C、90Y、111In、131I、125I、153Sm、186Re、188Re、および212Bi)、および毒素(例えば、ジフテリアトキシンA、シュードモナスエンドトキシン、リシン、サポリン等)が挙げられ、本発明のADCにおける細胞傷害剤として用いることができる。細胞傷害剤はいずれも、がんの処置に用いられるものを用いることができる。細胞傷害剤と抗体とは、リンカーを介して連結することができる。当業者であれば、適宜、細胞傷害剤およびリンカーを選択することができる。
【0045】
本発明によれば、IgE抗体に結合する抗体は、検査試薬として用いることができる。この場合、IgE抗体に結合する抗体は、いずれのアイソタイプの抗体であってもよい。
【0046】
本発明によれば、
IgE抗体に結合する抗体を製造する方法であって、
配列番号:1に記載のアミノ酸配列(NTNDWIEGETYYC)を有するイヌのペプチドを動物(例えば、非ヒト動物、非ヒト哺乳動物、鳥類)に免疫することを含む、方法が提供される。
【0047】
本発明によれば、その必要のある対象において、アレルギーを伴う疾患または状態を処置する方法であって、対象に治療上有効量の本発明のIgE抗体に結合する抗体を投与することを含む、方法が提供される。
【0048】
本発明によれば、本発明のIgE抗体に結合する抗体を含む、医薬組成物が提供される。
【0049】
本発明によれば、アレルギーを伴う疾患または状態を処置することに用いるための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明のIgE抗体に結合する抗体を含む、医薬組成物が提供される。本発明のIgE抗体に結合する抗体は、IgE抗体産生B細胞表面のIgE抗体に特異的に結合することによって、当該B細胞を標的化することができる。当該B細胞を抑制または死滅させることによってアレルギー症状の原因となるIgE抗体の産生を抑制することができる。また、本発明のIgE抗体に結合する抗体は、非加熱の血中IgE抗体との親和性が低い場合には、これによって、血中IgE抗体でトラップされずに、IgE抗体産生B細胞にまで到達し、当該B細胞を抑制または死滅させることができる。
【0050】
本発明によれば、アレルギーを伴う疾患または状態を処置することに用いるための医薬組成物の製造における、本発明のIgE抗体に結合する抗体の使用が提供される。
【0051】
本発明の医薬組成物は、本発明のIgE抗体に結合する抗体に加えて、賦形剤をさらに含んでいてもよい。賦形剤としては、水、食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0052】
本発明の医薬組成物は、様々な形態、例えば、液剤(例えば注射剤)、分散剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、坐剤などとすることができる。好ましい態様は、注射剤であり、非経口(例えば、静脈内、経皮、腹腔内、筋肉内、経粘膜)で投与することが好ましい。
【0053】
本発明の医薬組成物は、凍結乾燥製剤の形態で提供されてもよい。凍結乾燥製剤は、注射用水を伴っていてもよく、用事調製され得る。
【0054】
本発明の医薬組成物は、他の抗アレルギー薬と併用されうる。本発明の医薬組成物は、他のアレルギー薬をさらに含んでいてもよい。本発明の医薬組成物は、他のアレルギー薬を含まず、他のアレルギー薬と併用されるものであってもよい。本発明では、本発明に医薬組成物と、他のアレルギー薬との組合せ医薬が提供され得る。本発明の組合せ医薬においては、本発明の医薬組成物と他のアレルギー薬とは同一の製剤に含まれていても、別々の製剤に含まれていてもよい。本発明の組合せ医薬において、本発明の医薬組成物と他のアレルギー薬とが別々の製剤に含まれている場合には、これらを同時に投与してもよく、連続的または逐次的に投与してもよい。他の抗アレルギー薬としては、例えば、ステロイド薬(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメサゾンなど)、抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、オロパタジン、レボセチリジン、セチリジン、フマル酸クレマスチン、ヘキソフェナジン、ロタラジンなど)、免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムスなど)、免疫療法薬(標準化スギ花粉エキス原液、ヤケヒョウヒダニエキス・コナヒョウヒダニエキス配合、組換え型Der f 2‐プルラン結合体など)、トロンボキサンA2合成阻害薬(オザグレル塩酸水和物など)、トロンボキサンA2受容体拮抗薬(セラトロダスト、ラマトロバンなど)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカストナトリウム、プランルカスト水和物など)、Th2サイトカイン阻害薬(スプラタストトシル酸塩など)が挙げられる。
本発明のある態様では、本発明の医薬組成物は、オマリズマブと併用されうる。
【0055】
本発明によれば、哺乳動物においてアレルギー症状またはその発症リスク(または病原性IgE抗体の有無)を検査(または診断)する方法であって、
哺乳動物から得られた生体試料を加熱して、本発明のIgE抗体に結合する抗体と反応するIgE抗体を得ることと(または、本発明のIgE抗体に結合する抗体と反応する構造変化を生じる条件下で哺乳動物から得られた生体試料を加熱することと)、
加熱した生体試料と本発明のIgE抗体に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させることと、
を含む、方法が提供される。本発明の方法では、本発明のIgE抗体に結合する抗体は、加熱したIgE抗体に結合するが、臨床上のアレルギー症状を呈する検体の非加熱IgE抗体に対しての親和性が低く、これによって、血中に存在し得る非病原性IgE抗体による診断のノイズを抑制することができる。
【0056】
本発明によれば、哺乳動物が病原性IgE抗体を有するか否かを検査することによって、アレルギー症状を発症している個体においてはアレルギー症状の重篤度を評価することができる。また、本発明によれば、哺乳動物が病原性IgE抗体を有するか否かを検査することによって、アレルギー症状の発症リスクを評価することができる。従って、本発明の方法は、アレルギー症状を有する哺乳動物において、アレルギー症状の重篤度を検査する方法であり得る。また、本発明の方法は、哺乳動物において、アレルギー症状の発症リスクを検査する方法であり得る。
【0057】
本発明の方法では、生体試料の加熱は、IgE抗体を変性させる目的で実施される。従って、生体試料の加熱条件は、IgE抗体が変性して本発明のIgE抗体に結合する抗体と反応するようになる条件であれば特に限定されないが、例えば、56℃で、例えば、1時間~数時間、例えば、10分間~20分間、例えば、15分間加熱することにより行われ得る。
【0058】
本発明の方法で用いられ得る生体試料としては、IgE抗体を含む生体試料であれば特に限定されないが、例えば、IgE抗体を含む組織検体、またはIgE抗体を含む体液試料、例えば、血液、血漿または血清、あるいは涙であり得る。
【0059】
本発明のIgE抗体に結合する抗体が、加熱した生体試料中のIgE抗体と反応した場合には(すなわち、生体試料中に本発明のIgE抗体に結合する抗体と反応する物質が存在した場合には)、その生体試料が由来する対象は、アレルギー症状を有すると決定(または診断)することができる。
【0060】
本発明の方法は、加熱前の哺乳動物の生体試料と本発明のIgE抗体に結合する抗体を接触させる工程をさらに含んでいてもよい。これによって、本発明のIgE抗体に結合する抗体が、加熱前の生体試料中のIgE抗体と反応した場合には(すなわち、生体試料中に本発明のIgE抗体に結合する抗体と反応する物質が存在した場合には)、その生体試料が由来する対象は、肥満細胞に対してヒスタミン放出を促進させないIgE抗体を含むと決定することができる。これによって、生体試料中にIgE抗体が存在するにも関わらず、本発明のIgE抗体に結合する抗体が、加熱前の生体試料中のIgE抗体と反応が認められない場合には(すなわち、生体試料中に本発明のIgE抗体に結合する抗体と反応する物質が存在しない場合には)、その生体試料が由来する対象が、アレルギー症状を有すると決定(または診断)することができる。
【0061】
本発明の方法は、哺乳動物から得られた生体試料に対する本発明のIgE抗体に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントの反応性を加熱前後で比較することをさらに含んでいてもよい。加熱前後で、生体試料に含まれるIgE抗体に対する反応が変わらない場合には(例えば、加熱前後での反応性に統計的な有意差が認められない場合には)、生体試料中のIgE抗体は、肥満細胞に対して非反応性のIgE抗体であると決定することができ、または、生体試料の由来する対象が臨床上健康に影響するアレルギー症状を有しないと決定(または診断)することができる。また、加熱により、生体試料に含まれるIgE抗体に対する反応が高まった場合には、生体試料中のIgE抗体は、肥満細胞に対して反応性のIgE抗体であると決定することができ、または、生体試料の由来する対象が臨床上健康に影響するアレルギー症状を有すると決定(または診断)することができる。この態様において、加熱に代えて、PNGaseFまたはEndoHなどの糖鎖分解酵素を用いてもよい。用い得る糖鎖分解酵素は、当該酵素で処理した病原性IgE抗体を非加熱の条件下で6C12と接触させたときに、6C12抗体との結合性を高める酵素が挙げられる。特に、N型糖鎖をN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびマンノースからなる群から選択される2つの糖単位の間で分解する酵素であり得る。
【0062】
本発明の方法では、例えば、陰性対照として、臨床上のアレルギー症状を有しない健常者(動物を含む)を用いることができる。また、本発明の方法では、例えば、陽性対象として、臨床上のアレルギー症状を有する患者(動物を含む)を用いることができる。本発明の方法では、陽性対象及び/または陰性対照と比較して、検査される対象がアレルギー症状を有するのか否かを決定してもよい。
【0063】
本発明によれば、本発明のIgE抗体に結合する抗体を含む、アレルギー症状を診断することに用いるための診断薬および診断キットが提供される。本発明の診断薬および診断キットには、抗体を標識するための蛍光、RI、または酵素が含まれていてもよい。本発明の診断薬および診断キットには、標識された二次抗体が含まれていてもよい。本発明の診断キットには、必要な緩衝液、ブロッキング液、酵素反応停止液、およびマイクロプレートリーダーからなる群から選択される1つまたは全てが含まれていてもよい。
【0064】
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
【実施例
【0065】
実施例1:抗IgE抗体の作製
本実施例では、抗IgE抗体の作製を試みた。以下、断りの無い限り、ヒトIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:AH005278において登録されたアミノ酸配列であり;イヌIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:L36872において登録されたアミノ酸配列であり;ネコIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:AF162134において登録されたアミノ酸配列であり;ラットIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:K02901において登録されたアミノ酸配列であり;マウスIgE抗体のアミノ酸配列は、GenBank登録番号:LC387253において登録されたアミノ酸配列である。
【0066】
ヒトと動物種のIgE抗体に広く交差反応する抗IgE抗体を作製することを目的として、ヒト、イヌ、マウス、及びラットのIgE抗体重鎖CH3領域の中でアミノ酸配列が保存されている部位(13個のアミノ酸からなるイヌIgE抗体重鎖定常領域アミノ酸配列情報GenBank AAA56797.1のアミノ酸番号282~294、282NTNDWIEGETYYC294;配列番号1に記載されるアミノ酸配列である)を選択し、免疫用の合成ペプチドを作製した(表1参照)。表1に示されるように免疫に使用したペプチド配列は、その周辺領域を含めて種間で相同性を有する。なお、表1に示されるペプチド配列の領域は、IgE抗体のCH3領域に位置し、特にIgE抗体受容体と相互作用する4つの離れた領域(ヒトのIgE定常領域アミノ酸情報、UniProtKB - P01854におけるアミノ酸番号213~217、アミノ酸番号243~246、アミノ酸番号274~276、アミノ酸番号305~308の領域)間に位置する領域である。IgE抗体の重鎖の片方が定常領域が上記アミノ酸領域においてIgE抗体受容体と結合すると、他方の定常領域はその構造を変化させる。そして、当該他方の定常領域は、CH3領域の1番目と4番目のアミノ酸領域とで当該一方の定常領域が結合したIgE抗体受容体に結合し得る。このようにして、肥満細胞表面上のIgE抗体受容体に結合したIgE抗体は、重鎖定常領域の構造変化を生じる。そして、この構造変化は、IgE抗体が加熱されて引き起こす構造変化と類似している。
【0067】
【表1】
【0068】
合成ペプチドはKLHとコンジュゲートさせ、C57Bl6マウスに免疫した後、腸骨リンパ節細胞を採取し、マウスミエローマ細胞株SP2と融合してハイブリドーマを作製した。ラットIgE(インビトロジェン社))とイヌIgE(Bethyl Laboratories, Inc.)に反応するものを二段階スクリーニングで選択した結果、ハイブリドーマクローン(6C12、マウスIgG1κ)を得た。
【0069】
6C12産生ハイブリドーマを定法どおりにプリスタン処理したBalb/cマウスの腹腔内に1×10個/マウスで摂取した後、2~3週間後の腹水を採取し、モノクローナル抗体をProtein Gカラム(GEヘルスケア社)を用いたアフィニティークロマトグラフィーにて精製した。本明細書では、当該クローンから得られた6C12クローンから産生されるモノクローナル抗体を単に6C12と呼ぶ。
【0070】
実施例2:得られた抗IgEモノクローナル抗体の特性解析
精製した6C12をビオチン標識し、ELISAシステムを確立して各動物種のIgE抗体に対する反応性を検討した。ELISA法は、96穴ELISA用ブラックマイクロプレート(グライナー社)に任意の濃度でIgE抗体およびIgG抗体をリン酸緩衝液に希釈して固相化した。固相化に使用したIgE抗体およびIgG抗体は次のとおりである。イヌIgE(Bethyl Laboratories社)、ヒトIgE(ミリポア社)、ラットIgE(インビトロジェン社)、マウスIgE(BD Phamingen社)、また別途作製された、カイコ体液より精製した組換型ネコIgEタンパク(Griot-Wenket et al., 2000, Vet. Immunol. Immunopathol., 75: 59-69参照)、イヌIgG(Cappel社)、ヒトIgG(ミリポア社)、及びネコIgG(Bethyl Laboratories社)を用いた。固相化は4℃で一晩行った。
【0071】
固相化したプレートは、ブロッキングバッファー(魚ゼラチン1%含有リン酸緩衝液)で4℃、一晩ブロッキング後、同バッファーで0.5μg/mlに希釈したビオチン標識精製6C12を、室温で2時間反応させた。PBS-T(Tween 20 0.05%含有リン酸緩衝液)で洗浄後にストレプトアビジン-βガラクトシダーゼを室温2時間反応させた。洗浄した後、βガラクトシダーゼの基質である4MU(4-メチルウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド)溶液を加えて1時間反応させた後、酵素反応停止液の0.25M NaCOを加えて反応を停止した後、酵素より分解、生成された蛍光物質の蛍光強度を蛍光プレートリーダーで測定した(励起波長 355 nm、蛍光波長 460nm、カットオフ波長455nm)。
【0072】
結果は、図1および図2に示される通りであった。図1に示されるように、精製した6C12は、イヌIgE、ヒトIgE、ラットIgE、組換型ネコIgEタンパクに反応した。一方で図2に示されるように、ヒトおよびイヌ、ネコIgGには反応が認められなかった。このことから、6C12は、IgE抗体に特異的に結合する抗体であることが明らかとなった。但し、この実施例で用いられたIgE抗体は、培養細胞やがん細胞等により産生されたIgE抗体であり、臨床的アレルギー症状を有する生体から得られる非加熱のIgE抗体とは異なる立体構造を有すると考えられる抗体である。
【0073】
これらのことから、6C12の認識部位は免疫に用いたペプチドの中でも、イヌ、ヒト、ラット、ネコに共通した部位であると推測された(表1参照)。
【0074】
実施例3:得られた抗IgEモノクローナル抗体とIgE抗体の構造変化との関係
本実施例では、得られた抗IgEモノクローナル抗体とIgE抗体の構造変化との関係を調べた。
【0075】
上記のIgE抗体測定ELISA法を応用した抗原特異的IgE抗体定量測定ELISAによってイヌの血清中のDer f 2-IgE抗体(すなわち、Der f 2に結合するIgE抗体)について検討を行った。抗原にはコナヒョウヒダニの主要アレルゲンの一つのDer f 2(日本全薬工業株式会社提供、カイコを用いて作製した組換型タンパク)を用いた。血清は、臨床的にアレルギーを発症していると考えられるイヌの血清(臨床例血清)41検体と実験用ビーグルにDer f 2とアラムアジュバントを2回以上皮下注射することで免疫して得られた血清(実験犬血清)9検体を用いた。
【0076】
血清中Der f 2-IgE抗体測定は次のように行った。上記と同様のELISAプレートにDer f 2を1 μg/mlで固相化し、室温で2時間ブロッキングを行った。ブロッキングバッファーで200倍希釈した血清を添加して4℃で一晩反応させた後、ビオチン化した6C12を反応させ、上記と同様にストレプトアビジン-βガラクトシダーゼと4MUの反応で生成された蛍光物質の蛍光強度を測定した。また、組換型ネコIgE抗体を200倍に希釈した正常犬血清にて各種濃度に希釈したものを測定することで、上記ネコIgE組換タンパクを標準品とした標準曲線を作成し、臨床例血清および実験犬血清中のDer f 2-IgE濃度を定量測定した。その結果、図3に示されるように、臨床例血清ではほとんどIgE抗体が検出されなかったが、実験犬血清では高いIgE値が検出された。従来の研究から、血清IgEは古くから56℃で加熱するとその立体構造が変化しIgE抗体受容体に結合しなくなることがわかっていたため(図4参照)、立体構造を変化させることを目的として、測定前の血清を56℃で15分加熱し、再度6C12によるIgE抗体の測定を行ったところ、図3に示されるように、臨床例血清においても高いレベルのIgE抗体が検出された。なお、加熱したIgE抗体は、肥満細胞表面のFcεRIには結合できず、肥満細胞による脱顆粒には寄与しないことが知られている。
【0077】
加熱前後におけるIgE抗体測定値を比較すると、図5に示されるように、臨床例血清すべての検体でIgE抗体値の大きな差異(49-1271ng/ml、平均値447 ng/ml、中央値392ng/ml)が認められたが、実験犬血清では小さな差異(0-103ng/ml、平均値26ng/ml、中央値18ng/ml)しか認められなかった。このことから、6C12は立体構造の変化依存的にIgE抗体を認識することが明らかとなった。また、アレルギー犬臨床例血清では加熱による構造変化前のIgE抗体が大量に存在し、実験犬血清にはあらかじめ構造変化したIgE抗体が大量に存在することが分かった。
【0078】
以上のことから次のことが考えられた。古くからアレルギー症状の発症や患者皮膚におけるアレルギー反応検査(プリックテスト、皮内反応)と血清中のIgE抗体測定値は相関が弱いことが問題となっていた(例えば、Bryant, D.H. et al., 1975, Clin. Allergy, 5: 145-157参照)。また、発明者らの経験的にも、実験犬では血清中IgE抗体が非常に高くても容易にアレルギー症状を発症しない、あるいは皮内反応(アレルゲンを皮内に注射して膨疹形成を見る)で陽性反応が出ないことがあるが、それは発症に関与するIgE抗体(以下、病原性IgE抗体)が産生されないためではないかと考えられた。上記の血清加熱によっては以前から、IgE抗体の立体構造が変化するためIgE抗体は肥満細胞表面のIgE抗体受容体(Fcε RI)に結合できなくなり、アレルギー反応を起さないことが実験的にマウスIgEにおいても(Wyczolkowska, J. and Prouvost-Danon, A., 1976, Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 50: 43-54)、ヒトのアレルギー患者血清IgE抗体においても(Solley, G.O. et al., 1976, J. Clin. Invest., 58: 408-420)分かっていた。6C12は熱変性したIgE抗体を検出できることから、6C12が検出するIgE抗体は、変性したIgE抗体であると推測され、それは肥満細胞に結合できない、非病原性IgE抗体であると考えられた。我々の実験結果から、アレルギーの犬の臨床例血清に多く含まれる病原性IgE抗体は立体構造変化が可能な病原性IgE抗体であり、実験的感作によって誘導されたIgE抗体は非病原性であると考えられ、6C12によってIgE抗体とアレルギー発症の矛盾を解決できる現象を捉えることができた。
【0079】
また、このことはネコにおいても同様であった。上記のIgE抗体測定系をネコの血清に置き換え、固相化アレルゲンをDer f 2からコナヒョウヒダニに置き換えてネコIgE抗体を測定したところ、加熱後にIgE抗体が検出され、イヌと同様に病原性IgE抗体を検出することができた(表2)。このことから、上記のとおりイヌでみられた現象はネコでも確認され、ヒトを含め動物種全体に通用する概念であると考えられた。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例4:得られた抗IgE抗体の細胞特異性
IgEは、血中の遊離形態に加えて、B細胞表面および肥満細胞表面に発現している。本実施例では、得られた抗IgE抗体の細胞特異性を評価した。
【0082】
臨床的にアレルギーを疑う犬の末梢血単核球をコンカナバリンA(ConA) 1μg/mlを添加した10%ウシ胎児血清加RPMI1640培地中で37℃で3日間培養した後、イヌB細胞マーカーの抗CD21抗体(Bio-Rad社)と同時に、市販の抗イヌIgEマウスモノクローナル抗体(クローンE6-71A1)あるいは6C12で染色し、フローサイトメトリー法でIgE抗体を細胞表面に持つB細胞を解析した。結果は、図6に示される通りであった。
【0083】
図6に示されるように、6C12はE6-71A1と同様にIgE抗体を発現するB細胞を検出することが明らかとなった。このことから、6C12はIgE抗体産生B細胞を検出することができることがわかった。よって、6C12はIgE抗体産生B細胞を排除できる抗体医薬へと応用できることがわかった。6C12は血中の病原性IgE抗体には結合しないことから、抗体医薬として投与した際に血中のIgE抗体に吸収されることがなく、投与した抗体医薬がそのままIgE抗体産生B細胞に到達すると考えられる。これまでに開発されてきたIgE抗体産生B細胞をターゲットとした抗体医薬(クイリズマブ;Quilizumab)は血中のIgE抗体にも反応すること(Harris, J.M. et al., 2016, Respir. Res., 17: 29)と比較すると、得られた抗体は既存抗体に対する大きな有用性を有することが示唆された。
【0084】
次に、肥満細胞表面のIgE抗体に対する抗体の反応性を評価した。肥満細胞の表面のIgE抗体に対する反応性については、in vitroでまず検証した。ラット肥満細胞株RBL-2H3にラットIgE(インビトロジェン社)を添加し、RB-2H3表面のFcεRIに結合させた後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で蛍光標識した6C12を添加してフローサイトメトリーで反応性を確かめた。その結果、図7に示されるように、FITC標識抗ラットIgE抗体によってRBL-2H3表面にラットIgE抗体が結合していることは確かめられたが、6C12は添加濃度を増加させても蛍光強度が陰性コントロールと同じであり、RBL-2H3表面のIgE抗体には結合しなかった。肥満細胞のFcεRIに結合するとIgE抗体は構造変化することが知られており、6C12抗体は、この構造変化によりIgE抗体に結合できなくなったと考えられる。
【0085】
次に、正常肥満細胞を利用するin vivoでの抗体の反応性を評価した。健常犬の皮膚肥満細胞にアレルギー犬の血清を皮内注射してIgE抗体を感作させるPrausnitz-Kustnerテストを用いて、正常肥満細胞表面上のIgE抗体に対する6C12の反応性を検証した。アレルギー犬血清をIgE抗体濃度300ng/mlに調整した後、健常ビーグル犬の胸部の皮内に0.05 ml 注射し、24時間後に同箇所に6C12と抗イヌIgE抗体(クローンE6-71A1)をそれぞれ、1μg/mlおよび10μg/mlで0.05ml皮内注射した。E6-71A1を注射した箇所はいずれもE6-71A1が肥満細胞上に結合した証拠となる膨疹形成がみられたが(肥満細胞上IgE 2分子がE6-71A1によって「架橋」されると肥満細胞が脱顆粒して炎症が起こる)、6C12は膨疹を形成しなかった(図8)。以上のことから、6C12は肥満細胞上のIgE抗体には結合しないことが、in vitroおよびin vivoで証明された。このことから、得られた抗IgE抗体は肥満細胞に対して脱顆粒を誘発させることがないことが明らかとなった。また、6C12は抗体医薬としてアレルギー患者に投与しても、肥満細胞上のIgE抗体に結合せず、アナフィラキシーショックを起さないことがわかった。
【0086】
このように、6C12はIgE抗体産生B細胞を認識し、血中IgE抗体(生、非加熱状態、病原性)と肥満細胞の表面のIgE抗体は認識しないことがわかった。すなわち、6C12は以下の結合特異性を有する。
【0087】
【表3】
【0088】
上記実施例から、6C12を加熱・非加熱血清中のIgE抗体検査に用いると、構造変化する病原性IgE抗体を検出できることが示され、本発明の抗体がIgE抗体を指標とした炎症の検査に用い得ることが明らかとなった。また、本発明の抗体を抗体医薬へ展開すると、IgE抗体産生B細胞を体内から排除できるアレルギーの根本的治療として活用できることも示唆された。既存の抗ヒトIgE抗体医薬には、オマリズマブ(Omalizumab)(Zheng, L. et al., 2008, Biochem. Biophys. Res. Commun., 375: 619-622)とクイリズマブ(Quilizumab)(Harris, J.M. et al., 2016, J. Allergy Clin. Immunol., 138: 1730-1732;及びHarris, J.M. et al., 2016, Respir. Res., 17: 29)が知られているが、前者は血中IgE抗体を下げる効果はあるもののIgE抗体産生細胞を排除できず、後者はIgE抗体産生細胞を排除できるものの血中IgE抗体にも反応するため、血中IgE抗体が高い値を示すアレルギー患者ほど、すなわちアレルギー症状が強い患者ほどその効果が半減することが問題であった。しかし、6C12を抗IgE抗体医薬として用いると、血中IgE抗体に邪魔されることなく、IgE抗体産生細胞を消滅させることが可能である(表3参照)。ちなみに、オマリズマブの認識部位はIgE重鎖定常領域424HLP426(非特許文献1におけるアミノ酸番号、UniProtKB - P01854におけるアミノ酸番号は305HLP307)であり、6C12とは重ならない。オマリズマブは、血中IgE抗体を下げる効果はあるもののIgE抗体産生細胞を排除できず、本発明の抗体は、血中IgE抗体を下げる効果は期待できないもののIgE抗体産生細胞を排除しうる。従って、本発明の抗体とオマリズマブとの併用により、血中IgE抗体の低下作用と、IgE抗体産生細胞の除去効果との相乗効果が期待される。
【0089】
実施例5:キメラ抗体の作製
本実施例では、組換えマウス抗体(マウスIgG1κ)および組換えイヌキメラ抗体を作製した。
【0090】
6C12産生ハイブリドーマのIgG1抗体可変領域遺伝子を解析し、その重鎖(配列番号8参照)と軽鎖(κ鎖)(配列番号9参照)の遺伝子配列を得た。但し、配列番号8において、アミノ酸番号1~22はシグナル配列であり、アミノ酸番号23~179が重鎖可変領域であり、アミノ酸番号180~212が重鎖定常領域である。また、配列番号9において、アミノ酸番号1~22はシグナル配列であり、アミノ酸番号23~128が軽鎖可変領域であり、アミノ酸番号129~174が軽鎖定常領域である。
【0091】
この遺伝子配列を元に、マウスIgG1重鎖遺伝子およびκ鎖遺伝子を用いて6C12の組換型マウス抗体(マウスIgG1κ)を293細胞で発現させ、作製した。培養細胞上清中の抗体濃度を測定して実験に供した。その結果、図9に示されるように、イヌおよびネコのIgE抗体あるいはIgG抗体に対する反応を検討したところ、イヌおよびネコのIgG抗体にはこの組換型マウス抗体は反応がなく、イヌおよびネコのIgE抗体には6C12よりも高い反応を示した。
【0092】
また、イヌIgGb遺伝子(Tang, L. et al., 2001, Vet. Immunol. Immunopathol., 80: 259-270)と組換型のイヌ化キメラ抗体をHEK293T細胞で発現させ、作製した。培養上清からプロテインAカラムを用いたアフィニティー精製を行って組換型抗体を回収し、実験に供した。その結果、図10に示されるように、この組換型イヌ化キメラ抗体はイヌおよびネコのIgE抗体に6C12と同等の反応性を示し、イヌおよびネコのIgG抗体には反応しなかった。また、図11に示されるように、イヌ化キメラ抗体はヒトIgE抗体とラットIgE抗体にも6C12と同等の反応があることがわかった。よって、6C12は組換型抗体にしてもその反応性は維持され、抗体医薬として用い得ることがわかった。
【0093】
本実施例によれば、6C12抗体のエピトープは、加熱したIgE抗体、およびB細胞表面上の膜結合型IgE抗体においては、6C12に結合可能な状態であるが、肥満細胞表面上の膜結合型IgEにおいては、6C12に結合不能な状態で存在すると考えられる。6C12抗体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として得られたことから、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原とすることによって、加熱したIgE抗体、および/またはB細胞表面上の膜結合型IgE抗体と結合し、かつ、肥満細胞表面上の膜結合型IgE抗体には結合しない抗体を得ることができることが示される。
【0094】
実施例6:本発明の抗IgE抗体による動物の検査
本発明の抗IgE抗体6C12は、臨床的なアレルギー症状を呈する検体のIgE抗体に対しては、非加熱では反応せず、加熱すると反応を示した。これに対して、実験的にアレルゲンを皮下注射して感作した検体のIgE抗体に対しては加熱前後で結合性を示した。これにより、上記実施例では、6C12は、肥満細胞に結合可能なIgE抗体(病原性IgE抗体)には加熱前には結合できず、肥満細胞に結合不能なIgE抗体(加熱したIgE抗体および実験的に感作した検体のIgE抗体)には結合できると考えられた。
【0095】
まず、6C12を用いてイヌ血清サンプルを2検体選択した。具体的には、病原性IgE抗体を含む検体として、加熱前の血清に対して6C12が反応せず(Der f 2-IgE濃度が0ng/ml)、加熱後の血清に対して6C12が反応した(Der f 2-IgE濃度が 848ng/ml)検体を選んだ。また、非病原性IgE抗体を含む検体として、加熱前後の血清それぞれに対して6C12の反応性が同等(Der f 2-IgE濃度が加熱前1054ng/ml、加熱後1052ng/ml)であった検体を選んだ。
【0096】
ビーグル犬の皮内に、
No.1:病原性IgE抗体を含む検体から得られたIgE抗体 50 ng/mL
No.2:病原性IgE抗体を含む検体から得られたIgE抗体 100 ng/mL
No.3:病原性IgE抗体を含む検体から得られたIgE抗体 300 ng/mL
No.4:非病原性IgE抗体を含む検体から得られたIgE抗体 50 ng/mL
No.5:非病原性IgE抗体を含む検体から得られたIgE抗体 100 ng/mL
No.6:非病原性IgE抗体を含む検体から得られたIgE抗体 300 ng/mL
をそれぞれ図12の上段に示される箇所にそれぞれ投与した(1日目)。
【0097】
24時間後にIgE抗体が反応するアレルゲンを皮内投与した(2日目)。具体的には、Der f 2(10 μg/mLに用事希釈したサンプル)を皮内投与した。15分後、膨疹の直径(mm)、硬さ(1:膨疹なし、2:柔らかい、3:固い)、および赤み(1:赤みなし、2:マイルド、3:強い)でアレルギー症状を評価した。
【0098】
結果は、図12に示される通りであった。図12に示されるように、膨疹および赤みは、上記1~3の検体から得られたIgE抗体を投与した場合にのみ認められた。また、アレルギー症状の評価結果は表4に示される通りであった。
【0099】
【表4】
【0100】
以上から、6C12は、病原性IgE抗体の存在を決定することに有用であると考えられた。
【0101】
実施例7A:IgE産生B細胞腫瘍細胞株に対する細胞傷害性
リンパ腫を疑うイヌ(13歳、ヨークシャテリア種、去勢オス)の血液から末梢血単核球をフィコール比重遠心法で定法にしたがって分離した後、ウシ胎児血清を10%含有するRPMI-1640を用いて6か月間以上継代培養を行ったところ、継続的に増殖する腫瘍細胞を得た。この腫瘍細胞の細胞表面抗体の種類についてイヌ用の各種抗体を用いてフローサイトメトリー法で検討した。検討に使用した抗体は、抗イヌIgMヤギポリクローナル抗体(Novus Biologicals社)、抗イヌIgGヒツジポリクローナル抗体(AbD Serotec社)、抗イヌIgAヤギポリクローナル抗体(AbD Serotec社)、抗イヌIgEヤギポリクローナル抗体(Bethyl Laboratories社)および6C12で、それらいずれもビオチン標識されたものを用いた。これら抗体を1×10個/mlの細胞濃度に調整した腫瘍細胞浮遊液50μlに500μg/mlの濃度で添加して4℃で30分間反応させた後、洗浄して次にFITC標識ストレプトアビジン(BioLend社)を500μg/mlの濃度で添加し、さらに4℃で30分間反応させた。染色した細胞の検出はFACS Canto II(Becton, Dikinson and Company社)を用いて行い、解析直前に各細胞浮遊液に0.2μLで加えたPropidium Iodide(Propidimu Iodide Staining Solution、Becton, Dikinson and Company社)に染色された細胞を死細胞として除去した後、使用した抗体に染色された細胞集団を検出した。細胞集団の解析はFACS Diva software(Becton, Dikinson and Company社)を用いた。その結果、この腫瘍細胞はその細胞表面にIgEのみを発現し、その他の抗体であるIgM、IgG、IgAは発現していない細胞であることがわかった。よって、本腫瘍細胞をイヌIgE産生B細胞腫瘍細胞株とした。図13に示されるように、IgE抗体は、IgE産生B細胞の細胞表面に有効に結合した。
【0102】
次に、IgE抗体による細胞傷害性を検討した。イヌの末梢血単核球を取得し、フィコール比重遠心法を用いた常法に従ってイヌ末梢血からエフェクター細胞を分離した。イヌIgE産生B細胞腫瘍細胞株(2.5×10細胞/ウェル)を標的細胞として用い、上記実施例で作製したキメラ抗体またはコントロールイヌ抗体を10ng/mLの濃度で30分反応させた。その後、イヌの末梢血単核球(1.25×10細胞/ウェル)を各ウェルに加えて、さらに5時間培養した。培地を回収して培地中のラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)の濃度を測定した。LDHは細胞内の酵素であり、細胞が傷害された場合には細胞外に漏出し、培地中で検出されることとなる。LDHの測定は、Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST (DOJINDO LABORATORIES)を用いて製造者マニュアルに従って行った。
【0103】
本実施例では、全細胞が有するLDH量に対して、細胞が傷害されることによって培地中に放出されるLDH量を検討し、その割合を細胞毒性として算出する。
【0104】
【数1】
【0105】
上記式において、
実験的放出(ER)は、各濃度の抗体溶液、エフェクター細胞、および標的細胞を混合した後に放出されるLDHの量を表し、
エフェクターによる自発的放出(ESR)は、エフェクター細胞が自発的に放出するLDH量を表し、
標的自発的放出(TSR)は、標的細胞が自発的に放出するLDH量を表し、
標的最大放出(TMR)は、溶解緩衝液で細胞を完全に破壊して得られる、標的細胞に含まれる全LDH量を表し、
培地バックグラウンド(CMB)は、培地中にバックグラウンドとして含まれるLDH量を表し、
体積補正用コントロール(VCC)は、培地中に溶解緩衝液を添加したときのLDH量を表す。
【0106】
結果は、図14に示される通りであった。図14に示されるように、6C12抗体は、イヌのIgE産生B細胞を効果的に死滅させることができた。
【0107】
さらに、6C12抗体によるIgE産生B細胞の細胞傷害性をインビトロで検証した。ヒトの末梢血単核球を抗CD40抗体とリコンビナントIL-4で刺激してIgE産生B細胞を誘導した。その際に6C12あるいはマウスIgG含有マウス血清(陰性対照)を加え、37℃5%CO下で5日間、10%FBS含有RPMI-1620で培養した。IgE産生B細胞の出現数をELISPOT法で数えた。
抗ヒトIgEモノクローナル抗体を固相化したPVDFメンブランプレートのウェルに培養後の細胞を8.4×10細胞/wellで添加し、24時間反応させた後、洗浄し、その後ビオチン標識した抗ヒトIgEモノクローナル抗体、ストレプトアビジン結合アルカリフォスファターゼを加えた後、基質を反応させてIgE産生B細胞のスポットを発色させた。肉眼的に認識可能な大きさの発色スポットを数えた。
1条件3ウェルアッセイとして平均値を出して評価した。結果は表5に示される通りであった。
【0108】
【表5】
【0109】
ウエル間では6C12添加において5~7個/ウエルのスポットを数えることができたが(平均6個/ウエル)、陰性対照のマウス血清添加ウエルでは、26~38個/ウエルのスポットを数えることができた(平均33個/ウエル)。よって、6C12は、ヒトの末梢血単核球からIgE産生細胞が出現するのを抑える作用があることがわかった。このことは、IgE産生細胞に直接的に6C12が作用し、細胞傷害活性を起すと考えられた。
【0110】
実施例8A:糖鎖分解酵素によるIgE上の糖鎖の分解と6C12抗体による当該IgEの親和性
本実施例では、ダニアレルゲンであるDer f 2に対するIgE抗体(Der f 2-IgE)をPNGaseF、EndoH、またはノイラミニダーゼで処理して、その糖鎖を分解し、分解された糖鎖を有するDer f 2-IgEに対する6C12抗体の親和性を確認した。
【0111】
酵素処理工程以外は実施例3と同様に試験を行った。具体的には、96穴ELISAプレートに組換型Der f 2を 1μg/mLの濃度で100μL/well加えた後、4℃で一晩固相化した。洗浄後、2% Gelatin-Biotin (0.1μg/mL)含有PBSを200μL/wellで加えて室温で2時間ブロッキングし、洗浄した。イヌ血清としては、Der f 2-IgE陽性アトピー症例犬とDer f 2実験感作犬から得たものをそれぞれ使用し、予めこれまでの加熱・非加熱血清を用いたDer f 2-IgE ELISA法によってそれぞれ病原性IgEと非病原性IgEのみが検出されたものを選択して使用した。これら血清を200倍希釈したものを100μL/wellで添加し、室温で6時間放置した。洗浄後、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F PRIMETM、N-Zyme Scientifics)を濃度は250 units/mLで、ノイラミニダーゼ(α2-3,6,8 Neuramidase、New England BioLabs Japan) を濃度100 units/mLで100μL/wellを添加した。添加後、37℃で一晩インキュベートした。洗浄後、ビオチン標識した0.75μg/mLの6C12抗体を100μL/wellで添加し、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、ストレプトアビジン標識β-ガラクトシダーゼ(Streptavidin-β-Gal conjugate、Sigma-Aldrich)を0.05 U/mLで100μL/wellで加え、室温で2時間反応させた。洗浄後、0.1 mM 4-Methylumbelliferyl β-D-galactopyranosideを100μL/wellで加えて室温で1時間、反応させた。β-ガラクトシダーゼ反応を、0.25M NaCOを100μL/wellで添加して停止させた。上記基質の分解産物の蛍光強度を、励起波長355mn、蛍光波長460 nm、カットオフ455nmの条件で蛍光プレートリーダーで測定した。さらに、Der f 2-IgE濃度が既知である標準イヌ血清と比較した。
【0112】
結果は、図15~16(PNGaseF処理)、図17~18(EndoH処理)、および図19~20(ノイラミニダーゼ処理)に示される通りであった。
図15、17、および19に示されるように、6C12抗体は、病原性Der f 2-IgEに対して加熱処理依存的に結合した。病原性Der f 2-IgEを酵素処理すると、図15、17、および19に示されるように、レクチン(糖鎖結合タンパク質)との結合性が喪失したことから、糖鎖が分解された。
ここで、6C12抗体が、酵素処理した非病原性Der f 2-IgEおよび病原性Der f 2-IgEに結合するかを確認したところ、図16および18に示されるように、PNGaseFまたはEndoHで処理した病原性Der f 2-IgEに対しては、6C12抗体が親和性を示した。これに対して、図20に示されるように、ノイラミニダーゼで処理した病原性Der f 2-IgEに対しては、6C12は親和性を示さなかった。
【0113】
これらの結果から、6C12抗体は、加熱された病原性Der f 2-IgEに対して、N型糖鎖依存的にIgE抗体に結合することが示された。
【0114】
実施例9A:6C12抗体のエピトープの同定
6C12抗体は、表1に示されるように、免疫原として用いたペプチド配列のうちヒトと他の動物とで保存された領域に結合することが考えられる。
【0115】
図21に示されるように、免疫原として用いたペプチド配列(Peptide-full)から、N末端をそれぞれ3アミノ酸および4アミノ酸欠失させたPeptide(-3)およびPeptide(-4)、並びに、C末端をそれぞれ1アミノ酸~5アミノ酸欠失させたPeptide(-1C)~Peptide(-5C)を作製した。これらのペプチドはN末端に6×Hisタグおよびそれに続くグリシン-セリンリンカー(GSリンカー)を有し、抗Hisタグ抗体で捕捉し、ビオチン化した6C12抗体との結合をストレプトアビジン標識β-ガラクトシダーゼで常法により検出した。結果は、図21に示される通りであった。図21に示されるように、Peptide(-3)のみが6C12抗体との結合性を保持していた。従って、6C12抗体は、Peptide(-3)をエピトープとする抗体であると考えられる。
【0116】
図22に示されるように、6C12抗体が結合するIgE抗体の部位をインシリコシミュレーションにより表示させた。Peptide(-3)の領域は、αヘリックスとβシートから構成される部位であり、タンパク質表面に存在するが線型的なペプチドとしては、存在していない。病原性IgEを加熱することや糖鎖を分解することによって、抗体の構造が変化し、または当該エピトープ部分の構造が変化することによって6C12抗体が当該ペプチド部分に結合できるようになると考えられる。従って、Peptide(-3)ペプチドに結合する抗体は、6C12抗体と同様に加熱した病原性IgEや活性化したB細胞表面上のIgEに選択的に結合し、病原性IgEの検出や、活性化したB細胞を標的化することに用い得ると考えられる。
【0117】
配列表
配列番号1:免疫原となるイヌのペプチドのアミノ酸配列
配列番号2:6C12抗体の重鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号3:6C12抗体の重鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号4:6C12抗体の重鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号5:6C12抗体の軽鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号6:6C12抗体の軽鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号7:6C12抗体の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号8:6C12抗体の重鎖のアミノ酸配列
配列番号9:6C12抗体の軽鎖のアミノ酸配列
配列番号10:6×HisタグとGSリンカー配列とが結合したPeptide-fullのアミノ酸配列
配列番号11:6×HisタグとGSリンカー配列とが結合したPeptide(-3)のアミノ酸配列
配列番号12:6×HisタグとGSリンカー配列とが結合したPeptide(-4)のアミノ酸配列
配列番号13:6×HisタグとGSリンカー配列とが結合したPeptide(-3C)のアミノ酸配列
配列番号14:6×HisタグとGSリンカー配列とが結合したPeptide(-4C)のアミノ酸配列
配列番号15:6×HisタグとGSリンカー配列とが結合したPeptide(-5C)のアミノ酸配列
配列番号16:6×HisタグとGSリンカー配列とが結合したPeptide(-2C)のアミノ酸配列
配列番号17:6×HisタグとGSリンカー配列とが結合したPeptide(-1C)のアミノ酸配列
配列番号18:Peptide(-3)のアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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