(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】微生物、生分解性プラスチックの分解に用いるための組成物、および生分解性プラスチックの処理方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240816BHJP
C12R 1/07 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 F
C12R1:07
(21)【出願番号】P 2024072323
(22)【出願日】2024-04-26
【審査請求日】2024-05-02
【微生物の受託番号】NPMD NITE BP-04083
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520327238
【氏名又は名称】株式会社komham
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】森本 一
(72)【発明者】
【氏名】西山 すの
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】Environmental science and pollution research international,2011年01月25日,Vol. 18,p. 865-870,doi:10.1007/s11356-011-0443-2
【文献】Frontiers in microbiology,2019年11月22日,10:2548,p. 1-13,doi:10.3389/fmicb.2019.02548
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス科(Bacillaceae)に属し、
受託番号NITE BP-04083で寄託されている、微生物。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物の変異株であって、
下記(1)~(10)の特性を有する微生物:
(1)グラム染色が陽性の桿菌であり、芽胞形成をする;
(2)生育温度が、30~58℃である;
(3)生育pHが、6~10である;
(4)生育塩濃度が、0~4%である;
(5)カタラーゼ反応が、陽性である;
(6)オキシダーゼ反応が、陽性である;
(7)D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および/または5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有する;
(8)L-アルギニン、クエン酸ナトリウム、L-トリプトファン、ゼラチン、および/またはエスクリン代謝活性を有する;
(9)アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、エスクリン加水分解活性、および/またはゼラチナーゼ活性を有する;
(10)ポリ乳酸(PLA)および/またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の分解能を有する。
【請求項3】
請求項1に記載の微生物の変異株であって、
前記変異株は、16S rRNA遺伝子として、下記(R)の塩基配列からなる遺伝子を含み、
ポリ乳酸(PLA)および/またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の分解能を有する、微生物:
(R)下記(R1)、(R2)、または(R3)の塩基配列
(R1)配列番号1に示す塩基配列;
(R2)配列番号1に示す塩基配列において、1~18個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列;
(R3)配列番号1に示す塩基配列において、98.72%以上の同一性を有する塩基配列。
【請求項4】
前記変異株は、下記(1)~(8)および(9)からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、請求項3に記載の微生物:
(1)グラム染色が陽性の桿菌であり、芽胞形成をする;
(2)生育温度が、30~58℃である;
(3)生育pHが、6~10である;
(4)生育塩濃度が、0~4%である;
(5)カタラーゼ反応が、陽性である;
(6)オキシダーゼ反応が、陽性である;
(7)D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および/または5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有する;
(8)L-アルギニン、クエン酸ナトリウム、L-トリプトファン、ゼラチン、および/またはエスクリン代謝活性を有する;
(9)アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、エスクリン加水分解活性、および/またはゼラチナーゼ活性を有する。
【請求項5】
ポリ乳酸(PLA)およびポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の分解能を有する、請求項2または3に記載の微生物。
【請求項6】
前記変異株は、配列番号2で示すANI値95%以上を有するゲノムDNAを含む、請求項2または3に記載の微生物。
【請求項7】
バチルス科(Bacillaceae)に属し、
16S rRNA遺伝子として、下記(R)の塩基配列からなる遺伝子を含み、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の分解能を有する、微生物:
(R)下記(R1)、(R2)、または(R3)の塩基配列
(R1)配列番号1に示す塩基配列;
(R2)配列番号1に示す塩基配列において、1~18個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列;
(R3)配列番号1に示す塩基配列において、98.72%以上の同一性を有する塩基配列。
【請求項8】
下記(1)~(9)および(10)からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、請求項7に記載の微生物:
(1)グラム染色が陽性の桿菌であり、芽胞形成をする;
(2)生育温度が、30~58℃である;
(3)生育pHが、6~10である;
(4)生育塩濃度が、0~4%である;
(5)カタラーゼ反応が、陽性である;
(6)オキシダーゼ反応が、陽性である;
(7)D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および/または5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有する;
(8)L-アルギニン、クエン酸ナトリウム、L-トリプトファン、ゼラチン、および/またはエスクリン代謝活性を有する;
(9)アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、エスクリン加水分解活性、および/またはゼラチナーゼ活性を有する。
(10)ポリ乳酸およびポリブチレンアジペートテレフタレートの分解能を有する。
【請求項9】
配列番号2で示す塩基配列に対して、ANI値95%以上を有するゲノムDNAを含む、請求項7または8に記載の微生物。
【請求項10】
請求項1から3
および7から
8のいずれか一項に記載の微生物を含む、生分解性プラスチックの分解に用いるための組成物。
【請求項11】
前記生分解性プラスチックは、ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートを含む、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1から3
および7から
8のいずれか一項に記載の微生物と、生分解性プラスチックとを接触させ、前記微生物により前記生分解性プラスチックを分解する工程を含む、生分解性プラスチックの処理方法。
【請求項13】
前記生分解性プラスチックは、ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートを含む、請求項
12に記載の処理方法。
【請求項14】
前記分解を、25~55℃の温度下で実施する、請求項
12に記載の処理方法。
【請求項15】
前記分解を、pH6~10の条件下で実施する、請求項
12に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微生物、生分解性プラスチックの分解に用いるための組成物、および生分解性プラスチックの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋プラスチック問題や地球温暖化問題を解決するために、微生物等によって最終的にCO2および水に分解される生分解性プラスチック等の研究および開発が進められている。
【0003】
また、前記生分解性プラスチックの利用拡大に伴い、前記生分解性プラスチックを分解可能な微生物等の研究が進められている(非特許文献1-2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Arena, Maria et al. “Degradation of poly (lactic acid) and nanocomposites by Bacillus licheniformis.” Environmental science and pollution research international vol. 18,6 (2011): 865-70. doi:10.1007/s11356-011-0443-2
【文献】Bonifer, Kyle S et al. “Bacillus pumilus B12 Degrades Polylactic Acid and Degradation Is Affected by Changing Nutrient Conditions.” Frontiers in microbiology vol. 10 2548. 22 Nov. 2019, doi:10.3389/fmicb.2019.02548
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本開示は、例えば、生分解性プラスチック、特に、ポリ乳酸(PLA)またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を分解可能な新規微生物を提供すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示の微生物は、バチルス科(Bacillaceae)に属し、
受託番号NITE BP-04083で寄託されている。
【0007】
本開示の微生物は、本開示の微生物の変異株である。
【0008】
本開示の微生物は、バチルス科(Bacillaceae)に属し、下記(1)~(10)の特性を有する:
(1)グラム染色が陽性の桿菌であり、芽胞形成をする;
(2)生育温度が、30~58℃である;
(3)生育pHが、6~10である;
(4)生育塩濃度が、0~4%である;
(5)カタラーゼ反応が、陽性である;
(6)オキシダーゼ反応が、陽性である;
(7)D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および/または5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有する;
(8)L-アルギニン、クエン酸ナトリウム、L-トリプトファン、ゼラチン、および/またはエスクリン代謝活性を有する;
(9)アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、エスクリン加水分解活性、および/またはゼラチナーゼ活性を有する。
(10)ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートの分解能を有する。
【0009】
本開示の生分解性プラスチックの分解に用いるための組成物は、本開示の微生物を含む。
【0010】
本開示の生分解性プラスチックの処理方法は、本開示の微生物と、生分解性プラスチックとを接触させ、前記微生物により前記生分解性プラスチックを分解する工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、例えば、生分解性プラスチック、特に、ポリ乳酸(PLA)またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を分解可能な新規微生物等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1における、16S rRNAの部分塩基配列に基づくkomham264の系統樹を示す。
【
図2】
図2は、実施例1における、光学顕微鏡による、komham264の形態観察の結果を示す写真である。
【
図3】
図3は、実施例1における、komham264のグラム染色の結果を示す写真である。
【
図4】
図4は、実施例1における、API(登録商標)50CHを用いた、細菌第二段階試験の結果を示す写真である。
【
図5】
図5は、実施例1における、API(登録商標)20EおよびAPI(登録商標)20NEを用いた、細菌第二段階試験の結果を示す写真である。
【
図6】
図6は、実施例1における、API(登録商標)ZYMを用いた、細菌第二段階試験の結果を示す写真である。
【
図7】
図7は、実施例1における、ANI解析の結果を示す。
【
図8】
図8は、実施例1における、ポリブチレンアジペートテレフタレートの分解の結果を示した写真である。
【
図9】
図9は、実施例1における、ポリ乳酸の分解の結果を示した写真である。
【
図10】
図10は、実施例1における、ポリ乳酸の分解の結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示について、例をあげて具体的に説明する。以下、特に言及しない限り、各開示は、他の開示の説明を援用できる。
【0014】
本発明者らは、鋭意研究の結果、PLAおよびPBAT等の生分解性プラスチックに対する分解活性を有する新規微生物を見出し、前記微生物を単離および同定することにより、本開示を確立するに至った。具体的には、本開示の微生物は、形態観察および生理・生化学的性状試験、16S rRNAの部分塩基配列解析ならびにゲノム塩基配列のANI(Average Nucleotide Identity)解析の結果、バチルス科(Bacillaceae)に属することは確認されたものの、バチルス科(Bacillaceae)に属する公知の属には属さず、新属の微生物であることを見出した。さらに、本発明者らは、鋭意研究の結果、前記微生物が、生分解性プラスチックの分解能を示すことを見出し、本開示を確立するに至った。このため、本開示の微生物によれば、例えば、生分解性プラスチックの分解処理等が期待される。
【0015】
本開示の微生物は、バチルス科(Bacillaceae)に属する新種の微生物である。本開示の微生物は、例えば、受託番号NITE BP-04083で寄託される菌株またはその後代系統(以下、「komham264」ともいう。)を含む。
【0016】
<komham264>
本開示のkomham264またはその後代系統は、例えば、下記(1)~(9)の特性を有する。
(1)グラム染色が陽性の桿菌であり、芽胞形成をする;
(2)生育温度が、30~58℃である;
(3)生育pHが、6~10である;
(4)生育塩濃度が、0~4%である;
(5)カタラーゼ反応が、陽性である;
(6)オキシダーゼ反応が、陽性である;
(7)D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および/または5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有する;
(8)L-アルギニン、クエン酸ナトリウム、L-トリプトファン、ゼラチン、および/またはエスクリン代謝活性を有する;
(9)アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、エスクリン加水分解活性、および/またはゼラチナーゼ活性を有する。
【0017】
本開示のkomham264は、前記(1)~(9)の特性のうち、いずれか1つの特性を有してもよいし、複数の特性を有してもよいし、全ての特定を有してもよい。本開示のkomham264は、例えば、前記(7)の代謝活性において、いずれか1つまたは複数の代謝活性を有し、好ましくは、全ての代謝活性を有する。本開示のkomham264は、例えば、前記(8)の代謝活性において、いずれか1つまたは複数の代謝活性を有し、好ましくは、全ての代謝活性を有する。本開示のkomham264は、例えば、前記(9)の活性において、いずれか1つまたは複数の活性を有し、好ましくは、全ての活性を有する。
【0018】
前記(1)~(9)の特性は、後述の実施例1(5)~(6)に準じて測定できる。
【0019】
本開示のkomham264は、さらに、例えば、下記(10)の特性を有してもよい。
(10)ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートの分解能を有する。
【0020】
本開示のkomham264は、一例として、受託番号NITE BP-04083で寄託された菌株(寄託系統)またはその後代系統があげられる。寄託の情報を以下に示す。
寄託の種類:国際寄託
寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター
あて名:日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室
(komham264)
受託番号:NITE BP-04083
識別のための表示:komham264
受託日:2024年2月26日
【0021】
本開示のkomham264は、例えば、16S rRNA遺伝子として、下記(R)の塩基配列からなる遺伝子を含み、好ましくは、下記(R1)の塩基配列からなる遺伝子、すなわち、配列番号1で示す塩基配列からなる16S rRNA遺伝子を有する。
【0022】
(R)下記(R1)、(R2)、または(R3)の塩基配列
(R1)配列番号1に示す塩基配列;
(R2)配列番号1に示す塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列;
(R3)配列番号1に示す塩基配列に対して、98.72%以上の同一性を有する塩基配列。
【0023】
前記(R1)において、配列番号1の塩基配列は、16S RNAをコードする塩基配列である。前記配列番号1の塩基配列は、例えば、komham264から単離できる。
【0024】
komham264の16S rRNA遺伝子の塩基配列(配列番号1)
5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAGGACGAACGCTGGCGGCGTGCCTAATACATGCAAGTCGAGCGAACCAATAGAAAAGCTTGCTTTTCTTGAGGTTAGCGGCGGACGGGTGAGTAACACGTGGGCAACCTGCCTGTAAGACTGGGATAACTTACGGAAACGTGAGCTAATACCGGATAGTTTCACTTCTCGCATGAGAAGTGAAGGAAAGATGGCGTCACGCTATCACTTACAGATGGGCCCGCGGCGCATTAGCTAGTTGGTGGGGTAATGGCCTACCAAGGCGACGATGCGTAGCCGACCTGAGAGGGTGATCGGCCACACTGGGACTGAGACACGGCCCAGACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCCGCAATGGACGAAAGTCTGACGGAGCAACGCCGCGTGAGCGATGAAGGTCTTCGGATCGTAAAGCTCTGTTGTTAGGGAAGAACAAGTACCGGAGTAACTGTCGGTACCTTGACGGTACCTAACCAGAAAGCCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATACGTAGGTGGCAAGCGTTGTCCGGAATTATTGGGCGTAAAGCGCGCGCAGGCGGTCCTTTAAGTCTGATGTGAAATCTTGCGGCTCAACCGCAAGCGGTCATTGGAAACTGGGGGACTTGAGTGCAGGAGAGGAAAGCGGAATTCCATGTGTAGCGGTGAAATGCGTAGAGATATGGAGGAACACCAGTGGCGAAGGCGGCTTTCTGGCCTGTAACTGACGCTGAGGCGCGAAAGCGTGGGGAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGAGTGCTAAGTGTTGGAGGGTTTCCGCCCTTCAGTGCTGCAGCAAACGCATTAAGCACTCCGCCTGGGGAGTACGGTCGCAAGACTGAAACTCAAAGGAATTGACGGGGACCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCTCCTGACCACCCTAGAGATAGGGCCTTCCCTTCGGGGACAGGATGACAGGTGGTGCATGGTTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGATGTTGGGTTAAGTCCCGCAACGAGCGCAACCCTTGTCCTTAGTTGCCAGCATTCAGTTGGGCACTCTAAGGAGACTGCCGGCTAAAAGTCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAATGGATGGTACAAAGGGTTGCGAAGCCGCGAGGTGGAGCCAATCCCATAAAACCATTCTCAGTTCGGATTGCAGGCTGCAACTCGCCTGCATGAAGCCGGAATCGCTAGTAATCGTAGATCAGCATGCTACGGTGAATACGTTCCCGGGTCTTGTACACACCGCCCGTCACACCACGAGAGTTTGTAACACCCGAAGTCGGTGAGGTAACCCTTTTGGGAGCCAGCCGCCGAAG-3'
【0025】
前記(R2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(R2)の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する微生物が、前記komham264の特性を維持する範囲であればよい。前記komham264の特性は、例えば、前記(1)~(10)の特性、好ましくは、前記(10)の特性があげられる(以下、同様。)。前記(R2)の「1もしくは数個」は、前記(R1)の塩基配列において、例えば、1~18個、1~14個、1~10個、1~8個、1~5個、1~3個、1または2個、1個である。本開示において、塩基数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1~5個」との記載は、「1、2、3、4、5個」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0026】
前記(R3)において、「同一性」は、例えば、前記(R3)の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する微生物が、前記komham264の特性を維持する範囲であればよい。前記(R3)の「同一性」は、前記(R1)の塩基配列において、例えば、98.72%以上、98.8%以上、98.9%以上、99%以上である。前記「同一性」は、2つの塩基配列またはアミノ酸配列をアライメントすることによって求めることができる(以下、同様)。前記アライメントは、例えば、BLAST、FASTA等を用いてデフォルトのパラメータで算出できる。
【0027】
前記16S rRNA遺伝子の測定は、例えば、公知の方法により測定することができる。前記公知の方法には、PCR(Polymerase Chain Reaction)法やシーケンシング解析等を用いることができる。前記16S rRNAを含むrRNAは、ウイルスを除く全生物に存在し、タンパク質合成に関わる重要な分子である。このため、前記rRNAの進化速度は比較的遅く、種のレベルにおいて高い相同性を示すことが知られている。細菌は、基準株とのDNA-DNAハイブリダイゼーションの相同性が70%以上の場合、同種であると定義される(参考文献1)。一方、16S rRNA配列を用いた菌種同定においては、97%以上の同一性があれば、類縁関係があり、98.7%以上の同一性があれば、同種である可能性が高いとされている(参考文献2)。このため、16S rRNA配列を用いた菌種同定において、98.7%以上の種がいない場合、新種であるとされる。前記菌種同定は、具体的には、公的な遺伝子バンクに登録されている16S rRNAの塩基配列と、対象の菌体とを比較することにより実施される。前記公的な遺伝子バンクは、例えば、日本DNAデータバンク、GenBank、およびEMBL等があげられる。前記公知の塩基配列の比較は、例えば、塩基配列の解析ソフト(例えば、BLAST等)により実施できる。
参考文献1:Wayne L. G., Brenner D. J., Colwell R. R., Grimont P. A. D., Kandier O., Krichevsky M. I., Moore L. H., Moore W. E. C., Murray R. G. E., Stackebrandt E., Starr M. P., Truper H. G. 1987; Report of the Ad Hoc Committee on Reconciliation of Approaches to Bacterial Systematics. Int. J. Syst. Bacteriol. 37:463-464
参考文献2:Stackebrandt, Erko. "Taxonomic parameters revisited: tarnished gold standards." Microbiol. Today 33 (2006): 152-155.
【0028】
本開示のkomham264の16S rRNAは、公知の微生物の16S rRNA遺伝子の塩基配列と比較して、例えば、98.7%未満、98.6%以下、98.5%以下、98.4%以下の同一性であることが好ましい。
【0029】
本開示のkomham264の近縁種として、例えば、バチルス属の細菌があげられる。
【0030】
本開示のkomham264は、例えば、配列番号2で示す塩基配列からなるゲノムDNAを有する。
【0031】
菌株のゲノムDNAによる菌種の同定は、例えば、ANI(Average Nucleotide Identity:平均ヌクレオチド同一性)解析を用いてもよい。前記ANI解析は、対象株と比較株の完全長ゲノム配列やドラフトゲノム配列の同一性(ANI値)をコンピュータ上で計算し、種の異同を判断する方法である。前記ANI解析では、95%以上の値を示すと、同じ菌種に属するゲノムであると判断でき、95%未満の値を示すと、異なる菌種に属するゲノムであると判断できる。前記ANI解析の方法は、例えば、下記参考文献3を参照できる。
参考文献3:Rodriguez-R, Luis M., and Konstantinos T. Konstantinidis. The enveomics collection: a toolbox for specialized analyses of microbial genomes and metagenomes. No. e1900v1. PeerJ Preprints, 2016.
【0032】
本開示のkomham264のゲノム配列(配列番号2)と、公知の微生物のゲノム配列とのANI値は、例えば、95%未満、90%未満、85%未満、82%未満であることが好ましい。前記公知の微生物は、例えば、Peribacillus faecalis、Anoxybacillus gonensis、Neobacillus drentensis、Bacillus licheniformis、Bacillus smithiiBacillus obstructivus、Aeribacillus composti、Compostibacillus humi、Pallidibacillus thermolactis subsp. Kokeshiiformis、Aeribacillus pallidus、Pallidibacillus thermolactis等があげられる。
【0033】
本開示のkomham264は、例えば、配列番号2で示す塩基配列に対して、ANI値を、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上を有するゲノムDNAを含むことが好ましい。
【0034】
本開示のkomham264は、例えば、ゲノムDNAとして、下記(G)の塩基配列からなる遺伝子を含み、好ましくは、下記(G1)の塩基配列からなる遺伝子、すなわち、配列番号2で示す塩基配列からなるゲノムDNAを有する。
【0035】
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)の塩基配列
(G1)配列番号2に示す塩基配列;
(G2)配列番号2に示す塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列;
(G3)配列番号2に示す塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列。
【0036】
前記(G1)において、配列番号2の塩基配列は、ゲノムDNAをコードする塩基配列である。前記配列番号2の塩基配列は、例えば、komham264から単離できる。
【0037】
前記(G2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(G2)の塩基配列を有するゲノムDNAを含む微生物が、前記komham264の特性を維持する範囲であればよい。前記komham264の特性は、例えば、前記(1)~(10)の特性、好ましくは、前記(10)の特性があげられる(以下、同様。)。前記(G2)の「1もしくは数個」は、前記(G1)の塩基配列において、例えば、1~719454個、1~539590個、1~359727個、1~179863個、1~143890個、1~107918個、1~71945個、1~53959個、1~32972個、1~17986個、1~14389個、1~10791個、1~7194個、1~5395個、1~3297個、または1~1798個である。
【0038】
前記(G3)において、「同一性」は、例えば、前記(G3)の塩基配列を有するゲノムDNAを含む微生物が、前記komham264の特性を維持する範囲であればよい。前記(G3)の「同一性」は、前記(G1)の塩基配列において、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0039】
本開示のkomham264は、例えば、細菌形態観察、細菌第一段階試験、および細菌第二段階試験等を用いて、帰属分類群を同定してもよい。前記細菌形態観察は、例えば、コロニーの色調、細胞形態、グラム染色性、および芽胞形成能等の観察があげられる。前記細菌第一段階試験は、例えば、コロニー性状、細胞形態、および運動性の観察、ならびにカタラーゼ、オキシダーゼ、O/Fテスト等の生理生化学的性状試験等があげられる。前記細菌第二段階試験は、例えば、生理・生化学的性状試験用キットによる炭素源等の資化性、酸化/発酵性、および酵素活性等の試験があげられる。本開示のkomham264は、例えば、後述の実施例1における、細菌形態観察、細菌第一段階試験、および細菌第二段階試験等の結果に示される形態学的特徴および生理・生化学的な性状を示す。
【0040】
本開示のkomham264は、例えば、後述の実施例1の培養条件に準じて培養することにより、継代可能である。これにより、本開示は、前記komham264の後代系統を得ることができる。
【0041】
<変異株>
本開示の微生物は、例えば、komham264またはその後代系統の変異株であってもよい。
【0042】
本開示の変異株は、例えば、komham264の新種としての分類学的性質を維持している菌体である。前記性質は、例えば、前述の(1)~(10)の特性があげられる。前記変異株は、例えば、前記(1)~(10)の特性のうち、いずれか1つの特性を有してもよいし、複数の特性を有してもよいし、全ての特性を有してもよい。本開示の変異株は、前記本開示のkomham264の説明を援用できる。
【0043】
本開示の変異株は、例えば、前記komham264への突然変異、または、外来性の遺伝子導入等によって取得することができる。前記突然変異は、例えば、常法により、変異を導入することにより引き起こすことができる。前記変異の導入方法は、例えば、相同組換え;ZFN、TALEN、CRISPR-CAS9、CRISPR-CPF1等を用いたゲノム編集技術:等により、実施できる。前記変異の導入方法は、例えば、部位特異的突然変異誘発法等の変異導入法により、実施してもよい。また、前記変異の導入方法は、例えば、ランダム突然変異誘発法により、実施してもよい。前記ランダム突然変異誘発法は、例えば、α線、β線、γ線、X線等の放射線照射処理;メタンスルホン酸エチル(EMS)、エチニルニトロソウレア(ENU)等の変異誘発剤による化学物質処理;重イオンビーム処理;等があげられる。
【0044】
前記変異株は、16S rRNA遺伝子として、下記(R)の塩基配列からなる遺伝子を含む:
(R)下記(R1)、(R2)、または(R3)の塩基配列
(R1)配列番号1に示す塩基配列;
(R2)配列番号1に示す塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列;
(R3)配列番号1に示す塩基配列に対して、98.72%以上の同一性を有する塩基配列。
【0045】
前記(R1)~(R3)は、本開示のkomham264における説明を援用できる。
【0046】
前記変異株は、例えば、ゲノムDNAとして、下記(G)の塩基配列からなる遺伝子を含み、好ましくは、下記(G1)の塩基配列からなる遺伝子、すなわち、配列番号2で示す塩基配列からなるゲノムDNAを有する。
【0047】
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)の塩基配列
(G1)配列番号2に示す塩基配列;
(G2)配列番号2に示す塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列;
(G3)配列番号2に示す塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列。
【0048】
前記(G1)~(G3)は、本開示のkomham264における説明を援用できる。
【0049】
<生分解性プラスチックの処理方法>
別の態様において、本開示は、生分解性プラスチックを処理可能な方法を提供する。本開示の生分解性プラスチックの処理方法(以下、「処理方法」ともいう。)は、前記本開示の微生物を使用する。本開示の処理方法は、本開示の微生物と、生分解性プラスチックとを接触させ、前記微生物により生分解性プラスチックを分解する工程(以下、「分解工程」ともいう。)を含む。本開示の処理方法は、本開示の微生物を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。
【0050】
本開示において、「生分解性プラスチック」は、微生物等によって、最終的にCO2や水に分解されるプラスチックを意味する。前記生分解性プラスチックは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等があげられ、好ましくは、ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートである。前記ポリ乳酸は、ポリ-L-乳酸(poly-L-lactic acid:PLLA)および/またはポリ-D-乳酸(poly-D-lactic acid:PDLA)等の乳酸のホモポリマー、乳酸由来の構成単位を含むコポリマー等があげられる。
【0051】
前記分解工程において、前記分解に供する対象物は、前記生分解性プラスチックを含めばよく、前記生分解性プラスチックのみから構成されてもよいし、前記生分解性プラスチックおよび他の処理対象物(例えば、生ゴミ、金属類等)を含んでもよい。前記生分解性プラスチックは、例えば、生分解性プラスチックのみから形成される物質であってもよいし、前記生分解性プラスチックに加えて、非生分解性プラスチック等の他の物質を含む物質であってもよい。前記生分解性プラスチックから形成される物質は、例えば、食器、カトラリー、包装容器、トレー、袋、マルチフィルム、梱包資材等があげられる。
【0052】
前記分解工程において、前記微生物と前記生分解性プラスチックとの接触は、例えば、混合により実施できる。前記混合は、例えば、撹拌機等を用いて機械的に実施できる。
【0053】
前記分解工程において、前記分解の温度(分解温度)は、例えば、本開示の微生物が生分解性プラスチックを処理可能な温度である。前記分解温度は、例えば、30~58℃であり、好ましくは、40℃~50℃である。
【0054】
前記分解工程において、前記分解のpH(分解pH)は、例えば、本開示の微生物が生分解性プラスチックを処理可能なpHである。前記分解pHは、例えば、pH6~10であり、好ましくは、pH8~9である。
【0055】
前記分解工程において、例えば、酸素を供給してもよい。前記供給は、例えば、前記生分解性プラスチックと本開示の微生物との混合物を撹拌することにより実施することができる。前記供給の時間間隔は、例えば、1時間~10時間であり、好ましくは、5時間~8時間、さらに好ましくは8時間である。前記供給時間は、例えば、1分~30分、好ましくは、1分~10分、さらに好ましくは、5分である。
【0056】
前記分解工程において、前記生分解性プラスチックと本開示の微生物との混合物の水分含量は、例えば、40~70%であり、好ましくは、50%~70%であり、さらに好ましくは、55%~65%である。
【実施例】
【0057】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。なお、「mol/l」は、「M」と標記することもある。
【0058】
[実施例1]
本開示の新規微生物を同定し、生分解性プラスチックを分解できることを確認した。
【0059】
(1)komham264の単離
日本国北海道の有機性廃棄物の堆肥化施設のコンポストを試料として取得した。8gのハイペプトン、3gの酵母エキス、1gのリン酸二カリウム、および0.25gの塩化アンモニウムを900mlの蒸留水に溶解し、前記溶解後、100mlのアルカリ緩衝液(炭酸ナトリウム、pH9.0)を添加し、PYA培地(pH9.0)を作製した。前記作製後、前記試料を蒸留水で希釈し、前記PYA培地に接種した。前記接種後、50℃の条件下で培養した。前記培養後、培地上に生育したコロニーを分離した。前記分離後、前記PYA培地に接種し、培養を繰り返し行った。その後、単離精製を行い、新規微生物、komham264を単離し、寄託した。なお、北海道の複数の別のコンポストにおいても、前記新規微生物が存在することを確認した。
【0060】
(2)komham264の16S rRNAの塩基配列の決定
前記実施例1(1)で単離したkomham264について、微生物を同定するために、16S rRNAの塩基配列を解析した。具体的には、前記単離したkomham264からDNAを抽出した。前記抽出後、下記プライマーセット(ファスマック社製、合成依頼)およびKOD One(登録商標) PCR Master Mix(TOYOBO社製)を前記DNAに添加し、反応液を調製した。前記調製後、サーマルサイクラー(T100サーマルサイクラー、BIO-RAD社製)を用いて、前記DNAの16S rRNA遺伝子について増幅した。前記増幅後、得られたPCR産物を用いて、DNAシーケンスを行い、前記実施例1(1)で単離したkomham264の16S rRNAの塩基配列を得た。前記塩基配列は、配列番号1で表される塩基配列であった。
【0061】
・27Fプライマー(配列番号3)
5’-AGAGTTTGATCMTGGCTCAG-3’
・1492Rプライマー(配列番号4)
5’-GGYTACCTTGTTACGACTT-3’
【0062】
(3)既存微生物の16S rRNA塩基配列との比較
前記実施例1(2)で得られた16S rRNA塩基配列を用いて、komham264の16S rRNAと既存微生物の16S rRNAとの比較を行った。具体的には、前記比較には、BLASTを使用した。BLASTのホモロジー検索により、komham264の16S rRNA塩基配列と同一または類似の配列を有する微生物を検索した。前記検索の結果、配列番号5で表される塩基配列を有する微生物、バチルス属(Bacillus sp.)のBacillus thermolactis(strain Marseille-AA00136)菌株が、komham264の16S rRNAの塩基配列に最も近い16S rRNA塩基配列を有することがわかった。
【0063】
Bacillus thermolactis(strain Marseille-AA00136)株の16S rRNA遺伝子の塩基配列(配列番号5)
5’-agagtttgatcctggctcaggacgaacgctggcggcgtgcctaatacatgcaagtcgagcggaccaatagaaaagcttgcttttcttgaggttagcggcggacgggtgagtaacacgtgggcaacctacctgtaagactgggataacttacggaaacgtgagctaataccggatagtttcacttctcgcatgagaagtgaaggaaagatggcttttagctatcacttacagatgggcccgcggcgcattagctagttggtggggtaaaggcctaccaaggcgacgatgcgtagccgacctgagagggtgatcggccacactgggactgagacacggcccagactcctacgggaggcagcagtagggaatcttccgcaatggacgaaagtctgacggagcaacgccgcgtgagcgaagaaggtcttcggatcgtaaagctctgttgttagggaagaacaagtaccggagtaactgtcggtaccttgacggtacctaaccagaaagccacggctaactacgtgccagcagccgcggtaatacgtaggtggcaagcgttgtccggaatcattgggcgtaaagcgcgcgcaggcggtcctttaagtctgatgtgaaatcttgcggctcaaccgtaagcggtcattggaaactgggggacttgagtgcaggagaggaaagcggaattccatgtgtagcggtgaaatgcgtagagatatggaggaacaccagtggcgaaggcggctttctggcctgtaactgacgctgaggcgcgaaagcgtggggagcaaacaggattagataccctggtagtccacgccgtaaacgatgagtgctaagtgttggagggtttccgcccttcagtgctgcagctaacgcattaagcactccgcctggggagtacggtcgcaagactgaaactcaaaggaattgacggggacccgcacaagcggtggagcatgtggtttaattcgaagcaacgcgaagaaccttaccaggtcttgacatctcctgaccaccctagagatagggctttcccttcggggacaggatgacaggtggtgcatggttgtcgtcagctcgtgtcgtgagatgttgggttaagtcccgcaacgagcgcaacccttgtccttagttgccagcattcagttgggcactctaaggagactgccggctaaaagtcggaggaaggtggggatgacgtcaaatcatcatgccccttatgacctgggctacacacgtgctacaatggatggtacaaagggctgcgataccgcgaggtggagctaatcccaaaaaaccattctcagttcggattgcaggctgcaactcgcctgcatgaagccggaatcgctagtaatcgcagatcagcatgctgcggtgaatacgttcccgggtcttgtacacaccgcccgtcacaccacgagagtttgtaacacccgaagtcggtgaggtaacccttttgggagccagccgccgaaggtgggacagatgattggggtgaagtcgtaacaaggtagccgt-3’
【0064】
(4)系統樹の作製
次に、前記実施例1(3)のホモロジー検索の結果から、16S rRNAの部分塩基配列に基づく系統樹の作製を行い、komham264の系統学的位置について分析した。前記系統樹の作製には、子進化・系統学的解析ツールのMEGA(Molecular Evolutionary Genetics Analysis)ソフトウェアおよび近隣結合法(Neighbor-joining)を用いた。これらの結果を
図1に示す。
【0065】
図1は、16S rRNAの部分塩基配列に基づくkomham264の系統樹を示す。
【0066】
(5)分類学的性質の検討1
komham264について、形態観察および生理学的性状試験(以下の「細菌第一段階試験」ともいう。)を実施し、分類学的性質について検討した。具体的には、50℃、24時間の条件下で、komham264を好気培養した。前記培養後、光学顕微鏡による形態観察、および参考文献4に記載の方法に基づき、カタラーゼ反応、オキシダーゼ反応、ブドウ糖からの酸/ガス産生、ブドウ糖の酸化/発酵(O/F)について試験を行った。前記光学顕微鏡は、BX50F4(オリンパス)を用いた。これらの結果を
図2~
図3および下記表1に示す。
参考文献4:Barrow GI, Feltham RKA. Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd edition. Cambridge: University Press; 1993.
【0067】
【0068】
図2は、光学顕微鏡による、komham264の形態観察の結果を示す写真である。光学顕微鏡による形態観察の結果、komham264は、
図2に示すようなコロニーを形成することがわかった。
【0069】
図3は、komham264のグラム染色の結果を示す写真である。
図3において、スケールバーは、10μmを示す。
図3において、(A)は、PYA寒天培地で培養したkomham264のグラム染色の結果を示し、(B)は、芽胞形成促進用培地で培養したkomham264のグラム染色の結果を示す。
図3に示すように、komham264は、グラム陽性菌であることがわかった。
【0070】
(6)分類学的性質の検討2
komham264について、生化学的性状試験(以下の「細菌第二段階試験」ともいう。)を実施し、分類学的性質について検討した。具体的には、前記細菌第二段階試験には、API(登録商標)50CH、API(登録商標)20E、API(登録商標)20NE、API(登録商標)ZYM(全てBiomerieux社製)を使用した。これらの結果を
図4~
図6および下記表2~表3に示す。
【0071】
【0072】
図4は、API(登録商標)50CHを用いた、前記細菌第二段階試験の結果を示す写真である。上記表2は、API(登録商標)50CHを用いた、前記細菌第二段階試験の結果を示す表である。
図4および上記表2に示すように、komham264は、グリセロール、D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有することがわかった。
【0073】
図5は、API(登録商標)20EおよびAPI(登録商標)20NEを用いた、前記細菌第二段階試験の結果を示す写真である。
図5に示すように、komham264は、L-アルギニン(ADH)、クエン酸ナトリウム(CIT)、L-トリプトファン(TDA)、ゼラチン(GEL)、およびエスクリン(ESC)の代謝活性を有し、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、ゼラチナーゼ活性、およびエスクリン加水分解活性を有することがわかった。
【0074】
【0075】
図6は、API(登録商標)ZYMを用いた、前記細菌第二段階試験の結果を示す写真である。上記表3は、API(登録商標)ZYMを用いた、前記細菌第二段階試験の結果を示す表である。
図6および上記表3に示すように、komham264は、アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、およびα-グルコシダーゼ活性を有することがわかった。
【0076】
(7)ゲノムDNAの塩基配列の決定
komham264について、ゲノムDNAの塩基配列の決定を行った。具体的には、まず、komham264のゲノムDNAの抽出を行った。前記抽出には、Genomictip 20G(QIAGEN社製)を使用した。前記抽出後、SMRTbell(登録商標) gDNA Sample Amplification Kit(PacBio社製)およびSMRTbell(登録商標) Express Template Prep Kit 20(PacBio社製)を用いて、Procedure & Checklist - Preparing HiFi SMRTbell(登録商標)Libraries from Ultra-Low DNA Input に記載の手順に従って、ライブラリーを調製した。前記調製後、Revio(商標) Polymerase kit (PacBio社製)を用いて、前記ライブラリーのポリメラーゼ複合体を形成させた。前記形成後、Revio(商標)(PacBio社製)を用いて、シーケンシングを行った。その後、SMRT(登録商標) Link(ver. 13.0.0.207600)を用いて、得られた配列からオーバーハングアダプター配列を除去し、サブリードを作製した。前記作製後、前記サブリードをアライメントしたコンセンサス配列を作製した。前記作製後、1リードあたりの平均品質値が20未満のコンセンサス配列を除去し、HiFiリードを作製した。前記作製後、lima(ver. 2.7.1)を用いて、前記HiFiリードからUltra-Low PCRアダプターを除去した。前記除去後、pbmarkdup(ver. 1.0.3)を用いて、PCR重複リードを除去した。前記除去後、Filtlong(ver. 0.2.1)を用いて、1000塩基以下のリードを削除した。前記削除後、Flye(ver. 2.9.2-b1786)のデフォルト条件を用いて、1000塩基以上のHiFiリードをアセンブルした。この結果、komham264のゲノムDNAは、配列番号2で示す塩基配列からなることがわかった。
【0077】
(8)ゲノム塩基配列のANI解析
komham264について、さらに、ANI解析を行った。具体的には、前記実施例1(1)で得られた塩基配列について、pyani v0.2.12およびBLASTを用いて(参考文献5)、ANI値を決定した。これらの結果を
図7に示す。
参考文献5:Pritchard, Leighton, et al. "Genomics and taxonomy in diagnostics for food security: soft-rotting enterobacterial plant pathogens." Analytical Methods 8.1 (2016): 12-24.
【0078】
図7は、ANI解析の結果を示す。
図7に示すように、komham264のゲノムDNAの塩基配列に最も同一性の高いゲノムDNAでも、95%未満の同一率であった。これらの結果から、komham264は、公知の菌種に属する微生物ではなく、新種の微生物であることがわかった。
【0079】
(9)生分解性プラスチック(ポリブチレンアジペートテレフタレート)の分解能の評価
komham264について、生分解性プラスチック(ポリブチレンアジペートテレフタレート)の分解能について検討した。具体的には、前記実施例1(1)で得たkomham264を、10mlのPYA液体培地(pH9)に植菌し、生分解性プラスチック(PBAT)を含むビニール袋(NOVAMONT社製、Mater-Bi)の断片を添加し、40℃、160rpmの条件下で、振盪培養を行った。前記振盪培養の開始日(0日目)、前記振盪培養の開始から4日目および8日目に、観察を行った。なお、コントロールは、komham264を添加しなかったこと以外、同様の方法で実施した。これらの結果を
図8に示す。
【0080】
図8は、ポリブチレンアジペートテレフタレートの分解の結果を示した写真である。
図8において、左から右にかけて、0日目、4日目、および8日目の写真を示す。
図8に示すように、振盪培養の開始から4日目および8日目において、コントロールと比べ、komham264では、ポリブチレンアジペートテレフタレートの分解が確認できた。
【0081】
(10)生分解性プラスチック(ポリ乳酸)の分解能の評価1
komham264について、生分解性プラスチック(ポリ乳酸)の分解能について検討した。具体的には、前記実施例1(1)で得たkomham264を、10mlのPYA液体培地(pH9)に植菌し、生分解性プラスチック(ポリ乳酸)を含むストロー(品名:自然に還るストロー、販売元:株式会社大創産業)の断片を添加し、50℃、160rpmの条件下で、振盪培養を行った。前記振盪培養の開始日(0日目)、前記振盪培養の開始から17日目、31日目、および37日目に、観察を行った。これらの結果を
図9に示す。
【0082】
図9は、ポリ乳酸の分解の結果を示した写真である。
図9において、左から右にかけて、0日目、17日目、31日目、および37日目の写真を示す。
図9に示すように、振盪培養の開始から31日目および37日目において、komham264によるポリ乳酸の分解が確認できた。
【0083】
(11)生分解性プラスチック(ポリ乳酸)の分解能の評価2
komham264について、生分解性プラスチック(ポリ乳酸)の分解能について検討した。具体的には、前記実施例1(1)で得たkomham264を、10mlのPYA液体培地(pH9)に植菌し、生分解性プラスチック(ポリ乳酸)を含むストロー(販売元:株式会社4Nature)の断片を添加し、50℃、160rpmの条件下で、振盪培養を行った。前記振盪培養の開始日(0日目)、前記振盪培養の開始から1日目、5日目、11日目、および14日目に、観察を行った。なお、コントロールは、komham264を添加しなかったこと以外、同様の方法で実施した。これらの結果を
図10に示す。
【0084】
図10は、ポリ乳酸の分解の結果を示した写真である。
図10において、左から右にかけて、0日目、1日目、5日目、11日目、および14日目の写真を示す。
図10に示すように、振盪培養の開始から5日目、11日目、および14日目において、コントロールと比べ、komham264では、ポリ乳酸の分解が確認された。これらの結果から、本開示のkomham264は、生分解性プラスチックを分解できることがわかった。なお、一般的に、生分解性プラスチックは、水環境下では、微生物による分解性が低いとされている。本開示のkomham264によれば、水環境下でも、ポリブチレンアジペートテレフタレートおよびポリ乳酸を分解できるという優れた生分解性プラスチックの分解特性を示すことが分かった。また、本開示のkomham264は、コンポスト中の生分解性プラスチックを分解できることが期待される。
【0085】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0086】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
<寄託微生物>
(付記1)
バチルス科(Bacillaceae)に属し、
受託番号NITE BP-04083で寄託されている、微生物。
<変異株>
(付記2)
付記1に記載の微生物の変異株である、微生物。
(付記3)
前記変異株は、16S rRNA遺伝子として、下記(R)の塩基配列からなる遺伝子を含む、付記2に記載の微生物:
(R)下記(R1)、(R2)、または(R3)の塩基配列
(R1)配列番号1に示す塩基配列;
(R2)配列番号1に示す塩基配列において、1~18個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列;
(R3)配列番号1に示す塩基配列において、98.72%以上の同一性を有する塩基配列。
(付記4)
前記変異株は、下記(1)~(8)および(9)からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、付記2または3に記載の微生物:
(1)グラム染色が陽性の桿菌であり、芽胞形成をする;
(2)生育温度が、30~58℃である;
(3)生育pHが、6~10である;
(4)生育塩濃度が、0~4%である;
(5)カタラーゼ反応が、陽性である;
(6)オキシダーゼ反応が、陽性である;
(7)D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および/または5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有する;
(8)L-アルギニン、クエン酸ナトリウム、L-トリプトファン、ゼラチン、および/またはエスクリン代謝活性を有する;
(9)アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、エスクリン加水分解活性、および/またはゼラチナーゼ活性を有する。
(付記5)
さらに、下記(10)の特性を有する、付記4に記載の微生物:
(10)ポリ乳酸(PLA)および/またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の分解能を有する。
(付記6)
前記変異株は、配列番号2で示すANI値82%以上を有するゲノムDNAを含む、付記2から5のいずれかに記載の微生物。
<微生物>
(付記7)
バチルス科(Bacillaceae)に属し、
16S rRNA遺伝子として、下記(R)の塩基配列からなる遺伝子を含む、微生物:
(R)下記(R1)、(R2)、または(R3)の塩基配列
(R1)配列番号1に示す塩基配列;
(R2)配列番号1に示す塩基配列において、1~18個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列;
(R3)配列番号1に示す塩基配列において、98.72%以上の同一性を有する塩基配列。
(付記8)
下記(1)~(9)および(10)からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、付記7に記載の微生物:
(1)グラム染色が陽性の桿菌であり、芽胞形成をする;
(2)生育温度が、30~58℃である;
(3)生育pHが、6~10である;
(4)生育塩濃度が、0~4%である;
(5)カタラーゼ反応が、陽性である;
(6)オキシダーゼ反応が、陽性である;
(7)D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および/または5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有する;
(8)L-アルギニン、クエン酸ナトリウム、L-トリプトファン、ゼラチン、および/またはエスクリン代謝活性を有する;
(9)アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、エスクリン加水分解活性、および/またはゼラチナーゼ活性を有する。
(10)ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートの分解能を有する。
(付記9)
配列番号2で示す塩基配列に対して、ANI値82%以上を有するゲノムDNAを含む、付記7または8に記載の微生物。
<特性>
(付記10)
バチルス科(Bacillaceae)に属し、
下記(1)~(10)の特性を有する、微生物:
(1)グラム染色が陽性の桿菌であり、芽胞形成をする;
(2)生育温度が、30~58℃である;
(3)生育pHが、6~10である;
(4)生育塩濃度が、0~4%である;
(5)カタラーゼ反応が、陽性である;
(6)オキシダーゼ反応が、陽性である;
(7)D-リボース、D-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、L-ラムノース、イノシトール、アルブチン、エスクリンクエン酸第二鉄、D-マルトース、D-サッカロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ツラノース、D-タガトース、2-ケトグルコン酸カリウム、および/または5-ケトグルコン酸カリウムの代謝活性を有する;
(8)L-アルギニン、クエン酸ナトリウム、L-トリプトファン、ゼラチン、および/またはエスクリン代謝活性を有する;
(9)アルカリフォスファターゼ活性、エステラーゼ活性、エステラーゼリパーゼ活性、ロイシンアリルアミダーゼ活性、α-キモトリプシン活性、酸性フォスファターゼ活性、ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性、アルギニンジヒドロラーゼ活性、クエン酸分解活性、トリプトファンデアミナーゼ活性、エスクリン加水分解活性、および/またはゼラチナーゼ活性を有する。
(10)ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートの分解能を有する。
(付記11)
バチルス科(Bacillaceae)に属し、
16S rRNA遺伝子として、下記(R)の塩基配列からなる遺伝子を含む、付記10に記載の微生物:
(R)下記(R1)、(R2)、または(R3)の塩基配列
(R1)配列番号1に示す塩基配列;
(R2)配列番号1に示す塩基配列において、1~18個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列;
(R3)配列番号1に示す塩基配列において、98.72%以上の同一性を有する塩基配列。
(付記12)
バチルス科(Bacillaceae)に属し、
配列番号2で示す塩基配列
に対して、ANI値82%以上有するゲノムDNAを含む、付記10または11に記載の微生物。
<組成物>
(付記13)
付記1から12のいずれかに記載の微生物を含む、生分解性プラスチックの分解に用いるための組成物。
(付記14)
前記生分解性プラスチックは、ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートを含む、付記13に記載の組成物。
<方法>
(付記15)
付記1から12のいずれかに記載の微生物と、生分解性プラスチックとを接触させ、前記微生物により前記生分解性プラスチックを分解する工程を含む、生分解性プラスチックの処理方法。
(付記16)
前記生分解性プラスチックは、ポリ乳酸および/またはポリブチレンアジペートテレフタレートを含む、付記15に記載の処理方法。
(付記17)
前記分解を、25~55℃の温度下で実施する、付記15または16に記載の処理方法。
(付記18)
前記分解を、pH6~10の条件下で実施する、付記15から17のいずれかに記載の処理方法。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本開示によれば、生分解性プラスチック、特に、ポリ乳酸(PLA)またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を分解可能な新規微生物を提供できる。このため、本発明は、例えば、廃棄物処理等の分野において、極めて有用といえる。
【要約】
【課題】 生分解性プラスチック、特に、ポリ乳酸(PLA)またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を分解可能な新規微生物を提供する。
【解決手段】 本開示の微生物は、バチルス科(Bacillaceae)に属し、
受託番号NITE BP-04083で寄託されている。
【選択図】
図3
【配列表】