(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ及び電動工具
(51)【国際特許分類】
H02K 3/52 20060101AFI20240816BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H02K3/52 E
H02K3/50 A
(21)【出願番号】P 2020056651
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
(72)【発明者】
【氏名】北村 孝太
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082710(WO,A1)
【文献】特開2017-188981(JP,A)
【文献】実開昭54-066103(JP,U)
【文献】特開2014-143858(JP,A)
【文献】特開2013-207867(JP,A)
【文献】特開2017-229124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/52
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に配置された複数相のコイル相を有するインナーロータ型のブラシレスモータであって、
前記複数相のコイル相をスイッチング回路に接続する複数の端子部を有し、
前記複数の端子部は、前記複数相のコイル相の
内接円よりも内側に配置され、
前記複数の端子部の各々は、前記複数相のコイル相のうち2つのコイル相のコイル端子を挟み込んで接続する配線接続部を備え、
前記複数の端子部の前記配線接続部は、前記複数相のコイル相の前記内接円よりも内側に配置され、
前記複数の端子部は、前記スイッチング回路のスイッチ素子が実装されている駆動基板に設けられた孔に、貫通する、
ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記複数の端子部のそれぞれに一対一に対応し、前記複数の端子部のうち対応する端子部を保持する複数の保持部材を、更に備える、
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
ヨーク部、及び前記ヨーク部の内周面から突出し、前記複数相のコイル相が一対一に設けられた複数のティース部を有するステータコアと、
前記複数相のコイル相、及び前記複数相のコイル相に電流を流すために設けられた前記複数
相のコイル相に一対一に対応する複数のコイル端子を有するコイル部と、を含むステータと、
前記ヨーク部の中心軸を回転軸とし、前記ステータコアの内側において、前記複数のティース部と間隔をあけて配置されたロータと、
前記ステータコアの回転軸方向の端面に固定されたインシュレータと、を更に備え、
前記複数の保持部材は、前記インシュレータに保持される、
請求項2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
前記複数の保持部材は、前記インシュレータと一体に形成されている、
請求項3に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
前記複数のティース部は、分割可能に構成されている、
請求項3又は4に記載のブラシレスモータ。
【請求項6】
前記複数の端子部のそれぞれは、前記複数のティース部のうち隣接する一対のティースの間に存在する、
請求項3~5のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【請求項7】
回転軸方向において前記複数の保持部材と前記ロータとの間に、前記複数の保持部材に対向して前記ロータの回転角度を検出するセンサ基板が配置される、
請求項3~6のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【請求項8】
前記複数の保持部材は、転動する軸受を更に保持する、
請求項2~7のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【請求項9】
前記複数の端子部のそれぞれは、前記複数相のコイル相で囲まれた内側から、出力軸の先端とは反対方向に突出する、
請求項1~8のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータを収容するハウジングと、を備えた、
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にブラシレスモータ及び電動工具に関し、より詳細には冷却機構を有するブラシレスモータ及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機の冷却機構が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、モータケース内にロータとステータとを配置し、これらロータおよびステータの少なくとも一方に冷却風を導くモータ冷却風路をモータケースに形成する。また、モータケースのロータ回転軸方向一側に駆動回路が設けられたホルダ部材を組み付け、このホルダ部材の駆動回路に冷却風を導く回路冷却風路を形成する。この回路冷却風路とモータ冷却風路とを連通させ、これら冷却風路の連通路にロータと一体的に回転して各冷却風路に冷却風を生じさせるファンを配置している。
【0004】
特許文献1の電動機の冷却装置によると、電動機と回路とを組み付け、電動機自体の冷却と駆動回路との冷却とを全体としての大型化を招くことなく、また、少ない部品点数で効率的に行なえる電動機を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷却風は、ロータとステータとの間の隙間を通過するのみで、電流が流れることにより発熱するコイルを直接冷却することができず、十分な冷却効果を上げることができない。
【0007】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、コイルの冷却効率を高めることができるブラシレスモータ及び電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るブラシレスモータは、回転軸を中心に配置された複数相のコイル相を有するインナーロータ型のブラシレスモータであって、前記複数相のコイル相をスイッチング回路に接続する複数の端子部を有する。前記複数の端子部は、前記複数相のコイル相の内接円よりも内側に配置されている。前記複数の端子部の各々は、前記複数相のコイル相のうち2つのコイル相のコイル端子を挟み込んで接続する配線接続部を備える。前記複数の端子部の前記配線接続部は、前記複数相のコイル相の前記内接円よりも内側に配置される。前記複数の端子部は、前記スイッチング回路のスイッチ素子が実装されている駆動基板に設けられた孔に、貫通する。
【0009】
本開示の一態様に係る電動工具は、前記ブラシレスモータと、前記ブラシレスモータを収容するハウジングと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、コイルの冷却効率を高めることができるブラシレスモータ及び電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動工具を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、同上のブラシレスモータとハウジングを説明する模式図である。
【
図3】
図3は、同上のブラシレスモータを説明する模式図である。
【
図4】
図4は、同上のブラシレスモータの内部構造を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、同上のブラシレスモータの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、同上のブラシレスモータの上面図である。
【
図7】
図7は、同上のブラシレスモータのA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する各実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、各実施形態及び変形例に限定されない。これらの実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(実施形態1)
以下、本実施形態に係るブラシレスモータ1及び電動工具10について、
図1~
図7を用いて説明する。
【0014】
(1)概要
電動工具10は、
図1及び
図2に示すように、ブラシレスモータ1と、ブラシレスモータ1を収容するハウジング11と、を備える。また、
図1に示すように、電動工具10は、電源101と、駆動伝達部102と、出力部103と、チャック104と、先端工具105と、トリガボリューム106と、制御回路107と、を更に備える。すなわち、電動工具10は、先端工具105をブラシレスモータ1の駆動力で駆動する工具である。
【0015】
ブラシレスモータ1は、先端工具105を駆動する駆動源である。電源101は、ブラシレスモータ1を駆動する電流を供給する直流電源である。電源101は、例えば、1又は複数の2次電池を含む。駆動伝達部102は、ブラシレスモータ1の出力(駆動力)を調整して出力部103に出力する。出力部103は、駆動伝達部102から出力された駆動力で駆動(例えば回転)される。チャック104は、出力部103に固定されており、先端工具105が着脱自在に取り付けられる。先端工具105(ビット)は、例えば、ドライバ、ソケット又はドリルである。各種の先端工具105のうち用途に応じた先端工具105が、チャック104に取り付けられて用いられる。これにより、電動工具10の先端工具105は回転する。
【0016】
トリガボリューム106は、ブラシレスモータ1の回転を制御するための操作を受け付ける。トリガボリューム106に対する操作により、ブラシレスモータ1のオンとオフが切替可能である。ブラシレスモータ1がオフ状態時に、トリガボリューム106が引き込まれることにより、ブラシレスモータ1の状態がオフ状態からオン状態に切り替えられる。ブラシレスモータ1がオン状態時に、トリガボリューム106に対する引き込み操作を止めることにより、ブラシレスモータ1の状態がオン状態からオフ状態に切り替えられる。また、トリガボリューム106を引き込む操作の操作量で、出力部103の回転速度、つまりブラシレスモータ1の回転速度が調整可能である。制御回路107は、トリガボリューム106に入力された操作に応じて、ブラシレスモータ1を回転又は停止させ、また、ブラシレスモータ1の回転速度を制御する。この電動工具10では、先端工具105がチャック104に取り付けられる。そして、トリガボリューム106への操作によってブラシレスモータ1の回転速度が制御されることで、先端工具105の回転速度が制御される。
【0017】
なお、本実施形態の電動工具10はチャック104を備えることで、先端工具105が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具105が交換可能である必要は無い。例えば、電動工具10は、特定の先端工具105のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0018】
(2)構成
図2~
図7を参照して、ブラシレスモータ1の構成について説明する。ブラシレスモータ1は、一例として、6極9スロットの3相ブラシレスモータである。極とは、ロータ2の永久磁石21の極数を意味し、N極とS極とが一対で2極である。また、スロット数は、コイル32の数を意味している。3相モータとは、120度間隔で独立したコイルが3個あるモータのことである。
【0019】
ブラシレスモータ1は、インナーロータ型のブラシレスDCモータである。ブラシレスモータ1は、
図5に示すように、ロータ2と、ステータ3と、センサ基板4と、インシュレータ5(コイル枠)と、基板6と、を備える。また、ブラシレスモータ1は、第1ベアリング14と、第2ベアリング16と、ファン15と、複数相(本実施形態では3相)のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3と、複数の端子部8と、複数の保持部材507と、を更に備える。
【0020】
(2-1)ハウジング
ハウジング11は、
図2に示すように、ブラシレスモータ1を収容する外筒である。ハウジング11は、回転軸C1を中心とした円筒状である。ハウジング11は、第1筐体114と、第2筐体115と、を有する。ハウジング11は、排気口12と、吸気口13と、を備える。吸気口13は、ブラシレスモータ1のファン15の動作に従って、ブラシレスモータ1のコイル32を空冷するために外部から空気を吸気する孔である。排気口12は、吸気した空気を熱とともに排気する孔である。空気は第2基板側からファン15側へと流れる。
【0021】
(2-2)ロータ
ロータ2は、円筒状のロータコア22と、複数(
図5では6つ)の永久磁石21と、出力軸20と、を備える。出力軸20は、ロータコア22と、回転軸C1を同軸として、ロータコア22の内部に保持されている。複数の永久磁石21は、ロータコア22に穿たれた複数の孔23にそれぞれ嵌合する。複数の永久磁石21は、ロータコア22の中心を囲む多角形(
図5では六角形)のように配置されている。
【0022】
ロータコア22の形状は、ロータコア22の回転軸Cの方向から見て円状であり、ロータコア22の中心とは当該円の中心に相当する。
【0023】
ロータコア22は、複数の鋼板を含んでいる。ロータコア22は、複数の鋼板を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板は、磁性材料(例えば、ケイ素鋼板)により形成されている。
【0024】
ロータコア22の内側には、出力軸20が保持されている。
図5に示すように、ロータコア22は、出力軸20が通される軸孔221を有している。ロータコア22は、出力軸20とともにステータ3に対して回転可能であり、ステータ3の複数のコイル32に電流が流れることにより発生する磁界により回転する。つまり、ロータコア22は、永久磁石21を有し、永久磁石21による磁界とステータ3のコイル32に電流が流れることにより発生する磁界とで回転し、発生するトルクを出力軸20に伝える。ロータコア22の材料は、例えば、鉄である。ロータコア22の鉄心は、例えば、ケイ素が混入されたケイ素鋼、パーマロイ、フェライトが用いられる。また、ロータコア22は、発生するトルクを出力軸20に伝えるために高強度が求められることから、鉄、ニッケル、銅、炭素等の合金が使用されることもある。
【0025】
永久磁石21の各々は、例えば、ネオジム磁石である。永久磁石21の各々の周方向の2つの磁極は、ロータコア22の周方向に並んでいる。永久磁石21の各々は、径方向に着磁されている。ロータコア22の周方向において隣接する2つの永久磁石は、それぞれ異なる極が来るように配置されている。つまり、複数の永久磁石21の周方向の外周には磁石のN極とS極が交互に配置される。
【0026】
(2-3)ステータ
ステータ3は、複数(図示例では、9つ)のコイル32と、ステータ鉄心34と、インシュレータ5と、を備える。ステータ3は、複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3、及び複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3に電流を流すために設けられた複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3に一対一に対応する複数のコイル端子801を有するコイル部9と、を含む。複数のコイル32は、コイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3に一対一に対応している。本実施形態では、コイル相W1を基準として左回りに、コイル相W1、V1,U1,W2,V2,U2,W3,V3,U3の順の配置されている。
【0027】
ロータ2は、ヨーク部30の中心軸を回転軸C1とし、ステータコア31の内側において、複数のティース部35と間隔をあけて配置されている。
【0028】
ステータ鉄心34は、ステータコア31と、ヨーク部30と、を有している。ヨーク部30は、ステータコア31に取り付けられる。ステータコア31は、
図5に示すように、円筒状の連結部33と、複数(
図6では9つ)のティース部35と、を有している。連結部33の内側の空間36には、ロータ2が配置される。複数のティース部35の各々は、胴部351と、2つの先端片352と、を含んでいる。胴部351は、連結部33から連結部33の径方向において、外向きに突出している。2つの先端片352は、胴部351の先端側の部位から胴部351の突出方向と交差する方向に延びている。
【0029】
連結部33は、少なくとも一部の隣り合うティース部35を連結する。
【0030】
複数のティース部35は、ヨーク部30の内周面から突出し、複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3が一対一に設けられている。
【0031】
複数のティース部35には、複数のコイル32が、各々、インシュレータ5を介して配置される。つまり、胴部351には、インシュレータ5を介してコイル32が巻かれる。連結部33は、コイル32よりもロータ2の側に位置している。すなわち、コイル32とロータ2との間に連結部33が位置している。
【0032】
複数のティース部35は、分割可能に構成されていてもよい。複数のティース部35が分割できることにより、分割された状態でコイル32を巻回し、後からステータコア31を形成することができる。そのため、巻線の占積率が向上し、銅損が低下し、ブラシレスモータ1の効率が向上する。ここで、占積率とは、銅線を巻く部分に対する銅線の占める面積のことを意味している。
【0033】
2つの先端片352は、コイル32が胴部351から脱落することを抑制する抜け止めとして設けられている。つまり、胴部351の先端側にコイル32が移動しようとする場合に、コイル32が2つの先端片352に引っ掛かることで、コイル32の脱落を抑制できる。
【0034】
ステータ3のステータ鉄心34のステータコア31は、複数の鋼材を含む。ステータコア31は、複数の鋼板を厚さ方向に蓄積して形成されている。各鋼板は、磁性材料より形成され、例えば、ケイ素鋼板である。
【0035】
図5に示すように、連結部33の形状は、円筒状である。連結部33の軸方向は、複数の鋼板の厚さ方向と一致している。連結部33は、周方向において連続している。言い換えると、連結部33は、周方向において途切れることなく繋がっている。
【0036】
図5に示すように、複数のティース部35の胴部351の形状は、直方体状である。連結部33とティース部35とが一体に形成されている。胴部351は、連結部33から連結部33の径方向において外向きに突出している。複数のティース部35の胴部351は、連結部33の周方向において等間隔に設けられている。
【0037】
2つの先端片352は、胴部351の先端側の部位から、胴部351の突出方向と交差する方向に延びている。より詳細には、2つの先端片352は、胴部351の先端側の部位において、連結部33の周方向の両側に設けられている。そして、2つの先端片352は、連結部33の周方向に延びている。
【0038】
ヨーク部30は、複数の鋼板を含む。ヨーク部30は、複数の鋼板を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板は、磁性材料により形成されており、例えば、ケイ素鋼板である。ヨーク部30の形状は、円筒状である。ヨーク部30は、複数のティース部35に取り付けられ、複数のティース部35を囲んでいる。
【0039】
ヨーク部30は、
図5に示すように、複数(9つ)の嵌合部301をヨーク部30の内周に有している。ヨーク部30は、ティース部35と同数の嵌合部301を有している。複数の嵌合部301の各々は、ヨーク部30の内周面に設けられた窪みである。複数の嵌合部301は、複数のティース部35と、一対一で対応している。複数の嵌合部301の各々と、複数のティース部35のうちこの嵌合部301と対応するティース部35とは、少なくとも一方が連結部33の径方向に移動することで嵌まり合う。これにより、ヨーク部30が複数のティース部35に取り付けられる。
【0040】
嵌合部301の各々には、ティース部35のうち2つの先端片352を含む部位が嵌め込まれる。そのため、ヨーク部30の周方向における各嵌合部301の長さは、胴部351から突出した2つの先端片352のうち一方の先端片352の突出先端と、他方の先端片352の突出先端との間の長さと等しい。なお、本明細書において「等しい」とは、複数の値が互いに完全に一致する場合に限定されず、許容される誤差の範囲内で異なっている場合をも含む。例えば、3%以内、5%以内、又は10%以内の誤差がある場合をも含む。
【0041】
ステータコア31にインシュレータ5が装着されコイル32が巻かれた状態で、ヨーク部30は、例えば、焼嵌めにより複数のティース部35に取り付けられる。すなわち、ヨーク部30を加熱して径方向に膨張させた状態で、ヨーク部30の内側にステータコア31を配置する。これにより、ヨーク部30の内面は、複数のティース部35との間に僅かに隙間を空けて連結部33の径方向における複数のティース部35の先端に対向する。その後、ヨーク部30の温度が低下してヨーク部30が収縮すると、ヨーク部30の内面が複数のティース部35の先端に接する。つまり、ヨーク部30の収縮に伴って複数の嵌合部301がヨーク部30の径方向内向きに移動することにより、複数の嵌合部301と複数のティース部35とが嵌まり合う。ヨーク部30は、複数のティース部35に対してヨーク部30の径方向内向きの接圧を加えている。
【0042】
インシュレータ5は、電気絶縁性を有する部材である。インシュレータ5は、例えば、ガラス繊維等のフィラーを約30重量%含む66ナイロン等の樹脂製である。
【0043】
インシュレータ5は、ステータコア31の回転軸方向Xの端面に固定されている。インシュレータ5は、ステータ3にセンサ基板4を固定している。これにより、ステータ3とセンサ基板4とを電気的に絶縁することができる。
【0044】
図5に示すように、インシュレータ5は、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52を含む。第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52は、例えば、ステータ3のステータ鉄心34とインサート成形されている。第1インシュレータ51と第2インシュレータ52とは、回転軸方向Xで並ぶように配置されている。
【0045】
第1インシュレータ51は、回転軸方向Xにおけるステータ鉄心34の一端側を被覆している。具体的には、第1インシュレータ51は、円環部505と、複数の被覆部506(本実施形態ではティース35と同数の9つ)と、を有する。円環部505の外径は、ステータ鉄心34の円筒状の連結部33の外径と略同一である。円環部505は、回転軸方向Xにおける連結部33とティース35との片側(例えば、回転軸方向Xにおける上側半分)を被覆している。被覆部506は、円環部505の周方向において内周面に等間隔で設けられている。
【0046】
コイル32は、被覆部506,511で被覆されたティース35に巻線が巻回されて形成されている。つまり、インシュレータ5は、出力軸20の回転軸方向Xと交差する方向を巻回軸とするコイル32が巻かれている。
【0047】
第2インシュレータ52は、回転軸方向Xにおけるステータ鉄心34のもう一端側を被覆している。具体的には、第2インシュレータ52は、円環部510と、複数の被覆部511(本実施形態ではティース35と同数の9つ)と、を有する。円環部510の外径は、ステータ鉄心34の円筒状の連結部33の外径と略同一である。回転軸方向Xにおける連結部33とティース35とのもう一方の片側を被覆している。被覆部511は、円環部510の周方向において内周面に等間隔で設けられている。
【0048】
コイル32は、9つのティース部35に対応して9つ備えられている。9つのコイル32は、互いに電気的に接続されている。コイル32は、出力軸20の回転軸方向Xと交差する方向を巻回軸とする。コイル32の各々を構成する巻線は、例えば、エナメル線である。この巻線は、線状の導体と、導体を覆う絶縁被覆と、を有している。
【0049】
コイル32は、連結部33より外側に位置している。すなわち、コイル32の内側(ロータ2側)に連結部33が位置している。
【0050】
9つのコイル32は、回転軸C1を中心に配置され、複数相のコイル相を有する。本実施形態のブラシレスモータ1は、3相ブラシレスモータであるので、複数相のコイル相は3相のコイル相で形成されている。具体的には、3相としてU相、V相、W相から形成され、9つのコイル32は、U1~U3,V1~V3,W1~W3で形成されている。コイルU1に隣接してコイルV1は配置され、コイルV1に隣接してコイルW1は配置される。コイルW1に隣接してコイルU2は配置され、コイルU2に隣接してコイルV2は配置され、コイルV2に隣接してコイルW2は配置される。コイルW2に隣接してコイルU3は配置され、コイルU3に隣接してコイルV3は配置され、コイルV3に隣接してコイルW3は配置される。コイルW3はコイルU1と隣接している。先述した順に複数相のコイル相は回転軸C1を中心に配置されている。
【0051】
コイルU1~U3はそれぞれ接続され、U相コイルを形成する。コイルV1~V3はそれぞれ接続され、V相コイルを形成する。コイルW1~W3はそれぞれ接続され、W相コイルを形成する。
【0052】
ブラシレスモータ1は、スイッチング回路600に接続する複数(図示例では3つ)の端子部8を有する。複数の端子部8は、複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3の外接円C2よりも内側(中心軸側)に配置されている。ここで、外接円とは、回転軸C1を中心に配置された複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3のコイル32の回転軸C1から見て外側を結んだ多角形に外接する円のことである。複数の端子部8は、複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3の内接円C3よりも内側(中心側)に配置されていることがより望ましい。ここで、内接円とは、回転軸C1を中心に配置された複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3のコイル32の回転軸C1から見て
内側を結んだ多角形に内接する円のことである。本実施形態では、コイル32は3相のコイル相を有し、各コイル相は接続されている。具体的には、先述したように、各U1~U3、各V1~V3、各W1~W3はそれぞれ接続されている。
図6に示すように、3相のコイル相は、コイルU1、コイルV1、コイルW1、コイルU2、コイルV2、コイルW2からそれぞれコイル端子801が1本ずつ、合計6本のコイル端子801を有する。ここで、コイル端子801とは、巻回されているコイル32の断端を意味している。コイルU1とコイルV1と、コイルW1とコイルU2と、コイルV2とコイルW2と、がそれぞれ電気的に接続されることにより、複数(
図6では3つ)の端子部8を形成している。
【0053】
複数の端子部8のそれぞれに一対一に対応し、複数の端子部8のうち対応する端子部8を保持する複数(
図6では3つ)の保持部材507を、更に備えている。複数の保持部材507は、電気絶縁性を有するインシュレータ5に保持されている。本実施形態では、
図5に示すように、複数の保持部材507とインシュレータ5とは一体に形成されている。複数の保持部材507の各々は、複数の端子部8の各々と一対一に対応して嵌合する。複数の保持部材507は、
図5に示すように、凹部として形成されている。複数の保持部材507と嵌合する複数の端子部8のそれぞれは、複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3で囲まれた内側において、インシュレータ5から出力軸の先端とは反対方向に突出している。複数の端子部8のそれぞれは、
図6に示すように、複数のティース部35のうち隣接する一対のティース35の間に配置されている。これは、製造において、隣接する一対のティース35の間が最もスペースが取れることから、作業がしやすくなり、作業効率が良くなるためである。
【0054】
複数の端子部8の各々は、
図6及び
図7に示すように、2つの保持部805と、配線接続部804と、突出部802と、接合部803と、を備えている。2つの保持部805がインシュレータ5の保持部材507と嵌合することによって、複数の端子部8の各々はインシュレータ5に保持されている。
図6に示すように、電気的に接続される、コイルU1とコイルV1と、コイルW1とコイルU2と、コイルV2とコイルW2と、はそれぞれコイル端子801を1本ずつ備えている。配線接続部804は、接合部803とともに、接続される2本のコイル端子801を挟み込むことにより、コイル同士は電気的に接続される。具体的には、3つの端子部8のうち1つの目の端子部8の配線接続部804は、接合部803とともに、U1相のコイル端子801とV1相のコイル端子801とを挟み込む。2つの目の端子部8の配線接続部804は、接合部803とともに、W1相のコイル端子801とU2相のコイル端子801とを挟み込む。3つの目の端子部8の配線接続部804は、接合部803とともに、V2相のコイル端子801とW2相のコイル端子801とを挟み込む。コイル端子801と端子部との接続方法ははんだ付け等様々な手法が考えられるが、ヒュージングが望ましい。また、はんだ付けとヒュージングを合わせた接続方法であってもよい。また、接続方法は、はんだ付けでもよい。突出部802は、インシュレータ5から出力軸の先端とは反対方向へ突出している。
図7に示すように、突出部802は、接合部803と接合することで、配線接続部804においてコイル端子801を保持している。
【0055】
本実施形態では、複数の保持部材507とインシュレータ5とは一体に形成されているが、複数の保持部材507とインシュレータ5とは別々に形成されていてもよい。
【0056】
インシュレータ5(第2インシュレータ52)は、第2ベアリング(軸受)16を保持している。第2インシュレータ52は、ベアリング受け17を有している。複数の保持部材507とインシュレータ5とが別体として形成されている場合には、第2インシュレータ52が第2ベアリング16を保持し、複数の保持部材507とインシュレータ5とが一体として形成されている場合には複数の保持部材507が第2ベアリング16を保持する。本実施形態では、複数の保持部材507とインシュレータ5とが一体に形成されているので、軸受16は、複数の保持部材507により保持されていると言える。
【0057】
(2-4)センサ基板
複数の保持部材507とインシュレータ5とが一体として形成されている場合には、複数の保持部材507とロータ2との間にはセンサ基板4が配置されている。センサ基板4は、複数の保持部材507に対向してロータ2の回転角度を検出する。つまり、センサ基板4は、ロータ2の回転位置を検出するための回路基板である。センサ基板4は、回転軸方向Xにおいてロータ2の第2インシュレータ52側で、ロータ2の端面と平行に配置されている。センサ基板4には、センサ素子が実装されている。センサ素子は、例えば、ホール素子又は角度センサ(GMR)等である。センサ素子は、ロータ2の回転位置を検出する素子である。
【0058】
回転軸方向Xにおいて、複数の保持部材507とセンサ基板4とロータ2とが並んでおり、センサ基板4は複数の保持部材507とロータ2との間に配置されている。
【0059】
(2-5)基板
基板6は、駆動基板60と、放熱シート61と、ポッティング62と、放熱台63と、を含んでいる。駆動基板60は、
図3及び
図4に示すように、スイッチングFET(Field Effect Transistor)600と、大容量ツェナーダイオード601と、3つの孔602と、を備えている。スイッチングFET600は、コイル32の各コイルU1~U3、V1~V3、W1~W3に接続され、各コイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3の電流の流れる方向及び通電の入り切りを制御する。このようなスイッチ回路の各スイッチ素子は、例えばパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistor)を用いて構成することができる。PWM制御回路は、PMW制御されたパルス繰り返し周波数で、スイッチ回路の各スイッチ素子の入り切り動作を繰り返す。演算処理回路は、通電切替タイミングと、回転速度指令と、を含む信号をPWM制御回路に伝達する。大容量ツェナーダイオード601は、サージ電流を吸収するための素子である。3つの孔602は、3つの端子部8と嵌合する。つまり、
図4に示すように、3つの端子部8は、駆動基板60に設けられた孔602に貫通している。
【0060】
放熱シート61は、発熱するスイッチングFET基板からの放熱を促す。ポッティング62により、放熱台63と、放熱シート61と、駆動基板60とは結合している。
【0061】
ポッティング62は、振動から駆動基板60を保護する場合、湿度や粉塵等の汚れから駆動基板60を保護する場合等に用いられる。ポッティング62の材料は、例えば、ウレタン樹脂である。放熱台63は、駆動基板60を含めたポッティング62からの放熱を促す。
【0062】
(2-6)ベアリング
ブラシレスモータ1は、第1ベアリング14と第2ベアリング16との2つの軸受(ベアリング)により出力軸20を回転可能に支持する。第1ベアリング14は、ファン15の窪み部に配置されている。第2ベアリング16は、インシュレータ5の第2インシュレータ52のベアリング受け17に配置されている。第1ベアリング14と第2ベアリング16とは、内輪が出力軸20に固定され、外輪はブラシレスモータ1の本体に固定される。第1ベアリング14と第2ベアリング16との内輪は、ロータ2の回転とともに出力軸20と一緒に回転する一方で、第1ベアリング14と第2ベアリング16とのリテーナーに保持されたボールと潤滑油をシールしていることにより、回転は滑らかに行いながら第1ベアリング14と第2ベアリング16との外輪は出力軸20を保持することができる。第1ベアリング14と第2ベアリング16との主な材料は、例えば、高炭素クロム鋼、中炭素鋼、窒化シリコンセラミックスである。
【0063】
(2-7)ファン
ファン15は、ブラシレスモータ1のステータ3及び駆動基板を空気により冷却するために空気の流れを起こす。ファン15は、回転することで、ハウジング11の内側へ空気を吸気し、吸気した空気を熱とともに排気口12から排気する。
【0064】
ファン15は、ファン15の中央部において、第1ベアリング14を収容する窪み部を有する。ファン15は、窪み部からファン15の径方向に沿って延びる羽根部150が設けられている。
【0065】
(3)動作
各コイルU1~U3、V1~V3、W1~W3には、通電によって電流が流れると、磁界が発生する。各スイッチ回路は、電流の流れる向き、通電の入り切りを切替えることにより、発生する磁界の向き、大きさを変えることができる。また、各スイッチ回路は、ロータ2の回転位置に応じて駆動電流を供給する。このことにより、ロータ2は、回転位置に応じた駆動力を得ることができる。
【0066】
コイルU1~U3,V1~V3,W1~W3は、回転軸Cを中心として、同一円周上に、互いに等しい角度間隔で配置される。本実施形態では、コイル32は9つのコイルU1~U3,V1~V3,W1~W3で構成されているため、角度間隔は40°である。コイルU1~U3は、それぞれ互いに120°の角度間隔で配置される。コイルV1~V3は、それぞれ互いに120°の角度間隔で配置される。コイルW1~W3は、それぞれ互いに120°の角度間隔で配置されている。
図5に示すように、コイルU1とコイルV1は隣接しており、コイルV1とコイルW1とは隣接している。
【0067】
ブラシレスモータ1は、9スロットであるので、角度間隔は上述したように40°であるが、ロータ2が6極であるので、コイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3は、ロータ2が20°回転する毎に通電を切替えることにより、ロータ2の回転を維持している。つまり、スイッチングFET回路がコイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3のそれぞれの電流の大きさ及び向きを変えることにより、ロータ2は回転している。
【0068】
コイル32は通電されることにより発熱する。発熱しているコイル32は、ブラシレスモータ1の回転と同期して回転するファン15により空冷される。すなわち、吸気口13から取り込まれた空気は、排気口12から排出されるときに排熱している。本実施形態では、
図6に示すように、複数(
図6では3つ)の端子部8は、複数相(
図6では3相)のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3の形成する内接円C3よりも内側に設けられている。そのため、ファン15による冷却風は3つの端子部8に阻害されることなくコイル32を冷却することができる。このため、ジュール熱によってコイル32の抵抗が上昇することを抑制することができる。その結果として、ブラシレスモータ1は高効率となる。また、ファン15による冷却風は、3つの端子部8に阻害されることなくコイル32を冷却することができるために、3つの端子部8が存在することによるステータコア31の場所による温度ばらつきを抑えることができる。
【0069】
(4)利点
複数の端子部8が複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3の外接円よりも内側に配置されることで、コイル32の冷却効率を高めることができるブラシレスモータ1及び電動工具10を提供することができる。
【0070】
コイル32の冷却効率を高めることで、ジュール熱による発熱が抑制されることでコイル32の抵抗が低減し、ブラシレスモータ1の効率が向上する。
【0071】
(5)変形例
以下に、変形例について列記する。なお、以下に説明する変形例は、上記実施形態と適宜組み合わせて適用可能である。
【0072】
実施形態1では、基板6において放熱シート61を含む構成としたが、この構成に限定されない。放熱シート61はない構成であってもよい。
【0073】
実施形態1では、複数の端子部8のそれぞれは、複数のティース部35のうち隣接するティース35の間に存在する構成としたが、この構成に限定されない。隣接するティース35の間に存在することはより好適ではあるものの、隣接するティース35の間に設けられなくてもよい。
【0074】
実施形態1では、複数の端子部8は、複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3の内接円よりも内側に配置されている構成としたが、この構成に限定されない。複数の端子部8は、複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3の外接円よりも内側に配置されていればよい。例えば、複数相のコイル相U1~U3,V1~V3,W1~W3の回転軸方向Xに沿って直上に配置されていてもよい。
【0075】
(まとめ)
以上、説明したように、第1の態様に係るブラシレスモータ(1)は、回転軸(C1)を中心に配置された複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)を有するインナーロータ型のブラシレスモータである。ブラシレスモータ(1)は、複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)をスイッチング回路(600)に接続する複数の端子部(8)を有する。複数の端子部(8)は、複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)の外接円(C2)よりも内側に配置されている。
【0076】
この構成によると、複数の端子部(8)が複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)の外接円(C2)よりも内側に配置されることで、コイル(32)の冷却効率を高めることができるブラシレスモータ(1)及び電動工具(10)を提供することができる。そのため、ジュール熱による発熱が抑制され、ブラシレスモータ(1)の効率が向上する。
【0077】
第2の態様に係るブラシレスモータ(1)は、第1の態様において、複数の端子部(8)のそれぞれに一対一に対応し、複数の端子部(8)のうち対応する端子部(8)を保持する複数の保持部材(507)を、更に備える。
【0078】
この構成によると、複数の保持部材(507)により、複数の端子部(8)は安定してインシュレータ(5)に保持できるようになる。
【0079】
第3の態様に係るブラシレスモータ(1)は、第2の態様において、ヨーク部(30)と、ステータコア(31)と、ステータ(3)と、インシュレータ(5)と、を更に備える。ステータコア(31)は、ヨーク部(30)の内周面から突出し、複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)が一対一に設けられた複数のティース部(35)を有する。ステータ(3)は、複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)、及び複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)に電流を流すために設けられた複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)に一対一に対応する複数のコイル端子(801)を有するコイル部(9)と、を含む。ロータ(2)は、ヨーク部(30)の中心軸を回転軸C1とし、ステータコア(31)の内側において、複数のティース部(35)と間隔をあけて配置されている。インシュレータ(5)はステータコア(31)の回転軸方向(X)の端面に固定されている。複数の保持部材(507)は、インシュレータ(5)に保持される。
【0080】
この構成によると、複数の保持部材(507)がインシュレータ(5)に保持されることで、複数のコイル端子(801)が安定して設置することができる。
【0081】
第4の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第3の態様において、複数の保持部材(507)は、インシュレータ(5)と一体に形成されている。
【0082】
この構成によると、複数の保持部材(507)はインシュレータ(5)と一体に形成されることで、強度を一定に保つことができる。また、製造上、部品点数が減ることで、不良率の低減につなげることができる。
【0083】
第5の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第3又は第4の態様において、複数のティース部(35)は、分割可能に構成されている。
【0084】
この構成によると、複数のティース部(35)が分割可能に構成されることで、巻線の占積率が向上する。このため、高効率なモータを形成することができる。
【0085】
第6の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第2~第5のいずれかの態様において、複数の保持部材(507)は、転動する軸受(16)を更に保持する。
【0086】
この構成によると、複数の保持部材(507)が軸受(16)を更に保持することによって、ブラシレスモータ(1)の内部で軸受(16)を受けることが可能になる。
【0087】
第7の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第3~第5のいずれかの態様において、回転軸方向(X)において複数の保持部材(507)とロータ(2)との間に、複数の保持部材(507)に対向してロータ(2)の回転角度を検出するセンサ基板(4)が配置される。
【0088】
この構成によると、センサ基板(4)を安定して設置することができる。
【0089】
第8の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第1~第7のいずれかの態様において、複数の端子部(8)のそれぞれは、複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)で囲まれた内側から、出力軸(20)の先端とは反対方向に突出する。
【0090】
この構成によると、複数の端子部(8)のそれぞれが複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)で囲まれた内側から、出力軸(20)の先端とは反対方向に突出することで、複数の端子部(8)とスイッチング回路(600)との接続距離を短くすることができる。
【0091】
第9の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第1~第8のいずれかの態様において、複数の端子部(8)のそれぞれは、複数のティース部(35)のうち隣接する一対のティース(35)の間に存在する。
【0092】
この構成によると、コイル(32)とスイッチング回路(600)とを接続する工程において、設備(製造装置)を用いて製造する場合には、設備が入るスペースがあった方が製造しやすい。巻線が巻いているところと巻いているところは、一番スペースがあるので、そこに端子があれば作業がしやすい。
【0093】
第10の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第1~第9のいずれかの態様において、複数の端子部(8)は、複数相のコイル相(U1~U3,V1~V3,W1~W3)の内接円(C3)の内側に存在する。
【0094】
この構成によると、複数の端子部(8)が内接円(C3)の内側に存在することで、ステータ(3)の外周部に冷却風を阻害する要因はなくなり、コイル(32)の冷却効率が向上する。コイル(32)の冷却効率が向上すると、ジュール熱による発熱が抑制され、ブラシレスモータ(1)の効率が向上する。
【0095】
第11の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第1~第10のいずれかの態様において、複数の端子部(8)は、駆動基板(60)に設けられた孔(602)に貫通する。
【0096】
この構成によると、複数の端子部(8)と、駆動基板(60)に設けられた複数のスイッチング回路(600)と、が近接し、配線長を短くすることができる。
【0097】
第12の態様に係る電動工具(10)は、第1~第11のいずれかの態様のブラシレスモータ(1)と、ブラシレスモータ(1)を収容するハウジング(11)と、を備える。
【0098】
この構成によると、複数の端子部(8)が存在することによるステータコア(31)の場所による温度ばらつきを抑えることができるブラシレスモータ(1)を採用することで、高効率なモータを備えた電動工具(10)を提供することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ブラシレスモータ
2 ロータ
3 ステータ
5 インシュレータ
507 保持部材
9 コイル部
10 電動工具
11 ハウジング
16 第2ベアリング(軸受)
20 出力軸
30 ヨーク部
31 ステータコア
32 コイル部
35 ティース部
60 駆動基板
8 端子部
600 スイッチング回路
602 孔
C1 回転軸
C2 外接円
C3 内接円
U1,U2,U3,V1,V2,V3,W1,W2,W3 コイル相