(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】充電システム、充電方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240816BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240816BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240816BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/10 B
H02J7/10 F
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2020064787
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】三輪 達哉
(72)【発明者】
【氏名】太田 佑
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-166058(JP,A)
【文献】特開2010-073656(JP,A)
【文献】特開2005-045950(JP,A)
【文献】特表2013-537792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電する充電システムであって、
充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する取得部と、
前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2充電形態において、前記取得部が取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止
し、
前記所定の条件は、前記取得部が所定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される所定の基準値に基づいて決定される、
充電システム。
【請求項2】
前記所定の条件とは、前記取得電圧の電圧値が
前記所定の基準値以下である、
請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後に、前記電池パックの異常の有無を判定する判定処理を実行し、前記判定処理で前記異常が無ければ、前記充電動作を再開する、
請求項1又は2に記載の充電システム。
【請求項4】
前記判定処理は、前記所定時間が経過した後において前記取得部が取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記異常が無いと判定する、
請求項3に記載の充電システム。
【請求項5】
前記規定の基準値は、前記取得部が規定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される、
請求項4に記載の充電システム。
【請求項6】
1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電する充電システムであって、
充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する取得部と、
前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2充電形態において、前記取得部が取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止し、
前記制御部は、前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後に、前記電池パックの異常の有無を判定する判定処理を実行し、前記判定処理で前記異常が無ければ、前記充電動作を再開し、
前記判定処理は、前記所定時間が経過した後において前記取得部が取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記異常が無いと判定し、
前記規定の基準値は、前記取得部が規定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される、
充電システム。
【請求項7】
前記電池パックは、電動工具用の電池パックである、
請求項1~6のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項8】
前記第1充電形態は、定電流制御方式の充電形態であり、
前記第2充電形態は、定電圧制御方式の充電形態である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項9】
1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電するための充電方法であって、
充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する取得ステップと、
前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる移行ステップと、
前記第2充電形態において、前記取得ステップで取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する停止ステップと、
を含
み、
前記所定の条件は、前記取得ステップで所定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される所定の基準値に基づいて決定される、
充電方法。
【請求項10】
1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電するための充電方法であって、
充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する取得ステップと、
前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる移行ステップと、
前記第2充電形態において、前記取得ステップで取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する停止ステップと、
前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後に、前記電池パックの異常の有無を判定する判定処理を実行し、前記判定処理で前記異常が無ければ、前記充電動作を再開する再開ステップと、
を含み、
前記判定処理は、前記所定時間が経過した後において前記取得ステップで取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記異常が無いと判定し、
前記規定の基準値は、前記取得ステップで規定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される、
充電方法。
【請求項11】
1以上のプロセッサに請求項9又は10に記載の充電方法を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電する充電システムであって、
充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する取得部と、
前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第2充電形態において、前記取得部が取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止し、
前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後において前記取得部が取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記充電動作を再開し、
前記所定の条件は、前記取得部が所定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される所定の基準値に基づいて決定される、
充電システム。
【請求項13】
1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電する充電システムであって、
充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する取得部と、
前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第2充電形態において、前記取得部が取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止し、
前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後において前記取得部が取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記充電動作を再開し、
前記規定の基準値は、前記取得部が規定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される、
充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、充電システム、充電方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、電池パックを充電する充電システム、充電方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動工具の二次電池(電池パック)を充電する充電器が記載されている。この充電器は、充電対象の二次電池に対して、最初は定電流で充電を行い(定電流充電)、充電電圧が予め定める電圧まで達した後は、その電圧を維持もしくは超えないように充電電流を制御する(定電圧充電)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池パックにおいては、例えば、劣化等によって内蔵される電池セルの自己短絡(内部短絡)等の異常が発生する場合がある。そのため、電池パックの充電に関して更なる信頼性の向上が望まれる場合がある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、電池パックの充電に関する信頼性の向上を図ることができる、充電システム、充電方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の充電システムは、1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電する。前記充電システムは、取得部と、制御部と、を備える。前記取得部は、充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。前記制御部は、前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。前記制御部は、前記第2充電形態において、前記取得部が取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。前記所定の条件は、前記取得部が所定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される所定の基準値に基づいて決定される。
本開示の別の一態様の充電システムは、1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電する。前記充電システムは、取得部と、制御部と、を備える。前記取得部は、充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。前記制御部は、前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。前記制御部は、前記第2充電形態において、前記取得部が取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。前記制御部は、前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後に、前記電池パックの異常の有無を判定する判定処理を実行し、前記判定処理で前記異常が無ければ、前記充電動作を再開する。前記判定処理は、前記所定時間が経過した後において前記取得部が取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記異常が無いと判定する。前記規定の基準値は、前記取得部が規定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される。
【0007】
本開示の一態様の充電方法は、1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電するための充電方法である。前記充電方法は、取得ステップと、移行ステップと、停止ステップと、を含む。前記取得ステップにて、充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。前記移行ステップにて、前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。前記停止ステップにて、前記第2充電形態において、前記取得ステップで取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。前記所定の条件は、前記取得ステップで所定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される所定の基準値に基づいて決定される。
本開示の別の一態様の充電方法は、1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電するための充電方法である。前記充電方法は、取得ステップと、移行ステップと、停止ステップと、再開ステップと、を含む。前記取得ステップにて、充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。前記移行ステップにて、前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。前記停止ステップにて、前記第2充電形態において、前記取得ステップで取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。前記再開ステップにて、前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後に、前記電池パックの異常の有無を判定する判定処理を実行し、前記判定処理で前記異常が無ければ、前記充電動作を再開する。前記判定処理は、前記所定時間が経過した後において前記取得ステップで取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記異常が無いと判定する。前記規定の基準値は、前記取得ステップで規定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される。
【0008】
本開示の一態様のプログラムは、1以上のプロセッサに上記のいずれかの充電方法を実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の一態様の充電システムは、1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電する。前記充電システムは、取得部と、制御部と、を備える。前記取得部は、充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。前記制御部は、前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。前記制御部は、前記第2充電形態において、前記取得部が取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。前記制御部は、前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後において前記取得部が取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記充電動作を再開する。前記所定の条件は、前記取得部が所定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される所定の基準値に基づいて決定される。
本開示の別の一態様の充電システムは、1又は複数の電池セルを有する電池パックを充電する。前記充電システムは、取得部と、制御部と、を備える。前記取得部は、充電中の前記電池パックにおける、端子間電圧又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。前記制御部は、前記端子間電圧又は前記セル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から前記第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。前記制御部は、前記第2充電形態において、前記取得部が取得した前記取得電圧が低下して、かつ前記取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。前記制御部は、前記充電動作を停止してから所定時間が経過した後において前記取得部が取得した前記取得電圧の電圧値が、規定の基準値以上である場合に、前記充電動作を再開する。前記規定の基準値は、前記取得部が規定の期間内に取得した前記取得電圧を基に算出される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電池パックの充電に関する信頼性の向上を図ることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る充電システム、及び電池パックの概略ブロック構成図である。
【
図2】
図2は、同上の充電システムにおける動作を説明するためのグラフである。
【
図3】
図3は、同上の充電システムにおける動作を説明するためのフローチャート図である。
【
図4】
図4は、同上の充電システム、及び電動工具の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
本実施形態に係る充電システム100は、
図1及び
図4に示すように、1又は複数(図示例では複数)の電池セル50を有する電池パック5を充電するシステムである。ここでは一例として、充電システム100は、その機能の全てが1台の充電装置1(筐体101内)に組み込まれているものとする。ただし、例えば充電システム100の一部の機能が、充電装置1の外部に設けられてもよい。
【0014】
また一例として、充電システム100の充電対象となる電池パック5は、電動工具6用の電池パックであることを想定する。電池パック5は、電動工具6の工具本体7(
図4参照)に着脱可能な第1装着部51を有している。ただし、本開示の充電システム100の機能は、電動工具以外の電気機器(例えば、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等の情報端末、カメラ、携帯型のオーディオ機器等)又は電動車両等用の電池パックを充電するシステムに適用されてもよい。
【0015】
ここで充電システム100は、
図1に示すように、取得部11と、制御部12と、を備えている。取得部11は、充電中の電池パック5における、端子間電圧V1又は各電池セル50のセル電圧を取得電圧として取得する。制御部12は、端子間電圧又はセル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。本実施形態では一例として、第1充電形態は、定電流制御方式の充電形態であり、第2充電形態は、定電圧制御方式の充電形態であることを想定する。
【0016】
制御部12は、第2充電形態において、取得部11が取得した取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。ここでいう「取得電圧」は、第2充電形態において取得された電圧であり、「取得電圧の低下」も、第2充電形態において起きる事象である。
【0017】
この構成によれば、第2充電形態において、取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作が停止される。そのため、電池パック5に内部短絡等の異常が発生しかけている状態のまま充電動作が継続されてしまう可能性が低減される。結果的に、充電システム100には、電池パック5の充電に関する信頼性の向上を図ることができる、という利点がある。
【0018】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る充電システム100(充電装置1)について、
図1~
図4参照しながら詳しく説明する。
【0019】
(2.1)全体構成
充電装置1(充電システム100)は、電動工具6の工具本体7に装着可能な電池パック5を充電するように構成される。すなわち、電池パック5は、電動工具6用の電池パックである。充電装置1は、その充電対象として、公称電圧が互いに異なる複数(種類)の電池パック5に対応可能である。各電池パック5は、公称電圧ごとに形状が異なる第1装着部51(
図4参照)を、筐体500の上面側に有している。また各電池パック5は、筐体500の下面側に、第2装着部52を有している。
図4は、充電装置1、工具本体7、及び電池パック5の側面図である。
【0020】
工具本体7は、把持部70、取付部71、及び胴部72を有している。把持部70及び胴部72は、工具本体7のハウジングを構成し、それらの内部には、モータ、モータの制御を行う工具制御部、モータの回転を減速する減速機構、及び、減速された回転数で回転する出力軸の駆動伝達機構等が収容されている。胴部72には、チャック73が取り付けされている。チャック73には、ドライバビット74又はドリルビット等のビット(先端工具)が取り付けられる。モータは、工具本体7に装着された電池パック5から出力される電力により動作し、ビットを回転させる。モータは、例えば、ブラシレスモータである。
【0021】
電池パック5は、第1装着部51が、工具本体7の把持部70の下端部にある取付部71に装着されることで、工具本体7に機械的及び電気的に接続される。これにより、電池パック5は、工具本体7に電力を供給可能となり、また工具本体7に電池パック5に関する情報を送信可能となる。また電池パック5は、第2装着部52が、充電装置1の筐体101の上面側にあるパック装着部102にスライド装着されることで、充電装置1に機械的及び電気的に接続される。
【0022】
充電装置1は、プラグとコードとを有し、プラグは、商用電源等の交流電源8(
図1参照:例えば実効値100V)からの電力供給を受けるコンセント(Outlet)と接続可能である。充電装置1は、交流電源8からプラグとコードとを介して供給される電力により、電池パック5の複数の電池セル50を充電する。
【0023】
(2.2)電池パック
電池パック5は、筐体500の内部に収容される複数の電池セル50を有している。複数の電池セル50は、充電を行うことで繰り返し使用が可能な二次電池である。各電池セル50は、例えば、リチウムイオン電池である。複数の電池セル50は、直列に接続される。
【0024】
また電池パック5は、
図1に示すように、制御部53、及び記憶部54等を更に有している。
【0025】
記憶部54は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等である。記憶部54は、品番が互いに異なる各種の工具本体7の品番の情報と、品番が互いに異なる各種の工具本体7に入力可能な電圧の範囲と、それらを対応付ける情報と、を記憶している。つまり、記憶部54は、各種の工具本体7の品番の情報と、その品番を有する工具本体7に入力可能な電圧の範囲とを、対応付けて記憶している。また本実施形態の記憶部54は、後述する異常検出フラグを記憶するための記憶領域を有している。
【0026】
制御部53は、充電及び放電に関する制御を行うように構成される。制御部53は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、制御部53として機能する。プログラムは、ここでは制御部53のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0027】
制御部53は、電池パック5が取り付けられた工具本体7が有する品番の情報を工具本体7から取得して、その品番を記憶部54に記憶された複数の品番と照合する。取得した品番と同じ品番が記憶部54に記憶されていれば、制御部53は、記憶部54に記憶された情報に基づいて、その品番を有する工具本体7に入力可能な電圧の範囲を特定し、電圧がこの範囲内となるように複数の電池セル50の出力(放電)を制御する。これにより、電池パック5は、品番が互いに異なって入力可能な電圧の範囲が互いに異なる複数の工具本体7の各々に用いることができる。
【0028】
また電池パック5は、
図1に示すように、充電用端子5a(プラス端子)、充放電用端子5b(マイナス端子)、通信用の信号端子部5c、及び放電用端子5d(プラス端子)を更に有している。
【0029】
電池パック5の第1装着部51が工具本体7の取付部71に装着されることで、放電用端子5d及び充放電用端子5bが、工具本体7の一対の入力端子とそれぞれ電気的に接続される。したがって、工具本体7は、放電用端子5d及び充放電用端子5bを介して、電池パック5から放電電圧を受けることができる。また工具本体7と電池パック5とは、互いの通信接続部同士が電気的に接続され、各種情報の送受信を行える。
【0030】
一方、電池パック5の第2装着部52が充電装置1のパック装着部102に装着されることで、充電用端子5a及び充放電用端子5bが、充電装置1の一対の出力端子(プラスの出力端子1a、マイナスの出力端子1b)とそれぞれ電気的に接続される。さらに信号端子部5cが、充電装置1の信号端子部1cと電気的に接続される。したがって、電池パック5は、充電用端子5a及び充放電用端子5bを介して、充電装置1から充電電圧を受けることができ、また信号端子部5cを介して、充電装置1と各種情報の送受信を行える。
【0031】
電池パック5は、その他にも、DC-DCコンバータから構成される変換回路、及び、充電中における電池パック5の温度を検出する温度センサ等を更に有している。
【0032】
変換回路は、複数の電池セル50からの出力電圧としての直流電圧を、工具本体7に入力可能な範囲内の電圧にDC-DC変換して、放電用端子5d及び充放電用端子5bを介して、工具本体7に出力する。工具本体7の側では、インバータが、電池パック5の変換回路から出力された直流電圧を交流電力に変換し、モータへ出力する。温度センサは、サーミスタ等を含み、検出温度を、グランド端子との電圧差で、信号端子部5cを介して接続先(充電装置1)に送信する。
【0033】
図1では、信号端子部1c、及び信号端子部5cを模式的に図示しているが、信号端子部1c、及び信号端子部5cの各々は、複数の信号端子を有している。
【0034】
信号端子部5cの複数の信号端子は、上記グランド端子、上記検出温度用の出力端子、直列接続される電池セル50の数をグランド端子との電圧差で出力する出力端子、及び、充電装置1から制御信号を受信して制御部53を起動する制御端子を含む。また信号端子部5cの複数の信号端子は、電池パック5で過放電を検知時に接続先(充電装置1)に過放電検知信号を送信する過放電端子を更に含む。また信号端子部5cの複数の信号端子は、いずれかの電池セル50が満充電(電池パック5全体で見れば充電容量が約80%以上の状態)になるとその旨を送信する満充電端子、充電開始回数に関する送受信用の端子等を更に含む。
【0035】
信号端子部1cの複数の信号端子は、信号端子部5cの複数の信号端子と一対一でそれぞれ対応して接続される端子を含む。
【0036】
ここで、充電時における電池パック5の制御部53の機能について簡単に説明する。
【0037】
制御部53は、充電時における各電池セル50の充電電圧を監視する。制御部53は、いずれかの電池セル50で異常な過充電を検知すると、過充電保護回路を制御して、通電により発生する熱を利用してヒュージングレジスタを溶断させて、充電装置1からの充電電流を遮断する。
【0038】
また制御部53は、充電時における各電池セル50の充電電圧を監視していて、上述の通り、いずれかの電池セル50が満充電になると、その旨を含む切替信号を、満充電端子を通じて充電装置1に送信する。充電装置1は、この切替信号を受信したタイミングで、第1充電形態(定電流制御)から第2充電形態(定電圧制御)に切り替える。
【0039】
(2.3)充電装置
充電装置1(充電システム100)は、
図1に示すように、処理部10、電源回路13、切替部14、及び電流測定回路15を有している。また充電装置1は、LED(Light Emitting Diode)等の光源及びその光源を点灯させる点灯回路を含み光源の点灯状態によって充電状態を外部に通知する表示部16を更に有している。処理部10、電源回路13、切替部14、電流測定回路15、表示部16は、筐体101に収容される。また充電装置1は、透光性を有したランプカバーを更に有する。ランプカバーは、例えば、筐体101の上面から露出された状態で、筐体101に保持され、表示部16の光源の点灯状態が、ランプカバーを通じて視認可能となっている。
【0040】
処理部10は、電池パック5の充電に関する制御を行うように構成される。処理部10は、電源回路13、切替部14、電流測定回路15、及び表示部16に関する制御処理を実行する。処理部10は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部10として機能する。プログラムは、ここでは処理部10のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0041】
処理部10は、取得部11と制御部12とを有している。言い換えると、処理部10は、取得部11としての機能と、制御部12としての機能とを有している。
【0042】
取得部11は、充電中の電池パック5における端子間電圧V1の電圧(各電池セル50のセル電圧でもよい)を、取得電圧として取得する。ここでは取得部11は、第1ノードP1(節点)、及び第2ノードP2(節点)間における電圧を端子間電圧V1として測定する。第1ノードP1は、例えば出力端子1aと切替部14との間を繋ぐ電路に設けられ、処理部10と電気的に接続される。第2ノードP2は、例えば電源回路13と電流測定回路15との間を繋ぐ電路に設けられ、処理部10と電気的に接続される。
【0043】
制御部12は、端子間電圧V1又はセル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。ここでは一例として、いずれかの電池セル50が満充電になったことに起因して電池パック5から満充電端子を通じて送信される切替信号を受信することで、制御部12は、第1充電形態から第2充電形態に移行させる。また上述の通り、一例として、第1充電形態は、定電流制御方式の充電形態であり、第2充電形態は、定電圧制御方式の充電形態であることを想定する。以下では、定電流制御方式による充電を、単に「CC(Constant Current)充電」と呼び、定電圧制御方式による充電を、単に「CV(Constant Voltage)充電」と呼ぶことがある(
図2参照)。
図2のグラフでは、時刻t0まで、CC充電を行い、時刻t0でCV充電に切り替わっている様子を示す。充電装置1は、電池パック5の充電容量が約80%未満では、充電電流を一定に保つCC充電により急速充電を行い、充電容量が約80%以上になるとCV充電に切り替えて満充電に近づけるように充電動作を行う。
【0044】
切替部14は、例えば、FET(Field Effect Transistor)等から構成され、第1ノードP1と電源回路13との間の電路に設けられている。切替部14は、処理部10と電気的に接続される。制御部12は、出力端子1a,1b間の電圧差(端子間電圧V1)を検出することで、電池パック5が充電装置1に取り付けられたことを検知する。そして、制御部12は、端子間電圧V1及び電池パック5の上記検出温度等に異常が無いと判定すると、切替部14をオンに切り替えて、電源回路13を制御して、CC充電を開始する。
【0045】
電源回路13は、交流電源8から受電する交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータ等を含む。電源回路13は、例えば、切替部14と第2ノードP2との間の電路に設けられている。電源回路13は、処理部10と電気的に接続される。電源回路13は、制御部12の制御下で、所定の充電電圧及び充電電流を生成する。
【0046】
電流測定回路15は、電流検出抵抗等を含む。電流測定回路15は、例えば、出力端子1bと第2ノードP2との間の電路に設けられ、当該電路を流れる充電電流を計測する。電流測定回路15は、処理部10と電気的に接続され、計測された充電電流の測定結果を、処理部10に出力する。制御部12は、電流測定回路15で計測された充電電流の電流値が、規定値(例えば100mA)以下にまで低下すると、電源回路13を制御して充電動作を停止させ、切替部14をオフに切り替える。
【0047】
なお、表示部16は、充電装置1がCC充電中の間では連続点灯し、CC充電からCV充電に切り替わると、間欠点灯に切り替わる。表示部16が間欠点灯に切り替わることで、電池パック5が実用充電完了の状態(充電容量が約80%以上になった状態)に達したことをユーザに通知する。電池パック5が充電装置1から取り外されると、表示部16は消灯する。
【0048】
(2.4)CV充電
次に、CV充電中の充電装置1における、電池パック5の異常(の予兆)を検出する処理について
図2を参照しながら詳細に説明する。なお、
図2は、一例として、公称電圧が約18.8Vの電池パック5を充電している場合のグラフである。充電装置1は、第1ノードP1及び第2ノードP2間における端子間電圧V1が約21Vの電圧に一定に保たれるようにCV充電を行うことを想定する。
【0049】
本実施形態の充電装置1における処理部10の制御部12は、CV充電(第2充電形態)において、取得部11が取得した取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止するように構成される。ここでは、所定の条件とは、取得電圧の電圧値が所定の基準値(以下では、「第1基準値Vth1」と呼ぶことがある)以下である。さらにここでいう「第1基準値Vth1(所定の基準値)」は、取得部11が「所定の期間T1」内に取得した取得電圧を基に算出される。そして、制御部12は、第1基準値Vth1を用いた判定処理(以下では、「第1判定処理」と呼ぶことがある)を行い、上記所定の条件を満たせば充電動作を停止する。
【0050】
本実施形態では、所定の期間T1は、CC充電からCV充電に切り替わる切替タイミングの直後の期間であり、処理部10のメモリ内に予め設定(記憶)されている。つまり、所定の期間T1の始点は、切替タイミング(時刻t0)である。言い換えると、
図2の例では、充電装置1が、時刻t0に電池パック5から切替信号を受信したことになる。
【0051】
ただし、所定の期間T1は、切替タイミングの直前の期間でもよい。例えば、所定の期間T1の始点は時刻t0よりも前で、かつ、その終点は時刻t0より前でも後でもよい。この場合、充電装置1は、切替信号より先に、つまり、いずれかの電池セル50が満充電になる手前の段階で、電池パック5から補助信号を貰い、補助信号を受信したタイミングで所定の期間T1を開始することが好ましい。
【0052】
所定の期間T1は、時刻t0~時刻t1までの期間である。所定の期間T1は、例えば数秒から数十秒の範囲内の期間であり、一例として約10秒であることを想定する。取得部11は、所定の期間T1において、第1基準値Vth1を決定するために取得電圧を取得する。
【0053】
具体的には、取得部11は、第1ノードP1及び第2ノードP2間における端子間電圧V1のサンプリングデータを数百msにわたって数十回取得してその分の平均値(第1平均値)を求める。さらに取得部11は、所定の期間T1にわたって第1平均値の演算を数十回程度繰り返して、数十回分の第1平均値の平均値(第2平均値)から、所定値(例えば数百ミリボルト(mV))だけ差し引いた値を、第1基準値Vth1に決定する。所定値は、電池パック5で自己短絡(内部短絡)等の異常が発生しかけている際に、その予兆として低下すると判断される電圧の値であり、検証実験の結果に基づき設定された値である。サンプリング周期は、例えば処理部10のメインクロックに依存するものであり、特に限定されない。処理部10は、時刻t1に第1基準値Vth1を決定し、自身のメモリに決定した第1基準値Vth1を記憶する。
【0054】
ここで制御部12は、第1基準値Vth1を用いた第1判定処理に加えて、第2判定処理も実行するように構成される。制御部12は、第1判定処理の判定結果により上記所定の条件を満たすと、充電動作を停止した上で第2判定処理を実行する。制御部12は、第1判定処理の判定結果により上記所定の条件を満たしていなければ、充電動作を停止させず、さらに第2判定処理も実行しない。言い換えると、第1判定処理は、第2判定処理を実行するか否かを決定するためのトリガー処理となっている。
【0055】
具体的には、制御部12は、充電動作を停止してから所定時間T2が経過した後に、電池パック5の異常(の予兆)の有無を判定する判定処理(第2判定処理)を実行し、判定処理(第2判定処理)で異常が無ければ、充電動作を再開する。制御部12は、電源回路13を制御して、充電電流を0(ゼロ)アンペアにすることで、充電動作を停止させる(この段階では、切替部14はオンのままとする)。つまり、制御部12は、第2判定処理として、電池パック5に負荷(電圧)をかけていないOCV(Open Circuit Voltage)による異常判定を実行する。本実施形態では、所定時間T2は、制御部12が充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を開始してから、充電電流が実際に安定的に0アンペアとなるまで待つ待機時間であり、処理部10のメモリ内に予め設定(記憶)されている。所定時間T2は、所定の期間T1よりも短い時間である。所定時間T2は、例えば0.5秒から20秒程度の範囲内に設定されている。
【0056】
ここでいう判定処理(第2判定処理)は、所定時間T2が経過した後において取得部11が取得した取得電圧の電圧値が、規定の基準値(以下では、「第2基準値Vth2」と呼ぶことがある)以上である場合に、異常(の予兆)が無いと判定する。さらにここでいう「第2基準値Vth2(規定の基準値)」は、取得部11が規定の期間T3内に取得した取得電圧を基に算出される。
【0057】
規定の期間T3は、時刻t2~時刻t3までの期間である。規定の期間T3は、例えば数秒から数十秒の範囲内の期間であり、一例として約10秒であることを想定する。ここでは一例として、規定の期間T3は、上述した所定の期間T1と同じ長さに設定されている。取得部11は、規定の期間T3において、第2基準値Vth2を決定するために取得電圧を取得する。
【0058】
ただし、制御部12は、第2判定処理に用いられる第2基準値Vth2を算出するために、実際に第2判定処理を実行する状況(OCV)と同等の状況となるように、一旦充電動作を停止させるように構成される。制御部12は、第1基準値Vth1を決定した時刻t1において、電源回路13を制御して、充電電流を0アンペアにすることで、充電動作を停止させる。制御部12は、実際の第2判定処理と同様に、充電電流が安定的に0アンペアとなるまで待つ。すなわち、制御部12は、時刻t1から、予め設定されている所定時間T2が経過するまで待ち、所定時間T2の終点である時刻t2から、第2基準値Vth2を決定するための処理を開始する。
【0059】
本実施形態では、第2基準値Vth2の算出方法は、充電動作が停止中であることを除けば、第1基準値Vth1の算出方法と同じである。すなわち、取得部11は、第1ノードP1及び第2ノードP2間における端子間電圧V1のサンプリングデータを数百msにわたって数十回取得してその分の平均値(第1平均値)を求める。さらに取得部11は、規定の期間T3にわたって第1平均値の演算を数十回程度繰り返して、数十回分の第1平均値の平均値(第2平均値)から、上記所定値(例えば数百ミリボルト(mV))だけ差し引いた値を、第2基準値Vth2に決定する。サンプリング周期は、例えば処理部10のメインクロックに依存するものであり、特に限定されない。処理部10は、時刻t3に第2基準値Vth2を決定し、自身のメモリに決定した第2基準値Vth2を記憶する。
【0060】
制御部12は、第2基準値Vth2を決定した時刻t3において、充電動作を再開するための復帰処理を開始する。すなわち、制御部12は、電源回路13を制御して、充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を開始する直前の充電電流の電流値(目標値)まで復帰(増加)させる。
【0061】
復帰させる充電電流の目標値は、フィードバック制御を開始した時刻t1の電流値でもよいが、ここでは一例として、制御部12は、時刻t1より一定時間T5だけ手前の時点における充電電流の電流値を目標に復帰させる。一定時間T5は、数秒~数十秒の時間であり、一例として約1秒に予め設定されていることを想定する。一定時間T5が設定されている理由については後述する。
図2の例では、充電電流は、時刻t4にて目標値まで復帰している。
【0062】
要するに、CV充電を開始した時刻t0から時刻t4までが、第1判定処理及び第2判定処理で用いる2つの基準値(Vth1,Vth2)を決定するための処理が行われる処理区間である。言い換えると、充電装置1は、CV充電中に起こり得る電池パック5の異常の予兆検出に備えて、実測値を用いて2つの基準値を決定する。
【0063】
なお、所定時間T2と規定の期間T3とを合わせた期間を、停止期間T4と呼ぶことがある。
【0064】
以下、処理部10における、決定した2つの基準値(Vth1,Vth2)を用いた判定処理について説明する。
【0065】
処理部10は、CV充電中において、第1ノードP1及び第2ノードP2間における端子間電圧V1を監視する。
図2の「電圧」は、端子間電圧V1の変化を模式的に示し、「電流」は、充電電流の変化を模式的に示す。そして、処理部10の制御部12は、時刻t4以降、取得部11が取得した取得電圧が低下して、かつ、取得電圧の電圧値が第1基準値Vth1以下である(所定の条件)ことを満たすか否かを判定する(第1判定処理)。ここでは、取得部11は、第1基準値Vth1の決定時の第2平均値の算出と同様に、所定の期間T1にわたって第1平均値の演算を数十回程度繰り返して、数十回分の第1平均値の平均値(第2平均値)を算出する。その算出値を、「取得電圧の電圧値Va1」とする。
【0066】
制御部12は、時刻t4以降において、所定の期間T1の周期で、電圧値Va1を算出して、第1基準値Vth1との比較判定を行う。つまり、制御部12は、「Va1≦Vth1」という所定の条件を満すまで、所定の期間T1の周期で、繰り返し電圧値Va1と第1基準値Vth1との比較判定を行いながら、CV充電を継続する。
【0067】
そして、制御部12は、CV充電中において、「Va1≦Vth1」という所定の条件を満たすと、充電動作を停止して第2判定処理を開始する。
【0068】
図2の例では、時刻t5において、充電電圧が約数百ミリボルトほど低下している。結果的に、制御部12は、時刻t5で、充電電圧が低下し、「Va1≦Vth1」という所定の条件を満たした、と判定している。そのため、制御部12は、時刻t5で、電源回路13を制御して、充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を開始する(充電動作の停止)。つまり、制御部12は、充電動作を停止させてリップル電圧等の影響が除去された状態を作り出し、その上で第2判定処理を行うことになる。
【0069】
処理部10は、第2基準値Vth2の決定処理と同様に、充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を開始した時刻t5から、所定時間T2が経過するまで待つ。取得部11は、所定時間T2が経過した後において、第2基準値Vth2の決定処理の第2平均値の算出と同様に、規定の期間T3にわたって第1平均値の演算を数十回程度繰り返して、数十回分の第1平均値の平均値(第2平均値)を算出する。その算出値を、「取得電圧の電圧値Va2」とする。つまり、制御部12は、所定時間T2の経過後、規定の期間T3で電圧値Va2を算出して、第2基準値Vth2との比較判定を行う。
【0070】
そして、制御部12は、第2判定処理において、「Va2≦Vth2」を満たしていれば、充電動作を「完全停止」にする(切替部14をオフにする)。一方、制御部12は、第2判定処理において、「Va2≦Vth2」を満たしていなければ、充電動作を再開する。
【0071】
図2の例では、時刻t5から停止期間T4(所定時間T2と規定の期間T3とを合わせた期間)が経過した時刻t6において、制御部12は、「Va2≦Vth2」を満していないと判定している。そのため、制御部12は、時刻t6において、充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を開始する直前の充電電流の電流値(目標値)まで復帰(増加)させる。ここでも一例として、制御部12は、時刻t5より一定時間T5だけ手前の時点における充電電流の電流値を目標に復帰させる。
図2の例では、充電電流は、時刻t7にて目標値まで復帰している。
【0072】
図2の例では、制御部12は、充電動作を再開した時刻t7以降、時刻t8までCV充電を継続している。なお、CV充電中においては、充電電圧を一定に保つ制御を行っているため、充電電流は漸減している(時刻t7~時刻t8参照)。
【0073】
ここで
図2の例では、時刻t8において、再び充電電圧が約数百ミリボルトほど低下している。結果的に、制御部12は、時刻t8で、充電電圧が低下し、「Va1≦Vth1」という所定の条件を満たした、と判定している。そのため、制御部12は、時刻t8で、電源回路13を制御して、充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を開始する(充電動作の停止)。
【0074】
そして、
図2の例では、時刻t8から停止期間T4(所定時間T2と規定の期間T3とを合わせた期間)が経過した時刻t9において、制御部12は、「Va2≦Vth2」を満たしていて、電池パック5の異常の予兆を検知した、と判定している。そのため、制御部12は、時刻t9において、充電動作を再開させることなく「完全停止」にする。制御部12は、表示部16の点灯状態を、実用充電完了の状態に達したことを示す間欠点灯から、間欠点灯のオン間隔及びオフ間隔のより短い間隔の点滅点灯に切り替えて、異常の予兆発生により、充電を強制停止したことをユーザに通知する。
【0075】
さらに制御部12は、異常の予兆が発生した接続中の電池パック5が、今後二度と充電装置1で充電されないように、電池パック5と通信をして記憶部54内の専用の記憶領域に「異常検出フラグ」を書き込ませる。言い換えると、本実施形態の充電装置1では、処理部10は、電池パック5が取り付けられると、充電動作を開始する前に、異常検出フラグの有無を確認するように構成される。処理部10は、異常検出フラグが記憶領域に存在しなければ、充電動作を開始するが、異常検出フラグが記憶領域に存在すると、充電動作を開始することなく、表示部16の点灯状態を点滅点灯に切り替えて、充電不可であることをユーザに通知する。電池パック5では、異常検出フラグは、一度記憶領域に書き込まれると、二度と消去されない。
【0076】
(2.5)動作説明
以下、本実施形態の充電装置1(充電システム100)の動作例について
図3のフローチャート図を参照しながら簡単に説明する。
【0077】
充電装置1は、電池パック5から切替信号を受信したことでCC充電からCV充電に切り替える(ステップS1:CV充電の開始)。
【0078】
充電装置1は、CV充電を開始すると直ちに第1基準値Vth1を決定するための処理を実行する(ステップS2)。
【0079】
そして、充電装置1は、第1基準値Vth1を決定すると、充電動作を停止させて(ステップS3)、第2基準値Vth2を決定するための処理を実行する(ステップS4)。
【0080】
充電装置1は、第2基準値Vth2を決定すると、充電動作を再開するための復帰処理を実行する(ステップS5)。
【0081】
その後、充電装置1は、充電動作を再開すると、電池パック5の異常監視を開始する(ステップS6)。
【0082】
充電装置1は、CV充電中において、充電容量が満充電となったか否かを確認し(ステップS7)、満充電となれば(ステップS7:Yes)、CV充電を終了する(ステップS8:正常終了)。
【0083】
充電装置1は、満充電でなければ(ステップS7:No)、取得電圧が低下して、かつ「Va1≦Vth1」を満たしているか否かを判定する(ステップS9:第1判定処理)。
【0084】
充電装置1は、「Va1≦Vth1」を満たしていると判定すると(ステップS9:Yes)、充電動作を停止させて(ステップS10)、続いて「Va2≦Vth2」を満たしているか否かを判定する(ステップS11:第2判定処理)。なお、充電装置1は、ステップS9において、「Va1≦Vth1」を満たしていないと判定すると(ステップS9:No)、ステップS7の手前に戻る。
【0085】
充電装置1は、ステップS11において、「Va2≦Vth2」を満たしていると判定すると(ステップS11:Yes)、電池パック5に異常の予兆があると判断し、充電を再開させることなく完全停止する(ステップS12:異常終了)。充電装置1は、表示部16の点灯状態を間欠点灯から点滅点灯に切り替えて、充電を強制停止したことをユーザに通知する。また充電装置1は、異常検出フラグを電池パック5の記憶部54に書き込ませる(ステップS13)。
【0086】
なお、充電装置1は、ステップS11において、「Va2≦Vth2」を満たしていないと判定すると(ステップS11:No)、充電動作を再開するための復帰処理を実行し(ステップS14)、ステップS7の手前に戻る。
【0087】
このように本実施形態の充電装置1では、CV充電中(第2充電形態)において、取得電圧が低下して、かつ「Va1≦Vth1」という所定の条件を満たした場合に、充電動作が停止される。そのため、電池パック5に内部短絡等の異常が発生しかけている状態のまま充電動作が継続されてしまう可能性が低減される。結果的に、充電システム100には、電池パック5の充電に関する信頼性の向上を図ることができる、という利点がある。また所定の基準値(第1基準値Vth1)が実測値に基づく値であるため、より信頼性の高い判定によって充電動作が停止され得る。
【0088】
さらに制御部12は、充電動作を停止してから所定時間T2が経過した後に、電池パック5の異常(の予兆)の有無を判定する判定処理(第2判定処理:Va2≦Vth2)を実行し、第2判定処理で異常(の予兆)が無ければ、充電動作を再開する。そのため、実際には異常ではなく例えばリップル電圧等の影響によって偶々「Va1≦Vth1」という所定の条件が満たされてしまい充電動作が停止された場合に対する復帰を実現できる。結果的に、充電に関する信頼性を更に向上できる。
【0089】
また充電動作を停止した状態、すなわち充電電流を0(ゼロ)Aにした状態で取得した取得電圧を用いて第2判定処理(OCVによる確認)が行われるため、充電に関する信頼性を更に向上できる。特に、規定の基準値(第2基準値Vth2)も実測値に基づく値であり、その実測値も充電電流を0(ゼロ)Aにした状態で取得したものであるため、より信頼性の高い判定処理を実現できる。
【0090】
ところで、充電装置1が、電流異常を検出して電流を遮断又は低下させるような別の保護機能を持っている場合がある。その場合、保護機能の実行に起因して「Va1≦Vth1」という所定の条件を満たすことにより、第2判定処理が開始され得る。要するに、保護機能による充電電流の低下に追従して、充電電流を0アンペアにするフィードバック制御が実行され得る。その際に、充電動作の復帰時に、仮に、充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を開始した時点の電流値を目標値としてしまうと、目標値が0アンペアになる可能性がある。これを防ぐために、上述した「一定時間T5」が設定されている。言い換えると、一定時間T5を設定して復帰時の充電電流の目標値を決定することで、充電装置1が別の保護機能等を有している場合であっても、上述した第2判定処理を適用できる。
【0091】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る充電システム100と同様の機能は、充電方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0092】
具体的には、一の態様に係る充電方法は、取得ステップと移行ステップと停止ステップとを含む。取得ステップにて、充電中の電池パック5における、端子間電圧V1又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。移行ステップにて、端子間電圧V1又はセル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。停止ステップにて、第2充電形態において、取得ステップで取得した取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。
【0093】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0094】
本開示における充電システム100は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における充電システム100としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0095】
また、充電システム100における複数の機能が、1つのハウジング内に集約されていることは必須の構成ではない。充電システム100の構成要素は、複数のハウジングに分散して設けられていてもよい。
【0096】
反対に、充電システム100における複数の機能が、基本例のように、1つのハウジング内に集約されてもよい。さらに、充電システム100の少なくとも一部の機能、例えば、充電システム100の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0097】
基本例では一例として、充電システム100の充電対象が電動工具用の電池パックであり、電池セル50がリチウムイオン電池であった。しかし、充電システム100の充電対象は、電動工具以外の電池パックでもよく、電池セル50の種類も、リチウムイオン電池以外に、リチウムポリマー電池、鉛蓄電池、全固体電池、又はリン酸鉄リチウム電池でもよい。
【0098】
基本例では、所定の条件は、取得電圧の電圧値が所定の基準値(第1基準値Vth1)以下であること、であった。しかし、所定の条件は、比較対象が電圧値であることに限定されない。例えば、所定の条件は、低下する取得電圧の傾きが一定の傾き以上であることでもよいし、低下量が一定値以上であることでもよい。
【0099】
基本例では、所定の基準値(第1基準値Vth1)は、CC充電からCV充電に切り替わった直後に一度決定すると、以降の異常監視中においては、充電が正常終了又は異常終了するまで変更されない。しかし、所定の基準値は、異常監視中において更新可能であってもよい。例えば、処理部10は、異常監視の開始後、所定の基準値を所定時間毎(例えば10秒から5分程度の範囲内)に算出して、最新の所定の基準値に更新してもよい。また処理部10は、電池セル50の検出温度が所定温度以上となった場合に、所定の基準値を更新してもよい。更に或いは、処理部10は、所定の基準値を所定時間毎に算出して、算出した最新の「所定の基準値」と、現在設定中の「所定の基準値」とを比較して、算出した最新の「所定の基準値」の方が大きい場合だけ、最新の「所定の基準値」へ更新してもよい。
【0100】
基本例では、基準値決定処理(時刻t0~t4)において、第1基準値Vth1を決定する処理を行い、その後に第2基準値Vth2を決定する処理を行っている。しかし、この処理の順番を入れ替えて、先に第2基準値Vth2を決定する処理を行ってもよい。
【0101】
基本例では、制御部12は、取得電圧をトリガーとして第2判定処理を実行している。しかし、制御部12は、例えば、電池パック5の検出温度をトリガーとして第2判定処理を実行してもよい。
【0102】
具体的には、検出温度をトリガーとする場合、制御部12は、第1判定処理で、電池パック5の検出温度が基準値以上であるか否かを判定する。そして、制御部12は、検出温度が基準値以上であると判定した場合(温度の上昇率又は上昇値の比較判定でもよい)、充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を行った上で第2判定処理(Va2≦Vth2の比較)を実行する。この場合、「制御部12は、第2充電形態において、取得部11が取得した取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する」という構成は、充電システム100にとって必須の構成ではない。検出温度をトリガーとする場合、比較する温度の基準値も実測値から算出されることが好ましい。
【0103】
或いは、制御部12は、CC充電中(第1充電形態)に異常があったことをトリガーにして、第2判定処理を実行してもよい。例えば制御部12は、CC充電を開始してから一定の時間が経過したにも関わらず、CV充電に切り替わらないという異常を検知すると、充電電流を0アンペアにするためのフィードバック制御を行った上で第2判定処理(Va2≦Vth2の比較)を実行する。この場合の第2基準値Vth2は、実測値ではなく、予め設定された値でもよい。この場合も、「制御部12は、第2充電形態において、取得部11が取得した取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する」という構成は、充電システム100にとって必須の構成ではない。
【0104】
基本例では、異常検出フラグを電池パック5の記憶部54に書き込んで、電池パック5が異常検出により充電不可となった充電不可情報が管理されている。しかし、充電不可情報は、電池パック5ではなく、電池パック5の外部(例えば外部サーバ又は充電装置1)で管理されてもよい。例えば、充電装置1は、接続中の電池パック5において第2判定処理を経て異常が検出されると、その電池パック5の識別情報を含む充電不可情報を、処理部10のメモリに記憶する、或いは(有線又は無線により通信可能な)外部サーバに送信する。充電不可情報は、異常を検出した充電装置1を含む複数の充電装置1間で共有されてもよい。
【0105】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る充電システム(100)は、1又は複数の電池セル(50)を有する電池パック(5)を充電する。充電システム(100)は、取得部(11)と、制御部(12)と、を備える。取得部(11)は、充電中の電池パック(5)における、端子間電圧(V1)又は各電池セル(50)のセル電圧を取得電圧として取得する。制御部(12)は、端子間電圧又はセル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。制御部(12)は、第2充電形態において、取得部(11)が取得した取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。第1の態様によれば、電池パック(5)の充電に関する信頼性の向上を図ることができる。
【0106】
第2の態様に係る充電システム(100)に関して、第1の態様において、所定の条件とは、取得電圧の電圧値が所定の基準値(第1基準値Vth1)以下である。第2の態様によれば、第2充電形態において、取得電圧が低下して、かつ取得電圧の電圧値が所定の基準値(第1基準値Vth1)以下であることを満たす場合に、充電動作が停止されるため、比較的簡単な判定により、充電に関する信頼性を向上できる。
【0107】
第3の態様に係る充電システム(100)に関して、第2の態様において、所定の基準値(第1基準値Vth1)は、取得部(11)が所定の期間(T1)内に取得した取得電圧を基に算出される。第3の態様によれば、所定の基準値(第1基準値Vth1)が実測値に基づく値であるため、より信頼性の高い判定によって充電動作が停止され得る。
【0108】
第4の態様に係る充電システム(100)に関して、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、制御部(12)は、充電動作を停止してから所定時間(T2)が経過した後に、電池パック(5)の異常の有無を判定する判定処理を実行する。制御部(12)は、判定処理で異常が無ければ、充電動作を再開する。第4の態様によれば、実際には異常ではなく例えばリップル電圧等の影響によって所定の条件が満たされてしまい充電動作が停止されていた場合に対する復帰を実現でき、結果的に、充電に関する信頼性を更に向上できる。
【0109】
第5の態様に係る充電システム(100)に関して、第4の態様において、判定処理は、所定時間(T2)が経過した後において取得部(11)が取得した取得電圧の電圧値が、規定の基準値(第2基準値Vth2)以上である場合に、異常が無いと判定する。第5の態様によれば、充電動作を停止した状態、すなわち充電電流を0(ゼロ)Aにした状態で取得した取得電圧を用いて判定処理が行われるため、充電に関する信頼性を更に向上できる。
【0110】
第6の態様に係る充電システム(100)に関して、第5の態様において、規定の基準値(第2基準値Vth2)は、取得部(11)が規定の期間(T3)内に取得した取得電圧を基に算出される。第6の態様によれば、規定の基準値(第2基準値Vth2)が実測値に基づく値であるため、より信頼性の高い判定処理を実現できる。
【0111】
第7の態様に係る充電システム(100)は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、電池パック(5)は、電動工具(6)用の電池パックである。第7の態様によれば、電動工具(6)用の電池パック(5)の充電に関する信頼性の向上を図ることができる。
【0112】
第8の態様に係る充電システム(100)に関して、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、第1充電形態は、定電流制御方式の充電形態であり、第2充電形態は、定電圧制御方式の充電形態である。第8の態様によれば、定電圧制御方式の充電形態で動作中における充電に関する信頼性の向上を図ることができる。
【0113】
第9の態様に係る充電方法は、1又は複数の電池セル(50)を有する電池パック(5)を充電するための充電方法である。充電方法は、取得ステップと、移行ステップと、停止ステップと、を含む。取得ステップにて、充電中の電池パック(5)における、端子間電圧(V1)又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。移行ステップにて、端子間電圧又はセル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。停止ステップにて、第2充電形態において、取得ステップで取得した取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。第9の態様によれば、電池パック(5)の充電に関する信頼性の向上を図ることが可能な充電方法を提供できる。
【0114】
第10の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第9の態様における充電方法を実行させるためのプログラムである。第10の態様によれば、電池パック(5)の充電に関する信頼性の向上を図ることが可能な機能を提供できる。
【0115】
第11の態様に係る充電システム(100)は、1又は複数の電池セル(50)を有する電池パック(5)を充電する。充電システム(100)は、取得部(11)と、制御部(12)と、を備える。取得部(11)は、充電中の電池パック(5)における、端子間電圧(V1)又は各電池セルのセル電圧を取得電圧として取得する。制御部(12)は、端子間電圧又はセル電圧が目標電圧に到達した場合に、急速な充電を可能とする第1充電形態から第1充電形態よりも充電電流の低い第2充電形態に移行させる。制御部(12)は、第2充電形態において、取得部(11)が取得した取得電圧が低下して、かつ取得電圧の低下の態様が所定の条件を満たす場合に、充電動作を停止する。制御部(12)は、充電動作を停止してから所定時間(T2)が経過した後において取得部(11)が取得した取得電圧の電圧値が、規定の基準値(第2基準値Vth2)以上である場合に、充電動作を再開する。第11の態様によれば、電池パック(5)の充電に関する信頼性の向上を図ることができる。
【0116】
第2~第8の態様に係る構成については、充電システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0117】
100 充電システム
11 取得部
12 制御部
5 電池パック
50 電池セル
6 電動工具
V1 端子間電圧
Vth1 第1基準値(所定の基準値)
Vth2 第2基準値(規定の基準値)
T1 所定の期間
T2 所定時間
T3 規定の期間