(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】判定システム、判定方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
B01F 35/214 20220101AFI20240816BHJP
B01F 35/212 20220101ALI20240816BHJP
B01F 35/213 20220101ALI20240816BHJP
B01F 27/701 20220101ALI20240816BHJP
G01N 11/14 20060101ALI20240816BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240816BHJP
【FI】
B01F35/214
B01F35/212
B01F35/213
B01F27/701
G01N11/14 E
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2021540639
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2020021948
(87)【国際公開番号】W WO2021033390
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019152367
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 和隆
(72)【発明者】
【氏名】神薗 建太
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102713(JP,A)
【文献】特開平11-295205(JP,A)
【文献】実開平01-163533(JP,U)
【文献】特開2015-073942(JP,A)
【文献】特開2016-109674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 35/00 - 35/95
B01F 27/00 - 27/96
G01N 11/14
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌対象物を撹拌する機構部と、前記機構部を駆動する駆動装置とを有する撹拌器の前記駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得する取得部と、
前記波形データから得られる、前記駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化に基づいて前記撹拌対象物の状態を判定する判定部と、
を備え
、
前記撹拌器は前記撹拌対象物を撹拌する第1の回転体を含み、
前記駆動装置は、前記第1の回転体を回転させる第1のロータを有する第1のモータを含み、
前記駆動装置にかかる前記力は前記第1のモータの前記第1のロータにかかる力である、
判定システム。
【請求項2】
前記電流は、前記撹拌対象物を撹拌している状態で前記駆動装置に供給される、請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記撹拌器は前記第1の回転体から独立して前記撹拌対象物を撹拌する第2の回転体をさらに含み、
前記駆動装置は、前記第2の回転体を回転させる第2のロータを有する第2のモータをさらに含み、
前記駆動装置にかかる前記力は前記第1のモータの前記第1のロータにかかる前記力と前記第2のモータの前記第2のロータにかかる力である、請求項1又は2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記回転体の回転数を変動させたときに前記撹拌対象物を撹拌する前記撹拌器の有する前記駆動装置に供給される前記電流に関する前記波形を示す前記波形データを取得する、請求項1~3のいずれか一つに記載の判定システム。
【請求項5】
前記取得部は、前記撹拌対象物に所定の処理を行ったときに前記撹拌対象物を撹拌する前記撹拌器の有する前記駆動装置に供給される前記電流に関する前記波形を示す前記波形データを取得する、請求項1~3のいずれか一つに記載の判定システム。
【請求項6】
前記撹拌対象物の前記状態は前記撹拌対象物の粘度である、請求項1~5のいずれか一つに記載の判定システム。
【請求項7】
前記撹拌対象物は均一に混ざるほど柔らかくなり、
前記判定部は、前記駆動装置にかかる前記力の前記特定方向の前記成分に起因する前記変化に基づいて前記撹拌対象物が所定の柔らかさを有しているか否かを判定する、請求項1~5のいずれか一つに記載の判定システム。
【請求項8】
前記撹拌対象物は均一に混ざるほど固くなり、
前記判定部は、前記駆動装置にかかる前記力の前記特定方向の前記成分に起因する前記変化に基づいて前記撹拌対象物が所定の固さを有しているか否かを判定する、
請求項1~5のいずれか一つに記載の判定システム。
【請求項9】
撹拌対象物を撹拌する機構部と、前記機構部を駆動する駆動装置とを有する撹拌器の前記駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得する取得部と、
前記波形データから得られる、前記駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化に基づいて前記撹拌対象物の状態を判定する判定部と、
を備え、
前記波形を周波数軸上で表現される周波数軸波形に変換し、前記周波数軸波形から前記変化を含み得る部分を抽出する抽出部を更に備え、
前記判定部は、前記抽出部で抽出された前記部分に基づいて前記撹拌対象物の前記状態を判定する、
判定システム。
【請求項10】
前記判定部は、学習済みモデルを利用して、前記部分から前記撹拌対象物の前記状態を判定する、請求項9に記載の判定システム。
【請求項11】
撹拌対象物を撹拌する機構部と、前記機構部を駆動する駆動装置とを有する撹拌器の前記駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得する取得部と、
前記波形データから得られる、前記駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化に基づいて前記撹拌対象物の状態を判定する判定部と、
を備え、
前記電流を測定して前記波形データを出力する微分型の電流センサを有する測定部を更に備えた、
判定システム。
【請求項12】
前記測定部は、前記電流が流れる電線に取り付けられる、請求項11に記載の判定システム。
【請求項13】
撹拌対象物を撹拌する撹拌器に含まれている駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得するステップと、
前記波形データから得られる、前記駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、前記撹拌対象物の状態を判定するステップと、
を含み、
前記撹拌器は前記撹拌対象物を撹拌する第1の回転体を含み、
前記駆動装置は、前記第1の回転体を回転させる第1のロータを有する第1のモータを含み、
前記駆動装置にかかる前記力は前記第1のモータの前記第1のロータにかかる力である、
撹拌対象物の状態の判定方法。
【請求項14】
撹拌対象物を撹拌する撹拌器
に含まれている駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得するステップと、
前記波形データから得られる、前記駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、前記撹拌対象物の状態を判定する判定ステップと、
を含
み、
前記波形を周波数軸上で表現される周波数軸波形に変換し、前記周波数軸波形から前記変化を含み得る部分を抽出する抽出ステップを更に含み、
前記判定ステップでは、前記抽出ステップで抽出された前記部分に基づいて前記撹拌対象物の前記状態を判定する、
撹拌対象物の状態の判定方法。
【請求項15】
撹拌対象物を撹拌する撹拌器に含まれている駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得する取得ステップと、
前記波形データから得られる、前記駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、前記撹拌対象物の状態を判定するステップと、
を含み、
前記取得ステップでは、前記電流を測定して前記波形データを出力する微分型の電流センサを有する測定部から前記波形データを取得する、
撹拌対象物の状態の判定方法。
【請求項16】
1以上のプロセッサに請求項13~15のいずれか一項に記載の判定方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撹拌器により撹拌される撹拌対象物の状態を判定する判定システム、判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液体の粘度変化を検知するための粘度変化検知用素子を開示する。粘度変化検知用素子は、たわみ弾性変形及び/又はねじれ弾性変形が可能な弾性体と、弾性体の変形に応じて移動するように弾性体に直接又は接続部材を介して取り付けられた可動永久磁石とを有する。この粘度変化検知用素子では、粘度変化検知用素子を支持するための支持体に弾性体の一部が固定されることにより、回転液体中で弾性体は回転及び/又は振動を伴うたわみ弾性変形及び/又はねじれ弾性変形を生じる。これによって、液体の粘度変化に応じて、定位置に設けられた外部検出手段に対する可動永久磁石の相対的位置が変化し、係る相対的位置変化を外部検出手段により検出することによって液体の粘度変化を検知し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
判定システムの取得部は、撹拌対象物を撹拌する撹拌器を駆動する駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得する、判定部は、波形データから得られる、駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化に基づいて撹拌対象物の状態を判定する。
【0005】
この判定システムは、撹拌対象物の状態の判定の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は実施形態の判定システムのブロック図である。
【
図2】
図2は実施形態の判定システムの撹拌器の斜視図である。
【
図3】
図3は上記撹拌器の駆動装置に供給される電流に関する波形を示す図である。
【
図4】
図4は上記撹拌器の駆動装置に供給される電流に関する波形を示す図である。
【
図5】
図5は上記撹拌器の駆動装置に供給される電流の周波数成分を示す図である。
【
図6】
図6は上記撹拌器の駆動装置に供給される電流の周波数成分を示す図である。
【
図7】
図7は上記撹拌器の駆動装置に供給される電流の周波数範囲を示す図である。
【
図8】
図8は上記判定システムの動作のフローチャートである。
【
図9】
図9は上記判定システムを利用した制御の一例を示す図である。
【
図10】
図10は上記判定システムを利用した他の制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.実施形態
1.1 概要
図1は、実施形態の判定システム10のブロック図である。
図2は判定システム10を用いた撹拌器30の斜視図である。判定システム10は、取得部11と、判定部13とを備える。取得部11は、撹拌対象物40を撹拌する撹拌器30の駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを取得する。判定部13は、波形データから得られる、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、撹拌対象物40の状態を判定する。判定システム10と撹拌器30とは撹拌システム1001を構成する。
【0008】
撹拌器30においては、撹拌器30で撹拌される撹拌対象物40の状態と、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化との間に相関があることが見いだされた。判定システム10では、撹拌対象物40の状態を判定するにあたって、撹拌器30の駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを利用する。つまり、判定システム10では、撹拌対象物40の状態を判定するにあたって、駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを得る。そのため、撹拌対象物40に判定用の装置を接触させる場合及び駆動装置31の近傍にセンサを設置する場合等とは異なり、撹拌対象物40の状態の判定においては、撹拌器30の周辺環境の影響を受け難くなる。したがって、判定システム10によれば、撹拌対象物40の状態の判定の精度を向上できる。
【0009】
特許文献1に開示の粘度変化検知用素子では、粘度変化検知用素子が実際に液体(撹拌対象物)に接触させる必要があり、高温、油雰囲気等での破損・劣化が問題になる。また、特許文献1では、弾性体の、回転及び/又は振動を伴うたわみ弾性変形及び/又はねじれ弾性変形に起因する変化を利用するが、このような変化は、周辺の振動やノイズの影響を受けやすい。そのため、特許文献1に開示の粘度変化検知用素子では、撹拌対象物の状態の判定の精度が不十分である。
【0010】
対して、実施形態の判定システム10によれば、前述のように、撹拌対象物40の状態の判定の精度を向上できる。
【0011】
1.2 詳細
以下、判定システム10について詳細に説明する。判定システム10は、撹拌器30で撹拌される撹拌対象物40の状態を判定する。
【0012】
撹拌器30は、撹拌対象物40を撹拌する。ここで、撹拌は、分散、混練、混合等の概念を含み得る。よって、撹拌器30は、厳密な意味での撹拌器ではなく、分散器、混練器、混合器等であってもよい。撹拌対象物40は、1種以上の材料で形成されている。つまり、撹拌対象物40は、単一材料よりなっていていてもよいし、二以上の材料(例えば、異種材料)よりなっていてもよい。撹拌対象物40例としては、流体、粉体等が挙げられる。より具体的には、撹拌対象物40は、水溶液、混合ガス、ゴム等の樹脂材料であってもよい。また、撹拌対象物40は、水等の液体に固形物を分散させた分散体であってもよく、例えば、セメントと水の混合物(コンクリート、モルタル、アスファルト等)であってよい。また、撹拌対象物40は、食料品であってよく、バター、マーガリン、マヨネーズ、クリーム、ミンチ肉、もち、生地(パン、菓子、麺類等の生地)等が挙げられる。
【0013】
1.2.1 撹拌器
図2に示す撹拌器30は、撹拌対象物40を撹拌することで、所定の状態を有する撹拌対象物40を得る。撹拌器30は、駆動装置31と、電線32と、制御装置33と、機構部34とを含む。
【0014】
機構部34は、撹拌対象物40を撹拌する。機構部34は、撹拌対象物40を撹拌するための撹拌スペース340を内部に有している。機構部34は、撹拌スペース340内に、撹拌対象物40の撹拌のための複数の回転体341,342を備える。回転体341,342は、一例として、撹拌羽根である。2つの回転体341,342は互いに独立して回転可能である。機構部34では、回転体341,342が回転することによって撹拌対象物40が撹拌される。
【0015】
駆動装置31は機構部34を駆動する。言い換えれば、駆動装置31は、機構部34の動力源である。駆動装置31は、複数のモータ311,312を含む。モータ311,312の出力は与えられた電流に応じて変化する。モータ311,312は撹拌器30の回転体341,342をそれぞれ互いに独立して回転させる。本実施形態では、モータ311のロータ311aが回転する回転軸311axは、回転体341が回転する軸341axに平行である。同様に、モータ312のロータ312aが回転する回転軸312axは、回転体342の回転の軸342axに平行である。
【0016】
モータ311,312は交流で動作する交流モータである。交流モータは、三相交流モータや単相交流モータであってよい。具体的には、モータ311,312は、与えられた交流電流の基準周波数の変化に応じて出力すなわち回転速度(単位時間当たりの回転数)が変化する。一例として、基準周波数が高くなければ出力が大きくなり(出力軸の回転が速く、回転速度が大きくなり)、基準周波数が低くなれば出力が小さくなる(出力軸の回転が遅く、回転速度が小さくなる)。
【0017】
制御装置33は、駆動装置31を制御する。制御装置33は、電線32を介して駆動装置31に接続され、電線32を介して電流I30を駆動装置31に供給する。より詳細には、制御装置33は、電源装置331,332を備える。電線32は、電線321,322を含む。電源装置331,332は、駆動装置31のモータ311,312に電線321,322を介してそれぞれ接続され、電線321,322によって電流I31,I32を駆動装置31のモータ311,312にそれぞれ供給する。以下では、電流I31,I32を区別しない場合には、単に、電流I30ということがある。
【0018】
特に、電源装置331,332は、機構部34で撹拌対象物40を撹拌するために、駆動装置31のモータ311,312に電流I31,I32をそれぞれ供給する。つまり、電流I31,I32は、撹拌器30が撹拌対象物40を撹拌している状態で駆動装置31に供給される。本実施形態では、モータ311,312は交流モータであるので、電流I31,I32は基準周波数を有する交流である。電源装置331,332は、電流I31,I32の基準周波数を調整する。
【0019】
1.2.2 判定システム
判定システム10は、撹拌対象物40の状態として、撹拌対象物40の粘度を判定する。つまり、判定システム10は、粘度測定システムとしての機能を有する。判定システム10は、
図1に示すように、測定部20を備える。また、判定システム10は、取得部11と、抽出部12と、判定部13と、出力部14と、収集部15と、生成部16と、記憶部17と、を備える。
【0020】
測定部20は、撹拌器30の駆動装置31に供給される電流I30を測定し、電流I30に関する波形を示す波形データ(電流波形データ)を出力する。測定部20は、制御装置33から駆動装置31への電流I30が流れる電線32に取り付けられる。測定部20は、電流センサを含む。本実施形態では、測定部20は、微分型の電流センサを含む。したがって、波形データは、電流I30の微分の波形を示すデータである。この種の微分型の電流センサとしては、カレントトランス及びサーチコイルが挙げられる。この種の微分型の電流センサを用いることで、測定部20を、電線32に後付けすることが可能になる。
【0021】
判定システム10では、測定部20を駆動装置31の特にモータ311,312のロータ311a,312aの近傍に設置する必要がない。測定部20は、駆動装置31に供給される電流I30を測定できればよいから、制御装置33を収納する制御盤等の内部に設置できる。よって、機構部34において、測定部20の設置のための装置や、配線の引き回しが不要であり、また、測定部20の設置に起因する機構部34のバランス調整等の必要がなくなる。更に、そのため、測定部20の設置にあたって、撹拌対象物40の撹拌中に測定部20を使用できるようにするための対策(例えば、耐油対策、耐熱対策、防水対策等)が必要ない。よって、測定部20のメンテナンスの負担を軽減可能である。また、撹拌器30が作業中すなわち撹拌対象物40を撹拌している状態でも、波形データを取得できる。したがって、判定システム10での判定のために、撹拌器30の作業を中断する必要がなく、よって、判定による撹拌作業の長期化が低減され得る。更に、撹拌器30の作業中でも、波形データの取得が可能であることから、撹拌対象物40の状態を随時把握できる。
【0022】
図3及び
図4は、撹拌器30の駆動装置31に供給される電流I30の時間軸波形を示す。時間軸波形は時間に対する電流の値を示す。
図3は、撹拌対象物40の撹拌の開始直後の電流I30の波形を示す。
図4は、撹拌対象物40の撹拌の開始から十分に時間が経過した後の電流I30の波形を示す。ただし、
図3及び
図4は、実際の波形ではなく仮想的な波形である。
【0023】
図5及び
図6は、撹拌器30の駆動装置31に供給される電流I30の周波数成分を示す周波数軸波形を示す。周波数軸波形は、周波数に対する電流の成分の値を示す。
図5は、
図3の電流I30の周波数成分、つまり、撹拌対象物40の撹拌の開始直後の電流I30の周波数成分を示す。ここでは、基準周波数f0でのピークW1と、基準周波数f0の側帯波のピークW2,W3が見られる。一方、
図6は、
図4の電流I30の周波数成分、つまり、撹拌対象物40の撹拌の開始から十分に時間が経過した後の電流I30の周波数成分を示す。ここでは、基準周波数f0のピークW1のみが見られ、基準周波数f0に対する側帯波に対応するピークW2,W3が見られない。
【0024】
図7は、電流I30の周波数成分の分布範囲の時間変化を示す。
図7から明らかなように、電流I30の周波数成分の範囲Wfは、基準周波数f0を中心と分布しており、時間の経過とともに基準周波数f0に収束する。そして、撹拌対象物40が均一に混ざるほど柔らかくなる場合には、撹拌の開始から時間が経過するにつれて、撹拌対象物40の粘度は低下する。逆に、撹拌対象物40が均一に混ざるほど固くなる場合には、撹拌の開始から時間が経過するにつれて、撹拌対象物40の粘度は増加する。そのため、電流I30の周波数成分の分布範囲の変化と撹拌対象物40の状態(例えば粘度)とは相関があると考えられる。そして、電流I30の周波数成分の分布範囲Wfの変化は、駆動装置31にかかる力すなわちモータ311,312のロータ311a,312aにかかる力の特定方向の成分に起因する。撹拌対象物40が均一に混ざっていない場合には、回転体341,342がスムーズに回転しにくく、回転体341,342の回転方向において不規則な力が回転体341,342にかかる。以上の点から、撹拌器30で撹拌される撹拌対象物40の状態と、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化とには相関がある。判定システム10では、撹拌器30で撹拌される撹拌対象物40の状態と、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化との相関を利用して、撹拌対象物40の状態を判定する。なお、上記の特定方向は、撹拌器30の構成に依存する。例えば、撹拌器30が、モータ311,312のロータ311a,312aの回転軸311ax、312axに対して、どのような方向の力を撹拌対象物40に作用させるかによって、上記の特定方向は変わり得る。例えば、撹拌器30が撹拌対象物40に対してモータ311によって直線的な押圧力をかける場合には、上記の特定方向は、モータ311のロータ311aの回転軸に交差する方向である。
【0025】
取得部11は、撹拌器30の駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データ(電流波形データ)を取得する。より詳細には、取得部11は、測定部20に接続されており、測定部20から波形データを取得する。測定部20からの波形データは、電流I30を時間で微分して得られた波形を示すデータである。取得部11は、撹拌器30の駆動装置31のモータ311,312に供給される電流I31,I32に関する波形を示す波形データ(電流波形データ)を取得する。
【0026】
抽出部12は、取得部11で取得された波形データから、判定部13で利用する情報を取得する。判定部13で利用する情報は、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化に関する情報である。抽出部12は、取得部11で取得された波形データが示す時間軸波形(
図3及び
図4参照)を周波数軸波形(
図5及び
図6参照)に変換する。時間軸波形は周波数軸波形へ、一例として、高速フーリエ変換(FFT)で変換できる。抽出部12は、変換によって得られた周波数軸波形から、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化を含み得る着目部分を抽出する。
【0027】
図7に示すように、電流I30の周波数成分の分布範囲Wfは、基準周波数f0を中心に広がり、時間の経過とともに基準周波数f0に収束する。電流I30の周波数成分は、基準周波数f0及び側帯波を含んでおり、撹拌対象物40の状態の変化は、基準周波数f0よりも側帯波の変化に影響し得る。よって、抽出部12は、周波数軸波形から、着目部分として側帯波に対応する部分を抽出してよい。
【0028】
判定部13は、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から撹拌器30で撹拌される撹拌対象物40の状態を判定する。本実施形態では、判定部13は、抽出部12で抽出された着目部分に基づいて、撹拌対象物40の状態を判定する。本実施形態では、判定部13は、撹拌対象物40の状態として撹拌対象物40の粘度を判定する。
【0029】
判定部13は、学習済みモデルM11を利用して、撹拌対象物40の状態を判定する。学習済みモデルM11は、与えられた入力(着目部分)に対して、撹拌対象物40の状態を示す値(状態値)を出力するように設計されている。判定部13は、抽出部12から得た着目部分を学習済みモデルM11に与え、これによって学習済みモデルM11から得られた状態値に基づいて、撹拌対象物40の状態を判定する。例えば、状態値は粘度に対応していてよく、この場合、判定部13は、学習済みモデルM11から得られた状態値から、撹拌器30の粘度(現在の粘度)を求めることができる。このような学習済みモデルM11は、状態値に対応するラベルと着目部分との関係を規定する学習用データ(データセット)を用いた教師あり学習により生成することができる。学習済みモデルM11は、記憶部17に記憶されている。なお、記憶部17は、モータ311,312の種類毎に、学習済みモデルM11を記憶してよい。つまり、判定部13は、モータ311,312それぞれに対して異なる学習済みモデルM11を利用してよい。
【0030】
このように、判定部13は、撹拌対象物40の状態を判定することができる。特に、撹拌対象物40が均一に混ざるほど柔らかくなる場合には、判定部13は、撹拌対象物40が所定の柔らかさを有しているか否かを判定することができる。これによって、撹拌対象物40の柔らかさを所定の柔らかさに調整する作業が容易に行えるようになる。逆に、撹拌対象物40が均一に混ざるほど固くなる場合には、判定部13は、撹拌対象物40が所定の固さを有しているか否かを判定することができる。これによって、撹拌対象物40の固さを所定の固さに調整する作業が容易に行えるようになる。
【0031】
本実施形態では、取得部11によって、2種類の電流I31,I32の波形データが得られる。そのため、2種類の電流I31,I32の波形データそれぞれから、撹拌対象物40の状態が得られる。判定部13は、2種類の電流I31,I32の波形データにそれぞれ対応する撹拌対象物40の状態から、最終的な撹拌対象物40の状態を決定してよい。例えば、電流I31,I32にそれぞれ対応する撹拌対象物40の粘度の代表値を、最終的な撹拌対象物40の粘度としてよい。代表値は、平均値、最大値、最小値、最頻値等から適宜選択され得る。
【0032】
出力部14は、判定部13での判定の結果を出力する。出力部14は、例えば、音声出力装置と、ディスプレイと、を有する。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの薄型のディスプレイ装置である。出力部14は、判定部13での判定の結果をディスプレイに表示したり、音声出力装置で報知したりしてもよい。また、出力部14は、判定部13での判定の結果をデータとして外部装置に送信したり、蓄積したりしてもよい。なお、出力部14は、音声出力装置とディスプレイとの両方を有する必要はない。また、出力部14は、判定部13での判定の結果を電子メール等で出力することもできる。
【0033】
収集部15は、取得部11で取得されたデータを収集して蓄積する。本実施形態では、取得部11で取得されたデータは、測定部20からの波形データを含む。収集部15が収集したデータは、学習済みモデルM11の生成・改良に利用される。
【0034】
生成部16は、判定部13が利用する学習済みモデルM11を生成する。生成部16は、一定量以上の学習用データを用いて、機械学習アルゴリズムによって学習済みモデルM11を生成する。学習用データは、予め用意されていてもよいし、収集部15が蓄積したデータから生成されてもよい。収集部15が蓄積したデータから生成された学習用データを採用することで、学習済みモデルM11を用いた状態判定の精度の更なる向上が見込める。生成部16は、新しく生成した学習済みモデルM11を評価し、学習済みモデルM11の評価が向上すると、記憶部17に記憶されている学習済みモデルM11を新しく生成した学習済みモデルM11に置き換えて、学習済みモデルM11を更新する。学習済みモデルM11の生成の方法としては、上述したように、教師あり学習を適宜利用できる。教師あり学習としては、代表的な、教師あり学習機構を有する多層ニューラルネットワークを利用できる。
【0035】
判定システム10において、取得部11と、抽出部12と、判定部13と、出力部14と、収集部15と、生成部16とは、例えば、1以上のプロセッサ(一例としてはマイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラムを実行することで、取得部11と、抽出部12と、判定部13と、出力部14と、収集部15と、生成部16として機能する。1以上のプログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0036】
1.3 動作
次に、
図5を参照して判定システム10の基本的な動作について簡単に説明する。以下では、説明を簡略化するために、撹拌器30の機構部34に関する診断について説明する。
【0037】
取得部11は、撹拌器30の駆動装置31のモータ311,312に供給される電流I31,I32に関する波形を示す波形データ(電流波形データ)を取得する(ステップS11)。次に、抽出部12は、取得部11で取得された波形データが示す波形を周波数軸波形に変換し、周波数軸波形から、駆動装置31の特にモータ311、312のロータ311a,312aにかかる力の特定方向の成分に起因する変化を含む部分を抽出する(ステップS12)。その後、判定部13は、複数の学習済みモデルM11を用いて、抽出部12で抽出された着目部分から、撹拌対象物40の状態を判定する(ステップS13)。最後に、出力部14は、判定部13での判定の結果を出力する(S14)。このように、判定システム10は、駆動装置31に供給される電流I31,I32に関する波形を示す波形データから、撹拌器30で撹拌される撹拌対象物40の状態を判定してその結果を提示できる。
【0038】
1.4 適用例
図9は、判定システム10を利用した撹拌器30の制御の一例を示す。
図9では、判定システム10は、撹拌対象物40の状態として粘度を判定する。
図9は、判定システム10で判定した撹拌対象物40の状態(粘度)の履歴(時間変化)に基づいて、撹拌対象物40の粘度が目標値V11となる撹拌器30の制御の条件を決定する。例えば、時刻t12までに得られた撹拌対象物40の状態(粘度)の履歴(時間変化)から、時刻t12以後の撹拌対象物40の状態(粘度)の予測値を得る。なお、
図9は、時刻t12までは撹拌対象物40の粘度の実測値(判定システム10での判定した粘度の値)を示し、時刻t12以後は撹拌対象物40の粘度の予測値を示す。撹拌対象物40の粘度の予測値と、撹拌対象物40の粘度の実測値との差を考慮して、撹拌器30の制御の条件を決定する。なお、撹拌器30の制御の条件は、撹拌対象物40の温度及び撹拌期間を含み得る。例えば、撹拌対象物40の温度を変化させることで、撹拌期間(撹拌終了時刻t11)を変えずに、粘度が目標値V11となった撹拌対象物40を得ることが可能である。
【0039】
図10は、判定システム10を利用した、撹拌器30の制御の他例を示す。
図10では、
図9と同様に、判定システム10は、撹拌対象物40の状態として粘度を判定する。
図10は、判定システム10で判定した撹拌対象物40の状態に基づいて撹拌器30での撹拌期間を調整する例を示す。判定システム10は、撹拌対象物40の粘度を判定する。判定システム10で判定された撹拌対象物40の粘度の値と目標値V21との差が0になるまで、撹拌器30での撹拌を継続する。つまり、撹拌対象物40の粘度が目標値V21となるまで、撹拌器30での撹拌を継続する。例えば、時刻t21において、判定システム10を用いて撹拌対象物40の粘度を判定し、このときの撹拌対象物40の粘度の値V22が目標値V21と異なれば、撹拌器30での撹拌を継続する。そして、時刻t22では、判定システム10で判定された撹拌対象物40の粘度の値が目標値V21に一致しているので、撹拌器30での撹拌を終了する。これによって、撹拌の終了時には、粘度が目標値V21となった撹拌対象物40を得ることが可能である。
【0040】
このように判定システム10を利用することで、撹拌対象物40の状態を所望の状態に容易に調整できる。そのため、熟練の作業者の感等に頼らなくて済むようになり、撹拌対象物40の状態のばらつきの抑制が可能である。
【0041】
1.5 まとめ
以上述べた判定システム10は、取得部11と、判定部13とを備える。取得部11は、撹拌対象物40を撹拌する撹拌器30の駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを取得する。判定部13は、波形データから得られる、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、撹拌対象物40の状態に関する判定を行う。このような判定システム10によれば、撹拌対象物40の状態の判定の精度を向上できる。
【0042】
換言すれば、判定システム10は、下記の判定方法を実行しているといえる。判定方法は、取得ステップと、判定ステップとを備える。取得ステップは、撹拌対象物40を撹拌する撹拌器30の駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを取得するステップである。判定ステップは、波形データから得られる、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、撹拌対象物40の状態に関する判定を行うステップである。このような判定方法によれば、撹拌対象物40の状態の判定の精度を向上できる。
【0043】
判定システム10は、1以上のプロセッサを含むコンピュータシステムにより実現されている。つまり、判定システム10は、1以上のプロセッサがプログラム(判定プログラム)を実行することにより実現される。このプログラムは、1以上のプロセッサに判定方法を実行させるためのプログラム(コンピュータプログラム)である。このようなプログラムによれば、判定方法と同様に、撹拌対象物40の状態の判定の精度を向上できる。
【0044】
2.変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
【0045】
一変形例では、取得部11は、必ずしも2種類の電流I31,I32の波形データを取得しなくてよい。例えば、取得部11は、モータ311,312の一方に供給される電流I30、つまり、電流I31,I32の一方の波形データだけを取得してよい。この場合、測定部20は、電流I31,I32の一方だけを測定すればよい。また、取得部11は、2より多い複数の電流の波形データを取得してもよい。
【0046】
一変形例では、取得部11は、回転体341,342の回転数を変動させたときの波形データを取得してよい。このようにして、撹拌対象物40に積極的に変化を生じさせることで、駆動装置31に供給される電流I30に撹拌対象物40の状態の影響が反映される可能性がある。これによって、取得部11で取得される電流I30の波形データにおいて撹拌対象物40の状態に起因する変化が生じることが期待できる。したがって、撹拌対象物40の状態の判定の精度の更なる向上が図れる。
【0047】
一変形例では、取得部11は、撹拌対象物40に所定の処理を行ったときの波形データを取得してよい。所定の処理は、外部要因によって撹拌対象物40に積極的に変化を生じさせる処理である。所定の処理の例としては、撹拌対象物40の加熱、冷却、加圧、減圧等が挙げられる。このようにして、撹拌対象物40に積極的に変化を生じさせることで、駆動装置31に供給される電流I30に撹拌対象物40の状態の影響が反映される可能性がある。これによって、取得部11で取得される電流I30の波形データにおいて撹拌対象物40の状態に起因する変化が生じることが期待できる。したがって、撹拌対象物40の状態の判定の精度の更なる向上が図れる。
【0048】
撹拌対象物40の状態は、粘度に限らず、レイノルズ数、固形物(だま)の割合、撹拌の程度等の撹拌対象物40の状態を表す数値であってもよい。また、撹拌対象物40の状態は、数値に限定されず、正常、異常、及び、不特定状態等の事象であってもよい。つまり、撹拌対象物40の状態は、定量的な状態であってもよいし、定性的な状態であってもよい。
【0049】
例えば、判定システム10は、必ずしも、測定部20を備えている必要はない。一例として、測定部20が予め撹拌器30に備えられていれば、判定システム10は、取得部11、抽出部12、判定部13、出力部14、収集部15、生成部16、及び記憶部17を有しているだけでもよい。
【0050】
ここで、測定部20は、必ずしも、微分型の電流センサを含む必要はなく、その他の従来周知の電流センサであってもよい。
【0051】
また、判定システム10は、必ずしも、収集部15、生成部16、及び記憶部17を有している必要はない。つまり、判定システム10は、学習済みモデルM11を自身で更新する機能を有していなくてよい。また、記憶部17は、必ずしも複数の学習済みモデルM11を記憶している必要はない。
【0052】
また、抽出部12は、必須ではない。例えば、抽出部12での処理をユーザが代替して行う場合、判定システム10は、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化を含む部分の抽出を行わなくてよい。また、取得部11で取得された波形データが示す波形の全体を入力として学習済みモデルM11から撹拌器30の状態を出力として得てよい。つまり、変化を含む部分の抽出を省略してよい。
【0053】
また、判定システム10は、必ずしも、出力部14を有している必要はない。一例として、判定システム10は、判定部13で判定された撹拌対象物40の状態を、判定システム10外に出力可能であってよい。
【0054】
また、判定システム10は、複数のコンピュータにより構成されていてもよく、判定システム10の機能(特に、取得部11、抽出部12、判定部13、出力部14、収集部15、及び生成部16)は、複数の装置に分散されていてもよい。例えば、取得部11、抽出部12、判定部13及び出力部14は、機器のある施設に設置されるパーソナルコンピュータ等に設けられてよく、生成部16及び出力部14は、外部のサーバ等に設けられてよい。この場合、パーソナルコンピュータとサーバとが協働することで、判定システム10が実現される。更に、判定システム10の機能の少なくとも一部が、例えば、クラウド(クラウドコンピューティング)によって実現されていてもよい。
【0055】
以上述べた判定システム10の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを有する。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における判定システム10の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(verylarge scale integration)、若しくはULSI(ultralarge scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FGPA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0056】
3.態様
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0057】
第1の態様は、判定システム(10)であって、取得部(11)と、判定部(13)とを備える。前記取得部(11)は、撹拌対象物(40)を撹拌する撹拌器(30)の駆動装置(31)に供給される電流(I30,I31,I32)に関する波形を示す波形データを取得する。前記判定部(13)は、前記波形データから得られる、前記駆動装置(31)にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、前記撹拌対象物(40)の状態を判定する。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度を向上できる。
【0058】
第2の態様は、第1の態様に基づく判定システム(10)である。第2の態様では、前記電流(I30,I31,I32)は、前記撹拌対象物(40)の撹拌中に前記駆動装置(31)に供給される。この態様によれば、撹拌器(30)での撹拌を中断することなく、撹拌対象物(40)の状態を判定できる。
【0059】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく判定システム(10)である。第3の態様では、前記駆動装置(31)は、前記撹拌対象物(40)の撹拌のための回転体(341,342)を回転させるモータ(311,312)を含む。前記駆動装置(31)にかかる力は、前記モータ(311,312)のロータ(311a,312a)にかかる力である。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度を更に向上できる。
【0060】
第4の態様は、第3の態様に基づく判定システム(10)である。第4の態様では、前記駆動装置(31)は、複数の前記回転体(341,342)をそれぞれ独立して回転させる複数の前記モータ(311,312)を含む。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度を更に向上できる。
【0061】
第5の態様は、第3又は第4の態様に基づく判定システム(10)である。第5の態様では、前記取得部(11)は、前記回転体(341,342)の回転数を変動させたときの前記波形データを取得する。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度の更なる向上が図れる。
【0062】
第6の態様は、第1~第4の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第6の態様では、前記取得部(11)は、前記撹拌対象物(40)に所定の処理を行ったときの前記波形データを取得する。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度の更なる向上が図れる。
【0063】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第7の態様では、前記判定部(13)は、前記撹拌対象物(40)の粘度を判定する。この態様によれば、撹拌対象物(40)の粘度の判定が可能となる。
【0064】
第8の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第8の態様では、前記撹拌対象物(40)は、均一に混ざるほど柔らかくなる。前記判定部(13)は、前記撹拌対象物(40)が所定の柔らかさを持っているかを判定する。この態様によれば、撹拌対象物(40)の柔らかさを所定の柔らかさに調整する作業が容易に行えるようになる。
【0065】
第9の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第9の態様では、前記撹拌対象物(40)は、均一に混ざるほど固くなる。前記判定部(13)は、前記撹拌対象物(40)が所定の固さを持っているかを判定する。この態様によれば、撹拌対象物(40)の固さを所定の固さに調整する作業が容易に行えるようになる。
【0066】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第10の態様では、前記判定システム(10)は、前記波形を周波数軸波形に変換し、前記周波数軸波形から前記変化を含み得る部分を抽出する抽出部(12)を更に備える。前記判定部(13)は、前記抽出部(12)で抽出された前記部分に基づいて、前記撹拌対象物(40)の状態を判定する。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度の更なる向上が図れる。
【0067】
第11の態様は、第10の態様に基づく判定システム(10)である。第11の態様では、前記判定部(13)は、学習済みモデル(M11)を利用して、前記部分から前記撹拌対象物(40)の状態を判定する。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度の更なる向上が図れる。
【0068】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第12の態様では、前記判定システム(10)は、前記電流(I30,I31,I32)を測定して前記波形データを出力する測定部(20)を更に備える。前記測定部(20)は、微分型の電流センサを含む。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度を向上できる。
【0069】
第13の態様は、第12の態様に基づく判定システム(10)である。第13の態様では、前記測定部(20)は、前記電流(I30,I31,I32)が流れる電線(32,321,322)に取り付けられる。この態様によれば、判定システム(10)を容易に実装できる。
【0070】
第14の態様は、判定方法であって、取得ステップと、判定ステップとを含む。前記取得ステップは、撹拌対象物(40)を撹拌する撹拌器(30)の駆動装置(31)に供給される電流(I30,I31,I32)に関する波形を示す波形データを取得するステップである。前記判定ステップは、前記波形データから得られる、前記駆動装置(31)にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、前記撹拌対象物(40)の対象状態を判定するステップである。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度を向上できる。
【0071】
第15の態様は、プログラムであって、1以上のプロセッサに、第14の態様の判定方法を実行させるための、プログラムである。この態様によれば、撹拌対象物(40)の状態の判定の精度を向上できる。
【符号の説明】
【0072】
10 判定システム
11 取得部
12 抽出部
13 判定部
20 測定部
30 撹拌器
31 駆動装置
311,312 モータ
311a,312a ロータ
32,321,322 電線
341,342 回転体
40 撹拌対象物
I30,I31,I32 電流
M11 学習済みモデル