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特許7539122地盤掘削装置、地下構造物の下地盤の検査方法および補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】地盤掘削装置、地下構造物の下地盤の検査方法および補修方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20240816BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
E21B7/00 Z
E02D3/12 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024092725
(22)【出願日】2024-06-07
【審査請求日】2024-06-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大竹 庸之
(72)【発明者】
【氏名】谷室 裕久
(72)【発明者】
【氏名】山ノ内 智之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 丈覚
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐明
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-152832(JP,A)
【文献】特開平10-152831(JP,A)
【文献】特許第3820652(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/00
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に地盤掘削用のビットが設けられたフレキシブルシャフトと、
前記フレキシブルシャフトに連結される回転ロッドと、
前記回転ロッドに連結される駆動軸と、
前記駆動軸に連結され、前記駆動軸、前記回転ロッド、および前記フレキシブルシャフトを回転させるモータと、
前記回転ロッドが挿入されて収納される第1管体と、
前記第1管体に連結され、前記フレキシブルシャフトが挿入されて収納される第2管体と、を備えた地盤掘削装置であって、
前記フレキシブルシャフトは、中空部がない中実の湾曲可能な部材からなり、
前記第1管体と前記回転ロッドとの間には、掘削用の削孔水が通過する第1空間が形成されており、
前記第2管体と前記フレキシブルシャフトとの間には、前記第1空間と連通し前記削孔水が通過する第2空間が形成されており、
前記ビットの外径は、前記第2管体の先端部の内径より小さくなっており、
地盤掘削時に、前記ビットと前記第2管体の間隙から前記削孔水が噴射され、掘削終了後に、前記ビット、前記フレキシブルシャフト、および前記回転ロッドを、これらが連結された状態で、前記第1管体および前記第2管体から引き抜けるように構成されている、ことを特徴とする地盤掘削装置。
【請求項2】
前記回転ロッドは、複数の回転ロッドからなり、
各回転ロッドは、一端に第1接続部を、他端に第2接続部をそれぞれ有しており、
前記第1接続部と、他の回転ロッドの前記第2接続部とを着脱自在に接続することにより、前記複数の回転ロッドが相互に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の地盤掘削装置。
【請求項3】
前記第1接続部は、第1ネジ部を有しており、
前記第2接続部は、前記第1ネジ部と螺合する第2ネジ部と、ネジ部を有しない嵌合部とを有しており、
前記複数の回転ロッドは、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との螺合により相互に接続され、
前記複数の回転ロッドのうち、最後部の回転ロッドは、前記嵌合部に前記駆動軸が嵌合することにより当該駆動軸に連結される、ことを特徴とする請求項2に記載の地盤掘削装置。
【請求項4】
前記フレキシブルシャフトと前記回転ロッドとを連結する連結部材を備え、
前記連結部材に、前記削孔水を前記第1空間から前記第2空間へ通過させるための切欠き部が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の地盤掘削装置。
【請求項5】
前記回転ロッドと前記第1管体との間に、前記回転ロッドが回転時に振れるのを抑制するための振れ止め部材が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の地盤掘削装置。
【請求項6】
前記振れ止め部材は、前記回転ロッドの外周に取り付けられたベアリングからなる、ことを特徴とする請求項5に記載の地盤掘削装置。
【請求項7】
前記ビットと前記第2管体との間に、ビット回転時における両者の摩擦を軽減するための、金属または樹脂からなる摩擦軽減部材が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の地盤掘削装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の地盤掘削装置を用いて、地下構造物の下地盤を検査する方法であって、
前記地下構造物の付近に形成された立坑内に、前記第2管体を曲げ加工するための曲げ加工部を備えた管ベンダーを設置する工程と、
前記フレキシブルシャフトが収納された前記第2管体を、前記管ベンダーの前記曲げ加工部へ送り込み、当該曲げ加工部において、前記第2管体を前記地下構造物の方向へ曲げ加工する工程と、
曲げ加工された前記第2管体を、前記ビットの回転と前記削孔水の噴射により地中で推進させて、前記地下構造物の下地盤へ到達させる工程と、
前記ビット、前記フレキシブルシャフト、および前記回転ロッドを、これらが連結された状態で、前記第1管体および前記第2管体から引き抜く工程と、
下地盤検査用のテレビカメラを、前記第1管体を通して前記第2管体へ挿入し、当該テレビカメラを前記地下構造物の下地盤へ到達させる工程と、
前記テレビカメラにより前記下地盤の状態を撮影する工程と、
撮影終了後に、前記テレビカメラを前記第2管体から前記第1管体を通して地上へ回収する工程と、を含むことを特徴とする地下構造物の下地盤の検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の検査方法による検査の結果、前記下地盤に空洞が生じていることが確認された場合の補修方法であって、
前記テレビカメラを地上へ回収した後、前記第1管体から前記第2管体を通してグラウトを供給し、当該グラウトを前記第2管体の先端から吐出させて、前記下地盤の空洞内に注入し充填する、ことを特徴とする地下構造物の下地盤の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの先端に設けられたビットの回転と削孔水の噴射により、地中でシャフトを推進させながら地盤を掘削する装置に関し、また、これを用いて地下構造物の下地盤を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や自重などによる建物の倒壊や沈下を防止するため、建物は基礎と呼ばれる地下構造物によって支持されている。基礎にはいろいろな種類があるが、例えばフーチング基礎は、下部に底面積の広い部分(フーチング)を有する逆T字形の基礎であって、支持力を高める効果がある。しかし、大地震が発生して、フーチング基礎の下地盤が流動化現象により流失すると、地盤内に空洞が生じて支持力が低下し、建物の安全が脅かされる。
【0003】
この対策として、特許文献1に記載されている方法が知られている。特許文献1では、地下構造物の近傍に形成された立坑に金属管を挿入し、立坑内でこの金属管に曲げ加工を施しながら、当該金属管を地中において弧状に推進させつつ、地下構造物の下地盤へ到達させる。その後、ワイヤの一端に取り付けられた超小型のテレビカメラを金属管内に挿入して下地盤へ送り込み、このテレビカメラが撮影した映像を遠隔で目視観察することにより、下地盤内の空洞の有無を判別する。そして、空洞が確認された場合は、テレビカメラを地上に回収した後、空洞内にセメントミルクなどのグラウトを注入し充填することにより、下地盤を補修する。
【0004】
特許文献1の地盤掘削装置においては、金属管の先端から掘削用の先端ビットが突出していて、この先端ビットは、金属管内に挿通された回転体であるフレキシブルシャフトに連結されている。また、先端ビットとフレキシブルシャフトには、削孔水を通すための中空部が形成されている。給水源からフレキシブルシャフトの中空部へ供給された削孔水は、先端ビットの中空部を通って前方へ噴射される。先端ビットは、削孔水を噴射させながらフレキシブルシャフトと一体に回転し、地盤を弧状に掘削してゆく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3820652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、金属管内に挿入されたテレビカメラは、フレキシブルシャフトの中空部から先端ビットの中空部を通って、金属管の前方へ突出する。しかしながら、先端ビットから削孔水を高圧で噴射するためには、フレキシブルシャフトと先端ビットのそれぞれの中空部の内径を一定値以下(例えばφ6程度)に抑える必要がある。このため、中空部を通るテレビカメラも超小型のものに限定されることになり、地下構造物の下地盤の状態を広範囲にわたって観察することが困難となる。
【0007】
また、特許文献1では、下地盤に空洞が存在して補修が必要な場合に、フレキシブルシャフトおよび先端ビットに形成されている、内径の小さい中空部を通してグラウトが供給される。このため、空洞内へのグラウトの注入が完了するまで長時間を要するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、サイズの大きいテレビカメラを用いて下地盤の状態を広範囲に観察でき、また、下地盤に空洞が存在する場合は、グラウト注入による補修を短時間で行うことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地盤掘削装置は、先端に地盤掘削用のビットが設けられたフレキシブルシャフトと、このフレキシブルシャフトに連結される回転ロッドと、この回転ロッドに連結される駆動軸と、この駆動軸に連結され、駆動軸と回転ロッドとフレキシブルシャフトを回転させるモータと、回転ロッドが挿入されて収納される第1管体と、この第1管体に連結され、フレキシブルシャフトが挿入されて収納される第2管体とを備えている。
【0010】
フレキシブルシャフトは、中空部がない中実の湾曲可能な部材からなる。第1管体と回転ロッドとの間には、掘削用の削孔水が通過する第1空間が形成されている。第2管体とフレキシブルシャフトとの間には、第1空間と連通し削孔水が通過する第2空間が形成されている。ビットの外径は、第2管体の先端部の内径より小さくなっている。そして、本発明の地盤掘削装置は、地盤掘削時に、ビットと第2管体の間隙から削孔水が噴射され、掘削終了後に、ビットとフレキシブルシャフトと回転ロッドとを、これらが連結された状態で第1管体および第2管体から引き抜けるように構成されている。
【0011】
また、本発明の下地盤検査方法は、地下構造物の付近に形成された立坑内に、第2管体を曲げ加工するための曲げ加工部を備えた管ベンダーを設置する工程と、フレキシブルシャフトが収納された第2管体を管ベンダーの曲げ加工部へ送り込み、この曲げ加工部において第2管体を地下構造物の方向へ曲げ加工する工程と、曲げ加工された第2管体を、ビットの回転と削孔水の噴射により地中で推進させて、地下構造物の下地盤へ到達させる工程と、ビットとフレキシブルシャフトと回転ロッドとを、これらが連結された状態で第1管体および第2管体から引き抜く工程と、下地盤検査用のテレビカメラを第1管体を通して第2管体へ挿入し、このテレビカメラを地下構造物の下地盤へ到達させる工程と、テレビカメラにより下地盤の状態を撮影する工程と、撮影終了後にテレビカメラを第2管体から第1管体を通して地上へ回収する工程とを含む。
【0012】
また、本発明の下地盤補修方法では、下地盤に空洞が生じていることが確認された場合に、テレビカメラを地上へ回収した後、第1管体から第2管体を通してグラウトを供給し、このグラウトを第2管体の先端から吐出させて、下地盤の空洞内に注入し充填する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掘削が終了した後、ビットとフレキシブルシャフトと回転ロッドとの連結体を、第1管体および第2管体から引き抜くことにより、各管体の内部は障害物のない中空状態となるので、各管体を通してサイズの大きいテレビカメラを挿入することができ、下地盤の状態を広範囲に観察することが可能となる。また、下地盤に空洞が存在して地盤の補修が必要な場合は、管径の大きい第1管体および第2管体を通して大量のグラウトを注入することで、グラウトを短時間で空洞に充填することができ、補修に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による地盤掘削装置の全体図である。
図2】地盤掘削装置の回転機構を示す図である。
図3】回転機構の分解図である。
図4】回転機構が収納される管体の断面図である。
図5】下地盤検査方法の工程を示す模式図である。
図6】下地盤検査方法の工程を示す模式図である(図5の続き)。
図7】下地盤補修方法の工程を示す模式図である。
図8】下地盤補修方法の工程を示す模式図である(図7の続き)。
図9】スリーブ管を曲げ加工する管ベンダーの断面図である。
図10】管ベンダーの他の例を示す断面図である。
図11】下地盤検査方法の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図を通して、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0016】
図1は、本発明による地盤掘削装置の全体図である。図2は、図1から回転機構のみを抽出した図である。図3は、回転機構の分解図である。図4は、回転機構が収納される管体の断面図である。
【0017】
図1において、地盤掘削装置100は、フレキシブルシャフト1と、これに連結される複数の回転ロッド2と、最後部の回転ロッド2に連結される駆動軸3と、この駆動軸3に連結されるモータ4と、回転ロッド2が収納される複数のロッドケース(以下「第1管体」という)5と、フレキシブルシャフト1が収納されるスリーブ管(以下「第2管体」という)6と、第1管体5と第2管体6とを結合するジョイントケース9と、駆動軸3が収納される軸ケース7とを備えている。フレキシブルシャフト1、回転ロッド2、駆動軸3、およびモータ4は、回転機構を構成している。
【0018】
フレキシブルシャフト1は、中空部がない中実の湾曲可能な金属部材からなり、その長さは例えば5.5mである。フレキシブルシャフト1の先端には、地盤掘削用のビット10が設けられている。ビット10の外径は、第2管体6の内径(例えばφ35)より小さくなっており、ビット10と第2管体6との間に、間隙12が形成されている。地盤掘削時には、この間隙12を通して高圧の削孔水が噴射される。また、ビット10の外周には、ビット10が回転時に振れて第2管体6と接触した場合の、両者間の摩擦による発熱を抑制するための摩擦軽減部材11が設けられている。この摩擦軽減部材11は、真鍮のような金属、あるいはナイロンのような樹脂からなる。
【0019】
複数の回転ロッド2は、連結部材13を介して、フレキシブルシャフト1と連結されている。1つの回転ロッド2の長さは、例えば約1.3mである。各回転ロッド2は、先端側に設けられた第1接続部21と、後端側に設けられた第2接続部22と、これらの間に設けられた中間ロッド23とからなる。第1接続部21は、雄ネジからなる第1ネジ部21aを有している。第2接続部22は、図3に示すように、雌ネジからなる第2ネジ部22aと、ネジ部を有しない嵌合部22bとを有している。
【0020】
複数の回転ロッド2のうち、最前部と最後部を除く回転ロッド2は、第1ネジ部21aが他の回転ロッド2の第2ネジ部22aと螺合することにより、相互に着脱自在に接続される。この場合、図1のA-A断面に示すように、第1接続部21は、第1ネジ部21aの箇所を除いて円柱に形成されており、この円柱部分が他の回転ロッド2の嵌合部22と嵌合する。嵌合部22の断面は六角形である。
【0021】
最前部の回転ロッド2は、第1ネジ部21aが、連結部材13に形成された雌ネジからなるネジ部13b(図3参照)と螺合することにより、連結部材13に接続される。また、最前部の回転ロッド2は、第2ネジ部22a(図3参照)に、後続の回転ロッド2の第1ネジ部21aが螺合することにより、後続の回転ロッド2に接続される。
【0022】
最後部の回転ロッド2は、第1ネジ部21aが、隣接する回転ロッド2の第2ネジ部22aと螺合することにより、当該回転ロッド2に接続され、また、ネジ部を有しない嵌合部22bに、駆動軸3の先端部31が嵌合することにより、駆動軸3に連結される。この場合、図1のB-B断面に示すように、嵌合部22bは断面が六角形であり、駆動軸3の先端部31は六角柱に形成されている。したがって、駆動軸3の先端部31を回転ロッド2の嵌合部22bに嵌合させれば、駆動軸3の回転力を回転ロッド2に伝達することができる。駆動軸3の後端部32には、モータ4の回転軸41が結合される。
【0023】
第1管体5と回転ロッド2との間には、掘削用の削孔水が通過する第1空間8が形成されており、第2管体6とフレキシブルシャフト1との間には、上記削孔水が通過する第2空間14が形成されている。また、連結部材13には、削孔水を第1空間8から第2空間14へ通過させるための切欠き部13aが設けられている。
【0024】
各回転ロッド2と第1管体5との間には、回転ロッド2が回転時に振れるのを抑制するための振れ止め部材として、ベアリング15が設けられている。このベアリング15は、各回転ロッド2の外周に取り付けられており、ベアリング15と第1管体5の内壁との間には、削孔水を通すための間隙が形成されている。
【0025】
また、ジョイントケース9と連結部材13との間にも、連結部材13が回転時に振れるのを抑制するための振れ止め部材として、ベアリング17が設けられている。このベアリング17は、ジョイントケース9側に取り付けられている。
【0026】
第1管体5は金属管からなり、複数設けられている。例えば、1つの管体5の長さは1m、厚みは5mm、内径はφ50である。また、複数の第1管体5は同一の構造を有していて、先端部に雄ネジ部、後端部に雌ネジ部がそれぞれ形成されている。複数の第1管体5のうち、最前部の第1管体5は、雄ネジ部によりジョイントケース9に連結され、雌ネジ部により後続の第1管体5に連結される。また、最後部の第1管体5は、雄ネジ部により他の第1管体5に連結され、雌ネジ部により第1フランジ16に連結されている。
【0027】
第2管体6は単一の管体からなり、例えば、長さは5m、厚みは3mm、内径はφ35である。この第2管体6は、第1管体5と同様に金属管からなるが、第1管体5に比べてかなり長く、厚みも薄いことから、後述するように曲げ加工が可能である。第2管体6は、後端に形成された雄ネジ部により、ジョイントケース9に連結され、このジョイントケース9を介して第1管体5に連結される。
【0028】
駆動軸3を収納する軸ケース7は、モータブラケット7aと、第2フランジ7bとから構成される。モータブラケット7aの一端は、モータ4に連結されており、モータブラケット7aの他端は、第2フランジ7bに連結されている。第2フランジ7bには、削孔水を注入するための注入口7cが設けられている。第2フランジ7bは、最後部の第1管体5に取り付けられた第1フランジ16に連結されている。モータ4としては、例えば油圧モータを用いることができる。
【0029】
次に、上述した地盤掘削装置100を用いて、地下構造物の下地盤を検査する方法および補修する方法につき、図5図8の工程図を参照しながら詳細に説明する。なお、これらの図では、各部品を簡略化して描いてある。
【0030】
最初に、図5(A)に示すように、フーチング基礎のような地下構造物71の付近の地盤70に、ケーシングパイプ73による公知の掘削方法によって、立坑74を形成する。地下構造物71の下地盤には、空洞部72が存在している。続いて、図5(B)に示すように、この立坑74内に管ベンダー50を設置する。
【0031】
図9は、管ベンダー50の一例を示している。管ベンダー50は、ガイド部51と曲げ加工部52とを備えている。ガイド部51は、外部から送り込まれる第2管体6を案内する部分であって、曲げ加工部52と一体に形成された第1ガイド部51aと、この第1ガイド部51aに接続された第2ガイド部51bとからなる。曲げ加工部52は、ガイド部51から送り込まれた第2管体6を曲げ加工する部分であって、第2管体6が曲がりながら通過する曲線孔52aと、この曲線孔52aの出口に形成された開口部52bとを有している。
【0032】
次に、図5(C)に示すように、第2管体6を油圧ジャッキ(図示省略)により管ベンダー50のガイド部51へ挿入し、図5(D)に示すように、第2管体6を曲げ加工部52へ送り込む。第2管体6には、先端にビット10を有するフレキシブルシャフト6が収納されている(図1参照)。第2管体6は、曲げ加工部52の曲線孔52aを通過する過程で、地下構造物71(図5(A))の方向へ曲げ加工される。これにより、第2管体6の内部のフレキシブルシャフト1も同方向へ曲げられる。
【0033】
図5(E)に示すように、第2管体6から突出するビット10が、管ベンダー50の開口部52bへ至ると、モータ4を駆動し、駆動軸3、回転ロッド2、およびフレキシブルシャフト1を介してビット10を回転させる。そして、第2管体6の先端から削孔水を噴射させながら、図5(F)に示すように、第2管体6を地中で推進させて、地盤70を掘削してゆく。第2管体6は、図5(G)に示すように、地中を円弧状に推進されて、その先端部が地下構造物71の下地盤の空洞部72へ到達する。この状態では、第2管体6に連結されている第1管体5が、管ベンダー50のガイド部51の下端位置まで挿入されている。なお、第1管体5は、第2管体6が所定距離(例えば1m)推進されるたびに、後方から継ぎ足されてゆく。
【0034】
次に、図6(H)に示すように、ビット10およびフレキシブルシャフト1を、第1管体5および第2管体6から引き抜く。このとき、フレキシブルシャフト1には複数の回転ロッド2が連結されているので(図1)、ビット10と、フレキシブルシャフト1と、複数の回転ロッド2とを、これらが連結された状態で、第1管体5および第2管体6から引き抜くことになる。この引き抜きは手作業によって行なわれ、連結された複数の回転ロッド2は、例えば1m引き抜くごとに1本ずつ取り外され、最後にフレキシブルシャフト1がビット10と共に引き抜かれる。なお、手作業の代わりにクレーンなどを用いてもよい。図6(I)は、引き抜き後の状態を示している。
【0035】
その後、図6(J)に示すように、ワイヤ81の一端に取り付けられた下地盤検査用のテレビカメラ80を、第1管体5を通して第2管体6へ挿入し、図6(K)に示すように、このテレビカメラ80を、地下構造物71の下地盤へ到達させる。そして、この状態でテレビカメラ80により下地盤の状態を撮影する。下地盤には空洞部72が存在するので、テレビカメラ80が撮影した画像には、空洞部72が写っている。この画像を地上に設けられたモニタ装置で観察することで、下地盤における空洞部の有無を検査することができる。
【0036】
テレビカメラ80による撮影が終了すると、図6(L)に示すように、ワイヤ81を引き上げ、テレビカメラ80を第2管体6から第1管体5を通して地上へ回収する。図6(M)は、テレビカメラ80を回収した後の状態を示しており、第1管体5と第2管体6の内部は、いずれも中空となっている。
【0037】
以上のような図5(A)~図6(M)の工程により、テレビカメラ80による地下構造物71の下地盤の検査が終了する。
【0038】
次に、空洞部72が存在する下地盤の補修方法を、図7図8の工程図を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
テレビカメラ80を地上へ回収した後、図7(N)に示すように、第1管体5から第2管体6を通してグラウト90を供給し、このグラウト90を第2管体6の先端から吐出させて、下地盤の空洞72内に注入する。グラウト90としては、例えばセメント系の充填材が用いられる。注入されるグラウト90の量は、テレビカメラ80が撮影した画像に基づいて算出された、空洞72の容積に相当する量である。
【0040】
所定量のグラウト90が注入され、図7(O)に示すように、空洞72内にグラウト90が充填されると、グラウト90の注入を停止する。そして、第1管体5を引き上げて、これに接続されている第2管体6も、図7(P)に示すように引き上げ、第2管体6を管ベンダー50から引き抜く。図7(Q)は、第2管体6を引き抜いた状態を示している。この状態では、第2管体6が埋設されていた箇所に、立坑74と空洞72とを連通させる弧状の通路78が形成されている。
【0041】
次に、図7(R)に示すように、管ベンダー50をケーシングパイプ73から引き抜く。その後、図7(S)に示すように、ケーシングパイプ73内に供給管91を挿入し、ケーシングパイプ73を引き上げながら、供給管91を通してグラウト90を供給する。このグラウト90は、地盤70内の通路78内へ注入され、図8(T)に示すように、通路78内にグラウト90が充填される。
【0042】
その後も、図8(T)に示すように、ケーシングパイプ73を引き上げながら、供給管91からグラウト90を供給し、立坑74内がグラウト90で満たされると、グラウト90の供給を停止する。この結果、図8(U)に示すように、空洞72と立坑74と通路78の内部に、グラウト90が充填された状態となる。地下構造物71の下地盤の空洞72に、グラウト90が充填されることで、下地盤が補修され、地下構造物71の支持力の低下が食い止められる。
【0043】
上述した実施形態によると、地盤掘削装置100は、地下構造物71の下地盤までの掘削が終了した後、ビット10とフレキシブルシャフト1と複数の回転ロッド2との連結体を、第1管体5および第2管体6から引き抜けるように構成されている。このため、その連結体を引き抜いた後は、各管体5、6の内部は障害物のない中空状態となる。したがって、特許文献1のように、フレキシブルシャフトに設けた内径の小さい中空部(削孔水の通路)を通してテレビカメラを挿入する必要はなく、内径の大きい第1管体5と第2管体6とを通して、サイズの大きいテレビカメラ80を挿入することができる。これにより、大型のテレビカメラ80を用いて、下地盤の状態を広範囲に観察することが可能となる。そして、下地盤に空洞72が存在し補修が必要な場合は、内部が中空状態で内径の大きい第1管体5および第2管体6を通して、大量のグラウト90を空洞72へ注入し充填することができるため、下地盤の補修に要する時間が大幅に短縮される。
【0044】
また、特許文献1の装置においては、補修時にフレキシブルシャフトの中空部を通してグラウトが注入されるが、中空部の内径が小さいことから、グラウトとしては、凝固までの時間が短い瞬結材は不適であり、粘着材に限定される。一方、本発明の場合は、グラウトを注入する管体5、6の内径が大きいので、グラウトとして粘着材だけでなく瞬結材も用いることができる。
【0045】
さらに、特許文献1では、フレキシブルシャフトに削孔水の通路となる中空部が存在するため、その分、地盤の掘削時にモータから伝達されるフレキシブルシャフトの回転トルクが弱くなるが、本発明では、フレキシブルシャフト1に中空部が存在しないので、フレキシブルシャフト1の回転トルクが大きくなって、掘削力が増大する。
【0046】
図10は、本発明で用いる管ベンダーの他の例を示している。管ベンダー60は、ガイド部61と曲げ加工部62とを備えている。ガイド部61は、外部から送り込まれる第2管体6を案内する部分であり、曲げ加工部62は、ガイド部61から送り込まれた第2管体6を曲げ加工する部分である。曲げ加工部62には、複数のローラ62aと開口部62bとが設けられている。各ローラ62aは、鼓形に形成されていて、開口部62bに向けて曲がるように2列に配置されており、各列の間に第2管体6が通過する通路が形成されている。このような管ベンダー60を用いた場合は、図9に示した管ベンダー50を用いた場合に比べて、第2管体6を曲げ加工する際の抵抗がローラ62aにより軽減されるため、小さい駆動力で第2管体6を曲げ加工することができる。
【0047】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、前記の実施形態では、回転ロッド2における第1接続部21の第1ネジ部21aが雄ネジであり、第2接続部22の第2ネジ部22aが雌ネジである例を挙げたが、第1ネジ部21aが雌ネジであり、第2ネジ部22aが雄ネジであってもよい。
【0048】
また、前記の実施形態では、図1のA-A断面およびB-B断面で示したように、回転ロッド2の嵌合部22の断面が六角形である例を挙げたが、嵌合部22の断面は多角形であればよく、例えば四角形や八角形などであってもよい。
【0049】
また、前記の実施形態では、回転ロッド2の振れを抑制する振れ止め部材として、回転ロッド2の外周に設けられたベアリング15を例に挙げたが、これに代えて、回転ロッド2の外周または第1管体5の内壁にリブを設け、このリブを振れ止め部材としてもよい。
【0050】
また、前記の実施形態では、図1に示したように、摩擦軽減部材11がビット10の外周に設けられているが、第2管体6の先端開口部の内壁に、同様の摩擦軽減部材を設けてもよい。
【0051】
また、前記の実施形態では、図5(G)に示したように、第2管体6を地中で円弧状に推進させる例を挙げたが、これに代えて、図11に示すように、第2管体6を地中で直線状に推進させてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 フレキシブルシャフト
2 回転ロッド
3 駆動軸
4 モータ
5 ロッドケース(第1管体)
6 スリーブ管(第2管体)
8 第1空間
10 ビット
11 摩擦軽減部材
12 間隙
13 連結部材
13a 切欠き部
14 第2空間
15 ベアリング(振れ止め部材)
21 第1接続部
21a 第1ネジ部
22 第2接続部
22a 第2ネジ部
22b 嵌合部
50 管ベンダー
52 曲げ加工部
70 地盤
71 フーチング基礎(地下構造物)
72 空洞
74 立坑
80 テレビカメラ
90 グラウト
100 地盤掘削装置
【要約】
【課題】下地盤の状態を広範囲に観察でき、下地盤に空洞が存在する場合は補修を短時間で行える地盤掘削装置を提供する。
【解決手段】地盤掘削装置100は、フレキシブルシャフト1、回転ロッド2、駆動軸3、モータ4、第1管体5、および第2管体6を備えている。フレキシブルシャフト1は、中実の湾曲可能な部材からなり、先端に地盤掘削用のビット10が設けられている。第1管体5と回転ロッド2との間には、削孔水が通過する第1空間8が形成され、第2管体6とフレキシブルシャフト1との間には、削孔水が通過する第2空間14が形成されている。ビット10の外径は、第2管体6の内径より小さい。地盤掘削時には、ビット10と第2管体6の間隙12から削孔水が噴射され、掘削終了後に、ビット10とフレキシブルシャフト1と回転ロッド2とを、これらが連結された状態で第1管体5および第2管体6から引き抜けるように構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11