IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 波田野 義行の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20240816BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B24B9/14 E
G02C13/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019145506
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021024055
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-22
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】713008706
【氏名又は名称】波田野 義行
(72)【発明者】
【氏名】波田野 義行
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-065262(JP,A)
【文献】特開2016-193468(JP,A)
【文献】特開2008-030170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/14
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズを挟持し、回転可能とするレンズ回転軸と研削砥石と、または溝掘砥石と、またはエンドミルを回転可能とするスピンドルとを互いに平行または、傾斜角を持つように構成し、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、またレンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、レンズ回転軸の回転量に応じた、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量とを求めて、それぞれの移動量がレンズ回転軸の回転量と同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに所望のヤゲン、または溝掘加工を行う眼鏡レンズ加工装置において、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、レンズ回転軸の回転量に応じた、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量とを求めて、それぞれの移動量がレンズ回転軸の回転量と同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに加工干渉のない状態で所望のヤゲン、または溝掘加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼鏡レンズ加工装置において、眼鏡フレームの玉型における加工点での眼鏡フレーム玉型のヤゲン傾斜角砥石のヤゲン傾斜角を一致するように砥石上の加工点を定め、砥石の加工角を定める。また、眼鏡フレームの玉型における加工点での接線が砥石上の加工点での接線に一致するように眼鏡フレーム玉型の加工角を定める。レンズ回転軸とスピンドルの配置状態が、定められた砥石の加工角と眼鏡フレーム玉型の加工角となり、かつ砥石の加工点と眼鏡フレームの玉型における加工点とが一致する配置状態とするためレンズ回転軸の回転量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量とを求める。眼鏡フレームの玉型における加工点でのヤゲン位置を所望の位置とするためレンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量を求める。レンズ回転軸の回転量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量とをそれぞれ同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに加工干渉のない状態で所望のヤゲン、または溝掘加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼鏡レンズの眼鏡フレーム枠入れの為のヤゲンを形成するための眼鏡レンズ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡レンズの眼鏡フレーム枠入れの為のヤゲンを形成するための眼鏡レンズ加工装置においては、玉型形状測定平面データとその測定平面に直行する高さデータを基に眼鏡レンズのヤゲン位置を算出し、その算出データを基に眼鏡レンズ加工装置のレンズ回転軸の回転位置制御と、レンズ回転軸とツール回転軸との軸間距離制御とを関係を持って実施することで目的の玉型形状に加工しながら、レンズ回転軸に平行な方向に移動制御することでヤゲン高さの制御をすることが一般的である。このような制御の問題点としてヤゲン加工を実施するときに目的の加工位置の制御を実施することで目的位置の周辺で周辺位置の制御目標以上に加工してしまう、いわゆる加工干渉が発生する。この加工干渉による影響を軽減するための制御手段が提案されている。(例えば、特許文献1,2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6197260号公報
【文献】特許第6388416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の加工干渉を軽減する手段を用いた場合、ヤゲン先端部の過加工による形状変形をある程度防止することができていたが、ヤゲン断面のレンズ表面側と裏面側を別々に加工する結果、ヤゲン形状が正しいものではなく、ヤゲン高さは低くなっていた。また、演算手段も複雑なものであった。
そこで、この発明は、ヤゲン断面形状が正しく、ヤゲン高さを維持でき、制御のための演算が容易な眼鏡レンズ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、この発明は、眼鏡レンズを挟持し、回転可能とするレンズ回転軸と研削砥石と、または溝掘砥石と、またはエンドミルを回転可能とするスピンドルとを互いに平行または、傾斜角を持つように構成し、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、またレンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、レンズ回転軸の回転量に応じた、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量とを求めて、それぞれの移動量がレンズ回転軸の回転量と同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに所望のヤゲン、または溝掘加工を行う眼鏡レンズ加工装置において、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、レンズ回転軸の回転量に応じた、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量とを求めて、それぞれの移動量がレンズ回転軸の回転量と同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに加工干渉のない状態で所望のヤゲン、または溝掘加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置を提供する。また、眼鏡フレームの玉型における加工点での眼鏡フレーム玉型のヤゲン傾斜角砥石のヤゲン傾斜角を一致するように砥石上の加工点を定め、砥石の加工角を定める。また、眼鏡フレームの玉型における加工点での接線が砥石上の加工点での接線に一致するように眼鏡フレーム玉型の加工角を定める。レンズ回転軸とスピンドルの配置状態が、定められた砥石の加工角と眼鏡フレーム玉型の加工角となり、かつ砥石の加工点と眼鏡フレームの玉型における加工点とが一致する配置状態とするためレンズ回転軸の回転量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量とを求める。眼鏡フレームの玉型における加工点でのヤゲン位置を所望の位置とするためレンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量を求める。レンズ回転軸の回転量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量とをそれぞれ同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに加工干渉のない状態で所望のヤゲン、または溝掘加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
このように構成し、また制御することで、ヤゲン断面形状が正しく、ヤゲン高さを維持でき、制御のための演算が容易な眼鏡レンズ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】この発明にかかる眼鏡レンズ加工装置とタブレット端末と給水装置との関係を示す概略斜視図である。
図1a】この発明にかかる眼鏡レンズ加工装置とタブレット端末と給水装置との関係を示す概略斜視図である。
図2図1に示したタブレット端末の表示内容を示す図である。通常時の第1画面と立ち上げ時の第1画面を示している。
図3図1に示したタブレット端末の表示内容を示す図である。第2画面と詳細指示画面を示している。
図4図1に示したタブレット端末の表示内容を示す図である。加工中画面と加工中、画像確認画面を示している。
図5図1に示したタブレット端末の表示内容を示す図である。片眼加工終了時の第1画面とメンテナンス画面を示している。
図6図1に示した眼鏡レンズ加工装置の外装を外した状態の上左前からの斜視図である。
図7図1に示した眼鏡レンズ加工装置の外装を外した状態の上左前からの斜視図である。
図8図1に示した眼鏡レンズ加工装置のスピンドル及び加工室を除く上左前からの斜視図である。
図9図1に示した眼鏡レンズ加工装置のスピンドルに装着されている加工ツールの上右から見た斜視図である。
図10図1に示した眼鏡レンズ加工装置の加工室内部の上左前からの斜視図である。
図11a図1に示した眼鏡レンズ加工装置のウェット・ドライ切替部の下右前からの斜視図である。ドライ状態を示している。
図11b図1に示した眼鏡レンズ加工装置のウェット・ドライ切替部の下右前からの斜視図である。ウェット状態を示している。
図12図1に示した眼鏡レンズ加工装置の演算制御回路図である。
図13図1に示した給水装置の斜視図である。
図14】エンドミルによる切落し加工による眼鏡レンズの斜視図である
図15】眼鏡フレームと測定平面の関係を示している。
図16】眼鏡フレーム形状の近似球の中心と球表面上の加工中心との関係を示している。
図17】フレーム測定平面と加工軸に鉛直な平面を示している。
図18】ヤゲン曲率半径がレンズ表面曲率半径より大きい場合のレンズ断面
図19】ヤゲン曲率半径がレンズ表面曲率半径より小さい場合のレンズ断面
図20】ボクシングサイズ関係を示している
図21】ヤゲン砥石断面形状
図22】眼鏡フレーム形状の近似球の表面上の加工中心を原点とする座標とレンズ表面の近似球の表面上の加工中心を原点とする座標との関係を示している。
図23】眼鏡フレーム加工点のヤゲン傾斜角と接線傾斜角を示している
図24】ヤゲン砥石加工点のヤゲン傾斜角と接線傾斜角と加工角を示している
図25】眼鏡フレームとヤゲン砥石の接触状態
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
[全体構成]
図1を参照すると、本発明に係るレンズ加工に関わる装置類が示してある。
図1において、1は入力された眼鏡フレーム形状データに基づいて生地眼鏡レンズMLを加工するレンズ加工装置である。2は周知のタブレット端末であり、レンズ加工装置1と有線または無線での通信接続により、予めインストールされた専用アプリケーションに基づく操作でレンズ加工装置1に対する加工指示の送信、また、レンズ加工装置1から機械状態、測定結果などの情報を受信し、測定結果に基づく加工シミュレーション結果を図表示する。また、クラウドコンピュータ上の外部サーバー4との通信でフレーム形状データなどを受信する。3はレンズ加工装置1に冷却水の供給と排水回収を行う給水装置である。図1aでは、図1と同じ構成を示しているが、ビニール袋183を省き、ビニール袋183の裏側のホース状態を図示している。
【0010】
<タブレット端末2>
タブレット端末2は、タッチスイッチとして利用できる液晶画面があり、カメラが内蔵されている。無線通信機能があり、またUSB接続による通信と電源が得られるものである。レンズ加工装置1の操作指示、通信により得られるデータ表示などを実施できる専用アプリケーションが搭載されている。レンズ研削装置とはUSB接続により電源供給を受け、通信を行う。但し、この接続はUSB接続に限定されるものではなく、無線通信を利用することも可能である。その場合には他の電源供給を受ける必要がある。
【0011】
[第1画面]
専用アプリケーションを示すアイコンがタブレット端末2に表示される。これをタッチ選択することで専用アプリケーションが起動し、図2に示す第1画面が表示される。第1画面には、フレーム形状を図形表示し、また、ボクシングサイズ、DBL、カーブなどを数値表示するフレーム表示エリア210がある。Rクランプ及びLクランプ212、メンテナンス213、電源214が表示されている。
【0012】
[フレーム表示エリア210] 電源ON直後は、フレームデータが無いため、フレーム表示エリアには、図2に示す通りデータ呼び出し211の表示が示される。このフレーム表示エリア210またはデータ呼び出し211の表示にタッチすることでフレーム形状データを外部サーバー4から無線通信で呼び出す。フレーム形状データはフレーム形状を読み取る装置から無線通信で呼び出すこともできる。図12で示す演算制御回路図では、外部サーバー4の場合として記載してある。
【0013】
[Rクランプ、Lクランプ] RクランプまたはLクランプ212は、右または左レンズのクランプ開または閉を指示するためのものでクランプ閉の動作後の第2画面への表示切替を同時に指示する。
[メンテナンス213] メンテナンス213は、メンテナンス画面への切替を指示するためのものである。
[電源214] 電源214は、専用アプリケーションの終了を指示するためのものである。
【0014】
[第2画面]
図3に示す第2画面には、第1画面に有ったフレーム形状と数値データを表示するフレーム表示エリア220がある。また、Rクランプ、またはLクランプで指示した右、または左のクランプした側のフレーム形状が強調表示される。
【0015】
[加工種221] 加工種の文字表示とこれに並び、予め設定されたヤゲン(溝、平に切り替わる)が表示される。加工種221の表示に触れることで切り替わる。
[PD、UP、SIZE] PD222、UP223、SIZE224の表示とこれに並び、それぞれに対応する数値表示がある。PD222,UP223,SIZE224は触れて左右に移動することで数値を変更できる。
[加工スタート225] 加工スタート225は、加工の開始を指示する
[詳細指示226] 詳細指示226は、詳細指示画面への表示切替を指示する
[戻る227] 戻る227は、第1画面に戻ることを指示する。
【0016】
[詳細指示画面]
図3に示す詳細指示画面には、第1画面に有ったフレーム形状と数値データを表示するフレーム表示エリア230がある。右、または左のレンズクランプした側のみが表示され、対眼が図表示されるべき場所に第2画面で決定されたPD222,UP223,SIZE224の各表示が数値と共に表示される数値表示エリア231がある。フレーム表示エリア230、数値表示エリア231は触れても反応しない。
【0017】
[ヤゲン(溝)カーブ、ヤゲン(溝)位置] ヤゲン(溝)カーブ232、ヤゲン(溝)位置233の表示とこれに並び、それぞれに対応する数値表示がある。ヤゲン(溝)カーブ232、ヤゲン(溝)位置233の表示に触れ左右に移動することで数値を変更できる。
[表面取、裏面取、特殊面取] 表面取234、裏面取235、特殊面取236の表示とこれに並び、それぞれに対応する数値表示がある。表面取234、裏面取235、特殊面取236の表示に触れて左右に移動することで数値を変更できる。
【0018】
[画像確認スタート237] 画像確認スタート237は、加工の開始を指示し、レンズ計測後にデータを表示し、画面での操作指示を可能とするため途中停止を指示をする。
[加工スタート238] 加工スタート238は、加工の開始を指示する
[戻る239] 戻る239は、第1画面に戻ることを指示する。
【0019】
[加工中画面]
加工を開始すると図4に示す加工中画面となる。加工中画面には、詳細指示画面と同じ内容の表示がある。但し、戻る239のアイコンはなく、代わりに緊急停止240がある。また、画像確認スタート237、及び加工スタート238の表示は無い。また、ヤゲン(溝)カーブ232から特殊面取236までの表示は詳細指示画面と同じ内容を表示しているが、タッチしてもその表示内容の変更はできない。ヤゲン(溝)の断面を表示する断面表示エリア241がある。
【0020】
[緊急停止240] 緊急停止240は加工動作の停止の指示と第1画面に戻ることを指示する。
[断面表示エリア241] 断面表示エリア241には、ヤゲン(溝)の断面が表示される。左側に最も細い部分の断面が表示され、右側に最も広い部分の断面が表示される。
【0021】
[画像確認画面]
画像確認スタート237で加工を開始した場合には、レンズ測定が完了した時点で詳細表示画面と同じ内容の表示があり、レンズ測定結果に基づくヤゲン(溝)の断面表示エリア241が表示され、機械動作が停止する。但し、画像確認スタート237はない。画像確認画面では、詳細表示画面と同じ作業で数値変更と共にヤゲン(溝)の断面表示エリア241の変化が確認できる。
【0022】
[メンテナンス画面]
図5に示すメンテナンス画面には、ポンプ給水260、ポンプ排水261、砥石交換262、補正値データ263、戻る264が表示されている。
[ポンプ給水260] ポンプ給水260は、ポンプ始動と停止を指示する。
[ポンプ排水261] ポンプ排水261は、ポンプ排水時のバルブ34、バルブ35の切替状態を指示する画面に切替表示させる。この切替表示画面には、ポンプ排水261、戻る264が表示されている。ポンプ排水261はポンプの作動を指示する。戻る264は、第1画面の表示に戻ることを指示する。
【0023】
[砥石交換262] 砥石交換262は、スライダーを右側限界位置に移動指示する。戻る264は、第1画面の表示に戻ることを指示する。
[補正値データ263] 補正値データ263は、補正値メモリー193に記憶されている各種補正値を表示し、修正するための画面に切り替わる。なお、補正値の表示、修正に関する記載はここではしない。
【0024】
<レンズ加工装置1>
レンズ加工装置1は、図6に示すとおり眼鏡レンズMLが加工される加工室11があり、その左側にスピンドル13が後方に行くほどレンズ回転軸との距離が離れる傾斜をもって配置されている。また、加工室11内にはレンズ面の位置を測定するためのレンズ測定部14がある。加工室11周辺には、眼鏡レンズMLを駆動するレンズ駆動部12がある。加工室11の手前左には、活性炭箱と排気ファンで構成される脱臭装置部17がある。本体下部には、給水を必要とする加工を実施するウェット状態と給水を必要としないドライ状態とを切り替えるウェット・ドライ切替部18がある。
【0025】
レンズ駆動部12には眼鏡レンズMLを挟持、回転させる機構を内蔵したキャリッジ150があり、キャリッジ150は前後に移動可能となるようにスライダー120に保持されている。スライダー120は左右に移動可能となるように固定ベース103に保持されている。加工室11周辺には更にスピンドル13が上下に移動可能に固定ベース103に保持されている。
【0026】
レンズ加工装置1の上部には、奥側にある旋回中心を軸に旋回開口する旋回カバー110が加工室11への眼鏡レンズMLの挿脱のため設けられている。
また、レンズ加工装置1の上面は、平面で構成され、タブレット端末2を載置することができ、また加工レンズ、眼鏡フレームなどを入れる作業用トレーの載置などもできる構造となっている。
【0027】
[加工室11]
加工室11は、図10に示す通り左右に長いほぼ長方形の水平断面を持つ箱型形状で中が空洞となっており、上下に2分割された構造となっている。前後の側壁の上下分割部には長穴11bが形成されている。その長穴を覆い隠せる大きさの扇型旋回壁113が旋回可能に前後の側壁にそれぞれ取り付けられている。扇型旋回壁113は長穴11bとの交差部に長穴11bとほぼ直行する方向の長穴を有している。扇型旋回壁113の加工室内側には円形開口を有する円盤型側壁114が配置されている。また加工室11前後の側壁の右端には、円形開口11cが設けられている。加工室11後側壁は左側面に近づくに従って前壁に近づく方向に傾斜した部分があり、その傾斜面には長円形開口11dがある。
【0028】
加工室11内には、図示されていない給水ノズルがあり、本体下部の給水接続口から給水パイプで接続されている。本体下部の給水接続口は、給水装置3に接続するため給水ホースが接続されている。加工室11底壁には円形開口11eがあり、加工による切落し片MLdがここから落下排出される。また排水もこの円形開口11eから行われる。加工室11の前側上壁から前側側壁には矩形開口11aがある。この開口は旋回カバー110により覆われており、旋回カバー110は加工室11上壁に旋回可能に軸支されているため、旋回動により開閉できる。
【0029】
[スライダー120]
図8に示す通りレンズ加工装置1内の固定ベース103上の中央付近に前後二箇所ずつの突起部分104があり、この突起には、左右方向にスライダーを進退動可能とする2本のスライド軸105の両端が固定されている。スライド軸105には図示されていないスライド軸受けが嵌合し、スライド軸受は、スライダー120に固定されている。このため、スライダー120はスライド軸受けを介してスライド軸105に沿って固定ベースに対して左右方向に進退動可能な構造となっている。
【0030】
この固定ベース103の左前部にはスライダー120を左右方向に駆動するスライダー駆動モータ121が固定され、この出力軸にねじ軸122が結合され、これに螺合するめねじ受け120bはスライダー120に固定されている。
【0031】
[キャリッジ150]
さらにスライダー120には前後方向に伸びる2本のスライド軸123がスライド軸105の上側に配置固定されている。このスライド軸123に嵌合し、スライド軸123に沿って進退動可能となるようにキャリッジ150内に図示されていないスライド軸受けが内蔵されている。このため、キャリッジ150はスライダー120上で前後方向に進退動可能な構造となっている。このキャリッジ150を駆動するキャリッジ駆動モータ151がスライダー120の中央部に固定され、この出力軸にねじ軸152が結合されている。ねじ軸に螺合するめねじ受け150bがキャリッジ150に固定されている。
【0032】
[レンズクランプ、回転]
キャリッジ150の加工室11を挟んで後部には、レンズ回転軸160が前後方向に進退動可能、かつ回転可能に軸支され、レンズ回転駆動モータ161が周知の接続により回転駆動できる。レンズ回転軸160には図示のない周知の連動機構によりキャリッジ150前部にも軸回転力が伝達される構造である。キャリッジの加工室を挟んで前部には、レンズMLを挟持するためのクランプ駆動部162がある。クランプモータ163の駆動力によりクランプ移動部165がレンズ回転軸160に沿って移動することでキャリッジ150前部から加工室11内に伸びるレンズ軸160が進退動できる。
【0033】
[スピンドル13]
図7に示す通りスピンドル13はその一部が加工室11内にあり、後側壁の左側傾斜部分の長円形開口11dから加工室11の外側に出てスピンドルエレベータ136に回転可能に固定されている。スピンドルエレベータ136には、スピンドルの下方にスピンドル駆動モータ137が固定され、スピンドル13とスピンドル駆動モータ137は周知の方法で接続、駆動力が伝達できる構造となっている。また、スピンドルエレベータ136は固定ベース103上の突起部106に固定されている2本の鉛直シャフト107にスライド軸受を介して鉛直方向に移動可能に軸支されている。前側の鉛直シャフト107に近接する形で固定ベース103にスピンドルエレベータ駆動モータ138がその回転軸を鉛直方向に向けて固定され、その回転軸にスピンドルエレベータ駆動ネジ139が固定されている。スピンドルエレベータ駆動ネジ139に螺合するメネジがスピンドルエレベータ136に固定されている。
【0034】
図9に示す通りスピンドル軸130の先端部には、加工で利用されるツールである形状切落とし用のエンドミル131、溝掘り加工用の溝掘砥石132、ヤゲン砥石133a、平仕上げ133b、レンズ表面面取133c、レンズ裏面面取133d、前面平仕上げ133e、それぞれの加工面を持つ研削砥石133がスピンドル軸130先端側から順に取付固定されている。スピンドル13は、レンズ回転軸160とは水平面内で30度の傾斜角を持って配置されている。エンドミル131は半径3mm、刃長21mm、溝掘り砥石は半径15mm、刃厚0.6mm、刃先部30度の傾斜の皿形状、研削砥石133は、ヤゲン砥石133aで半径25mm、平仕上げ133bはレンズ回転軸160に対して4度の傾斜を持ち、前面平仕上げ133eはレンズ回転軸160に平行な面で、レンズ表面面取133cはレンズ回転軸160の鉛直から55度の傾斜、レンズ裏面面取133dはレンズ回転軸160の鉛直から40度の傾斜で構成されている。ここに示した傾斜角、半径などの数値は一般的に利用されている眼鏡レンズ、眼鏡フレームのヤゲンカーブが2~8の範囲で多用され、フレームサイズとして水平幅50~60mm、鉛直幅30~40mmで多用されているのに適した数値として示したが、限定されるものではない。
【0035】
[レンズ測定部14]
レンズ測定部14は、図7に示す通り測定ベース144が固定ベース103に固定されている。測定ベース144には測定スライダー142が、測定ベース144に対して前後方向に進退動可能に保持されている。測定スライダー142には、加工室11の前後幅より広い幅を持つ2本の腕があり、この腕から加工室11内部に貫通穴11cを通過して測定子140を保持している。測定スライダー142を前後方向に進退動を案内している測定スライド軸143を覆うように圧縮バネ145が測定スライダー142の両側に配置され、測定スライダー142は常に中央に位置する付勢力が働く。
【0036】
このため測定子140は、加工室11内部で常に一定位置を保持している。フォトセンサー146が、測定ベース144の上部に固定され、測定スライダー142の上部にはこれと対を成す検知板147が固定されている。眼鏡レンズMLがキャリッジ150の移動により、測定子140を移動させると測定スライダー142の移動をフォトセンサー146が検知できる構造となっている。
【0037】
[脱臭装置部17]
図6に示す通り脱臭装置部17は、レンズ加工装置1の左前側に位置し、固定ベース103に固定されている。脱臭装置部17は、周知の構造で活性炭を内蔵した活性炭箱170と排気ファン171により構成される。活性炭箱170には、図11aに示す通り切替ベース180の円形開口180aの位置に符合する固定ベース103の円形開口との間をパイプで接続されている。これにより円形開口180aを通して外気を活性炭箱170に吸入できる構造となっている。
【0038】
脱臭装置部17の排気ファン171を駆動することで活性炭箱170を通してドライ加工用のビニール袋183内の空気を吸い出す。この作用によってビニール袋内の空気圧が低下し、加工室11内の空気と共に加工で発生する切子、切落し片MLdがビニール袋183に吸い出され、落下する。図6で示す通り加工室11には旋回カバー110の旋回軸の左側部分に旋回カバー110が閉じている状態でも開口した状態となる部分11fがあり、ここから加工室11内に空気を吸い込む構造となっている。
【0039】
[ウェット・ドライ切替部18]
図11aに示す通りウェット・ドライ切替部18は、固定ベース103の下に配置されている。切替ベース180は固定ベース103に固定されている。切替ベース180には加工室11の底壁の円形開口11eに対応する位置に円形開口180bがあり、加工室の円形開口11eが切替プレート181に隙間なく接触するように構成されている。切替プレート181が切替ベース180に旋回軸182廻りで旋回可能に軸支されている。切替ベース180には案内レール183が固定され、切替プレート181を旋回可能に案内し、また支えている。切替ベース180には、円形開口180bと旋回軸182との中間位置に小径の円形開口180aがある。
【0040】
[切替プレート181]
切替プレート181には、加工室11の底壁の円形開口11eに対応する開口が2個あり、一方には筒状部186が下方に伸びている、他方は円形開口から下方に直径が漸減するロート形部184が延伸し、先端に排水ホース31が接続されている。切替プレート181上には筒状部186の位置に円形開口181bがあり、ロート型部184の位置には円形開口181dがある。切替プレート181の移動により切替ベースの円形開口180bと合致させ、筒状部186、またはロート型部184のいずれかを機能させるものである。図11aは、筒状部186が機能するドライ状態を示し、図11bは、ロート型部184が機能するウェット状態を示している。
【0041】
切替プレート181上の円形開口181aと筒状部186とを含み、他の円形開口を含まない範囲を覆う大きな筒状部材187が、切替プレート181に固定されている。この大きな筒状部材187の外側にビニール袋183を覆い被せ、周囲から弾性バンドで大きな筒状部材187に固定できるようになっている。
【0042】
ロート形部184が機能する位置で、切替ベース180の円形開口180aと合致する位置に円形開口181cがあり、小径筒状部185が固定されている。ロート型部184の先端、及び小径筒状部185に、それぞれ接続される排水ホース31、排気ホース32は、給水装置3に接続される。ロート型部184先端、及び小径筒状部185のホース接続部は回転自在機構が内在されたものとなっており、切替プレートが旋回動する際に機能するものである。
【0043】
[切替機構]
図11aはドライ状態を示し、図11bはウェット状態を示している。旋回軸182は、図示されていないウェット・ドライ切替モータ188により、ウェット状態とドライ状態との配置を切り替える機構となっている。
【0044】
[演算制御回路19]
CPUを有する演算制御回路19には、記憶手段としてのROM190、RAM192、データメモリー191が接続されていると共に、補正値メモリー193が接続されている。ROM190には、制御、演算などに必要なプログラムが保存されている。データメモリー191は、レンズ加工1枚単位の記憶領域で加工中のレンズに関するデータを保存する領域である。データメモリー191には、加工中のデータ以外にその直前の加工、及び、次の加工のため二つ以上の別データを保存する領域を持っている。RAM192は、演算、制御などで都度利用されるメモリーである。補正値メモリー193は、装置の設定、各原点、位置センサーなどの基準値を保存するメモリーである。
【0045】
更に、演算制御回路19には、パルスモータドライバ196が接続されている。このパルスモータドライバ196は、演算制御回路19により作動制御されて、レンズ駆動部12の各種駆動モータ、即ち、スライダー駆動モータ121,キャリッジ駆動モータ151、レンズ回転駆動モータ161、スピンドルエレベータ駆動モータ138を作動制御するようになっている。また、演算制御回路19にはモータドライバ194-2を介してスピンドル駆動モータ137が接続され、作動制御するようになっている。
【0046】
演算制御回路19には、モータドライバ194-1を介してレンズクランプモータ163が接続され、作動制御するようになっている。更に、演算制御回路19には、モータドライバ194-3を介してウェット・ドライ切替モータ188が接続され、作動制御するようになっている。また、排気ファン駆動回路198を介して排気ファン171が接続され、作動制御するようになっている。また、ポンプ駆動回路199を介して給水装置3に内蔵されているポンプ37が接続され、作動制御するようになっている。また、演算制御回路19には、通信ポート197を介してタブレット端末2と外部接続され、通信制御するよう構成されている。
【0047】
演算制御回路19には、レンズ測定部14のフォトセンサー146、ウェット・ドライ切替部18のドライ位置センサー189-1、ウェット位置センサー189-2、レンズ回転原点168、スライダー原点108、キャリッジ原点153、スピンドルエレベータ原点109など、回転、駆動の各制御部の原点、移動限界点などのセンサーが接続され、作動制御時に読み取るように構成されている。
【0048】
<給水装置3>
給水装置3は、上部が開放された箱形状の容器30とこの上部を覆うことで内部を閉空間にできるふた33で構成されている。容器30には、図示の無いポンプが内蔵されている。ポンプは、ふた33の右前側に装着されている切替バルブ34にふたの内側から接続されている。切替バルブ34には切替バルブ35が一方に接続されている。切替バルブ34の他方の接続口には、排水設備に接続するためのホース(図示されない)が接続される。切替バルブ35から上方へは、レンズ加工装置11に接続するための給水ホース36が接続されている。切替バルブ35の他方の接続口には水道水が接続されている。
【0049】
[排水ホース31、排気ホース32]
ふた33には、レンズ加工装置11との間で接続される2本のホースが接続される。一方は、ふた33の左後方部に接続される排水ホース31であり、他方はふた33の右側で前後中間位置に接続される排気ホース32である。排水ホース31は、レンズ加工装置11からの排水が給水装置3に戻るためのホースである。排気ホース32は、給水装置3内の空気をレンズ加工装置1内に載置されている脱臭装置部17に送り込むためのものである。
【0050】
また、ふた33の上部前側には、レンズ加工装置1のウェット・ドライ切替部18の大きな筒状部材187によりぶら下げられているビニール袋183を載置できる構造となっている。ビニール袋183はドライ加工による切落とし片MLd、及び切りカスをレンズ加工装置1の動作中に保管する場所となる。ビニール袋183は、切落し片MLd、及び切りカスで満たされた状態でそのまま廃棄出来るメリットがある。
【0051】
[作用]
次に、上述した演算制御回路の機能を作用と共に説明する。
(0 電源入力) レンズ加工装置1の電源スイッチを入れると演算制御回路19が起動し、USB接続されているタブレット端末2の専用アプリケーションの起動を確認し、レンズ加工装置1内の各駆動原点及び移動限界点を確認し、異常の有無をタブレット端末2に送信する。いずれかの原点、位置センサーからの状態情報に異常がある場合には、タブレット端末2には、それぞれの異常状態に合わせた異常を知らせる表示が画面表示され、通常の作業には入れない。
【0052】
(1 データ要求) いずれの原点、位置センサーにも異常が無い、正常状態では、タブレット端末2は図2に示す第1画面を表示する。ここでは、フレームデータ無しの状態のため、図2の右側に示す状態となる。ここでデータ呼び出し211に触れるとデータサーバー4にデータ要求信号が送られ、図15に示す眼鏡フレームFLMの2次元フレーム形状(ρ、θ)、及び測定平面pl-mからの高さデータZがサーバー4から得られる。タブレット端末2の第1画面には、図2の左側に示す通り、得られたフレーム情報(両眼)が図、及び数値情報としてフレーム表示エリア210に表示される。
【0053】
(2 クランプ) タブレット端末2の第1画面の右(または左)Rクランプ(またはLクランプ)212に触れるとレンズ回転軸に装着した加工用レンズをクランプすることを指示する信号と共に、フレーム情報をレンズ加工装置1に送信する。レンズ加工装置1からのクランプ完了、フレームデータ受信完了の信号をタブレット端末2は受信し、図3に示す第2画面を表示する。
【0054】
(3 スタート) タブレット端末2の第2画面の加工スタート225に触れるとタブレット端末は、第2画面に表示されている表示情報と共に加工スタートの指示をレンズ加工装置1の演算制御回路19に伝える。
【0055】
(3.1 エンドミル切落し回転位置演算) 演算制御回路19は既に受信済みのフレーム形状情報を用いて、エンドミル131での切落し加工時にフレーム形状に切り落すための切り込み回転位置を定める。フレーム形状の動径情報の極大となる回転位置を求めて記憶する。この回転位置を切り込み回転位置に定めることを基本とする。回転位置は3、または4箇所とし、それぞれの間隔が等分に近くなることが望ましい。極大点が少ない時には広い分割片を等分割する。極大点が多い場合には、間隔の小さい分割片を合体する。切り込み回転位置でのフレーム形状より動径が大きい範囲でのレンズ測定半径位置をエンドミル131の半径よりは小さい間隔をひとつのレンズ測定半径単位として定める。
【0056】
(3.2 フレーム形状球面座標) 演算制御回路19は、図15で示す測定平面pl-m上の2次元フレーム形状(ρ、θ)を直交座標(X,Y)に変換し、高さデータZと共に4点を球面の方程式
(X-a)+(Y-b)+(Z-c)=d
に代入し、近似球面の中心(a,b,c)、半径dを求める。
【0057】
測定平面pl-m上での眼鏡レンズの加工中心(一般的には、ボクシング中心位置、またはレンズ光学中心の処方位置、のいずれかが用いられるが、ここでは光学中心を処方位置とし、その座標を(in,up)とする。)を通り測定平面pl-mに対して鉛直な直線と近似球面とが交わる点(in,up,cc)を原点とし、近似球面の中心がZ軸を通る座標系にフレーム形状を座標変換する。近似球面上であることから
cc=±√{d-(in-a)-(up-b)}+c
である。
【0058】
(3.3 レンズ表面球座標に変換) 図16に眼鏡フレームFLMの形状を新たな座標系に変換した状態を示す。新たな座標系では右眼のXY平面はpl-r、左眼をpl-lとする。フレーム形状(X,Y,Z)を新たな座標系でのフレーム形状(Xp,Yp,Zp)への変換には、まず原点を平行移動する。移動後の座標値を(X1,Y1,Z1)とすると
X1=X-in
Y1=Y-up
Z1=Z-cc
【0059】
更に近似球面の中心がZ軸上とするためX軸回りに回転角α=tan-1{(-up-b)/(cc-c)}回転する。この座標値を(X2,Y2,Z2)とし、次にY軸回りに回転角β=tan-1{(in-a)/(cc-c)}回転することで、眼鏡フレーム形状(Xp,Yp,Zp)を得る。図17に回転角αと回転角βを図示する。
X2=X1
Y2=Y1・cos(α)+Z1・sin(α)
Z2=-Y1・sin(α)+Z1・cos(α)
Xp=X2・cos(β)-Z2・sin(β)
Yp=Y2
Zp=X2・sin(β)+Z2・cos(β)
フレーム形状(Xp,Yp)を極座標に変換したものを(ρp,θp)と表す。
【0060】
(3.4 レンズ測定制御データ演算) 演算制御回路19はレンズ測定のため表面測定子140aの眼鏡レンズML表面との接触位置が眼鏡レンズML上でフレーム形状(ρp,θp)と一致する4点以上の複数点に対応するようにレンズ駆動部12のスライダー駆動モータ121,レンズ回転駆動モータ161の制御データを演算し、データメモリー191に記憶する。
【0061】
また、エンドミル131での切落し加工時にフレーム形状に切り落すための切り込み回転位置でのレンズ測定半径単位毎のレンズ測定が可能となるように表面測定子140aと眼鏡レンズML表面との接触位置が所望のレンズ測定半径と一致するようにレンズ駆動部12のスライダー駆動モータ121,レンズ回転駆動モータ161の制御データを演算し、データメモリー191に記憶する。
【0062】
この一連のレンズ測定に関する演算は、機械動作停止状態で実行されるのではなく、次工程であるレンズ表面測定動作を継続させながら、マルチタスクとして実行する。
タブレット端末2は、レンズ加工装置1からの受信確認を受けた後、図4に示す加工中画面に切り替える。
【0063】
(5 レンズ表面測定)
(5.1 測定開始状態まで移動) 演算制御回路19はキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を所定のレンズ表面測定開始の位置に、またレンズ回転駆動モータ161を動作させレンズ回転軸160をレンズ表面測定開始の位置に、またスライダー駆動モータ121を動作させスライダー120をレンズ測定開始位置の制御データに基づき移動させ停止する。
【0064】
(5.2 表面第1点目) 演算制御回路19はキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を前方に移動させながらキャリッジ駆動モータ151の動作パルスをカウントする。表面測定子140aが眼鏡レンズML表面に接触し、測定スライダー142に固定されているフォトセンサーの検知板147が測定ベース141に固定されているフォトセンサー146に対して遮光状態から受光状態に変化させる時のキャリッジ駆動モータ151の動作パルスを第1のレンズ表面測定データZf1として記憶し、フォトセンサー146が受光の状態となるまでキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を後方に戻す。
【0065】
(5.3 表面第2点目まで移動) 演算制御回路19は、次の測定位置までレンズ回転駆動モータ161を駆動させながら、フォトセンサー146が受光とならないかを監視し、受光となる時にはキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を更に後方に移動させ、遮光状態を保ちながら次の測定位置で停止する。ここまでの間でキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を移動した場合にはその移動パルス数をカウンタとして記憶する。このレンズ回転動作中にレンズ測定の制御データに基づく第2の測定位置にスライダー駆動モータ121を動作させスライダー120を移動させ停止する。
【0066】
(5.4 表面第2点目) 第1の測定位置と同様に、演算制御回路19はキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を前方に移動させながらキャリッジ駆動モータ151の動作パルスをカウントする。表面測定子140aが眼鏡レンズML表面に接触し、フォトセンサーの検知板147がフォトセンサー146に対して遮光状態から受光状態に変化させる時のキャリッジ駆動モータ151の動作パルスを第2のレンズ表面測定データZf2として記憶し、フォトセンサー146が遮光の状態となるまでキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を後方に戻す。
【0067】
(5.5 表面第3点目以降) 演算制御回路19は、次のレンズ測定位置以降についても同様に制御することで必要な測定位置におけるレンズ表面測定データZfを得る。
【0068】
(5.6 エンドミル切込み方向第1) 次に演算制御回路19はレンズ回転駆動モータ161を動作させレンズ回転軸160をエンドミル131による切落しのための切り込み線上測定の位置とし、スライダー駆動モータ121を動作させスライダー120をエンドミル131による切落しのための切り込み線上のフレーム形状の位置とし、キャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を前方に移動させながらキャリッジ駆動モータ151の動作パルスをカウントする。
【0069】
表面測定子140aが眼鏡レンズML表面に接触し、フォトセンサーの検知板147がフォトセンサー146に対して遮光状態から受光状態に変化させる時のキャリッジ駆動モータ151の動作パルスを切り込み線上第1のレンズ表面測定データとして記憶し、フォトセンサー146が遮光の状態となるまでキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を後方に戻す。
【0070】
(5.7 エンドミル切込み方向第2) 次に演算制御回路19は、スライダー駆動モータ121を動作させスライダー120をレンズ測定半径単位に相当するパルス数分だけ移動する。キャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を前方に移動させながらキャリッジ駆動モータ151の動作パルスをカウントする。表面測定子140aが眼鏡レンズML表面に接触し、フォトセンサーの検知板147がフォトセンサー146に対して遮光状態から受光状態に変化させる時のキャリッジ駆動モータ151の動作パルスを切り込み線上第2のレンズ表面測定データとして記憶する。
【0071】
(5.8 エンドミル切込み方向比較) 工程5.5までに得られた測定データから演算で求めたレンズ表面のカーブ値を用い、ひとつ前のレンズ表面測定データ、この場合は切り込み線上の第1のレンズ表面測定データとの比較をし、その差分値が、レンズ測定半径単位差分に相当するレンズ表面測定値差となっているかを判断する。レンズ表面のカーブ値から演算したレンズ測定半径単位差分のレンズ表面測定値差に対して、切り込み線上の第2のレンズ表面測定での測定値差が十分に大きくなった時に切り込み線上の第2のレンズ表面測定ではレンズ表面とは接触せずにレンズ外径の外側にあると判断する。
【0072】
実際には切り込み線上の第2のレンズ表面測定でのキャリッジ150の移動とパルスカウントを行う際に、ひとつ前の測定データとの比較を順次実施し、カーブ値から演算したレンズ測定半径単位差分のレンズ表面測定値差よりも十分に大きなパルスカウントになった時点で表面測定子140aはレンズ外形の外側にあると判断する。測定で用いたレンズ測定半径を眼鏡レンズMLの切り込み方向のレンズ半径と定め、記憶する。
【0073】
(5.9 エンドミル切込み方向第3以降) 第2のレンズ表面測定でレンズ外形であると判断されない場合には第3のレンズ表面測定を実施する。ここでも第2のレンズ表面測定と同様、工程5.7と工程5.8を実施し、レンズ外径であるかの判断がされる。これ以降もレンズ外形であるとの判断がされるまで繰り返し実施される。
【0074】
(5.10 レンズ測定開始位置に戻る) 演算制御回路19は、3箇所または4箇所ある切り込み方向の全てについて工程5.6から工程5.9を実施することで全ての切り込み方向でのレンズ測定半径単位毎のレンズ表面測定データと、切り込み方向のレンズ半径を定めた後、レンズ回転駆動モータ161を動作させ、レンズ回転軸160を測定開始位置に、キャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を測定開始位置に移動させた後、スライダー駆動モータ121を動作させ、スライダー120をレンズ表面測定開始位置まで移動する。
【0075】
(6 レンズ裏面測定)
(6.1 裏面測定開始位置に移動) 演算制御回路19はキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150をレンズ裏面測定開始の位置に、またレンズ回転駆動モータ161を動作させレンズ回転軸160をレンズ裏面測定開始の位置に、またスライダー駆動モータ121を動作させ、スライダー120をレンズ測定開始位置の制御データに基づき移動させ停止する。
【0076】
(6.2 裏面第1点目) 演算制御回路19はキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を後方に移動させながらキャリッジ駆動モータ151の動作パルスをカウントする。裏面測定子140bが眼鏡レンズML裏面に接触し、測定スライダー142に固定されているフォトセンサーの検知板147が測定ベース144に固定されているフォトセンサー146に対して遮光状態から受光状態に変化させる時のキャリッジ駆動モータ151の動作パルスを第1のレンズ裏面測定データZr1として記憶し、フォトセンサー146が遮光の状態となるまでキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を前方に戻す。
【0077】
(6.3 裏面第2点目まで移動) 演算制御回路19は、次の測定位置までレンズ回転駆動モータ161を駆動させながら、フォトセンサー146が受光とならないかを監視し、受光となる時にはキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を更に前方に移動させ、遮光状態を保ちながら次の測定位置で停止する。ここまでの間でキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を移動した場合にはその移動パルス数をカウンタとして記憶する。このレンズ回転動作中にレンズ測定の制御データに基づく第2の測定位置にスライダー駆動モータ121を動作させスライダー120を移動させ停止する。
【0078】
(6.4 裏面第2点目) 第1の測定位置と同様に、演算制御回路19はキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を後方に移動させながらキャリッジ駆動モータ151の動作パルスをカウントする。裏面測定子140bが眼鏡レンズML裏面に接触し、フォトセンサーの検知板147がフォトセンサー146に対して遮光状態から受光状態に変化させる時のキャリッジ駆動モータ151の動作パルスを第2のレンズ裏面測定データZr2として記憶し、フォトセンサー146が遮光の状態となるまでキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を前方に戻す。
【0079】
(6.5 裏面第3点目以降) 演算制御回路19は、次のレンズ測定位置以降についても同様に制御することで必要な測定位置におけるレンズ裏面測定データZrを得る。
【0080】
(6.6 エンドミル切込み方向第1) 次に演算制御回路19はレンズ回転駆動モータ161を動作させレンズ回転軸160をエンドミル131による切落しのための切り込み線上測定の位置とし、スライダー駆動モータ121を動作させスライダー120をエンドミル131による切落しのための切り込み線上のフレーム形状の位置とし、キャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を後方に移動させながらキャリッジ駆動モータ151の動作パルスをカウントする。
【0081】
裏面測定子140bが眼鏡レンズML裏面に接触し、フォトセンサーの検知板147がフォトセンサー146に対して遮光状態から受光状態に変化させる時のキャリッジ駆動モータ151の動作パルスを切り込み線上第1のレンズ表面測定データとして記憶し、フォトセンサー146が遮光の状態となるまでキャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を前方に戻す。
【0082】
(6.7 エンドミル切込み方向第2) 次に演算制御回路19は、スライダー駆動モータ121を動作させスライダー120をレンズ測定半径単位に相当するパルス数分だけ移動する。キャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を後方に移動させながらキャリッジ駆動モータ151の動作パルスをカウントする。裏面測定子140bが眼鏡レンズML裏面に接触し、フォトセンサーの検知板147がフォトセンサー146に対して遮光状態から受光状態に変化させる時のキャリッジ駆動モータ151の動作パルスを切り込み線上第2のレンズ裏面測定データとして記憶する。
【0083】
(6.8 エンドミル切込み方向第3以降) 工程5.8で得られたレンズ半径データよりも小さい範囲でレンズ測定半径単位毎の測定データを得る。
【0084】
(6.9 レンズ測定開始位置に戻る) 演算制御回路19は、3箇所または4箇所ある切り込み方向の全てについて工程6.6から工程6.8を実施することで全ての切り込み方向でのレンズ測定半径単位毎のレンズ裏面測定データを定めた後、レンズ回転駆動モータ161を動作させ、レンズ回転軸160を測定開始位置に、キャリッジ駆動モータ151を動作させキャリッジ150を測定開始位置に移動させた後、スライダー駆動モータ121を動作させ、スライダー120をレンズ裏面測定開始位置まで移動する。
【0085】
(7 ヤゲン(または溝)位置演算) 演算制御回路19は、加工種221で選択された加工種に従い、レンズコバ面上でのヤゲン(または溝)位置を演算にて求める。ここではヤゲンの場合を記載する。演算制御回路19は、レンズ表面、及びレンズ裏面測定から得られたレンズ表面測定位置データZf、レンズ裏面測定位置データZrからフレーム形状の各動径毎のレンズコバ厚T=Zr-Zfを求め、またレンズ表面曲率半径df及びレンズ裏面曲率半径drを球面の方程式に代入し、算出する。各動径のコバ厚さTの総和ΣT、平均値Tm=ΣT/nを求める。但し、nは動径の分割数。
【0086】
(7.1 フレームカーブの仮位置) 眼鏡フレームの近似球面の曲率半径dと同じ曲率半径でその中心が加工軸上にあるヤゲンを想定し、コバ厚さ内の適当な位置にヤゲンを配置する為、ヤゲン球心を加工軸(Z軸)上で仮想移動させ、適当な位置を探す。
図19はマイナスレンズの中心から上半分を断面したものである。図19の[i]で示す眼鏡レンズ表面の球半径がヤゲン球の半径より大きい場合、つまりdf>dの場合、最も動径が小さくなる動径角θwMinρで眼鏡レンズ表面とヤゲンそれぞれのZ位置を一致させるようにヤゲン球心を仮想移動する。
図18はプラスレンズの中心から上半分を断面したものである。図18の[i]で示す眼鏡レンズ表面の球半径がヤゲン球の半径より小さい場合、つまりdf<dの場合、最も動径が大きくなる動径角θwMaxρで眼鏡レンズ表面とヤゲンそれぞれのZ軸位置を一致させるようにヤゲン球心を仮想移動する。この仮想移動量をMとする。
【0087】
(7.2 df>dのとき) ここではまず、df>dの場合で動径角θwMinρでZ位置を一致させる場合、仮想移動量Mは、動径角θwMinρのZ座標Zp(θwMinρ)からレンズ表面のZ座標Zf(θwMinρ)を差し引いた値として求められる。
M=Zp(θwMinρ)-Zf(θwMinρ)
眼鏡フレーム形状の眼鏡レンズの表面からのZ方向の仮想ヤゲン位置は、
P=Zp-Zf+M
として表され、各動径の総和ΣP、平均値Pm=ΣP/nを求める。
【0088】
(7.3 ヤゲン比) 仮想ヤゲン位置のコバ厚さ全体に占める割合をヤゲン比Rvと呼ぶこととする。ヤゲン比は、以下の式で表される。
Rv=ΣP/ΣT=Pm/Tm
ヤゲン比は、眼鏡が出来上がった状態での眼鏡フレームに対する眼鏡レンズの飛び出し量に相当するので一般的に好まれる値が存在する。これをヤゲン比の適値Rvfと称することにする。
【0089】
ヤゲン比の適値Rvfはコバ厚さの平均値Tmから相当する値を導き出すことができる。以下にその一例を示すが、これは限定的なものではない。
コバ厚さの平均値Tm ヤゲン比の適値Rvf
1.5・Bvl< 0.33・Tm
Bvl< 0.5・Bvl(0.5~0.33・Tm)
0.67・Bvl< 0.5・Tm
<0.67・Bvl 0.33・Bvl(0.5・Tm<)
上記表で使用しているBvlは、図21に示す眼鏡レンズ加工用砥石の先端ヤゲン幅である。
【0090】
(7.4 ヤゲン比に基づくZ位置) 仮想移動量Mを移動した状態でのヤゲン比Rvmを求める。Rvm>Rvfの場合には、レンズ表面側への移動ができない。Rvm<Rvfの場合には、眼鏡レンズ裏面側への移動となるので移動ができる。
ここでは、まずRvm<Rvfの場合、ヤゲン比Rvをヤゲン比の適値Rvfと一致させるため、加工軸方向の移動量M1=Rvf-Rvmが必要となる。図19[ii]にM1を示す。しかしながらここで移動量M1は、動径角θwMinρにおけるコバ厚さT(θwMinρ)内であることは言うまでも無いが、実際には加工後の眼鏡レンズの安全上、また外観上のため、眼鏡レンズの表面側、及び裏面側に最低限の残り幅が必要となり、これを表面側残り幅Wf、裏面側残り幅Wrとすると、Wf<M1 かつ M1<T(θwMinρ)-Wrの範囲となる必要がある。
【0091】
この範囲にM1が入る場合には、この移動量M1を仮想ヤゲン位置Pに加えることでヤゲン比Rv=Rvfとなる。P=Zp-Zf+M+M1
一方でこの範囲にM1が入らない場合、コバ厚さT(θwMinρ)の範囲内でRvがRvfに最も近づく位置まで移動する。つまりは、M1=Wf または M1=T(θwMinρ)-Wr のいずれかとなる。
ここでRvm>Rvfの場合ついても、同じ考え方でWf>M1となっているのでこの場合も移動量M1はM1=Wfとなる。
この移動量M1を移動した後の仮想ヤゲン位置Pは、P=Zp-Zf+M+M1となる。この状態でのヤゲン比は、Rvm1=P/T となる。
【0092】
(7.5 傾斜移動) 次に加工軸に沿った移動ではヤゲン比がその適値に到達できないため、ボクシング測定による水平幅、鉛直幅のうち、df>dの場合小さい幅に沿って傾斜することでヤゲン比Rvを変化させる。一般的なフレームでは鉛直幅が小さい幅となるので、ここでは鉛直幅として以下の説明をする。
鉛直幅方向にフレーム形状を2分するとき、動径角θwMinρでのヤゲン位置を固定し、固定した動径角θwMinρが含まれない側、例えば、動径角θwMinρが下側に属している時には上側の動径鉛直長さ成分ρ・Sinθの最大となる動径角θwMaxVでZ方向の移動量が最大となるように傾斜を想定する。
【0093】
最大移動量Amaxは
Amax=2・(Rvf-Rvm1)
として求めることができる。図19[iii]に断面として示す。この傾斜による各動径における移動幅Aは、ボクシング測定による鉛直幅Vに対する鉛直長さLvの比Lv/Vを最大移動幅Amaxに乗じたものとして表される。つまり
A=Amax・Lv/V
となる。図20にLv、Vの関係を示す。
ここで鉛直幅Vは各動径の鉛直長さ成分ρ・Sinθの最大値(ρ・Sinθ)maxから最小値(ρ・Sinθ)minを引いたもの
V=(ρ・Sinθ)max-(ρ・Sinθ)min
となる。また、各動径ρの鉛直長さLvは
Lv=(ρ・Sinθ)-(ρ・Sinθ)min
となる。但し、動径角θwMinρが上側に属している時には
Lv=(ρ・Sinθ)max-(ρ・Sinθ)
となる。
【0094】
ここでAmaxの移動量は、ヤゲン比の適値と一致する為の条件から算出した値の為、動径角θwMaxVでのコバ厚内で取り得るかの検証が必要である。移動量Amaxは以下の式を満たす範囲となる。
Zf(θwMaxV)+Wf<P+Amax<Zr(θwMaxV)-Wr
これを外れる場合にはいずれかの限界位置にとどめるようにAmaxの値を変更する。この場合には、ヤゲン比の適値Rvfとは一致しない結果となる。
【0095】
(7.6 df<dのとき) 次にdf<dの場合で動径角θwMaxρで眼鏡レンズ表面とヤゲンとを一致させる場合、仮想移動量Mは、動径角θwMaxρのZ座標Zp(θwMaxρ)から眼鏡レンズ表面の座標Zf(θwMaxρ)を差し引いた値として求められる。
M=Zp(θwMaxρ)-Zf(θwMaxρ)
眼鏡フレーム形状の眼鏡レンズ表面からのZ方向の仮想ヤゲン位置は、
P=Zp-Zf+M
として表され、各動径の総和ΣP、平均値Pm=ΣP/nを求める。
仮想ヤゲン位置のヤゲン比は、以下の式で表される。
Rv=ΣP/ΣT=Pm/Tm
【0096】
(7.7 ヤゲン比に基づくZ位置) 仮想移動量Mを移動した状態でのヤゲン比Rvmを求める。Rvm>Rvfの場合には、レンズ表面側への移動ができない。Rvm<Rvfの場合には、眼鏡レンズ裏面側への移動となるので移動ができる。
ここでは、まずRvm<Rvfの場合について記載する。
ヤゲン比Rvをヤゲン比の適値Rvfと一致させるため、移動量M1=Rvf-Rvmが必要となる。図18[ii]にM1を示す。しかしながらここで移動量M1は、動径角θwMaxρにおけるコバ厚さT(θwMaxρ)内であることは言うまでも無いが、実際には加工後の眼鏡レンズの安全上、また外観上のため、眼鏡レンズの表面側、及び裏面側に最低限の残り幅が必要となり、これを表面側残り幅Wf、裏面側残り幅Wrとすると、Wf<M1 かつ M1<T(θwMaxρ)-Wrの範囲となる必要がある。
【0097】
この範囲にM1が入る場合には、この移動量M1を仮想ヤゲン位置Pに加えることでヤゲン比Rv=Rvfとなる。P=Zp-Zf+M+M1
一方でこの範囲にM1が入らない場合、コバ厚さT(θwMaxρ)の範囲内でRvがRvfに最も近づく位置まで移動する。つまりは、M1=Wf または M1=T(θwMinρ)-Wr のいずれかとなる。
ここでRvm>Rvfの場合ついても、同じ考え方でWf>M1となっているのでこの場合も移動量M1はM1=Wfとなる。
この移動量M1を移動した後の仮想ヤゲン位置Pは、P=Zp-Zf+M+M1となる。この状態でのヤゲン比は、Rvm1=P/T となる。
【0098】
(7.8 傾斜移動) 次に加工軸に沿った移動ではヤゲン比がその適値に到達できないため、眼鏡フレームのボクシング測定による水平幅、鉛直幅のうち、大きい幅に沿って傾斜することでヤゲン比Rvを変化させる。一般的なフレームでは水平幅が大きい幅となるので、ここでは水平幅として説明する。
Z軸に沿った移動量M+M1で動径角θwMaxρでのヤゲン位置は、眼鏡レンズ表面から距離が最小となっている。
水平幅方向にフレーム形状を2分するとき、動径角θwMaxρでのヤゲン位置を固定し、固定した動径角θwMaxρが含まれない側、例えば、動径角θwMaxρが左側に属している時には右側の動径水平長さ成分ρ・Cosθの最大となる動径角θwMaxHでZ方向の移動量が最大となるように傾斜を想定する。
【0099】
最大移動量Amaxは
Amax=2・(Rvf-Rvm1)
として求めることができる。図18[iii]に断面として示す。この傾斜による各動径における移動幅Aは、ボクシング測定による水平幅Hに対する水平長さLhの比Lh/Hを最大移動幅Amaxに乗じたものとして表される。つまり
A=Amax・Lh/H
となる。図20にLh、Hの関係を示す。
ここで水平幅Hは以下の式で示すように各動径の水平長さ成分ρ・Cosθの最大値(ρ・Cosθ)maxから最小値(ρ・Cosθ)minを引いたもの
H=(ρ・Cosθ)max-(ρ・Cosθ)min
となる。また、各動径ρの水平長さLhは
Lh=(ρ・Cosθ)-(ρ・Cosθ)min
となる。但し、動径角θwMaxρが右側に属している時には
Lh=(ρ・Cosθ)max-(ρ・Cosθ)
となる。
【0100】
ここでAmaxの移動量は、ヤゲン比の適値と一致する為の条件から算出した値の為、動径角θwMaxHでのコバ厚内で取り得るかの検証が必要である。移動量Amaxは以下の式を満たす範囲となる。
Zf(θwMaxH)+Wf<P+Amax<Zr(θwMaxH)-Wr
これを外れる場合にはいずれかの限界位置にとどめるようにAmaxの値を変更する。この場合には、ヤゲン比の適値Rvfとは一致しない結果となる。
【0101】
以上の結果から、ヤゲン位置Pは、
P=Zp-Zf+M+M1+Amax・(Lv/V) または
P=Zp-Zf+M+M1+Amax・(Lh/H)
の式を用いて各動径θにおけるPを求める。
【0102】
(7.9 ヤゲン位置指定によるレンズ表面球面) ここで、図22は眼鏡フレーム形状球面上の処方位置に座標原点があり、その球心がZ軸上にある元座標系からレンズ表面の近似球面上の処方位置に座標原点があり、その球心がZ軸上にある新座標系の関係を示している。元座標での眼鏡フレーム形状の座標(Xp,Yp,Zp)でZ座標からヤゲン位置Pを引いた値Zp-Pは、この元座標系でのヤゲン比が適値となるときの眼鏡レンズ表面の座標Zgとなっている。レンズ表面(Xp,Yp,Zg)4点の座標値を用いて球面の方程式
(X-ag)+(Y-bg)+(Z-cg)=dg
に代入し、眼鏡レンズ表面の近似球面の中心(ag,bg,cg)、半径dgを求める。ここでレンズ表面の近似球面をZ軸が通る座標(0,0、eg)とすると
eg=±√{dg-(-ag)-(-bg)}+cg
の式で求めることができる。
【0103】
測定平面に対して鉛直で処方位置に一致するレンズ表面球面上の点を新たな座標原点とすることで加工中心を処方位置に維持する。元座標系のZ軸のX軸回りにα、Y軸回りにβの傾斜角による原点のずれegに相当の平行移動変換を行う。平行移動後の座標を(X3,Y3,Z3)とすると
X3=Xp+eg・sin(β)
Y3=Yp-eg・sin(α)
Z3=Zp-eg・cos(β)・cos(α)
【0104】
これを更にレンズ表面の近似球面の中心がZ軸上とするためX軸回りに回転角γ=tan-1{(-bg)/(cg-eg)}回転する。この座標値を(X4,Y4,Z4)とし、次にY軸回りに回転角δ=tan-1{(ag)/(cg-eg)}回転することで、眼鏡フレーム形状(Xv,Yv,Zv)を得る。図22では、図の複雑化をさける為、bg=0、γ=0となる場合の図となっている。
X4=X3
Y4=Y3・cos(γ)+Z3・sin(γ)
Z4=-Y3・sin(γ)+Z3・cos(γ)
Xv=X4・cos(δ)-Z4・sin(δ)
Yv=Y4
Zv=X4・sin(δ)+Z4・cos(δ)
【0105】
(7.10 レンズ表面基準座標系でのフレーム形状) ここに求めた眼鏡フレーム形状(Xv,Yv,Zv)は、極座標として(ρv,θv)と高さZvとして表示できる。ヤゲン比の適値と一致、または出来るだけ適値に近づけたヤゲン位置から眼鏡レンズ表面の近似球面を求め、この眼鏡レンズ表面上の処方位置(加工中心)を原点とし、表面球心が加工軸(Z軸)を通る座標系上に眼鏡フレーム形状を座標変換表示したものとなっている。
演算制御回路19は、求めたヤゲン位置(ρv,θv,Zv)をデータメモリー191に記憶する。
【0106】
(8 測定終了通知) 演算制御回路19は、測定の終了情報とレンズ表面及び裏面の位置データ、レンズコバ厚、レンズ表面、裏面のカーブ値、ヤゲン位置情報、ヤゲンカーブ値などをタブレット端末2に通知する。タブレット端末2は、図4に示す加工中画面のレンズ測定結果に基づくヤゲン(または溝)の状態を図表示するエリア241に得られた情報に基づく図表示をする。
【0107】
(9 制御データ演算)
次に演算制御回路19は、制御軸であるレンズ回転、スライダー、キャリッジ、スピンドルエレベータの制御データに基づき加工制御することになるが、ここで各制御軸のデータの求め方について記載する。
図23の〔フレーム枠-側面断面図〕に破線で円の一部を描いているが、断面上に現れる眼鏡フレームFLMのフレーム溝の沿う球面の破断面を示している。眼鏡フレームFLMのフレーム溝は球面状の湾曲した形状のため、眼鏡レンズ加工装置の加工ツールの円筒面、または円錐面に沿った円形状では合致せず、目的の位置を加工するときに周辺位置で加工干渉により余分な加工が発生する場合が多い。
【0108】
(9.1 フレームのヤゲン傾斜角)図23は、眼鏡フレームのフレーム枠の一例として楕円形状で示したものである。フレーム枠は、形状を(θn、ρn)の極座標として表し、レンズ光軸方向をZとして円柱座標で表している。また、これを(Xn、Yn、Zn)の直角座標としても表せる。このとき、Xn=ρn・cos(θn)、Yn=ρn・sin(θn)となっている。図23の上方にある〔θn点-接線平面図〕は回転角θnでの法線方向から見た状態を示し、n位置に対して単位角Δθだけそれぞれ前後している位置をn、n として表現している。
【0109】
Sn、Snは、眼鏡フレームの平面上での+Δθ、-Δθの回転角に相当する周長を示している。〔θn点-接線平面図〕のνは、回転角θnの法線方向から見たヤゲン傾斜角を表している。ヤゲン傾斜角ν、及びSn、Snは、以下の数式で表せる。
ν= arctan{(Zn-Zn)/(Sn+Sn)}
Sn=√{ρn+1 2+ρ -2・ρn+1・ρ・cos(Δθ)}
Sn=√{ρ +ρn-1 -2・ρ・ρn-1・cos(Δθ)}
【0110】
(9.2 砥石のヤゲン傾斜角)一方で、図24はヤゲン砥石のヤゲン頂点に沿って切断した断面をレンズ回転軸方向から見た図である。ヤゲン頂点に当たる断面はスピンドル傾斜角τにより楕円形状となる。レンズ回転軸とスピンドル軸の双方を含む平面で切断する位置が加工の基準位置となるが、実際の加工は、眼鏡フレーム形状が円形でない限り、加工の基準位置から外れた、つまり、レンズ回転軸とスピンドル軸を含む平面上にはない位置に、加工点を移動させることで所望の形状に仕上げることができる。このときの基準位置に対するズレ角を砥石加工角ξwとし、加工点を含む砥石の接線傾斜角ηとする。
【0111】
図24の下方には、砥石加工角ξw位置の砥石接線を含む平面図を示している。ここで距離Da、及びDbは、それぞれ砥石加工角ξwからそれぞれ単位角+Δξw、-Δξwずれた2点の間隔距離であり、レンズ回転軸に平行な方向の間隔距離Daと、直角な方向の間隔距離Dbとを示している。この2つの距離は、砥石半径GR、砥石加工角ξwから求めることができる。砥石加工角ξw位置での砥石のヤゲン傾斜角μはこれらの間隔距離Da、Dbで表すことができる。
μ=arctan(Da/Db)
Da={GR・cos(ξw+Δξw)-GR・cos(ξw-Δξw)}・sin(τ)
Db=√[{GR・cos(ξw+Δξw)-GR・cos(ξw-Δξw)}・cos(τ)+{GR・sin(ξw+Δξw)-GR・sin(ξw-Δξw)}
Da/Db=-sin(ξw)・sin(τ)/√{sin(ξw)・cos(τ)+cos(ξw)}
砥石のヤゲン傾斜角μは、スピンドル傾斜角τ、砥石加工角ξwにより定まることが数式よりわかるが、スピンドル傾斜角は装置により固定されるものであるため、砥石加工角ξwと対をなす関係にある。
(9.3 ヤゲン傾斜角の一致)眼鏡フレームのヤゲン傾斜角νに対して、砥石のヤゲン傾斜角μが一致するように制御することで目的の位置である回転角θnの周辺で加工干渉の発生しない加工が実現するので、ν=μとなるように、砥石加工角ξwを定める。
【0112】
(9.4 フレームの加工角)次に、砥石加工角ξwでの砥石接線が、眼鏡フレームの回転角θnの位置での接線と一致するようにスピンドルとレンズ回転軸との関係を配置することで所望の眼鏡フレーム形状が得られる。この状態を図25に示している。図25の中に図23で示した眼鏡フレームの座標系の角度と図24で示した砥石の座標系の角度とその関係を示した。眼鏡フレームの加工角ξfは、以下の式で示される。
ξf=π/2-{η+λn+(π-θn)}
既知の値となった眼鏡フレームの加工角ξf、砥石加工角ξw、スピンドル傾斜角τ、砥石半径GR、眼鏡フレームの座標(θn、ρn、Zn)により、レンズ回転軸とスピンドルとの軸間距離DBS、レンズ回転軸とスピンドルとの軸ズレ量DOP、レンズ回転軸方向の加工位置DFTを求めることができる。
DBS=GR・cos(ξw)・cos(τ)+ρn・cos(ξf)
DOP=GR・sin(ξw)-ρn・sin(ξf)
DFT=Zn-GR・(1-cos(ξw))・sin(τ)
【0113】
(9.5 加工制御軸データ)レンズ回転軸160を回転角θnに従った位置に制御するときに、スライダー120をレンズ回転軸とスピンドルとの軸間距離DBSに従った位置に、キャリッジ150をレンズ回転軸方向の加工位置DFTに従った位置に、スピンドルエレベータ136をレンズ回転軸とスピンドルとの軸ズレ量DOPに従った位置に、制御することでレンズ回転角θnの位置を周辺での加工干渉による余分な加工を発生させることなく加工制御できる。以上の手順を回転角の分割に従って全ての位置について求める。
【0114】
ここまでは、ヤゲン制御を前提としてヤゲン位置を定めた後としての説明となっているが、粗加工ではこれ以降に示す通り、レンズ裏面がエンドミルの特定位置を維持できるように制御するためレンズ裏面の測定値を基準として、また、ツールの半径GRをエンドミル半径に変更することで適用する。平面加工では、レンズの表面が砥石の特定位置を維持するため、レンズ表面の測定値を基準とし、砥石の特定位置の半径をツールの半径GRに置き換え適用する。溝掘り加工では、溝位置を基準とし、溝掘り砥石の半径をツールの半径GRとして適用する。以上の説明のとおり、レンズの目的位置、使用するツールの値を適用することで加工の種類を問わず適用ができる。
【0115】
(9.6 粗加工制御データ)演算制御回路19は、エンドミル131先端から元方向に一定量、ここでは1mmの位置をエンドミル131のレンズ裏面と一致する加工位置に定め、エンドミル131の先端から元方向に一定量の位置とレンズ裏面の位置データとが一致するようにレンズ回転駆動モータ161、キャリッジ駆動モータ151、スライダー駆動モータ121、スピンドルエレベータ駆動モータ138の制御データを求める。エンドミル131先端ではなく、元方向に一定量の位置を加工位置とするのは、各種レンズ裏面カーブから想定される変化に対してレンズ裏面を突き抜けるに十分な位置とするためである。
【0116】
演算制御回路19は次に、コバ厚、エンドミル直径、隣り合う各加工制御2点間の距離からエンドミル131にて各制御2点間で加工除去される体積を求める。求めた加工除去体積を予め補正値メモリー193に設定されているエンドミル加工での単位時間当りの最適加工除去体積で除算することで各制御2点間の最適な制御時間を定める。これを各制御2点間のスライダー駆動モータ121、キャリッジ駆動モータ151、レンズ回転駆動モータ161、スピンドルエレベータ駆動モータ138、の各制御速度に修正してデータメモリー191に記憶する。また補正値メモリー193には、各駆動モータの限界高速度が記憶されているので各制御速度がこの限界高速度を越える高速度になっている場合には該当する制御モータを限界高速度に設定すると共にその他の駆動モータの制御速度をその減速比に合わせて減速した速度に修正し、データメモリー191に記憶する。
【0117】
(10 加工準備) 演算制御回路19は、ウェット・ドライ切替部18のドライ位置センサー189-1の状態を見ることでドライ位置であることを確認し、エンドミル131による最初の制御データに基づき、スライダー駆動モータ121を駆動し、スライダー120を移動させながら、キャリッジ駆動モータ151を駆動し、キャリッジ150を移動させながら、レンズ回転駆動モータ161を駆動し、レンズ回転軸160を回転させる。スピンドル駆動モータ137を駆動し、エンドミル131を回転状態にする。脱臭装置17の排気ファン171を稼動させる。
【0118】
(11 エンドミル切落し)
(11.1 最初の切り込み)
演算制御回路19は、キャリッジ駆動モータ151とスライダー駆動モータ121を駆動させ、最初の切り込み回転位置のレンズ外径位置からフレーム形状の動径位置までの間を半径単位間隔の制御位置データ、制御速度に従ってキャリッジとスライダーを移動させることで切り込み方向の加工をする。
次に演算制御回路19は、フレーム形状の動径位置からレンズ外径位置まで制御データに従いながら、限界高速度で移動し、更にレンズ回転軸160を右方向(エンドミルから離れる方向)に次の回転切り込み位置のレンズ外径に余裕値を加えた位置までキャリッジ駆動モータ151とスライダー駆動モータ121を駆動し、キャリッジ150とスライダー120を移動する。演算制御回路19はレンズ回転駆動モータ161を駆動し、次の回転切り込み位置まで限界高速度で回転する。
【0119】
(11.2 2個目の切り込み) 演算制御回路19はキャリッジ駆動モータ151とスライダー駆動モータ121を動作させ、2個目の切り込み回転位置のレンズ外径位置からフレーム形状の動径位置までの間を半径単位間隔の制御位置データ、制御速度に従ってキャリッジ150とスライダー120を移動させることで切り込み方向の加工をする。
次に演算制御回路19は、フレーム形状の動径位置からレンズ外径位置まで制御データに従いながら、限界高速度で移動し、更にレンズ回転軸160を右方向(エンドミルから離れる方向)に次の回転切り込み位置のレンズ外径に余裕値を加えた位置までキャリッジ駆動モータ151とスライダー駆動モータ121を駆動し、キャリッジ150とスライダー120を移動する。演算制御回路19はレンズ回転駆動モータ161を駆動し、次の回転切り込み位置まで限界高速度で回転する。
【0120】
(11.3 3,4個目の切り込み、最初の切落し) 演算制御回路19は、3箇所目の切り込み回転位置も同様に制御することで切り込み方向の加工をする。切込み回転位置が4箇所有る時には、更に同様の制御を繰り返す。3箇所または4箇所ある切り込みの最後の加工を終了した後、最初の切り込み回転位置方向に向かって、最後の切り込み終了状態からフレーム形状の隣の動径に基づくレンズ回転駆動モータ161、キャリッジ駆動モータ151、スライダー駆動モータ121、スピンドルエレベータ駆動モータ138の各制御データ、制御速度に従って駆動する。次々にフレーム形状の隣の動径に基づくレンズ回転駆動モータ161、キャリッジ駆動モータ151、スライダー駆動モータ121、スピンドルエレベータ駆動モータ138の各制御データ、制御速度に従って駆動することでフレーム形状に沿った形状加工がされ、最初の切り込み回転位置のフレーム形状動径に到達すると切落し片MLdが切り離される。切落し片MLdは加工室11の円形開口11eを通り、ビニール袋183の中に落下する。
【0121】
(11.4 切落し) 演算制御回路19は、最後の切込みから最初の切込みまでフレーム形状に従った切落し加工に引き続き、フレーム形状に沿った次の動径情報に基づくレンズ回転駆動モータ161、キャリッジ駆動モータ151、スライダー駆動モータ121、スピンドルエレベータ駆動モータ138の各制御データ、制御速度で駆動することでエンドミル131での切落し加工を進める。フレーム形状に従った1周の駆動制御を最後の切り込み位置まで到達すると周辺部分が最後の切落し片MLdとして切り離される。切落し片MLdは加工室11の円形開口11eを通り、ビニール袋183の中に落下する。
【0122】
(11.5 エンドミル切落し終了、戻り) 演算制御回路19は、スライダー駆動モータ121を駆動しスライダー120を右方の加工開始基準位置に移動させながら、キャリッジ駆動モータ151を駆動しキャリッジ150を前方の加工開始基準位置に移動させながら、スピンドルエレベータ駆動モータ138を駆動させスピンドルエレベータ136を基準位置に移動させながら、レンズ回転駆動モータ161を駆動しレンズ回転軸160を加工開始位置に回転させる。スピンドル駆動モータ137を停止する。脱臭装置17の排気ファン171を停止する。
【0123】
(12 ウェット切替) 演算制御回路19は、ドライ・ウェット切替モータ188を駆動させ、切替プレート181を回転させ、ウェット位置センサー189-2が入ったのを確認し、ドライ・ウェット切替モータ188を停止する。
【0124】
(13 ヤゲン制御データ演算) 演算制御回路19は、加工種221で指定された加工状態に仕上げるための制御データの演算を行う。ここではヤゲン加工の場合を記載するが、溝加工、平加工においても利用する砥石形状、砥石径などの条件が異なるが制御は同様に実施される。
【0125】
(13.1 ヤゲン制御データ、制御速度演算) 演算制御回路19は、データメモリー191に保存されたフレーム形状データ(ρv,θv)、溝位置データZvに基づき、ヤゲン砥石133aのヤゲン先端位置をヤゲン制御でのヤゲン砥石133a上の基準位置と定める。
【0126】
演算制御回路19は、ヤゲン砥石133a上の基準位置に対応させて眼鏡レンズMLを駆動制御するためのキャリッジ駆動モータ151、スライダー駆動モータ121、スピンドルエレベータ駆動モータ138及びレンズ回転駆動モータ161の各制御データを演算する。データメモリー191に記憶する。演算制御回路19は次に、フレーム形状の各動径に対応したコバ厚T、加工取代(エンドミル切落しフレーム形状動径とヤゲン加工フレーム形状動径との差)、各加工制御2点間の距離からヤゲン加工での各制御2点間で加工除去される体積を求める。求めた加工除去体積を予め補正値メモリー193に設定記憶されているヤゲン砥石133a加工での単位時間当りの最適加工除去体積で除算することで各制御点間の最適な制御時間を定める。これを各制御2点間のスライダー駆動モータ121、キャリッジ駆動モータ151、スピンドルエレベータ駆動モータ138、レンズ回転駆動モータ161の各制御速度に修正してデータメモリー191に記憶する。
【0127】
(13.2 制御限界高速度修正) 演算制御回路19は、データメモリー191に記憶した各制御速度が、補正値メモリー193に記憶されている各駆動モータの限界高速度を越える高速度になっている場合には該当する制御モータの制御速度を限界高速度に修正すると共にその他のモータの制御速度をその減速比に合わせて減速した速度に修正し、データメモリー191に記憶する。
【0128】
(13.3 マルチタスクへの適応) ここまでに説明のヤゲン制御データ演算の工程は、演算制御回路19がレンズ測定を完了させた以降のCPU負荷の小さい動作中を利用してマルチタスクとして着手することで、動作が停止し演算のみを実行する時間の発生を減らす。
【0129】
(14 ヤゲン加工) 演算制御回路19は、ウェット・ドライ切替部18のウェット位置センサー189-2の状態を確認することでウェット位置であることを確認した後、ヤゲン砥石133aの加工に適したスピンドル駆動モータ137の回転速度を補正値メモリー193から引き出し、スピンドル駆動モータ137をその回転速度で駆動させ、給水装置3のポンプ37を駆動させ、脱臭装置17の排気ファン171を作動させる。ポンプ37の作動が安定し、給水が砥石にされる十分な時間を待機した後、制御動作に入る。
【0130】
(14.1 ヤゲン制御) 演算制御回路19は、スライダー駆動モータ121を駆動し、眼鏡レンズMLが取代分だけヤゲン砥石133aから離れる(制御位置よりは右方)位置に移動させながら、レンズ回転駆動モータ161、キャリッジ駆動モータ151、スピンドルエレベータ駆動モータ138を駆動し、ヤゲン制御のための最初の制御データの位置まで移動する。演算制御回路19はレンズ回転駆動モータ161、キャリッジ駆動モータ151、スライダー駆動モータ121、スピンドルエレベータ駆動モータ138の各モータの制御データ、制御速度にて初期回転位置の制御を実施することで加工を開始する。2点目以降の制御データ、制御速度に基づき、同様に駆動制御することで全周にヤゲン加工をする。
【0131】
(14.2 加工開始位置に戻り) 演算制御回路19は、スライダー駆動モータ121を駆動させスライダー120を右方の加工開始基準位置に移動させながら、キャリッジ駆動モータ151を駆動させキャリッジ150を加工開始基準位置に移動させながら、スピンドルエレベータ駆動モータ138を基準位置に移動させながら、レンズ回転駆動モータ161を駆動させレンズ回転軸160を開始位置に回転し、加工開始状態に戻す。スピンドル駆動モータ137を停止する。給水装置3のポンプ37を停止する。脱臭装置17の排気ファン171を停止する。
【0132】
(15 ドライ切替、第1画面) 演算制御回路19は、ドライ・ウェット切替モータ188を駆動し、ウェット位置センサー189-2が入っている状態からドライ位置センサー189-1が入る位置に向けて駆動させ、ドライ位置センサー189-1が入ったことを確認し、ドライ・ウェット切替モータ188を停止する。
【0133】
演算制御回路19は、タブレット端末2に加工終了の通知をする。タブレット端末2は、終了通知を受け、第1画面に切り替える。
【0134】
以上説明したように、この発明の実施形態の眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズを挟持し、回転可能とするレンズ回転軸と研削砥石と、または溝掘砥石と、またはエンドミルを回転可能とするスピンドルとを互いに平行または、傾斜角を持つように構成し、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、またレンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、レンズ回転軸の回転量に応じた、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量とを求めて、それぞれの移動量がレンズ回転軸の回転量と同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに所望のヤゲン、または溝掘加工を行う眼鏡レンズ加工装置において、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向にレンズ回転軸とスピンドルとの距離を駆動制御する手段がレンズ回転軸またはスピンドルのいずれか一方に在り、レンズ回転軸の回転量に応じた、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量とを求めて、それぞれの移動量がレンズ回転軸の回転量と同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに加工干渉のない状態で所望のヤゲン、または溝掘加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置を提供することができる。また、この発明の実施形態の眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡フレームの玉型における加工点での眼鏡フレームのヤゲン傾斜角砥石のヤゲン傾斜角を一致するように砥石上の加工点を定め、砥石加工角を定める。また、眼鏡フレームの玉型における加工点での眼鏡フレーム玉型のヤゲン傾斜角砥石のヤゲン傾斜角を一致するように砥石上の加工点を定め、砥石の加工角を定める。また、眼鏡フレームの玉型における加工点での接線が砥石上の加工点での接線に一致するように眼鏡フレーム玉型の加工角を定める。レンズ回転軸とスピンドルの配置状態が、定められた砥石の加工角と眼鏡フレーム玉型の加工角となり、かつ砥石の加工点と眼鏡フレームの玉型における加工点とが一致する配置状態とするためレンズ回転軸の回転量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量とを求める。眼鏡フレームの玉型における加工点でのヤゲン位置を所望の位置とするためレンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量を求める。レンズ回転軸の回転量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面に対して鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸に鉛直な方向の移動量と、レンズ回転軸とスピンドルとが存在する平面内でレンズ回転軸の軸方向の移動量とをそれぞれ同時に移動開始し、定速で移動し、同時に移動完了させるように駆動制御することで眼鏡レンズに加工干渉のない状態で所望のヤゲン、または溝掘加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0135】
1・・・レンズ加工装置
2・・・タブレット端末
3・・・給水装置
4・・・外部サーバー(クラウドコンピュータ)
11・・・加工室
12・・・レンズ駆動部
13・・・スピンドル
14・・・レンズ測定部
17・・・脱臭部
18・・・ウェット・ドライ切替部
19・・・演算制御回路部
103・・・固定ベース
120・・・スライダー
131・・・エンドミル
132・・・溝掘砥石
133・・・研削砥石
140a・・・表面測定子
140b・・・裏面測定子
150・・・キャリッジ
160・・・レンズ回転軸
31・・・排水ホース
32・・・排気ホース
36・・・給水ホース
ML・・・眼鏡レンズ
MLd・・・眼鏡レンズ切り離し片
MLf・・・眼鏡レンズ表面
FLM・・・眼鏡フレーム
pl-m・・・測定平面
pl-x・・・測定平面上のX軸を含む鉛直平面
pl-y・・・測定平面上のY軸を含む鉛直平面
pl-r・・・眼鏡フレーム球面中心をZ軸が通る座標系のXY平面(右眼)
θ・・・眼鏡フレーム玉型の動径角
ρ・・・眼鏡フレーム玉型の動径
λ・・・眼鏡フレーム玉型の接線傾斜角
ν・・・眼鏡フレーム玉型のヤゲン傾斜角
τ・・・スピンドル傾斜角
η・・・砥石の接線傾斜角
μ・・・砥石のヤゲン傾斜角
ξw・・・砥石の加工角
ξf・・・眼鏡フレーム玉型の加工角
GR・・・砥石の半径
DBS・・・スピンドル軸とレンズ回転軸の軸間距離
DOP・・・スピンドル軸とレンズ回転軸とを含む平面に対して直行する方向制御距離
DFT・・・スピンドル軸とレンズ回転軸とを含む平面内での加工点に対して、この平面から外れた加工点となるときのレンズ回転軸方向のズレ量
図1
図1a
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25