(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】検体容器保管装置、検体保管キット、および検体保管方法。
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240816BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240816BHJP
G01N 1/42 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01N1/00 101H
G01N1/28 J
G01N1/42
(21)【出願番号】P 2020150239
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】320002913
【氏名又は名称】株式会社イチネン製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】武井 克博
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-543082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 1/42
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取された検体を収容した検体容器を保管する検体容器保管装置であって、
前記検体容器を収容可能であるとともに第一の方向に延びる検体収容空間を形成し、前記検体収容空間に連通する内側開口によって、該検体収容空間の前記第一の方向の少なくとも一方を開口させることで、前記検体容器を前記検体収容空間に挿入自在とする内側周壁と、
前記内側周壁の外周面を覆うように設けられ、前記内側周壁との間に、前記第一の方向に延びる密閉された蓄冷材収容空間を形成する外側周壁と、
前記蓄冷材収容空間に収容されて冷却によって蓄冷可能な蓄冷材と、
前記内側開口の開放および閉塞を行う蓋と、
を備え
、
前記蓄冷材、前記外側周壁、および前記内側周壁は、可視光に対する透過性を有する材料からなる検体容器保管装置。
【請求項2】
採取された検体を収容した検体容器を保管する検体容器保管装置であって、
前記検体容器を収容可能であるとともに第一の方向に延びる検体収容空間を形成し、前記検体収容空間に連通する内側開口によって、該検体収容空間の前記第一の方向の少なくとも一方を開口させることで、前記検体容器を前記検体収容空間に挿入自在とする内側周壁と、
前記内側周壁の外周面を覆うように設けられ、前記内側周壁との間に、前記第一の方向に延びる密閉された蓄冷材収容空間を形成する外側周壁と、
前記蓄冷材収容空間に収容されて冷却によって蓄冷可能な蓄冷材と、
前記内側開口の開放および閉塞を行う蓋と、
を備え、
前記外側周壁は、最大厚さ寸法が5mm以下の樹脂製であ
る検体容器保管装置。
【請求項3】
採取された検体を収容した検体容器を保管する検体容器保管装置であって、
前記検体容器を収容可能であるとともに第一の方向に延びる検体収容空間を形成し、前記検体収容空間に連通する内側開口によって、該検体収容空間の前記第一の方向の少なくとも一方を開口させることで、前記検体容器を前記検体収容空間に挿入自在とする内側周壁と、
前記内側周壁の外周面を覆うように設けられ、前記内側周壁との間に、前記第一の方向に延びる密閉された蓄冷材収容空間を形成する外側周壁と、
前記蓄冷材収容空間に収容されて冷却によって蓄冷可能な蓄冷材と、
前記内側開口の開放および閉塞を行う蓋と、
を備え、
前記内側周壁は、前記第一の方向に延びる有底筒状の内側容器によって構成されており、
前記外側周壁は、前記第一の方向に延びる有底筒状の外側容器によって構成されており、
前記外側容器は、前記内側容器を内側に配置可能な外側開口を有し、
前記内側容器は、前記内側周壁から前記第一の方向に交差する第二の方向に張り出すことで、前記内側容器が前記外側開口の内側に配置された状態で、前記外側開口周りで前記外側容器と前記第一の方向に係合するフランジを有す
る検体容器保管装置。
【請求項4】
前記外側容器および前記内側容器は樹脂製であり、
前記外側容器と前記内側容器の前記フランジとが溶着または接着されている請求項
3に記載の検体容器保管装置。
【請求項5】
前記内側周壁は円筒状をなすとともに、該内側周壁の外周面の外径が前記第一の方向に前記内側開口から離れるにつれて漸次小さくなるように、前記内側周壁の外周面の少なくとも一部がテーパ状をなすテーパ面となっており、
前記外側開口は円形状をなし、
前記テーパ面における最大外径は前記外側開口の内径よりも大きく、かつ、前記テーパ面における最小外径は前記外側開口の内径よりも小さい請求項
3または4に記載の検体容器保管装置。
【請求項6】
前記外側容器は、外周面に雄ネジが設けられるとともに前記外側開口が形成された口部を有し、
前記蓋は、前記雄ネジに螺合する雌ネジを内周面に有するキャップであり、
前記口部に対して前記キャップを螺合させることで前記外側開口および前記内側開口が閉塞可能である請求項
3から
5のいずれか一項に記載の検体容器保管装置。
【請求項7】
採取された検体を収容した検体容器を保管する検体容器保管装置であって、
前記検体容器を収容可能であるとともに第一の方向に延びる検体収容空間を形成し、前記検体収容空間に連通する内側開口によって、該検体収容空間の前記第一の方向の少なくとも一方を開口させることで、前記検体容器を前記検体収容空間に挿入自在とする内側周壁と、
前記内側周壁の外周面を覆うように設けられ、前記内側周壁との間に、前記第一の方向に延びる密閉された蓄冷材収容空間を形成する外側周壁と、
前記蓄冷材収容空間に収容されて冷却によって蓄冷可能な蓄冷材と、
前記内側開口の開放および閉塞を行う蓋と、
を備え、
前記外側周壁には、外周面と内周面との間に空気が封入された周壁内空間が形成されてい
る検体容器保管装置。
【請求項8】
前記外側周壁を覆う断熱材をさらに備える請求項1から
7のいずれか一項に記載の検体容器保管装置。
【請求項9】
前記検体収容空間内における前記検体容器の前記第一の方向の少なくとも一方への移動を規制する規制部をさらに備える請求項1から
8のいずれか一項に記載の検体容器保管装置。
【請求項10】
前記規制部は、前記蓋と前記検体容器との間に配置されることで、前記検体収容空間内において前記検体容器を前記第一の方向に位置決めする蓋側位置決め部材を有する請求項
9に記載の検体容器保管装置。
【請求項11】
前記蓄冷材収容空間の前記第一の方向の最大の長さ寸法をA、該最大寸法の中点位置をM、および前記中点位置Mを中心として前記第一の方向の双方向に均等に広がる長さ0.5Aの範囲を基本冷却領域と定義した場合に、
前記規制部は、該規制部によって位置決めされ得る前記検体容器の少なくとも一部が前記基本冷却領域と重なるような場所に設けられる請求項
9または
10に記載の検体容器保管装置。
【請求項12】
採取された検体を収容した検体容器を保管する検体容器保管装置であって、
前記検体容器を収容可能であるとともに第一の方向に延びる検体収容空間を形成し、前記検体収容空間に連通する内側開口によって、該検体収容空間の前記第一の方向の少なくとも一方を開口させることで、前記検体容器を前記検体収容空間に挿入自在とする内側周壁と、
前記内側周壁の外周面を覆うように設けられ、前記内側周壁との間に、前記第一の方向に延びる密閉された蓄冷材収容空間を形成する外側周壁と、
前記蓄冷材収容空間に収容されて冷却によって蓄冷可能な蓄冷材と、
前記内側開口の開放および閉塞を行う蓋と、
を備え、
前記検体収容空間には、前記検体を収容する本体容器および該本体容器よりも前記第一の方向に交差する第二の方向に拡大した蓋部材を有する前記検体容器が収容可能となっており、
前記内側周壁には、前記検体収容空間内で前記第一の方向における前記内側開口の側を向く段差面が形成され、
前記検体収容空間は前記段差面の位置を境界として、該段差面よりも前記第一の方向における前記内側開口側に配置されて前記蓋部材を収容可能な第一の領域、および、該第一の領域に連続して前記第一の方向に前記内側開口から離れる側に延びて前記第二の方向の寸法が前記第一の領域よりも小さく形成されて前記本体容器のみを配置可能な第二の領域とを含
む検体容器保管装置。
【請求項13】
前記検体収容空間は、前記第一の領域と前記内側開口との間に、該第一の領域に連続して該第一の領域よりも前記第二の方向に拡大した第三の領域をさらに含み、
前記蓋部材よりも前記本体容器を前記内側開口側に配置した状態で、前記検体容器を前記検体容器収容空間に配置した際に、前記蓋部材が前記段差面に接触するとともに前記本体容器の一部が前記第三の領域に配置されるように、前記第一の領域の寸法が決定されている請求項
12に記載の検体容器保管装置。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれか一項に記載の検体容器保管装置と、
前記検体容器保管装置に収容された前記検体容器と、
を備える検体保管キット。
【請求項15】
請求項
10に記載の検体容器保管装置と、
前記検体容器保管装置に収容された前記検体容器と、
を備え、
前記蓋側位置決め部材は、前記第一の方向に弾性変形可能な材料からなり、
前記蓋側位置決め部材に外力が作用しない状態で前記第一の方向における前記蓋側位置決め部材の長さ寸法L1と、前記第一の方向における前記検体収容空間の長さ寸法L2と、前記第一の方向における前記検体容器の長さ寸法L3とが、L1>L2-L3を満足する検体保管キット。
【請求項16】
前記外側周壁および前記内側周壁は、可視光に対する透過性を有する材料によって形成され、
前記検体容器は、少なくとも外周面に有色の領域を有する請求項
14または
15に記載の検体保管キット。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に記載の検体容器保管装置を用いて、採取された検体を収容した検体容器を保管する検体保管方法であって、
前記蓄冷材が収容された
前記検体容器保管装置を冷却し、前記蓄冷材に蓄冷させる工程と、
前記蓄冷材に蓄冷された状態の前記検体容器保管装置に前記検体容器を収容し、該検体容器内の前記検体を冷却する工程と、
を含む検体保管方法。
【請求項18】
前記検体が冷却された状態のままで前記検体容器保管装置から前記検体容器を取り出して、前記検体の冷却状態を維持するための保冷機器に前記検体容器を収容する工程をさらに含む請求項
17に記載の検体保管方法。
【請求項19】
前記検体容器内の前記検体を冷却する工程では、前記検体を凍結させる請求項
17または
18に記載の検体保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を保管するための検体容器保管装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体や動物から採取した尿、便、血液、唾液等の検体を分析した検査結果を、病気の診断や健康状態の確認に用いている。
【0003】
例えば検体が尿である場合には、特許文献1に示すような採尿用容器に尿を自身で採取し、病院や検査機関へ提出するといった手法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら検査機関が遠方にしか存在しない場合には、検体を採取してから検査が行われるまでに時間を要してしまう。この結果、検体中で菌が繁殖してしまい、検査の精度に影響が出てしまう可能性がある。また、仮に検査機関が遠方にしか存在しなくとも病院内等で検体の採取を行う場合であれば、採取された検体を低温状態で保存する保冷装置(冷蔵庫、冷凍庫等)を使用することで検体中の菌の繁殖を抑えることは可能であるが、自宅等の検査機関から離れた場所で検体を採取する場合には、採取された検体を低温状態に保ったまま検査機関まで持ち運ぶことは困難である。
【0006】
そこで本発明は、検体を低温状態で保管するとともに、容易に持ち運びが可能な検体容器保管装置、検体保管キット、および検体保管方法を提供する。
【0007】
本発明の一態様に係る検体容器保管装置は、採取された検体を収容した検体容器を保管する検体容器保管装置であって、前記検体容器を収容可能であるとともに第一の方向に延びる検体収容空間を形成し、前記検体収容空間に連通する内側開口によって、該検体収容空間の前記第一の方向の少なくとも一方を開口させることで、前記検体容器を前記検体収容空間に挿入自在とする内側周壁と、前記内側周壁の外周面を覆うように設けられ、前記内側周壁との間に、前記第一の方向に延びる密閉された蓄冷材収容空間を形成する外側周壁と、前記蓄冷材収容空間に収容されて冷却によって蓄冷可能な蓄冷材と、前記内側開口の開放および閉塞を行う蓋と、を備えている。
【0008】
また上記検体容器保管装置では、前記蓄冷材、前記外側周壁、および前記内側周壁は、可視光に対する透過性を有する材料からなってもよい。
【0009】
また上記検体容器保管装置では、前記外側周壁は、最大厚さ寸法が5mm以下の樹脂製であってもよい。
【0010】
また上記検体容器保管装置では、前記内側周壁は、前記第一の方向に延びる有底筒状の内側容器によって構成されており、前記外側周壁は、前記第一の方向に延びる有底筒状の外側容器によって構成されており、前記外側容器は、前記内側容器を内側に配置可能な外側開口を有し、前記内側容器は、前記内側周壁から前記第一の方向に交差する第二の方向に張り出すことで、前記内側容器が前記外側開口の内側に配置された状態で、前記外側開口周りで前記外側容器と前記第一の方向に係合するフランジを有してもよい。
【0011】
また上記検体容器保管装置では、前記外側容器および前記内側容器は樹脂製であり、前記外側容器と前記内側容器の前記フランジとが溶着または接着されていてもよい。
【0012】
また上記検体容器保管装置では、前記内側周壁は円筒状をなすとともに、該内側周壁の外周面の外径が前記第一の方向に前記内側開口から離れるにつれて漸次小さくなるように、前記内側周壁の外周面の少なくとも一部がテーパ状をなすテーパ面となっており、前記外側開口は円形状をなし、前記テーパ面における最大外径は前記外側開口の内径よりも大きく、かつ、前記テーパ面における最小外径は前記外側開口の内径よりも小さくともよい。
【0013】
また上記検体容器保管装置では、前記外側容器は、外周面に雄ネジが設けられるとともに前記外側開口が形成された口部を有し、前記蓋は、前記雄ネジに螺合する雌ネジを内周面に有するキャップであり、前記口部に対して前記キャップを螺合させることで前記外側開口および前記内側開口が閉塞可能であってもよい。
【0014】
また上記検体容器保管装置では、前記外側周壁には、外周面と内周面との間に空気が封入された周壁内空間が形成されていてもよい。
【0015】
また上記検体容器保管装置では、前記蓄冷材は、-20℃以上-16℃以上の環境下で48時間以内に凍結可能な材料よりなってもよい。
【0016】
また上記検体容器保管装置は、前記外側周壁を覆う断熱材をさらに備えてもよい。
【0017】
また上記検体容器保管装置は、前記検体収容空間内における前記検体容器の前記第一の方向の少なくとも一方への移動を規制する規制部をさらに備えてもよい。
【0018】
また上記検体容器保管装置では、前記規制部は、前記蓋と前記検体容器との間に配置されることで、前記検体収容空間内において前記検体容器を前記第一の方向に位置決めする蓋側位置決め部材を有してもよい。
【0019】
また上記検体容器保管装置では、前記蓄冷材収容空間の前記第一の方向の最大の長さ寸法をA、該最大寸法の中点位置をM、および前記中点位置Mを中心として前記第一の方向の双方向に均等に広がる長さ0.5Aの範囲を基本冷却領域と定義した場合に、前記規制部は、該規制部によって位置決めされ得る前記検体容器の少なくとも一部が前記基本冷却領域と重なるような場所に設けられてもよい。
【0020】
また上記検体容器保管装置では、前記検体収容空間には、前記検体を収容する本体容器および該本体容器よりも前記第一の方向に交差する第二の方向に拡大した蓋部材を有する前記検体容器が収容可能となっており、前記内側周壁には、前記検体収容空間内で前記第一の方向における前記内側開口の側を向く段差面が形成され、前記検体収容空間は前記段差面の位置を境界として、該段差面よりも前記第一の方向における前記内側開口側に配置されて前記蓋部材を収容可能な第一の領域、および、該第一の領域に連続して前記第一の方向に前記内側開口から離れる側に延びて前記第二の方向の寸法が前記第一の領域よりも小さく形成されて前記本体容器のみを配置可能な第二の領域とを含んでいてもよい。
【0021】
また上記検体容器保管装置では、前記検体収容空間は、前記第一の領域と前記内側開口との間に、該第一の領域に連続して該第一の領域よりも前記第二の方向に拡大した第三の領域をさらに含み、前記蓋部材よりも前記本体容器を前記内側開口側に配置した状態で、前記検体容器を前記検体容器収容空間に配置した際に、前記蓋部材が前記段差面に接触するとともに前記本体容器の一部が前記第三の領域に配置されるように、前記第一の領域の寸法が決定されていてもよい。
【0022】
また本発明の一態様に係る検体保管キットは、上記の検体容器保管装置と、前記検体容器保管装置に収容された前記検体容器と、を備えている。
【0023】
また本発明の他の態様に係る検体保管キットは、上記の検体容器保管装置と、前記検体容器保管装置に収容された前記検体容器と、を備え、前記蓋側位置決め部材は、前記第一の方向に弾性変形可能な材料からなり、前記蓋側位置決め部材に外力が作用しない状態で前記第一の方向における前記蓋側位置決め部材の長さ寸法L1と、前記第一の方向における前記検体収容空間の長さ寸法L2と、前記第一の方向における前記検体容器の長さ寸法L3とが、L1>L2-L3を満足する。
【0024】
また上記の検体保管キットでは、前記外側周壁および前記内側周壁は、可視光に対する透過性を有する材料によって形成され、前記検体容器は、少なくとも外周面に有色の領域を有してもよい。
【0025】
また本発明の一態様に係る検体保管方法は、採取された検体を収容した検体容器を保管する検体保管方法であって、蓄冷材が収容された検体容器保管装置を冷却し、前記蓄冷材に蓄冷させる工程と、前記蓄冷材に蓄冷された状態の前記検体容器保管装置に前記検体容器を収容し、該検体容器内の前記検体を冷却する工程と、を含んでいる。
【0026】
また上記の検体保管方法は、前記検体が冷却された状態のままで前記検体容器保管装置から前記検体容器を取り出して、前記検体の冷却状態を維持するための保冷機器に前記検体容器を収容する工程をさらに含んでいてもよい。
【0027】
また上記の検体保管方法において、前記検体容器内の前記検体を冷却する工程では、前記検体を凍結させてもよい。
【発明の効果】
【0028】
上記の検体容器保管装置等によれば、検体を低温状態で保管するとともに、容易に持ち運びが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る検体保管キットの縦断面図である。
【
図2】上記検体保管キットの組み立て前の分解斜視図である。
【
図3】上記検体保管キットの断熱材を示す斜視図である。
【
図4】上記検体保管キットの断熱材の他の例を示す図であって、(a)は内容物を収容前の状態、(b)は内容物を収容後の状態を示す。
【
図5】上記検体保管キットの第一変形例を示す縦断面図である。
【
図6】上記検体保管キットの第二変形例を示す縦断面図である。
【
図7】上記検体保管キットの第三変形例における内側容器を示す縦断面図であって、(a)は検体容器を正方向に配置した場合の図であり、(b)は検体容器を逆方向に配置した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る検体保管キット100について図面を参照しながら詳細に説明する。
現在、微量の尿を検体として採取し、線虫を用いてがん検査を行うN-NOSE(登録商標)という新な検査手法に注目が集まっている。本実施形態の検体保管キット100は、このN-NOSE(登録商標)で検査される検体を保冷して保管するのに好適である。
(全体構成)
図1に示すように検体保管キットは、採取された検体(尿、便、血液、唾液等)Kを収容する検体容器110と、検体Kが収容された検体容器110を収容して保管可能な検体容器保管装置1と、を備えている。
【0031】
(検体容器)
検体容器110は、例えば円筒状をなして内側に検体Kを密閉して収容可能な容器である。検体容器110は例えば被検者が自身で採取した検体を収容する簡易的な容器になっている。検体容器110は、本実施形態ではポリプロピレン等の樹脂製であるが、材質は特には限定されずアルミニウム等の金属製であってもよい。図示はしないが検体容器110の底面111には、検体Kを採取した個人を識別するため、例えばQRコード(登録商標)等が貼り付けられている。
【0032】
検体容器110は光透過性(可視光を透過する性質)を有して、半透明、若しくは透明な材料からなっている。なお検体容器110は有色の材料によって形成されていてもよいが、この場合、必ずしも検体容器110の全体が有色でなくともよく、少なくとも外周面の一部に有色の領域を有していてもよい。この場合、光透過性を有する材料で形成された検体容器110の外周面に有色のステッカーを貼りつけてもよい。
【0033】
(検体容器保管装置)
検体容器保管装置1は、検体容器110を収容可能な内側容器10と、検体容器110とともに内側容器10での検体容器110の移動を規制する規制部11と、内側容器10の外周面を覆う外側容器12と、外側容器12に収容された蓄冷材13と、内側容器10を開閉する蓋14と、外側容器全体を覆う断熱材15とを備えている。
【0034】
(内側容器)
内側容器10は、有底の円筒状をなすとともに光透過性(可視光を透過する性質)を有する例えばポリプロピレン等の樹脂製の容器である。内側容器10の周壁は円筒状をなす内側周壁10xとなっている。なお材質は特に本実施形態の場合には限定されない。内側容器10の光透過率は内容物が確認可能な程度の例えば30%以上、より好ましくは50%以上であるとよい。
【0035】
内側容器10は、内側に検体収容空間S1を有している。検体収容空間S1は内側容器10の長手方向(第一の方向)に延びる円柱状の空間である。以下、この内側容器10の長手方向を単に長手方向と称する。この長手方向は、検体容器保管装置1の使用時には鉛直方向に一致する。検体収容空間S1の径寸法は長手方向の一方側(上側)で長手方向の他方側(下側)に比べて大きくなっている。これにより検体収容空間S1内において内側容器10には長手方向の一方側を向く段差面10gが形成されている。検体収容空間S1は、段差面10gよりも長手方向の一方側に配置された拡径領域S1xと、段差面10gよりも長手方向の他方側に配置された小径領域S1yとに分けられている。
内側容器10は、長手方向の一方の端部(上端)に、検体収容空間S1に連通して検体収容空間S1を長手方向に開口させる円形の内側開口10aを有している。この内側開口10aを通じて検体容器110が検体収容空間S1に挿入自在となっている。したがって、内側開口10aの径寸法および検体収容空間S1の径寸法は、検体容器110の最大外径よりも大きい。
【0036】
また、内側容器10の外径が内側開口10aから長手方向の他方の端部(下端)に向かって漸次小さくなるように、内側周壁10xの外周面の一部がテーパ状をなすテーパ面10dとなっている。テーパ面10dは、後述するフランジ10bに接続され、内側容器10の長手方向の途中の位置まで形成されている。またテーパ面10dよりも長手方向の他方側で内側容器10には長手方向の他方側を向く段差面10eが設けられている。段差面10eを境に、長手方向の一方側(上側)に比べて長手方向の他方側(下側)で内側容器10の外径が小さくなっている。内側容器10の外径が小さくなっている部分の外周面には長手方向に延びて外周面と段差面10eとに接続された補強リブ10fが内側容器10の周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0037】
内側容器10は、長手方向の一方の端部(上端)で外周面から長手方向に交差(直交)する径方向(第二の方向)に張り出すフランジ10bを有している。フランジ10bは、内側容器10の中心軸線CLを基準として環状をなしている。ここで
図2に示すように、内側容器10が外側容器12に組付けられる前の段階では、フランジ10bの長手方向の他方側を向く面(下面)にはフランジ10bの周方向に間隔を空けて複数のリブ10cが形成されている。このリブ10cは後述する密閉部18となる。
【0038】
(外側容器)
外側容器12は、有底の円筒状をなすとともに光透過性(可視光を透過する性質)を有する例えばポリプロピレン等の樹脂製の容器である。外側容器12の周壁は円筒状をなす外側周壁12xとなっている。外側容器12は内側容器10と同一の材料からなっていてもよいし、異なる材料からなっていてもよい。外側容器12の内側に内側容器10が配置されていることで、外側周壁12xが内側周壁10xの外周面を覆っている。外側容器12の中心軸線は、内側容器の中心軸線CLに一致している。よって外側容器12は長手方向に延びている。また外側容器12の外側周壁12xの最大厚さ寸法は5〔mm〕以下であるとよく、2〔mm〕以下であるとさらによい。また外側容器12の最大外径は150〔mm〕以下、長手方向の寸法は300〔mm〕以下であるとよい。
【0039】
外側容器12は円筒状の本体部20と、本体部20から長手方向の一方(上方)に突出するとともに本体部20よりも小径の円筒状をなす口部21とを有している。本体部20と口部21とは同心軸上に一体に設けられている。よって外側容器12はボトル形状をなしている。
【0040】
本体部20の内側には、後述する蓄冷材13が収容される蓄冷材収容空間S2が形成されている。
【0041】
口部21の内側には、内側容器10の一部が配置されるとともに蓄冷材収容空間S2に連通する円柱状の内側容器挿通空間S3が形成されている。また口部21は、内側容器挿通空間S3を長手方向の一方(上方)に向けて開口させる円形の外側開口12aを有している。外側開口12aは口部21における長手方向の一方側の端面である外側容器端面12bに形成されている。このようにして、外側開口12aは、長手方向の一方に蓄冷材収容空間S2を開口させている。口部21の外周面には、長手方向にらせん状に延びる雄ネジ21aが設けられている。
【0042】
外側開口12aの内径は、内側容器10の最大外径(最も長手方向の一方側の端部の外径)よりも若干小さくなっている。すなわちテーパ面10dにおける最大外径は外側開口12aの内径よりも大きく、かつ、テーパ面10dにおける最小外径は外側開口12aの内径よりも小さい。よって内側周壁10xのテーパ面10dは、外側開口12aに係合(接触)して径方向に位置決めされる径方向係合面10yを有している。また、外側開口12aの内径よりも内側容器10のフランジ10bの外径が大きい。そして、外側容器端面12bに対してフランジ10bにおける長手方向の他方(下方)を向く軸方向係合面10zが長手方向の一方(上方)から対向して、外側開口12a周りで係合可能となっている。外側容器端面12bの外径は、雄ネジ21aのネジ山の外径よりも小さくなっている。
【0043】
外側容器端面12bとフランジ10bとの間には、これらの隙間を密閉する密閉部18が設けられている。密閉部18は後述する方法によって内側容器10のリブ10cによって形成されてもよいし、外側容器端面12bとフランジ10bとの間を接着する接着剤によって形成されてもよい。
【0044】
ここで外側容器12の内側容器挿通空間S3に内側容器10が挿入されると、内側容器10の一部が内側容器挿通空間S3から蓄冷材収容空間S2内に突出して配置されるようになっている。この状態では内側容器10の検体収容空間S1は、外側容器12の蓄冷材収容空間S2における長手方向の最大長さ寸法Aの中点位置M(
図1参照)を跨ぐように配置される。そして検体収容空間S1に検体容器110が収容されて、後述する規制部11を構成する検体収容空間S1の底面S1a(長手方向の他方側の面)に検体容器110が接触した状態では検体容器110は中点位置Mを跨ぐように配置される。
【0045】
なお検体容器110が接触した状態で、少なくとも、蓄冷材収容空間S2の長手方向の最大の長さ寸法をAに対して、中点位置Mを中心として長手方向の双方向に均等に広がる長さ0.5Aの範囲を基本冷却領域CAと定義した場合に、検体収容空間S1に収容された検体容器110の少なくとも一部が基本冷却領域CAと重なるように検体容器110が配置されればよい。
【0046】
(蓋)
蓋14は本実施形態ではネジ式のキャップであって、蓋14の内周面には雌ネジ14aが設けられている。口部21の雄ネジ21aに対して蓋14の雌ネジ14aを螺合させることで蓋14が外側容器12の口部21を覆い、内側開口10aが外側開口12aとともに閉塞される。このようにして蓋14は内側開口10aを開閉可能としている。
【0047】
(規制部)
規制部11は、内側容器10の検体収容空間S1内で蓋14と検体容器110との間に配置される蓋側位置決め部材11aと、検体収容空間S1における底面S1aとを有している。検体収容空間S1内で検体容器110は、蓋側位置決め部材11aによって長手方向の一方(上方)への移動が規制され、底面S1aによって長手方向の他方(下方)への移動が規制される。
【0048】
蓋側位置決め部材11aは例えばスポンジ等によって形成されて長手方向に延びる棒状をなしている。蓋側位置決め部材11aは、蓋14によって内側開口10aが閉塞された状態で、蓋14と検体収容空間S1内の検体容器110との間にわたって延び、弾性変形により検体容器110を長手方向の他方(下方)に向かって付勢する。また蓋側位置決め部材11aは検体収容空間S1における拡径領域S1xと小径領域S1yとの間にわたって配置され、その結果、検体容器110は小径領域S1y内に配置される。
図2に示すように蓋側位置決め部材11aの長手方向の長さ寸法L1は、検体収容空間S1の長手方向の長さ寸法L2、および検体容器110の長手方向の寸法L3との間に、L1>L2-L3の関係式を満足する。すなわち蓋14を取り外した状態では、蓋側位置決め部材11aの端部は内側開口10aから長手方向の一方(上方)に飛び出した状態となる。ここで
図1に戻って蓋側位置決め部材11aは、蓋14に設けられて長手方向に突出する位置決め突起14xによって径方向の位置決めがなされるようになっている。
【0049】
(蓄冷材)
蓄冷材13は蓄冷材収容空間S2に収容されて冷却によって蓄冷可能な保冷剤等である。蓄冷材13の種類は特に限定されないが、例えば水に高吸水性ポリマーを加えたもの等が好適である。蓄冷材13は-20℃~-16℃の冷凍庫内で48時間以内で凍結するものが好ましい。より具体的には、蓄冷材13の体積が例えばゲルの状態で150〔ml〕~230〔ml〕である場合には、検体Kとしての尿1〔ml〕を、-5℃~-3℃の間で少なくとも5時間、凍結保存可能であることが好ましい。蓄冷材13は内側容器10および外側容器12と同様に光透過性を有する。
【0050】
(断熱材)
図3に示すように断熱材15は、本実施形態では発砲スチロール製の容器である。この容器にはちょうど蓋14を取り付けた外側容器12を収容可能な円筒状の空間S4が形成されている。断熱材15は例えば円柱状をなし、容器本体16と、空間S4を開放するための蓋体17とを有している。蓋体17には環状の係合突起17aが設けられ、容器本体16の内側に差し込まれることで、容器本体16と蓋体17とが係合する。
【0051】
次に、検体容器保管装置1の製造方法について簡単に説明する。
まず外側容器12の蓄冷材収容空間S2に蓄冷材13を充填する。蓄冷材13は蓄冷材収容空間S2の90%以上の容積を占めるように充填される。その後、外側容器12の外側開口12aから内側容器10を挿入し、内側容器10のフランジ10bの軸方向係合面10zを外側容器端面12bに対向させる。そして内側周壁10xの径方向係合面10yが外側開口12aに係合し、内側容器10が外側容器12に嵌合する。よって内側容器10が外側容器12に対して径方向に位置決めされるとともに、軸方向係合面10zによって内側容器10が外側容器12に対して長手方向に位置決めされる。その後、内側容器10を外側容器12に溶着する。すなわちフランジ10bのリブ10c(
図2参照)を溶融させて内側容器10と外側容器12とを一体化し、リブ10cが密閉部18となってフランジ10bと外側容器端面12bとの隙間が密閉される。この結果、蓄冷材収容空間S2はフランジ10bによって密閉される。
【0052】
(検体保管方法)
次に検体Kを保管する方法について説明する。
まず、検体Kを採取する前に検体容器保管装置1を冷凍庫に入れ、蓄冷材13を凍結させておく。その後、被検者が自身で検体Kを採取して検体Kを検体容器110に収容する。そして内側開口10aを通じて、検体Kを収容した検体容器110を検体収容空間S1に挿入する。その後、蓋側位置決め部材11aを内側開口10aから検体収容空間S1に挿入する。最後に蓋14を外側容器12の口部21に取り付けて内側開口10aを閉塞し、検体Kを冷却し、凍結させる。検体容器保管装置1は所定の検査機関や病院に持ち込まれ、凍結された検体Kが収容された検体容器110が検体容器保管装置1から取り出されて、検体の冷却状態を維持するため、不図示の大型冷凍庫等の保冷機器に収容される。
【0053】
(作用効果)
以上説明した本実施系形態の検体保管キット100によれば、検体容器保管装置1に検体容器110を収容することで、検体容器110中の検体Kを蓄冷材13によって冷却して凍結させることができる。このため検体Kを低温状態で保管することができる。また、検体容器保管装置1に検体容器110を収容した状態で、容易に持ち運びが可能である。特に外側容器12の最大外径が150〔mm〕以下で長手方向の寸法が300〔mm〕以下であれば、さらに可搬性が高まる。
【0054】
したがって長時間、外気に検体容器保管装置1が晒された状態で検体Kを運搬する必要があっても、検体Kを凍結した状態で運搬することができるため、運搬中の検体Kにおける菌の繁殖を抑えることができ、検査の精度を上げることができる。
【0055】
また外側容器12は樹脂製であって、かつ、外側容器12の外側周壁12xの最大厚さ寸法が5〔mm〕以下、より好ましくは2〔mm〕以下であれば、仮に蓄冷材13が十分に凍結しておらずゲル状のままであれば外側容器12が弾性変形可能となる。一方で、蓄冷材13が十分に凍結していれば外側容器12を弾性変形させることは難しい。このため、外側容器12の変形の有無によって検体Kが凍結状態で保持されているか否かの確認が容易となる。
【0056】
また、外側容器12および内側容器10は光透過性を有するため、検体容器保管装置1内に検体容器110が収容されているか否かについても視覚的に確認することができる。特に検体容器110が有色であれば、検体容器保管装置1内の検体容器110の存在の確認がさらに容易となる。
【0057】
また規制部11を構成する蓋側位置決め部材11aおよび検体収容空間S1の底面S1aによって、検体容器110の位置を固定することができる。したがって、検体容器保管装置1を運搬する際に、検体容器保管装置1内で検体容器110が動いてしまうことを回避でき、検体容器110の損傷を回避できる。また蓋14を外側容器12の口部21から取り外した際には、蓋側位置決め部材11aの上端は内側開口から上方に飛び出すことになるため、蓋側位置決め部材11aを検体収容空間S1から取り出しやすくなる。
【0058】
また検体収容空間S1は、蓄冷材収容空間S2における長手方向の中点位置Mを跨ぐように配置されている。そして検体収容空間S1に検体容器110が収容された際には、この中点位置Mを跨ぐように検体容器110が配置されて、上記の基本冷却領域CAと重なるように検体容器110が配置される。そして蓄冷材13は蓄冷材収容空間S2の90%の容積を占めるため、蓄冷材13が存在する領域の略中央部分に検体容器110を配置することができ、蓄冷材13による検体Kの冷却効果を高めることができる。
【0059】
さらに内側容器10にフランジ10bを設け、外側容器12に対して内側容器10を溶着することで、蓄冷材収容空間S2を密閉するとともに、外側容器12内に検体容器110を収容するための空間を内側容器10によって容易に形成することができる。また内側容器10の外周面がテーパ状をなして、外側容器12の口部21に嵌合するため、蓄冷材収容空間S2の密閉度をさらに高めることができ、蓄冷材13の漏洩を防ぐことができる。
【0060】
また断熱材15によって外側容器12を覆うことで、検体Kの保冷効果を高めることができる。
【0061】
また蓄冷材13は-20℃~-16℃の冷凍庫内で48時間以内で凍結するものであれば、被検者が自宅の冷凍庫で蓄冷材を凍結させることができる。よって検体Kの採取を自宅で行うことができ、検体Kを凍結させて郵送、もしくは検査機関や病院に持ち込むことができる。このため、検査機関や病院から離れた地域に居住する被検者であっても検体検査を受けることが可能となり、検査の普及につながる。
【0062】
なお本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0063】
例えば、断熱材30は
図4(a)および
図4(b)に示すように、発砲ポリエチレンの表面にアルミの蒸着フィルムを設けた保温バッグであってもよい。断熱材30は、外側容器12および蓋14を取り付けた外側容器12よりも大きな寸法を有し、蓋14を取り付けた外側容器12の全体を覆って収容することが可能となっている。
【0064】
また
図5に示すように、外側容器40の周壁は二重構造となっていてもよい。すなわち、外周面40aと内周面40bとの間に空気が封入された周壁内空間S5が形成されていてもよい。この周壁内空間S5の空気によって断熱効果を高めることができ、検体Kの保冷効果を向上させることができる。
【0065】
また、蓋側位置決め部材11aは検体収容空間S1の内面に接触した状態となるようにしてもよい。この場合、検体容器110を検体収容空間S1に収容した際に、検体容器110よりも長手方向の一方側(上方側)の空間を小さくすることができる。よってこの空間に外気が進入しにくくなり、検体収容空間S1内の空気層を減少させ、保冷効果を高めることができる。
【0066】
また、蓄冷材13は必ずしも冷却によって凍結するものでなくともよく、常に液体状、ゲル状のものを採用してもよい。
【0067】
また、内側容器10のフランジ10bは必ずしも環状をなす場合に限定されず、少なくとも長手方向の他方(下方)を向くとともに、外側容器端面12bに係合可能な軸方向係合面10zを有していれば形状は限定されない。
【0068】
また上記では、内側周壁10xの外周面の一部がテーパ面10dとなっていることで径方向係合面10yが内側容器10に形成されているが、外周面がテーパ状をなさず、外周面から径方向に突出するようにして径方向係合面10yを形成するようにしてもよい。また内側容器10に段差面10eが設けられず、テーパ面10dが内側周壁10xの長手方向の全域にわたって設けられていてもよい。
【0069】
また上記では、検体収容空間S1の底面S1aによって検体容器110の位置決めを行っていたが、例えば検体収容空間S1の内面から突出する突起を形成し、この突起上に検体容器110を載置することで検体容器110の位置決めを行ってもよい。
【0070】
また内側容器10および外側容器12は有底円筒状をなしているが、例えばこれらに代えて、
図6に示すように長手方向の両側に開口する内側周壁10xおよび外側周壁12xを設け、長手方向の両側に蓋114を設ける構造としてもよい。
【0071】
さらに
図7(a)に示すように内側容器50は、検体収容空間S1を形成する内面50aに段差面50bが形成されていてもよい。段差面50bは長手方向の一方側(上側)を向くとともに、中心軸線CLを基準として環状をなしている。段差面50bよりも長手方向の他方側において、長手方向の一方側に比べて内側容器50の外径が小さくなっている。そして内側容器50が外側容器12の内側に配置された状態で、段差面50bは蓄冷材収容空間S2(
図1参照)内に配置され、蓄冷材13(
図1参照)が存在する領域内に配置される。
【0072】
検体収容空間S1は、段差面50bの位置を境界として、段差面50bよりも長手方向の一方側に配置された第一の領域S11と、第一の領域S11に連続して長手方向の他方側に延びて径方向の寸法が第一の領域S11よりも小さく形成された第二の領域S12と、第一の領域S11と内側開口10aとの間に第一の領域S11に連続して第一の領域S11よりも径方向に拡大した第三の領域S13とを含んでいる。
【0073】
またこの場合、検体容器210は検体Kが収容される本体容器211と、本体容器211を開閉する蓋部材212とを有している。本体容器211に比べて蓋部材212の外径が大きくなっている。蓋部材212は第一の領域S11に配置され、本体容器211のみが第二の領域S12に配置可能となっている。また、蓋部材212における本体容器211側の面が長手方向を向く段差面212aとなっている。検体容器210が内側容器50の検体収容空間S1に配置されて底面S1aに本体容器211が接触した状態(検体容器210が正方向に配置された状態)では、この段差面212aが内側容器50の段差面50bに長手方向に若干の間隔を空けて対向する。
【0074】
一方で
図7(b)に示すように検体容器210が逆方向に配置された状態(底面S1aに近い側に蓋部材212が配置され、底面S1aから遠い側に本体容器211が配置された状態)では、段差面212aに蓋部材212の天面212b(段差面212aに対して長手方向の反対側の面)が接触して長手方向の他方側(下側)への移動が規制され、蓋部材212と底面S1aとの間に隙間が形成される。この際、本体容器211の端部が、検体収容空間S1の第三の領域S13内に配置される。換言すると、第一の領域S11の長手方向の寸法よりも検体容器210の長手方向の寸法が大きくなるように検体収容空間S1が形成されている。したがって、検体容器210を逆方向に配置した際には、検体収容空間S1の第一の領域S11から第三の領域S13に検体容器210の一部が突出していることを目視で確認できるとともに、蓋側位置決め部材11aを設置することができなくなるため、検体容器210の設置方向の誤りの発見が容易となり、検体容器210内の冷却を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の検体容器保管装置等によれば、検体を低温状態で保管するとともに、容易に持ち運びが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 検体容器保管装置
10、50 内側容器
10a 内側開口
10b フランジ
10x 内側周壁
10d テーパ面
11 規制部
11a 蓋側位置決め部材
12、40 外側容器
12a 外側開口
12b 外側容器端面
12x 外側周壁
13 蓄冷材
14、114 蓋
14a 雌ネジ
15、30 断熱材
18 密閉部
20 本体部
21 口部
21a 雄ネジ
50b 段差面
100 検体保管キット
110、210 検体容器
S1 検体収容空間
S1a 底面
S2 蓄冷材収容空間
S5 周壁内空間
K 検体