(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】層状臓器領域特定装置、層状臓器領域特定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240816BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240816BHJP
G06T 7/136 20170101ALI20240816BHJP
【FI】
A61B5/00 G
G06T7/00 612
G06T7/136
(21)【出願番号】P 2020203154
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】505210115
【氏名又は名称】国立大学法人旭川医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(72)【発明者】
【氏名】沖崎 貴琢
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-131019(JP,A)
【文献】特表2008-544826(JP,A)
【文献】特表2003-524489(JP,A)
【文献】特開2003-339694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0365808(US,A1)
【文献】特開平04-146731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/055
A61B 6/00-6/58
A61B 8/00-8/15
G06T 7/00-7/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一層と、当該第一層の外側に接する第二層と、当該第二層の外側に接する第三層とを有する層状臓器の医用画像を表示する医用画像表示部と、
前記医用画像の前記第一層内の画素を指定する第一指示を受け付ける第一受付部と、
前記医用画像の前記第三層を含む領域の外側の輪郭を指定する第二指示を受け付ける第二受付部と、
前記第一指示により指定される画素の画素値を取得し、当該画素値に対して第一近似条件を満たす画素であって、前記第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を第一層の画素に決定する第一層決定部と、
前記第一層の画素の外側に隣接する連続した画素の集合を第二層の画素に決定する第二層決定部と、
前記第二層の画素の外側であって、前記第二指示により指定される輪郭内に位置している2以上の画素の画素値の代表値を取得し、当該代表値に対して第二近似条件を満たす画素値を有しており、前記第一層および第二層の画素以外の、前記第二指示により指定される輪郭の内側に位置している画素の集合を、第三層の画素に決定する第三層決定部と、
前記第三層の画素を示す情報を出力する出力部と、を具備する層状臓器領域特定装置。
【請求項2】
前記第一近似条件は、画素値が、X-α
1からX+α
1までの範囲内である(ただし、Xは、前記第一指示により指定される画素の画素値であり、α
1は、前記第一指示により指定される画素に連続する当該条件を満たす画素の集合が、前記第二指示により指定される輪郭の画素と重ならない値である)、という条件である請求項1記載の層状臓器領域特定装置。
【請求項3】
前記第一層決定部は、
画素値が、X-αからX+αまでの範囲内である(ただし、Xは、前記第一指示により指定される画素の画素値である)という条件を満たす画素であって、前記第一指示により指定される画素に連続する当該条件を満たす画素の集合を、当該集合の少なくとも一部が、前記第二指示により指定される輪郭の画素と重なる状態から、重ならなくなる状態となるまで、αの値を、予め決められた初期値から減少させて順次検出し、重ならなくなる状態となったαの値であるα
1をαの値として有する前記条件である前記第一近似条件により検出される前記画素の集合を、前記第一層の画素に決定する、請求項2記載の層状臓器領域特定装置。
【請求項4】
前記第二層決定部は、
前記医用画像の、前記第一層の画素の外側に隣接する画素から、外側に向かって予め決められた画素数までの範囲内の画素の集合を、前記第二層の画素に決定する請求項1から請求項3いずれか一項記載の層状臓器領域特定装置。
【請求項5】
前記第三層決定部は、
前記第一層の画素の代表点を決定し、当該代表点を中心として、前記第二指示により指定される輪郭よりも小さいサイズの、閉領域を有する図形の輪郭を決定し、当該輪郭上の2以上の画素について、前記画素値の代表値を取得する請求項1から請求項4いずれか一項記載の層状臓器領域特定装置。
【請求項6】
前記第二近似条件は、
画素値が、Y-γからY+γまでの範囲内である(ただし、Yは前記画素の代表値であり、γは、第三層の画素である可能性が高い画素値の範囲を示すための、前記輪郭上の2以上の画素の画素値を用いて取得された値である)、という条件である請求項5記載の層状臓器領域特定装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記第一層および第二層の画素を示す情報をさらに出力する請求項1から請求項6いずれか一項記載の層状臓器領域特定装置。
【請求項8】
前記層状臓器は、子宮であり
前記第一層は、子宮内膜であり、
前記第二層は、junction zone(内膜直下筋層)であり、
前記第三層は、子宮筋層である、請求項1から請求項7いずれか一項記載の層状臓器領域特定装置。
【請求項9】
医用画像表示部と、第一受付部と、第二受付部と、第一層決定部と、第二層決定部と、第三層決定部と、出力部とを用いて行われる層状臓器領域決定方法であって、
前記医用画像表示部が、第一層と、当該第一層の外側に接する第二層と、当該第二層の外側に接する第三層とを有する層状臓器の医用画像を表示する医用画像表示ステップと、
前記第一受付部が、前記医用画像の前記第一層内の画素を指定する第一指示を受け付ける第一受付ステップと、
前記第二受付部が、前記医用画像の前記第三層を含む領域の外側の輪郭を指定する第二指示を受け付ける第二受付ステップと、
前記第一層決定部が、前記第一指示により指定される画素の画素値を取得し、当該画素値に対して第一近似条件を満たす画素であって、前記第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を第一層の画素に決定する第一層決定ステップと、
前記第二層決定部が、前記第一層の画素の外側に隣接する連続した画素の集合を第二層の画素に決定する第二層決定ステップと、
前記第三層決定部が、前記第二層の画素の外側であって、前記第二指示により指定される輪郭内に位置している2以上の画素の画素値の代表値を取得し、当該代表値に対して第二近似条件を満たす画素値を有しており、前記第一層および第二層の画素以外の、前記第二指示により指定される輪郭の内側に位置している画素の集合を、第三層の画素に決定する第三層決定ステップと、
前記出力部が、前記第三層の画素を示す情報を出力する出力ステップと、を具備する層状臓器領域特定方法。
【請求項10】
コンピュータを、
第一層と、当該第一層の外側に接する第二層と、当該第二層の外側に接する第三層とを有する層状臓器の医用画像を表示する医用画像表示部と、
前記医用画像の前記第一層内の画素を指定する第一指示を受け付ける第一受付部と、
前記医用画像の前記第三層を含む領域の外側の輪郭を指定する第二指示を受け付ける第二受付部と、
前記第一指示により指定される画素の画素値を取得し、当該画素値に対して第一近似条件を満たす画素であって、前記第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を第一層の画素に決定する第一層決定部と、
前記第一層の画素の外側に隣接する連続した画素の集合を第二層の画素に決定する第二層決定部と、
前記第二層の画素の外側であって、前記第二指示により指定される輪郭内に位置している2以上の画素の画素値の代表値を取得し、当該代表値に対して第二近似条件を満たす画素値を有しており、前記第一層および第二層の画素以外の、前記第二指示により指定される輪郭の内側に位置している画素の集合を、第三層の画素に決定する第三層決定部と、
前記第三層の画素を示す情報を出力する出力部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像から、層状構造を有する臓器の1以上の層の領域を特定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、手入力された輪郭点(入力輪郭点)に基づいて求めた第1画像の中心点から第1画像上に放射状に走査線を設定する過程と、各走査線に沿った画像濃度変化に着目して、前記入力輪郭点がある走査線以外の各走査線ごとに、輪郭点となる可能性がある輪郭候補点を抽出する過程と、前記複数個の入力輪郭点の一つを第1画像の確定した輪郭線の始端とし、他の一つを確定した輪郭線の終端として、前記両入力輪郭点間に存在する隣接した各走査線上の輪郭候補点を相互につないだ複数個の輪郭候補点の組合せを、臓器輪郭が滑らかであるという特性を利用して評価することにより、最適な輪郭候補点の組合せを選出する操作を全ての入力輪郭点の間で繰り返し行い、選出された最適な輪郭候補点の組合せを第1画像の輪郭点として確定する過程と、第2画像以降の各撮像画像について、第1画像の中心点に対応する点から放射状に走査線を設定する過程と、各走査線上の画像濃度変化に着目して各走査線ごとに複数個の輪郭候補点を抽出する過程と、隣接した前記各走査線の輪郭候補点を相互につないだ複数個の輪郭候補点の組合せを、第2画像以降の各撮像画像の輪郭点は当該撮像画像に対して時間的、または位置的に実質的に近い撮像画像の確定した輪郭点の近くにあり、かつ、臓器輪郭は滑らかであるという特性を利用して評価することにより、最適な輪郭候補点の組合せを第2画像以降の各撮像画像について選出し、これらを各撮像画像の輪郭点として確定する過程と、を備えた臓器輪郭の自動抽出方法が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2903995号公報(第1頁、第1図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の層状臓器領域特定装置においては、医用画像において、3層以上の層状構造を有する臓器の1以上の層の領域を適切に特定することができない、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の層状臓器領域特定装置は、第一層と、第一層の外側に接する第二層と、第二層の外側に接する第三層とを有する層状臓器の医用画像を表示する医用画像表示部と、医用画像の第一層内の画素を指定する第一指示を受け付ける第一受付部と、医用画像の第三層を含む領域の外側の輪郭を指定する第二指示を受け付ける第二受付部と、第一指示により指定される画素の画素値を取得し、画素値に対して第一近似条件を満たす画素であって、第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を第一層の画素に決定する第一層決定部と、第一層の画素の外側に隣接する連続した画素の集合を第二層の画素に決定する第二層決定部と、第二層の画素の外側であって、第二指示により指定される輪郭内に位置している2以上の画素の画素値の代表値を取得し、代表値に対して第二近似条件を満たす画素値を有しており、第一層および第二層の画素以外の、第二指示により指定される輪郭の内側に位置している画素の集合を、第三層の画素に決定する第三層決定部と、第三層の画素を示す情報を出力する出力部と、を具備する層状臓器領域特定装置である。
【0006】
かかる構成により、医用画像において、3層以上の層状構造を有する臓器の1以上の層の領域を適切に特定することができる。
【0007】
また、本発明の層状臓器領域特定装置は、前記層状臓器領域特定装置において、第一近似条件は、画素値が、X-α1からX+α1までの範囲内である(ただし、Xは、第一指示により指定される画素の画素値であり、α1は、第一指示により指定される画素に連続する条件を満たす画素の集合が、第二指示により指定される輪郭の画素と重ならない値である)、という条件であるようにしてもよい。
【0008】
かかる構成により、第一層の領域を適切に特定して、1以上の層の領域を適切に特定できる。
【0009】
また、本発明の層状臓器領域特定装置は、前記層状臓器領域特定装置において、第一層決定部は、画素値が、X-αからX+αまでの範囲内である(ただし、Xは、第一指示により指定される画素の画素値である)という条件を満たす画素であって、第一指示により指定される画素に連続する条件を満たす画素の集合を、集合の少なくとも一部が、第二指示により指定される輪郭の画素と重なる状態から、重ならなくなる状態となるまで、αの値を、予め決められた初期値から減少させて順次検出し、重ならなくなる状態となったαの値であるα1をαの値として有する条件である第一近似条件により検出される画素の集合を、第一層の画素に決定するようにしてもよい。
【0010】
かかる構成により、第一層の領域を適切に特定して、1以上の層の領域を適切に特定できる。
【0011】
また、本発明の層状臓器領域特定装置は、前記層状臓器領域特定装置において、第二層決定部は、医用画像の、第一層の画素の外側に隣接する画素から、外側に向かって予め決められた画素数までの範囲内の画素の集合を、第二層の画素に決定するようにしてもよい。
【0012】
かかる構成により、第二層の領域を適切に特定して、1以上の層の領域を適切に特定できる。
【0013】
また、本発明の層状臓器領域特定装置は、前記層状臓器領域特定装置において、第三層決定部は、第一層の画素の代表点を決定し、代表点を中心として、第二指示により指定される輪郭よりも小さいサイズの、閉領域を有する図形の輪郭を決定し、輪郭上の2以上の画素について、画素値の代表値を取得するようにしてもよい。
【0014】
かかる構成により、第三層の画素の画素値の範囲を適切に設定でき、1以上の層の領域を適切に特定できる。
【0015】
また、本発明の層状臓器領域特定装置は、前記層状臓器領域特定装置において、第二近似条件は、画素値が、Y-γからY+γまでの範囲内である(ただし、Yは画素の代表値であり、γは、第三層の画素である可能性が高い画素値の範囲を示すための、輪郭上の2以上の画素の画素値を用いて取得された値である)、という条件であるようにしてもよい。
【0016】
かかる構成により、第三層の画素の画素値の範囲を適切に設定でき、1以上の層の領域を適切に特定できる。
【0017】
また、本発明の層状臓器領域特定装置は、前記層状臓器領域特定装置において、前記出力部は、前記第一層および第二層の画素を示す情報をさらに出力するようにしてもよい。
【0018】
かかる構成により、第一層、第二層、および第三層の領域を適切に特定できる。
【0019】
また、本発明の層状臓器領域特定装置は、前記層状臓器領域特定装置において、層状臓器は、子宮であり第一層は、子宮内膜であり、第二層は、junction zone(内膜直下筋層)であり、第三層は、子宮筋層であるようにしてもよい。
【0020】
かかる構成により、層状臓器である子宮の医用画像において、1以上の層の領域を適切に特定できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による層状臓器領域特定装置等によれば、医用画像において、3層以上の層状構造を有する臓器の1以上の層の領域を適切に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態における層状臓器領域特定装置のブロック図
【
図2】同層状臓器領域特定装置の動作について説明するフローチャート
【
図3】同層状臓器領域特定装置による医用画像の表示例を示す図
【
図4】同層状臓器領域特定装置による医用画像の表示例を示す図
【
図5】同層状臓器領域特定装置の特定層管理表を示す図(
図5(a)-
図5(c))
【
図6】同層状臓器領域特定装置が表示する医用画像における代表点等を示す模式図
【
図7】同層状臓器領域特定装置による医用画像の表示例を示す図
【
図8】本発明の実施の形態におけるコンピュータシステムの外観の一例を示す図
【
図9】同コンピュータシステムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、層状臓器領域特定装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0024】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における層状臓器領域特定装置1のブロック図である。
【0025】
層状臓器領域特定装置1は、医用画像表示部101、医用画像格納部102、第一受付部103、第二受付部104、第一層決定部105、第二層決定部106、第三層決定部107、および出力部108を備える。
【0026】
医用画像表示部101は、第一層と、第二層と、第三層とを有する層状臓器の医用画像を表示する。第二層は、第一層の外側に接す層であり、第三層は、第二層の外側に接する層である。層状臓器とは、層状構造を有する臓器である。層状臓器は、生体の臓器である。ここでの生体は、通常、人間であるが、人間以外の動物であってもよい。層状臓器は、例えば、子宮や心臓である。例えば、層状臓器が子宮である場合、第一層は子宮内膜であり、第二層はjunction zoneであり、第三層は、子宮筋層である。junction zoneとは、内膜直下筋層とも呼ばれる。また、層状臓器が心臓である場合、例えば、第一層が心室内腔、第二層が心筋、および第三層が心外膜である。なお、以下においては、医用画像が、子宮を撮影した画像である場合を主な例に挙げて説明を行う。
【0027】
層状臓器の医用画像とは、例えば、生体の層状臓器を撮影した医用画像である。医用画像は、例えば、通常は、臨床や医学のために利用可能な画像である。ただし、医用画像は、これら以外の用途、例えば、研究や学術の用途等に利用されてもよいことはいうまでもない。層状臓器の医用画像は、例えば、生体の層状臓器を含む部分における断層撮影画像である。医用画像は、例えば、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像法)、PET(陽電子放出断層撮影)、またはSPECT(単一光子放射断層撮影)等で撮影された画像である。医用画像は、例えば、グレースケールやカラーのラスタ画像である。医用画像の画素の画素値は、例えば、画素の輝度値や彩度等である。画素値は、通常、256階調の値で示されるが、画素値の階調数は、これに限定されない。医用画像の画素値は、例えば、画素に対応する生体内の部位において、医用画像を撮影する際に取得された測定値や信号値であってもよく、これらを指標化した値であってもよい。医用画像の解像度や、データ構造や、ファイル形式等は問わない。
【0028】
なお、医用画像表示部101が表示する層状臓器の医用画像は、3層以上の層で構成される層状構造を有する層状臓器の医用画像であればよく、例えば、4層以上の層で構成される層状構造を有する層状臓器の医用画像であってもよい。医用画像が、4層以上の層で構成される層状構造を有する層状臓器を撮影した医用画像である場合、第一層の外側に、2つの層が重ねて配置されていれば、4層以上の層のうちのどの層を第一層と考えてもよい。このような場合、第一層の外側に接する層を上記の第二層、第二層の外側に接する層を上記の第三層とすればよい。
【0029】
医用画像表示部101が表示する層状臓器の医用画像は、医用画像格納部102に格納された層状画像の医用画像であってもよく、層状臓器領域特定装置1の外部に設けられたサーバ装置(図示せず)等に格納された層状臓器の医用画像であってもよい。以下においては、医用画像表示部101が、医用画像格納部102に格納された層状画像の医用画像を表示する場合を主な例に挙げて説明する。
【0030】
医用画像表示部101は、医用画像表示部101が有するモニタ(図示せず)等に医用画像を表示してもよく、層状臓器領域特定装置1の外部のモニタ(図示せず)等に医用画像を表示してもよい。また、ここでの医用画像の表示は、医用画像を表示可能な他の装置等に、医用画像を表示するための情報を送信して、他の装置において、医用画像を表示することも含む概念である。
【0031】
医用画像表示部101は、モニタ等の表示デバイスを含むと考えても含まないと考えてもよい。医用画像表示部101は、例えば、モニタ等の表示デバイスのドライバーソフトまたは、モニタ等の表示デバイスのドライバーソフトウェアとモニタ等で実現される。
【0032】
医用画像格納部102には、上述したような第一層、第二層、および第三層を有する層状臓器の1または2以上の医用画像が格納される。
【0033】
医用画像格納部102には、例えば、層状臓器領域特定装置1が有する受信部(図示せず)が、医用画像を撮影する装置(図示せず)や、他の装置等から受信した医用画像が蓄積される。ここでの医用画像の格納は、受信部が受信した医用画像の一時記憶等であってもよい。なお、医用画像格納部102に医用画像がどのように蓄積されるかについては上記に限定されるものではない。
【0034】
医用画像格納部102は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。なお、医用画像表示部101が、医用画像格納部102に格納されている医用画像を表示しない場合、医用画像格納部102は省略してもよい。
【0035】
第一受付部103は、医用画像表示部101が表示する層状臓器の医用画像の第一層内の1以上の画素を指定する第一指示を受け付ける。第一指示の受け付けは、例えば、医用画像表示部101が表示する層状臓器の医用画像の第一層内の画素の座標の受け付けであってもよい。
【0036】
第一受付部103は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、タブレット等の入力デバイス(図示せず)等を介して、ユーザ等から、第一指示を受け付ける。例えば、第一受付部103は、マウス等の入力デバイスを介して、医用画像表示部101が表示する層状臓器の医用画像の第一層内の画素をクリックする操作やタップする操作等を受け付けた場合に、クリックされた画素やタップされた画素を指定する第一指示を受け付ける。
【0037】
ここでの第一指示の受け付けとは、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力デバイス(図示せず)から入力された情報の受け付け、有線もしくは無線の通信回線を介して送信された情報の受信、記録媒体から読み出された情報の受け付けなどを含む概念である。第一指示の受け付けに利用される入力手段は、キーボードやマウスやメニュー画面によるもの等、何でもよい。かかることは、後述する第二指示の受付についても同様である。第一受付部103は、マウスやキーボードやタッチパネル等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現され得る。かかることは、第二受付部104についても同様である。
【0038】
第二受付部104は、医用画像表示部101が表示する層状臓器の医用画像の第三層を含む領域の外側の輪郭を指定する第二指示を受け付ける。第三層を含む領域は、例えば、第三層の画素の集合が配置された領域を含む領域である。第三層を含む領域は、例えば、第三層の外側の辺縁に沿って、第三層を外側から囲む輪郭を有する領域である。第三層を含む領域は、第三層の外側の辺縁よりも外側にはみ出した部分や、第三層の外側の辺縁から内側に凹んだ部分等を有し得る領域である。第三層の外側とは、例えば、第三層の第二層とは反対側の部分である。第三層を含む領域は、例えば、第三層の画素の集合が配置された領域を含む領域であって、第三層の外側の辺縁よりも外側に位置する画素を含む領域であってもよい。また、第三層を含む領域は、例えば、第三層の画素の集合が配置された領域を含む領域であって、第三層の画素のうちの、第三層の外側の辺縁よりも内側に位置する画素の一部を含まない領域であってもよい。第三層を含む領域の、第三層の外側の縁よりも外側にはみ出した部分や、内側に凹んだ部分は、外側の縁に近接していることが好ましい。第三層を含む領域は、少なくとも第三層の領域全体を含む領域であることが好ましい。
【0039】
第三層を含む領域を外側から囲む輪郭を指定する第二指示は、例えば、第三層を含む領域を外側から囲む連続した複数の画素を指定する指示である。ここでの連続した画素は、上下左右に隣接する画素と考えてもよく、上下左右に隣接する画素に加えて、斜めの方向に隣接する画素も含むと考えてもよい。
【0040】
第二受付部104は、例えば、ユーザから手入力により、第二指示を受け付ける。第二受付部104は、例えば、第一受付部103と同様の入力デバイス(図示せず)等を介して、ユーザ等から、第一指示を受け付ける。例えば、第二受付部104は、医用画像表示部101が表示する層状臓器の医用画像上において、ユーザがマウスやタッチパネル等を用いて、カーソル等で第三層の領域の外側をなぞることにより、このなぞられた軌跡の座標に位置する画素の集合を指定する情報を、輪郭を指定する第二指示として受け付ける。なお、第三層を含む領域の外側の輪郭を指定する第二指示は、例えば、ユーザが手入力により、第三層の外側の輪郭を指定する指示や、第三層の外側をなぞることによって、第三層の輪郭を指定する指示と考えてもよく、通常、このようにして指定される輪郭は、第三層の外側のおおよその輪郭となる。
【0041】
第一層決定部105は、第一指示により指定される画素の画素値を取得し、画素値に対して第一近似条件を満たす画素であって、第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を第一層の画素に決定する。第一層の画素に決定する、ということは、第一層の画素に決定された医療画像の画素に、第一層の画素であることを示すラベル等を対応付けることである。画素にラベルを対応付けることは、画素の識別子や、画素の座標等にラベルを対応づけて格納部(図示せず)等に蓄積したり、ラベルを対応づけた医療画像で、医用画像格納部102等に格納された医療画像を更新することであってもよい。また、第一層の画素に決定する、ということは、第一層の画素が連続する領域の輪郭を示す情報を取得して格納部(図示せず)に蓄積することであってもよい。輪郭を示す情報は、例えば、輪郭を示す複数の座標の情報や、輪郭上の複数の画素の情報(例えば、画素の識別子や画素の座標等)である。なお、かかることは、画素が異なる点を除けば、後述する第二層の画素を決定する処理や、第三層の画素を決定する処理等においても同様である。
【0042】
第一近似条件は、例えば、医用画像において、第一指示により指定される画素の画素値に近似する画素を、第一層の画素として検出するための条件である。第一近似条件は、例えば、第一層の画素として検出する画素の画素値の範囲を示す条件である。第一近似条件は、例えば、第一指示により指定される画素の画素値を含む所望の範囲内の画素値を有する画素を、第一層の画素値として検出するための条件である。第一近似条件は、例えば、第一指示により指定される画素の画素値を含む画素値の範囲を示す条件であり、この範囲内の画素値を有する画素が、条件を満たす画素と判断される。画素値の範囲は、例えば、画素値の上限値と下限値とで表される。
【0043】
第一近似条件は、例えば、第一指示により指定される画素の画素値を基準として設定される。第一近似条件は、例えば、第一指示により指定される画素の画素値をXとした場合において、画素の画素値が、X-α1からX+α1までの範囲内である、という条件である。ここでのα1は、通常、正の整数であるが、正の実数であってもよい。α1は、予め特定されている値であってもよく、後述するように、第二指示により指定される輪郭に応じて、動的に決定される値であってもよい。また、ここでのα1は、例えば、固定値であってもよく、Xの値に応じて特定される値であってもよい。例えば、α1の値は、Xの値に対する比率で特定される値であってもよい。
【0044】
なお、以下、本実施の形態においては、α1の値を、Xの値に対する比率(具体的には%)で表し、画素の画素値が、第一近似条件を満たすか実際に判断する際には、α1に代えて、Xのα1%の値を用いるものとする。例えば、第一近似条件が、画素の画素値が、X-25%からX+25%までの範囲内の値であるという条件である場合、実際には、(1-0.25)Xから、(1+0.25)Xまでの範囲内の画素値を有する画素を、第一近似条件を満たす画素として検出する。
【0045】
第一近似条件が、画素値が、X-α1からX+α1までの範囲内である画素を検出する、という条件である場合、α1を、第一指示により指定される画素に連続する第一近似条件を満たす画素の集合が、第二指示により指定される輪郭の画素と重ならないような値に設定することが好ましい。
【0046】
例えば、第一層決定部105は、X-αからX+αまでの画素値の範囲(ここでのαは、変数であるとする)において、αの値を、予め決められた値(例えば、初期値α0:α0は正の値であるとする)から、増加、または減少させることで、第一指示により指定される画素に連続する画素であって、画素値がX-αからX+αまでの範囲内である画素の集合が、第二指示により指定される輪郭の画素と重ならなくなるようなαの値をα1として決定して、このα1を上記のαの値として代入した第一近似条件を決定してもよい。
【0047】
例えば、第一層決定部105は、第一指示により指定される画素に連続する画素であって、画素値が、X-αからX+αまでの範囲内であるという条件を満たす画素の集合を、αの値を、予め決められた初期値から減少させて順次検出する。そして、検出した画素の集合が、第二指示により指定される輪郭の画素と重なる状態から、重ならなくなる状態となったときに検出される画素の集合を、第一層の画素に決定する。また、このときのαの値であるα1を、αの値として代入した上記の画素値の範囲を有する条件が、第一近似条件となる。
【0048】
具体的には、例えば、第一層決定部105は、予め決められた初期値α0をαの値として代入したX-αからX+αまでの範囲内の画素値を有する画素であって、第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を検出する。そして、検出した画素の集合が、第二指示により指定される輪郭の画素と重なるか判断する。重ならなければ、この初期値α0をα1としてαに代入した上記の画素値の範囲を有する条件を第一近似条件とする。そして、このとき検出された第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を、第一層の画素に決定してもよい。
【0049】
また、重なる場合、第一層決定部105は、例えば、初期値α0から、予め決められた値(例えば、値「1」)を、順次、減少させた値を上記の条件のαの値として代入し、減少させた値を代入するごとに、X-αからX+αまでの範囲内の画素値を有する画素であって、第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を検出する。そして、検出するごとに、検出した画素の集合が、第二指示により指定される輪郭の画素と重なるか判断する。そして、このとき検出された第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を、第一層の画素に決定する。また、第一層決定部105は、重ならなくなった時点のαの値をα1として代入した上記の画素値の範囲を有する条件を第一近似条件に決定してもよい。
【0050】
なお、初期値α0を代入して重ならない場合、第一層決定部105は、例えば、αの値として、初期値α0から、予め決められた値(例えば、値「1」)を、順次、増加させた値を代入し、増加させた値を代入するごとに、X-αからX+αまでの範囲内の画素値を有する画素であって、第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を検出するようにしてもよい。そして、画素の集合が検出されるごとに、検出された画素の集合が、第二指示により指定される輪郭の画素と重なるか判断し、重なるようになった直前に検出された画素の集合を、第一層の画素に決定してもよい。また、重なるようになったαの値の直前のαの値であるα1をαの値として代入した上記の画素値の範囲を有する条件を第一近似条件に決定するようにしてもよい。
【0051】
なお、上記においては、第一指示が一の画素を指定する指示である場合について説明したが、第一受付部103が、第一指示として、隣接する複数の画素を指定する指示を受け付けるようにしてもよく、この場合、第一層決定部105は、第一指示により指定された連続する複数の画素のうちの一の画素(例えば、複数の画素の最も中心または重心に近い画素等)を、後述する第一層決定部105が、第一指示が指定する一の画素として利用するようにしてもよい。また、第一層決定部105は、指定された連続する複数の画素の画素値の代表値(例えば、平均値や中央値等)を、第一指示が指定する画素の画素値として用いるようにし、第一指示により指定された連続する複数の画素のうちの一の画素(例えば、複数の画素の最も中心または重心に近い画素等)に連続する第一近似条件を満たす画素の集合を、第一層の画素に決定するようにしてもよい。
【0052】
また、上記においては、第一近似条件の一例として、画素が、X-α1からX+α1までの範囲内の画素値を有するという条件を説明したが、この条件の画素値の範囲の下限値を、X-α2(α2は、α1以外の正の値)としてもよい。
【0053】
第二層決定部106は、第一層の画素の外側に隣接する連続した画素の集合を第二層の画素に決定する。第二層決定部106は、例えば、医用画像の、第一層の画素の外側に隣接する画素から、外側に向かって予め決められた画素数までの範囲内の画素の集合を、第二層の画素に決定する。第一層の画素の外側に隣接する画素は、第一層の外側の辺縁の画素に隣接する画素と考えてもよい。予め決められた画素数は、例えば、一般的な第二層の厚さ等に応じて決定された画素数である。例えば、予め決められた画素数は、1画素から5画素の間の画素数である。ただし、この画素数は、層状臓器の種類や、検出する第二層がどの層であるか等によって変更してもよい。予め決められた画素数は、第一層のサイズや、第一層の外側から第二指示により指定される輪郭までの距離に応じて決定するようにしてもよい。例えば、第一層の最も長い部分の画素数に、予め決められた1未満の正の値を有する予め決められた係数を乗算したり、予め決められた画素数を加算したりして得られた画素数であってもよい。また、第一層の外側から第二指示により指定される輪郭までの距離に対して一定の割合となる画素数や、予め決められた画素数を加算して得られた画素数であってもよい。また、第二層決定部106は、医用画像の解像度に応じて、例えば、解像度が高くなるほど、画素数が多くなるよう、上記の予め決められた画素数を決定してもよい。
【0054】
なお、ここでの第二層の画素の決定の仕方は一例であり、第二層の決定の仕方は、上記に限定されるものではない。例えば、第二層決定部106は、第一層の画素の外側に隣接する複数の画素に連続する画素であって、この外側に隣接する画素の画素値を基準として、予め決められた第一の値(ただし、第一の値は正の値である)を加算した画素値から、予め決められた第二の値(ただし、第二の値は正の値である)を減算した画素値までの範囲内の画素値を有する集合を第二層の画素に決定してもよい。
【0055】
第三層決定部107は、第二層の画素の外側であって、第二指示により指定される輪郭内に位置している2以上の画素の画素値の代表値を取得する。ここでの第二層の画素の外側とは、例えば、第一層側とは反対側である。ここでの第二層の画素の外側の画素とは、例えば、第二層の画素よりも外側に位置する画素であり、第二層の画素以外の画素である。第二層の画素の外側の画素は、第一層の画素および第二層の画素のいずれとも重ならない画素と考えてもよい。第二指示により指定される輪郭内に位置している画素とは、第二指示により指定される輪郭の画素に対して内側に位置する画素である。ここでの内側は、例えば、第二層側である。ここでの輪郭内の画素は、輪郭の画素を含むと考えてもよく、含まないと考えてもよい。代表値は、例えば、2以上の画素の画素値を統計処理にすることにより得られる代表値である。代表値は、例えば、平均値や中央値である。
【0056】
第三層決定部107は、例えば、第一層決定部105が決定した第一層の画素の代表点を決定し、代表点を中心として、第二指示により指定される輪郭よりも小さいサイズの、閉領域を有する図形の輪郭を決定し、輪郭上の2以上の画素について、画素値の代表値を取得する。図形の輪郭を決定するということは、図形の輪郭上の画素を決定することや、図形の輪郭を示す複数の座標を決定することと考えてもよい。
【0057】
例えば、第三層決定部107は、第一層決定部105が決定した第一層の画素の代表点として、第一層の複数の画素が配置されている領域の重心となる点を決定する。なお、ここでは、代表点として重心となる点を決定するが、代表点は、重心となる点以外の点であってもよい。例えば、代表点は、中心点であってもよく、重心から数ピクセルずれた位置であってもよく、第一層の複数の画素が配置されている領域の長径と短径とが交わる点等であってもよい。
【0058】
第三層決定部107は、上記で決定した代表点を中心として、第二指示により指定される輪郭よりも小さいサイズの、閉領域を有する図形の輪郭を決定する。閉領域を有する図形とは、例えば、閉じた図形である。閉領域を有する図形は、第二指示により指定された輪郭を縮小した形状を有する図形であってもよく、第一層決定部105が決定した第一層の画素が位置する領域の外側の辺縁の形状や、第二層決定部106が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の形状を拡大した形状を有する図形であってもよい。また、閉領域を有する図形は、例えば、円であってもよい。
【0059】
第二指示により指定される輪郭よりも小さいサイズの図形とは、第二指示により指定される輪郭の画素と重ならない(言い換えれば、重なる部分がない)図形である。例えば、第三層決定部107は、上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素との距離を取得し、取得した距離を用いて、第二指示により指定される輪郭の画素と重ならない図形の輪郭を決定する。
【0060】
また、閉領域を有する図形が、第二指示により指定された輪郭を縮小した形状を有する図形である場合、第三層決定部107は、例えば、全体のサイズを、第二指示により指定された輪郭よりも小さくした図形、例えば、第二指示により指定された輪郭を、元のサイズの100%より小さい予め決められた倍率のサイズに縮小した輪郭を決定してもよい。
【0061】
また、閉領域を有する図形が、第一層決定部105が決定した第一層の画素が位置する領域の外側の辺縁の形状を、上記で決定した代表点を中心として拡大した形状を有する図形である場合、第三層決定部107は、例えば、上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素とを結ぶ方向における、第一層決定部105が決定した第一層の画素が位置する領域の外側の辺縁の画素と、第二指示により指定される輪郭の各画素との距離のうちの最も短い部分を検出し、拡大した図形における、この短い部分に対応する辺縁の画素と中心との距離が、この短い部分における上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の画素との距離よりも小さくなるようなサイズの図形の輪郭を設定するようにしてもよい。
【0062】
また、例えば、閉領域を有する図形が正円である場合、第三層決定部107は、半径が、上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素との距離のうちの最も短い距離よりも短い正円の輪郭を決定してもよい。例えば、第三層決定部107は、上記で決定した代表点を中心とした正円であって、上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素との距離のうちの最も短い距離のβ%(βは100未満の正の値)の半径を有する正円の輪郭を決定してもよい。βは、例えば、予め決められた値である。なお、βの値は、80%以下であることが好ましい。ただし、正円の半径は、上記の第二指示により指定される輪郭と代表点との距離のうちの、最も短い距離よりも短い半径であれば、どのように決定してもよい。例えば、最も短い距離よりも短い半径を任意に決定してもよい。例えば、βは予め決められた値である。
【0063】
また、閉領域を有する図形が、第一層決定部105が決定した第一層の画素が位置する領域の外側の辺縁の形状を、上記で決定した代表点を中心として拡大した形状を有する図形である場合、第三層決定部107は、例えば、上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素とを結ぶ方向における、第一層決定部105が決定した第一層の画素が位置する領域の外側の辺縁の画素と、第二指示により指定される輪郭の各画素との距離のうちの最も短い部分を検出し、拡大した図形における、この短い部分に対応する辺縁の画素と中心との距離が、この短い部分における上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の画素との距離よりも小さくなるようなサイズの図形の輪郭を設定するようにしてもよい。かかることは、第二層決定部106が決定した第二層の画像が位置する領域の外側の辺縁の形状を有する図形の輪郭を決定する場合においても同様である。
【0064】
なお、第三層決定部107は、第二指示により指定される輪郭よりも小さく、かつ第二層の外周縁よりも大きいサイズの、閉領域を有する図形の輪郭を決定することが好ましい。例えば、閉領域を有する図形が、第二指示により指定された輪郭を上記で決定した代表点を中心として縮小した形状を有する図形である場合、第三層決定部107は、例えば、上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素とを結ぶ方向における、第二層決定部105が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の画素と、第二指示により指定される輪郭の各画素との距離のうちの最も短い部分を検出し、縮小した図形における、この短い部分に対応する辺縁の画素と中心との距離が、この短い部分における上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の画素との距離よりも小さく、かつこの短い部分における上記で決定した代表点と第二層決定部が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の画素との距離よりも大きくなるようなサイズの図形の輪郭を設定するようにしてもよい。例えば、上記で検出された最も短い部分における代表点と第二指示により指定される輪郭の画素との距離をA1、上記で検出された最も短い部分における代表点と第二層決定部105が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の画素との距離をA2とした場合、第三層決定部107は、第二指示により指定された輪郭を、上記で決定した代表点を中心として元のサイズのx1%(ただし、100>x>A2/A1×100とする)に縮小した輪郭を設定してもよい。
【0065】
また、閉領域を有する図形が、第二層決定部106が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の形状を、上記で決定した代表点を中心として100%より高い倍率で拡大した形状を有する図形である場合、第三層決定部107は、例えば、上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素とを結ぶ方向における、第二層決定部106が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の画素と、第二指示により指定される輪郭の各画素との距離のうちの最も短い部分を検出し、拡大した図形における、この短い部分に対応する辺縁の画素と中心との距離が、この短い部分における上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の画素との距離よりも小さくなるようなサイズの図形の輪郭を設定するようにしてもよい。例えば、上記で検出された最も短い部分における代表点と第二指示により指定される輪郭の画素との距離をA1、上記で検出された最も短い部分における代表点と第二層決定部105が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の画素との距離をA2とした場合、第三層決定部107は、第二層決定部106が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の形状を、上記で決定した代表点を中心として元のサイズのx2%(ただし、100<x2<A1/A2×100とする)に縮小した輪郭を設定してもよい。
【0066】
また、例えば、閉領域を有する図形が、正円である場合、第三層決定部107は、第二層決定部106が決定した第二層の画素の外側の辺縁の各画素と、上記で決定した代表点との距離を取得し、取得した距離のうちの最も短いものよりも長い半径を有する正円であって、上記で決定した代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素との距離のうちの最も短い距離よりも短い半径を有する正円の図形の輪郭を決定するようにしてもよい。第三層決定部107が、このような半径をどのように決定するかは問わない。例えば、第三層決定部107は、第二層の画素の外側の辺縁の各画素と代表点との距離のうちの最も短い距離より長く、代表点と第二指示により指定される輪郭の各画素との距離のうちの最も短い距離よりも短い距離の範囲内の任意の距離や、この2つの距離の平均の距離等を、正円の半径に決定してもよい。
【0067】
なお、どのようにして、第三層決定部107が、第二指示により指定される輪郭よりも小さく、かつ第二層の外周縁よりも大きいサイズの、閉領域を有する図形の輪郭を決定するかは、上記の処理に限定されるものではなく、例えば、第二指示により指定された輪郭を、順次縮小させて、第二層決定部106が決定した第二層の画素が位置する領域と重ならないサイズの輪郭を決定してもよく、第二層決定部106が決定した第二層の画素が位置する領域の外側の辺縁の形状を、順次拡大させて、第二層決定部106が決定した第二層の画素が位置する領域と同じ形状を有する、第二指示により指定される輪郭よりも小さいサイズの輪郭を決定してもよい。
【0068】
ここで、層状臓器が子宮であり、第一層が子宮内膜であり、第三層が子宮筋層である場合、上記の第二指示により指定された輪郭を、上記で決定した代表点を中心として、30%以上80%以下のサイズ、好ましくは、65%以上75%以下のサイズ、より好ましくは、68%から72%のサイズに縮小した輪郭を決定することで、第二指示により指定される輪郭よりも小さく、かつ第二層の外周縁よりも大きいサイズの、第二指示により指定された輪郭に相似した形状の輪郭が設定される可能性が非常に高いという知見が、本願発明者の鋭意研究の結果と得られている。このため、閉領域を有する図形として、第二指示により指定された輪郭と同じ形状を有する輪郭(言い換えれば、相似する形状を有する輪郭)を決定する場合には、第二指示により指定された輪郭を上記で決定した代表点を中心として、30%以上80%以下のサイズ、好ましくは、65%以上75%以下のサイズ、より好ましくは、68%から72%のサイズに縮小するようにしてもよい。
【0069】
第三層決定部107は、例えば、上記のように決定した図形の輪郭上の1または2以上の画素について、画素値の代表値を取得する。第三層決定部107が取得する代表値は、例えば、複数の画素の画素値を統計処理して得られる、複数の画素を代表する値である。代表値は、例えば、複数の画素の画素値の平均値や、中央値である。以下においては、代表値として、取得して平均値を取得する場合を例に挙げて説明する。
【0070】
例えば、第三層決定部107は、上記で決定した図形の輪郭上の複数の画素のうちの、画素値の高い1または2以上の画素と、画素値の低い1または2以上の画素を除いた画素について、画素値の代表値を取得することが好ましい。ここでの輪郭上の複数の画素は、通常、輪郭上の全ての画素であるが、一部を除外した複数の画素であってもよい。第三層決定部107は、好ましくは、輪郭上の複数の画素のうちの、画素値の昇順に設定した順位が、画素全体の30%に相当する順位から70%に相当する順位までの間の順位となる複数の画素について、代表値を取得することが好ましい。上記のように画素値が高い画素や、低い画素は、第三層に含まれるartfact(人工物)や、血管構造等に由来する画素である可能性があるため、上記のように、画素値の高い1または2以上の画素と、画素値の低い1または2以上の画素を除外して代表値を取得することにより、第三層に含まれるartfact(人工物)や、血管構造等が、第三層の検出に与える影響を除外する。なお、ここでは、画素値の昇順に設定した順位が、画素全体の30%に相当する順位から70%に相当する順位までの間の順位となる複数の画素について代表値を取得するようにしたが、代表値を取得する対象となる画素の順位は、画素全体の30%に相当する順位から70%に相当する順位までの間の順位に限定されるものではなく、例えば、画素全体の25%に相当する順位から80%に相当する順位までの間の順位となる複数の画素について代表値を取得するようにしてもよい。なお、本願発明者らが鋭意研究した結果得られた知見によれば、層状臓器が子宮であり、第三層が子宮筋層である場合、上記のように30%から70%の間の順位の画素について代表値を取得することが、第三層の画素以外の画素を検出しないうえで好ましい。
【0071】
なお、第三層決定部107は、例えば、上記のように決定した図形の輪郭上の1または2以上の画素だけでなく、これらに隣接する輪郭上以外の1または2以上の画素も含めた画素について、画素値の代表値を取得するようにしてもよい。また、図形の輪郭上の複数の画素について、上記のように、画素値の高い1または2以上の画素と、画素値の低い1または2以上の画素を除外することなく、画素値の代表値を取得するようにしてもよい。
【0072】
なお、第三層決定部107が、第二層の画素の外側であって、第二指示により指定される輪郭内に位置している2以上の画素を検出する処理や、これについて代表値を取得する処理等は、上記の処理に限定されない。
【0073】
第三層決定部107は、上記のように取得される代表値に対して第二近似条件を満たす画素値を有しており、第一層決定部105が決定した第一層の画素および第二層決定部106が決定した第二層の画素以外の、第二指示により指定される輪郭の内側に位置している画素の集合を、第三層の画素に決定する。第一層決定部105が決定した第一層の画素および第二層決定部106が決定した第二層の画素以外の画素は、第二層決定部106が決定した第二層の画素よりも外側に位置する画素と考えてもよい。
【0074】
第二近似条件は、例えば、上記のように取得される代表値に近似する画素値を有する画素を、第三層の画素として検出するための条件である。第二近似条件は、例えば、第三層の画素として検出する画素の画素値の範囲を示す条件である。第二近似条件は、例えば、上記のように取得される代表値を含む所望の範囲内の画素値を有する画素を、第三層の画素値として検出するための条件である。第二近似条件は、例えば、上記のように取得される代表値を含む画素値の範囲を示す条件であり、この範囲内の画素値を有する画素が、条件を満たす画素と判断される。画素値の範囲は、例えば、画素値の上限値と下限値とで表される。第二近似条件は、例えば、上記のように取得される代表値を基準として設定される。
【0075】
第二近似条件は、例えば、上記のように取得される代表値をYとした場合において、画素の画素値が、Y-γからY+γまでの範囲内であるという条件である。ここでのγは、第三層の画素である可能性が高い画素値の範囲を示すための、輪郭上の2以上の画素の画素値を用いて取得された正の値である。この第二近似条件においては、代表値Yを、第三層決定部107が決定した図形の輪郭情報の1または2以上の画素の画素値の平均値とし、γを、この代表値を取得するために用いる第三層決定部107が決定した図形の輪郭情報の1または2以上の画素の画素値を用いて取得される標準偏差(σ)の2倍の値(2σ)であることが好ましい。例えば、第三層決定部107は、輪郭上の複数の画素のうちの、画素値の昇順に設定した順位が、画素全体の30%に相当する順位から70%に相当する順位までの間の順位となる複数の画素について、代表値Yとして用いられる平均値を取得した場合、この平均値を取得するために用いた複数の画素の画素値を用いて、γとして用いられる標準偏差を取得し、取得した平均値と標準偏差の2倍の値(2σ)とを用いた第二近似条件を取得する。このような平均値と標準偏差の2倍の値(2σ)を用いた第二近似条件を用いることで、精度良く、第三層の画素を検出することが可能となる。
【0076】
なお、γの値は、標準偏差に限定されるものではない。例えば、γの値として、標準偏差の2倍の値(2σ)から予め決められた値を減算した値や加算した値を用いてもよく、標準偏差(σ)を用いてもよい。
【0077】
また、Yの値として用いられる代表値は、平均値に限定されるものではなく、平均値に、予め決められた値を加減算した値であってもよい。
【0078】
第三層決定部107は、例えば、上記のように取得した代表値に対して第二近似条件を満たす画素値を有しており、第一層決定部105が決定した第一層の画素および第二層決定部106が決定した第二層の画素以外の、第二指示により指定される輪郭の内側に位置している画素であって、第三層決定部107が上記で決定した図形の輪郭上の画素のうちの、第二近似条件を満たす画素値を有する1または2以上の画素にそれぞれ連続する画素の集合を、第三層の画素に決定する。例えば、第三層決定部107は、上記の図形の輪郭上の画素のうちの、第二近似条件を満たす画素値を有する複数の画素を起点として、これらの画素に連続する画素であって、第二近似条件を満たす画素値を有する画素の集合を検出し、検出した画素の集合から、第二層決定部106が決定した第二層の画素、および第二指示により指定される輪郭よりも外側に位置している画素を除外して残った画素の集合を、第三層の画素として決定する。また、第三層決定部107は、例えば、第二層決定部106の画素よりも外側であって、第二指示により指定される輪郭の内側となる領域において、第三層決定部107が上記で決定した図形の輪郭上の画素のうちの、第二近似条件を満たす画素値を有する複数の画素をそれぞれ起点として、これらの画素に連続する画素であって、第二近似条件を満たす画素値を有する画素の集合を検出し、画素の集合を検出し、検出した画素の集合を、第三層の画素に決定してもよい。なお、第二指示により指定される輪郭上の画素は、第二指示により指定される輪郭内の画素と考えてもよく、第二指示により指定される輪郭よりも外側の画素と考えてもよい。
【0079】
出力部108は、第三層決定部107が決定した第三層の画素を示す情報を出力する。例えば、出力部108は、第三層の画素の識別子や座標の集合を出力する。また、出力部108は、例えば、第三層の画素が位置する輪郭を示す情報(例えば、輪郭の画素を示す情報や、輪郭の座標の集合や、輪郭を描くベクトルデータ等で構成される閉じた図形等)を出力する。ここでの座標は、例えば、第三の画素を決定した医療画像内の座標である。
【0080】
出力部108は、例えば、第三層決定部107が決定した第三層の画素を示す情報を、第三の画素を検出した医用画像と対応づけて出力する。例えば、出力部108は、医用画像であって、この医用画像について取得された第三の画素を示す情報を有する医用画像(例えば、第三の画素を示す情報を有するチャンネルやレイヤー等の情報を有する医用情報)を出力する。また、出力部108は、第三の画素を示す情報と、第三の画素を検出した医用画像またはその識別子とを対応づけて有する情報を出力してもよい。
【0081】
出力部108は、第三層の画素を示す情報の出力として、例えば、第三層決定部107が決定した第三層の画素を、視覚的に判別可能な態様で出力するようにしてもよい。視覚的に判別可能な態様で出力する、ということは、例えば、第三層の画素を含む画像を表示した場合に、第三層の画素が、第三層以外の画素に対して視覚的に判別可能な態様となるような情報を出力することである。視覚的に区別可能な態様で表示するということは、例えば、第三層の画素に、特定の色や、特定の図柄や模様等を重ねて表示することや、第三層の画素を特定の色で表示することであってもよく、第三層の画素が配置された領域を、特定の色の線や、点線等で囲って表示することであってもよい。
【0082】
出力部108は、例えば、第三層決定部107により決定された第三層の画素が視覚的に判別可能な態様となるようにした医用画像を出力する。また、第三層決定部107により決定された医療画像に、このような第三層の画素を視覚的に区別するために利用される情報を、医療画像と対応づけて出力することであってもよい。
【0083】
なお、例えば、上記のように出力部108が、医用画像と対応づけて第三の画素の識別子等の情報や輪郭等の情報を、層状臓器領域特定装置1以外の装置に出力するようにし、この情報を受け付けた装置等が、これらの情報を用いて、第三の画素を識別可能な態様とした医用画像を出力(例えば、表示)してもよい。
【0084】
なお、画像と、画像内の画素を示す情報や、輪郭を示す情報とを用いて、特定の画素や特定の画素が配置された領域を視覚的に判別可能な態様で出力する処理は公知技術であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0085】
出力部108は、第三層決定部107が決定した第三層の画素を示す情報と同様に、第一層決定部105が決定した第一層の画素を示す情報、および第二層決定部106が決定した第二層の画素を示す情報の少なくとも一方を出力してもよい。第一層の画素を示す情報の出力は、画素が、第一層の画素に代わる点を除けば、第三層の画素を示す情報の出力と同様であるため、詳細な説明は省略する。例えば、出力部108は、第一層の画素を示す情報の出力として、第三層の画素と同様に、第一層決定部105が決定した第一層の画素を、視覚的に判別可能な態様で出力するようにしてもよい。また、第二層の画素を示す情報の出力は、画素が、第二層の画素に代わる点を除けば、第三層の画素を示す情報の出力と同様であるため、詳細な説明は省略する。例えば、出力部108は、第二層の画素を示す情報の出力として、第三層の画素と同様に、第二層決定部106が決定した第二層の画素を、視覚的に判別可能な態様で出力するようにしてもよい。
【0086】
なお、ここでの出力は、例えば、モニタ等への画像や情報の表示、プロジェクターを用いた画像や情報の投影、プリンタによる印刷、記録媒体(図示せず)への蓄積、画像や情報の表示や蓄積等が可能な外部の装置への送信、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である
【0087】
出力部108は、モニタ等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えてもよい。出力部108は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0088】
次に、層状臓器領域特定装置1の動作の一例について
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0089】
(ステップS101)医用画像表示部101は、医用画像格納部102に格納されている一の医用画像を表示するか判断する。例えば、表示指示受付部(図示せず)が、医用画像格納部102に格納されている医用画像の一つを表示する指示を受け付けた場合に、医用画像表示部101は、この指示により指定された一の医用画像を表示することを決定する。医用画像を表示する場合、ステップS102に進み、表示しない場合、ステップS101に戻る。なお、例えば、医用画像格納部102に一の医用画像が蓄積された場合に、医用画像表示部101は、この一の医用画像を表示することを決定してもよい。
【0090】
(ステップS102)医用画像表示部101は、医用画像格納部102に格納されている医用画像をモニタ(図示せず)等に表示する。例えば、ステップS101において表示すると判断された医用画像を表示する。
【0091】
(ステップS103)第一受付部103は、ステップS102で表示する医用画像に対して第一指示を受け付けたか判断する。受け付けた場合、ステップS104に進み、受け付けていない場合、ステップS103に戻る。指定された画素を示す情報は、例えば、格納部(図示せず)等に蓄積する。なお、医用画像表示部101は、第一指示が示す画素を示す点等を、医用画像と重ねて表示するようにしてもよい。
【0092】
(ステップS104)第二受付部104は、ステップS102で表示する医用画像に対して第二指示を受け付けたか判断する。受け付けた場合、ステップS105に進み、受け付けていない場合、ステップS104に戻る。指定された輪郭を示す情報(例えば、輪郭上の画素の情報等)は、格納部(図示せず)等に蓄積する。なお、医用画像表示部101は、第二指示が指定する輪郭を示す線等を、医用画像と重ねて表示するようにしてもよい。
【0093】
(ステップS105)第一層決定部105は、第一近似条件を取得するための、X-αからX+αまでの画素値の範囲を示す条件を読み出し、αの値として、初期値α0を代入する。
【0094】
(ステップS106)第一層決定部105は、ステップS103で受け付けた第一指示が示す画素に連続する画素であって、X-αからX+αまでの範囲内の画素値を有する画素を検出する。
【0095】
(ステップS107)第一層決定部105は、ステップS106で検出した画素の一部が、ステップS104で受け付けた第二指示が指定する輪郭と重なるか判断し、重なる場合、ステップS108に進み、重ならない場合、ステップS109に進む。
【0096】
(ステップS108)第一層決定部105は、画素値の範囲を示す条件のαの値を、予め決められた値(例えば、「1」等)だけ減少させた値に変更する。そして、ステップS10106に戻る。
【0097】
(ステップS109)第一層決定部105は、直前のステップS106で検出された画素の集合を、第一層の画素に決定する。第一層決定部105は、例えば、決定した第一層の画素に対し、第一層の画素であることを示す情報を対応づけて、医用画像格納部102や格納部(図示せず)等に蓄積する。なお、この画素を検出する際に利用されたαの値を有するX-αからX+αまで画素値の範囲が、第一近似条件となり、このときのαの値が、上述したα1に相当する。
【0098】
(ステップS110)第二層決定部106は、ステップS109で決定した第一層の画素の外側に隣接する連続した画素の集合を第二層の画素に決定する。例えば、第二層決定部106は、ステップS109で決定した第一層の画素の外側に隣接する画素から、外側に向かって予め決められた画素数までの範囲内の画素の集合を、第二層の画素に決定する。第二層決定部106は、例えば、決定した第二層の画素に対し、第二層の画素であることを示す情報を対応づけて、医用画像格納部102や格納部(図示せず)等に蓄積する。
【0099】
(ステップS111)第三層決定部107は、ステップS109で決定した第一層の画素の代表点を決定する。例えば、第三層決定部107は、ステップS109で決定した第一層の画素で構成される領域の重心となる位置の画素を、第一層の画素の代表点として決定する。
【0100】
(ステップS112)第三層決定部107は、ステップS111で検出した代表点を中心として、予め決められたサイズの閉空間を有する図形の輪郭を決定する。この図形は、例えば、ステップS104で受け付けた第二指示により指定される輪郭を縮小した図形の輪郭である。例えば、この図形は、ステップS104で受け付けた第二指示により指定される輪郭を、ステップS111で決定した代表点を、拡大縮小の中心点として、70%に縮小した図形の輪郭である。ただし、ここでの70%は一例であり、この値の範囲に限定されるものではない。また、第三層決定部107は、ステップS111で決定した代表点と、第二指示により指定される輪郭の画素との距離、およびステップS110で決定した第二層の画素の外側の輪郭の画素との距離を用いて、第二指示により指定された輪郭を、上記の代表点を中心として縮小した輪郭であって、ステップS110で決定した第二層の画素の外側の輪郭と重ならない輪郭を決定してもよい。
【0101】
(ステップS113)第三層決定部107は、ステップS112で決定した輪郭上の画素の画素値を取得し、更に、画素値の高いものからソートした順位が、全体の30%から70%までの順位となる複数の画素を取得する。そして取得した複数の画素の画素値の平均値Yを、輪郭上の2以上の画素の代表値として取得する。
【0102】
(ステップS114)第三層決定部107は、ステップ113で代表値を取得するために用いた複数の画素について、標準偏差σをさらに取得し、画素の画素値が、Y-γからY+γまでの範囲内である(ただし、γは、2σである)という第二近似条件を取得する。
【0103】
(ステップS115)第三層決定部107は、ステップS112で決定した輪郭上の画素のうちの、画素値が、ステップS113で取得した第二近似条件を満たす範囲内の画素をそれぞれ起点として、ステップS114で取得した第二近似条件を満たす画素値を有する連続した画素を順次検出し、検出した画素をマージ(結合)する。
【0104】
(ステップS116)第三層決定部107は、ステップS115で検出した画素において、ステップS109で決定した第一層の画素と重なる画素と、ステップS110で決定した第二層の画素と重なる画素とを除外する。
【0105】
(ステップS117)第三層決定部107は、ステップS116により除外されずに残った画素において、ステップS104で受け付けた第二指示が指定する輪郭の外側の画素を除外する。
【0106】
(ステップS118)第三層決定部107は、ステップS117により除外されずに残った画素を、第三層の画素に決定する。第三層決定部107は、例えば、決定した第三層の画素に対し、第三層の画素であることを示す情報を対応づけて、医用画像格納部102や格納部(図示せず)等に蓄積する。
【0107】
(ステップS119)出力部108は、ステップ118で決定した第三層の画素を示す情報を出力する。例えば、出力部108は、第三層の画素を視覚的に判別可能な態様で出力する。なお、出力部108は、ステップS109で決定した第一層の画素や、ステップS110で決定した第二層の画素を示す情報を更に出力してもよい。そして、ステップS101に戻る。
【0108】
なお、
図2のフローチャートにおいて、ステップS103の処理をステップ104の処理の後に行うようにしてもよい。
【0109】
なお、
図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0110】
以下、本実施の形態における層状臓器領域特定装置1の具体的な動作について説明する。ここでは、医用画像格納部102には、人体の子宮部分を撮影した複数の医用画像が格納されているものとする。これらの医用画像は、人体の子宮部分の、人体の伸長方向に対して垂直な断層を撮影したMRI画像であるとする。このような子宮の医用画像においては、子宮内膜と、junction zoneと、子宮筋層が、内側から外側に向かって層状に重なった構造を有している。ここでは、第一層を子宮内膜、第二層をjunction zone、第三層を子宮筋層と考えて説明を行う。
【0111】
まず、ユーザが、キーボード等の入力デバイス(図示せず)等を介して、層状臓器領域特定装置1に、医用画像格納部102に格納されているファイル名が「img001」という子宮の医用画像を表示する操作を行ったとすると、表示指示受付部(図示せず)が、この医用画像「img001」を表示する指示を受け付け、これに応じて医用画像表示部101が、ファイル名が「img001」である医用画像をモニタ(図示せず)に表示する。
【0112】
図3は、医用画像表示部101によるファイル名が「img001」である医用画像30の表示例を示す図であり、
【0113】
次に、ユーザが、医用画像30の横に表示されたメニューボタンから、第一指示の入力を行うためのボタン31を押し、マウス(図示せず)等により、
図3に表示された医用画像30を目視により確認して、この医用画像内の、第一層である子宮内膜内の一の画素を指定する操作(例えば、子宮内膜内にカーソルを移動させてクリックする操作等)を行ったとする。第一受付部103は、この操作に応じて、指定された画素を指定する第一指示を受け付け、指定された画素を示す情報(例えば、指定された画素の識別子等)を、格納部(図示せず)等に一時記憶する。ここでは、医用画像表示部101は、第一指示が示す画素を表す点を、
図3に示した医用画像30上に表示したとする。
【0114】
また、第一指示を受け付けた後、ユーザが、医用画像30の横に表示されたメニューボタンから、第二指示の入力を行うためのボタン32を押し、マウス(図示せず)等により、医用画像30内の、第三層である子宮筋層を含む領域の外側の輪郭を指定する操作を(例えば、子宮筋層の外側の輪郭にそって、マウスボタンを押しながらカーソルを移動させる操作等)を行ったとする。第二受付部104は、この操作に応じて、子宮筋層を含む領域の外側の輪郭を指定する第二指示を受け付け、指定された輪郭上の画素を示す情報等を、格納部(図示せず)等に一時記憶する。ここでは、医用画像表示部101は、第二指示が示す輪郭を表す線を、
図3に示した医用画像30上に表示したとする。
【0115】
図4は、医用画像表示部101により第一指示が示す画素を示す点41と、第二指示が示す輪郭を示す線42とを配置した医用画像30の表示例を示す図である。
【0116】
第一層決定部105は、第一近似条件を取得するための、X-αからX+αまでの画素値の範囲を示す条件を読み出し、Xの値として、上記の第一指示が示す画素の画素値を代入し、αの値として、初期値α0を代入する。ここでのαの値は、第一指示が示す画素の画素値に対する割合(%)で表された値であるとする。例えば、α0の値が、ここでは「30%」であるとする。そして、第一層決定部105は、点41が表す第一指示が示す画素に連続する画素であって、X-αからX+αまでの範囲内(ただし、αはα0=30%であるとする)の画素値を有する画素の集合を検出する。具体的には、(1-0.3)Xから(1+0.3)Xまでの範囲内の画素値を有する画素の集合を検出する。そして、検出した画素の一部が、線42で表される第二指示が指定する輪郭と重なるか判断する。
【0117】
ここでは、輪郭と重なっていたとすると、第一層決定部105は、画素値の範囲を示す条件のαの値を、上記の初期値である「30%」から予め決められた値である「1」だけ減少させた値「29%」に変更する。そして、第一層決定部105は、点41が表す第一指示が示す画素に連続する画素であって、上記で変更したαの値「29%」を、最初に代入したαの値の代わりに代入したX-αからX+αまでの範囲内の画素値を有する画素の集合を検出する。具体的には、(1-0.29)Xから(1+0.29)Xまでの範囲内の画素値を有する画素の集合を検出する。そして、検出した画素の一部が、線42で表される第二指示が指定する輪郭と重なるか判断する。
【0118】
ここでは、この値でも、検出した画素の一部が重なっていたとすると、上記と同様に、αの値「29%」を、更に「1」減少させ、点41が表す第一指示が示す画素に連続する画素であって、値を減少させたαの値「28%」を代入したX-αからX+αまでの範囲内の画素値を有する画素の集合を検出し、検出した画素の一部が、線42で表される第二指示が指定する輪郭と重なるか判断する。第一層決定部105は、このようなαの値を減少させて、検出した画素が、第二指示が指定する輪郭と重なるか判断する処理を、検出した画素の一部が、線42で表される第二指示が指定する輪郭と重ならないと判断されるまで繰り返す。ここで、例えば、αの値が「28%」のときに、第一層決定部105が検出した画素が、線42が示す第二指示が示す輪郭と重ならなかったとすると、第一層決定部105は、このときに検出した第一指示が示す画素に連続する画素の集合を、第一層の画素に決定する。また、このときのαの値「28%」を代入した条件、すなわち、X-28%からX+28%までの範囲内の画素値を有する画素を検出するという条件が第一近似条件となる。
【0119】
なお、初期値α0をαに代入した場合に、第一層決定部105が検出した画素が、線42が示す第二指示が示す輪郭と重ならなかったとすると、第一層決定部105は、このときに検出した第一指示が示す画素に連続する画素の集合を、第一層の画素に決定する。また、このときのαの値であるα0を代入した条件、すなわち、X-α0からX+α0までの範囲内の画素値を有する画素を検出するという条件が第一近似条件となる。
【0120】
第一層決定部105は、上記で検出された画素の集合を、第一層の画素に決定し、決定した第一層の画素に対し、第一層の画素であることを示す情報を対応づけて、医用画像格納部102に蓄積する。ここでは、第一層の画素の座標を、第一層の画素であることを示す値と対応付けて、蓄積する。
【0121】
図5(a)は、層状臓器領域特定装置1が特定した層の画素を管理する特定層管理表である。特定層管理表は、「画像ID」と、「座標」と、「層」という属性を有している。「画像ID」は、医用画像の識別子であり、ここでは医用画像のファイル名である。「座標」は、医用画像内の画素の座標である。ここでの(x
1,y
1)等は、医用画像内の特定の座標を表しているものとする。「層」は、対応する座標が示す画素が属する層を示しており、値「1」は画素が第一層の画素であることを示し、値「2」は画素が第二層であることを示し、値「3」は画素が第三層であることを示す。
【0122】
上記で第一層決定部105が決定し蓄積した画素のレコード(行)は、「画像ID」が「img001」であり、「層」が「1」であるレコードである。
【0123】
次に、第二層決定部106は、医用画像30について第二層の画素に決定する。ここでは、第二層決定部106は、上記で決定した第一層の画素の外側に隣接する画素から、外側に向かって予め決められた数ピクセルの範囲内の画素の集合を、第二層の画素に決定する。ここでは、予め決められた数ピクセルの範囲内は、3ピクセルの範囲内であるとする。そして、第二層決定部106は、決定した第二層の画素に対し、第二層の画素であることを示す情報を対応づけて、医用画像格納部102に蓄積する。
【0124】
第二層決定部106が決定した第二層の画素の集合を管理する情報は、
図5(a)に示した特定層管理表に追記される。第二層決定部106が決定した第二層の画素を管理する情報が追記された特定層管理表は、
図5(b)のようになる。
図5(b)において、第二層決定部106が決定し蓄積した画素のレコード(行)は、「画像ID」が「img001」であり、「層」が「2」であるレコードである。
【0125】
次に、第三層決定部107は、上記で決定した第一層の画素で構成される領域の重心となる位置の画素を、第一層の画素の代表点として決定する。領域において重心を決定する処理については、詳細な説明を省略する。ここで決定した重心は、座標が(x500,y500)である画素であるとする。
【0126】
図6は、第三層決定部107が、医用画像30において決定した代表点60等を示す図である。なお、ここで示した代表点60は説明のための模式的な点であり、必ずしも、第一層決定部105が決定した第一層の画像の重心を正確に表すものではない。
【0127】
次に、第三層決定部107は、上記で検出した代表点を中心として、第二指示により指定された輪郭と同じ形状の輪郭を有する(すなわち、第二指示により指定された輪郭と相似する形状の)、第二指示により指定された輪郭よりも小さいサイズの、閉領域を有する図形の輪郭を決定する。ここでは、第二指示により指定された輪郭を、上記で決定された代表点60を中心として、70%のサイズに縮小して、閉領域61を有する図形の輪郭を決定する。
【0128】
次に、第三層決定部107は、上記で決定した閉領域61の輪郭上の各画素の画素値を取得し、取得した画素値を、画素値の高いものからソートする。そして、ソートした画素値において、画素値の高い方から見た順位が全体の30%より高い順位となる画素値と、画素値の低い方から見た順位が全体の30%よりも低い順位となる画素値とを除外して、画素値の高い方から見た順位が、全体の30%から70%までの順位となる複数の画素を取得する。例えば、閉領域61の輪郭上の画素から取得した画素値の数が、500画素であったとすると、第三層決定部107は、画素値の高い方から見た順位が、150位から350位までの間の順位となる画素値を取得する。
【0129】
第三層決定部107は、取得した高い方から見た順位が全体の30%から70%までの順位となる複数の画素値の平均値Yを、閉領域61の輪郭上の2以上の画素の代表値として取得する。また、第三層決定部107は、上記で閉領域61の輪郭上の2以上の画素の代表値を取得するために用いた、画素値の高い方から見た順位が、全体の30%から70%までの順位となる複数の画素値について、標準偏差σをさらに取得する。そして、画素の画素値が、Y-γからY+γまでの範囲内である(ただし、γは、2σである)という第二近似条件を取得する。
【0130】
次に、第三層決定部107は、閉領域61の輪郭上の画素のうちの、上記で取得した第二近似条件を満たす範囲内の画素値、すなわち、Y-γからY+γまでの範囲内の画素値を有する複数の画素をそれぞれ起点として、上記で取得した第二近似条件を満たす画素値を有する連続した画素を順次検出して、検出した画素をマージする。
【0131】
次に、第三層決定部107は、マージして得られた複数の画素において、上記で第一層決定部105が決定した第一層の画素と重なる画素と、上記で第二層決定部106が決定した第二層の画素と重なる画素とを除外する。具体的には、マージして得られた複数の画素において、
図5(b)に示した特定層管理表の、「画像ID」が「img001」であり、「層」が「1」または「2」のいずれかであるレコードのいずれか一つのレコードの「座標」と、座標が一致する画素を順次除外する。
【0132】
さらに、第三層決定部107は、上記で除外されずに残った画素において、座標が、第二指示が指定する輪郭の外側の外側の座標である画素を、順次除外する。
【0133】
そして、除外されずに残った画素を、第三層決定部107は、第三層の画素に決定する。第三層決定部107は、例えば、決定した第三層の画素に対し、第三層の画素であることを示す情報を対応づけて、医用画像格納部102に蓄積する。
【0134】
第三層決定部107が決定した第三層の画素の集合を管理する情報は、
図5(b)に示した特定層管理表に追記される。第三層決定部107が決定した第三層の画素を管理する情報が追記された特定層管理表は、
図5(c)のようになる。
図5(c)において、第三層決定部107が決定し蓄積した画素のレコード(行)は、「画像ID」が「img001」であり、「層」が「3」であるレコードである。
【0135】
出力部108は、第三層決定部107が決定した第三層の画素を示す情報を出力する。また、ここでは、上記の第三層の画像に加えて、更に、第一層決定部105が決定した第一層の画素を示す情報、および第二層決定部106が決定した第二層の画素を、それぞれ示す情報も出力する。
【0136】
ここでは、まず、出力部108は、医療画像「img001」の、第三層決定部107が決定した第三層の画素上に、予め決められた第一の色である赤色を重ねた画像を生成する。具体的には、
図5(b)に示した特定層管理表の「画像ID」が「img001」であり、「層」が「3」であるレコード(行)の「座標」の値を全て取得し、取得した各座標の画素に第一の色を重ねて合成する。このとき、重ねる前の画素が透過して見えるように、第一の色を合成する。
【0137】
また、出力部108は、上記の第一の色を重ねた医療画像「img001」の、第一層決定部105が決定した第一層の画素上に、予め決められた第二の色である青色を重ねた画像を生成する。具体的には、
図5(b)に示した特定層管理表の「画像ID」が「img001」であり、「層」が「1」であるレコード(行)の「座標」の値を全て取得し、取得した各座標の画素に第二の色を重ねて重ねる前の画素が各透過して見えるよう合成する。
【0138】
また、出力部108は、上記の第一の色および第二の色を重ねた医療画像「img001」の、第二層決定部106が決定した第二層の画素上に、予め決められた第三の色である黄色を重ねた画像を生成する。具体的には、
図5(b)に示した特定層管理表の「画像ID」が「img001」であり、「層」が「2」であるレコード(行)の「座標」の値を全て取得し、取得した各座標の画素に第三の色を重ねて重ねる前の画素が各透過して見えるよう合成する。
【0139】
そして、出力部108は、このようにして生成した画像をモニタ(図示せず)に表示することにより、第一層から第三層までの画素をそれぞれ視覚的に判別可能な態様で出力する。
【0140】
図7は、出力部108が表示する、第一層から第三層までの画素をそれぞれ視覚的に判別可能な態様で示した医療画像の表示例を示す図である。
図7において、領域71は、第一層の画素の集合を示しており、領域72は、第二層の画素の集合を示しており、領域73は、第三の画素の集合を示している。なお、ここでは、説明の便宜上、第一の色から第三の色を、それぞれ異なる斜線で表している。
【0141】
なお、出力部108は、ここで表示したような医療画像を、医療画像「img001」と対応付けて医用画像格納部102に蓄積してもよい。
【0142】
また、出力部108は、第三の画素を示す情報だけを出力するようにしてもよい。例えば、出力部108は、第三層の画素に第一の色を重ねた医療画像だけを表示するようにしてもよい。
【0143】
また、この具体例においては、医療画像に撮影されている層状臓器が子宮である例を挙げて説明したが、層状臓器は、心臓等の、子宮以外の層状臓器であってもよい。
【0144】
以上、本実施の形態によれば、医用画像において、3層以上の層状構造を有する臓器の、1以上の層の領域を適切に特定することができる。
【0145】
なお、上記各実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0146】
また、上記各実施の形態において、出力部108が行う出力が、表示を含む場合、出力部108の表示を行うための構成と、医用画像表示部101とを、一の表示部により実現するようにしてもよい。
【0147】
また、上記各実施の形態では、層状臓器領域特定装置がスタンドアロンである場合について説明したが、層状臓器領域特定装置は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、出力部や受付部は、通信回線を介して入力を受け付けたり、画面を出力したりすることになる。
【0148】
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、格納部(例えば、ハードディスクやメモリ等の記録媒体)にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
【0149】
なお、上記各実施の形態における層状臓器領域特定装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、第一層と、第一層の外側に接する第二層と、第二層の外側に接する第三層とを有する層状臓器の医用画像を表示する医用画像表示部と、医用画像の第一層内の画素を指定する第一指示を受け付ける第一受付部と、医用画像の第三層を含む領域の外側の輪郭を指定する第二指示を受け付ける第二受付部と、第一指示により指定される画素の画素値を取得し、画素値に対して第一近似条件を満たす画素であって、第一指示により指定される画素に連続する画素の集合を第一層の画素に決定する第一層決定部と、第一層の画素の外側に隣接する連続した画素の集合を第二層の画素に決定する第二層決定部と、第二層の画素の外側であって、第二指示により指定される輪郭内に位置している2以上の画素の画素値の代表値を取得し、代表値に対して第二近似条件を満たす画素値を有しており、第一層および第二層の画素以外の、第二指示により指定される輪郭の内側に位置している画素の集合を、第三層の画素に決定する第三層決定部と、第三層の画素を示す情報を出力する出力部として機能させるためのプログラムである。
【0150】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する取得部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には含まれない。
【0151】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0152】
図8は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による層状臓器領域特定装置を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0153】
図8において、コンピュータシステム900は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ905を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0154】
図9は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。
図9において、コンピュータ901は、CD-ROMドライブ905に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915と、を備える。なお、コンピュータ901は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0155】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による層状臓器領域特定装置等の機能を実行させるプログラムは、CD-ROM921に記憶されて、CD-ROMドライブ905に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD-ROM921、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
【0156】
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による層状臓器領域特定装置の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0157】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0158】
以上のように、本発明にかかる層状臓器領域特定装置等は、医用画像において所望の部位を特定する装置等として適しており、特に、層状臓器の所望の層を特定する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0159】
1 層状臓器領域特定装置
101 医用画像表示部
102 医用画像格納部
103 第一受付部
104 第二受付部
105 第一層決定部
106 第二層決定部
107 第三層決定部
108 出力部