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特許7539151ETBR活性化に関連する癌を処置するための重水素化化合物、組成物、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ETBR活性化に関連する癌を処置するための重水素化化合物、組成物、および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/083 20060101AFI20240816BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C07K5/083 ZNA
A61K38/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K47/20
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020535980
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019013377
(87)【国際公開番号】W WO2019140324
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】62/616,729
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518040518
【氏名又は名称】イーエヌビー・セラピューティクス・インク
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ジャマル,スマヤフ
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0035836(US,A1)
【文献】特表2001-519355(JP,A)
【文献】特開昭63-250341(JP,A)
【文献】国際公開第2015/110593(WO,A1)
【文献】GAY, CL et al.,Clinical Trial of the Anti-PD-L1 Antibody BMS-936559 in HIV-1 Infected Participants on Suppressive Antiretroviral Therapy,The Journal of Infectious Diseases,2017年,Vol. 215, No. 11,pp. 1725-1733
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物、
【化1】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩であって、
式中、
nは、0であり、
mは、0であり、
Xは、正に荷電された対イオンであり、
2aおよびR2bは、-CHDであり、
、R、およびRは独立して、-CH、-CHD、-CHD、または-CDである、化合物、その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
【化2】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、または担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
薬学的に許容可能な担体を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記担体がジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の化合物を含む、被験体のETBRを発現する癌を処置するための医薬組成物。
【請求項7】
前記癌が、黒色腫、扁平上皮癌、脳癌、膵臓癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の化合物を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物は免疫チェックポイント阻害剤と併用して投与される、被験体のETBRを発現する癌を処置するための医薬組成物。
【請求項9】
前記免疫チェックポイント阻害剤は抗PD1抗体である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗PD1抗体は、ピディリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記癌は、黒色腫、扁平上皮癌、脳癌、膵臓癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項8から12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記化合物と前記免疫チェックポイント阻害剤は、異なる時間に投与される、請求項8から13のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年1月12日出願の米国仮特許出願第62/616,729号の利益を主張するものであり、この出願は、その全体において引用により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によって本明細書に組み込まれる配列表を含んでいる。2019年1月11日に作成されたASCIIのコピーは、「55520704201_SL.txt」と命名され、751バイトのサイズである。
【発明の概要】
【0003】
本明細書には化合物が開示される。いくつかの実施形態において、化合物は、式(1)の化合物:
【0004】
【化1】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩であり、式中、nは、0~5の整数である場合があり;mは、0~3からの整数である場合があり;Xは、正に荷電された対イオンである場合があり;RとRは独立して、-H、-D、-CH、-CHD、-CHD、または-CDである場合があり;R2a、R2b、R、R、およびRは独立して、-CH、-CHD、-CHD、または-CDである場合があり;およびR、R、またはRのうち少なくとも1つは重水素を含む。いくつかの実施形態において、mは0であり、nは0であり、R2aとR2bは-CHDである場合がある。いくつかの実施形態において、化合物は、式(2)の化合物:
【0005】
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、化合物は、式(3)の化合物:
【0006】
【化3】
またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、化合物は、式(4)の化合物:
【0007】
【化4】
またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、化合物は、式(5)の化合物:
【0008】
【化5】
またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、化合物は、式6の化合物である:
【0009】
【化6】
いくつかの実施形態において、nは、0または1である場合がある。いくつかの実施形態において、nは1であり、Rは-Dである場合があり;およびR2aとR2bは、-CHである場合がある。いくつかの実施形態において、nは0であり、Rは-Hである場合があり;R2aは-CHであり、R2bは-CHDである場合がある。いくつかの実施形態において、nは0であり、Rは-Hである場合があり;R2aは-CHDであり、R2bは-CHである場合がある。いくつかの実施形態において、nは0であり、Rは-Hである場合があり;およびR2aとR2bは、-CHDである場合がある。いくつかの実施形態において、nは1であり、Rは-Dである場合があり;およびR2aとR2bは、-CHDである場合がある。
【0010】
また本明細書には、以下から成る群から選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩が開示される:
【0011】
【化7】
【0012】
また本明細書には、本明細書に記載されるような化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、または担体を含む、医薬組成物が開示される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である場合がある。いくつかの実施形態において、化合物は以下のとおりである:
【0013】
【化8】
【0014】
また本明細書には、本明細書に記載されるような医薬組成物を被験体に投与する工程を含む、癌を処置する方法が開示される。いくつかの実施形態において、方法はさらに、免疫チェックポイント阻害剤を被験体に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体である場合がある。
【0015】
また本明細書には、被験体の癌を処置する方法が開示され、該方法は、本明細書に記載されるような化合物を被験体に投与する工程を含み、該化合物は、被験体の癌の少なくとも1つの症状を処置または改善するのに有効な量である場合がある。いくつかの実施形態において、方法はさらに、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を被験体に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤は、少なくとも1つの抗PD1抗体、少なくとも1つの抗PD-L1抗体、少なくとも1つの抗CTLA4抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗PD1抗体は、ピディリズマブ、BMS-936559、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍癌、悪性黒色腫、転移性黒色腫、悪性有棘細胞癌、転移性扁平上皮癌、膠芽腫、脳癌、膵臓癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、またはそれらの任意の組み合わせである場合がある。いくつかの実施形態において、化合物および免疫チェックポイント阻害剤は、異なる時間に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫チェックポイント阻害剤よりも2、3、4、または5倍頻繁に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫チェックポイント阻害剤よりも3倍頻繁に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は2-3週間毎に3回投与することができ、免疫チェックポイント阻害剤は2-3週間毎に1回投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は約21日毎に3回投与することができ、免疫チェックポイント阻害剤は約21日毎に1回投与することができる。いくつかの実施形態において、被験体はヒトの場合がある。いくつかの実施形態において、被験体は、処置前の免疫療法に耐性を示す場合がある。いくつかの実施形態において、投与の結果、血清ET-1レベルを測定することにより判定されるように、非重水素化の親化合物に比べて、生物活性の改善、安定性の増加、血清生物学的利用能の延長、ETBRターゲットエンゲージメントの延長、またはそれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つがもたらされる。いくつかの実施形態において、投与により、腫瘍微小環境において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、腫瘍内三次リンパ器官(TLO)形成、またはそれらの組み合わせが修復される。
【0016】
また本明細書には、被験体の腫瘍内に3次リンパ器官(TLO)を形成する方法を開示し、該方法は、本明細書に記載されるような化合物を被験体に投与する工程を含み、これにより腫瘍を減少または根絶することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、以下の式
【0017】
【化9】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む薬学的に許容可能な賦形剤に存在する場合がある。
【0018】
また本明細書には、式(7)の化合物:
【0019】
【化10】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩が開示され、式中、R、R、R、R、またはRは独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、随意に置換されたC-Cアルキル、随意に置換されたC-Cアルケニル、随意に置換されたC-Cアルキニル、随意に置換されたC-Cシクロアルキル、随意に置換されたC-Cアルコキシ、随意に置換されたC-Cハロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換されたヘテロアリールである場合があり、ここで随意に、ピペリジニル環中の炭素の1つ以上は、O、N、またはSから選択されるヘテロ原子である場合があり、または、ピペリジニル環は、1つ以上の二重結合を含む場合があり;Rは、随意に置換されたC-Cアルキル、随意に置換されたC-Cアルケニル、随意に置換されたC-Cアルキニル、随意に置換されたC-Cシクロアルキル、随意に置換されたC-Cアルコキシ、随意に置換されたC-Cハロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換されたヘテロアリールである場合があり、ここでRは随意に重水素を含み;Rは、随意に置換されたシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたヘテロアリール、随意に置換された多環式環系、随意に置換された二環式、随意に置換された複素二環式(heterobycyclic)である場合があり、ここでRは随意に重水素を含み;RとRは独立して、随意に置換されたC-Cアルキル、随意に置換されたC-Cアルケニル、随意に置換されたC-Cアルキニル、随意に置換されたC-Cシクロアルキル、随意に置換されたC-Cアルコキシ、随意に置換されたC-Cハロアルキル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたヘテロアリール、または-COOR’である場合があり、またはRとRは、一体となることで、随意に置換されたシクロアルキル、随意に置換されたシクロアルキルヘテロシクロアルキル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたヘテロアリール、または随意に置換された多環式環系を形成でき、ここでRまたはRは各々随意に重水素を含み;R’は水素、ヒドロキシ、またはC-Cアルキルである場合があり;およびR、R、R、R、R、R、R、R、またはRのうち少なくとも1つは、重水素を含む。いくつかの実施形態において、R、R、R、R、またはRのうち2つは、重水素を含む。また本明細書には、有効な量の化合物、および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物が開示される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である場合がある。また本明細書には、被験体の癌を処置する方法が開示され、該方法は、化合物または医薬組成物を被験体に投与する工程を含み、前記方法は、被験体の癌の少なくとも1つの症状を処置または改善するのに有効な場合がある。いくつかの実施形態において、前記方法は、被験体に少なくとも1つの追加の抗腫瘍治療剤を投与する工程をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、bRAF阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、カスパーゼ-8阻害剤、ETARアンタゴニスト、ナイアシンアミド、化学療法剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤のうち少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤は、少なくとも1つの抗PD1抗体、少なくとも1つの抗PD-L1抗体、少なくとも1つの抗CTLA4抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗PD1抗体は、ピディリズマブ、BMS-936559、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍癌、悪性黒色腫、転移性黒色腫、悪性有棘細胞癌、転移性扁平上皮癌、膠芽腫、脳癌、膵臓癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、またはそれらの任意の組み合わせである場合がある。いくつかの実施形態において、化合物および少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、異なる時間に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫チェックポイント阻害剤よりも2、3、4、または5倍頻繁に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫チェックポイント阻害剤よりも3倍頻繁に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は2-3週間毎に3回投与することができ、免疫チェックポイント阻害剤は2-3週間毎に1回投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は約21日毎に3回投与することができ、免疫チェックポイント阻害剤は約21日毎に1回投与することができる。いくつかの実施形態において、被験体はヒトの場合がある。いくつかの実施形態において、被験体は、処置前の免疫療法に耐性を示す場合がある。いくつかの実施形態において、投与の結果、血清ET-1レベルを測定することにより判定されるように、非重水素化の親化合物に比べて、生物活性の改善、安定性の増加、血清生物学的利用能の延長、ETBRターゲットエンゲージメントの延長、またはそれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つがもたらされる。いくつかの実施形態において、投与により、腫瘍微小環境において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、腫瘍内三次リンパ器官(TLO)形成、またはそれらの組み合わせが修復される。
【0020】
また本明細書には、式(8)の化合物:
【0021】
【化11】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩が開示され、式中、R、R、またはRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである場合があり;Rは、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである場合があり、ここでRは随意に重水素を含み;Rは、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、あるいは置換または非置換の多環式環系である場合があり、ここでRは随意に重水素を含み;RとRは独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、または-COOR’である場合があり、またはRとRは、一体となることで、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のシクロアルキルヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、あるいは置換または非置換の多環式環系を形成でき、RまたはRは各々随意に重水素を含み;R’は水素、ヒドロキシ、またはC-Cアルキルである場合があり;およびR、R、R、R、R、R、R、R、またはRのうち少なくとも1つは、重水素を含む。いくつかの実施形態において、R、R、R、R、またはRのうち2つは、重水素を含む。また本明細書には、有効な量の化合物、および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物が開示される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である場合がある。また本明細書には、被験体の癌を処置する方法が開示され、該方法は、化合物または医薬組成物を被験体に投与する工程を含み、前記方法は、被験体の癌の少なくとも1つの症状を処置または改善するのに有効な場合がある。いくつかの実施形態において、前記方法は、被験体に少なくとも1つの追加の抗腫瘍治療剤を投与する工程をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、bRAF阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、カスパーゼ-8阻害剤、ETARアンタゴニスト、ナイアシンアミド、化学療法剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤のうち少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤は、少なくとも1つの抗PD1抗体、少なくとも1つの抗PD-L1抗体、少なくとも1つの抗CTLA4抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗PD1抗体は、ピディリズマブ、BMS-936559、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍癌、悪性黒色腫、転移性黒色腫、悪性有棘細胞癌、転移性扁平上皮癌、膠芽腫、脳癌、膵臓癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、またはそれらの任意の組み合わせである場合がある。いくつかの実施形態において、化合物および少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、異なる時間に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫チェックポイント阻害剤よりも2、3、4、または5倍頻繁に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫チェックポイント阻害剤よりも3倍頻繁に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は2-3週間毎に3回投与することができ、免疫チェックポイント阻害剤は2-3週間毎に1回投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は約21日毎に3回投与することができ、免疫チェックポイント阻害剤は約21日毎に1回投与することができる。いくつかの実施形態において、被験体はヒトの場合がある。いくつかの実施形態において、被験体は、処置前の免疫療法に耐性を示す場合がある。いくつかの実施形態において、投与の結果、血清ET-1レベルを測定することにより判定されるように、非重水素化の親化合物に比べて、生物活性の改善、安定性の増加、血清生物学的利用能の延長、ETBRターゲットエンゲージメントの延長、またはそれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つがもたらされる。いくつかの実施形態において、投与により、腫瘍微小環境において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、腫瘍内三次リンパ器官(TLO)形成、またはそれらの組み合わせが修復される。
【0022】
また本明細書には、式(9)の化合物:
【0023】
【化12】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩が開示され、式中、R、R、R、R、またはRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである場合があり;Rは、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである場合があり、ここでRは随意に重水素を含み;RとRは独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキルであり、RとRは独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COOR’である場合があり、またはRとRは、一体となることで、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のシクロアルキルヘテロシクロアルキル、置換非置換のアリール、置換非置換のヘテロアリール、あるいは置換または非置換の多環式環系を形成でき、ここでRまたはRは各々随意に重水素を含み;R10とR10’は独立して、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである場合があり;nは、0~5の整数である場合があり;およびR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、またはR10’のうち少なくとも1つは、重水素を含む。いくつかの実施形態において、nは0であり、R10とR10’は共に水素である場合がある。いくつかの実施形態において、R、R、R、R、またはRのうち2つは、重水素を含む。また本明細書には、有効な量の化合物、および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物が開示される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である場合がある。また本明細書には、被験体の癌を処置する方法が開示され、該方法は、化合物または医薬組成物を被験体に投与する工程を含み、前記方法は、被験体の癌の少なくとも1つの症状を処置または改善するのに有効な場合がある。いくつかの実施形態において、前記方法は、被験体に少なくとも1つの追加の抗腫瘍治療剤を投与する工程をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、bRAF阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、カスパーゼ-8阻害剤、ETARアンタゴニスト、ナイアシンアミド、化学療法剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤のうち少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤は、少なくとも1つの抗PD1抗体、少なくとも1つの抗PD-L1抗体、少なくとも1つの抗CTLA4抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗PD1抗体は、ピディリズマブ、BMS-936559、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍癌、悪性黒色腫、転移性黒色腫、悪性有棘細胞癌、転移性扁平上皮癌、膠芽腫、脳癌、膵臓癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、またはそれらの任意の組み合わせである場合がある。いくつかの実施形態において、化合物および少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、異なる時間に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫チェックポイント阻害剤よりも2、3、4、または5倍頻繁に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫チェックポイント阻害剤よりも3倍頻繁に投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は2-3週間毎に3回投与することができ、免疫チェックポイント阻害剤は2-3週間毎に1回投与することができる。いくつかの実施形態において、化合物は約21日毎に3回投与することができ、免疫チェックポイント阻害剤は約21日毎に1回投与することができる。いくつかの実施形態において、被験体はヒトの場合がある。いくつかの実施形態において、被験体は、処置前の免疫療法に耐性を示す場合がある。いくつかの実施形態において、投与の結果、血清ET-1レベルを測定することにより判定されるように、非重水素化の親化合物に比べて、生物活性の改善、安定性の増加、血清生物学的利用能の延長、ETBRターゲットエンゲージメントの延長、またはそれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つがもたらされる。いくつかの実施形態において、投与により、腫瘍微小環境において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、腫瘍内三次リンパ器官(TLO)形成、またはそれらの組み合わせが修復される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を形成する添付図面は、本発明の様々な実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役目を果たす。図面は、本発明の実施形態を例示することしか目的としておらず、本発明を制限するもの解釈されるものではない。さらに、本発明の目的、特徴、および利点は、本発明の例示的実施形態をしめす添付図面と組み合わせて以下に詳しく説明されることで、明らかとなろう。
図1】エンドセリンB受容体(ETBR)細胞のシグナル経路を示す。ETBRは、7つの膜貫通Gタンパク質結合受容体(GPCR)である。エンドセリン-1(ET-1)は、ETBRのリガンドである。ET-1を受容体に結合すると、PTK、RAF、MEK、MAPK/ERKを含む、多数の下流キナーゼの活性化が生じる。
図2】bRAF阻害剤への薬物耐性がETBRのアップレギュレーションによるものであることを示す。ETBRのアップレギュレーションにより、黒色腫細胞は障害物を越えてMAPK/ERK活性化を可能にする。本明細書に記載されるような特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを含むETBRアンタゴニストは、ET-1結合を遮断する。
図3】ET-1が黒色腫の進行により発現されることを示す。ET-1は、ETBRを活性化するリガンドであり、これによりメラノーマ細胞が増殖し、転移し、かつそれ自体の血液供給源を生成する。組織切片は、ET-1特異的標識で染色したヒト侵襲性黒色腫性の標本から得られる。写真は、黒色腫がET-1に対し陽性であることを示す。侵襲性かつ転移性の黒色腫は、ET-1を生成する。
図4A】BQ-788に対する、CXCR4(h)阻害効果の判定を示す。細胞のアゴニスト効果は、CXCR4(h)に対する既知の基準アゴニストへの制御反応の%として算出され、細胞のアンタゴニスト効果は、CXCR4に対する制御基準アゴニスト反応の%阻害として算出された。アゴニスト効果の≧50%の阻害を示す結果は有意であると考慮され、一方で25%未満の阻害を示す結果は有意であると考慮されない。BQ-788のIC50は、約1.0E-6Mより大きかった。BQ-788-BのIC50は、算出できなかった。
図4B】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニスト(すなわち「化合物1」)であるBQ-788-Bに対する、CXCR4(h)阻害効果の判定を示す。細胞のアゴニスト効果は、CXCR4(h)に対する既知の基準アゴニストへの制御反応の%として算出され、細胞のアンタゴニスト効果は、CXCR4に対する制御基準アゴニスト反応の%阻害として算出された。アゴニスト効果の≧50%の阻害を示す結果は有意であると考慮され、一方で25%未満の阻害を示す結果は有意であると考慮されない。BQ-788のIC50は、約1.0E-6Mより大きかった。BQ-788-BのIC50は、算出できなかった。
図5A】BQ-788に対するETA(h)阻害効果の判定を示す。細胞のアゴニスト効果は、ETA(h)に対する既知の基準アゴニストへの制御反応の%として算出され、細胞のアンタゴニスト効果は、ETAに対する制御基準アゴニスト反応の%阻害として算出された。アゴニスト効果の≧50%の阻害を示す結果は有意であると考慮され、一方で25%未満の阻害を示す結果は有意であると考慮されない。BQ-788およびBQ-788-BのIC50は算出できなかった(すなわち、用量応答曲線は、検証された最大検査濃度で25%未満の効果を示す)。
図5B】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストであるBQ-788-Bに対するETA(h)阻害効果の判定を示す。細胞のアゴニスト効果は、ETA(h)に対する既知の基準アゴニストへの制御反応の%として算出され、細胞のアンタゴニスト効果は、ETAに対する制御基準アゴニスト反応の%阻害として算出された。アゴニスト効果の≧50%の阻害を示す結果は有意であると考慮され、一方で25%未満の阻害を示す結果は有意であると考慮されない。BQ-788およびBQ-788-BのIC50は算出できなかった(すなわち、用量応答曲線は、検証された最大検査濃度で25%未満の効果を示す)。
図6】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストが、黒色腫性の増殖と転移、および黒色腫性腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導を阻害することを示す。細胞のアゴニスト効果は、ETB(h)に対する既知の基準アゴニストへの制御反応の%として算出され、細胞のアンタゴニスト効果は、ETBに対する制御基準アゴニスト反応の%阻害として算出された。アゴニスト効果の≧50%の阻害を示す結果は有意であると考慮され、一方で25%未満の阻害を示す結果は有意であると考慮されない。BQ-788のIC50は5.1E-08Mであり、Kdは1.3E-08であった。一方で、特異的に重水素化された化合物のIC50は9.6E-08Mであり、Kdは2.5E-08であった。
図7】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストであるBQ-788-Bが、BQ-788に比べて増強された生物活性を実証することを示す。BQ-788-Bは、BQ-788と比較して約3時間まで延ばされたピークアウトを実証し、これにより約30分での一時的なピークが実証される。BQ-788-BのIC50は9.6E-08M(MW=665.37)である。BQ-788のIC50は5.6E-08(MW=663.78)である。
図8】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストと免疫療法薬との二重の組み合わせにより、現行の標準の薬物組み合わせに比べて優れた効果が得られることを示す。同系黒色腫モデルV600E+(BRAF変異)SM1腫瘍モデルをC57BL/6マウスに使用することで、処置の標準である抗PD1(「D+P」)と組み合わせたダブラフェニブと比較して、免疫療法剤(「B+P」)と組み合わせた特異的な重水素化ETRBアンタゴニストの効果を評価した。
図9】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストBQ-788-Bと免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗PD1)との二重の組み合わせにより、腫瘍が根絶されることを示す。図8に示されるような処置の21日後にC57BL/6マウスに移植されたV600E+黒色腫腫瘍細胞の組織学的検査が行われる。BQ-788-Bと免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせることで、腫瘍は21日で根絶し、CD8+リンパ球(TIL)による強固な浸潤が促され、3次リンパ器官(TLO)形成が誘導された。
図10】免疫チェックポイント阻害剤抗PD1、および特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストBQ-788-Bを含む併用療法により誘導される、腫瘍内TLO形成を示す。BQ-788-Bと抗PD1との併用療法を用いた、図8に示されるような処置の21日後に、C57BL/6マウスに移植されたV600E+黒色腫腫瘍細胞の組織学的検査が行われる。CD8+、CD4+、およびTreg(FoxP3)リンパ球の染色により、併用療法によってリンパ球の腫瘍への強力な動員が促され、このことは、腫瘍の根絶および陽性の患者転帰に関連付けられることが示される。
図11】特異的に重水素化された化合物BQ-788-Bでの処置に関連付けられる腫瘍内(内部)TLO形成を示す。表は、併用療法(2および3つの部分)、TLO形成、および腫瘍根絶に対する効果と共に得られた結果を要約している。データは、(i)内部TLO形成が腫瘍減少に関連付けられ;および(ii)免疫チェックポイント阻害剤とBQ-788-Bとの組み合わせが腫瘍内TLO形成および腫瘍減少に最も頻繁に関連付けられることを示している。
図12】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストBQ-788-Bを免疫チェックポイント阻害剤抗PD1と共に包含することで、抗PD1の感度が回復することを示す。抗PD1/BQ-788-Bの組み合わせにダブラフェニブすると効果が損なわれてしまい、これはおそらく、Tregおよび腫瘍関連マクロファージ(TAM)を増大させるダブラフェニブの能力によるものである。
図13】免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗CTLA、抗PD-L1、または抗PD1)およびダブラフェニブと組み合わせた、0.6μgでの特異的に重水素化された化合物BQ-788-Bが、びまん性CD8+TIL染色を促進することを示す。それぞれの併用療法を用いた、図8に示されるような処置の21日後にC57BL/6マウスに移植されたV600E+黒色腫腫瘍細胞の組織学的検査が行われる。CD8+TIL染色(「D+P+B(0.6μg)」における暗い斑点状の染色)のびまん性分布は、TILの周辺分布を伴うものと比較して高い効果に関連付けられると考えられる(「D+P+B(4.0μg)」および「D+P+B(100μg)」を参照)。
図14】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストの調製のための典型的な合成スキームを表す。
図15】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストの合成用の中間体調製のための典型的な合成スキームを表す。
図16】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストBQ-788-AおよびBQ-788-Cの合成用の中間体の調製のための典型的な合成スキームを表す。
図17】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストBQ-788-Aの調製のための典型的な合成スキームを表す。
図18】特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストBQ-788-Cの調製のための典型的な合成スキームを表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書には、癌、例えばETBR関連の癌、例えば悪性黒色腫、転移性黒色腫、有棘細胞癌、膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、またはそれらの任意の組み合わせを処置するのに有用な、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト化合物、組成物、および方法が開示される。本明細書に記載されるように、本明細書中で製剤されるような特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、ETBR関連の癌を処置するのに驚くほど都合が良い。特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを使用することで、血清ET-1レベルの測定により判定されるように、非重水素化親化合物に比べて生物活性が大幅に改善され、結果として、安定性の増加、血清生物学的利用能の延長、ETBR標的ターゲットエンゲージメントの延長、またはそれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つがもたらされる。いくつかの実施形態において、処置された被験体は、免疫療法に耐性を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物と方法は、腫瘍微小環境において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)および/または腫瘍内3次リンパ器官(TLO)形成を回復する。
【0026】
また本明細書には、本明細書に開示されるような少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および少なくとも1つの追加の抗腫瘍治療剤を含む組み合わせが開示され、これは同じ時間または異なる時間のいずれかで投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗腫瘍薬剤は、bRAF阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、カスパーゼ-8阻害剤、ETARアンタゴニスト、ナイアシンアミド、化学療法剤、例えばタキサン、キナーゼ阻害剤、または他の受容体アンタゴニストなど、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗腫瘍薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、セミプリマブ、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、MDX-1105、アベルマブ、デュルバルマブ、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるような特異的に重水素化されたETRBアンタゴニスト、および抗腫瘍薬剤(すなわち、抗-CTLA、抗PDL1、および抗PD1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤)は、同じ時間に(例えば同時に)投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるような特異的に重水素化されたETRBアンタゴニスト、および抗腫瘍薬剤(すなわち、-CTLA、抗PDL1、および抗PD1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤)は、異なる時間に(例えば同時に)投与することができる。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、週に1回、隔週に1回、毎月2回、または隔月に2回投与することができる。いくつかの実施形態において、抗腫瘍薬剤(すなわち、抗CTLA、抗PDL1、および抗PD1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤)は、週に1回、隔週に1回、毎月2回、または隔月に2回投与することができる。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、追加の抗腫瘍薬剤よりも2、3、4、または5倍頻繁に投与され、例えば、重水素化ETBRアンタゴニストは2-3週間(例えば21日)の間に3回投与され、一方で追加の抗腫瘍薬剤は2-3週間(例えば21日)の間に1回投与される。いくつかの実施形態において、組み合わせは、有効な量の少なくとも1つの重水素化ETBRアンタゴニスト、および有効な量の少なくとも1つの抗腫瘍薬剤を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、薬学的に許容可能な担体、例えばDMSOを含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、別個の単位剤形、例えば、少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを含む第1の容器、および少なくとも1つの抗腫瘍学の薬剤を含む第2の容器の中にある。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される活性薬剤は、制御放出送達システム中にあり、該システムは、(1)生体適合性のポリマー、(2)リポソーム製剤、(3)DMSO溶液、またはそれらの組み合わせを含む。
【0027】
定義
【0028】
他に特段の定義のない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有している。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を制限するようには意図されていない。
【0029】
値の範囲が提供される場合、各介在値は、文脈が明確に指示していない限り下限の単位の10番目に(範囲内に含まれる各炭素原子数が提供される、多くの炭素原子を含有する基の場合など)、その範囲、および明示された範囲における他の明示された、または介在の値の上限と下限との間で、本発明内に含まれることが、理解される。これらのより小さな範囲の上限と下限は、より小さな範囲に独立して含まれる場合があり、明治された範囲内の具体的に除外された限界に従って、本発明内に包含される。記載された範囲が1つ又は両方の限界を含む場合、含まれるこれら限界の両方を除外する範囲は、本開示にも含まれる。
【0030】
冠詞「a」と「an」は、本明細書および特許請求の範囲に使用されるように、文脈が明確に指示していない限り、冠詞の文法上の対象の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つ以上の要素を意味する。
【0031】
句「および/または」は、本明細書および特許請求の範囲に使用されるように、組み合わせた要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、一部の場合には組み合わさって存在し、他の場合には別々に存在する要素を意味するものと理解されたい。「および/または」と共に列挙される多数の要素は、同じ様式、すなわち、組み合わせた要素の「1つ以上」で構築されるべきである。他の要素は随意に、具体的に特定された要素との関連性にかかわらず、「および/または」節により具体的に特定される要素とは別に存在する場合がある。ゆえに、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含むこと(comprising)」などの制限がない言語と組み合わせて使用されると、一実施形態ではAのみ(随意に、B以外の要素を含む)を指し;別の実施形態ではBのみ(随意にA以外の要素を含む)を指し;また別の実施形態ではAとB両方(随意に他の要素を含む)を指す場合がある。
【0032】
本明細書および特許請求の範囲に使用されるように、「または」は、上記に定義されるような「および/または」と同じ意味を持つことを理解されたい。例えば、リスト中の項目を分けるとき、「または」や「および/または」は、包括的と解釈されることになり、すなわち、少なくとも1つだけでなく、要素の数またはリストの1つより多く、および随意にリストにない追加の項目も含むことになる。「~の1つだけ」、「~のちょうど1つ」、または、特許請求の範囲での使用時に、「~から成る」といった、明らかに対照的に示された用語のみが、要素の数またはリストのちょうど1つの要素を含むことを指すことになる。通常、用語「または」は、本明細書で使用されるように、「いずれか」、「~の1つ」、「~の1つだけ」、または「~のちょうど1つ」など、排他的な用語が先行するとき、排他的な代替物(すなわち、「1つまたはその他であるが、両方ではない」)としてしか解釈されない。
【0033】
特許請求の範囲のほか、明細書において、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「運ぶこと(carrying)」、「有すること(having)」、「含有すること(containing)」、「関与すること(involving)」、「保持すること(holding)」、「~で構成される(composed of)」などは、制限がない、すなわち、「~を含むがこれらに限定されない」を意味するものと理解されたい。移行句「~から成る(consisting of)」および「~から実質的に成る(consisting essentially of)」のみが、米国特許審査基準のセクション2111.03に明記されるように、それぞれ制限のある、または半分制限のある移行句である。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲に使用されるように、句「少なくとも1つの」は、1つ以上の要素のリストに関して、要素のリストにおける要素の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙されるあらゆる要素の少なくとも1つを含み、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを除外する必要はない。この定義はまた、要素が随意に、具体的に特定される要素の関連性にかかわらず、句「少なくとも1つの」が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素とは別に存在する場合があることを、可能にする。ゆえに、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同様に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、Bが存在しない(および随意に、Bとは別の要素を含む)、1より多くを随意に含む、少なくとも1つのA;別の実施形態において、Aが存在しない(および随意に、Aとは別の要素を含む)、1より多くを随意に含む、少なくとも1つのB;また他の実施形態において、1より多くを随意に含む少なくとも1つのA、および1より多くを随意に含む少なくとも1つのB(および随意に、他の要素を含む)などを指す場合がある。
【0035】
また、1より多くの工程または行動を含む本明細書に記載されるある方法において、方法の工程または行動の順序は必ずしも、文脈が示していない限り、方法の工程または行動が詳述される順序に限定されることはない。
【0036】
用語「併用療法」は、同時投与(2つ以上の治療薬の同時投与)、および異なる時間での投与(追加の治療薬の投与とは異なる時間での1つ以上の治療薬の投与)の両方を指す。いくつかの実施形態において、治療薬は、同時に、例えば有効な量である程度患者に提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物の1つ以上は、具体的には抗癌剤を含む、少なくとも1つの追加の生物活性薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、化合物の併用療法は、抗癌性活性を含む相乗活性をもたらす。
【0037】
用語「化合物」は、本明細書で使用されるように、本明細書に開示される特定の化学化合物を指し、文脈内で、互変異性体、位置異性体、幾何異性体、および適用可能な場合、光学異性体(エナンチオマー)および他の立体異性体(ジアステレオマー)を含む立体異性体のほか、適用可能な場合、それらの薬学的に許容可能な塩および誘導体(プロドラッグ形態を含む)を含む。文脈中での使用において、用語「化合物」は一般的に、単一の化合物を指すだけでなく、立体異性体、位置異性体、および/または光学異性体(ラセミ混合物を含む)などの他の化合物のほか、特定のエナンチオマー、または開示された化合物の鏡像異性的に豊富な混合物を含む場合がある。この用語はまた、化合物の投与と送達を容易にするよう修飾された化合物のプロドラッグ形態の文脈において、活性部位を指す。本化合物の説明に際して、とりわけ、同じものに関連する多数の置換基および変数が記載されることが、注意される。本明細書に記載される分子が、一般的に以下に記載されるような安定した化合物であることが、当業者により理解される。結合が示されると、二重結合と単結合の両方が、示された化合物の文脈内で表される。
【0038】
用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、および「処置(treatment)」などは、本明細書で使用されるように、本化合物が投与可能な患者に利益をもたらす任意の作用を指し、本化合物が結合するタンパク質を介して調節される任意の疾患状態または疾病の処置が含まれる。癌を含む疾患状態または疾病は、本開示に係る化合物を使用して処置することができ、上記に説明される。
【0039】
用語「抗腫瘍薬剤」は、抗癌剤を説明するために使用され、これは、癌を処置するために本開示の化合物と組み合わせることができる。このような薬剤として、例えば、エベロリムス、ナイアシンアミド、トラベクテジン、アブラキサン、TLK286、AV-299、DN-101、パゾパニブ、GSK690693、RTA744、ON0910.Na、AZD6244(ARRY-142886)、AMN-107、TKI-258、GSK461364、AZD1152、エンザスタウリン、バンデタニブ、ARQ-197、MK-0457、MLN8054、PHA-739358、R-763、AT-9263、FLT-3阻害剤、VEGFR阻害剤、EGFR TK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PIK-1モジュレーター、Bc1-2阻害剤、HDAC阻害剤、c-MET阻害剤、PARP阻害剤、Cdk阻害剤、EGFR TK阻害剤、IGFR-TK阻害剤、抗HGF抗体、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、mTORC1/2阻害剤、JAK/STAT阻害剤、チェックポイント-1または2阻害剤、フォーカルアドヒージョンキナーゼ阻害剤、Mapキナーゼ(mek)阻害剤、VEGF捕捉抗体、ペメトレキセド、エルロチニブ、ダサタニブ、ニロチニブ、デカタニブ、パニツムマブ、アムルビシン、オレゴボマブ、Lep-etu、ノラトレキセド、azd2171、バタブリン、オファツムマブ、ザノリムマブ、エドテカリン、テトランドリン、ルビテカン、テスミリフェン、オブリメルセン、チシリムマブ、イピリムマブ、ゴシポール、Bio111、131-I-TM-601、ALT-110、BIO140、CC8490、シレンジタイド、ジャイマテカン、IL13-PE38QQR、INO1001、IPdR1 KRX-0402、ルカントン、LY317615、ノイラジアブ(neuradiab)、ビテスパン、Rta744、Sdx102、タランパネル、アトラセンタン、Xr311、ロミデプシン、ADS-100380、スニチニブ、5-フルオロウラシル、ボリノスタット、エトポシド、ゲムシタビン、ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、ビンクリスチン、テモゾロミド、ZK-304709、セリシクリブ、PD0325901、AZD-6244、カペシタビン、L-グルタミン酸、N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-、ジナトリウム塩、ヘプタハイドレード、カンプトテシン、PEG標識イリノテカン、タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾール、DES(ジエチルスチルベストロール)、エストラジオール、エストロゲン、抱合卵胞ホルモン、ベバシズマブ、IMC-1C11、CHIR-258);3-[5-(メチルスルホニルピペラジンメチル)-インドリル-キノロン、バタラニブ、AG-013736、AVE-0005、酢酸ゴセレリン、酢酸レウプロリド、パモ酸トリペレリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸メゲストロール、CP-724714;TAK-165、HKI-272、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、ABX-EGF抗体、アービタックス、EKB-569、PKI-166、GW-572016、ロナファルニブ(Ionafarnib)、BMS-214662、ティピファルニブ;アミホスチン、NVP-LAQ824、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド、バルプロ酸、トリコスタチンA、FK-228、SU11248、ソラフェニブ、KRN951、アミノグルテチミド、アムサクリン(arnsacrine)、アナグレリド、L-アスパラギナーゼ、カルメット-ゲラン杆菌(BCG)ワクチン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、エピルビシン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、グリベック、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、レウプロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、マイトテイン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレチノイン、ビンデシン、13-シス-レチン酸、フェニルアラニンマスタード、ウラシルマスタード、エストラムスチン、アルトレタミン、フロクスウリジン、5-デオオキシウリジン、サイトシンアラビノサイド、6-メルカプトプリン(mecaptopurine)、デオキシコホルマイシン、カルシトリオール、バルルビシン、ミトラマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、ラゾキシン、マリマスタット、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンギオスタチン、ビタキシン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、スピロノラクトン、フィナステリド、シメチジン(cimitidine)、トラスツズマブ、デニロイキンディフティトックス、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ(bortezimib)、パクリタキセル、クレモホールを含まないパクリタキセル、ドセタセル、エピチロンB、BMS-247550、BMS-310705、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ピペンドキシフェン、ERA-923、アルゾキシフェン、フルベストラント、アコルビフェン、ラゾホキシフェン、イドキシフェン、TSE-424、HMR-3339、ZK186619、トポテカン、PTK787/ZK 222584、VX-745、PD184352、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、テムシロリムス、AP-23573、RAD001、ABT-578、BC-210、LY294002、LY292223、LY292696、LY293684、LY293646、ウォルトマンニン、ZM336372、L-779,450、PEGフィルグラスチム、ダーベポエチン、エリスロポエチン、果粒球コロニー刺激因子、ゾレンドロネート、プレドニゾン、セツキシマブ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒストレリン、ペグ化インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2a、ペグ化インターフェロンα-2b、インターフェロンα-2b、アザシチジン、PEG-L-アスパラギナーゼ、レナリドミド、ゲムツズマブ、ヒドロコルチゾン、インターロイキン-11、デクスラゾキサン、アレムツズマブ、全トランス型レチノイン酸、ケトコナゾール、インターロイキン2、メゲストロール、免疫グロブリン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、イブリツモマブチウキセタン、アンドロゲン、デシタビン、ヘキサメチルメラミン、ベキサロテン、トシツモマブ、三酸化ヒ素、コルチゾン、エディトロネート、マイトテイン、シクロスポリン、リポソームダウノルビシン、エドウィナ-アスパラギナーゼ、ストロンチウム89、カソピタント、ネツピタント、NK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン、アプレピタント、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メトクロプラミド、ロラゼパム、アルプラゾラム、ハロペリドール、ドロペリドール、ドロナビノール、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プロクロルペラジン、グラニセトロン、オンダンセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、ペグフィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファ、ダーベポエチンアルファ、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、本明細書全体にわたり、適用可能な場合、本明細書に記載される化合物の1つ以上の塩形態を説明するために使用され、前記化合物は、化合物の溶解および生物学的利用能を促進するために、患者の胃腸管の胃液における化合物の溶解度を増大させるために提供される。薬学的に許容可能な塩は、適用可能な場合、薬学的に許容可能な無機または有機の塩基および酸に由来する塩を含む。適切な塩は、カリウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、およびアンモニウム塩などのアルカリ土類金属に由来する塩を含む。いくつかの実施形態において、ナトリウムおよびカリウム塩は、リン酸塩の適切な中和塩である。
【0041】
用語「薬学的に許容可能な誘導体」は、本明細書全体にわたり、(エステル、アミド、他のプロドラッグ基などの)任意の薬学的に許容可能なプロドラッグwp説明するために使用され、これは、患者に投与されると、本化合物またはその活性代謝物を直接または間接的に提供する。
【0042】
用語「有効な」は、意図した用途の状況に使用されると意図した結果を達成する、化合物、組成物、または成分の量を説明するために使用される。用語「有効な」は、本出願に記載または使用される、他の用語「有効な量」または「有効な濃度」すべてを包含する。
【0043】
用語「治療上有効な量」は、本明細書に使用されるように、そのような処置の必要性とする哺乳動物に投与されると、処置を達成するのに十分な量を指す。
【0044】
用語「患者」または「被験体」は、本明細書全体にわたり、本開示に係る組成物を用いた、予防処置を含む処置が提要される動物、例えばヒト、または飼育動物を説明するために使用される。ヒト患者などの特定の動物に特異的な感染症、疾病、または疾患状態の処置のために、用語「患者」は、イヌやネコなどの飼育動物、またはウマ、ウシ、ヒツジなどの家畜を含む、特定の動物を指す。一般的に、本開示において、用語「患者」は、用語の使用の文脈において明記または示唆されていない限り、ヒト患者を指す。ET-1およびET-3などのエンドセリンによるETBRの活性化の結果、黒色腫性の侵襲および転移を促進する様々な分子事象が生じる。任意の特定の理論に縛られないが、仮説として、大部分の黒色腫はETBRを発現するが、これらの部分集合も、ETBR活性化因子ET-1および/またはET-3を発現する。それゆえ、この部分集合はおそらく、生存率、侵襲の可能性、および転移の可能性に対してETBR活性化に依存する可能性が高い。ゆえに、患者のこの部分集合はおそらく、ETBR遮断に反応する可能性が高い。さらに、患者のこの部分集合は、免疫療法に反応に可能性は最も低い。
【0045】
エンドセリンB受容体(ETBR)経路(図1)は、黒色腫の転移性拡散の重要な役割を果たすので、治療的介入の標的となる。エンドセリンB受容体は、7つの膜貫通Gタンパク質結合受容体(GPCR)である。これは、標準の黒色素細胞において非常に低レベルで発現されるが、黒色腫の発達と進行中にアップレギュレートされる。RAFおよびMEKキナーゼ、すなわち現行の黒色腫性薬物標的は。重水素化ETBRにより活性化される。特定の重水素化されたものが有益であり、なぜなら、非重水素化のものと比較して、1つ以上の医薬品特性(例えば効能、溶解度)が改善しているからである。
【0046】
エンドセリン-1(ET-1)(およびエンドセリン-3(示されず))は、ETBRを活性化するリガンドである(図2)。ETBRのET-1活性化により、黒色腫細胞は増殖し、転移し、それ自体の血液供給源を生成する。研究により、大多数の色素性侵襲性黒色腫および転移性黒色腫がET-1を生成することが示されている(図3)。
【0047】
重水素化化合物(特定)
【0048】
本明細書には、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば本明細書に記載されるようなBQ-788の重水素化形態が開示される。いくつかの実施形態において、本明細書は、少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば、本明細書に記載されるようなBQ-788の重水素化形態、および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書は、有効な量の少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば、本明細書に記載されるようなBQ-788の重水素化形態、および薬学的に許容可能な担体含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような医薬組成物は、1回以上、例えば、1日に、1週間に、または1か月に1回以上投与するために構成された、単位剤形の中にある場合がある。
【0049】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、以下の式(1)の化合物であり:
【0050】
【化13】
式中、
nは、0~5の整数であり;
mは、0~3からの整数であり;
Xは、正に荷電された対イオンであり;
とRは独立して、-H、-D、-CH、-CHD、-CHD、または-CDであり;
2a、R2b、R、R、およびRは独立して、-CH、-CHD、-CHD、または-CDであり;および
、R、またはRのうち少なくとも1つは重水素を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、式(1)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、1-8の重水素を含む。特定の実施形態において、式(1)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、1、2、または3つの重水素を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、以下の式(2)の化合物である:
【0053】
【化14】
【0054】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、以下の式(3)の化合物である:
【0055】
【化15】
【0056】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、以下の式(4)の化合物である:
【0057】
【化16】
【0058】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、以下の式(5)の化合物である:
【0059】
【化17】
【0060】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、以下の式(6)の化合物である:
【0061】
【化18】
【0062】
式(6)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストのいくつかの実施形態において、nは0または1である。
【0063】
式(6)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストのいくつかの実施形態において、nは1であり、Rは-Dである。
【0064】
式(6)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストのいくつかの実施形態において、nは1であり、Rは-Dであり;およびR2aとR2bは-CHである。
【0065】
式(6)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストのいくつかの実施形態において、nは0であり、Rは-Hであり;R2aは-CHであり、R2bは-CHDである。
【0066】
式(6)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストのいくつかの実施形態において、nは0であり、Rは-Hであり;R2aは-CHDであり、R2bは-CHである。
【0067】
式(6)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストのいくつかの実施形態において、nは0であり、Rは-Hであり;およびR2aとR2bは-CHDである。
【0068】
式(6)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストのいくつかの実施形態において、nは1であり、Rは-Dであり;およびR2aとR2bは-CHDである。
【0069】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、そのアナログ、誘導体、多形体、プロドラッグ、および塩を含み、そしてフッ素化アナログを含む、BQ-788-A、BQ-788-B、BQ-788-C、またはそれらの組み合わせのうち、少なくとも1つである。例えば、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、BQ-788-A、BQ-788-B、またはBQ-788-Cのフッ素化アナログの場合がある。
【0070】
いくつかの実施形態において、BQ-788-Aは、以下に表される特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト:
【0071】
【化19】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩である。
【0072】
いくつかの実施形態において、BQ-788-Bは、以下に表される特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト:
【0073】
【化20】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩である。
【0074】
いくつかの実施形態において、BQ-788-Cは、以下に表される特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト:
【0075】
【化21】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩である。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物は、式(7)の化合物:
【0077】
【化22】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
、R、R、R、またはRの各々は独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、随意に置換されたC-Cアルキル、随意に置換されたC-Cアルケニル、随意に置換されたC-Cアルキニル、随意に置換されたC-Cシクロアルキル、随意に置換されたC-Cアルコキシ、随意に置換されたC-Cハロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換されたヘテロアリールであり、ここで随意に、ピペリジニル環中の炭素の1つ以上は、O、N、またはSから選択されるヘテロ原子である場合があり、または、ピペリジニル環は、1つ以上の二重結合を含む場合があり;
は、随意に置換されたC-Cアルキル、随意に置換されたC-Cアルケニル、随意に置換されたC-Cアルキニル、随意に置換されたC-Cシクロアルキル、随意に置換されたC-Cアルコキシ、随意に置換されたC-Cハロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換されたヘテロアリールであり、ここでRは随意に重水素を含み;
は、随意に置換されたシクロアルキル、随意に置換されたヘテロシクロアルキル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたヘテロアリール、随意に置換された多環式環系、随意に置換された二環式、随意に置換された複素二環式(heterobycyclic)であり、ここでRは随意に重水素を含み;
とRは独立して、随意に置換されたC-Cアルキル、随意に置換されたC-Cアルケニル、随意に置換されたC-Cアルキニル、随意に置換されたC-Cシクロアルキル、随意に置換されたC-Cアルコキシ、随意に置換されたC-Cハロアルキル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたヘテロアリール、または-COOR’であり、またはRとRは、一体となることで、随意に置換されたシクロアルキル、随意に置換されたシクロアルキルヘテロシクロアルキル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたヘテロアリール、または随意に置換された多環式環系を形成でき、ここでRまたはRは各々随意に重水素を含み;
R’は水素、ヒドロキシ、またはC-Cアルキルであり;および
、R、R、R、R、R、R、R、またはRのうち少なくとも1つは、重水素である。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物は、式(8)の化合物:
【0079】
【化23】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
、R、またはRの各々は独立して、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここでRは随意に重水素を含み;
は、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、あるいは置換または非置換の多環式環系であり、ここでRは随意に重水素を含み;
とRは独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、または-COOR’であり、またはRとRは、一体となることで、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のシクロアルキルヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、あるいは置換または非置換の多環式環系を形成でき、RまたはRは各々随意に重水素を含み;
R’は水素、ヒドロキシ、またはC-Cアルキルであり;および
、R、R、R、R、R、R、R、またはRのうち少なくとも1つは、重水素である。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物は、式(9)の化合物:
【0081】
【化24】
その立体異性体、または薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
、R、R、R、またはRの各々は独立して、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここでRは随意に重水素を含み;
とRは独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキルであり、RとRは独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、または-COOR’であり、またはRとRは、一体となることで、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のシクロアルキルヘテロシクロアルキル、置換非置換のアリール、置換非置換のヘテロアリール、あるいは置換または非置換の多環式環系を形成でき、ここでRまたはRは各々随意に重水素を含み;
10とR10’は独立して、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
nは、0~4の整数であり;および
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、またはR10’のうち少なくとも1つは、重水素である。
【0082】
医薬組成物
【0083】
本明細書には、少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば、本明細書に記載されるようなBQ-788の重水素化形態、および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物が開示される。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書中の組成物は、任意の所望の担体または賦形剤を含む単位剤形の中で製剤され、かつ、任意の所望の経路、例えば、経口、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、非経口、鼻腔内、頭蓋内を介して投与するために構成される。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような組成物は、患者におけるETBR関連の癌を処置するのに有用である。いくつかの実施形態において、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、癌は、乳癌、黒色腫、SCC、膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。
【0086】
いくつかの実施形態において、組成物は、約0.1mg~約500mg(例えば、約10mg~約100mg)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストの用量、および/または、約0.01g/mL~約1000mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約5mg/mL)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストの濃度を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体を使用して従来の様式で製剤され、制御放出製剤において投与することができる。これら医薬組成物に使用できる薬学的に許容可能な担体として、限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、担体としてのダイズ油、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、硫酸プロラミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダル・シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロースポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態において、組成物は、ダイズ油、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒドロゲル、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含む。本明細書に記載される実施形態のいずれかは、上述のように、単一成分の油相製剤の場合があり、各有効成分は、本明細書に記載される用量または濃度の何れかの場合がある。単一成分の油相は、ダイズ油などの固定油の場合がある。例えば、前記製剤は、1mLの単一成分の油中に約0.1mg~約5.0mgの各有効成分(すなわち、単一成分の油中に約0.5mg/mL、約1mg/mL、約1.5mg/mLの各有効成分)を含む。単一成分の油相製剤は、約10mLの単一成分の油剤に各有効成分(例えば、約1mg~約50mgの各有効成分)を添加することによって調製することができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書中の医薬組成物は、DMSO溶液に、例えば、約5%~約100%(例えば、約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約30%~約95%、約45%~約95%、約75%~約95%、約30%~約90%、約45%~約90%、約75%~約90%、約30%~約85%、約45%~約85%、または約75%~約85%)のDMSOを含む。例えば、医薬組成物は、1mLのDMSO中に約0.1mg~約5.0mgの各有効成分(すなわち、DMSO中に約0.5mg/mL、約1mg/mL、または約1.5mg/mLの各有効成分)を含む。DMSO医薬組成物は、約10mLのDMSO溶液に各有効成分(例えば、約1mg~約50mgの各有効成分)を添加することによって調製することができる。例えば、DMSOは、約5%~約100%のDMSO、約25%~約100%のDMSO、約50%~約100%のDMSO、約75%~約100%のDMSO、約5%~約75%のDMSO、約25%~約75%のDMSO、約50%~約75%のDMSO、約5%~約50%のDMSO、約25%~約50%のDMSO、または約5%~約25%のDMSOを含む、DMSO溶液である。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書は、生体適合性の送達システムにおいて、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト(例えばBQ-788、BQ-017、A192621、それらの重水素化またはフッ素化アナログ、またはそれらの組み合わせ)およびETARアンタゴニスト(例えばBQ123)の均一なの分散体を含む、制御放出物質または筋肉内投与製剤を提供し、それにより、投与後に重水素化ETBRおよびETARアンタゴニストは、製剤から体循環へと、ゆっくりかつ同時に放出される。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような医薬組成物は、少なくとも1つの生体適合性ポリマーを含む制御放出送達システムへと製剤される。いくつかの実施形態において、活性化合物は、インプラント、ヒドロゲル、熱感応性ヒドロゲル、およびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤などの、化合物を身体からの迅速な排除から保護する担体と共に、調製される。エチレン酢酸ビニル、アクリレート、ポリカルボン酸、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生物分解性で生体適合性のポリマーが使用される。いくつかの実施形態において、生体適合性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコシド)、ポリ(ラクチド-グリコシド共重合体)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(シュウ酸アルキレン)、生物分解性ポリウレタン、混合物、またはそれらのコポリマーのうち少なくとも1つである。
【0092】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、リポソームを含む、またはリポソームである。例えば、医薬組成物または製剤は、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを含む内部体積を持つリポソームを含む場合がある。いくつかの実施形態において、リポソームは、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストの制御放出、例えば急速放出、持続放出、またはそれらの組み合わせを有効にするように構成される。
【0093】
いくつかの実施形態において、リポソームは、医薬組成物の制御放出を有効にするように構成される。いくつかの実施形態において、リポソームは、医薬組成物の急速放出を有効にするように構成される。他の実施形態において、リポソームは、医薬組成物の持続放出を有効にするように構成または製剤される。いくつかの実施形態において、リポソームは、医薬組成物の急速放出および持続放出の両方をもたらすように構成される。
【0094】
いくつかの実施形態において、リポソームは、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、カスパーゼ-8阻害剤、またはそれらの組み合わせの制御放出を有効にするように構成される。いくつかの実施形態において、リポソームは、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、カスパーゼ-8阻害剤、またはそれらの組み合わせの急速放出を有効にするように構成される。他の実施形態において、リポソームは、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、カスパーゼ-8阻害剤、またはそれらの組み合わせの持続放出を有効にするように構成または製剤される。いくつかの実施形態において、リポソームは、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、カスパーゼ-8阻害剤、またはそれらの組み合わせの急速放出と制御放出の両方をもたらすように構成される。
【0095】
いくつかの実施形態において、リポソーム懸濁液は、薬学的に容認可能な担体である。例えば、リポソーム製剤は、無機溶媒中で適切な脂質(ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルフォスファチジルコリン、およびコレステロールなど)を溶解することにより調製することができ、その後、前記溶媒を蒸発することで、容器の表面に乾燥した液体の薄い膜が残る。次いで、活性化合物の水溶液を容器に入れる。そして、容器を手で回転させることで、容器の側面から脂質材料を取り出し、脂質凝集物を分散させ、それによりリポソーム懸濁液が形成される。
【0096】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、カスパーゼ-8阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む内部体積を持つリポソーム、および、有効な量のETARアンタゴニスト、抗PD1抗体、bRAF阻害剤、ナイアシンアミド、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、リポソームは、中性脂肪、塩基性(正味の正電荷)脂質、酸性(正味の負電荷)脂質、コレステロール、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、リポソームは、高分子成分をさらに含む。いくつかの実施形態において、リポソームの内部体積は、少なくとも部分的に水性であり、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書は、リポソーム送達システム中の本明細書に記載されるような医薬組成物、例えば、ジパルミトイルPE(DPPE)などのホスファチジルエタノールアミン(PE)、卵PC(EPC)またはSPCなどの部分不飽和ホスファチジルコリン(PC)、HSPCなどの完全不飽和PC、PG、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、またはそれらの組み合わせを提供する。いくつかの実施形態において、リン脂質は、部分不飽和PG、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、コレステロール、DSPE-PEG2000、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、リポソーム送達システムは、制御放出システム、例えば、急速放出、持続放出、急速および持続放出、徐放、遅延放出、およびそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような医薬組成物は、薬学的に許容可能な塩、具体的には、本明細書に記載されるような化合物の酸付加塩または塩基付加塩を含む。この態様に従い、前述の有用な塩基化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用される酸は、非毒性の酸付加塩を形成する酸、すなわち、とりわけ塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸、酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3ナフトエート]塩などの、薬学的に許容可能な陰イオンを含む塩である。薬学的に許容可能な塩基付加塩も、本開示に係る化合物または誘導体の薬学的に許容可能な塩形態を産生するために使用することができる。本質的に酸性である本化合物の薬学的に許容可能な塩基性塩を調製するための試薬として使用される化学塩基は、そのような化合物と合わせて非毒性塩基性塩を形成する塩基である。そのような非毒性塩基性塩として、限定されないが、とりわけアルカリ金属カチオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)やアルカリ土類金属カチオン(例えばカルシウム、亜鉛、およびマグネシウム)などの薬理学的に許容可能な陽イオン、N-メチルグルカミン-(メグルミン)などのアンモニウムまたは水溶性アミン付加塩、および薬学的に許容可能な有機アミンの低級アルカノールアンモニウムなどの塩基性塩に由来するものが挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態において、経口組成物は、不活性希釈剤または食用の担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入され、または錠剤へと圧縮される場合がある。経口治療投与のために、活性化合物またはそのプロドラッグ誘導体を賦形剤に組み込み、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。薬学的に適合可能な結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチなど等は、以下の成分:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、またはトウモロコシデンプンなどの分散剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料などの香料のいずれか、または同様の性質を持つ化合物を含むことができる。投薬単位形態がカプセルの場合、上記のような物質に加えて、脂肪油などの液体担体を含めることができる。加えて、投薬単位形態は、投薬ユニットの物理形態を修飾する様々な他の物質、例えば、糖、セラック、または腸溶剤のコーティングを含むことができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、活性化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハ、チューインガムなどの成分として投与される。シロップは、活性化合物に加えて、甘味料としてスクロース、ある保存料、色素、着色料、および着香料を含む場合がある。
【0101】
いくつかの実施形態において、非経口、皮内、皮下、静脈内、筋肉内、または局所への適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:注射用蒸留水、食塩水、固定油(例えばダイズ油)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールあるいはメチルパラベンなどの抗菌物質;アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝液、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧の調整用の薬剤を含む。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックで作られたアンプル、使い捨て注射器、または複数回投与用のバイアルに入れることができる。いくつかの実施形態において、静脈内投与のための担体は、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0102】
併用療法
【0103】
本明細書には、同時にまたは別々に投与される、単一剤形または別個の剤形にある、併用療法のための医薬組成物が開示され、該医薬組成物は、本明細書に記載されるような特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1の抗体または抗PD-L1抗体)である。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、追加の抗腫瘍薬剤よりも2、3、4、または5倍頻繁に投与され、例えば、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは1-3週間(例えば、約2-3週間、または約21日)の間に3回投与され、一方で追加の抗腫瘍薬剤は1-3週間(例えば、約2-3週間、または約21日)の間に1回投与される。
【0104】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、医薬組成物が以下:構成成分のみを投与することで得られる追加の治療効果よりも大きな治療効果(すなわち、より効果的)、高投与量の構成成分のみの投与により達成されるよりも大きな治療効果、構成成分のみの投与により観察されるものに比べて有害事象や副作用の減少を伴う同等以上の治療効果(すなわち、治療濃度域の改善)、効果の持続時間の上昇、構成成分の1つまたは両方の低投与量での同等以上の治療効果、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを達成するという点で、本明細書に記載されるような相乗効果を実証する。
【0105】
いくつかの実施形態において、本明細書は、少なくとも1つの追加の抗癌剤または抗腫瘍薬剤と共に投与したときに有効な量で本明細書に記載されるような特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを含む第1の組成物;および本明細書に記載されるような有効量の少なくとも1つの追加の抗癌剤または抗腫瘍薬剤を含む第2の組成物を含む、医薬組成物を提供する。
【0106】
いくつかの実施形態において、本明細書は、少なくとも1つのETBRアンタゴニスト、例えば特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および少なくとも1つの追加の抗腫瘍治療薬を含む組み合わせを提供する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗腫瘍薬剤は、bRAF阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、カスパーゼ-8阻害剤、ETARアンタゴニスト、ナイアシンアミド、化学療法剤、例えばタキサン、キナーゼ阻害剤、または他の受容体アンタゴニストなど、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、有効な量(例えば相乗的に有効な量)の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、bRaf阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、カスパーゼ-8阻害剤、ETARアンタゴニスト、ナイアシンアミド、化学療法剤、例えばタキサン、キナーゼ阻害剤、他の受容体アンタゴニストなど、またはそれらの組み合わせのうち、少なくとも2つを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストおよび少なくとも1つの追加の抗腫瘍治療薬は、別個の医薬組成物に含まれる。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストおよび少なくとも1つの追加の抗腫瘍治療薬は、同じ医薬組成物に含まれる。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書は、癌を処置するのに有効な量の本明細書に記載されるような特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、抗腫瘍薬剤、および薬学的に許容可能な賦形剤または担体を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、重水素化BQ-788、BQ-017、A192621、BQ-788-A、BQ-788-B、またはBQ-788-C、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書は、癌を処置するのに有効な量の本明細書に記載されるような特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、量は、少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤、および薬学的に許容可能な賦形剤または担体と共に投与したときに癌を処置するのに有効な量である。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、重水素化BQ-788、BQ-017、A192621、BQ-788-A、BQ-788-B、またはBQ-788-C、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書は、同じまたは別個の剤形に、有効な量の少なくとも1つのETBRアンタゴニスト、および有効な量の少なくとも1つの抗腫瘍薬剤を含む、治療上の組み合わせを提供する。いくつかの実施形態において、組み合わせは、相乗的に有効な量の少なくとも1つのETBRアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、相乗的に有効な量の少なくとも1つの抗腫瘍薬剤を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、薬学的に許容可能な担体を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせまたは製剤は、1つ以上の単位剤形に含まれる。さらなる実施形態において、組み合わせは、別個の単位剤形、例えば、少なくとも1つのETBRアンタゴニストを含む第1の容器、および少なくとも1つの抗腫瘍薬剤を含む第2の容器の中に含まれる。いくつかの実施形態において、ETBRアンタゴニストは、本明細書に記載されるような特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストである。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書は、以下:(a)有効な量の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む、第1の組成物;および(b)有効な量の少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む、第2組成物を投与する工程を含む併用療法を提供し、ここで、投与する工程は、相乗効果の癌抗活性を実証する。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、本明細書に記載されるような重水素化BQ-788である。
【0112】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗腫瘍薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、セミプリマブ、またはそれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、MDX-1105、アベルマブ、デュルバルマブ、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0113】
いくつかの実施形態において、bRAF阻害剤は、当業者に既知の、または当業者に知られるようになる、ダブラフェニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、またはその他任意のbRAF阻害剤のうち少なくとも1つである。
【0114】
いくつかの実施形態において、カスパーゼ-8は、ETBRの下流作用因子であり、カスパーゼ-8阻害剤は、ETBR活性化の結果として誘発される侵襲および転移を促進する分子の事象を遮断する。そのため、カスパーゼ-8阻害剤は、カスパーゼ-8アンタゴニスト、またはETBRシグナル伝達のアンタゴニスト/阻害剤として分類することができる。いくつかの実施形態において、カスパーゼ-8阻害ペプチドは、Ac-AAVALLPAVLLAALAPIETD-CHOの配列を有し、これはEMD Millipore(Billerica, MA 01821, USA)から市販で入手可能である。
【0115】
いくつかの実施形態において、ETBRの生理学的な役割は、循環から過剰なレベルのエンドセリン-1(ET-1)を取り除くことである。どの特定の理論にも縛られるものではないが、仮説として、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを投与することで、ET-1の除去を防ぎ、血清ET-1レベルを上昇させる。ET-1の血清濃度の上昇は、エンドセリンA受容体(ETAR)の活性化による様々な副作用に関連付けられ、高血圧症、肺高血圧症、および腎臓血管収縮が挙げられる。いくつかの実施形態において、ETAR活性化の有害反応を最小限するために、本明細書は、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストとETARアンタゴニストとの併用療法(単一剤形、またはほぼ同時に投与される別個の剤形における)のための医薬組成物と方法を提供する。ETARアンタゴニストは、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストの有益な効果を増強しつつ、有害事象または副作用を最小限にするために、相乗的に作用する。また驚くべきことに、有効な量(例えば相乗的に有効な量)のナイアシンアミドは、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストから、体重減少などの有害事象または副作用を相乗的に最小限にすることに有効であった。本明細書に記載されるような製剤は、患者の癌、例えば乳癌、黒色腫、SCC、膠芽腫、固形腫瘍、またはそれらの組み合わせの処置に有用である。
【0116】
いくつかの実施形態において、ETARアンタゴニストはBQ123である。BQ123(2-[(3R,6R,9S,12R,15S)-6-(1H-インドール-3-イルメチル)-9-(2-メチルプロピル)-2,5,8,11,14-ペンタオキソ-12-プロパン-2-イル-1,4,7,10,13-ペントアザビシクロ[13.3.0]オクタデカン-3-イル]酢酸、またはシクロ(D-Trp-D-Asp-Pro-D-Val-Leu)は、選択的なETARアンタゴニストである。(引用により本明細書に組み込まれる、Ishikawa et al., (1992). “Cyclic pentapeptide endothelin antagonists with high ETA selectivity. Potency- and solubility-enhancing modifications.” Journal of Medicinal Chemistry 35 (11): 1239-42)。BQ123は、例えばABI Chem(AC1L9EDH)から市販で入手可能である。
【0117】
いくつかの実施形態において、本明細書中の医薬組成物は、有効な量のETARアンタゴニストと組み合わせた、有効な量の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および薬学的に許容可能な担体を含む。いくつかの実施形態において、ETARの有効な量は、相乗的に有効な量である。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、そのアナログ、誘導体、多形体、プロドラッグ、および塩を含む、BQ-788、A192621、またはそれらの組み合わせの重水素化形態のうち、少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、ETARアンタゴニストは、そのアナログ、誘導体、多形体、プロドラッグ、および塩を含む、BQ123である。
【0118】
いくつかの実施形態において、追加の抗腫瘍薬剤は、apx005m、イピリムマブ、ベムラフェニブ、ダカバジン、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ナイアシンアミド、インターロイキン2、DEDN6526、タリモジェンラヘルパレプベク、腫瘍浸潤リンパ球、抗血管新生薬剤、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、α・β・γインターフェロン、イリノテカン、ドセタセル、パクリタキセル、トポテカン、アトラセンタン、テゾセンタン、ボセンタン、シタキセンタン、エンラセンタン、ジボテンタン、Ro468443、TBC10950、TBC10894、A192621、A308165、SB209670、SB17242、A182086(s)-Lu302872、J-104132、TAK-044、サラフォトキシン56c、IRL2500、RES7011、アセラシン(Aselacins)A、B、およびC、Ro470203、Ro462005、スルファメトキサゾール、コキンミシンI、II、およびIII、L749329、L571281、L754142、J104132、CGS27830、PD142893、PD143296、PD145065、PD156252、PD159020、PD160672、PD160874、TM-ET-1、IRL3630、Ro485695、L75037、LU224332、PD142893、LU302872、PD145065、Ro610612、SB217242、またはそれらの組み合わせのうち、少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、追加の抗腫瘍薬剤は、RAFキナーゼアンタゴニスト、MEKアンタゴニスト、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、抗腫瘍薬剤は、IDO阻害剤、HDAC阻害剤、DNMT阻害剤、アデノシン受容体阻害剤、CXCR4/CXCL12軸阻害剤(axis inhibitor)、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、DNMT阻害剤はビダザ(vidaza)である。いくつかの実施形態において、HDAC阻害剤は、エンチノスタット、モセチノスタット、イノスタット、ロミデプシン、ACY-241、ファリダク(farydak)、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、アデノシン受容体阻害剤は、CPI-444(V81444)、PBF-509、MEDI9447、MK-3814、AZD4635、BMS-986179、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、CXCR4/CXCL12軸阻害剤は、ウロクプルマブ、BL-8040、PF-06747143、POL6326、プレリキサホル、ALX-0651、LY2510924、AMD11070、X4P-001、Q122、USL311、ブリキサホル ヒロブロミド、CX-01、CTCE 9908、GMI-1359、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、抗腫瘍薬剤は、サリドマイド、マリマスタット、COL-3、BMS275291、スクアラミン、2-ME、SU6668、ネオバスタット、Medi522、EMD121974、CAI、セレコキシブ、インターロイキン-12、IM862、TNP470、アバスチン、グリベック、ハーセプチン、またはそれらの組み合わせから選択される、抗血管新生薬剤である。いくつかの実施形態において、抗腫瘍薬剤は、細胞CDK4/6サイクル阻害剤、例えばリボシクリブ、パルボシクリブ、ミルシクリブ、ボルシクリブ、アベマシクリブ、フラボピリドール、またはそれらの組み合わせである。
【0119】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストの用量は、約0.1μg~約500mg(例えば、約100μg~約4000μg)であり、および/または、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストの濃度は、組成物の約0.01μg/mL~約1000mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約5mg/mL)である。
【0120】
いくつかの実施形態において、ETARアンタゴニストの用量は、約0.1μg~約500mg(例えば、約100μg~約4000μg)であり、および/または、ETARアンタゴニストの濃度は、組成物の約0.01μg/mL~約1000mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約5mg/mL)である。
【0121】
いくつかの実施形態において、抗PD1抗体の用量は、約0.1μg~約500mg(例えば、約100μg~約4000μg)であり、および/または、抗PD1抗体の濃度は、組成物の約0.01μg/mL~約1000mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約5mg/mL)である。
【0122】
いくつかの実施形態において、bRAF阻害剤の用量は、約0.1μg~約500mg(例えば、約100μg~約4000μg)であり、および/または、bRAF阻害剤の濃度は、組成物の約0.01μg/mL~約1000mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約5mg/mL)である。
【0123】
いくつかの実施形態において、ナイアシンアミドの用量は、約0.1μg~約500mg(例えば、約100μg~約4000μg)であり、および/または、ナイアシンアミドの濃度は、組成物の約0.01μg/mL~約1000mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約5mg/mL)である。
【0124】
いくつかの実施形態において、カスパーゼ-8阻害剤の用量は、約0.1μg~約500mg(例えば、約100μg~約4000μgまたは約1μg~約4000μg)であり、および/または、カスパーゼ-8阻害剤の濃度は、組成物の約0.01μg/mL~約1000mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約5mg/mL)である。
【0125】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および/または少なくとも1つの抗腫瘍薬剤の濃度は、独立して、約0.01μg/mL~約1000mg/mL、約0.01μg/mL~約750mg/mL、約0.01μg/mL~約500mg/mL、約0.01μg/mL~約300mg/mL、約0.01μg/mL~約150mg/mL、約0.01μg/mL~約100mg/mL、約0.01μg/mL~約50mg/mL、約0.01μg/mL~約25mg/mL、約0.01μg/mL~約10mg/mL、約0.01μg/mL~約1.0mg/mL、約0.01μg/mL~約0.1 μg/mL, 約0.1μg/mL~約750mg/mL、約0.1μg/mL~約500mg/mL、約0.1μg/mL~約300mg/mL、約0.1μg/mL~約150mg/mL、約0.1μg/mL~約100mg/mL、約0.1μg/mL~約50mg/mL、約0.1μg/mL~約25mg/mL、約0.1μg/mL~約10mg/mL、約0.1μg/mL~約1.0mg/mL、約1.0μg/mL~約750mg/mL、約1.0μg/mL~約500mg/mL、約1.0μg/mL~約300mg/mL、約1.0μg/mL~約150mg/mL、約1.0μg/mL~約100mg/mL、約1.0μg/mL~約50mg/mL、約1.0μg/mL~約25mg/mL、約1.0μg/mL~約10mg/mL、約10μg/mL~約750mg/mL、約10μg/mL~約500mg/mL、約10μg/mL~約300mg/mL、約10μg/mL~約150mg/mL、約10μg/mL~約100mg/mL、約10μg/mL~約50mg/mL、約10μg/mL~約25mg/mL、約25μg/mL~約750mg/mL、約25μg/mL~約500mg/mL、約25μg/mL~約300mg/mL、約25μg/mL~約150mg/mL、約25μg/mL~約100mg/mL、約25μg/mL~約50mg/mL、約50μg/mL~約750mg/mL、約50μg/mL~約500mg/mL、約50μg/mL~約300mg/mL、約50μg/mL~約150mg/mL、約50μg/mL~約100mg/mL、約100μg/mL~約750mg/mL、約100μg/mL~約500mg/mL、約100μg/mL~約300mg/mL、約100μg/mL~約150mg/mL、約150μg/mL~約750mg/mL、約150μg/mL~約500mg/mL、約150μg/mL~約300mg/mL、約300μg/mL~約750mg/mL、約300μg/mL~約500mg/mL、または約500μg/mL~約750mg/mLの場合がある。
【0126】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および/または少なくとも1つの抗腫瘍薬剤の用量は、独立して、約0.1μg~約5000μg、約0.1μg~約4500μg、約0.1μg~約4000μg、約0.1μg~約3500μg、約0.1μg~約3000μg、約0.1μg~約2500μg、約0.1μg~約2000μg、約0.1μg~約1500μg、約0.1μg~約1000μg、約0.1μg~約500μg、約1.0μg~約5000μg、約1.0μg~約4500μg、約1.0μg~約4000μg、約1.0μg~約3500μg、約1.0μg~約3000μg、約1.0μg~約2500μg、約1.0μg~約2000μg、約1.0μg~約1500μg、約1.0 g to 約1000μg、約1.0μg~約500μg、約100μg~約5000μg、約100μg~約4500μg、約100μg~約4000μg、約100μg~約3500μg、約100μg~約3000μg、約100μg~約2500μg、約100μg~約2000μg、約100μg~約1500μg、約100μg~約1000μg、約100μg~約500μg、約250μg~約5000μg、約250μg~約4500μg、約250μg~約4000μg、約250μg~約3500μg、約250μg~約3000μg、約250μg~約2500μg、約250μg~約2000μg、約250μg~約1500μg、約250μg~約1000μg、約250μg~約500μg、約500μg~約5000μg、約500μg~約4500μg、約500μg~約4000μg、約500μg~約3500μg、約500μg~約3000μg、約500μg~約2500μg、約500μg~約2000μg、約500μg~約1500μg、約500μg~約1000μg、約750μg~約5000μg、約750μg~約4500μg、約750μg~約4000μg、約750μg~約3500μg、約750μg~約3000μg、約750μg~約2500μg、約750μg~約2000μg、約75μg~約1500μg、約750μg~約1000μg、約1500μg~約5000μg、約1500μg~約4500μg、約1500μg~約4000μg、約1500μg~約3500μg、約1500μg~約3000μg、約1500μg~約2500μg、約1500μg~約2000μg、約2000μg~約5000μg、約2000μg~約4500μg、約2000μg~約4000μg、約2000μg~約3500μg、約2000μg~約3000μg、約2000μg~約2500μg、約2500μg~約5000μg、約2500μg~約4500μg、約2500μg~約4000μg、約2500μg~約3500μg、約2500μg~約3000μg、約3000μg~約5000μg、約3000μg~約4500μg、約3500μg~約4000μg、約3500μg~約5000μg、約3500μg~約4500μg、約3500μg~約4000μg、約4000μg~約5000μg、約4000μg~約4500μg、または約4500μg~約5000μgの場合がある。
【0127】
いくつかの実施形態において、抗PD1の抗体の用量は、約0.1mg/kg~約9.0mg/kgである。例えば、抗PD1の抗体の用量は、約0.1mg/kg~約9.0mg/kg、約0.1mg/kg~約8.0mg/kg、約0.1mg/kg~約7.0mg/kg、約0.1mg/kg~約6.0mg/kg、約0.1mg/kg~約5.0mg/kg、約0.1mg/kg~約4.0mg/kg、約0.1mg/kg~約3.0mg/kg、約0.1mg/kg~約2.0mg/kg、約0.1mg/kg~約1.0mg/kg、約1.0mg/kg~約9.0mg/kg、約1.0mg/kg~約8.0mg/kg、約1.0mg/kg~約7.0mg/kg、約1.0mg/kg~約6.0mg/kg、約1.0mg/kg~約5.0mg/kg、約1.0mg/kg~約4.0mg/kg、約1.0mg/kg~約3.0mg/kg、約1.0mg/kg~約2.0 mg/kg、約2.0mg/kg~約9.0mg/kgである。約2.0mg/kg~約8.0mg/kg、約2.0mg/kg~約7.0mg/kg、約2.0mg/kg~約6.0mg/kg、約2.0mg/kg~約5.0mg/kg、約2.0mg/kg~約4.0mg/kg、約2.0mg/kg~約3.0mg/kg、約3.0mg/kg~約9.0mg/kg、約3.0mg/kg~約8.0mg/kg、約3.0mg/kg~約7.0mg/kg、約3.0mg/kg~約6.0mg/kg、約3.0mg/kg~約5.0mg/kg、約3.0mg/kg~約4.0mg/kg、約4.0mg/kg~約9.0mg/kg、約4.0mg/kg~約8.0mg/kg、約4.0mg/kg~約7.0mg/kg、約4.0mg/kg~約6.0mg/kg、約4.0mg/kg~約5.0mg/kg、約5.0mg/kg~約9.0mg/kg、約5.0mg/kg~約8.0mg/kgである。約5.0mg/kg~約7.0mg/kg、約5.0mg/kg~約6.0mg/kg、約6.0mg/kg~約9.0mg/kg、約6.0mg/kg~約8.0mg/kg、約6.0mg/kg~約7.0mg/kg、約7.0mg/kg~約9.0mg/kg、約7.0mg/kg~約8.0mg/kg、または約8.0mg/kg~約9.0mg/kgである。
【0128】
いくつかの実施形態において、bRAF阻害剤の用量は、約1mg~約1500mgである。例えば、bRAF阻害剤の用量は、約1mg~約1500mg、約1mg~約1250mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約750mg、約1mg~約500mg、約1mg~約250mg、約250mg~約1500mg、約250mg~約1250mg、約250mg~約1000mg、約250mg~約750mg、約250mg~約500mg、約500mg~約1500mg、約500mg~約1250mg、約500mg~約1000mg、約500mg~約750mg、約750mg~約1500mg、約750mg~約1250mg、約750mg~約1000mg、約1000mg~約1500mg、約1000mg~約1250mg、または約1250mg~約1500mgである。
【0129】
いくつかの実施形態において、ナイアシンアミドの用量は、約1mg~約3000mgである。例えば、ナイアシンアミドの用量は、約1mg~約3000mg、約1mg~約2750mg、約1mg~約2500mg、約1mg~約2250mg、約1mg~約2000mg、約1mg~約1750mg、約1mg~約1500mg、約1mg~約1250mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約750mg、約1mg~約500mg、約1mg~約250mg、約250mg~約3000mg、約250mg~約2750mg、約250mg~約2500mg、約250mg~約2250mg、約250mg~約2000mg、約250mg~約1750mg、約250mg~約1500mg、約250mg~約1250mg、約250mg~約1000mg、約250mg~約750mg、約250mg~約500mg、約500mg~約3000mg、約500mg~約2750mg、約500mg~約2500mg、約500mg~約2250mg、約500mg~約2000mg、約500mg~約1750mg、約500mg~約1500mg、約500mg~約1250mg、約500mg~約1000mg、約500mg~約750mg、約750mg~約3000mg、約750mg~約2750mg、約750mg~約2500mg、約750mg~約2250mg、約750mg~約2000mg、約750mg~約1750mg、約750mg~約1500mg、約750mg~約1250mg、約750mg~約1000mg、約1000mg~約3000mg、約1000mg~約2750mg、約1000mg~約2500mg、約1000mg~約2250mg、約1000mg~約2000mg、約1000mg~約1750mg、約1000mg~約1500mg、約100mg~約1250mg、約1250mg~約3000mg、約1250mg~約2750mg、約1250mg~約2500mg、約1250mg~約2250mg、約1250mg~約2000mg、約1250mg~約1750mg、約1250mg~約1500mg、約1500mg~約3000mg、約1500mg~約2750mg、約1500mg~約2500mg、約1500mg~約2250mg、約1500mg~約2000mg、約1500mg~約1750mg、約1750mg~約3000mg、約1750mg~約2750mg、約1750mg~約2500mg、約1750mg~約2250mg、約1750mg~約2000mg、約2000mg~約3000mg、約2000mg~約2750mg、約2000mg~約2500mg、約2000mg~約2250mg、約2250mg~約3000mg、約2250mg~約2750mg、約2250mg~約2500mg、約2500mg~約3000mg、約2500mg~約2750mg、または約2750mg~約3000mgである。
【0130】
キット
【0131】
本明細書には、被験体、例えばヒト被験体の固形腫瘍癌の処置のためのキットまたは医薬組成物が開示され、該キットまたは医薬組成物は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に使用するのに有効な量の少なくとも1つのETBRアンタゴニスト、および薬学的に許容可能な担体を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのETBRアンタゴニストは、少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば本明細書に記載されるような重水素化BQ-788である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのETBRアンタゴニスト、例えば重水素化BQ-788は、免疫チェックポイント阻害剤を含む単一容器の中に入れられる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのETBRアンタゴニスト、例えば重水素化BQ-788は第1容器に入れられ、免疫のチェックポイント阻害剤は第2の容器に入れられ、ここで、少なくとも1つのETBRアンタゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤は、ほぼ同時に投与される。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書は、ヒト被験体の固形腫瘍癌の処置のためのキットを提供し、該キットは、ある量の少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、相乗的に有効な量のBQ-788、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、BQ-788は、少なくとも1つの重水素化BQ-788である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である。
【0133】
投与経路
【0134】
本明細書には、本明細書に開示される医薬組成物の様々な投与経路が開示される。本明細書に記載されるような化合物は、本開示に従い、経口、非経口、または局所の経路によって、1回で、または投与量を分割して投与することができる。活性化合物の投与は、連続的(点滴)から1日数回の経口投与(例えばQ.O.D.またはQ.I.D.)に及ぶ場合があり、および、投与経路の中でもとりわけ、経口、局所、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、経皮(浸透増強剤を含む場合がある)、頬側、舌下、および坐薬投与を含む場合がある。腸溶性コーティングを施した経口錠剤も、経口投与経路からの化合物の生物学的利用能を増強するために使用することができる。最も有効な剤形は、選択される特定の薬剤の薬物動態のほか、患者の疾患の重症度に左右される。鼻内、気管内、または肺内への投与のためのスプレー、ミスト、またはエアロゾルとして、本開示に係る化合物の投与を、使用することができる。それゆえ、本開示はまた、随意に薬学的に許容可能な担体、添加剤、または賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載されるような有効な量の化合物を含む医薬組成物にも関連する。本開示に係る化合物は、即時放出、中間放出、徐放、または制御放出の形態で投与することができる。いくつかの実施形態において、徐放または制御放出の形態は、経口だけでなく、座薬、経皮、または他の局所形態でも投与される。リポソーム形態での筋肉内注射も、注入部位での化合物の放出を制御または維持するために使用することができる。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような医薬組成物は、吸入スプレー、局所、直腸、鼻、頬側、膣、または埋め込みリザーバーを介して、経口投与または非経口投与される。用語「非経口」は、本明細書で使用されるように、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、鞘内、肝臓内、損傷内、および頭蓋内の注射または注入の技術を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、経口、腹腔内、または静脈内で投与される。
【0136】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような組成物の滅菌注入可能な形態は、水性または油性の懸濁液である。これら懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して製剤することができる。滅菌注入可能な調製物は、無毒で非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒、例えば、1,3-ブタンジオール中の滅菌注入可能な溶液または懸濁液でもよい。利用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、および等張食塩水がある。加えて、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として慣例通りに使用される。この目的のために、任意の無刺激の不揮発性油は、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含んで利用することができる。オレイン酸やそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、天然の薬学的に許容可能な油、例えばオリーブ油、ヒマシ油、またはダイズ油、特にポリオキシエチル化された形態であるため、注入可能な調製物において有用である。これらの油剤または懸濁液はまた、Ph.Helvまたは同様のアルコールなどの、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含む場合がある。
【0137】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液、または溶液を含むがこれらに限定されない、任意の経口に許容可能な剤形で経口投与される。錠剤を経口で使用する場合、一般的に使用される担体は、ラクトースおよびトウモロコシデンプンを含む。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も通常は添加される。カプセル剤形態での経口投与のために、有益な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンを含む。水性懸濁液を経口で使用するとき、有効成分は、乳化剤および懸濁化剤と組み合わされる。望ましい場合、特定の甘味料、香味料、または着色料も添加することができる。
【0138】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような医薬組成物は、直腸投与のために座薬の形態で投与される。これらは、薬剤に、室温で固体ではあるが直腸の温度では液体となる適切な非刺激性賦形剤を混合することによって調製することができ、それゆえ、直腸内で溶け、薬物を放出する。このような物質として、カカオバター、蜜ろう、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0139】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような医薬組成物は、局所投与される。適切な局所製剤は、これらの領域または器官の各々に対して容易に調製される。下方の胃管に対する局所適用は、肛門坐剤製剤(上記参照)、または適切な浣腸製剤で達成することができる。局所的に許容可能な経皮パッチも使用することができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、局所適用のために、医薬組成物は、1つ以上の担体の中で懸濁または溶解される活性成分を含む、適切な軟膏において製剤される。本開示の化合物の局所投与のための担体として、限定されないが、鉱油、流動パラフィン、DMSO、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水が挙げられる。いくつかの実施形態において、化合物は、患者のステントに生じる閉塞の可能性を阻害または減少するために、患者に外科移植されるべきステントに被覆することができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体の中で懸濁または溶解される活性成分を含む、適切なローション剤またはクリーム剤において製剤される。適切な担体として、限定されないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられる。
【0142】
いくつかの実施形態において、眼への使用のために、医薬組成物は、塩化ベンジルアルコニウムなどの保存料を用いて、または用いずに、pH調整した等張性の滅菌生理食塩水中の微粉懸濁液、またはpH調整した等張性の滅菌生理食塩水中の溶液として製剤される。代替的に、眼への使用のために、医薬組成物は、ワセリンなどの軟膏において製剤することができる。
【0143】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入により投与される。そのような組成物は、医薬組成物に関連する、本明細書に記載される技術に従い調製され、および、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存料、生物学的利用能を増強する吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または従来の可溶化剤や分散剤を利用して、生理食塩水なかの溶液として調製することができる。いくつかの実施形態において、本明細書は、有効な量(例えば相乗的に有効な量)のETBRアンタゴニスト、カスパーゼ-8阻害剤、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含むリポソーム、および/または、有効な量(例えば相乗的に有効な量)のETARアンタゴニスト、抗PD1の抗体、bRAF阻害剤、ナイアシンアミド、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含む、製剤を提供し、リポソーム製剤は、鼻腔内送達または舌下送達のために構成され、またはそれに適している。さらなる実施形態において、リポソームはさらに、上述のような追加の抗癌剤を含む。
【0144】
いくつかの実施形態において、組成物は、約0.05ミリグラム~約750ミリグラム以上、例えば、約1ミリグラム~約600ミリグラム、または約10ミリグラム~約500ミリグラムの有効成分を、単独で、または本開示に係る少なくとも1つの他の化合物と組み合わせて含むように製剤されるべきである。また、任意の特定の患者に対する特定の用量と処置レジメンは、利用される特定の化合物の活性、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与の時間、排出の速度、薬物の組み合わせ、処置を行う医師の判断、および処置されている特定の疾患または疾病の重症度を含む、様々な要因に左右されることも、理解されたい。
【0145】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法に従い化合物を使用する治療を必要とする患者または被験体は、薬学的に許容可能な担体または希釈剤のなかに随意に薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、または多形体を、単独で、または本明細書で特定されるような既知の赤血球生成刺激薬と組み合わせて含む、本位開示に係る有効な量の化合物を、患者(被験体)に投与することにより処置される。
【0146】
いくつかの実施形態において、本明細書中の化合物または組成物は、経口、非経口、皮内、注射(静脈内、皮下、または筋肉内)、局所(経皮、液体、クリーム、ゲル、または固形形態を含む)、またはエアロゾルの形態で、投与される。
【0147】
いくつかの実施形態において、有効成分は、処置される患者に深刻な毒性作用を生じさせることなく、望ましい使用のために治療上有効な量を患者に送達するのに十分な量で、薬学的に許容可能な担体または希釈剤に含まれる。本明細書で言及される疾病の全てに対する活性化合物の典型的な投与量は、1日に約10ng/kg~300ng/kg、約10ng/kg~1μg/kg、約1μg/kg~10μg/kg、約10μg/kg~100μg/kg、約100μg/kg~1000mg/kg、約1mg/kg~30mg/kg、約1mg/kg~300mg/kg、または0.1~100mg/kg、より一般的には、1日当たりレシピエント/患者の体重1キログラム体重につき0.5~約25mgの範囲である。典型的な局所用量は、適切な担体において0.01-5%wt/wtに及ぶ。
【0148】
いくつかの実施形態において、本明細書中の有効成分は、単位剤形毎に1mg未満、1mg~3000mg、例えば5~500mgの有効成分を含有するものを含むがこれに限定されない、任意の適切な単位剤形で都合よく投与される。約25~250mgの経口用量が、多くの場合都合が良い。
【0149】
いくつかの実施形態において、有効成分は、約0.00001~30mM、例えば約0.1~30μMの活性化合物のピーク血漿濃度を達成するために投与される。これは、例えば、随意に生理食塩水または水性媒体の中の有効成分の溶液または製剤の静脈内注射により達成され、または、有効成分の塊として投与される。経口投与はまた、活性薬剤の有効な血漿濃度を生成するのに適切である。
【0150】
処置のための方法
【0151】
本明細書には、被験体または患者、例えばヒトなどの動物における疾患、障害、または症状を処置または改善するための方法が開示され、該方法は、有効な量、例えば治療上有効な量または相乗的に有効な量の本明細書に記載されるような医薬組成物を被験体に投与する工程を含み、前記組成物は、被験体の疾患、障害、または症状を処置または改善するのに有効である。いくつかの実施形態において、疾患または障害は、ETBR関連の癌、免疫療法に対し感受性のない癌、またはその両方である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書に記載されるような有効な量の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば重水素化BQ-788、BQ-788-Bを含む。いくつかの実施形態において、ETBR関連の癌は、乳癌、転移性乳癌、転移性有棘細胞癌、黒色腫、膠芽腫、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍癌である。いくつかの実施形態において、処置されるETBR関連の癌は、乳癌、黒色腫、転移性乳癌、または転移性黒色腫を含まない。
【0152】
いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト単独の投与、または、少なくとも1つのETBRアンタゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤の投与と組み合わせての投与は、癌の少なくとも1つの症状の処置または改善を有効にするのに十分である。いくつかの実施形態において、ETBRアンタゴニスト単独の投与、または、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせての投与は、腫瘍浸潤リンパ球、マクロファージ、3次リンパ器官形成、またはそれらの組み合わせの刺激または増強を有効にする。いくつかの実施形態において、癌の処置または改善、または、腫瘍浸潤リンパ球、マクロファージの刺激または増強は、マウスにおけるV600E+SM1癌モデル(例えばC57BL/6マウスモデル)を使用して判定されるように、3次リンパ器官形成またはそれらの組み合わせを誘導する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのETBRアンタゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤(単一製剤または別個の製剤にかかわらず)は、単位剤形において投与される。いくつかの実施形態において、単位剤形は、相乗的に有効な量の少なくとも1つのETBRアンタゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤の各々を含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、本明細書は、被験体の癌、例えば固形腫瘍癌を処置するための方法を提供し、該方法は、本明細書に記載されるような有効な量の特異的に重水素化ETBRアンタゴニストを単独で、または、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、被験体に投与する工程を含み、投与する工程は、癌の少なくとも1つの症状の処置または改善を有効にする。
【0154】
いくつかの実施形態において、本明細書は、被験体の癌を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載されるような有効な量の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを被験体に投与する工程を含み、投与は、以下:
a.腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の増強または刺激、
b.腫瘍関連マクロファージ(TAM)の増加、
c.3次リンパ器官(TLO)形成の増強または刺激、または
d.それらの組み合わせ
のうち少なくとも1つを有効にし、それにより、癌の少なくとも1つの症状が処置または改善される。いくつかの実施形態において(a)-(d)は、生検によってヒトにおいて、または動物モデルにおいて判定される。いくつかの実施形態において、動物モデルは、マウスにおけるV600E+SM1癌モデル(例えばC57BL/6マウスモデル)である。
【0155】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、本明細書に記載されるようなBQ-788の少なくとも1つの重水素化形態である。さらなる実施形態において、重水素化BQ-788は、BQ-788-A、BQ-788-B、BQ-788-C、またはそれらの組み合わせである。
【0156】
いくつかの実施形態において、癌を処置するための方法は、患者に少なくとも1つのETBRアンタゴニストを投与する工程を含み、少なくとも1つのETBRアンタゴニストは、患者の癌の少なくとも1つの症状を処置または改善するのに有効である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのETBRアンタゴニストは、少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、前記方法は、本明細書に記載されるような有効な量の少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト(例えばBQ-788の重水素化形態)を投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、重水素化BQ-788は、BQ-788-A、BQ-788-B、またはBQ-788-Cのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、癌は、ETBR関連の癌、例えばETBR関連の固形腫瘍癌である。いくつかの実施形態において、ETBR関連の癌は、乳癌、黒色腫、有棘細胞癌、膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、癌は固形腫瘍癌である。さらなる実施形態において、癌は、乳癌、黒色腫、転移性乳癌、または転移性黒色腫ではない。
【0157】
いくつかの実施形態において、前記方法は、有効な量の少なくとも1つのETBRアンタゴニスト、例えば、本明細書に記載されるような少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および本明細書に記載されるような薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む、組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、単位剤形において投与される。
【0158】
いくつかの実施形態において、前記方法はさらに、追加の抗腫瘍薬剤を、例えば、同じまたは別個の製剤において、本明細書に記載されるような重水素化BQ-788などの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストと組み合わせて投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、抗腫瘍薬剤は、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗腫瘍薬剤、例えば、抗PD1または抗PD-L1抗体は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む組成物として投与される。
【0159】
いくつかの実施形態において、前記方法は、本明細書に記載されるような少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および本明細書に記載されるような少なくとも1つの追加の抗腫瘍薬剤を含む組み合わせを投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、薬学的に可能な担体または賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、本明細書に記載されるような有効な量の少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば重水素化BQ-788を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、ある量の免疫チェックポイント阻害剤、および相乗的に有効な量の、重水素化BQ-788などの少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体である。
【0160】
いくつかの実施形態において、組み合わせは、本明細書に記載されるような有効な量の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、および相乗的に有効な量の少なくとも1つの抗腫瘍薬剤を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、薬学的に許容可能な担体を含む。いくつかの実施形態において、組み合わせは、1つ以上の単位剤形内に含まれる。さらなる実施形態において、組み合わせは、別個の単位剤形、例えば、少なくとも1つのETBRアンタゴニストを含む第1の容器、および、免疫チェックポイント阻害剤などの少なくとも1つの抗腫瘍薬剤を含む第2の容器において、投与される。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、本明細書に記載されるような重水素化BQ-788である。
【0161】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、舌下、経皮、局所、腹腔内、非経口、鼻腔内、または頭蓋内に送達される。
【0162】
いくつかの実施形態において、ETBRアンタゴニスト、例えば重水素化ETBRアンタゴニストまたは重水素化BQ-788は、本明細書に記載されるようなリポソーム製剤の形態で投与される。
【0163】
いくつかの実施形態において、ETBR関連の転移性脳癌を処置するための方法が提供される。前記方法は、有効な量の本開示の医薬組成物を被験体に投与する工程を含み、医薬組成物は、ETBR関連の転移性脳癌の症状の処置または改善に有効である。いくつかの実施形態において、ETBR関連の転移性脳癌は、転移性黒色腫関連の脳癌、転移性扁平上皮癌関連の脳癌、膠芽腫、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載されるような有効な量の特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば重水素化BQ-788、および薬学的に許容可能な担体を含む。
【0164】
いくつかの実施形態において、本明細書は、ヒト被験体の固形腫瘍癌を処置するための方法を提供し、該方法は、有効な投与量のETBRアンタゴニストを投与する工程、さらに、免疫チェックポイント阻害剤を被験体に投与する工程を含み、ここで、ETBRアンタゴニストおよび免疫のチェックポイント阻害剤の投与は、以下:(i)腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の増強または刺激、(ii)腫瘍関連マクロファージ(TAM)の増加、(iii)3次リンパ器官(TLO)形成の増強または刺激、または(iv)それらの組み合わせのうち少なくとも1つを有効にし、ここで、ETBRアンタゴニストおよび免疫チェックポイント阻害剤は、固形腫瘍癌の少なくとも1つの症状の処置または緩和を有効にする。いくつかの実施形態において、(i)-(iv)の形成は、マウスモデルにおいて実行される。いくつかの実施形態において、マウスモデルは、C57BL/6マウスにおけるV600E+SM1癌モデルである。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1または抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、有効な投与量は、相乗的に有効な量、例えば0.1μg~5000mgである。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストは、重水素化BQ-788である。いくつかの実施形態において、重水素化BQ-788はBQ-788-Bである。いくつかの実施形態において、特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、例えば重水素化BQ-788は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、ETBRアンタゴニスト(例えば、重水素化BQ-788などの重水素化ETBR)および免疫チェックポイント阻害剤は、個別に投与される。いくつかの実施形態において、ETBRアンタゴニスト(例えば、重水素化BQ-788などの重水素化ETBR)および免疫チェックポイント阻害剤は、同じ製剤において投与される。
【0165】
いくつかの実施形態において、本明細書は、被験体、例えばヒトのETBR関連の固形腫瘍癌を処置する方法を提供し、該方法は、例えば、免疫チェックポイント阻害剤と共に有効な量または相乗的に有効な量の少なくとも1つの重水素化BQ-788、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を被験体に投与する工程を含み、重水素化BQ-788および免疫チェックポイント阻害剤は、被験体のETBR関連の固形腫瘍癌の少なくとも1つの症状の処置または改善を有効にする。いくつかの実施形態において、重水素化BQ-788は、リポソーム製剤として投与される。
【0166】
いくつかの実施形態において、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗PD-1抗体)、癌ワクチン、キメラ抗原受容体T細胞(CART)治療薬、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含む。
【0167】
いくつかの実施形態において、本明細書は、患者の黒色腫性の侵襲および転移を阻害する方法を提供し、該方法は、有効な量、例えば治療上有効な量、または相乗的に有効な量の、本明細書に記載されるような医薬組成物を被験体に投与する工程を含み、組成物は、黒色腫性の侵襲および転移の阻害に有効である。
【0168】
いくつかの実施形態において、本明細書は、黒色腫細胞死(アポトーシス)を誘導する方法を提供し、該方法は、有効な量、例えば治療上有効な量、または相乗的に有効な量の、本明細書に記載されるような医薬組成物を被験体に投与する工程を含み、組成物は、黒色腫細胞死の誘導に有効である。
【0169】
いくつかの実施形態において、本明細書は、患者の黒色腫性腫瘍への血液供給を阻害する方法を提供し、該方法は、有効な量、例えば治療上有効な量、または相乗的に有効な量の、本明細書に記載されるような医薬組成物を被験体に投与する工程を含み、組成物は、黒色腫性腫瘍への血液供給の阻害に有効である。
【0170】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、有効成分の約1%~約95%、有効成分の約20%~約90%を含む投与の単回投薬形態、および、有効成分の約5%~約20%を含む非単回投薬の投与形態を含む。単位投薬形態は、例えば、被覆錠、錠剤、アンプル、バイアル、坐薬、またはカプセル剤である。他の投与形態は、例えば軟膏、クリーム剤、ペースト剤、フォーム、チンキ剤、リップスティック、点滴剤、スプレー、分散剤などである。例として、約0.05g~約1.0gの有効成分を含有するカプセル剤が挙げられる。
【0171】
いくつかの実施形態において、有効成分は、処置される患者に深刻な毒性作用を生じさせることなく、望ましい使用のために治療上有効な量を患者に送達するのに十分な量で、薬学的に許容可能な担体または希釈剤に含まれる。本明細書中で言及される疾病の全てに対する活性化合物の典型的な投与量は、約10ng/kg~300mg/kg、例えば、1日当たり0.1~100mg/kg、より一般的には1日当たりレシピエント/患者の体重1キログラムにつき0.5~約25mgの範囲である。典型的な局所用量は、適切な担体において0.01-5%wt/wtに及ぶ。化合物は、単位剤形毎に1mg未満、1mg~3000mg、例えば5~500mgの有効成分を含有するものを含むがこれに限定されない、任意の適切な単位剤形で都合よく投与される。約25~250mgの経口用量が、多くの場合都合が良い。いくつかの実施形態において、有効成分は、約0.00001~30mM、例えば約0.1~30μMの活性化合物のピーク血漿濃度を達成するために投与される。
【0172】
投与レジメン
【0173】
本明細書には処置レジメンが開示される。いくつかの実施形態において、処置レジメンは、約100μg~約4000μgの各有効成分(すなわち、本明細書に記載されるような少なくとも1つの特異的に重水素化されたETBRアンタゴニスト、ETARアンタゴニスト、抗PD1抗体、bRAF阻害剤、ナイアシンアミド、またはカスパーゼ-8阻害剤)を中に含む投薬医薬組成物を含む。用量は徐放性用量の場合があり、そこでは、約50μg~約3000μgの有効成分の各々はイニシアルバースト(initial burst)であり、約50μg~約3000μgの有効成分の各々は2時間にわたり徐放される。
【0174】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物の有効成分の各々は、投薬製剤(例えば、イニシアルバースト、徐放用量など)のいずれかにおいて、約100μg~約4000μg、約100μg~約3750μg、約100μg~約3500μg、約100μg~約3250μg、約100μg~約3000μg、約100μg~約2750μg、約100μg~約2500μg、約100μg~約2250μg、約100μg~約2000μg、約100μg~約1750μg、約100μg~約1500μg、約100μg~約1250μg、約100μg~約1000μg、約100μg~約750μg、約100μg~約500μg、約250μg~約4000μg、約250μg~約3750μg、約250μg~約3500μg、約250μg~約3250μg、約250μg~約3000μg、約250μg~約2750μg、約250μg~約2500μg、約250μg~約2250μg、約250μg~約2000μg、約250μg~約1750μg、約250μg~約1500μg、約250μg~約1250μg、約250μg~約1000μg、約250μg~約750μg、約250μg~約500μg、約500μg~約4000μg、約500μg~約3750μg、約500μg~約3500μg、約500μg~約3250μg、約500μg~約3000μg、約500μg~約2750μg、約500μg~約2500μg、約500μg~約2250μg、約500μg~約2000μg、約500μg~約1750μg、約500μg~約1500μg、約500μg~約1250μg、約500μg~約1000μg、約500μg~約750μg、約750μg~約4000μg、約750μg~約3750μg、約750μg~約3500μg、約750μg~約3250μg、約750μg~約3000μg、約750μg~約2750μg、約750μg~約2500μg、約750μg~約2250μg、約750μg~約2000μg、約750μg~約1750μg、約750μg~約1500μg、約750μg~約1250μg、約750μg~約1000μg、約1000μg~約4000μg、約1000μg~約3750μg、約1000μg~約3500μg、約1000μg~約3250μg、約1000μg~約3000μg、約1000μg~約2750μg、約1000μg~約2500μg、約1000μg~約2250μg、約1000μg~約2000μg、約1000μg~約1750μg、約1000μg~約1500μg、約1000μg~約1250μg、約1250μg~約4000μg、約1250μg~約3750μg、約1250μg~約3500μg、約1250μg~約3250μg、約1250μg~約3000μg、約1250μg~約2750μg、約1250μg~約2500μg、約1250μg~約2250μg、約1250μg~約2000μg、約1250μg~約1750μg、約1250μg~約1500μg、約1500μg~約4000μg、約1500μg~約3750μg、約1500μg~約3500μg、約1500μg~約3250μg、約1500μg~約3000μg、約1500μg~約2750μg、約1500μg~約2500μg、約1500μg~約2250μg、約1500μg~約2000μg、約1500μg~約1750μg、約1750μg~約4000μg、約1750μg~約3750μg、約1750μg~約3500μg、約1750μg~約3250μg、約1750μg~約3000μg、約1750μg~約2750μg、約1750μg~約2500μg、約1750μg~約2250μg、約1750μg~約2000μg、約2000μg~約4000μg、約2000μg~約3750μg、約2000μg~約3500μg、約2000μg~約3250μg、約2000μg~約3000μg、約2000μg~約2750μg、約2000μg~約2500μg、約2000μg~約2250μg、約2250μg~約4000μg、約2250μg~約3750μg、約2250μg~約3500μg、約2250μg~約3250μg、約2250μg~約3000μg、約2250μg~約2750μg、約2250μg~約2500μg、約2500μg~約4000μg、約2500μg~約3750μg、約2500μg~約3500μg、約2500μg~約3250μg、約2500μg~約3000μg、約2500μg~約2750μg、約2750μg~約4000μg、約2750μg~約3750μg、約2750μg~約3500μg、約2750μg~約3250μg、約2750μg~約3000μg、約3000μg~約4000μg、約3000μg~約3750μg、約3000μg~約3500μg、約3000μg~約3250μg、約3250μg~約4000μg、約3250μg~約3750μg、約3250μg~約3500μg、約3500μg~約4000μg、約3500μg~約3750μg、または約3750μg~約4000μgで存在する場合がある。
【0175】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物の各有効成分は、医薬組成物に対して、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約25mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約50mg/mL、約1mg/mL~約25mg/mL、約1mg/mL~約10mg/mL、約0.1mg/mL~約5.0mg/mL、例えば、約0.1mg/mL~約4.5mg/mL、約0.1mg/mL~約4.0mg/mL、約0.1mg/mL~約3.5mg/mL、約0.1mg/mL~約3.0mg/mL、約0.1mg/mL~約2.5mg/mL、約0.1mg/mL~約2.0mg/mL、約0.1mg/mL~約1.5mg/mL、約0.1mg/mL~約1.0mg/mL、約0.1mg/mL~約0.5mg/mL、約0.5mg/mL~約4.5mg/mL、約0.5mg/mL~約4.0mg/mL、約0.5mg/mL~約3.5mg/mL、約0.5mg/mL~約3.0mg/mL、約0.5mg/mL~約2.5mg/mL、約0.5mg/mL~約2.0mg/mL、約0.5mg/mL~約1.5mg/mL、約0.5mg/mL~約1.0mg/mL、約1.0mg/mL~約4.5mg/mL、約1.0mg/mL~約4.0mg/mL、約1.0mg/mL~約3.5mg/mL、約1.0mg/mL~約3.0mg/mL、約1.0mg/mL~約2.5mg/mL、約1.0mg/mL~約2.0mg/mL、約1.0mg/mL~約1.5mg/mL、約1.5mg/mL~約4.5mg/mL、約1.5mg/mL~約4.0mg/mL、約1.5mg/mL~約3.5mg/mL、約1.5mg/mL~約3.0mg/mL、約1.5mg/mL~約2.5mg/mL、約1.5mg/mL~約2.0mg/mL、約2.0mg/mL~約4.5mg/mL、約2.0mg/mL~約4.0mg/mL、約2.0mg/mL~約3.5mg/mL、約2.0mg/mL~約3.0mg/mL、約2.0mg/mL~約2.5mg/mL、約2.5mg/mL~約4.5mg/mL、約2.5mg/mL~約4.0mg/mL、約2.5mg/mL~約3.5mg/mL、約2.5mg/mL~約3.0mg/mL、約3.0mg/mL~約4.5mg/mL、約3.0mg/mL~約4.0mg/mL、約3.0mg/mL~約3.5mg/mL、約3.5mg/mL~約4.5mg/mL、約3.5mg/mL~約4.0mg/mL、または約3.5mg/mL~約4.5mg/mLで存在する。
【0176】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物の各有効成分は、医薬組成物に対して、約0.1μg/mL~約50μg/mL、約0.1μg/mL~約25μg/mL、約0.1μg/mL~約10μg/mL、約1μg/mL~約50μg/mL、約1μg/mL~約25μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、約0.1μg/mL~約5.0μg/mL、例えば、約1μg/mL~約4.5μg/mL、約0.1μg/mL~約4.0μg/mL、約0.1μg/mL~約3.5μg/mL、約0.1μg/mL~約3.0μg/mL、約0.1μg/mL~約2.5μg/mL、約0.1μg/mL~約2.0μg/mL、約0.1μg/mL~約1.5μg/mL、約0.1μg/mL~約1.0μg/mL、約0.1μg/mL~約0.5μg/mL、約0.5μg/mL~約4.5μg/mL、約0.5μg/mL~約4.0μg/mL、約0.5μg/mL~約3.5μg/mL、約0.5μg/mL~約3.0μg/mL、約0.5μg/mL~約2.5μg/mL、約0.5μg/mL~約2.0μg/mL、約0.5μg/mL~約1.5μg/mL、約0.5μg/mL~約1.0μg/mL、約1.0μg/mL~約4.5μg/mL、約1.0μg/mL~約4.0μg/mL、約1.0μg/mL~約3.5μg/mL、約1.0μg/mL~約3.0μg/mL、約1.0μg/mL~約2.5μg/mL、約1.0μg/mL~約2.0μg/mL、約1.0μg/mL~約1.5μg/mL、約1.5μg/mL~約4.5μg/mL、約1.5μg/mL~約4.0μg/mL、約1.5μg/mL~約3.5μg/mL、約1.5μg/mL~約3.0μg/mL、約1.5μg/mL~約2.5μg/mL、約1.5μg/mL~約2.0μg/mL、約2.0μg/mL~約4.5μg/mL、約2.0μg/mL~約4.0μg/mL、約2.0μg/mL~約3.5μg/mL、約2.0μg/mL~約3.0μg/mL、約2.0μg/mL~約2.5μg/mL、約2.5μg/mL~約4.5μg/mL、約2.5μg/mL~約4.0μg/mL、約2.5μg/mL~約3.5μg/mL、約2.5μg/mL~約3.0μg/mL、約3.0μg/mL~約4.5μg/mL、約3.0μg/mL~約4.0μg/mL、約3.0μg/mL~約3.5μg/mL、約3.5μg/mL~約4.5μg/mL、約3.5μg/mL~約4.0μg/mL、または約3.5μg/mL~約4.5μg/mLで存在する。
【実施例
【0177】
実施例1.重水素化ETBRアンタゴニストの合成
【0178】
重水素化ETBRアンタゴニストは、標準の方法と手順によって既知および市販のETBRアンタゴニストを重水素化することによって調製することができる。
【0179】
特異的な重水素化ETBRアンタゴニストを、後述のスキームによって調製することができる。BQ-788-Bを、図14に実証される方法によって調製することができる。
【0180】
図14の中間体13を、図15に表されるスキーム2により調製することができる(中間体13):
【0181】
中間体13の非重水素化アナログを、工程4でLiAlDの代わりにLiAlHを使用することにより調製することができる。
【0182】
BQ-788-AおよびBQ-788-Cを、スキーム1の工程3で中間体5の重水素化アナログを代わりに使用することにより調製することができる。このようなアナログを、下記の図16に実証される方法により調製することができる(中間体5d):
【0183】
次いで、スキーム3の化合物10を、スキーム1の化合物5の代わりに使用する。BQ-788-Cのために、スキーム1を完了させる。BQ-788-Aのために、スキーム1の中間体13の非重水素化アナログを使用し、スキーム3の中間体4を、パラジウム触媒の存在下で臭素化インドールをNaBD4に反応させることにより調製することができる。
【0184】
典型的な実施形態において、化合物BQ-788-Aを、図17に実証された方法により調製することができる。
【0185】
加えて、化合物BQ-788-Cを、図18に実証される方法に従い調製することができる。
【0186】
重水素原子の数および位置は、本明細書に示される特定のスキームまたは実施例により制限されない。より多くの重水素置換での化合物の調製物は、一般的に知られる出発物質を使用して提供されるスキームから容易に推定でき、または標準合成方法を使用して調製することができる。
【0187】
実施例2.重水素化ETBRアンタゴニストの生物活性
【0188】
CXCR4阻害効果の判定。CXCR4(h)に対する阻害効果を、BQ-788(図4A)、BQ-788(図4B)、およびBQ-788-B(すなわち「化合物1」)に対して判定した。細胞のアゴニスト効果を、CXCR4(h)に対する既知の基準アゴニストへの制御反応の%として算出し、細胞のアンタゴニスト効果を、CXCR4に対する制御基準アゴニスト反応の%阻害として算出した。組み換えヒトCXCR4をCHO細胞に発現させ、これを1nMのSDF-1αで刺激し、28℃でインキュベートした。誘電分光法を使用して細胞のインピーダンスを測定した。アゴニスト効果の≧50%の阻害を示す結果は有意であると考慮され、一方で25%未満の阻害を示す結果は有意であると考慮されない。BQ-788のIC50は、約1.0E-6Mより大きかった。BQ-788-BのIC50は、算出できなかった。
【0189】
BQ-788およびBQ-788-Bに関するETA(h)阻害効果の判定。図5A図5Bは、A)BQ-788、およびB)BQ-788-B(すなわち「化合物1」)に対する、CXCR4(h)阻害効果の判定を実証する。細胞のアゴニスト効果を、ETA(h)に対する既知の基準アゴニストへの制御反応の%として算出し、細胞のアンタゴニスト効果を、ETAに対する制御基準アゴニスト反応の%阻害として算出した。アゴニスト効果の≧50%の阻害を示す結果は有意であると考慮され、一方で25%未満の阻害を示す結果は有意であると考慮されない。BQ-788およびBQ-788-BのIC50は算出できなかった(すなわち、用量応答曲線は、検証された最大検査濃度で25%未満の効果を示す)。
【0190】
特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストに関するETBR阻害効果の判定。図6は、特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストが、黒色腫性の増殖と転移を阻害し、および黒色腫性腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導することを実証する。細胞のアゴニスト効果を、ETB(h)に対する既知の基準アゴニストへの制御反応の%として算出し、細胞のアンタゴニスト効果を、ETBに対する制御基準アゴニスト反応の%阻害として算出した。アゴニスト効果の≧50%の阻害を示す結果は有意であると考慮され、一方で25%未満の阻害を示す結果は有意であると考慮されない。非重水素化ETRBアンタゴニストのIC50は5.1E08Mであり、Kdは1.3E-08であった。一方で、特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストのIC50は9.6E-08Mであり、Kdは2.5E-08であった。驚くことに、インビボのPK研究において、特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストは、非重水素化相当物に比べて生物活性の増強を実証した。
【0191】
BQ-788対BQ-788-Bの血漿濃度。図7は、BQ-788-B(曲線「B」)、BQ-788の重水素化アナログが、BQ-788に比べて血漿中濃度の増強を実証することを示す。簡単に、ラット(1つの時点につきN=4の動物)に、IV注入を介して250μg/kgの投与量で、BQ-788、または重水素化形態であるBQ-788-Bのいずれかを投与した。血漿サンプルを様々な時点で集め、ET-1 ELISAを行った。BQ788およびBQ788-Bは、血漿中で急速に分解されるペプチド薬物であり、ゆえに薬物レベルは直接検出するのが困難である。しかし、BQ788がETBRに結合すると、結果としてET-1、すなわちETBRのリガンドの血漿濃度が増加する。そのため、ET-1の血漿レベルは一般的に、BQ-788の生物活性の間接的な測定値として使用される。有意に、重水素化化合物BQ-788-Bは、BQ-788と比較されるように、約3時間に延長されたピークアウトにより例証されるような非重水素化形態に比べて反応の持続期間と振幅の増強を実証し、これにより、約30分での一時的なピークが実証される。BQ-788-BのIC50は9.6E-08M(MW=665.37)である。BQ-788のIC50は5.6E-08(MW=663.78)である。
【0192】
抗PD1と組み合わせたBQ-788-Bは、相乗効果の結果を実証する。特異的に重水素化された化合物および免疫療法剤(図8)の二重の組み合わせの結果、承認された制癌剤との組み合わせに比べて優れた効果が生じる。同系黒色腫モデルV600E+(BRAF変異)SM1腫瘍モデルをC57BL/6マウスに使用することで、処置の標準である抗PD1(「D+P」)と組み合わせたダブラフェニブと比較して、免疫療法剤(「B+P」)と組み合わせた重水素化ETRBアンタゴニストの効果を評価した。以前の試験は、V600E+モデルが、単一薬剤(および小さな腫瘍浸潤リンパ球(TIL))として抗PD1に対する効果のなさを実証したことを示している。この研究において、6-8週齢のメスのC57BL/6マウスに、SM1腫瘍フラグメント(TME成分が存在)を接種した。腫瘍が150mm3のとき、投薬を開始した。一般的な投薬スキームは、次のとおりであった:ダブラフェニブ(経口胃管栄養により毎日30mg/kg)、免疫療法薬(ダブラフェニブの2日後に10mg/kgのQ4D IPを開始)、重水素化ETRBアンタゴニスト(ダブラフェニブの2日後に4μgのQOD IV投与を開始)。腫瘍を週に3回測定し、投薬の21日後に研究を終了し、腫瘍のIHC解析を行った。免疫療法剤および重水素化ETRBアンタゴニストの二重の組み合わせにより、腫瘍収縮をベースライン未満に誘導した。全く対照的に、ダブラフェニブおよび免疫療法剤の標準的な組み合わせでは、腫瘍を収縮できなかったが、中間体腫瘍成長阻害が実証された。免疫療法剤および重水素化ETRBアンタゴニストで処置した腫瘍のIHC解析により、腫瘍は脂肪組織のみを残して根絶されたことが明らかとなった。要するに、免疫療法化合物と、本明細書に記載されるような特異的に重水素化されたETRBアンタゴニストとの組み合わせは、既存の治療範例に比べて腫瘍増殖の有意な改善をもたらした。
【0193】
BQ-788-Bと免疫チェックポイント阻害剤との二重の組み合わせは腫瘍を根絶する。図9は、図8に示されるような処置の21日後にC57BL/6マウスに移植されたV600E+黒色腫腫瘍細胞の組織学的検査の結果を実証する。特異的に重水素化された化合物BQ-788-Bおよび免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗PD1、抗PD1、抗CTLA)の併用療法により、21日で腫瘍が根絶し、CD8+リンパ球(TIL)による強固な浸潤、および3次リンパ器官(TLO)形成が促進された。TIL浸潤は、暗い斑点状の染色により例示される。TLOは、リンパ節と機能的に同等であり、腫瘍特異的なT細胞とB細胞を生成し、長期にわたる抗腫瘍免疫性を誘導する。
【0194】
抗PD1およびBQ-788-Bを含む併用療法により誘導された腫瘍内TLO形成。図10は、BQ-788-Bと抗PD1との併用療法を用いた、図8に示されるような処置の21日後に、C57BL/6マウスに移植されたV600E+黒色腫腫瘍細胞の組織学的検査を実証する。CD8+、CD4+、およびTreg(FoxP3)リンパ球の染色(暗い斑点状の染色)により、併用療法によってリンパ球の腫瘍への強力な動員が促され、このことは、腫瘍の根絶および陽性の患者転帰に関連付けられることが示される。
【0195】
BQ-788-Bでの処置に関連する腫瘍内(内部)TLO形成。図11は、併用療法(2および3つの部分)、TLO形成、および腫瘍根絶に対する効果と共に得られた結果の概要を示す表を提供する。試験したモデルシステムは、図8に記載されるとおりである。組み合わせとして、ダブラフェニブ+抗PD1(「D+P」);0.6μgでのダブラフェニブ+抗PD1+BQ-788-B(「D+P+B(0.6μg)」);4.0μgでのダブラフェニブ+抗PD1+BQ-788-B(「D+P+B(4.0μg)」);100μgでのダブラフェニブ+抗PD1+BQ-788-B(「D+P+B(100μg)」);および(4.0μg)での抗PD1+BQ-788-B(「P+B(4.0μg)」)が挙げられた。データは、(i)内部TLO形成が腫瘍根絶に関連付けられ;および(ii)抗PD1抗体とBQ-788-Bとの組み合わせが腫瘍内TLO形成および腫瘍減少に最も頻繁に関連付けられることを示している。図12は、腫瘍体積(mm3)の機能としての効果の結果を示す。BQ-788-Bを抗PD1に含めると相乗的となり、抗PD1に対する感度の回復が補助されると考えられる。抗PD1/BQ-788-Bの組み合わせにダブラフェニブすると効果が損なわれてしまい、これはおそらく、Tregおよび腫瘍関連マクロファージ(TAM)を増大させるダブラフェニブの能力によるものである。
【0196】
免疫チェックポイント阻害剤とダブラフェニブとの組み合わせにおける0.6μgのBQ-788-Bは、びまん性CD8+TIL染色を促進する。図13は、それぞれの併用療法を用いた、図8に示されるような処置の21日後にC57BL/6マウスに移植されたV600E+黒色腫腫瘍細胞の組織学的検査を実証する。CD8+TIL染色(暗い斑点状の染色)のびまん性分布は、TILの末梢性分布を伴うものと比較して高い効果に関連付けられる。
【0197】
ゆえに、本明細書に記載されるようなBQ-788の特異的に重水素化された形態、例えば本明細書に記載されるようなBQ-788-A、BQ-788-B、BQ-788-Cなどは、抗PD1が単一薬剤としての効果を欠く前臨床黒色腫モデルにおける抗腫瘍薬剤との相乗的活性を実証する。腫瘍の減少または根絶は、腫瘍内TLO形成または新生、および腫瘍末梢性TIL分布ではなくTILのびまん性浸潤パターンと、十分に相関される。TLO新生には予後があり、患者の生存率の増加と相関される。特異的に重水素化されたETBRアンタゴニストと抗腫瘍薬剤との二重の組み合わせは、(i)抗腫瘍効果;(ii)予期された低毒性(ヒトの親化合物の確立された安全性プロファイルに基づく);および(iii)全体的な処置コスト(三重の治療に対して)の観点で、他の二重および三重の組み合わせよりも優れている。加えて、IV投与により、IPまたはPO投与に比べて2-3倍規模の投与量減少が可能となる(例えば、200-600μgのBQ788対0.6-4.0μgの重水素化BQ-788の典型的な投与量)。
【0198】
実施例3.ヒト被験体における黒色腫の処置
【0199】
黒色腫、例えば悪性黒色腫や転移性黒色腫に悩むヒト患者に、本明細書に開示される処置のための方法に従って化合物または医薬組成物を投与する。この処置により、患者は治癒され、または、傷、ある点の境界から周囲の皮膚への色素の拡散、ほくろの境界を超える発赤または新たな膨張、かゆみ、圧痛、または疼痛などの感覚の変化、または、ほくろの表面の変化、すなわち鱗状、漏れ、出血、またはしこりやこぶの出現などの、患者の1つ以上の症状が改善される。
【0200】
実施例4.ヒト被験体における悪性固形腫瘍の処置
【0201】
悪性固形腫瘍、例えば膵臓腫瘍、卵巣腫瘍、肉腫、細胞腫、およびリンパ腫に悩むヒト患者に、本明細書に開示される処置のための方法に従い化合物または医薬組成物を投与する。この処置により、腫瘍体積または質量が減少し、または患者の腫瘍が根絶される。
【0202】
実施例5.ヒト被験体における膵臓癌の処置
【0203】
膵臓癌に悩むヒト患者に、本明細書に開示される処置のための方法に従い化合物または医薬組成物を投与する。この処置により、患者は治癒され、または、黄疸、色の薄い便、暗色の尿、上位または中位の腹部と背部の疼痛、体重減少、食欲不振、または疲労などの患者の1つ以上の症状が改善される。
【0204】
実施例6.ヒト被験体における卵巣癌の処置
【0205】
卵巣癌に悩むヒト患者に、本明細書に開示される処置のための方法に従い化合物または医薬組成物を投与する。この処置により、患者は治癒され、または、例えば以下の患者の1つ以上の症状が改善される:腹部膨満、消化不良または吐き気、食欲不振や早い満腹感などの食欲の変化、骨盤または腰の圧迫、頻繁または急な排尿の必要性および/または便秘、排便の変化、胴回りの増加、疲労または低エネルギー、または月経の変化。
【0206】
実施例7.ヒト被験体における有棘細胞癌の処置
【0207】
有棘細胞癌に悩むヒト患者に、本明細書に開示される処置のための方法に従い化合物または医薬組成物を投与する。この処置により、患者は治癒され、または、堅い赤色の小結節、鱗片状の痂皮、古い瘢痕または潰瘍上の新たな傷や隆起領域、唇や口内の荒く鱗片状の経路(path)、鱗片状の赤い斑点、傷の開口、または、肛門や生殖器の上または中の中央陥没を伴ういぼや発育上昇(elevated growth)などの、患者の1つ以上の症状が改善される。
【0208】
実施例8.ヒト被験体における膠芽腫の処置
【0209】
膠芽腫に悩むヒト患者に、本明細書に開示される処置のための方法に従い化合物または医薬組成物を投与する。この処置により、患者は治癒され、脳腫瘍が減少または根絶され、頭痛、吐き気、嘔吐、記憶喪失、嗜眠状態、視力障害、性格、気持ち、または集中力の変化、局所的な神経学的問題、または卒中などの患者の1つ以上の症状が改善される。
【0210】
本発明のいくつか実施形態が本明細書中で示され、かつ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明白である。多数の変形、変更、および置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲およびその同等物の範囲内の方法と構造は、それにより包含されることが、意図されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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