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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】脱水素システム、水素添加システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/26 20060101AFI20240816BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240816BHJP
   B01J 23/42 20060101ALN20240816BHJP
   B01J 35/50 20240101ALN20240816BHJP
   B01J 35/58 20240101ALN20240816BHJP
   C07C 5/367 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C01B3/26
C01B3/56 Z
B01J23/42 M
B01J35/50
B01J35/58 L
C07C5/367
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021078162
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171487
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2023-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028328
【氏名又は名称】株式会社辰巳菱機
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 豊嗣
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-111538(JP,A)
【文献】特開2003-306303(JP,A)
【文献】特開2004-250255(JP,A)
【文献】特開2005-022939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/26
C01B 3/56
B01J 21/00 - 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器と、
前記反応容器の側面に設けられた磁界発生部と、
前記反応容器の内側に設けられ、前記磁界発生部からの磁力線に基づいて発熱する被加熱部と、
前記被加熱部を保護する保護部と、
前記反応容器の内側に設けられ、脱水素反応を活性化させる触媒を担持する触媒保持部と、
管状に形成され、管の内部には、熱交換用の液体が流れる熱交換管部と、
水素が脱離する前の水素添加物を貯蔵する水素添加物タンクと、を備え、
前記反応容器からは、前記脱水素反応により水素と水素が脱離した物質が排出され、
前記熱交換管部は、前記反応容器の側面に設けられた第1領域と、前記水素添加物タンクの内部で前記水素添加物と接する第2領域とで、循環回路を形成し、
前記磁界発生部のコイルは、前記反応容器の側面に巻き付けられ、
前記熱交換管部の前記第1領域は、前記コイルと接する、脱水素システム。
【請求項2】
記熱交換管部の管は、非導電性材料で構成され、
前記熱交換管部の管の外壁の少なくとも一部に導電性材料が設けられ、前記導電性材料が前記磁界発生部として機能する、請求項1に記載の脱水素システム。
【請求項3】
記熱交換管部の管は、導電性材料で構成され、前記熱交換管部の管が前記磁界発生部として機能し、
前記第1領域には電流が流れ、前記第2領域には電流が流れないように、前記熱交換管部の管には、非導電性材料で構成された領域が設けられる、請求項1に記載の脱水素システム。
【請求項4】
前記被加熱部は、螺旋状のフィンを含み、
前記保護部は、前記フィンの表面に形成され、
前記触媒保持部は、前記保護部の前記フィンを覆う領域に形成される、請求項1~請求項3のいずれかに記載の脱水素システム。
【請求項5】
前記保護部は、被加熱部の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けて構成される、請求項1~請求項4のいずれかに記載の脱水素システム。
【請求項6】
反応容器と、
前記反応容器の側面に設けられた磁界発生部と、
前記反応容器の内側に設けられ、前記磁界発生部からの磁力線に基づいて発熱する被加熱部と、
前記被加熱部を保護する保護部と、
前記反応容器の内側に設けられ、水素添加反応を活性化させる触媒を担持する触媒保持部と、
管状に形成され、管の内部には、熱交換用の液体が流れる熱交換管部と、
前記水素添加反応により水素が添加される前の被添加物を貯蔵する被添加物タンクと、を備え、
前記反応容器からは、前記水素添加反応により水素が添加された水素添加物が排出され、
前記熱交換管部は、前記反応容器の側面に設けられた第1領域と、前記被添加物タンクの内部で前記被添加物と接する第2領域とで、循環回路を形成し、
前記磁界発生部のコイルは、前記反応容器の側面に巻き付けられ、
前記熱交換管部の前記第1領域は、前記コイルと接する、水素添加システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水素システム、及び水素添加システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、脱水素システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5632050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、脱水素反応で発生した熱が特に有効に用いられていない
【0005】
したがって本発明の目的は、発生した熱を有効に活用出来る脱水素システムなどを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る脱水素システムは、反応容器と、反応容器の側面に設けられた磁界発生部と、反応容器の内側に設けられ、磁界発生部からの磁力線に基づいて発熱する被加熱部と、被加熱部を保護する保護部と、反応容器の内側に設けられ、脱水素反応を活性化させる触媒を担持する触媒保持部と、管状に形成され、管の内部には、熱交換用の液体が流れる熱交換管部と、を備える。
反応容器からは、脱水素反応により水素と水素が脱離した物質が排出される。
熱交換管部は、反応容器の側面に設けられた第1領域と、水素が脱離する前の水素添加物を貯蔵する水素添加物タンクの内部で水素添加物と接する第2領域とで、循環回路を形成する。
【0007】
誘導加熱を用いることにより、燃焼など他の加熱装置を用いる形態に比べて、短時間での加熱が可能になる。
熱交換管部を使って、誘導加熱により高温になった反応容器及び熱交換管部の管の熱を吸収し、水素添加物タンクの水素添加物の保温若しくは加熱に利用することが可能になる。
【0008】
好ましくは、磁界発生部のコイルは、反応容器の側面に巻き付けられる。
熱交換管部の第1領域は、コイルと接する。
熱交換管部の管は、非導電性材料で構成される。
熱交換管部の管の外壁の少なくとも一部に導電性材料が設けられ、導電性材料が磁界発生部として機能する。
【0009】
熱交換管部の反応容器を巻き付ける領域の外側が、磁界発生部のコイルとして活用され、当該領域の内側が、熱交換用の液体の通路として有効活用することが可能になる。
【0010】
また、好ましくは、磁界発生部のコイルは、反応容器の側面に巻き付けられる。
熱交換管部の第1領域は、コイルと接する。
熱交換管部の管は、導電性材料で構成され、熱交換管部の管が磁界発生部として機能する。
第1領域には電流が流れ、第2領域には電流が流れないように、熱交換管部の管には、非導電性材料で構成された領域が設けられる。
【0011】
さらに好ましくは、被加熱部は、螺旋状のフィンを含む。
保護部は、フィンの表面に形成される。
触媒保持部は、保護部のフィンを覆う領域に形成される。
【0012】
さらに好ましくは、保護部は、被加熱部の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けて構成される。
【0013】
反応容器に取り込まれた水素添加物は、フィンに沿って、渦巻き状に回転しながら、移動する。このため、被反応物質が直線状に移動する形態に比べて、水素添加物が触媒と接触する領域を多くすることが可能になり、脱水素反応を行いやすく出来る。
【0014】
本発明に係る水素添加システムは、反応容器と、反応容器の側面に設けられた磁界発生部と、反応容器の内側に設けられ、磁界発生部からの磁力線に基づいて発熱する被加熱部と、被加熱部を保護する保護部と、反応容器の内側に設けられ、脱水素反応を活性化させる触媒を担持する触媒保持部と、管状に形成され、管の内部には、熱交換用の液体が流れる熱交換管部と、を備える。
反応容器からは、水素添加反応により水素が添加された水素添加物が排出される。
熱交換管部は、反応容器の側面に設けられた第1領域と、水素添加反応により水素が添加される前の被添加物を貯蔵する被添加物タンクの内部で被添加物と接する第2領域とで、循環回路を形成する。
【0015】
誘導加熱を用いることにより、燃焼など他の加熱装置を用いる形態に比べて、短時間での加熱が可能になる。
熱交換管部を使って、誘導加熱により高温になった反応容器の熱を吸収し、被添加物タンクの被添加物の保温若しくは加熱に利用することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、発生した熱を有効に活用出来る脱水素システムなどを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における脱水素システムの構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態における反応容器の第1タンクに近い側のものの断面構成図である。
図3】第2実施形態における脱水素システムの構成を示す模式図である。
図4】第3実施形態における反応容器の第1タンクに近い側のものの断面構成図である。
図5】第4実施形態における水素添加システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、第1実施形態について、図を用いて説明する。
なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。また、各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが出来る。
【0019】
第1実施形態における脱水素システム1は、メチルシクロヘキサンなどの有機ハイドライド(飽和縮合環炭化水素)から水素を取り出し、当該水素を外部の電力発生装置(不図示)などに供給する装置である。
【0020】
脱水素システム1は、第1タンク5、導入管6、加熱部7、脱水素反応部10、排出管50、吸引ポンプ60、水素抽出部70、水素タンク81、第2タンク82、検知部91、制御部93を備える(図1図2参照)。
【0021】
(第1タンク5)
第1タンク5は、水素添加物タンクとして、有機ハイドライドを貯蔵するタンクで、第1タンク5に貯蔵された有機ハイドライドは、原料ポンプ(不図示)、加熱部7を介して、脱水素反応部10の反応容器11に供給され、脱水素反応部10における脱水素反応で、トルエンなどの芳香族化合物と水素に分離される。
なお、原料ポンプと、後述する吸引ポンプ60は、いずれか一方だけが設けられる形態であってもよい。
【0022】
(導入管6)
導入管6は、第1タンク5、加熱部7、反応容器11を繋ぐ管であり、内部には、有機ハイドライドが流れる。
【0023】
(加熱部7)
加熱部7は、有機ハイドライドを加熱し、液体から気体に状態変化させ、後段の脱水素反応部10に気化した有機ハイドライドを供給する。
なお、加熱部7を省略し、脱水素反応部10の前段(第1タンク5に近い側の反応容器11)で、有機ハイドライドを液体から気体への状態変化させる形態であってもよい。
【0024】
(脱水素反応部10)
脱水素反応部10は、反応容器11、磁界発生部13、熱交換管部14、被加熱部15、保護部17、触媒保持部19を有する。
【0025】
(反応容器11)
反応容器11は、琺瑯で構成され、有機ハイドライド(被反応物質)について、触媒保持部19に担持された触媒を介して、水素と芳香族化合物(水素が脱離した物質)に分離させる脱水素反応を促進する容器である。
反応容器11の導入口11aには、導入管6が取り付けられ、導入口11aは、導入管6を介して、加熱部7と連通する。
反応容器11の排出口11bは、排出管50が取り付けられ、排出口11bは、排出管50を介して、吸引ポンプ60と連通する。
第1実施形態では、3つの反応容器11が設けられる例を示すが、反応容器の数は3つの限るものではなく、1つだけで構成されてもよいし、複数設けられてもよい。
また、第1実施形態では、3つの反応容器11が直列に並べられる例を示すが、並列に並べられてもよい。
【0026】
(磁界発生部13)
磁界発生部13は、誘導加熱用のコイルを含み、反応容器11の外壁近傍に巻き付けられる。
磁界発生部13は、ケーブル13aを介して、交流電源13bと接続される。
【0027】
(熱交換管部14)
熱交換管部14は、磁界発生部13のコイルに沿って、管状に形成され、管の内部には、熱交換用の液体(冷媒)が充填される。
熱交換管部14を構成する管は、反応容器11の外壁近傍に巻き付けられる第1領域14aから、第1タンク5の内部の有機ハイドライドと接する第2領域14bに延びる。第1領域14aと第2領域14bとで循環回路が形成される。
熱交換管部14を構成する管の内部の液体は、循環ポンプ14cを介して、循環回路内を循環する。
熱交換管部14を構成する管を流れる液体は、第1領域14aで温められ、第2領域14bで冷却される。
第2領域14bでは、第1タンク5の内部の有機ハイドライドが温められる。
【0028】
(磁界発生部13と熱交換管部14の構成)
熱交換管部14を構成する管は、非導電性材料で構成され、当該管の外壁の少なくとも一部に導電性材料が設けられる。当該導電性材料が磁界発生部13として機能し、ケーブル13aを介して交流電源13bと電気的に接続される。
【0029】
(被加熱部15)
被加熱部15は、鉄、ステンレスなど発熱効率が高い導電性材料で構成され、円柱形状を有し、側部が磁界発生部13のコイルに囲まれるようにして、反応容器11の内部に設けられる。
磁界発生部13のコイルに交流の電流が流れると、当該コイルの周りには磁力線が発生し、被加熱部15にはうず電流が流れ、被加熱部15が発熱する。
【0030】
(保護部17)
保護部17は、琺瑯などで構成され、被加熱部15の周囲を覆う。
保護部17は、被加熱部15の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けて構成される。ただし、保護部17を容器状に形成し、保護部17の内側に被加熱部15を挿入して、保護部17が被加熱部15を保持する形態であってもよい。
【0031】
(触媒保持部19)
触媒保持部19は、保護部17の周囲に設けられ、円筒形状を有する。
触媒保持部19は、炭素繊維不織布などで構成され、脱水素反応の触媒として使用される白金などを担持する。
【0032】
(排出管50)
排出管50は、反応容器11、吸引ポンプ60、水素抽出部70、水素タンク81、第2タンク82を繋ぐ管であり、内部には、水素、芳香族化合物、有機ハイドライドが流れる。
【0033】
(吸引ポンプ60)
吸引ポンプ60は、反応容器11から気体を吸引し、水素抽出部70に誘導する。
吸引ポンプ60は、排出管50を介して、第1分離部71と連通する。
吸引ポンプ60は、図1に示すように、反応容器11と第1分離部71の間に設けられる形態であってもよいし、第1分離部71と第2分離部72の間、若しくは第2分離部72と水素タンク81の間に設けられる形態であってもよい。また、吸引ポンプ60が、反応容器11と第1分離部71の間、第1分離部71と第2分離部72の間、第2分離部72と水素タンク81の間の2箇所以上に設けられる形態であってもよい。
【0034】
(水素抽出部70)
水素抽出部70は、第1分離部71、第2分離部72を有する。
【0035】
第1分離部71は、冷却装置と、気液分離器を含む。
第1分離部71の冷却装置は、チラーなどで構成され、反応容器11からの気体を冷却する。
第1分離部71の気液分離器は、第1分離部71の冷却装置で冷却された物質を液体と気体とに分離する。
第1分離部71で分離された液体(液化した有機ハイドライド、及び液化した芳香族化合物)は、第2タンク82に供給される。
第1分離部71で分離された気体(水素、液化していない有機ハイドライド、液化していない芳香族化合物、及び不純物)は、第2分離部72に供給される。
【0036】
第1分離部71の気体排出口は、排出管50を介して、第2分離部72と連通する。
第1分離部71の液体排出口は、排出管50を介して、第2タンク82と連通する。
【0037】
第2分離部72は、水素と、水素以外の他の物質とを分離するための水素分離膜を有する。
第1分離部71の気液分離器から排出された気体について、水素を他の物質と分離するように、第2分離部72の水素分離膜は、第1分離部71の気液分離器に対して気体の流れの下流に配置される。
第2分離部72で分離された水素、すなわち水素分離膜を通過した水素は、水素タンク81に供給される。
第2分離部72で分離された水素以外の物質、すなわち水素分離膜を通過しなかった物質は、第2タンク82若しくは、他のタンク(不図示)に供給される。
【0038】
第2分離部72の水素分離膜を通過した側の排出口は、排出管50を介して、水素タンク81と連通する。
第2分離部72の水素分離膜を通過しなかった側の排出口は、排出管50を介して、第2タンク82若しくは他のタンクと連通する。
【0039】
(水素タンク81)
水素タンク81は、反応容器11で精製され、水素抽出部70で抽出された水素を貯蔵する。
水素タンク81は、水素を供給可能な状態で電力発生装置(不図示)と連通してもよい。
当該電力発生装置は、水素タンク81から供給された水素に基づいて電力を発生させ、蓄電装置(不図示)や電気機器(不図示)に電力を供給する。
また、水素タンク81を設けずに、水素抽出部70で抽出された水素が、直接電力発生装置に供給される形態であってもよい。
【0040】
(第2タンク82)
第2タンク82は、反応容器11から排出された水素以外の物質(有機ハイドライド、芳香族化合物など)を貯蔵する。
【0041】
なお、反応容器11から排出された水素以外の物質(有機ハイドライド、芳香族化合物など)の一部又は全部は、第2タンク82を介して、もしくは第2タンク82を介さずに、反応容器11の導入口11aに戻されて、再度の脱水素反応に用いられてもよい。
【0042】
(検知部91)
検知部91は、温度センサなどで、反応容器11の内部であって、触媒保持部19の近傍に設けられ、触媒保持部19の近傍の温度に関する情報を取得する。
【0043】
(制御部93)
制御部93は、磁界発生部13の交流電源13b、吸引ポンプ60など、脱水素システム1を構成する電気機器を制御する。
特に、制御部93は、検知部91で得られた触媒保持部19の近傍の温度に関する情報に基づいて、交流電源13bの調整、即ち、磁界発生部13のコイルへの電力供給を調整する。
磁界発生部13のコイルへの電力供給の調整により、被加熱部15の発熱量が調整される。
【0044】
(水素抽出手順)
次に、第1実施形態における脱水素システム1を使った水素の抽出手順を説明する。
予め、反応容器11には、磁界発生部13、熱交換管部14、及び被加熱部15が取り付けられている。
磁熱交換管部14の管には、液体(冷媒)が充填されている。
第1タンク5には、有機ハイドライドが充填されている。
【0045】
制御部93は、交流電源13bから、磁界発生部13に電力供給を行わせる。
誘導加熱により、被加熱部15が発熱し、触媒保持部19に担持された触媒が被加熱部15からの熱で温められる。
触媒保持部19に担持された触媒が所定の温度(例えば、200℃)になると、脱水素反応が活性化可能な状態となる。
制御部93は、加熱部7を動作させ、第1タンク5から供給された有機ハイドライドを温め、気化させる。
制御部93は、吸引ポンプ60を動作させ、加熱部7で気化した有機ハイドライドを、反応容器11の内部に誘導する。
気化した有機ハイドライドは、反応容器11の内部で触媒保持部19に担持された触媒と接触する。
このときに、脱水素反応により、有機ハイドライドは、水素と芳香族化合物に分離される。
反応容器11の内部の気体(有機ハイドライド、芳香族化合物、水素)は、排出管50を通って、水素抽出部70に送られる。
【0046】
水素抽出部70の第1分離部71では、気体が冷却された後、気体(主に水素)と液体(主に有機ハイドライドと芳香族化合物)に分離される。
第1分離部71で分離された気体は、第2分離部72に送られる。
第1分離部71で分離された液体は、第2タンク82に送られる。
【0047】
水素抽出部70の第2分離部72では、水素分離膜を通った水素と、水素分離膜を通らなかった他の物質とに分離される。
第2分離部72で分離された水素は、水素タンク81に送られる。
第2分離部72で分離された水素以外の物質は、第2タンク82(若しくは他のタンク)に送られる。
【0048】
水素タンク81には、反応容器11で発生した水素が貯蔵される。
第2タンク82には、有機ハイドライドや芳香族化合物が貯蔵される。
【0049】
(誘導加熱を用いることの効果)
誘導加熱を用いることにより、燃焼など他の加熱装置を用いる形態に比べて、短時間での加熱が可能になる。
【0050】
(熱交換管部14を用いることの効果)
熱交換管部14を使って、誘導加熱により高温になった反応容器11及び熱交換管部14の管の熱を吸収し、第1タンク5の有機ハイドライド(水素添加物)の保温若しくは加熱に利用することが可能になる。
【0051】
(磁界発生部13と熱交換管部14を一体的に構成することの効果)
熱交換部14の反応容器11を巻き付ける領域の外側が、磁界発生部13のコイルとして活用され、当該領域の内側が、熱交換用の液体の通路として有効活用することが可能になる。
【0052】
(磁界発生部13と熱交換管部14の構成の応用例)
第1実施形態では、熱交換管部14の管が非導電性材料で構成される例を説明した。
しかしながら、熱交換管部14の管が、導電性材料で構成され、管の一部が磁界発生部13として機能してもよい(図3参照、第2実施形態)。この場合、熱交換管部14がケーブル13aを介して交流電源13bと電気的に接続される。図3では、熱交換管部14の磁界発生部13として機能する部分を黒で示す。
ただし、この場合は、第1領域14aに交流電源13bからの電流が流れ、且つ第2領域14bに交流電源13bからの電流が流れないようにするため、熱交換管部14の一部であって、磁界発生部13として機能しない部分、すなわち、誘導加熱用のコイルとして電流を流さない部分(例えば、循環ポンプ14cの近傍)に、非導電性材料で構成された領域(非導電領域14d)が設けられる。
【0053】
また、磁界発生部13と熱交換管部14とは、少なくとも一部が接触し、一体的に構成される例を説明した。しかしながら、磁界発生部13と熱交換管部14は、接触せずに、別体で構成されてもよい。
【0054】
(磁界発生部13と熱交換管部14の形状の応用例)
第1実施形態及び第2実施形態では、磁界発生部13、及び熱交換管部14の反応容器11の側面に設けられる部分が、当該側面を巻くコイル状に形成される例を説明した。しかしながら、コイル状の領域は、反応容器11の側面に巻き付けられずに、当該側面の近傍に設けられる形態であってもよい。
【0055】
(被加熱部15の形状の応用例)
第1実施形態及び第2実施形態では、被加熱部15が略柱形状(例えば、円柱形状)であるとして説明した。
しかしながら、被加熱部15は、略柱形状の本体の側部にフィン15aが設けられてもよい(第3実施形態、図4参照)。フィン15aは、例えば、螺旋状に形成される。
この場合、保護部17は、フィン15aの表面にも形成される。また、触媒保持部19は、保護部17のフィン15aを覆う領域にも形成される。
フィン15aを設けた場合には、略柱形状の本体が省略されてもよい。
【0056】
略柱形状の本体にフィン15aが追加された場合、フィン15aは、銅、アルミニウムなど発熱効率が低い(磁力線によって発熱しにくい)材料で構成されるのが望ましい。
略柱形状の本体を省略し、フィン15aだけで被加熱部15が構成された場合、フィン15aは、鉄、ステンレスなど発熱効率が高い(磁力線によって発熱しやすい)材料で構成される。
【0057】
(フィン15aを設けたことの効果)
反応容器11に取り込まれた有機ハイドライドなど被反応物質は、フィン15aに沿って、渦巻き状に回転しながら、移動する。このため、被反応物質が直線状に移動する形態に比べて、被反応物質が触媒と接触する領域を多くすることが可能になり、脱水素反応を行いやすく出来る。
【0058】
(脱水素システム1の水素添加物の応用例)
また、本実施形態では、脱水素システム1の水素添加物が環炭化水素で、水素が脱離した物質が芳香族化合物であるとして説明したが、触媒を用いて水素を脱離させる他の物質を水素添加物として用いても良い。
例えば、エタノールやメタノールなどの鎖状炭化水素が、脱水素システム1の水素添加物として用いられてもよいし、アンモニアが、脱水素システム1の水素添加物として用いられても良い。なお、アンモニアを水素添加物として用いる場合は、常温で気化した状態であるため、加熱部7は設けなくてもよい。
【0059】
(水素添加システム2への応用例)
本実施形態では、反応容器11が脱水素システム1として使用される、すなわち、反応容器11が脱水素反応に使用されるものとして説明した。しかしながら、反応容器11が水素添加システム2として使用されてもよい(第4実施形態、図5参照)。この場合、第1タンク5は、被添加物タンクとして、芳香族化合物など水素が添加される前の物質(被添加物)を貯蔵し、反応容器11は、水素添加反応に使用され、第2タンク82は、水素添加物タンクとして、有機ハイドライドなどの水素添加物を貯蔵し、水素タンク81は、反応容器11の導入口11aと連通する。
【0060】
なお、水素添加反応は発熱反応であるため、水素添加反応が活性化するまでは、磁界発生部13を用いた誘導加熱が必要になるが、活性化した後は、誘導加熱はあまり必要でない。ただし、第1タンク5の被添加物を加熱しておく必要があり、熱交換管部14を使った第1領域14aから第2領域14bへの熱伝達が特に有効となる。
一方、脱水素反応は吸熱反応であるため、脱水素反応が活性化した後も、反応容器11を温め続ける必要があるし、熱交換管部14を使った第1領域14aから第2領域14bへの熱伝達を使って第1タンク5の水素添加物を加熱しておく必要もある。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 脱水素システム
2 水素添加システム
5 第1タンク
6 導入管
7 加熱部
10 脱水素反応部
11 反応容器
11a 導入口
11b 排出口
13 磁界発生部
13a ケーブル
13b 交流電源
14 熱交換管部
14a 第1領域
14b 第2領域
14c 循環ポンプ
14d 非導電領域
15 被加熱部
17 保護部
19 触媒保持部
50 排出管
60 吸引ポンプ
70 水素抽出部
71 第1分離部
72 第2分離部
81 水素タンク
82 第2タンク
91 検知部
93 制御部
図1
図2
図3
図4
図5