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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】工具用ソケット
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B25B21/00 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021168896
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023059026
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594150235
【氏名又は名称】株式会社プロス
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 利明
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055478(JP,A)
【文献】特開2008-155297(JP,A)
【文献】特開2007-007843(JP,A)
【文献】特開平06-344321(JP,A)
【文献】登録実用新案第3136768(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00 - 21/02
B25B 23/0035
B25B 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転する回転軸部を有する工具に装着され、前記回転軸部の回転力を締結具に伝達させる工具用ソケットであって、
前記工具用ソケットは、
前記回転軸の軸方向の一方向である装着方向の側に、前記回転軸部を収容可能な回転軸部用凹部を有し、前記軸方向の他方向である離脱方向の側に、前記締結具と嵌合可能な締結具用嵌合部を有するソケット本体と、
前記ソケット本体の外側壁に取り付けられ、前記回転軸部と前記ソケット本体との脱着および保持を切り替える、筒形状を有する切替部材と
を備え、
前記切替部材は、前記ソケット本体に対して、前記軸方向に沿って、前記回転軸部用凹部が前記回転軸部を保持可能な保持位置と、前記回転軸部用凹部が前記回転軸部と脱着可能な脱着位置との間でスライド可能であり、
前記ソケット本体は、ソケット本体側係合部を外側壁に有し、
前記切替部材は、切替部材側係合部を内側壁に有し、
前記切替部材が前記保持位置に位置するときに、前記ソケット本体側係合部が、前記切替部材の前記脱着位置へのスライドの負荷となるように、前記ソケット本体側係合部が前記軸方向に対して交差する径方向の外側に付勢されることにより、前記切替部材側係合部と前記軸方向で係合する、工具用ソケット。
【請求項2】
前記脱着位置から前記保持位置に向かって、前記切替部材を付勢する付勢部材をさらに備える、請求項1記載の工具用ソケット。
【請求項3】
前記ソケット本体側係合部は、
前記切替部材側係合部と前記軸方向で係合する第1の球体と、
前記第1の球体を前記回転軸の径方向にスライドするように案内する第1の案内部と、
前記第1の球体を前記径方向の外側に付勢する付勢体と、
を含み、
前記切替部材側係合部は、
前記保持位置で前記第1の球体と前記径方向で対向するように、前記切替部材の内側壁において前記径方向の外側に向かって窪む第1の切替凹部
を含み、
前記第1の案内部は、前記第1の球体を、
前記ソケット本体の外側面から前記径方向の外側に部分的に突出する係合位置と、
前記係合位置より前記径方向の内側に位置する係合解除位置と
の間でスライドするように案内し、
前記付勢体は、前記係合位置に向かって、前記第1の球体を付勢しており、
前記切替部材が前記保持位置に位置するときに、前記第1の球体が、前記付勢体の付勢力によって前記係合位置に位置することで、前記第1の切替凹部に部分的に挿入されて前記第1の切替凹部と前記離脱方向で係合し、
前記切替部材が前記保持位置から前記脱着位置に移動するときに、前記第1の球体が、前記付勢体の付勢力に抗して前記第1の切替凹部から離脱して前記係合解除位置に位置することで、前記第1の切替凹部との係合が解除される、請求項2記載の工具用ソケット。
【請求項4】
前記ソケット本体は、前記回転軸部の外周に係合部として設けられた工具側装着部と係合可能なソケット側装着部を有し、前記ソケット側装着部は、
前記工具側装着部と前記軸方向で係合する装着部係合部と、
前記装着部係合部を前記径方向にスライドするように案内する第2の案内部と
を含み、
前記第2の案内部は、前記装着部係合部を、
前記ソケット本体から前記径方向の外側に突出する押圧位置と、
前記押圧位置より前記径方向の内側に位置し、前記回転軸部用凹部の内周面から前記径方向の内側に突出する押圧解除位置と
の間でスライドするように案内し、
前記切替部材は、前記脱着位置で前記ソケット側装着部と前記径方向で対向するように、内側壁において前記径方向の外側に窪む第2の切替凹部をさらに備え、
前記回転軸部用凹部は、前記工具側装着部が前記装着部係合部と係合する装着位置に対して前記回転軸部が挿入される開口側に、半装着区間を有し、
前記回転軸部が前記回転軸部用凹部に挿入されると、
前記半装着区間において、前記装着部係合部が、前記回転軸部との当接によって、前記第2の切替凹部に部分的に挿入されて前記押圧位置に位置することで、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記切替部材を押圧して前記脱着位置に移動させ、
前記装着位置において、前記装着部係合部が、前記工具側装着部との係合によって、前記第2の切替凹部から離脱して前記押圧解除位置に位置することで、前記付勢部材の付勢力によって、前記切替部材を保持位置に移動させる、請求項3記載の工具用ソケット。
【請求項5】
前記切替部材は、前記第1の切替凹部および前記第2の切替凹部として共用される、内周壁の全周に亘る溝部を備える、請求項4記載の工具用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトやナットなどの締結具をインパクトレンチなどの工具によって締結するために、アンビルなどの工具の回転軸部にインパクトレンチ用ソケットなどの工具用ソケットが装着される。インパクトレンチに装着されたソケットは、作業者の意図に反して、インパクトレンチから脱落することがあり、締結作業の作業効率を低下させることがある。
【0003】
特許文献1には、回転軸の軸方向でアンビルに取り付けられるソケット本体と、ソケット本体の外周面に取り付けられ、ソケット本体に対して、軸方向へのスライドおよび周方向への回転を行うことで、ソケット本体のアンビルとの脱着および保持を切り替える切替部材を備えるインパクトレンチ用ソケット(以下、「ソケット」と呼ぶ)が開示されている。特許文献1のソケットでは、ソケット本体の側壁の所定の位置に、外側面と内側面(アンビル装着用凹部の内周面)との間を貫通する貫通孔が設けられ、貫通孔の内部に、球体が径方向に移動可能に収容され、切替部材の側壁の所定の位置に、外側面と内側面との間を貫通する切替孔が設けられている。
【0004】
ソケット本体に対して切替部材を所定の回転位置に位置合わせした後に所定の軸方向位置にスライドさせた状態で、インパクトレンチ用ソケットにアンビルが挿入されると、アンビルがアンビル装着用凹部の内周面から径方向内側に突出する球体を径方向外側に押圧して移動させる。この移動によって、ソケット本体の外側面から径方向外側に突出した球体の一部が、切替孔に収容されることで、アンビルをアンビル装着用凹部の奥まで挿入することができる。これにより、ソケットがインパクトレンチに装着される。ソケットのインパクトレンチへの装着後に、ソケット本体に対して切替部材を所定の軸方向位置から外れるようにスライドさせると、球体が切替孔から離脱し、切替部材の内周面に径方向内側に押圧されて移動する。この移動によって、アンビル装着用凹部の内周面から径方向内側に突出した球体の一部が、アンビルに設けられる装着凹部に収容されることで、球体が装着凹部と係合する。これにより、ソケットとインパクトレンチとの装着状態が維持されるので、作業者の意図に反して、ソケットがインパクトレンチから脱落することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-55478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のソケットでは、ソケットをインパクトレンチに装着するか、または取り外すときに、切替部材をソケット本体に対して、所定の回転位置に位置合わせする操作、および軸方向にスライドさせる操作の2段階の操作を必要とする。したがって、ソケットとインパクトレンチとの脱着作業が煩雑になる。また、所定の回転位置に位置合わせ可能なように、位置合わせ用の目印をソケット本体と切替部材の両方に設ける必要があり、ソケットの製造に手間が掛かる。さらに、締結作業の際に位置合わせ用の目印が汚れるなどによって、位置合わせ用の目印の判別が付きにくくなり、ソケット本体と切替部材との位置合わせが困難になる場合も想定される。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、工具からの離脱を抑制しつつ、工具との脱着作業を簡便となる工具用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る工具用ソケットは、回転軸周りに回転する回転軸部を有する工具に装着され、前記回転軸部の回転力を締結具に伝達させる工具用ソケットであって、前記工具用ソケットは、前記回転軸の軸方向の一方向である装着方向の側に、前記回転軸部を収容可能な回転軸部用凹部を有し、前記軸方向の他方向である離脱方向の側に、前記締結具と嵌合可能な締結具用嵌合部を有するソケット本体と、前記ソケット本体の外側壁に取り付けられ、前記回転軸部と前記ソケット本体との脱着および保持を切り替える、筒形状を有する切替部材とを備え、前記切替部材は、前記ソケット本体に対して、前記軸方向に沿って、前記回転軸部用凹部が前記回転軸部を保持可能な保持位置と、前記回転軸部用凹部が前記回転軸部と脱着可能な脱着位置との間でスライド可能であり、前記ソケット本体は、ソケット本体側係合部を外側壁に有し、前記切替部材は、切替部材側係合部を内側壁に有し、前記切替部材が前記保持位置に位置するときに、前記ソケット本体側係合部が、前記切替部材の前記脱着位置へのスライドの負荷となるように、前記切替部材側係合部と係合する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る工具用ソケットによれば、工具からの離脱を抑制しつつ、工具との脱着作業を簡便にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る工具用ソケット、当該工具用ソケットを取り付ける工具、および当該工具用ソケットによって締結される締結具を示す、模式的な斜視図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る工具用ソケットのソケット本体を示す、軸方向に平行な断面図である。
図2B図2A中のIIB-IIB線における断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る工具用ソケットの切替部材を示す、軸方向に平行な断面図である。
図4A】本発明の一実施形態において、工具の回転軸部が挿入区間に位置するときの、ソケット本体側係合部およびソケット側装着部を横切る断面図である。
図4B】本発明の一実施形態において、工具の回転軸部が半装着区間に位置するときの、ソケット本体側係合部およびソケット側装着部を横切る断面図である。
図4C】本発明の一実施形態において、工具の回転軸部が装着区間に位置するときの、ソケット本体側係合部およびソケット側装着部を横切る断面図である。
図5A図4Aまたは図4Cにおける、ソケット本体側係合部の周辺の模式的な拡大図である。
図5B図4Bにおける、ソケット本体側係合部の周辺の模式的な拡大図である。
図6A図4Aにおける、ソケット側装着部の周辺の模式的な拡大図である。
図6B図4Bにおける、ソケット側装着部の周辺の模式的な拡大図である。
図6C図4Cにおける、ソケット側装着部の周辺の模式的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る工具用ソケットを説明する。なお、以下に示す実施形態は、あくまで一例であり、本発明の工具用ソケットは、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、C形状の角部が面取りされた形状など、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る工具用ソケット1を示している。本実施形態に係る工具用ソケット1は、装着されるべき工具Tの回転軸部T1および締結すべき締結具Fの種類と合致するように、工具Tに取り外し可能に取り付けられるアダプタである。工具用ソケット1は、回転軸R周りに回転する回転軸部T1を有する工具Tに装着され、回転軸部T1の回転力を締結具Fに伝達させる。
【0013】
なお、本明細書では、回転軸部T1の回転軸Rに平行な方向を軸方向R1と呼び、軸方向R1の一方向を装着方向R11、軸方向R1の他方向を離脱方向R12と呼ぶ。なお、軸方向R1は、回転軸部T1の回転運動が伝達される回転軸Rの方向を指し、軸方向R1は、必ずしも一直線状でなくてもよい。たとえば、回転軸Rの中途で、いわゆるユニバーサルジョイントなどによって、工具Tの回転軸Rが工具Tから延びる方向と異なるように、軸方向R1が変換されていてもよい。また、本明細書では、回転軸部T1の回転軸Rと交差する方向を径方向R2と呼ぶ。本実施形態では、径方向R2は、回転軸部T1の回転軸Rに垂直な方向である。
【0014】
工具Tは、図1に示されるように、工具用ソケット1を介して、締結具Fを締結するために必要な回転力を締結具Fに伝達させる。本実施形態の工具用ソケット1が装着される工具Tは、回転軸R周りの回転力を工具用ソケット1に伝達可能であれば、特に限定されない。工具Tは、図1では、回転軸部T1を電動で回転させる、いわゆるインパクトレンチなどの電動レンチとして示されている。しかし、工具Tは、電動工具に限定されず、手動で締結具Fを締結するための手動レンチなどの手動工具であってもよいし、他の種類の工具であってもよい。本実施形態では、図1に示されるように、回転軸部T1は、工具用ソケット1に直接装着可能であるように、後述する回転軸部用凹部2aと嵌合する、工具Tと一体的な嵌合凸部として構成されている。具体的には、回転軸部T1は、工具Tの本体から軸方向R1に突出する、四角柱状の形状を有している。より具体的には、工具用ソケット1を安定して装着可能であるように、回転軸部T1は、後述する工具用ソケット1のソケット側装着部22(図2Aおよび図2B参照)と係合可能な係合部として設けられた工具側装着部T11を外周に有している(図1では視認できないが、工具側装着部T11は、四角柱状の回転軸部T1の1つの外側面(径方向R2を向く外側面)と、当該外側壁に対して反対側の別の外側面との間を貫通する貫通孔として設けられている)。しかし、回転軸部T1は、工具Tの回転軸Rに取り外し可能に取り付けられる、工具用ソケット1とは別途のアダプタであってもよい。
【0015】
締結具Fは、締結対象に締結される。図1では、締結具Fは、ボルト(図示せず。たとえば、六角ボルト)と螺合するナット(図1では、六角ナット)として示されている。しかし、締結具Fは、プラスネジ、マイナスネジ、六角穴ネジなどのその他の締結具であってもよい。
【0016】
工具用ソケット1は、図1に示されるように、装着方向R11の側に、回転軸部T1を収容可能な回転軸部用凹部2aを有し、離脱方向R12の側に、締結具Fと嵌合可能な締結具用嵌合部2bを有するソケット本体2(図2Aおよび図2Bも参照)と、ソケット本体2の外側壁に取り付けられ、回転軸部T1とソケット本体2との脱着および保持を切り替える、筒形状を有する切替部材3(図3も参照)とを備えている。切替部材3は、ソケット本体2に対して、軸方向R1に沿って、回転軸部用凹部2aが回転軸部T1を保持可能な保持位置(図4C参照)と、回転軸部用凹部2aが回転軸部T1と脱着可能な脱着位置(図4B参照)との間でスライド可能となっている。本実施形態では、工具用ソケット1は、切替部材3を付勢する付勢部材4をさらに備えている(図4A図4C参照)。
【0017】
ソケット本体2は、図1に示されるように、工具Tの回転軸部T1に装着され、締結具Fと嵌合することで、工具Tの回転力を締結具Fに伝達させて、締結具Fを締結する。本実施形態では、ソケット本体2は、切替部材3がソケット本体2に対して軸方向R1にスライド可能であるように、軸方向R1に延びる柱状の形状を有している。より具体的には、ソケット本体2は、軸方向R1に延びる円柱状の形状を有している。なお、ソケット本体2の形状は、切替部材3が軸方向R1にスライド可能であれば、角柱状の形状など、その他の形状であってもよい。本実施形態では、図2Aに示されるように、ソケット本体2は、付勢部材4を収容する空隙S(図4A図4C参照)を切替部材3との間に形成するように、ソケット本体2の外周に対して径方向内側に部分的に切り欠かれた、装着方向R11側の端部において離脱方向R12に延びる切欠部(段部)2nを有している。さらに、本実施形態では、ソケット本体2は、切替部材3が保持位置を越えてスライドすることを抑制するように、切欠部2nの装着方向R11側の端部に、切欠部2nから径方向R2の外側に突出するように固定される別体のリング部材2rを有している。この場合、付勢部材4を装着方向R11からソケット本体2に外嵌した後に、リング部材2rを固定することで、付勢部材4のソケット本体2への組み付けが容易になる。
【0018】
なお、図1では、ソケット本体2は、ソケット本体2の締結具用嵌合部2b側の部位と回転軸部用凹部2aの部位とが一体的に設けられているが、締結具Fの種類に応じて交換可能であるように、ソケット本体2の締結具用嵌合部2b側の部位が、回転軸部用凹部2aの部位に対して、取り外し可能に取り付けられていてもよい。
【0019】
ソケット本体2の回転軸部用凹部2aは、図1に示されるように、回転軸部T1が装着方向R11側の開口A(図2A参照)から、回転軸部T1の突き当て部となるように、回転軸部T1の先端面と軸方向R1に当接可能な端面B(図2A参照)に向かって挿入されることで、回転軸部T1に取り外し可能に取り付けられる。本実施形態では、回転軸部用凹部2aは、四角柱状の回転軸部T1と嵌合するように、ソケット本体2の装着方向R11側の端面から、四角柱状に窪む嵌合凹部である。しかし、回転軸部用凹部2aの形状は、回転軸部T1の形状に応じて、適宜変更され得る。
【0020】
本実施形態では、図4Cに示されるように、回転軸部用凹部2aの内部の装着位置L1(図2A参照。図2Aでは、装着位置L1は、回転軸部T1の端部が位置する位置として示されている)において、回転軸部T1の工具側装着部T11が、ソケット側装着部22と軸方向R1で係合する。本実施形態では、装着位置L1は、回転軸部T1が完全に挿入された装着状態において、工具側装着部T11がソケット側装着部22と係合したときの、回転軸部T1(回転軸部T1の先端)の位置である。また、本実施形態では、図2Aに示されるように、回転軸部用凹部2aは、装着位置L1に対して開口A側に、半装着区間L2を有している(図2Aでは、半装着区間L2は、回転軸部T1の端部が位置する位置として示されている)。具体的には、半装着区間L2では、図4Bに示されるように、回転軸部T1の側面が、ソケット側装着部22と径方向R2で当接する。本実施形態では、半装着区間L2は、軸方向R1で回転軸部T1の先端がソケット側装着部22に到達した位置から装着位置L1まで(工具側装着部T11がソケット側装着部22に係合するまで)の間の区間である。さらに、本実施形態では、図2Aに示されるように、回転軸部用凹部2aは、半装着区間L2に対して開口A側に、挿入区間L3を有している(図2Aでは、挿入区間L3は、回転軸部T1の端部が位置する位置として示されている)。具体的には、挿入区間L3では、図4Aに示されるように、回転軸部T1が、ソケット側装着部22と当接しない。本実施形態では、挿入区間L3は、回転軸部T1の先端が軸方向R1で開口Aを越えて、ソケット側装着部22に到達するまでの区間である。本実施形態では、回転軸部用凹部2aは、開口A(装着方向R11)側から順に、挿入区間L3、半装着区間L2、装着位置L1を内部空間に有している。しかし、回転軸部用凹部2aの内部空間は、回転軸部T1が開口Aから挿入可能であれば、その形態は問わない。なお、挿入区間L3は、図2Aに示されるように、装着方向R11側の端部に、開口Aに向かって拡径する案内区間L30を含んでいてもよい。この場合、ソケット本体2を回転軸部T1に装着する時に、回転軸部T1が案内区間L30によって回転軸部用凹部2aの内部に案内されるので、工具用ソケット1の工具Tへの装着が容易になる。
【0021】
ソケット本体2の締結具用嵌合部2bは、本実施形態では、六角ナットである締結具Fに嵌合するように、ソケット本体2の離脱方向R12側の端面から六角柱状に窪む、嵌合凹部である。しかし、締結具用嵌合部2bの形状は、締結具Fの形状に応じて、適宜変更され得る。たとえば、締結具Fがプラスネジ、マイナスネジ、六角穴ネジである場合には、締結具用嵌合部2bは、プラスネジ、マイナスネジ、六角穴ネジのそれぞれの嵌合凹部である、直角に交差する2本の溝部、直線状の1本の溝部、六角形状の凹部に嵌合するように、ソケット本体2の離脱方向R12側の端面から突出する、嵌合凸部とすることができる。
【0022】
ソケット本体2は、図2A図2B、および図4A図4Cに示されるように、ソケット本体側係合部21を外側壁に有している。ソケット本体側係合部21は、切替部材3が保持位置に位置するときに、切替部材3の脱着位置へのスライドの負荷となるように、後述する切替部材側係合部31(図3参照)と係合する。ソケット本体側係合部21と切替部材側係合部31との間の係合によって、切替部材3が保持位置に位置する状態が維持され、作業者の意図に反して、工具用ソケット1が工具Tから脱落することが抑制される。図2Bでは、ソケット本体側係合部21は、ソケット本体2の外側壁に1つ設けられている。しかし、ソケット本体側係合部21は、たとえば、所定の軸方向R1の位置において、回転軸Rを中心として回転対称となる周方向の複数の位置に設けられるなど、ソケット本体2に複数設けられてもよい。
【0023】
本実施形態では、ソケット本体側係合部21は、切替部材側係合部31(図3参照)と軸方向R1で係合する第1の球体211と、第1の球体211を径方向R2にスライドするように案内する第1の案内部212と、第1の球体211を径方向R2の外側に付勢する付勢体213とを含んでいる。第1の案内部212は、図2Bの例では、第1の球体211を、ソケット本体2の外側面から径方向R2の外側に部分的に突出する係合位置(図4Aおよび図4Cも参照)と、係合位置より径方向R2の内側に位置する係合解除位置(図4Bも参照)との間でスライドするように案内する。この例では、付勢体213は、係合位置に向かって、第1の球体211を付勢する。ソケット本体側係合部21と切替部材側係合部31との係合については、後述される。
【0024】
なお、本実施形態では、第1の球体211の径方向R2でのスライドを容易にするために、係合位置において、ソケット本体2の外側面からの第1の球体211の突出量は、第1の球体211の半径211r(図5Aおよび図6B参照)以下となるように調整されている。第1の球体211の突出量は、好ましくは、第1の球体211の半径211rの1/2以上であって、半径211r以下、より好ましくは、第1の球体211の半径211rの2/3以上であって、半径211r以下、さらに好ましくは、第1の球体211の半径211rの3/4以上であって、半径211r以下である。
【0025】
本実施形態では、第1の球体211は、図2Bに示されるように、真球状の形状を有している。この場合、市販のベアリング球などを使用することで、第1の球体211を容易に準備することができる。しかし、第1の球体211は、長球状や扁球状などのその他の球形状を有していてもよい。また、第1の球体は、ソケット本体2の外側に部分的に突出する部位が球状であれば、全体としては半球状であってもよい。第1の案内部212は、図2Bの例では、ソケット本体2の外側面から軸方向R1に垂直な方向に延びる凹部である。しかし、第1の案内部212の延伸方向は、第1の球体211がソケット本体2の外側面から突出し得るように、軸方向R1と交差する方向であれば、特に限定されない。付勢体213は、図2Bの例では、コイルバネ(より具体的には、圧縮コイルバネ)である。しかし、付勢体213は、係合位置に向かって、第1の球体211を付勢可能であれば、板バネなどのその他のバネや、磁石などのその他の付勢部材であってもよく、その形態は問わない。
【0026】
なお、ソケット本体側係合部21は、ソケット本体2の外側面から径方向R2の外側に突出するように、ソケット本体2の外側面を加工した突起として設けられ、切替部材3が後述する保持位置に位置するときに、切替部材側係合部31と係合するように構成されていてよい。
【0027】
本実施形態では、ソケット本体2は、図2Aおよび図2Bに示されるように、回転軸部T1の工具側装着部T11(図1参照)と係合可能なソケット側装着部22を有している。本実施形態では、図2Bに示されるように、係合相手である工具側装着部T11と対応するように、ソケット側装着部22は、所定の軸方向R1の位置において、回転軸Rを中心として180°対称の周方向の位置で、ソケット本体2に2つ設けられている。しかし、ソケット側装着部22の数および配置は、工具側装着部T11の数および配置に応じて適宜変更され得る。
【0028】
本実施形態では、ソケット側装着部22は、図2Aおよび図2Bに示されるように、工具側装着部T11(図1参照)と軸方向R1で係合する装着部係合部221と、装着部係合部221を径方向R2にスライドするように案内する第2の案内部222とを含んでいる。本実施形態では、第2の案内部222は、装着部係合部221を、ソケット本体2から径方向R2の外側に突出する押圧位置(図4B参照)と、押圧位置より径方向R2の内側に位置し、回転軸部用凹部2aの内周面から径方向R2の内側に突出する押圧解除位置(図4Aおよび図4B参照)との間でスライドするように案内する。工具側装着部T11とソケット側装着部22との係合については、後述される。
【0029】
本実施形態では、装着部係合部221は、図2Bに示されるように、球体(以下、第2の球体と呼ぶ)によって構成されている。より具体的には、装着部係合部221は、複数の第2の球体(さらに具体的には、同一形状(同じ大きさ)の2つの第2の球体)によって構成されている。本実施形態では、第2の球体はそれぞれ、真球状の形状を有している。この場合、市販のベアリング球などを使用することで、装着部係合部221を容易に準備することができる。しかし、装着部係合部221は、長球状や扁球状などのその他の球形状を有していてもよく、棒形状などの形状を有していてもよい。また、本実施形態では、第2の案内部222は、ソケット本体2の外周面から回転軸部用凹部2aに貫通する、軸方向R1に垂直な方向に延びる貫通孔である。しかし、第2の案内部222の延伸方向は、装着部係合部221がソケット本体2の外側面から突出し、かつ、回転軸部用凹部2aの内周面から突出し得るように、軸方向R1と交差する方向であれば、特に限定されない。本実施形態では、図2Bに示されるように、第2の案内部222は、回転軸部用凹部2a側(径方向内側)の端部で縮径し、第2の案内部222の径方向R2で内側の開口の直径が第2の球体の直径よりも小さくなっている。この場合、装着部係合部221の回転軸部用凹部2a内への離脱を抑制することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、装着部係合部(第2の球体)221の径方向R2でのスライドを容易にするために、押圧位置および押圧解除位置のそれぞれにおいて、ソケット本体2の外側面および回転軸部用凹部2aの内周面からの装着部係合部(第2の球体)221の突出量は、装着部係合部(第2の球体)221の半径221r(図6Aおよび図6B参照)以下となるように調整されている。装着部係合部(第2の球体)221の突出量は、好ましくは、装着部係合部(第2の球体)221の半径221rの1/2以上であって、半径221r以下、より好ましくは、装着部係合部(第2の球体)221の半径221rの2/3以上であって、半径221r以下、さらに好ましくは、装着部係合部(第2の球体)221の半径221rの3/4以上であって、半径221r以下である。
【0031】
切替部材3は、図1に示されるように、ソケット本体2に対して軸方向R1にスライドすることで、工具Tの回転軸部T1と工具用ソケット1のソケット本体2(具体的には、回転軸部用凹部2a)との脱着および保持を切り替える。本実施形態では、切替部材3は、軸方向R1へのスライド操作によって、回転軸部T1とソケット本体2との脱着および保持を手動で切り替えることができるが、後述するように、回転軸部用凹部2aへの回転軸部T1の装着操作によっても、回転軸部T1とソケット本体2との脱着および保持を切り替えることができる。切替部材3は、ソケット本体2に対して、軸方向R1に沿って、回転軸部用凹部2aが回転軸部T1を保持可能な保持位置(図4C参照)と、回転軸部用凹部2aが回転軸部T1と脱着可能な脱着位置(図4B参照)との間でスライド可能となっている。このようなスライドを可能とするために、本実施形態では、図3に示されるように、切替部材3は、円柱状の形状を有するソケット本体2を内嵌する貫通孔を有する円筒形状を有している。本実施形態では、切替部材3は、付勢部材4を収容する空隙S(図4A図4C参照)をソケット本体2の切欠部2nとの間に形成するように、離脱方向R12の端部から装着方向R11側に延びる筒状部3nを有している。筒状部3nは、ソケット本体2の切欠部2nの外側に設けられた付勢部材4の径方向外側を覆うように設けられている。なお、切替部材3は、ソケット本体2に対して軸方向R1にスライド可能であるように、ソケット本体2の形状に応じて、適宜変更され得る。
【0032】
切替部材3は、図3に示されるように、切替部材側係合部31を内側壁に有する。切替部材側係合部31は、上述のように、ソケット本体側係合部21と係合する。本実施形態では、切替部材3は、切替部材側係合部31として、保持位置でソケット本体側係合部21と対向するように、切替部材3の内側壁において、径方向R2の外側に窪む、第1の切替凹部311を含んでいる(図4Aおよび図4Cも参照)。
【0033】
本実施形態では、切替部材側係合部31とソケット本体側係合部21との係合および係合解除によって、以下に説明されるように、工具用ソケット1の工具Tとの脱着および保持の切替操作が行われる。図4Aおよび図4Cに示されるように、本実施形態では、切替部材3が保持位置に位置するときに、第1の球体211が、付勢体213の付勢力によって係合位置に位置することで、第1の切替凹部311に部分的に挿入されて第1の切替凹部311と離脱方向R12で係合する。より具体的には、図5Aに示されるように、第1の球体211が第1の切替凹部311に部分的に挿入されると、径方向R2の外側を向き、かつ、装着方向R11を向く第1の球体211の球面211aと、第1の切替凹部311の離脱方向R12を向く壁面311aとが、互いに当接することで係合する。そのため、第1の球体211の球面211aと第1の切替凹部311との係合により、切替部材3の脱着位置へのスライドに負荷が加わるようになり、切替部材3が、保持位置からスライドすることが抑制される。これにより、図4Cに示されるように、回転軸部T1が回転軸部用凹部2a内の装着位置L1まで挿入されている場合には、回転軸部T1の工具側装着部T11とソケット側装着部22との係合状態が維持されることで、工具用ソケット1の工具Tへの装着状態が維持される。
【0034】
また、本実施形態では、図4Bに示されるように、切替部材3が保持位置から脱着位置に移動するときに、第1の球体211が、付勢体213の付勢力に抗して、第1の切替凹部311から離脱して係合解除位置に位置することで、第1の切替凹部311との係合が解除される。より具体的には、図5Bに示されるように、切替部材3が保持位置から脱着位置に移動するときに、付勢体213の付勢力に抗して、第1の球体211の球面211aを径方向R2の内側に押圧し、第1の球体211の径方向R2の外側の頂部に乗り上げ、第1の切替凹部311から離脱することで、第1の切替凹部311との係合が解除される。また、本実施形態では、切替部材3が保持位置から脱着位置に移動するときに、付勢部材4の付勢力に抗して、切替部材3を脱着位置に押圧する必要がある。換言すれば、付勢体213および付勢部材4の両方の付勢力に抗して、切替部材3を脱着位置に押圧する必要がある。そのため、脱着位置に向かって所定の押圧力以上の力を加えなければ、切替部材3を脱着位置に位置しなくなるので、作業者の意図に反して、切替部材3が保持位置にスライドすることがさらに抑制される。
【0035】
なお、本実施形態では、工具側装着部T11とソケット側装着部22とは、第1の球体211の球面211aと、第1の切替凹部311の壁面311aとの当接によって、係合している。そのため、工具側装着部T11とソケット側装着部22との係合解除の際に、壁面311aの径方向R2の内側の端縁が、第1の球体211の球面211aを滑らかにスライドすることで、係合解除の動作が困難となるような、過剰の脱着位置への押圧力を必要としない。したがって、工具側装着部T11とソケット側装着部22との係合解除の操作も容易となる。係合解除に必要な押圧力を適切にするために、第1の切替凹部311の壁面311aの傾斜角θa(図5B参照)は、好ましくは90°~120°、より好ましくは90°~110°、さらに好ましくは90°~100°、よりさらに好ましくは90°~95°である(図5Aでは、傾斜角θaは、90°である)。
【0036】
本実施形態では、図3および図4A図4Cに示されるように、切替部材3は、脱着位置でソケット側装着部22と対向するように、内側壁において径方向R2の外側に窪む、第2の切替凹部321をさらに備えている。本実施形態では、図3に示されるように、切替部材3が、内周壁の全周に亘る溝部30を備えており、溝部30が、第1の切替凹部311および第2の切替凹部321として共用されている。そのため、第1の切替凹部311と第2の切替凹部321とを別々に形成する手間がなり、第1の切替凹部311と第2の切替凹部321とを簡便に形成することができる。また、ソケット本体2に対して切替部材3を周方向で位置合わせすることなく、切替部材3による工具用ソケット1の工具Tとの脱着操作および保持操作を行うことができる。
【0037】
本実施形態では、第2の切替凹部321がソケット側装着部22と協働して、工具側装着部T11とソケット側装着部22とが係合および係合解除することで、工具用ソケット1の工具Tへの装着および工具用ソケット1の工具Tからの取外しの切替操作が行われる。図4A図4Cに示されるように、本実施形態では、回転軸部T1が回転軸部用凹部2aに挿入されると、前述のように、回転軸部T1は、回転軸部用凹部2a内において、挿入区間L3、半装着区間L2、装着位置L1の順に位置付けられる。
【0038】
挿入区間L3では、図4Aに示されるように、回転軸部T1は、ソケット側装着部22と離間しているため、装着部係合部221と当接しない。挿入区間L3では、図6Aに示されるように、切替部材3は、付勢部材4の付勢力によって、保持位置に位置し、装着部係合部(第2の球体)221は、第2の切替凹部321から離脱して押圧解除位置に位置する。
【0039】
回転軸部T1がさらに挿入されると、半装着区間L2において、図4Bに示されるように、装着部係合部221が、回転軸部T1との当接によって、第2の切替凹部321に部分的に挿入されて押圧位置に位置することで、付勢部材4の付勢力に抗して、切替部材3を押圧して脱着位置に移動させる。より具体的には、図6Bに示されるように、回転軸部T1が、装着部係合部(第2の球体)221に乗り上がり、装着部係合部(第2の球体)221が第2の切替凹部321に侵入するように、装着部係合部(第2の球体)221を押圧位置に移動させることで、装着部係合部(第2の球体)221の球面221aが、第2の切替凹部321の装着方向R11を向く傾斜面である壁面321bを押圧する。そのため、切替部材3は、付勢部材4の付勢力に抗して、脱着位置に移動する。
【0040】
切替部材3を適切に脱着位置に押圧するために、第2の切替凹部321の壁面321bの傾斜角θb(図6A参照)は、好ましくは160°~120°、より好ましくは150°~130°、さらに好ましくは140°~120°、よりさらに好ましくは135°~125°である(図6Aでは、傾斜角θbは、135°である)。
【0041】
回転軸部T1が回転軸部用凹部2aにさらに挿入されると、図4Cに示されるように、装着位置において、装着部係合部221が、工具側装着部T11との係合によって、第2の切替凹部321から離脱して押圧解除位置に位置することで、付勢部材4の付勢力によって、切替部材3を保持位置に移動させる。より具体的には、図6Cに示されるように、装着部係合部(第2の球体)221が、工具側装着部(係合凹部)T11に部分的に収容され、装着部係合部(第2の球体)221の球面221aが、工具側装着部(係合凹部)T11の側壁と軸方向R1で係合することで、第2の切替凹部321から離脱して押圧解除位置に移動する。そのため、第2の切替凹部321は、装着部係合部221からの押圧を解除され、切替部材3は、付勢部材4の付勢力によって、保持位置に移動する。これにより、切替部材3を直接手動で操作することなく、回転軸部用凹部2aへの回転軸部T1の挿入操作によって、工具用ソケット1を工具Tに装着することができる。
【0042】
なお、回転軸部用凹部2aに対する装着部係合部(第2の球体)221の位置は、回転軸部T1を回転軸部用凹部2aに挿入したときに、装着部係合部(第2の球体)221による径方向R2の外側への力が、第2の切替凹部321の壁面(傾斜面)321bを介して、切替部材3の脱着位置への移動に必要な軸方向R1の力に変換されるように構成されていれば、特に限定されることはなく、任意の位置とすることができる。
【0043】
付勢部材4は、切替部材3に外力が加わらないときに、切替部材3が保持位置に位置するように、軸方向R1に沿って保持位置に向かって、切替部材3を付勢する。本実施形態では、付勢部材4は、図4A図4Cに示されるように、コイルバネ(より具体的には、圧縮コイルバネ)である。本実施形態では、図4A図4Cに示されるように、付勢部材4は、ソケット本体2と切替部材3との間の空隙Sに収容される。本実施形態では、付勢部材4は、ソケット本体2の切欠部2nの離脱方向R12の端面と、切替部材3の筒状部3nから径方向内側に延びる壁部との間に配置されている。付勢部材4は、ソケット本体2に対して切替部材3を軸方向R1で装着方向R11に押圧する。しかし、付勢部材4は、切替部材3を保持位置に向かって付勢可能であれば、板バネなどのその他のバネや、磁石などのその他の付勢部材であってもよく、その形態は問わない。
【0044】
本実施形態に係る工具用ソケット1では、ソケット本体2のソケット本体側係合部21と切替部材3の切替部材側係合部31との係合動作と、工具側装着部T11によるソケット側装着部22への押圧動作と、ソケット側装着部22による切替部材3への押圧動作が、連動している。以下では、図4A図6Bを参照して、これらの連動について説明する。
【0045】
図4Aに示されるように、回転軸部T1が回転軸部用凹部2a内に挿入される前には、切替部材3は、付勢部材4の付勢力によって保持位置に位置している。そのため、装着部係合部221は、図4Aおよび図6Aに示されるように、第2の切替凹部321から離脱して押圧解除位置に位置している。また、第1の球体211は、図4Aおよび図5Aに示されるように、付勢体213の付勢力によって係合位置に位置している。
【0046】
図4Bに示されるように、回転軸部T1が半装着区間L2に到達すると、装着部係合部221が、回転軸部T1との当接により、径方向R2の外側に押圧され、第2の切替凹部321に挿入されて押圧位置に移動する。そうすると、切替部材3は、図4Bおよび図6Bに示されるように、装着部係合部221と第2の切替凹部321の壁面321bとの当接により、付勢部材4の付勢力に抗して、脱着位置に向かって押圧される。これと同時に、第1の球体211は、図4Bおよび図5Bに示されるように、第1の切替凹部311の壁面311aとの当接によって、付勢体213の付勢力に抗して、係合解除位置に押圧され、第1の切替凹部311から離脱する。これにより、ソケット本体側係合部21と切替部材側係合部31との軸方向R1の係合が解除され、切替部材3が脱着位置に移動する。
【0047】
図4Cに示されるように、回転軸部T1が装着位置L1に到達すると、装着部係合部221が、工具側装着部T11に部分的に収容されて押圧解除位置に移動する。そうすると、切替部材3は、図4Cおよび図6Aに示されるように、付勢部材4の付勢力によって、保持位置に向かって押圧される。これと同時に、第1の球体211は、切替部材3の保持位置への移動によって、第1の切替凹部311に部分的に収容されるように、付勢体213の付勢力によって、係合位置に移動する。これにより、ソケット本体側係合部21と切替部材側係合部31とが係合し、切替部材3が保持位置で保持される。
【0048】
本実施形態に係る工具用ソケット1では、このような一連の動作を通して、回転軸部T1の回転軸部用凹部2aへの挿入によって、工具Tに装着されると同時に、切替部材3が脱着位置から保持位置に自動的に移動するので、工具Tを装着した直後に、工具用ソケット1を保持するための操作などが不要となる。そのため、作業者が工具用ソケット1の保持操作に気を取られて、工具用ソケット1が工具Tから離脱するなどの、作業者の人為的ミスによる工具用ソケット1の離脱が防止される。
【0049】
以上のように構成される本実施形態に係る工具用ソケット1では、回転軸Rの軸方向R1の一方向である装着方向R11の側に、回転軸部T1を収容可能な回転軸部用凹部2aを有し、軸方向R1の他方向である離脱方向R12の側に、締結具Fと嵌合可能な締結具用嵌合部2bを有するソケット本体2と、ソケット本体2の外側壁に取り付けられ、回転軸部T1とソケット本体2との脱着および保持を切り替える、筒形状を有する切替部材3とを備え、切替部材3は、ソケット本体2に対して、軸方向R1に沿って、回転軸部用凹部2aが回転軸部T1を保持可能な保持位置と、回転軸部用凹部2aが回転軸部T1と脱着可能な脱着位置との間でスライド可能であり、ソケット本体2は、ソケット本体側係合部21を外側壁に有し、切替部材3は、切替部材側係合部31を内側壁に有し、切替部材3が保持位置に位置するときに、ソケット本体側係合部21が、切替部材3の脱着位置へのスライドの負荷となるように、切替部材側係合部31と係合する。
【0050】
本実施形態に係る工具用ソケット1によれば、切替部材3が保持位置に位置するときに、ソケット本体側係合部21が、切替部材3の脱着位置へのスライドの負荷となるように、切替部材側係合部31と係合している。そのため、工具用ソケット1を工具Tに装着した後に、切替部材3を一度保持位置に位置させれば、ソケット本体側係合部21と切替部材側係合部31との係合により、切替部材3のスライドに負荷が掛かって、切替部材3が保持位置からスライドしにくくなる。そのため、作業者の意図に反して、切替部材3が脱着位置にスライドすることが抑制される。また、このソケット本体側係合部21と切替部材側係合部31との係合は、軸方向R1に沿って、切替部材3をソケット本体2に対してスライドさせる、簡単な一方向の操作でなされる。これにより、本実施形態に係る工具用ソケット1では、工具Tからの離脱を抑制しつつ、工具Tとの脱着作業を簡便にすることができる。
【0051】
本実施形態では、脱着位置から保持位置に向かって、切替部材3を付勢する付勢部材4をさらに備えていてもよい。
【0052】
この場合、切替部材3が、付勢部材4によって常時保持位置に位置付けられるので、工具用ソケット1の工具Tからの離脱をさらに抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、ソケット本体側係合部21は、切替部材側係合部31と軸方向R1で係合する第1の球体211と、第1の球体211を回転軸Rの径方向R2にスライドするように案内する第1の案内部212と、第1の球体211を径方向R2の外側に付勢する付勢体213とを含み、切替部材側係合部31は、保持位置で第1の球体と前記径方向で対向するように、切替部材3の内側壁において径方向R2の外側に向かって第1の切替凹部311を含み、第1の案内部212は、第1の球体211を、ソケット本体2の外側面から径方向R2の外側に部分的に突出する係合位置と、係合位置より径方向R2の内側に位置する係合解除位置との間でスライドするように案内し、付勢体213は、係合位置に向かって、第1の球体211を付勢しており、切替部材3が保持位置に位置するときに、第1の球体211が、付勢体213の付勢力によって係合位置に位置することで、第1の切替凹部311に部分的に挿入されて第1の切替凹部311と離脱方向R12で係合し、切替部材3が保持位置から脱着位置に移動するときに、第1の球体211が、付勢体213の付勢力に抗して第1の切替凹部311から離脱して係合解除位置に位置することで、第1の切替凹部311との係合が解除されてもよい。
【0054】
この場合、第1の球体211と第1の切替凹部311との係合により、切替部材3の脱着位置へのスライドに負荷が加わるようになり、切替部材3が、保持位置からスライドすることが抑制される。これにより、回転軸部T1が回転軸部用凹部2a内の装着位置L1まで挿入されている場合には、回転軸部T1の工具側装着部T11が、工具側装着部T11とソケット側装着部22との係合状態が維持されることで、工具用ソケット1の工具Tへの装着状態が維持される。また、この場合、付勢体213および付勢部材4の両方の付勢力に抗して、脱着位置に向かって所定の押圧力以上の力を加えなければ、切替部材3を脱着位置に位置しなくなるので、作業者の意図に反して、切替部材3が保持位置にスライドすることがさらに抑制される。
【0055】
本実施形態では、ソケット本体2は、回転軸部T1の外周に係合凹部として設けられた工具側装着部T11と係合可能なソケット側装着部22を有し、ソケット側装着部22は、工具側装着部T11と軸方向R1で係合する装着部係合部221と、装着部係合部221を径方向R2にスライドするように案内する第2の案内部222とを含み、第2の案内部222は、装着部係合部221を、ソケット本体2から径方向R2の外側に突出する押圧位置と、押圧位置より径方向R2の内側に位置し、回転軸部用凹部2aの内周面から径方向R2の内側に突出する押圧解除位置との間でスライドするように案内し、切替部材3は、脱着位置でソケット側装着部22と径方向R2で対向するように、内側壁において径方向R2の外側に窪む第2の切替凹部321をさらに備え、回転軸部用凹部2aは、工具側装着部T11が装着部係合部221と係合する装着位置に対して回転軸部T1が挿入される開口側に、半装着区間を有し、回転軸部T1が回転軸部用凹部2aに挿入されると、半装着区間において、装着部係合部221が、回転軸部T1との当接によって、第2の切替凹部321に部分的に挿入されて押圧位置に位置することで、付勢部材4の付勢力に抗して、切替部材3を押圧して脱着位置に移動させ、装着位置において、装着部係合部221が、工具側装着部T11との係合によって、第2の切替凹部321から離脱して押圧解除位置に位置することで、付勢部材4の付勢力によって、切替部材3を保持位置に移動させてもよい。
【0056】
この場合、第2の切替凹部321は、装着部係合部221からの押圧を解除され、切替部材3は、付勢部材4の付勢力によって、保持位置に移動する。これにより、切替部材3を直接手動で操作することなく、回転軸部用凹部2aへの回転軸部T1の脱着操作によって、回転軸部T1に対して回転軸部用凹部2aを脱着させることができる。
【0057】
本実施形態では、切替部材3は、第1の切替凹部311および第2の切替凹部321として共用される、内周壁の全周に亘る溝部30を備えていてもよい。
【0058】
この場合、第1の切替凹部311と第2の切替凹部321とを別々に形成する手間がなり、第1の切替凹部311と第2の切替凹部321を簡便に形成することができる。また、ソケット本体2に対して切替部材3を周方向で位置合わせすることなく、切替部材3による工具用ソケット1の工具Tとの脱着保持操作を行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 工具用ソケット
2 ソケット本体
21 ソケット本体側係合部
211 第1の球体
211a 球面
211r 半径
212 第1の案内部
213 付勢体
22 ソケット側装着部
221 装着部係合部(第2の球体)
221a 球面
221r 半径
222 第2の案内部
2a 回転軸部用凹部
2b 締結具用嵌合部
2n 切欠部
2r リング部材
3 切替部材
30 溝部
31 切替部材側係合部
311 第1の切替凹部
311a 壁面
321 切替凹部
321 第2の切替凹部
321b 壁面
3n 筒状部
4 付勢部材
A 開口
B 端面
F 締結具
L1 装着位置
L2 半装着区間
L3 挿入区間
L30 案内区間
R 回転軸
R1 軸方向
R11 装着方向
R12 離脱方向
R2 径方向
S 空隙
T 工具
T1 回転軸部
T11 工具側装着部
θa、θb 傾斜角
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C