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特許7539171防錆性に優れたラチェット機構を有する工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】防錆性に優れたラチェット機構を有する工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/46 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B25B13/46 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022188780
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2021516056の分割
【原出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2023024475
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019083403
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤祐
(72)【発明者】
【氏名】後藤 政則
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3147162(JP,U)
【文献】特開平02-053572(JP,A)
【文献】特開2016-016506(JP,A)
【文献】特開2001-353664(JP,A)
【文献】特開昭52-062799(JP,A)
【文献】中国実用新案第207077369(CN,U)
【文献】特開平11-047923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェット機構を有するヘッド部を備え、
前記ヘッド部は、ラチェット機構を収容するための空間部を画定する、天板部と、底板部と、側板部と、を有し、
前記側板部には、前記ラチェット機構の回転方向を変更するための切り替えレバーの先端部が前記ヘッド部の外周に突出するための開口部が形成されており、
前記側板部は、前記開口部とは別の位置に、前記空間部に溜まった水を排水するための少なくとも1の水抜き孔が形成されていることを特徴とする、防錆性に優れたラチェット機構を有する工具。
【請求項2】
前記側板部の水抜き孔に加え、
前記天板部および前記底板部にも、前記空間部に溜まった水を排水するための水抜き孔が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の防錆性に優れたラチェット機構を有する工具。
【請求項3】
前記水抜き孔の少なくとも一部は、メッシュ状に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防錆性に優れたラチェット機構を有する工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防錆性に優れたラチェット機構を有する工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ラチェット機構は、ラチェット歯と呼ばれる歯車と、ラチェット歯と噛み合う爪を備えた、回転方向を一方に制限するための機構である。
【0003】
ラチェット歯は、一般的な歯車と異なり、歯が一方に傾いている。したがって、ラチェット歯がある一方向に回転するときは容易に回転できるが、ラチェット歯が逆回転するときは、爪がラチェット歯に食い込むため、ラチェット歯の回転が制限される。
【0004】
このようなラチェット機構は、様々な工具に利用されている。このような工具は、工具の内部にラチェット歯を回転可能に収容する必要があり、例えば、特許文献1のような工具が知られている。
【0005】
特許文献1の工具は、ヘッド部とハンドル部が一体的に形成されている。したがって、ラチェット機構を収容する空間部を形成するため、長いハンドル部を備えた金属を削り出すなど、製造時の加工が困難であるという課題がある。
【0006】
加工を容易にするためにヘッド部とハンドル部を別体で形成する方法もある。図6(a)は従来の別体で形成された工具(1001)を示し、ヘッド部(1100)とハンドル部(1200)は溶接によって接合されている。
【0007】
溶接による接合では母材を溶融するため、母材となるヘッド部(1100)および、ハンドル部(1200)に熱による歪みや溶融不良が起きることがある。
【0008】
加えて溶接による接合は、異種金属を接合することには技術的課題があり、ヘッド部(1100)および、ハンドル部(1200)を異なる素材で組み合わせることは困難である。
【0009】
これによって、目的に合わせてヘッド部(1100)の材質を選定し、ハンドル部(1200)もヘッド部(1100)に適応する材質を選定する必要がある。そのため部品在庫および、材料在庫の過不足が生じやすい問題がある。
【0010】
図6(b)は、図6(a)のC-C断面を示す。溶接によって溶融された母材の金属(1500)は流動性に乏しく、その周囲で冷えて再び個体に戻るため、図6(b)で示すように、ヘッド部(1100)とハンドル部(1200)の嵌合部(1130)には隙間が生じる。
【0011】
このような従来の工具(1001)は、製造時の最終段階で表面処理としてメッキ処理を行うことが多い。メッキ処理時に酸洗いなどの酸洗処理を行うが、このときの酸性溶液が嵌合部(1130)の隙間に流入し、メッキ乾燥後に隙間から酸性溶液が出てきて錆の原因となることがある。
【0012】
従来の工具(1001)を雨天時の野外または、水道管の点検・修理などで使用した場合、ラチェット機構を収容する空間部(1120)および、嵌合部(1130)の隙間に雨水が流入して錆が発生することがある。
【0013】
錆の発生は、工具の動作不良や工具の強度低下を招き、寿命を短くするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】実用新案登録第3166453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の課題を鑑みなされたものであり、特に防錆性に優れたラチェット機構を有する工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具は、ラチェット機構を有するヘッド部と、前記ヘッド部とは別体として設けられるハンドル部と、を備え、前記ヘッド部には嵌合孔が形成され、前記嵌合孔には、前記ハンドル部の端部が嵌合し、前記ヘッド部と前記ハンドル部の嵌合した部分は、ろう付けによって固着され、前記ろう付けのろう材は、前記嵌合孔の略全体に亘って充填されることを特徴とする、防錆性に優れたラチェット機構を有する工具に関する。
【0017】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具では、前記嵌合孔は、前記ヘッド部の外周から、前記ヘッド部のラチェット機構を収容するための空間部まで貫通している。
【0018】
これらの態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具によれば、ヘッド部とハンドル部はろう付けによって固着され、ろう付けのろう材は、嵌合孔の略全体に亘って充填されている。したがって、従来の溶接とは異なり、ヘッド部とハンドル部の嵌合部には隙間がなく、この隙間に酸性溶液または、雨水などの液体が流入する虞が無く、防錆性に優れる。
【0019】
またろう付けによる接合は、従来の溶接による接合と比較して、ヘッド部とハンドル部の接合面積が増加する。さらにろう付けで使用するろう材は、従来の溶接によって溶融された母材の金属と比較して、ピンホール(気泡)の含有が無い。よって、接合面積の増加と、ピンホールの含有量の少なさにより、ヘッド部とハンドル部の接合は気密性が高く強固なものとすることができる。
【0020】
さらにこの防錆性に優れたラチェット機構を有する工具は、ろう付けによってヘッド部とハンドル部を接合するため、ヘッド部および、ハンドル部が熱によって歪む可能性を減少させることができる。
【0021】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具は、前記ヘッド部と前記ハンドル部は、異なる種類の金属または合金で形成されるものである。
【0022】
この態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具によれば、ヘッド部とハンドル部はろう付けによって固着されているため、それぞれ異なる種類の金属または合金であっても接合できる。目的に合わせてヘッド部の材質を選定した場合でも、ハンドル部の材質選定の自由度が広がり、部品在庫および、材料在庫を減少させることができる。
【0023】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具は、前記ヘッド部は、ステンレス、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、銅および、亜鉛またはこれらを1種以上含む合金からなる群から選択される金属から形成されるものである。
【0024】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具は、前記ハンドル部は、ステンレス、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、ニオブ、銅および、亜鉛またはこれらを1種以上含む合金からなる群から選択される金属から形成されるものである。
【0025】
これらの態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具によれば、ヘッド部および/またはハンドル部は、目的に適合した金属または合金で形成することができる。
【0026】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具の前記ろう材は、銀ろうである。
【0027】
銀ろうは、多様な金属および、合金に適用できる。また銀ろうは、母材表面への濡れが特によく、強度も強いため好適に使用することもできる。
【0028】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具の前記ろう材は、アルミろうである。
【0029】
アルミろうは、ヘッド部およびハンドル部の少なくともいずれか一方が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金である場合に、ヘッド部とハンドル部を接合するときに好適に使用することができる。
【0030】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具は、ラチェット機構を有するヘッド部を備え、前記ヘッド部は、ラチェット機構を収容するための空間部を画定する、天板部と、底板部と、側板部と、を有し、前記側板部は、前記空間部に溜まった水を排水するための少なくとも1の水抜き孔が形成されていることを特徴とする、防錆性に優れたラチェット機構を有する工具に関する。
【0031】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具は、前記側板部の水抜き孔に加え、前記天板部および前記底板部にも、前記空間部に溜まった水を排水するための水抜き孔が形成されているものである。
【0032】
本発明の別の態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具は、前記水抜き孔は、メッシュ状に形成されているものである。
【0033】
これらの態様に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具によれば、ラチェット機構を収容するための空間部に溜まった水を排水するための水抜き孔が形成されているため、防錆性に優れ、工具の寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、防錆性に優れた防錆性に優れたラチェット機構を有する工具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の1つの実施形態に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具を示す斜視図である。
図2】材質および、形状が異なるヘッド部とハンドル部の一例を示す斜視図である。
図3】本発明の1つの実施形態に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具のヘッド部を示す斜視図である。
図4】本発明の別の実施形態に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具のヘッド部を示す斜視図である。
図5】本発明のさらに別の実施形態に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具のヘッド部を示す斜視図である。
図6】従来のラチェット機構を有する工具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
つぎに図面を参照しながら本発明の防錆性に優れたラチェット機構を有する工具についてさらに詳細に説明する。
【0037】
本発明において、「ラチェット機構を有する工具」とは、限定されないが、ラチェットレンチ、ラチェットスパナおよび、張線器などが挙げられる。
【0038】
<ろう付け>
図1は、本発明の1つの実施形態に係る防錆性に優れたラチェット機構を有する工具(1)(以下、工具(1)と略)を示す斜視図である。
【0039】
本実施形態においては、図1(a)で示されるように、工具(1)はヘッド部(100)とハンドル部(200)とによって構成され、ヘッド部(100)とハンドル部(200)は別体として形成されている。
【0040】
ハンドル部(200)は、合成樹脂、または合成ゴムなどで形成されたグリップ(210)を備えてもよい。
【0041】
ヘッド部(100)には、ラチェット機構(110)を収容するための空間部(120)が形成されている。空間部(120)には、ラチェット機構(110)の回転方向を変更する切り替えレバー(111)の一部が収容され得る。
【0042】
図1(b)は、図1(a)のA-A断面を示す断面図である。
【0043】
ヘッド部(100)には、ハンドル部(200)の端部を挿入して嵌合させるための嵌合孔(130)が形成されている。
【0044】
ここで嵌合孔(130)は、ヘッド部(100)の外周から空間部(120)まで貫通(連通)していてもよい。
【0045】
本実施形態では、ハンドル部(200)の端部を嵌合孔(130)に挿入して嵌合させたあと、ろう付けによってヘッド部(100)とハンドル部(200)とを固着させる。
【0046】
なお「ろう付け」は、ブレージングともよばれる接合工法であり、母材より低い融点の合金をろう材(300)として使用して、母材を溶融することなく接合する工法である。
【0047】
ろう材(300)は、「濡れ」がよく母材の表面で流れて広がりやすい特性を持つ。
【0048】
したがって、図1(b)で示されるようにろう材(300)は、嵌合孔(130)においてヘッド部(100)とハンドル部(200)の間に形成される隙間を埋めるように、嵌合孔(130)の略全体に亘って充填される。より好ましくは、ろう材(300)は、嵌合孔(130)の全体に亘って充填される。
【0049】
よって、嵌合孔(130)においてヘッド部(100)とハンドル部(200)の隙間にメッキ時に使用する酸性溶液や雨水などの液体が流入することを防止できるため、防錆性に優れる。
【0050】
ろう材(300)は濡れがよく、広がるため、従来の溶接による接合と比較して、ヘッド部(100)とハンドル部(200)の接合面積を増加させる。接合面積の増加は、接合部にかかる荷重を分散するため、ヘッド部(100)とハンドル部(200)の接合を強固なものとすることができる。
【0051】
さらにろう付けで使用するろう材(300)は、従来の溶接によって溶融された母材の金属(1500)と比較して、ピンホール(気泡)の含有量が少ない。ピンホール(気泡)の含有量の少なさは、ろう材(300)の強度を向上させるため、ヘッド部(100)とハンドル部(200)の接合を強固なものとすることができる。
【0052】
ろう付けによる接合は、異なる材質の母材同士を接合することができる。すなわち本実施形態に係る工具(1)では図2に示されるように、ヘッド部(100a、100b、100c、100d)とハンドル部(200a、200b、200c、200d)は、異なる種類の金属または合金で形成されるものであってもよい。またヘッド部(100)は、使用する目的に応じて異なる形状であり得る。
【0053】
なお図2ではヘッド部(100a、100b、100c、100d)はそれぞれ、鉄(Fe)、真鍮(Cu+Zn)、アルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)で形成されている。ハンドル部(200a、200b、200c、200d)はそれぞれ、ステンレス(SUS)、ステンレス(Fe+Cr)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)で形成されている。
【0054】
図2の例によると、材質および形状の異なるヘッド部(100a、100b、100c)が3種類と、材質の異なるハンドル部(200a、200b、200c)が3種類あるため、ヘッド部(100a、100b、100c)とハンドル部(200a、200b、200c)の組み合わせは、9とおり存在する。しかしながら、ヘッド部(100)とハンドル部(200)の組み合わせは、図2の例に限定して理解されるべきではなく、ヘッド部(100)および、ハンドル部(200)は、その他の材質および/または形状であってもよい。
【0055】
目的に合わせてヘッド部(100)の材質を選定した場合でも、ハンドル部(200)の材質選定の自由度が広がる。よって部品在庫および、材料在庫を減少させることができる。
【0056】
ヘッド部(100)は、ステンレス(SUS)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)および、亜鉛(Zn)、またはこれらを1種以上含む合金からなる群から選択される金属から形成されるものであってもよい。
【0057】
ハンドル部(200)は、ステンレス(SUS)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)および、亜鉛(Zn)、またはこれらを1種以上含む合金からなる群から選択される金属から形成されるものであってもよい。
【0058】
すなわちヘッド部(100)および/またはハンドル部(200)を形成する合金としては、ステンレス鋼、または真鍮などを使用できる。
【0059】
ヘッド部(100)および/またはハンドル部(200)は、工具(1)を使用する目的に適合した金属または合金で形成することができる。例えば、ヘッド部(100)は、重く強度の高い金属または合金で形成し、ハンドル部(200)を多少強度は低くとも軽い金属または合金で形成することで扱いやす工具(1)を提供することが可能となる。
【0060】
ろう材(300)として、限定されないが、銀ろうを使用してもよい。銀ろうは、銀(Ag)を含有する合金であり、その他の成分として銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)および/または、リチウム(Li)などを含有する。
【0061】
銀ろうは、多様な金属および、合金に適用できる。また銀ろうは、母材表面への濡れが特によく、強度も強いため好適に使用することもできる。
【0062】
ろう材(300)として、限定されないが、アルミろうを使用してもよい。アルミろうは、アルミニウム(Al)を含有する合金であり、その他の成分としてマンガン(Mn)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)および/または、チタン(Ti)などを含有する。
【0063】
アルミニウムは表面に酸化被膜が形成されるため、ろう材(300)の濡れが悪くなる特性がある。しかしアルミろうは、ヘッド部(100)およびハンドル部(200)の少なくともいずれか一方が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金である場合でも、良好な濡れを維持して、ヘッド部(100)とハンドル部(200)を接合するときに好適に使用することができる。
【0064】
<水抜き孔>
図3は、1つの実施形態に係る工具(1)のヘッド部(100)を示す斜視図である。
【0065】
本実施形態では、ヘッド部(100)は、ハンドル部(200)と別体として形成されている。
【0066】
またヘッド部(100)は、天板部(101)と、底板部(102)と、側板部(103)とを有する。
【0067】
天板部(101)、底板部(102)および、側板部(103)は、ステンレス(SUS)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)および、亜鉛(Zn)、またはこれらを1種以上含む合金からなる群から選択される金属から形成されるものであってもよい。
【0068】
天板部(101)、底板部(102)および、側板部(103)は、工具(1)を使用する目的に適合した金属または合金で形成することができる。
【0069】
天板部(101)、底板部(102)および、側板部(103)は、ヘッド部(100)においてラチェット機構(110)を収容するための空間部(120)を画定する。
【0070】
ヘッド部(100)は、ラチェット機構(110)の回転方向を変更する切り替えレバー(111)を備えている。切り替えレバー(111)の一部は、空間部(120)に収容されている。切り替えレバー(111)の先端部は、側板部(103)に形成された開口部(112)から、ヘッド部(100)の外周に突出している。よって工具(1)の使用者は、切り替えレバー(111)を操作してラチェット機構(110)の回転方向を変更することができる。
【0071】
側板部(103)は、少なくとも1の水抜き孔(140)が形成されている。なおこの水抜き孔(140)は、開口部(112)とは別に形成されていることが好ましい。
【0072】
例えば、工具(1)を雨天時の野外または、水道管の点検・修理などで使用した場合、開口部(112)から雨水などの液体が空間部(120)に流入する。しかしこのような水抜き孔(140)を形成することで、空間部(120)に溜まった水を排水できる。また通気性が向上するため、空間部(120)を乾燥させやすくなる。したがって、工具(1)の防錆性を向上させ、工具(1)の寿命を長くすることができる。
【0073】
さらに水抜き孔(140)は、ヘッド部(100)の先端付近に位置するように少なくとも1つが側板部(103)に形成されることが好ましい。これによってラチェット機構(110)の円周上の開口部(112)から最も離れた位置に水抜き孔(140)が形成されるため、排水性および通気性がさらに向上する。
【0074】
図4は、別の実施形態に係る工具(1)のヘッド部(100)を示す斜視図である。
【0075】
側板部(103)の水抜き孔(140)に加え、天板部(101)および/または底板部(102)にも、水抜き孔(140)が形成されていることが好ましい。さらに好ましい形態では、側板部(103)の水抜き孔(140)に加え、天板部(101)および底板部(102)にも、水抜き孔(140)が形成されている。
【0076】
天板部(101)または、底板部(102)の水抜き孔(140)は、1つ、または複数形成され得る。
【0077】
天板部(101)および/または底板部(102)にも、水抜き孔(140)を形成することで、より排水性と通気性を向上させることができる。
【0078】
天板部(101)および/または底板部(102)の水抜き孔(140)は、ラチェット機構(110)によって定義される円内であって、天板部(101)および/または底板部(102)のこの円に対応する位置に複数形成されることが好ましい。さらには、水抜き孔(140)はこの円内に同心円上に等間隔で形成されることが好ましい。
【0079】
これによって、空間部(120)に対する排水性および通気性がさらに向上する。またラチェット機構(110)(ラチェット歯)を効率的に乾燥させることができ、ラチェット機構(110)の防錆性がより向上する。
【0080】
図5は、さらに別の実施形態に係る工具(1)のヘッド部(100)を示す斜視図である。
【0081】
図5のように水抜き孔(140)の少なくとも一部は、メッシュ状、網目状、または格子状に形成されてもよい。
【0082】
水抜き孔(140)をメッシュ状、網目状、または格子状の形状にしても、排水性と通気性を向上させることができる。また、水抜き孔(140)をこのような形状とすることで、ヘッド部(100)の強度の低下を抑制することができる。
【0083】
水抜き孔(140)の形状は、図3図4および図5では扇状または長方形の開口として形成されているが、これに限定して理解されるべきではない。例えば、円形、楕円形または、多角形などの開口であってもよい。
【0084】
水抜き孔(140)が形成されたヘッド部(100)と、別体として形成されたハンドル部(200)を上記のろう付けによって接合してもよい。
【0085】
水抜き孔(140)が形成されたヘッド部(100)を、ろう付けによってハンドル部(200)と接合することで、より優れた防錆性を相乗的に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、防錆性に優れたラチェット機構を有する工具(ラチェットレンチ、ラチェットスパナおよび、張線器など)を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 ラチェット機構を有する工具(工具)
100 ヘッド部
101 天板部
102 底板部
103 側板部
110 ラチェット機構
120 空間部
130 嵌合孔
140 水抜き孔
200 ハンドル部
210 グリップ
300 ろう材
図1
図2
図3
図4
図5
図6