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▶ 株式会社KALOS BEAUTY TECHNOLOGYの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ドライヤー
(51)【国際特許分類】
   A45D 20/10 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A45D20/10 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024011087
(22)【出願日】2024-01-29
【審査請求日】2024-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518088509
【氏名又は名称】株式会社KALOS BEAUTY TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】高田 栄和
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521727(JP,A)
【文献】特表2021-532937(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110013097(CN,A)
【文献】特表2020-505721(JP,A)
【文献】国際公開第2023/111570(WO,A1)
【文献】特開2023-158661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のケーシングと、
前記ケーシングの内部から前記ケーシングの外部へ吹き出す空気の流れを形成する送風機構と、
前記ケーシングの内部において、前記空気が流れる経路で前記送風機構より下流に配置されたヒーターと、
前記ケーシングの内部において、前記空気が流れる経路で前記送風機構より下流で前記ヒーターに接触され、かつ、前記ヒーターの熱を前記ケーシングの内部で前記空気へ放散するヒートシンクと、
を有するドライヤーであって、
前記ヒーターは、カーボンナノチューブにより構成された第1ヒーターを含み、
前記ヒートシンクは、前記空気の流れ方向に沿った仮想線に対して垂直な平面内で、前記仮想線を中心とする円周方向に沿って複数並べて配置され、
隣り合う前記ヒートシンク同士の間に収容空間が設けられ、
前記収容空間へ前記第1ヒーターが配置され、かつ、前記第1ヒーターは、複数の前記ヒートシンクにより挟まれて、複数の前記ヒートシンクと前記第1ヒーターとが面接触され、
複数の前記ヒートシンクがそれぞれ放熱フィンを有し、
複数の前記ヒートシンクのそれぞれは、前記放熱フィン同士の間に形成された通気路を有し、
複数の前記ヒートシンクのうち、前記仮想線に沿った方向で前記送風機構に最も近い箇所の端面に、前記収容空間を覆い、かつ、前記ケーシングの内部で前記空気と前記第1ヒーターとを隔てる遮蔽材が固定されている、ドライヤー。
【請求項2】
請求項記載のドライヤーであって、
前記ヒートシンクは、前記仮想線に対して垂直な平面内で、前記仮想線を中心とする円周方向に沿って4つ以上並べて配置されている、ドライヤー。
【請求項3】
請求項記載のドライヤーにおいて、
前記ヒーターは、前記仮想線に対して垂直な平面内で、前記仮想線を中心とする半径方向で前記複数のヒートシンクの外側に巻かれ、かつ、カーボンナノチューブにより構成された第2ヒーターを含む、ドライヤー。
【請求項4】
請求項1記載のドライヤーにおいて、
前記送風機構は、
電力が供給されて回転する電動モータと、
前記電動モータによりに回転されるファンと、
を有し、
前記電動モータへ電力を供給するバッテリが更に設けられている、ドライヤー。
【請求項5】
請求項記載のドライヤーにおいて、
前記ケーシングの内部に設けられ、かつ、前記第2ヒーターの外側を覆う保熱材を備えている、ドライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、利用者の頭髪を乾燥させるためのドライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の頭髪を乾燥させるためのドライヤーの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたドライヤーは、空気入口及び空気出口を有するハウジングと、空気入口近接してハウジング内に設置され、空気入口から空気を吸い込み空気出口から送り出すファンと、ハウジング内に設けられてファンを回転させるモータと、ハウジング内でファンと空気出口との間に設置された熱電モジュールと、ハウジング内に設けられた上部ヒートシンク及び下部ヒートシンクと、を備えている。熱電モジュールは、上部ヒートシンクと下部ヒートシンクとの間へ配置され、かつ、熱電モジュールの側面が、上部ヒートシンク及び下部ヒートシンクへ接触されている。
【0003】
特許文献1に記載されたドライヤーは、モータによりファンが回転されると、空気入口からハウジング内へ空気が吸引され、ハウジング内で空気流が形成される。熱電モジュールの熱は、上部ヒートシンク及び下部ヒートシンクを介して、ハウジング内の空気へ伝達される。そして、ハウジング内で温度が上昇された空気が空気出口から放出され、利用者の頭髪を乾燥させるために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2011-521727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、特許文献1に記載されたドライヤーによると、ヒーターの熱量が不十分である、という課題を認識した。
【0006】
本開示の目的は、ヒーターの熱量を増加することの可能なドライヤーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、中空のケーシングと、前記ケーシングの内部から前記ケーシングの外部へ吹き出す空気の流れを形成する送風機構と、前記ケーシングの内部において、前記空気が流れる経路で前記送風機構より下流に配置されたヒーターと、前記ケーシングの内部において、前記空気が流れる経路で前記送風機構より下流で前記ヒーターに接触され、かつ、前記ヒーターの熱を前記ケーシングの内部で空気へ放散するヒートシンクと、を有するドライヤーであって、前記ヒートシンクは、複数設けられ、前記ヒーターは、前記複数のヒートシンクにより挟まれ、かつ、カーボンナノチューブにより構成された第1ヒーターを含む、ドライヤーを構成している。
【発明の効果】
【0008】
本開示のドライヤーによれば、ヒーターの熱量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ドライヤーの実施形態を示す全体断面図である。
図2図1のドライヤーをII-II線に沿って破断した側面断面図である。
図3図1に示されたヒートシンクをV-V線に沿って見た側面端面図である。
図4図4(A)は、図1のヒートシンク及び第1ヒーターの他の構成例を示す側面断面図、図4(B)は、図4(A)に示されたヒートシンク及び第1ヒーターの側面端面図である。
図5図1のヒートシンク及び第1ヒーターの他の構成例を示す側面断面図である。
図6図5に示されたヒートシンク及び第1ヒーターの側面端面図である。
図7】ドライヤーの吹き出し口から噴出される空気の温度の測定結果の一例を示すグラフ図である。
図8図8(A)は、ヒーターへの印加電圧とヒーターの表面温度との関係の一例を示すグラフ図、図8(B)は、ヒーター(遠赤外線)の波長と放射率との関係の一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(構成)
ドライヤーの一実施形態は、図面に基づいて説明されている。ドライヤーを説明するための全図において、同一の構成には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。ドライヤー10は、ケーシング11、グリップ12、ヒートシンク13、プレート形状の第1ヒーター14、フィルム形状の第2ヒーター15を有する。また、ドライヤー10は、電動モータ16、ファン17、バッテリ18、プリント基板19、温度ヒューズ20、マイナスイオン発生器21、保熱層22を有する。ケーシング11は、一例として合成樹脂製の筒体であり、図2のように、一例として円筒である。
【0011】
ケーシング11の開口部を塞ぐカバー23が設けられている。カバー23は、ケーシング11へ取り付け及び取り外しできる。カバー23は、例えば、合成樹脂製であり、カバーは、吸気口24を有する。カバー23にメッシュ25が取り付けられている。メッシュ25は、例えば金属製であり、かつ、無数の通気孔を有する。メッシュ25の通気孔の内径は、例えば、0.1mm以下である。メッシュ25の通気孔の内径は、カバー23の吸気口24の内径未満である。ケーシング11の内部A1と外部A2とが、吸気口24及びメッシュ25を通してつながっている。
【0012】
電動モータ16及びファン17は、ケーシング11の内部A1に設けられている。電動モータ16及びファン17は、ケーシング11の外部A2の空気をケーシング11の内部A1へ吸い込むための送風機構である。内部A1へ吸い込まれた空気は、強制対流を生じる。電動モータ16は、直流モータであり、バッテリ18から電流が供給されて回転する。ファン17は、電動モータ16により回転される送風機である。電動モータ16及びファン17は、仮想線B1を中心として同軸上に配置されている。仮想線B1は、ケーシング11の内部A1における空気の流れ方向に沿って配置された直線である。仮想線B1は、例えば、ケーシング11の中心に位置する。ヒートシンク13は、ケーシング11の内部A1に配置されている。仮想線B1に沿った方向で、ヒートシンク13とカバー23との間に電動モータ16が配置され、かつ、電動モータ16とカバー23との間にファン17が配置されている。
【0013】
また、ケーシング11の外周面から突出されたマウント26が設けられている。マウント26は、ケーシング11と共に一体化されている。プリント基板19は、マウント26内に設けられている。プリント基板19は電気回路を有し、電気回路は、電動モータ16、第1ヒーター14、第2ヒーター15、バッテリ18、マイナスイオン発生器21、操作スイッチ(図示せず)等に接続されている。マウント26内には端子27が設けられ、かつ、マウント26に差し込み穴28が設けられている。端子27は、電気回路へ電気的に接続されている。
【0014】
グリップ12は、例えば、合成樹脂製であり、グリップ12は、マウント26へ取り付け及び取り外しができる。グリップ12は、利用者が手で握る箇所であり、バッテリ18は、グリップ12の内部に設けられている。バッテリ18は、充電及び導電が可能な二次電池である。バッテリ18には、ピン型の端子29が電気的に接続されている。グリップ12がマウント26へ取り付けられていると、端子29が差し込み穴28を介してマウント26内へ進入され、端子27と端子29とが電気的に接続される。
【0015】
ヒートシンク13は、第1ヒーター14及び第2ヒーター15の熱を空気へ伝達する放熱部材である。ヒートシンク13の材質は、熱伝導性に優れた金属材料、例えば、アルミニウム、または、銅である。ヒートシンク13は、仮想線B1を中心とする円周方向に複数個設けられている。図2は、4個に分割されたヒートシンク13が、仮想線B1を中心とする円周方向に並べて設けられた例である。各ヒートシンク13は、仮想線B1を中心とする90度の範囲に亘って配置されている。
【0016】
仮想線B1に対して垂直な平面内において、全ての放熱フィン13Aの先端に接する外接円(図示せず)は、仮想線B1を中心とする円形である。各ヒートシンク13は、仮想線B1に沿った方向に延ばされた複数の放熱フィン13Aをそれぞれ有している。各ヒートシンク13に設けられた放熱フィン13A同士は、互いに平行に配置されており、放熱フィン13A同士の間に通気路C1が形成されている。また、各通気路C1は、仮想線B1に沿った方向に延ばされている。内部A1へ吸い込まれた空気は強制対流を生じ、かつ、通気路C1へ進入する。
【0017】
4個のヒートシンク13の内端同士の間、隣り合うヒートシンク13同士の間に亘って、収容空間40が設けられている。図2のように、各ヒートシンク13を仮想線B1に対して垂直な平面内で見ると、2つの直線が交差するように、略クロス形状の収容空間40が設けられている。収容空間40は、仮想線B1に近い領域40Aの幅L1より、仮想線B1から遠い領域40Bの幅L2の方が大きい。2個の第1ヒーター14が、収容空間40へ収容されている。2個の第1ヒーター14は、共にプレート形状(シート形状)であり、かつ、L字形に折り曲げられた状態で収容空間40へ収容されている。このため、2個の第1ヒーター14は、ヒートシンク13のうち領域40Aに相当する箇所により挟まれて、ヒートシンク13へ面接触されている。
【0018】
2個の第1ヒーター14は、それぞれ多数のカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube:CNT)により構成された面状発熱体である。カーボンナノチューブ単体は、炭素原子が網目のように結びついて筒状になったもので、カーボンナノチューブ単体の直径は、約1nm~4nmの範囲内である。2個の第1ヒーター14には、プラス電極(図示せず)及びマイナス電極(図示せず)がそれぞれ接続されている。プラス電極及びマイナス電極は、共に領域40Bへ配置されている。2個の第1ヒーター14同士は、収容空間40内で離間して配置されている。第1ヒーター14は、テラヘルツ(育成光線)を含む遠赤外線を出す特性を持ったものが採用されている。
【0019】
また、収容空間40のうち、仮想線B1に沿った方向で最も電動モータ16に近い箇所が、図3に示す遮蔽材30で覆われている。遮蔽材30は、耐熱性の合成樹脂であり、遮蔽材30は、4個のヒートシンク13の端面へ固定されている。遮蔽材30は、ケーシング11の内部A1へ吸い込まれた空気が収容空間40へ進入すること、具体的には、空気と第1ヒーター14とを隔てる要素である。
【0020】
温度ヒューズ20は、ケーシング11の内部A1に設けられている。温度ヒューズ20は、例えば、ヒートシンク13の端面に取り付けられている。温度ヒューズ20は、ヒートシンク13の温度が所定温度、例えば、300℃まで上昇すると、バッテリ18から第1ヒーター14及び第2ヒーター15へ電圧を印加する電気回路を遮断する機能を有する。マイナスイオン発生器21は、何れかのヒートシンク13の放熱フィン13A同士の間、つまり、通気路C1に配置されている。マイナスイオン発生器21は、例えば、コロナ放電方式である。マイナスイオン発生器21は、プリント基板19の電気回路へ電気的に接続されている。バッテリ18からプリント基板19を介して、マイナスイオン発生器21の電極に高圧のマイナス電圧が印加されると、マイナスイオン発生器21は、空気中で放電現象を発生させる。この時、電極から電子が放出されて、空気中の酸素分子に付着し、空気に含まれる酸素分子をマイナスイオン化する。
【0021】
フィルム(シート)形状の第2ヒーター15は、ケーシング11の内部A1に配置され、かつ、仮想線B1に沿った方向で、各ヒートシンク13の全配置領域に亘って配置されている。フィルム形状の第2ヒーター15は、4個のヒートシンク13の外周に巻かれている。つまり、第2ヒーター15は、仮想線B1を中心として円形状に配置されている。第2ヒーター15は、1枚のシート形状でもよいし、仮想線B1を中心とする円周方向に複数枚配置されていてもよい。さらに、第2ヒーター15は、図1に示す仮想線B1に沿った方向において、複数に分割されていてもよい。第2ヒーター15は、4個のヒートシンク13の放熱フィン13Aの先端にそれぞれ接触されている。第2ヒーター15は、例えば、第1ヒーター14と同様に構成され、かつ、第1ヒーター14と同様の機能を有する。
【0022】
また、仮想線B1を中心として第2ヒーター15の外側に遮蔽材31が設けられている。遮蔽材31は、非通気性であり、遮蔽材31の材質は、例えば、アルミニウム、または、耐熱性の合成樹脂である。仮想線B1に沿った方向で、遮蔽材31は、ケーシング11の内部A1に配置されている。遮蔽材31は、第2ヒーター15の外周面の全てを覆っていることに加え、第2ヒーター15のうち、仮想線B1に沿った方向で電動モータ16に最も近い箇所に内向きフランジ31Aが設けられている。内向きフランジ31Aは、仮想線B1を中心として環状に設けられている。遮蔽材31は、ケーシング11の外部A2からケーシング11の内部A1に吸い込まれた空気と、第2ヒーター15の端部、及び第2ヒーター15の外周面とを隔てる要素である。
【0023】
保熱層22は、遮蔽材31のうち、仮想線B1に沿った方向の一部を覆っている。つまり、保熱層22は、円筒形状を有する。保熱層22は、例えば、電気的な絶縁性及び耐熱性を有するマイカ等の材料により構成されている。また、ケーシング11のうち、仮想線B1に沿った方向でカバー23から最も離間された箇所に、内向きフランジ11Aが設けられている。内向きフランジ11Aは、仮想線B1を中心として環状に設けられており、内向きフランジ11Aにより吹き出し口32が形成されている。内向きフランジ11Aは、遮蔽材31の端部、保熱層22の端部、及び第2ヒーター15の端部に接触されている。
【0024】
(ドライヤーの使用例及び効果)
利用者は、所定の箇所、例えば、マウント26の外面に設けられている操作スイッチをオンできる。すると、バッテリ18から電動モータ16へ電流が供給されて、電動モータ16及びファン17が回転される。ファン17が回転されると、ケーシング11の外部A2の空気が、吸気口24及びメッシュ25を通ってケーシング11の内部A1へ吸い込まれる。
【0025】
また、操作スイッチがオンされると、バッテリ18の電流は、プリント基板19の電気回路を通り第1ヒーター14及び第2ヒーター15へ供給される。すると、第1ヒーター14及び第2ヒーター15が発熱、つまり、温度が上昇する。第1ヒーター14及び第2ヒーター15の熱は、ヒートシンク13へ伝達(拡散)される。ケーシング11の内部A1へ吸い込まれた空気は、通気路C1を通る。第1ヒーター14及び第2ヒーター15からヒートシンク13の放熱フィン13Aに伝達された熱は、通気路C1を通る空気へ伝達され、空気の温度が上昇される。通気路C1を通った空気(温風)は、吹き出し口32から外部A2へ吹き出される。したがって、利用者の頭髪を温風で乾燥させることができる。
【0026】
本実施形態のドライヤー10は、吹き出し口32から、例えば、10cm程度離れた位置において、空気の温度が60℃程度を確保できる。また、第1ヒーター14及び第2ヒーター15の熱は、ヒートシンク13へ伝達されることに加え、第1ヒーター14及び第2ヒーター15を構成するカーボンナノチューブからは、テラヘルツを含む遠赤外線が空気中へ出る。このため、温風及び遠赤外線により利用者の頭髪を乾燥させることができる。
【0027】
また、複数個に分割されたヒートシンク13同士の間に、第1ヒーター14がそれぞれ挟まれている。したがって、1個毎の第1ヒーター14の抵抗値を下げ、第1ヒーター14の熱量を増加することができ、1個毎の第1ヒーター14を構成するカーボンナノチューブの抵抗値を下げ、第1ヒーター14の熱量を増加することができる。さらに、第2ヒーター15が複数枚設けられていると、1枚毎の第2ヒーター15の抵抗値を下げ、第2ヒーター15の熱量を増加することができる。さらに、1個毎の第2ヒーター15を構成するカーボンナノチューブの抵抗値を下げ、第2ヒーター15の熱量を増加することができる。さらに、複数の第1ヒーター14同士を電気的に並列に接続することで、カーボンナノチューブの抵抗値を下げ、第1ヒーター14の熱量を増加することができる。さらに、複数の第2ヒーター15同士を電気的に並列に接続することで、カーボンナノチューブの抵抗値を下げ、第2ヒーター15の熱量を増加することができる。
【0028】
また、遮蔽材30は、収容空間40のうち、仮想線B1に沿った方向で最もファン17に近い箇所を覆っている。このため、内部A1へ吸い込まれた空気が通気路C1を通って外部A2へ噴射されるまでの間に、その空気が第1ヒーター14へ接触することを阻止できる。したがって、第1ヒーター14の温度上昇が阻害されにくくなる。
【0029】
さらに、遮蔽材31の内向きフランジ31Aは、第2ヒーター15のうち、仮想線B1に沿った方向でファン17に最も近い箇所を覆っている。このため、ケーシング11の内部A1へ吸い込まれた空気が、第2ヒーター15の端部に接触することを抑制できる。したがって、第2ヒーター15の温度上昇が阻害されにくくなる。電動モータ16及びファン17を駆動する電源は、直流のバッテリ18であるため、消費電力を大幅に削減でき、かつ、電源の単一化を図ることができる。仮想線B1を中心とする半径方向で、ヒートシンク13の外側に遮蔽材31及び保熱層22が設けられている。このため、ヒートシンク13の熱がケーシング11へ伝達されることを抑制できる。したがって、ヒートシンク13の熱が、ケーシング11を握っている利用者の手へ伝達されることを抑制できる。
【0030】
また、マイナスイオン発生器21が通気路C1に設けられている。したがって、通気路C1を通る空気に含まれる酸素分子をマイナスイオン化することができる。さらに、ヒートシンク13の温度が所定温度、例えば、300℃以上になると、温度ヒューズ20がプリント基板19の電気回路を遮断する。したがって、ドライヤー10は、第1ヒーター14及び第2ヒーター15の過熱を防止できる。
【0031】
(ヒートシンクの他の例)
図1に示すケーシング11の内部A1に設けるヒートシンク13及び第1ヒーター14の他の例が、図4(A)及び図4(B)に示されている。ヒートシンク13は、仮想線B1を中心とする円周方向に6つ並べて配置されている。つまり、1つのヒートシンク13は、仮想線B1を中心とする円周方向で60度の範囲に亘って配置されている。6つのヒートシンク13は、図2に示すヒートシンク13と同様に、それぞれ放熱フィン13Aを有し、かつ、放熱フィン13A同士の間に、通気路C1が形成されている。また、隣り合うヒートシンク13同士の間に収容空間40がそれぞれ形成され、第1ヒーター14が、収容空間40へそれぞれ配置されている。
【0032】
第1ヒーター14は、仮想線B1に対して垂直な平面内でV字形に折り曲げられた状態で、収容空間40へ配置されている。このため、第1ヒーター14の弾性復元力により、第1ヒーター14の表面の一部は、ヒートシンク13へ押し付けられ、つまり、面接触されている。図4(A)及び図4(B)に示されているヒートシンク13及び第1ヒーター14においても、図2及び図3に示すヒートシンク13及び第1ヒーター14と同様の効果を得ることができる。
【0033】
図1に示すケーシング11の内部A1に設けるヒートシンクの他の例が、繰り下げ図5及び図6に示されている。2個のヒートシンク41が、ケーシング11の内部に設けられている。2個のヒートシンク41は、仮想線B1を隔てて隣り合わせに配置されている。言い換えると、1個のヒートシンク41が、仮想線B1を中心とする180度の範囲を占めるように分割されている。2個のヒートシンク41の間に収容空間42が設けられている。収容空間42は、仮想線B1を通るように直線状に配置されている。収容空間42は、ヒートシンク41の長手方向の全域に亘って設けられている。
【0034】
収容空間42は、仮想線B1を含む領域42Aの幅L1より、領域42Aの両側に位置する領域42Bの幅L2の方が大きい。さらに、第1ヒーター14が、収容空間42へ収容されている。第1ヒーター14は、共にプレート形状である。第1ヒーター14は、ヒートシンク13のうち領域42Aに相当する箇所により挟まれて、2個のヒートシンク13へ面接触されている。収容空間42のうち、仮想線B1に沿った方向で最もファン17に近い箇所は、遮蔽材30により覆われている。また、第2ヒーター15のうち、仮想線B1に沿った方向で最もファン17に近い箇所の端部は、内向きフランジ31Aにより覆われている。
【0035】
また、2個のヒートシンク41は、複数の放熱フィン41Aをそれぞれ備えている。放熱フィン41A同士は、互いに平行に配置されている。2個のヒートシンク41の全ての放熱フィン41Aの先端を結ぶ外接円(図示せず)は、仮想線B1を中心とする円形である。放熱フィン41A同士の間に通気路C2が設けられている。マイナスイオン発生器21は、何れかの通気路C2に配置されている。さらに、2個のヒートシンク41の外周に第2ヒーター15が巻かれている。
【0036】
図1に示すドライヤー10が、図5及び図6に示すヒートシンク41を有していると、ファン17により内部A1空気の流れが形成されると、空気は通気路C2を通って吹き出し口32から吹き出される。第1ヒーター14及び第2ヒーター15の熱は、ヒートシンク13を介して空気へ放散され、温風が吹き出し口32から吹き出される。また、遮蔽材30は、内部A1を流れる空気が収容空間42へ進入することを阻止する。したがって、第1ヒーター14と内部A1を流れる空気とが接触することを防止できる。また、内向きフランジ31Aは、内部A1を流れる空気が第2ヒーター15の端部へ接触することを防止できる。したがって、ヒートシンク13を有するドライヤー10と同様の効果を得ることができる。
【0037】
(温度の測定結果)
図7には、ドライヤー10の吹き出し口32から噴出される空気(温風)の温度の測定結果の一例が示されている。ここで、電動モータ16の回転速度は一定であるものとする。実線の温度線D1は、吹き出し口32の中心、つまり、仮想線B1に相当する位置での測定結果である。破線の温度線D2は、吹き出し口32よりも外側に相当する位置での測定結果である。温度線D1,D2は、共に時間の経過に伴い上昇する傾向である。また、図7に示す例では、同じ時刻であると、温度線D1の温度は、温度線D2の温度より低い。なお、図7には示されていないが、電動モータ16の回転速度が上昇されると、温度線D1と温度線D2との差が相対的に減少する。
【0038】
(第1ヒーター14及び第2ヒーター15の特性)
第1ヒーター14及び第2ヒーター15の特性が、図8(A)及び図8(B)に示されている。図8(A)は、ヒーターへの印加電圧とヒーターの表面温度との関係の一例を示すグラフ図である。第1ヒーター14及び第2ヒーター15の特性は、特性線F1で示され、比較例のヒーターの特性は、特性線F2で示されている。比較例のヒーターは、金属系ヒーターである。特性線F1,F2は、共に、印加電圧が相対的に高くなることに伴い、表面温度が相対的に高くなる傾向を示している。そして、印加電圧が同じであれば、第1ヒーター14及び第2ヒーター15の表面温度は、比較例のヒーターの表面温度よりも高いことが分かる。
【0039】
図8(B)は、ヒーター(遠赤外線)の波長と放射率との関係の一例を示すグラフ図である。第1ヒーター14及び第2ヒーター15の特性は、特性線G1で示され、比較例のヒーターの特性は、特性線G2で示されている。比較例のヒーターは、金属系ヒーターである。特性線G1,G2は、共に、波長が相対的に長くなることに伴い、放射率が相対的に低下する傾向を示している。そして、波長が同じであれば、第1ヒーター14及び第2ヒーター15の放射率は、比較例のヒーターの放射率よりも高いことが分かる。なお、図示はしないが、第1ヒーター14及び第2ヒーター15を構成するカーボンナノチューブの熱伝導率は、例えば、4,000(W/m・k)である。また、カーボンナノチューブの電気伝導率は、金属系に比べて、例えば、120倍以上高い。
【0040】
(その他)
ケーシングの外部の空気を内部へ吸い込む送風機は、ファンに限定されない。送風機は、例えば、プッシュ式(図示せず)の構造でもよい。プッシュ式の送風機は、利用者がプッシュレバーを操作することにより、ケーシングの外部の空気がケーシングの内部へ吸い込まれる構造である。また、ドライヤーを立てて置くことができるように、スタンド(図示せず)を設けることもできる。スタンドは、ドライヤーのグリップの先端が差し込まれる構成を有する。スタンドは、交流電源に接続されて、バッテリへ充電する機構を備えていてもよい。さらに、第1ヒーター及び第2ヒーターのうちの少なくとも一方は、グラフェンヒータにより構成されていてもよい。
【0041】
また、保熱層は、遮熱塗料(断熱塗料)を塗布して形成されてもよい。また、ケーシングの内部に設けるヒートシンクは、仮想線を中心とする円周方向に複数設けられていればよい。ヒートシンクは、例えば、仮想線を中心とする円周方向に5分割して設けられていてもよいし、仮想線を中心とする円周方向に8分割して設けられていてもよい。さらに、第1ヒーター及び第2ヒーターの数は、それぞれ単数または複数の何れでもよい。ケーシングの中心を通る仮想線に対して垂直な平面内におけるケーシングの形状は、円形の他、楕円形、四角形等であってもよい。第2ヒーターは、例えば、フィルムヒーター、つまり、面状発熱体で構成された電気ヒーターであってもよい。フィルムヒーターは、フィルム基材上にヒーター線を設けた構造、または、フィルム基材上にヒーター層(導電膜)を設けた構造、の何れでもよい。
【0042】
本実施形態で説明された構成の技術的意味の一例は、次の通りである。ドライヤー10は、ドライヤーの一例である。ケーシング11は、ケーシングの一例である。内部A1は、ケーシングの内部の一例である。外部A2は、ケーシングの外部の一例である。電動モータ16及びファン17は、送風機構の一例である。電動モータ16は、電動モータの一例である。ファン17は、ファンの一例である。第1ヒーター14は、第1ヒーターの一例である。第2ヒーター15は、第2ヒーターの一例である。ヒートシンク13は、ヒートシンクの一例である。遮蔽材30,31は、それぞれ遮蔽材の一例である。バッテリ18は、バッテリの一例である。収容空間40は、収容空間の一例である。保熱層22は、保熱材の一例である。図2に示される仮想線B1は、所定位置の一例である。外接円の形状は、外周形状の一例である。ヒーターは、発熱体または熱源と定義することもできる。ケーシングの仮想線は、ケーシングの中心線と定義することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本実施形態は、利用者の頭髪を乾燥させるためのドライヤーとして利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10…ドライヤー、11…ケーシング、13…ヒートシンク、14…第1ヒーター、15…第2ヒーター、16…電動モータ、17…ファン、18…バッテリ、22…保熱層、30,31…遮蔽材、A1…内部、A2…外部、C1…通気路
【要約】
【課題】ヒーターの熱量を増加することの可能なドライヤーを提供する。
【解決手段】ケーシング11と、ケーシング11の内部A1からケーシング11の外部A2へ吹き出す空気の流れを形成するファン17と、ケーシング11の内部A1において、空気が流れる経路でファン17より下流に配置されたヒーターと、ケーシング11の内部A1において、空気が流れる経路でファン17より下流でヒーターに接触され、かつ、ヒーターの熱をケーシング11の内部A1で空気へ放散するヒートシンク13と、を有するドライヤー10であって、ヒートシンク13は、複数設けられ、ヒーターは、複数のヒートシンク13により挟まれ、かつ、カーボンナノチューブにより構成された第1ヒーターを含むドライヤー10を構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8