(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】人工膀胱装置
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61F5/44 Z
(21)【出願番号】P 2024095721
(22)【出願日】2024-06-13
【審査請求日】2024-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594055170
【氏名又は名称】北斗制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 清
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113813096(CN,A)
【文献】特表2018-507067(JP,A)
【文献】特表2013-543788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0156919(US,A1)
【文献】特開2013-230857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膀胱から排泄される排泄物を溜めるパウチを備えた人工膀胱装置であって、
第一壁面及び第二壁面をなす2枚の薄いフィルムを重ね合わせてこれらの周囲を溶着或いは接着されて内部に採集した排泄物を漏れずに蓄積可能なキャビティが形成されたパウチと、
パウチ上部に設けられウロストミー接続口を有する面板と、
パウチ下部に設けられ、パウチ内に採集された排泄物を排出する排出バルブと、を備え、
前記第一壁面及び第二壁面間に形成された前記キャビティ内に湾曲形状をしたドレンワイヤが収容され、当該ドレンワイヤは湾曲形状の両側に連なる一対の直状端部が前記排出バルブに対して各々組み付けられ、湾曲端部が前記面板近傍まで延設されていることを特徴とする人工膀胱装置。
【請求項2】
前記ドレンワイヤは、柔軟性のある高分子線材が用いられる請求項1記載の人工膀胱装置。
【請求項3】
前記ドレンワイヤの一対の直状部分は前記排出バルブの中心軸と互いに平行で、前記ドレンワイヤの直状端部どうしの間に前記排出バルブのバルブ開口が配置されるように組み付けられている請求項1又は請求項2に記載の人工膀胱装置。
【請求項4】
前記排出バルブの前記キャビティに臨むキャビティ側端部に前記ドレンワイヤの一対の直状端部が各々嵌め込まれる嵌込み穴が設けられ、各嵌込み穴には直状端部の挿入を許容し引き抜きを許さない抜け止め機構が設けられている請求項1又は請求項2に記載の人工膀胱装置。
【請求項5】
前記排出バルブに延長チューブの一端が接続され、前記延長チューブの他端はウロバッグに接続されている請求項1又は請求項2記載の人工膀胱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膀胱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は排泄物(尿)採取のためのビニール袋(パウチ)を備えた人工膀胱装置の正面図であり、
図7は人工膀胱装置の側面図である。人工膀胱装置50は2枚のフィルムを重ね合わせて周囲を溶着されることでパウチ51が形成される。パウチ51の第一壁面51a及び第二壁面51bに囲まれた内部空間は尿を蓄積可能なキャビティ51cとなる。一般的にパウチ51の上方は逆流防止手段が設置される逆流防止領域Pとなっている。
図6及び
図7では逆流防止領域Pに色をつけ境界線Qを破線で示している。尿は壁面に溶着した複数のシートなどによりウロストミー(尿路ストーマ)側から排出バルブ52側に流れ、逆方向への流れは阻止され感染症を予防している。
【0003】
パウチ51の上部にはウロストミー接続口53aを備えた面板53が設けられている。面板53はウロストミー周辺の腹壁に接着されパウチ51が保持される。パウチ51の下部には排出バルブ52が設けられ、面板53及び排出バルブ52はパウチ壁面に溶着あるいは接着されてパウチ51全体でキャビティ51cが形成される。尿はウロストミー(尿路ストーマ)からウロストミー接続口53aを介して間欠的に少量ずつ排出され、パウチ51内に形成されたキャビティ51cに蓄積される。
また、夜間などにはウロバッグをベッドサイドフレームに取付け、排出バルブと延長チューブを介してウロバッグを連結して尿採集量を概ね10倍に増加して長時間採集を可能とする使用形態も採用されている。
【0004】
人工膀胱装置50は、昼間は立位で使用されるが夜間の睡眠時は臥位にて増量バッグを連結して使用される。つまり人工膀胱装置50は使用者の体位により、立位モードとウロバッグを連結した臥位モードの二通りの状態があり双方では動作が大きく異なる。
まず立位モードではパウチ51はほぼ垂直状態であり、排出バルブ52が閉じられ採集された尿はパウチ51のキャビティ51c内に蓄積される。蓄積された尿は重力により下向きの力が働き、排出バルブ52を開けることで外部に廃棄される。使用時間はパウチ51の容量と体調により変動し1~4時間ほどである。
【0005】
一方、臥位モードではパウチ51はほぼ水平状態であり、排出バルブ52は開放され図示しない延長チューブを介してウロバッグと連結される。パウチ51内は空状態であり、ウロストミーから間欠的に少しずつ排出される尿は排出バルブ52へとほぼ水平に自然落下する。従ってパウチ51の両壁面は接触しており尿はわずかな隙間を通って移動する。またパウチ51は体位により引っ張られねじれあるいは屈曲し常に複雑に変形した状態で使用されており、ねじれ変形が大きいと尿が通る隙間が閉鎖されて尿はパウチ51内に閉じ込められ排出バルブ52には到達しなくなる。
【0006】
パウチ51のねじれ変形の回転力は延長チューブを介して外部から印加される。ウロバッグ自体が取り付け操作や検尿操作などで回転することがあり、回転力は延長チューブによりパウチ51に伝わりパウチ51はねじれ変形した状態で使用されており、変形が大きいと尿が通る隙間が閉鎖して尿はパウチ51内に蓄積され排出バルブ52には到達しなくなる(
図8参照)。この閉鎖状態が長時間続き、さらに使用者が寝返りを打って伏臥位となった場合は逆流防止手段が設けられていたとしても蓄積された尿に体圧が印加され、尿がウロストミーから腎臓へ逆流し、あるいはウロストミー周辺の腹壁と接着された面板53部分から漏れ出す可能性がある。そこでパウチ51のねじれや屈曲などの変形を防止する以下の方法が種々考案されている。
【0007】
例えば、パウチ壁面に補強部材を設け、ねじれを防止する案である。ねじれを防止するため細長い扁平の補強部材がパウチの側方に向かって延設されている。これにより排出軸方向に対する回転モーメントを壁面により打ち消すことを意図している(特許文献1;特開2018-507067号参照)。また、パウチに中空の排出用チューブを設け、壁面閉鎖時の排出路を確保するものもある(特許文献2;特許第3681717号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-507067号公報
【文献】特許第3681717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、パウチに補強部材を追加し、パウチ壁面にて回転モーメントを打ち消すものである。パウチ壁面には装着性や柔軟性が要求されるため80μm程度の薄いフィルムで製作されており耐久力に不安があり壁面が破れ採集した尿がいっきに漏れるおそれがあり衛生上問題となる。
補強部材はパウチの長手方向に対して直交する側方に延びるためサイズが大きいあるいは厚いと使用者には異物感がある。さらに補強部材に外力が加わると体に刺さるおそれもあり安全上問題となる。
【0010】
特許文献2は、パウチの開口部からパウチ下部にわたって中空の排出用チューブを設け、パウチ壁面同士が密着した場合でも排泄物の排出路を確保するものである。しかしながら、パウチのねじれや屈曲を防止する機能はなく、また排出用チューブをパウチ上端とパウチ下端とで固定する必要があり取付けが面倒であり、パウチの変形によりチューブ上端がパウチ壁面を破るおそれがある。また尿に混ざった分泌物や面板に塗布された薬品が溶けた不純物がチューブ内や排出路で詰まりやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、パウチのねじれあるいは屈曲などの変形に対して抵抗力を備えつつ、第一壁面と第二壁面が密着しようとしても湾曲形状をしたドレンワイヤにより排出バルブへ流下する排泄物の排出通路を確保することができる人工膀胱装置を提供することにある。
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
人工膀胱から排泄される排泄物を溜めるパウチを備えた人工膀胱装置であって、第一壁面及び第二壁面をなす2枚の薄いフィルムを重ね合わせてこれらの周囲を溶着或いは接着されて内部に採集した排泄物を漏れずに蓄積可能なキャビティが形成されたパウチと、パウチ上部に設けられウロストミー接続口を有する面板と、パウチ下部に設けられ、パウチ内に採集した排泄物を排出する排出バルブと、を備え、前記第一壁面及び第二壁面間に形成された前記キャビティ内に湾曲形状をしたドレンワイヤが収容され、当該ドレンワイヤは湾曲形状の両側に連なる一対の直状端部が前記排出バルブに対して各々組み付けられ、湾曲端部が逆流防止領域近傍まで延設されていることを特徴とする。
上記構成によれば、キャビティ内に湾曲形状をしたドレンワイヤが収容され、当該ドレンワイヤは湾曲形状の両側に連なる一対の直状端部が排出バルブに対して各々組み付けられ、湾曲端部が逆流防止領域近傍まで延設されているので、パウチのねじれあるいは屈曲などの変形に対して抵抗力を備えつつ、第一壁面と第二壁面が密着しようとしても湾曲形状をしたドレンワイヤにより排出バルブへ流下する排泄物(尿)の排出通路を確保することができる。
【0013】
前記ドレンワイヤは、柔軟性のある高分子線材が用いられることが望ましい。
これにより破損したドレンワイヤ先端によりパウチが破れる事故や、使用者がケガをする事故を防止し安全性を確保する。
【0014】
前記ドレンワイヤの一対の直状部分は前記排出バルブの中心軸と互いに平行で、前記ドレンワイヤの直状端部どうしの間に前記排出バルブのバルブ開口が配置されるように組み付けられていることが好ましい。
このように、排出バルブのバルブ開口は一対の直状端部の間に配置されているのでドレンワイヤによる尿の排出抵抗の増加を抑えることができ、尿に混ざる不純物も排出され易くパウチが詰まることがなくなる。
【0015】
前記排出バルブの前記キャビティに臨むキャビティ側端部に前記ドレンワイヤの一対の直状端部が各々嵌め込まれる嵌込み穴が設けられ、各嵌込み穴には直状端部の挿入を許容し引き抜きを許さない抜け止め機構が設けられていることが望ましい。
これによりドレンワイヤのパウチに対する組み付けを簡素化し、またパウチの変形時にドレンワイヤが排出バルブ部分から抜けることを防いで、装置の信頼性が向上する。
【0016】
前記排出バルブに延長チューブの一端が接続され、前記延長チューブの他端はウロバッグに接続されていてもよい。
これにより、パウチにウロバッグを増設しても、ドレンワイヤによりパウチ閉鎖を防止でき、オーバーフローの心配をせずに安心して睡眠をとることができ生活の質(QOL)を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
キャビティ内に湾曲形状をしたドレンワイヤの合理的な配置によりパウチのねじれや変形に対し大きな抵抗力を備えつつ排泄物の排出通路を確保することができる。また、ドレンワイヤはケガをしにくい形状と材質であり安全性が高い。
本案はシンプルな構造からローコストで人工膀胱装置を提供することができる。また、パウチに接続するウロバッグ増設時は、ドレンワイヤによりパウチ閉鎖を防止でき、オーバーフローの心配をせずに安心して睡眠をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本案による人工膀胱装置の実施例の正面図である。
【
図2】本案による人工膀胱装置の実施例の側面図である。
【
図3】本案による人工膀胱装置の実施例の排出バルブ及びドレンワイヤ周辺の正面断面図である。
【
図4】本案による人工膀胱装置の実施例の排出バルブ及びドレンワイヤ周辺のA-A'断面図である。
【
図5】パウチにウロバッグが接続された人工膀胱装置のシステム例である。
【
図6】一般的な人工膀胱装置の実施例の正面図である。
【
図7】一般的な人工膀胱装置の実施例の側面図である。
【
図8】ねじれて閉鎖状態となったパウチの写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1乃至
図5を参照して人工膀胱装置の一例を説明する。
先ずは人工膀胱装置1の概要について説明する。
図1は人工膀胱装置1の正面図である。
図2は人工膀胱装置1の側面図である。排泄物(尿)収集袋パウチ(以下、単に「パウチ」という)2は、2枚のフィルムを重ね合わせて構成される。パウチ2は、第一壁面2a及び第二壁面2bの周囲が溶着或いは接着されて内部に尿を蓄積可能なキャビティ2cが形成されている。第一壁面2a及び第二壁面2bは、フィルム膜厚が80μm程度のポリエチレンなどの高分子フィルムが用いられる。キャビティ2cの尿蓄積容量は0.2リットル程度が多く採用される。
【0020】
図1及び
図2において、パウチ2の上方は逆流防止手段が設置される逆流防止領域Pとなっている。具体的には、逆流防止領域Pには、第一壁面2a及び第二壁面2bに複数のシートなどが溶着されており、尿はウロストミー接続口3a側から排出バルブ4側にのみ流れ逆方向への流れが阻止される。
図1及び
図2では逆流防止領域Pに色をつけ境界線Qを破線で示している。境界線Qより下方は逆流防止には影響せず尿が蓄積され排出バルブ4から排出される。
【0021】
パウチ2の上部にはウロストミー接続口3aを備えた面板3が設けられている。面板3はウロストミー周辺の腹壁に接着されてパウチ2が保持される。なお、面板3は2ピース構造でもよい。また、面板3に固定ベルト用のフックが設けられていてもよい。また、パウチ2の腹壁側に不織布面が設けられていてもよい。
パウチ2の下部には排出バルブ4が設けられ、面板3及び排出バルブ4は第一壁面2a及び第二壁面2bに溶着あるいは接着されてパウチ2内にキャビティ2cが形成される。キャビティ2c内には湾曲形状(例えば逆U字形状)をなすドレンワイヤ5が設けられている。尿はウロストミー接続口3aから間欠的に少量ずつ排出され、キャビティ2c内に蓄積される。
【0022】
図3には排出バルブ4及びドレンワイヤ5近傍の正面断面図を示す。また
図4は
図3に示す排出バルブ4及びドレンワイヤ5近傍の矢印A-A’断面図を示す。排出バルブ4は、第一壁面2a及び第二壁面2bと溶着されている。ドレンワイヤ5は丸い細線で全体が逆U字状をしており、パウチ2のキャビティ2c内に配置されている。ドレンワイヤ5の逆U字状端部(湾曲端部)5aは、逆流防止領域Pの近傍まで延設されており、逆流防止領域Pには侵入しない長さとすることで逆流防止機能に影響しないようになっている。
図4に示すようにドレンワイヤ5はパウチ2がねじれても第一壁面2aと第二壁面2bとの密着を防ぎ尿が通過するわずかな空隙を確保する。これによりパウチ2が激しく変形しても排出路が確保され、後述するウロバッグが接続された場合には尿が排出され続けオーバーフローを防止できる。
【0023】
また、ドレンワイヤ5はねじれや屈曲などのパウチ2の変形を抑止する抵抗力を発揮し、またねじれによりドレンワイヤ5自身が破損しないように柔軟な高分子線材で構成することが望ましい。ドレンワイヤ5が破損するとパウチ2の破損やケガの恐れがある。尚、ドレンワイヤ5の強度を向上するために、逆U字状端部5aの形状は環状端部としてもよい。また逆U字状端部5aに至る直状部分にはラダーフレーム形状やトラス形状の連結部材を設けてもよい。
【0024】
図3に示すように、ドレンワイヤ5の一対の直状部分は排出バルブ4の中心軸と互いに平行で、ドレンワイヤ5の直状端部5bどうしの間に排出バルブ4のバルブ開口4aが配置されるように組み付けられている。このとき直状端部5b間が最大幅になるように配置されることが望ましい。
ドレンワイヤ5の逆U字状端部5aは湾曲形状となっていることから回転モーメントに対して抵抗力を持つ。このためパウチ2のねじれ時に逆U字状端部5aは第一壁面2a及び/又は第二壁面2bと接触しねじれに抵抗する反発力がドレンワイヤ5に発生する。また、排出バルブ4のバルブ開口4aは一対の直状端部5bの間に配置されているのでドレンワイヤ5による尿の排出抵抗の増加を抑えることができ、尿に混ざる不純物も排出され易くパウチ2が詰まることがなくなる。
【0025】
排出バルブ4のキャビティ2cに臨むキャビティ側端部にドレンワイヤ5の一対の直状端部5bが各々嵌め込まれる嵌込み穴4bが設けられている。各嵌込み穴4bには直状端部5bの挿入を許容し引き抜きを許さない抜け止め機構が設けられている。具体的には、嵌込み穴4bの内壁面には、穴底部に向かって先端が先細り状に斜め下方に向かう抜け止め突起6が突設されている。また、一対の直状端部5bの外周面には、くさび状の凹溝5cが設けられている。ドレンワイヤ5の直状端部5bを嵌込み穴4bに先端部が穴底部に突き当たるまで挿入すると、直状端部5bが抜け止め突起6の先端側を外側に押し広げるように変形させて嵌め込まれ、変形していた抜け止め突起6が凹溝5cに嵌り込むため、直状端部5bの引き抜きができなくなる。
これによりドレンワイヤ5のパウチ2に対する組み付けを簡素化し、またパウチ2の変形時にドレンワイヤ5が排出バルブ4から抜けることを防いで、装置の信頼性が向上する。
【0026】
人工膀胱装置1は使用者が立位の時(増量バッグ未使用時)及び臥位の時(増量バッグ使用時)の二種類のモードがある。立位モードにおいて排出バルブ4は閉じられ尿はパウチ2に蓄積される。臥位モードではパウチ2に増量バッグが連結され、排出バルブ4は開放されて排出口4cには延長チューブ7の一端が接続され、延長チューブ7の他端は増量バッグに接続される。
【0027】
増量バッグには二種類あり、レッグバッグは足に取り付けるタイプで、昼間のやや長い時間の活動に対応するためのものでパウチの2~3倍の容量を持つ。一方、ウロバッグ8はベッドのサイドフレームに取付けるもので、睡眠時等の横臥位で使用するためパウチの約10倍の容量を持つ。以下では主にウロバッグ8を用いて説明する。
【0028】
図5にパウチ2にウロバッグが接続された人工膀胱装置1のシステム例を示す。ウロバッグ8は、大型の尿採集袋であり、パウチ2の排出バルブ4と直径約10mm長さ1m余りの透明な延長チューブ7で接続される。ウロバッグ8の上流側には逆止弁8aが設けられ下流側には排出弁8bが設けられている。ウロバッグ8は透明でありキャビティ8cの外周には容量目盛りが打ってあり約2.5リットルとパウチ2の10倍ほどの容量があるため、使用時間も24時間以上に増加する。従って、ウロバッグ8を使用すれば長時間の使用が可能となり睡眠時も安心である。なお、病院などで尿量の計量をする用途向けにウロバッグ8に計量カップ部分が内蔵されていてもよい。
【0029】
睡眠時に使用するウロバッグ8はベッド9のサイドフレーム9aに取り付けられ、尿を排出可能とするためにウロバッグ8のキャビティ8cはマットレス10の上面より十分低い位置とする必要がある。ウロバッグ8は睡眠前にパウチ2に連結し、翌朝パウチ2と切り離しウロバッグ8に蓄積された尿を廃棄する。また衛生上、延長チューブ7とウロバッグ8は水洗し昼間は保管する必要がある。使用者Xはマットレス10上に横になった仰臥位及びウロバッグ8側に向かった側臥位(図示せず)が可能である。
これによりウロバッグ8の増設時は、ドレンワイヤ5によりパウチ閉鎖を防止でき、オーバーフローの心配をせずに安心して睡眠をとることができ、生活の質(QOL)を向上させることができる。
【0030】
以上説明したように、パウチ2のねじれや屈曲などの変形が生じてもキャビティ2c内に設けられた湾曲形状(例えば逆U字状)のドレンワイヤ5により排出バルブ4への尿の排出通路が確保される。このため、パウチ2にウロバッグ8を接続すればパウチ2のみに比べ10倍程度の長時間使用が可能となり、オーバーフローの心配をせずに安心して睡眠できる生活を実現できる。操作性と装着感は従来と同等であり、コストアップも抑えられる。人工膀胱装置は4~5日ごとに交換する必要があり、一人で年間90個程度使用するので使用者にとってコストは非常に重要である。
【符号の説明】
【0031】
1 人口膀胱装置 2 パウチ 2a 第一壁面 2b 第二壁面 2c キャビティ 3 面板 3a ウロストミー接続口 4 排出バルブ 4a バルブ開口 4b 嵌込み穴 4c 排出口 5 ドレンワイヤ 5a 逆U字状端部 5b 直状端部 5c 凹溝 P 逆流防止領域 Q 境界線 6 抜け止め突起 7 延長チューブ 8 ウロバッグ 8a 逆止弁 8b 排出弁 8c キャビティ 9 ベッド 9a サイドフレーム 10 マットレス X 使用者
【要約】
【課題】パウチのねじれあるいは屈曲などの変形に対して抵抗力を備えつつ、第一壁面と第二壁面が密着しようとしても湾曲形状をしたドレンワイヤにより排出バルブへ流下する排泄物の排出通路を確保することができる人工膀胱装置を提供する。
【解決手段】パウチ2の第一壁面2a及び第二壁面2b間に形成されたキャビティ2c内に湾曲形状をしたドレンワイヤ5が収容され、当該ドレンワイヤ5は湾曲形状の両側に連なる一対の直状端部5bが排出バルブ4に対して各々組み付けられ、湾曲端部5aが逆流防止領域Pの近傍まで延設されている。
【選択図】
図1