(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240816BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240816BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B7/027
(21)【出願番号】P 2018059901
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】盛屋 美和
(72)【発明者】
【氏名】古澤 寛樹
【合議体】
【審判長】岩谷 一臣
【審判官】八木 誠
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-67788(JP,A)
【文献】特開2017-165059(JP,A)
【文献】特開2017-217764(JP,A)
【文献】特開平2-258577(JP,A)
【文献】特表2010-537901(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/40
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール性を有する非結晶フィルムと、
前記非結晶フィルムの少なくとも一方の面に、印刷層が形成された印刷領域と、印刷層が形成されていない非印刷領域とを有し、
方形状であり、互いに対向する両端部に沿って前記非印刷領域が形成されており、
所定の幅を有する前記非印刷領域が前記非結晶フィルムの端部の全体に亘って延び、前記印刷領域が互いに対向する両端部に沿って形成される前記非印刷領域の間の全体に亘って設けられている、ヒートシールフィルム。
【請求項2】
ヒートシール性を有する非結晶フィルムと、
前記非結晶フィルムの少なくとも一方の面に、印刷層が形成された印刷領域と、印刷層が形成されていない非印刷領域とを有し、
円形状または楕円形状であり、端部に沿って、前記印刷領域と前記非印刷領域とが形成されており、
前記印刷領域が前記非結晶フィルムの端部の一部に形成され、
所定の幅を有する前記非印刷領域が前記印刷領域を除く前記非結晶フィルムの端部の全周に亘って延びている、ヒートシールフィルム。
【請求項3】
前記非結晶フィルムの前記印刷層とは反対側に積層され、加熱により発色する発色材料を含む感熱記録層を有する、請求項1または2に記載のヒートシールフィルム。
【請求項4】
前記非結晶フィルムおよび前記感熱記録層が透明である、請求項3に記載のヒートシールフィルム。
【請求項5】
容器と、前記容器の帯封として請求項1に記載のヒートシールフィルムと、を有する、包装材。
【請求項6】
容器と、前記容器のトップシールとして請求項2に記載のヒートシールフィルムと、を有する、包装材。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載のヒートシールフィルムを用いた包装材の製造方法であって、
前記ヒートシールフィルムの端部において、前記印刷領域と前記非印刷領域とを含む領域を加熱することにより、前記印刷領域における前記非結晶フィルムを熱溶着することなく、前記非印刷領域における前記非結晶フィルムを熱溶着することを含む、包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシールフィルム、包装材、および包装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材に用いられる樹脂フィルムとして、非晶質成分を含む非結晶(アモルファス)フィルムが知られている。非結晶フィルムは、ヒートシール性に優れており、ヒートシール層を積層することなく単独で熱溶着に供することができることから、包装材として好適に用いられ得る。このような非結晶フィルムとして、例えば、ポリエステル系フィルムが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、従来の非結晶フィルムは、熱溶着すべきでない箇所における熱溶着を防止し、所望の箇所のみを熱溶着することは容易ではなく、例えば、包装材として用いたときに所望でない箇所が溶着するおそれがある。具体的には、プラスチック容器と該容器の帯封とからなる包装材において、帯封として非結晶フィルムを用いた場合、包装材が加熱されることにより、非結晶フィルムが容器に溶着してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、熱溶着すべきでない箇所における熱溶着を防止し、所望の箇所のみを熱溶着することができるヒートシールフィルム、そのようなヒートシールフィルムを用いた包装材、および包装材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヒートシールフィルムは、ヒートシール性を有する非結晶フィルムと、上記非結晶フィルムの少なくとも一方の面に、印刷層が形成された印刷領域と、印刷層が形成されていない非印刷領域とを有する。
1つの実施形態においては、上記非結晶フィルムの上記印刷層とは反対側に積層され、加熱により発色する発色材料を含む感熱記録層を有する。
1つの実施形態においては、上記非結晶フィルムおよび上記感熱記録層が透明である。
1つの実施形態においては、方形状であり、互いに対向する両端部に沿って上記非印刷領域が形成されている。
1つの実施形態においては、円形状または楕円形状であり、端部に沿って、上記印刷領域と上記非印刷領域とが形成されている。
本発明の別の局面によれば、包装材が提供される。この包装材は、容器と、上記容器の帯封として上記ヒートシールフィルムと、を有する。
1つの実施形態においては、上記包装材は、容器と、上記容器のトップシールとして上記ヒートシールフィルムと、を有する。
本発明の別の局面によれば、包装材の製造方法が提供される。この包装材の製造方法は、上記ヒートシールフィルムを用いた包装材の製造方法であって、上記ヒートシールフィルムの端部において、上記印刷領域と上記非印刷領域とを含む領域を加熱することにより、上記印刷領域における上記非結晶フィルムを熱溶着することなく、上記非印刷領域における上記非結晶フィルムを熱溶着することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムの概略断面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムをヒートシール処理する工程を示す概略図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムの概略平面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態によるヒートシールフィルムの概略平面図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態による包装材の概略図である。
【
図6】本発明の別の実施形態による包装材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.ヒートシールフィルム
図1は、本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムの概略断面図である。
図1に示すように、ヒートシールフィルム100は、ヒートシール性を有する非結晶フィルム10と、非結晶フィルム10の少なくとも一方の面に、印刷層30が形成された印刷領域31と、印刷層30が形成されていない非印刷領域32とを有する。すなわち、ヒートシールフィルム100は、上記一方の面において、非印刷領域32においては非結晶フィルム10が露出しており、印刷領域31においては非結晶フィルム10が露出していない。印刷領域31の位置および大きさなどは限定されず、任意の位置に任意の大きさの印刷層30を形成することができる。上記の構成を有するヒートシールフィルム100は、ヒートシール処理したとき、非印刷領域32においては熱溶着(ヒートシール)され、印刷領域31においては熱溶着されない。したがって、熱溶着すべきでない箇所に印刷層30を形成することにより、熱溶着すべきでない箇所における熱溶着を防止し、所望の箇所のみを熱溶着することができる。さらに、熱溶着すべきでない箇所に印刷層30を形成することにより、例えば、ヒートシールフィルム100を容器の帯封として用いたときに、加熱によりヒートシールフィルム100が容器に溶着することを防止することができる。
【0010】
図2は、本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムをヒートシール処理する工程を示す概略図である。
図2に示すように、ヒートシールフィルム100は、代表的には、一方の端部を被着体に重ねた状態で、被着体に対向する面とは反対側の面にヒートシールバー200を押し当てて加熱することにより、ヒートシール処理される。なお、ヒートシール処理工程においては、ヒートシールバーを、被着体のヒートシールフィルム100とは反対側から押し当ててもよいし、ヒートシールフィルム100および被着体を挟むように両側から押し当ててもよい。被着体は、ヒートシールフィルム100の他方の端部であってもよいし、他のフィルムであってもよいし、後述する容器であってもよい。ここで、ヒートシールバーが押し当てられる部分に対応する領域を、ヒートシール処理領域Aとする。
図2に示すように、ヒートシールフィルム100は、好ましくは、ヒートシール処理領域Aにおいて、非結晶フィルム10の表面に、印刷領域31と非印刷領域32とを有する。ヒートシールフィルム100は、熱溶着すべきでない領域における非結晶フィルム10の表面を印刷領域31としておくことによって、従来のヒートシールフィルムをヒートシール処理する場合と同様にヒートシール処理領域Aにヒートシールバーを押し当てたときに、ヒートシール処理領域Aにおける非印刷領域32のみを熱溶着することができる。
【0011】
ヒートシール処理領域Aは、代表的には、ヒートシールフィルム100の端部の領域であり、ヒートシールバー200の幅に対応する幅を有する領域である。ヒートシール処理領域Aは、例えば、端部から1mm~20mmの幅を持つ領域であり、好ましくは端部から2mm~10mmの幅を持つ領域である。すなわち、ヒートシールフィルム100は、端部から所定の幅を持つ領域に、印刷領域31と非印刷領域32とを有する。印刷層30は、上記のとおり、ヒートシール処理領域Aの任意の位置に形成することができる。ヒートシールフィルム100は、ヒートシール処理領域Aに2以上の印刷領域31および/または非印刷領域32を有していてもよい。また、
図1および2に示す例では、ヒートシール処理領域Aにおける最も端部側が非印刷領域32であるが、ヒートシール処理領域Aにおける最も端部側は印刷領域31であってもよい。
【0012】
ヒートシールフィルム100は、枚葉状であってもよいし、長尺状であってもよい。例えば、ロール状のヒートシーラーを用いて長尺状のヒートシールフィルム100を搬送しながら連続的にヒートシール処理する場合、熱溶着すべきでない領域における非結晶フィルム10の表面を印刷領域31としておくことによって、熱溶着すべきでない領域においてもヒートシールフィルム100とヒートシーラーとの接触を断つ必要がなく、連続的にヒートシーラーを接触させながらヒートシール処理することができ、ヒートシール処理工程を効率化することができる。
【0013】
1つの実施形態においては、ヒートシールフィルム100は、非結晶フィルム10の印刷層形成面とは反対側に積層され、加熱により発色する発色材料を含む感熱記録層40を有する。これにより、感熱記録層40に感熱印字することができる。非結晶フィルム10および感熱記録層40は、好ましくは透明である。これにより、印刷層30における印刷内容を感熱記録層40側から視認することができる。なお、非結晶フィルム10および感熱記録層40が透明であるとは、感熱記録層40に感熱印字する前の状態において透明であることを意味する。非結晶フィルム10および感熱記録層40は、好ましくは、JIS P8149に準拠した不透明度が25%以下である。図示は省略するが、ヒートシールフィルム100は、感熱記録層40に代えて、または、感熱記録層40に加えて、任意の適切な機能層を備えていてもよい。上記機能層としては、感熱記録層40(非結晶フィルム10)の表面に印刷を施す場合に印刷特性を向上させるプライマ層、感熱記録層40(非結晶フィルム10)の表面に転写印刷を施す場合に転写印刷特性を向上させる層などが挙げられる。このような層は一般的に用いられており周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0014】
図3は、本発明の1つの実施形態によるヒートシールフィルムの概略平面図であり、
図4は、本発明の別の実施形態によるヒートシールフィルムの概略平面図である。
図3に示すヒートシールフィルム100Aは、方形状であり、互いに対向する両端部に沿って非印刷領域32が形成されている。このようなヒートシールフィルム100Aは、後述する帯封として好適に用いられ得る。ヒートシールフィルム100Aにおいて、非印刷領域32の幅は、例えば1mm~100mmであり、好ましくは1mm~30mmであり、さらに好ましくは5mm~20mmである。また、
図4に示すヒートシールフィルムは、円形状または楕円形状であり、端部に沿って、印刷領域31と非印刷領域32とが形成されている。このようなヒートシールフィルムは、後述するトップシールとして好適に用いられ得る。
図4(A)に示すヒートシールフィルム100Bは円形状であり、ほぼ全周に亘り、端部に沿って非印刷領域32が形成されており、端部の一部に印刷領域31が形成されているとともに、端部の非印刷領域32の内側に印刷領域31が形成されている。非印刷領域32の幅(端部から中心に向かう方向における幅)は、例えば1mm~10mmであり、好ましくは2mm~5mmである。
図4(B)に示すヒートシールフィルム100Cでは、
図4(A)のヒートシールフィルムにおける内側の領域が非印刷領域32とされている。
【0015】
A-1.非結晶フィルム
非結晶フィルムは、ヒートシール性を有する。具体的には、2枚の非結晶フィルムを温度160℃、シールバー圧力2MPa、シール時間2秒でヒートシールした際のヒートシール強度が0.5N/15mm以上である。これにより、非結晶フィルムは、包装材として好適に用いられ得る。上記ヒートシール強度は、好ましくは1.0N/15mm以上であり、より好ましくは2.0N/15mm以上であり、さらに好ましくは2.5N/15mm以上であり、特に好ましくは3.0N/15mm以上である。上記ヒートシール強度は大きいことが好ましいが、実用的には、25N/15mm以下である。
【0016】
非結晶性フィルムの厚みは、例えば3μm~200μmであり、好ましくは10μm~100μmであり、さらに好ましくは20μm~70μmである。
【0017】
非結晶フィルムは、任意の適切な樹脂で構成される。非結晶フィルムは、代表的には、非晶質成分を含む。非結晶フィルムを構成する樹脂中の非晶質成分量は、好ましくは12モル%以上であり、より好ましくは13モル%以上であり、さらに好ましくは14モル%以上である。非晶質成分量の上限は、好ましくは30モル%であり、より好ましくは29モル%であり、さらに好ましくは28モル%である。これにより、非結晶フィルムにヒートシール性が付与され得る。
【0018】
非結晶フィルムを構成する樹脂としては、ヒートシール性が得られる限り、任意の適切な樹脂を用いることができる。
【0019】
1つの実施形態においては、非結晶フィルムはポリエステル系樹脂を含んで構成される。この場合、ポリエステル系樹脂は、主成分としてのエチレンテレフタレートユニットと、非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分と、を含む。非晶質成分となりうるカルボン酸成分のモノマーとしては、例えばイソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。非晶質成分となりうるジオール成分のモノマーとしては、例えばネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオールが挙げられる。なかでも、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。また、ポリエステル系樹脂を構成する他のジカルボン酸成分および/またはジオール成分が含まれていてもよい。上記他のジカルボン酸成分としては、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、上記他のジオール成分としては、ジエチレングリコールや1,4-ブタンジオール等の長鎖ジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等が挙げられる。
【0020】
必要に応じて、非結晶フィルムを構成する樹脂に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。また、フィルムのすべり性を良好にする滑剤として微粒子を添加してもよい。微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムなどの無機系微粒子、および、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などの有機系微粒子が挙げられる。
【0021】
非結晶フィルムは、上述の構成材料を押出機により溶融押し出しして未延伸のフィルムを形成し、必要に応じて、任意の適切な延伸条件(延伸温度、延伸倍率、延伸方向)で延伸することにより得られ得る。フィルムは無延伸であってもよいが、フィルム強度や生産性の観点からは二軸延伸により得られたフィルムが好ましい。ポリエステル系樹脂を含んで構成される非結晶フィルムは、非晶質成分となり得るモノマーを適量含有するように、ジカルボン酸成分とジオール成分の種類と量を選定して重縮合させることで得られる。
【0022】
A-2.印刷層
印刷層は、代表的には、印刷層を構成する材料を非結晶フィルムの表面に印刷することにより形成される。上記材料としては、例えば、染料、顔料、金属、バインダー成分の材料、溶媒、他の成分などを含む塗工液が挙げられる。また、上記材料は金属を含んでいてもよく、金属を非結晶フィルムの表面に蒸着することにより印刷層を形成してもよい。金属の種類も特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金(銅-ニッケル合金、銅-亜鉛合金など)、銀、銀合金などを使用することができる。金属の形態は、金属粉末、金属フレーク、および金属繊維などいずれの形態であっても良い。これらの金属を含有する印刷層は、意匠性に優れるとともに、遮光性にも優れている。
【0023】
上記材料を非結晶フィルムの表面に印刷する方法は、ヒートシールフィルムの用途や非結晶フィルムとの相性に応じて、任意の適切な方法を採用することができ、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸輪転印刷、UV印刷、シルクスクリーン印刷等が挙げられる。
【0024】
上記のとおり、ヒートシールフィルムをヒートシール処理したとき、非結晶フィルムの表面に印刷層が形成された印刷領域は熱溶着されない。すなわち、印刷層は、非結晶フィルムのヒートシール性を封じる機能を有し得る。また、非結晶フィルムおよび感熱記録層が透明である場合、印刷層における印刷内容は感熱記録層側から視認され得る。したがって、印刷層は、非結晶フィルムのヒートシール性を封じるだけでなく、ヒートシールフィルムの意匠性を向上させ得る。印刷層は容易にパターニングすることができ、したがって、ヒートシール可能な領域を容易にパターニングすることができる。
【0025】
A-3.感熱記録層
感熱記録層は、上記のとおり、加熱により発色する発色材料を含む。発色材料としては、加熱により発色可能である限り特に制限されず、単独で発色可能な染料を使用してもよく、透明または淡色の染料(ロイコ染料)と、この染料を加熱により発色させることができる顕色剤とを組み合わせて使用してもよい。ロイコ染料と顕色剤とを組み合わせた発色材料は、一般的な感熱記録紙などでも使用されており、入手し易く、汎用性が高い。
【0026】
ロイコ染料としては、公知のものが使用でき、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系などの各種のロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料は、一種を単独で使用してもよいが、二種以上を組み合わせて使用することで、所望の色の印字を行うことができる。
【0027】
顕色剤としては、酸性物質などの電子受容体が使用できる。顕色剤は、ロイコ染料の種類に応じて、適宜選択でき、公知のものが使用できる。顕色剤としては、例えば、安息香酸等の有機酸、サリチル酸亜鉛等の有機酸の金属塩系化合物、p-オクチルフェノール等のフェノール系、4-4´チオビス(6-ターシャルブチル-2-メチルフェノール)等のチオフェノール系化合物、N-N´-ジフェニルチオ尿素等のチオ尿素誘導体、3,3´-ジアリル-4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物が例示できる。これらの顕色剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
さらに、感熱記録層は、必要に応じて、結着剤などの他の材料を含み得る。感熱記録層に含まれ得る材料の詳細は、例えば、国際公開第2015/072411号パンフレットに記載されている。当該パンフレットは、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0029】
感熱記録層は、例えば、上記の材料を分散媒に分散させて塗工液を調製し、非結晶フィルムの表面に塗布し、塗膜を乾燥することにより形成することができる。感熱記録層の構成材料を分散媒に分散させる際には、公知のミキサーの他、サンドミル、ビーズミルなどの公知の粉砕器などを用いてもよい。分散媒としては、例えば、アルコール、ケトン、およびニトリルなどの有機溶媒を用いてもよく、好ましくは水を用いる。
【0030】
感熱記録層は、非結晶フィルムの表面全体に形成されていてもよいし、印字したい部分がヒートシールフィルムの限られた一部の領域である場合、当該領域のみに形成しても良い。
【0031】
B.ヒートシールフィルムの用途
上記A項に記載のヒートシールフィルムは、包装材の製造に用いられ得る。包装材としては、ヒートシールフィルムの端部を熱溶着して袋状に形成することにより製造される包装袋が挙げられる。包装袋のタイプとしては、例えば、合掌袋、ガゼット袋、三方袋が挙げられる。また、包装材としては、上記包装袋の他に、ヒートシールフィルムを帯封として用いた包装材、ヒートシールフィルムをトップシールとして用いたカップ型の包装材などが挙げられる。
【0032】
図5は本発明の1つの実施形態による包装材の概略図であり、(A)は包装材の斜視図であり、(B)は(A)のB-B線矢視断面図である。包装材200は、容器110と、容器110の帯封としてヒートシールフィルム100と、を有する。ヒートシールフィルム100は、容器110の外周面に巻き付けられた状態で、両端部が互いにヒートシールされてヒートシール部101とされている。このように帯封として用いられるヒートシールフィルムとしては、
図3に示すヒートシールフィルム100Aが好適に用いられ得る。容器としては、例えば、市販の弁当用のポリスチレン容器が挙げられる。従来の非結晶フィルムを帯封として有する弁当は、電子レンジなどで加熱したときに、帯封が容器に溶着してしまう場合がある。これに対して、
図3に示すように端部以外を印刷領域としたヒートシールフィルムを帯封として用いることにより、加熱時の容器への溶着を防止することができる。
【0033】
図6は本発明の別の実施形態による包装材の概略斜視図である。包装材201は、容器120と、容器120のトップシールとしてヒートシールフィルム100と、を有する。ヒートシールフィルム100は、容器120の開口部を塞ぐようにして、容器120の開口部の縁にヒートシールされている。このように帯封として用いられるヒートシールフィルムとしては、
図4に示すヒートシールフィルム100B(100C)が好適に用いられ得る。容器120としては、例えば、円形の開口部を有するカップ型容器が挙げられる。このような包装材のトップシールとして、
図4に示すように端部に沿って印刷領域と非印刷領域とが形成されているヒートシールフィルムを用いることにより、従来のヒートシール処理と同様にヒートシールバーを押し当てたときに、印刷領域を熱溶着することなく、非印刷領域のみを熱溶着することができる。これにより、カップ型容器を完全密封することなく、通気性を付与することができ、例えば、空気や蒸気を通す構造とすることができる。
【0034】
C.包装材の製造方法
包装材の製造方法は、ヒートシールフィルムの端部において、印刷領域と非印刷領域とを含む領域を加熱することにより、印刷領域における非結晶フィルムを熱溶着することなく、非印刷領域における非結晶フィルムを熱溶着することを含む。包装材としては、1枚のヒートシールフィルムからなる包装袋であってもよいし、2枚以上のヒートシールフィルムからなる包装袋であってもよいし、ヒートシールフィルムを帯封として用いた包装材であってもよいし、ヒートシールフィルムをトップシールとして用いた包装材であってもよい。1枚のヒートシールフィルムからなる包装袋を製造する場合、例えば、一方の端部と他方の端部とを重ねた状態で、ヒートシールバーを押し当てて加熱することにより、非印刷領域における非結晶フィルムを熱溶着する。2枚以上のヒートシールフィルムからなる包装袋を製造する場合、例えば、ヒートシールフィルムの端部と他のヒートシールフィルムの端部とを重ねた状態で、ヒートシールバーを押し当てて加熱することにより、非印刷領域における非結晶フィルムを熱溶着する。ヒートシールフィルムをトップシールとして用いた包装材を製造する場合、例えば、容器の開口部の縁に対応する位置に印刷領域と非印刷領域とを有するヒートシールフィルムを容器に被せた状態で、開口部の縁の全域に亘ってヒートシールフィルムにヒートシールバーを押し当てて加熱することにより、非印刷領域における非結晶フィルムを熱溶着する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のヒートシールフィルムは、包装用のフィルムに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0036】
10 非結晶フィルム
30 印刷層
31 印刷領域
32 非印刷領域
40 感熱記録層
100 ヒートシールフィルム
200 包装材